M10000

2024年10月09日

M10000の走行

 関西合運があり、M10000を持って行った。珍しい車輌なので、皆さん興味があるようだ。走らせて見せてくれという要望が多かった。

 最初は引っ掛かった。どういうわけかショートしたのだ。そんな筈はない。ショートしないように全車輌の極性を統一し、集電は動力台車からしか採っていないのだから。すなわち絶縁車輪がどこかに当たる以外のショートはあり得ない。 博物館の1.56%の勾配と8番分岐とを含む線路を問題なく周回したので、あり得ない事態であった。

 机の上に置いて真横から見るとその原因が判明した。台車上の連接部を支える厚いゴムのワッシャが無い。運んで来る途中で落としたのだ。それで車体が沈んで絶縁車輪に触ったわけだ。 
 仕方がないので、そこにあった段ボールを切ってワッシャ状に切り、中心に穴をあけてセンターピンに押し込んだ。車体を載せると快調に走ってくれた。3車体あり、全ブラス製で重いが、動力台車は一つで十分だ。試運転では1.56%の坂を難なく登った。電流は 50 mAと 少なく、手放しで放置しても大丈夫だ。現に博物館では放置して数時間走っていた。上向きのライトは面白いと感じた人が多い。
 会場のエンドレスを音もなく走り、1時間ほど周回していた。側線に入れた後、誰かの電気機関車が走っていた。

 その後、再度本線上を10周ほど廻った。昼休みも走行のまま放置して問題はないものと判断した。食事に行って帰ってくると、電源が切られていた。聞くと、途中でスリップして走行不能になったのだそうだ。あり得ないことだ。

grime 裏返すと、車輪が油汚れでべとべとである。グリース状のものが車輪についていた。動力台車がスリップするのは当然だ。その電気機関車が油をばらまいたのだ。迷惑な話である。仕方なく、車輪をティッシュで拭取り、レイルを全線拭いた。これはウェット・ティッシュに適する仕事であった。ティッシュ類は黒く汚れた。再度走らせてみると、実に順調であった。
 
 当博物館のレイアウトには持込み制限があって、ギヤボックスがないものや車輪が油で汚れているものは入線禁止である。それについて厳し過ぎると言う人は多いが、この現実を見れば納得戴けるに違いない。よその家に土足で入ることは許されない。 

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2024年10月07日

UP M10000  

UP10000 UP M10000を仕上げた。流線形台車外被、車輪の塗装その他細かなところに手を入れた。


UP M10000 1 以前紹介した時は前部のラジエータ・グリルが銀色であった。塗ったのは筆者の年の離れた友人で、戦前に実物を見たそうである。銀色だったとは言うが、そのような写真が見つからないから、何かの勘違いであった可能性が高い。他機種と混同したのだろう。この動画では奥に銀色に塗ったモデルが紹介されている。これが手本かも知れない。手前はライオネルで1/45.2の時代だ。有名なハドソンも同じ17/64インチスケールだ。

m10000up ボディの色と同色にせねばならないので調色して塗った。乾くと色が異なる可能性もある。太陽光の下で再確認した。 



 就役当時の話が伝わっている。この色の組合わせは”マスタードを載せたホットドッグ”と言われたそうだ。ケチャップが少しはみ出しているようにも見える。 これは地上を飛ぶ飛行機であり、車体はアルミ合金で作られていた。、

vertical lightbeamM10000 veertical light 運転会に持って行くので、念入りに試運転をした。ピヴォット軸にはモリブデン・グリースを入れ、前照燈他の電球が切れていないかも確かめた。特に、上向きのビームが間違いなく点くかを確かめた。左の図のように、光の柱が遠くからでも見えたそうだ。
 すべての車輌が同極であるので、ショートの可能性は極めて低い。全金属製車輌であるからこの点は考慮しておくべきである。


 UPの蒸気機関車と並べると、断面積が小さいのには驚く。大型トラックと普通車ほどの違いがある。高さがかなり低く、最高部で3.65 mしかない。エンジンはV12気筒で粗製ガソリンを燃料として600馬力を出す。最高速度は110マイル/時(約176 km/h)であった。運転席には両手、両脚の圧力を検知する装置(いわゆるデッドマン)があり、力を抜くと急ブレーキが掛かるようになっていた。しかし、それでは鼻をほじることもできない。
 また、ブレーキは滑走防止機能が付けられていて、最短距離で止めることができたそうだ。

