材料

2025年06月10日

epoxy casting による貨車 

covered hoppers (2)covered hoppers (1) キットからの貨車の中にこの2輌のカヴァド・ホッパがある。間もなく完成する。
 これらは25年ほど前、カリフォルニアのSam から買ったものだ。サムは退職後自宅でカツミ製の貨車を測定し、原型を作った。シリコーン・ゴムで型取りをし、それにエポキシを注型してこの種の貨車を作っていた。始めは無蓋車であった。 大した数は作っていない。せいぜい50輌くらいだろう。  

 最初は e-bayを通して買い、それらはすぐ完成させた。他にはないかと聞くとカヴァド・ホッパを作ったという。送ってくれると言うのだが、たまたま San Jose で O scale の集まりがあって講演に行くからと伝えると、出店するから会おうと言う。
 とても誠実な人で、奥さんのジュディも一生懸命手伝っていた。材質についてのアドヴァイスもすぐに取り入れてくれ、長く付き合えると思っていたが、間もなく亡くなってしまった。

 下廻りとの寸法の食違いがあり、定盤の上で測定して削るべきところは削った。全プラスティック製は壊れやすいので、ブラス製アングルを貼り付けている。細かいものは全てブラスで作り直した。このエポキシ樹脂には filler が入っているのでそう簡単には壊れない。

 どういうわけか、この2輌が20年以上未完のままだったので、一気に完成させることにした。ちょうど良いディカールがあったというのが、その大きな要素である。


dda40x at 06:10コメント(0) この記事をクリップ!

2025年03月12日

走行音を小さくする

 最近、クラブの知人に会うとレイアウト製作を始めたという話を聞くことが多くなった。路盤をどのように作るべきかという質問を受ける。同時に音の問題を聞かれる。

 当博物館の来訪者は、ゲージには無関係に「静かだ」と驚いて質問する。
「何が違うのですか?」と聞かれるのだが、それには答えにくい。あえて言えば、「すべてが違うのです。」である。

1. 路盤とそれを載せている骨組みとテイブルトップの剛性が大きいこと
2. 線路を載せる道床にゴムまたは軟質ポリ塩化ビニルの遮音材を貼ってあること
3. フレクシブル線路のレイルを抜いて少し細いレイルに入れ替えてあること
4. 車輪は市販のめっきした車輪ではなく、ステンレス鋼を高精度の旋盤で削ったものであること
5. レイル面が滑面であるように、錆びさせないこと。それには空調で湿度を下げると同時に、外気に含まれる海塩を遮断せねばならない。

 これらをすべて実行するときわめて静かな運転ができることは確かめられている。


dda40x at 03:12コメント(6) この記事をクリップ!

2025年01月19日

Lobaugh の姿勢

2 kinds of brassCNW J4 2種の機関車がある。手前は Lobaugh 製   C&NW の Berkshire であり、向こう側は KTM(祖父江)製の Texas である。
 地下室の整理をして発掘した機関車の修理・整備・塗装を始めたのだが、あまりにも表面が汚いとやる気が失せる。筆者の処方で酸洗いした。

 2種のブラスの色に注目されたい。写真ではその違いが分かりにくいが、肉眼では全く異なって見える。ロボゥのブラスは黄色いのである。どちらかと言うと黄緑色に見えるほどだ。
 対するKTM 製は赤い。洗い立てはピンクに近い。銅の含有率を調べると、日本製は80%だ。アメリカ製は75%ほどである。快削性が異なり、日本製には粘りがある。曲げやすく、曲げたものを伸ばしてもう一度曲げても割れない。アメリカ製はそういうことをすると割れてしまうが、糸鋸、ヤスリ掛けは容易だ。
 1960年当時、Max Gray は日本のブラスをred brass と呼んで持ち上げたyellow brass より高級だとしたのである。 

 筆者はアメリカ製のブラス板を各種持ち帰って、祖父江氏に比べてもらった。両方使ってみて、「あたしゃぁ、やっぱ日本製だね。絞り出せねぇと困るんだよぉ。」と言った。

Lobaugh 2-thread worm この機関車のウォームギヤは逆駆動できる。ウォームは 3/16インチ(4.76 mm)のシャフトそのものに歯切りした2条ウォームである。進み角は 13度 である。グリースが固いので分解して洗い流した。溶剤に溶けない部分もあったので、削り落としてモリブデングリースを塗った。ボールベアリングはスラストを受けるように出来ていて、軟らかいグリースを入れたら、実に滑らかに動いた。
 単純な話だからすぐお分かりになる話だが、進み角を大きくするには、径を小さくせねばならない。実は40年ほど前、最初の3条ウォームを作った時にこの方法で 5 mm軸そのものに歯切りすることも考えた。そうするとボールベアリングの大きなものを採用せねばならなくなり、周速度が大きくなって軸受の中での損失が増えると考え、軸を細くしたのだ。このロボゥの時代はモータがオープン・フレイムの時代だから、その効率は低く、問題にならなかった。当然のことながら、”Free to Roll” とは謳っていなかった。マグネットモータが廻りにくくて、押しても殆ど動かなかったのだ。
 歯数は 2/35 で、互いに素になっていることは言うまでもない。良く出来ている。どこかのお間抜けな3条ウォームと比べるのも空しいが、機械工学の分かっている人の製品は大したものである。