 今回のブログの写真その他の情報は、当時のUPのパンフレットを持っている友人から送ってもらった。感謝する。 

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2021年07月11日

直角伝導

 合葉氏は筆者の開発したギヤを、次のように分析した。

1. 直角伝導であるので、より大きなモータを搭載できる。
2. 密閉型ギヤボックスを作れるので、保守に手間がかからず、静かである。
3. 比較的大きなギヤ比が一段で得られるので、トルクの小さいモータでも使いやすい。効率は70%以上あるから、他の多段ギヤより勝ることもある。
4. 蒸気機関車にも電気機関車、電車のいずれにも使える。
5. カルダン・ドライヴが容易に実現できる。 

 筆者はこれを蒸気機関車用として設計したので、直角伝導は当然ではあったが、合葉氏はカルダン・ドライヴに拘った。やはり電車屋さんであるから、バネ下質量の小さなドライヴがお好きなのだろう。
 電気機関車などにはチェインを使う方式を示したところ、大変驚かれたようだ。サンプルを進呈すると、いくつか使う予定を示されたが、その実現の前に体調を崩されたようだ。 

Cardan Drive TMSの102号(1956年12月)に乗越カルダンの記事がある。これを読むと、合葉氏の気持が分かった。
 1軸しか伝導せず、ベルト駆動で他方の車輪を廻している。ドライヴ・シャフトはキングピンの下をくぐっている。ユニヴァーサル・ジョイントを介して、モータへとつながる。
 当時は小さなモータがなかったので、HOのモータを使っている。Oゲージのモータと異なり、慣性モーメントが小さいので、急に止まるのが気になると書いている。

 ユニヴァーサル・ジョイントの曲がる点は、実質的に1つしかないので、2つの位相を考慮する意味がない。台車は、剛氏の発案のスナップで留まっているので、台車は工具無しで、ドライヴ軸から外れる。台車内のジョイントはカップ型であり、前に抜けるようになっていて、反トルクはカップの中のボールで承けるようになっている。
 ベルト伝動は筆者はやらないが、ジャーナルにボールベアリングを用いれば、効率は少しは上がるだろう。伸びる材料でトルクを伝えることは期待できない。むしろ、ギヤボックスを2つにするほうが楽であるが、カルダン軸の振れ角は大きくなる。先日のM10000は、その方式を採った。

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2021年06月29日

車軸の太さ

 M10000の改造依頼があったSE氏に完成した部品を送ったら、その日のうちに組付けして、youtubeにupされていた。あまりにも素早くて、驚いた。

 当方としての心配箇所は、付随車の台車の摩擦だった。送られてきた台車の車軸の回転は悪く、機関車の牽引力では牽けないだろうという感触があった。油を替えてみようと思い付いて、洗浄スプレーで溶剤を吹き付けた。もちろん回転させながら、念入りに洗った。乾燥後、Wako'sのエンジンオイルを注し、しばらく回転させて馴染ませた。再度洗って注油した。かなり軽くなったような気がする。200 gの錘を載せて斜面で調べると1.56%でも滑り降りる。 
 油は低粘度であるが、ミシン油より粘い。車のエンジンオイルを替えた時に缶の中に少し残ったのを取っておいたものだ。これでなくてはならぬと言うものではないが、適当な粘度で具合が良い。

 軸の太さ(半径比、テコ比)については、友人たちからいろいろな話題が出た。分かっている人にとっては当然のことだが、初めての人もいるだろうから、少し話をしたい。

 小学生のころ、インディアンが馬で引き摺って荷物を移動させる様子をテレビで見た。簡単なソリの片方を持ち上げて馬で牽かせるのだ。一緒に見ていた父は、「車輪にするとどうして楽に牽けるか、分かるか?」と聞いた。

 もちろんこの問題では、ソリには油を注す条件であり、それと比較するわけだ。これは小学生には難しい質問であった。答は、「車軸が細いから」であった。
 説明は、車軸の直径を車輪の直径の半分にするとどうなるか、から始まった。摩擦部分の速度が半分になるから、熱になるエネルギィが半分になる。それなら1/10にしたらどうなるというわけで、「車軸は折れない限り細くしたほうが有利だ」という結論を導いた。
 それ以来、車軸は硬い材料を用い、できる限り細くしている。潤滑は最重要項目である。


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2021年06月27日

続 M10000の駆動方式

 モータの取り付け方法については悩んだ。この車体には奇妙な中間床板と言うべきか、サブ・フレイムがある。これは流線型の丸い外被を床に被せているから付けたのだろうが、あまり賢い設計とは思えない。大きなモータを付けてあったので、その孔が大きく、サブフレイムには剛性が全くない 。仕方がないので0.7 mm板で床板を張り、ネジ留めしたら、とても堅くなった。

M10000 truck  (1) モータは小さいので長孔を切り抜き、少し沈めた。沈め具合は孔の縁を斜めに削る事によって調整できる。そうしておいて、押さえをネジ留めすれば良い。ドライヴシャフトと同じ高さにしておけば損失は小さくなる。

M10000 power unit 台車内に集電ブラシを付ける。アースは車軸に、他方は車輪の中心に近いところを擦るようにする。DCCにする前の仮配線をして完成だ。余分な孔はアルミニウム板を接着して塞いだ。

 ついでにヘッドライトの配線もせねばならない。不思議なことにヘッドライトは2つある。一つは250 Wの前方照射であるが、もう一つは鉛直方向照射の100 W球である。アメリカの車輛には、たまにこういうのがある。
 蒸気機関車でもC&NWの急行機関車は45度前方上方に向けたのを付けていた。夜間に見るとどの様な効果があったのかは、想像すると楽しい。 

 改造は簡単と思ったが、意外と手間取った。それは、既に形があるものを直すのは面倒だということである。思い切って下半分を全部捨てるべきであった。台車など見えなくなるのだから、それを利用することなどなかったのだ。機械加工で作った機能だけの駆動台車にすべきだった。そうすれば無調整で完成だ。この調整作業に多大な時間がかかる。 
 今回は自分のものと、友人のものを並べて作業したので、効率的ではあったが、かなり時間がかかった。 

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2021年06月25日

M10000の駆動方式

3-thread worm gear 駆動台車の車軸には、新設計の3条ウォームギヤを装着した。新規発注のホブによる進み角21度の高性能ギヤである。これは希望者が多くなってきたので、いずれ頒布するつもりだ。HO用もある。現在ギヤボックスの試作中である。上の角はトルクアーム取付用である。必要がなければ切り落とす。 
 2つのドライヴ・シャフトを共通にして一本にすれば、反トルクはお互いに乗り掛かって、一挙に解決だ。普通の模型はそうなっている。先に述べた折れるドライヴ・シャフトは実に愚かな発想で、何が言いたいのかわからない。試作時に駄目だということがわからなかったのだろうか。そういう人たちが設計していたのでは性能の向上は全く見込めない。

 自分で設計した台車なら、ウォームギヤの位置を決めて固定すればできあがりだが、この台車は怪しいロストワックス鋳物で軸距離が正確とは言えない。こういう場合はドライブシャフトを分割して、パイプで結び、ロックタイトで留める。台車にはめて、固まるまで、ごろごろと転がしていると間違いが無い。ほんの1分ほどの間である。 

  ユニヴァーサル・ジョイントはやや高級なものを使った。どこで求めたのかは忘れたが、ラジコン用である。片方がΦ2、他方がΦ2.5であった。位相は正しく、その位相でしか組めないようになっているのは素晴らしい。ラジコン屋で売っているユニヴァーサル・ジョイントは9割方、位相が間違っている。

  モータはEscapの18M61である。もう購入してから30年近く経つ。これは、このサイズで当時世界最大のトルクを持つものであった。希土類磁石を使っている。
 Old Black Joeに使った。40ft の標準貨車12輌(4.2 kg)を牽いて1.56%の坂をらくらく登る。


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2021年06月21日

続々 M10000の改良

passengers 台車の上に載っている状態はこれである。台車が廻るように、外被の上を少し切り取った。大変うまく行って、曲線上で接触しない。

 これも筆者の蒸気機関車群と同様に、機関車と付随車の車体、台車をすべて同極性にしてある。最近は今野氏の貢献で「機炭同極」という言葉が市民権を得たようだ。数十年も昔に決められた実利が殆どない規則を堅持する必要はない。筆者の機関車群は30年以上前から、機炭同極である。駆動軸から集電するのがミソである。常に多少スリップするから、汚れが蓄積しないところに価値がある。