Lobough C&NW J4 動輪軸の軸受は角棒に穴をあけた構造で、面圧が低く、ボールベアリングに劣らないほど滑らかに走る。油を注す孔がある。動輪の組立てはキィが差し込んであるから、分解は容易だ。

 ロボゥという会社は、精密機械工作(特殊ネジの製作)を稼業としていた。模型部門は社長の趣味を副業として発展したが、社長の死と共に消滅した。筆者はかなりの数の製品を持っているが、どれも正しい理論に基づいて作られ、当時としては世界最先端の模型を作っていたはずだ。動力部はモータを取り替えるだけで、素晴らしい動きをする。

 筆者の高効率ギヤ装置には最適の大きさのボールベアリングが使用されているので、半径比による損失が最小となっていて、それが高効率の実現に貢献している。また、歯車の材質を吟味し、仕上げ精度をさらに上げているので、ロボゥより良くなっている。ギヤを設計するというのは寸法を算数で決めることではなく、歯形をかなり面倒な計算で求めねばならない。歯車屋に行って「これと同じものを作れ」と言ってもできない。そういうことをした人は居るようだが、出来て来たものは動きが渋いのは仕方ない。

dda40x at 01:19コメント(2) この記事をクリップ!

2024年10月15日

続々 レイアウトを作ろうとする人へ 

 2バイ材の話では、初めてこの木材寸法の意味が分かったとおっしゃる方があった。鋸の間隔を2インチにしている。切ると鋸の厚み分薄くなり、さらにカンナを掛けると厚さが両側で減る。結果として1/8インチずつ薄くなれば、厚さは1‐3/4インチ(44.5 mm)となるわけだ。要するに、2インチピッチで鋸を多数並べた製材機械に通したものを乾燥炉に入れてから選り分け、各種の高さに切り分けているわけである。

 材の縦の高さが増すと、撓みにくいから梁に使える。我が家の床は 2x10材を用いて支えている。スパンは 3.2 m、ピッチは 305 mmで、床は19 mm合板 + 19 mmのオーク・プランクである。歩くとその剛性が感じられる。撓みは実測できないほど小さいから、転ぶと痛い。
 だから、レイアウトの場合には主梁として短い 2 x 8 を用い、長手方向のジョイスト(小梁)として角スタッドを置く。さらに15 mmのランバーコアを敷けば、非常に剛性の大きな平面を作ることができる。しかも安価である。最近の木材の価格は、信じられないほど上昇している。

dda40x at 10:15コメント(1) この記事をクリップ!

2024年09月07日

角スタッドを用いたレイアウトの骨組み

 この表題を見ると、台枠を熔接して作るのでは…と早とちりする人が居そうだが、その必要はない。また、Oゲージの話でHOには関係ないと思う人も居るかもしれないが、ゲージには関係ないのですべての方に読んで戴きたい
  
 もちろん筆者の作ったレイアウトでは、材料費の節約と経年変化を最小にするためにかなりの鉄骨材料を採用している。コンクリートの床にアンカを打ち、直立させた鉄柱にアングル材の横梁を載せ、鉄筋でブレイスを作って熔接した。これは規模が大きいからである。家庭での小規模のものであるなら、垂直材は木製で良い。この作業はインパクトレンチがあれば容易である。

 一般家庭内でHOクラスのレイアウトを作るのなら、縦方向は木材で十分で、根太(一般建築での用語)を角スタッドにするだけのことである。スパンを変えながら体重を掛け、撓みを測定されると良い。非常に剛性が高い。しかし、木材と異なり耐荷重以上を掛けると曲がって元に戻らない。筆者のレイアウトには1か所その失敗箇所がある。

 設計荷重は 150 kgに決め、本線上であれば壊れない筈だったのだ。撓んでも復元するはずである。ところが…。

 手伝ってくれた体格の良い友人が路盤上を歩いて来た。重い工具を手渡すために近付いてきたのである。「それ以上近寄ってはいけない!」と叫んだが遅かった。我々の載っていた部分は15 mm程度凹んだ。二人の体重と工具の総和は150 kgをかなり越えていたのだ。
 仕方がないのでジャッキで持ち上げ、裏側に30x30のアングル材をネジ留めしておいてブレイスを熔接した。運よくこの補修はうまく行き、レーザ水準器で見ても完全と言える修復が出来たので、ほっとした。修復できなければその部分を壊してすべて取り換えるつもりでいたのだ。
 このようなことは小規模のレイアウトでは起こらないだろうから安心されたい。しかし、人間が一人載る状況は考えておかねばならない
 
 勾配線もこの手法で作ってあるので撓みはなく、均一な勾配ができる。こういうところにアルミ材を使う人を散見するが、失敗を招く。アルミのヤング率は鋼材の4分の1強しかないから、剛性が足らず、波打った路盤になる。

dda40x at 09:07コメント(0) この記事をクリップ!