 機関車の動力台車の左右の車輪から集電し、テイルライト電源も、最後尾車輛の台車内のコレクタ・シュウで採る。こうすれば、ショートの可能性が極端に減る。

 乗客はパラパラと乗っている。あまり見えないから、これで十分だ。車内燈を点けると、中の乗客のお行儀が悪いのが見えてしまうので、今回は割愛する。

power truckpower truck2 友人の動力台車を同時に改造する。ボルスタが、こんな変な形をしている。ギヤボックスを避け、偏心したキングピンを持つ。この部分が嫌で、4 mm 厚のブラス板をフライスで削ってボルスタを作った。これをはめて銀ハンダで付ける。そうすれば、このへなへなのボルスタが強固なものとなり、軸重も等しくなるわけだ。

 軸重なんてどうでも良いと考える人は、多いようだ。軸重が等しくないと、走行音がおかしいのと、脱線しやすくなる。特に動力台車では問題が大きい。軸重が軽い方の軸が、起動時の軸重移動で浮きやすくなるからだ。特にこの模型ではキングピンの位置が少し高く、それが起きやすい。車輪を Low-D 化したので摩擦係数が小さくなり、その危険は減っている。しかし、キングピンが偏心しているのは許さない。

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2021年06月19日

続 M10000の改良

 流線型外被の付いた台車は、車体に当たる。模型だから実物より車輪が厚く、ゲージも少し広いからだ。
 どんな工夫をしても当たるから、車体の一部を切り取るか、台車外被の上の方を切り取るしか無いだろう。

rubber grommet 台車には弾性懸架がないから、その上の部分で衝撃を緩衝せねばならない。電線を通すゴムのグロメットがたくさんあるので、使ってみた。厚み方向には、良いクッションである。最近のは品質が格段に良くなって、20年経ってもへたらない。


interior 車内には座席がついているので、乗客を座らせた。窓からちらりと見えるだけなので、少々出来の悪いのを使った。足を切ったり、尻を削ったりして、かなり無理をして入れている。椅子、床の塗装は元の持ち主による。 


aero-dynamic 最初付いていた後ろの方の動力台車部分には、座席がついてない。設計当初はあったのだろうが、走らなかったので動力台車を追加して、座席を外したのだろう。愚かな発想だ。
 24人分の座席を作らねばならない。この種のものを揃えて作るのは大変である。アルミ板を切って作り始めた。
 重い車輛なので、少しでも軽くしないと抵抗が大きいからだ。この模型は前頭部、後尾とも一体ロストワックス製の重い部品でできているから始末に負えない。また造形は美しいとは言えない。遠くから見るべきもののようだ。
 実物の車体は、飛行機と同じ作り方のジュラルミン製である。 


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2021年06月17日

M10000の改良

M10000 内側台車 直すべきものは付随車の台車である。内側台車の軸をプレスで押し抜き、新たに細い軸を作って、ボールベアリングで承けるつもりであった。しかし、台車に流線型外被を取り付けると、写真のように、車輪外側とピヴォット軸の先端が同時に触る位置である。すなわち、流線型外被の丸みを考えると内側軸受にする価値がない。ピヴォットのほうが、はるかに抵抗が小さいからだ。線路上では、どの方向から見ても台車の内側は見えにくい。模型として最高の性能を出すようにするのが目的だから、形には拘らない。

 この写真の上の方に写っているのは、内側台車の軸箱の孔を広げて、ボールベアリングを入れるためのジグである。万力に銜えると、軸の心が出るように段取りしてあったが、取り止めた。内側台車は叩き潰して廃棄した。設計があまりにも下手で、直す価値がないし、退路を断つと良いものができるという経験が多いからだ。また、外側台車にしても誰も気が付かないはずだ。

 1 mm板を台車側枠とした。その末端には、さらに板を貼り足して厚くした。ピヴォットの軸穴を、専用カッタで厚さの3/4掘った。台車は3つしか無いので、全て手作業である。一つずつ、最良の結果が出るように磨り合わせて組んだ。穴の深さを調節し、ガタが最小になるようにしたのだ。互換性は無いから、刻印を打ってある。

M10000 外側台車 台車ごとに3点支持にする。段付きネジを旋削して、ガタがないように磨り合わせて留めた。側枠が回転し過ぎて車軸が外れないように、回転制限も付けてある。この種の工作は楽しい。分解して他の台車の部品と入れ替わると、組めない。
 台車枕梁は 12 mm角材から削り出しである。流線型カヴァは、仮に置いてある。ネジ一本でピタリと留める方式を採る。こういうところで2本もネジを締めるのは好きではない。


 モリブデングリスを付けると素晴しい転がりで、ボールベアリングをはるかに凌ぐ。小さなモータで快適に走るはずだ。本物の車輌も、そういう走りをするものである。


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2021年05月28日

M10000 のエンジン

 M10000のエンジンはガソリン機関ではない。たまたまこの記事のシティ オブ サライナを確認していたところ、筆者は書いた覚えがないのに、ガソリンと書いてある。誰かが書き加えたのかもしれない。著者が消すことが出来ないので、訂正までに時間がかかるだろう。

 UPは意外とケチな会社で、燃料費を節約することには熱心だった。ガソリンは当時から高かった。その近辺で安いのはナフサ(精度の良くない蒸留装置で作ったガソリンに近いもの)であった。ガソリンはキャブレタで霧化蒸発させねばならないので、沸点範囲が厳しく決められていた。優秀な精留装置がないと出来なかったのだ。ナフサはかなりいい加減で、様々な沸点のものが入っていたが、価格ははるかに安かった。現在の製品で言えば、油性ペンキの薄め液のようなものだ。

 ただし、エンジンが冷えていると着火が難しく、ガソリンで着火してエンジンが温まるまで待つ必要があった。回転中に、燃料を切り替えて運転を持続する。
 ガソリンエンジンであれば、スパークプラグは1本であるが、このエンジンは4本も取り付けてある。航空エンジンは2本が標準であるが、これはその2倍である。更に電圧も2倍を掛けていたそうだ。また、燃料タンクは、起動用のガソリンもあるので2系統必要となり、面倒であった。
 当時はディーゼルエンジンの信頼性がなかったのだ。ディーゼルエンジンの信頼性が確立されたのは、1960年頃である。

 サライナは当時急速に発展中で、シカゴ以西ではかなり大きな街であった。椙山氏の話を聞いて、50年前から一度行ってみたかったところである。 3年前にその街に行ったが、穀物倉庫が並ぶ静かなところであった。 

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2021年05月26日

続 UP M10000 を整備する

 走らなかった原因は、すぐ分かった。トレーラの車輪径が17.5 mmであるのに、内側軸受の軸径が4.5 mmもある。つまり、車輪径の1/4以上あるのだ。半径比の理解がない。これでは損失が多すぎる。軸を細くして、内側軸受を細く作り替えるべきだ。最大Φ3、できればΦ2にしたい。今回は牽かれるものが3輌以下だが、細ければよく走るはずである。
 たとえボールベアリングを使うとしても、径の大きなものは感心しない。グリースをかき回す損失は、バカに出来ないからだ。

 あるいは、この台車と車輪セットを捨てて、Low-Dのピヴォット軸で外側軸受にするのが、最も簡単な方法である。この台車は外側に流線型のカヴァがあるので、そこに軸受を仕込めば良い。しかし、実のところ、筆者はカヴァが無い方が好きである。

power truck1 前後の動力台車は実に無駄な設計で、ドライブシャフトが中央で折れるようになっている。折れても何の利益もないが、それによって起きる不都合はたくさんある。
 一本の曲がらないドライヴ・シャフトを通しておくだけで、問題は解決する筈だ。ギヤボックスを分解すると、径の大きなウォームで、歯の切削は極めて粗い。何もかもが悪い方向に行っている。少しは考えろよ、と言いたい。しかし、考えた結果こうなったのだろう。困ったものだ。

power truck2 ギヤボックスは、反トルクで倒れるような、救いのない構造だ。作用・反作用の法則を知らないらしい。左右の傾きと同時に、前後の傾きも生じる。これでは走らないのは当然である。またユニヴァーサル・ジョイントの位相は、もちろん間違っている。(筆者がアジンのところに行ったのは、この発売後2,3年経った頃である。)

 分解検査の結果は、零点である。どこにも正しい部分がない。元の持ち主は怒っていた。
 実は、アジンの工場にこの列車が飾ってあったのを見た。社長にあれを譲ってくれないかと聞いてみたことがある。彼は顔をしかめて、「走らないんだ」と言った。「じゃあ、私が直して動くようにしてあげよう。満足したら、その動力を売れば良い。」と申し出たことがある。
 その気になったようだったが、その後うやむやになった。そのチャンスが30年以上経ってから巡ってきたわけだ。

 ギヤを取り替えてトレーラの車輪を改良すれば、なめらかに走るはずだ。全ブラス製で重いから、摩擦さえ減らせば素晴らしい惰行を見せてくれるはずである。当時、韓国には鉄道模型を嗜む人がいなかったのは、明白である。アマチュアでも、中学校の理科を100%理解していれば、こんなおかしなものは作らない。

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2021年05月24日

UP M10000 を整備する

M10000 有名な列車である。剣道の面にも似た流線型の前頭部は、様々なメディア紹介された。子供向けの絵本「いたずらきかんしゃちゅうちゅう」にも登場する。地上を走る飛行機として設計された。
 1935年、シカゴとその西南200マイル弱のSalinaの間に就役し、”City of Salina”として運行された。このサライナという発音は日本の鉄道趣味界では浸透していない。とれいん誌の記事などには、サリナと書いてあったのが原因だろう。ヒッチコックの映画にVertigo(日本では「めまい」として封切られた)がある。その中でKim Novak演じる女性が、出身地を聞かれて”カンサス州サライナ”と2回言う場面があった。 


UP M10000 (2)UP M10000 (1) この列車は3輛の固定編成(連接車だから当然である)である。1985年ころの韓国アジンの製品だ。極端に出来が悪い。どうするとこんな設計ができるのかわからないほど、ひどい設計である。ギヤボックスのダイキャストはヒビが入っている。いずれ粉になる運命だ。
 たったの3輛編成なのに、1台のモータでは動かず、最後尾に2台目の動力台車を付けている。前方と車輪径が異なるのに、同じモータ、ギヤ比である。要するに、ほとんどまともには動かなかったらしい。
 30年前、改良を諦めた友人から安く買い取った。塗装は彼がした。前面のグリルをアルミ色にしている。聞くと、見た車輛はアルミ色だったと言う。たくさんの写真を見ても銀色のは見つからないが、現車を見た人だから、深く追求しないことにした。

 動力を入れ替えればよく走るようにできる自信があったが、面倒で手を付けなかった。
 最近、これと同じものを手に入れた人から連絡があって、車輪を入手したいとのことである。どんな車輪が必要なのかわからないので、分解して調べている。動力車部分は36インチ、付随車は33インチだということは分かった。開けるとボロボロと壊れてくる。これはどうしょうもない模型だ。ハンダ付けが下手すぎる。車体にはあまり手を触れないようにして、下廻りを新製することにしたい 。直せそうもないのだ。

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2012年11月18日

続 Vic's Hobby Supply

812_6100-2 レイアウトの上には、店主のお父さんのLeoの作品が並んでいる。黄色のUPのCity Seriesの特急が何本も置いてある。



812_6107-2これはAtlasのFM Erie-builtである。時代考証するといくつか問題があるが、そこは目をつぶることにしている。


 

812_6113-2812_6114-2 Milwaukee Roadのカフェラウンジカーである。C&NWとの提携を止めた後の話だから、かなり末期の客車である。これはスクラッチビルトである。
 次はUPの郵便車である。メイルキャッチャが付いていて、なかなか良い気分を出している。これもスクラッチビルトである。

812_6115812_6116-2 屋根が凸凹して居るのは、曲げるときの型が小さいもので順次送りながら曲げているからである。変なものだが、実物もこのような感じで曲がっているので、却って実感的という説もある。

812_6117-2812_6121-2 全ての車輌には室内が付き、人形も乗っている。食堂車の厨房は全てステンレスの薄板から作られ、実感的な色をしている。
 最後の車輌はM10000である。UPファンは必ず持っている車輌であるが時代的にはCity Seriesと同時代ではありえない。

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