2024年08月28日

GarGraves track

Phantom Line GarGraves についての問い合わせがいくつかあった。日本では見るチャンスはまず無いと思われるので、説明をしたい。これがその商標である。


Gragrave & Lionel 左が GarGraves で右は Lionel の三線式線路である。木製枕木というのがなかなか良い。これは3線式の線路で、やや高級路線を行っている。枕木が少し短いように感じるが、それは既存のライオネルの枕木長と合わせて敷き替えを簡単にする目的があるからだろう。 右のように、中央レイルが銀色なのは嫌だという人は多い。特に日本では極端に嫌う人が多い。昔は中央レイルを銅線にして、目立たなくすることが流行ったが、アメリカではそれほど嫌う人は居ない。

 その理由は本物も中央3線式で集電していた時代があるからだ。にわかには信じ難いが、踏切もあった。感電防止にかなりの配慮があったらしい。3線式への嫌悪感というのはアメリカではかなり少ない。しかし、中央レイルが気にならないというのは魅力的だったようだ。中古品もたくさん流通している。ポイントも中央軌条が目立たないようになっていてこれは大したものだと思った。

 GarGravesという会社は Gardner と Graves の二人によって作られた。現在は別の人が所有している。枕木は木製が標準だったが、どういうわけかプラスティック製もある。驚いたことに錆びにくいステンレス板で出来たレイルの製品もあるそうだ。これは屋外使用を考えているのかもしれないが、電気抵抗は極端に大きいはずだ。また摩擦係数が小さく、牽引力は低下する。

 筆者としては軽いのがありがたい。3 ft(90 cm強)が、たったの 140 gしかない。電車で運ぶときは必ずこれを持って行く。中央レイルは外しておく方が誤解が少なくて良さそうだ。そういう製品もある。この線路上でスケールの車輌を走らせると曲線上では脱線しやすい。レイル頭部が丸いからせり出してしまうのだ。ライオネルのようなハイフランジの車輌を走らせるためのものであって、スケール用ではない。しかし、この動画のような直線上で走らせるのは全く問題が無い。


dda40x at 08:28コメント(2) この記事をクリップ!

2024年08月24日

続 Atlas exteded-vision cabooses

Atlas cabooses これらは完成していない。うち3輌は過去に紹介した。  

 DT&I はデッキの手摺を細く作り替えてあったが、その部品は既に行方不明で再度作り直す。B&O、 C&O の手摺は、材料が脆化していたので切り取った。暗いところに置いてあったので、光のせいではない。空気に触れていると可塑剤が飛び易い、あるいは壊れ易いのだろう。すなわち細いもの、薄いものは脆くなりやすいわけだ。先回紹介の UP、 BN では塗装してあるためか、脆化していなかったが、太くて見苦しいので切り取った。

 改良に関しては、
・デッキ手摺を切り取り、金属で細いものを新製する。
・全体に新たな塗膜がないといずれ脆化する。
・台車は板バネの緩衝機能を模したものを付けないと現実味がない。
・肉の厚味が見えている部分は削り取って肉を薄く見せる。
・できれば電装して、ライト類を点灯する。
という程度のことを施すと良いわけだ。特に電装は、絶縁材料で出来ているから簡単である。電池を積めばよい。45年も前、椙山 満氏がご健在だったころ、電装し燈火が点る DT&I カブースをご覧になって、「実に良いですなあ。」と感嘆されたことを思い出す。現在では小さな LED がいくらでも手に入るので簡単なことであろう。 


 Atlas は50年前に非常に優れた製品群を開発したが、それを改良することなく、トイトレイン用として放置したような気がする。スケールの方は需要が小さいので、それ以上手を出さなかったのだろう。

 時は流れ、現在 Atlas が販売中のものにはこれらの製品の改良型はないようだ。すべて新開発の中国製ばかりである。トイトレインが「必要以上のスケール化」に走り、”急カーヴを曲がるスケール的な車輌”の需要が生まれ、それに合わせた商品開発がされて現在に至る。今ではスケールの需要はトイトレインの1/30以下だそうだ。
 スケールの人はティンプレートのおこぼれに与っている。だからOスケールの人はトイトレインの妙に細かく出来た上廻りを使った怪しい商品を買わされているわけだ。その下廻りのダイキャストの材質は極めて怪しく、5年で破綻したものもあるようだ。ブラス製でないと結局は駄目ということが分からない人はまだまだ多い。

dda40x at 08:24コメント(2) この記事をクリップ!

2024年07月09日

50ft PS-61 double door boxcar

1692228124.1280.1280__43758 この50ft-6in の貨車は懐かしい。1965年頃にこの塗装スキムが決まり、1969年の大陸横断鉄道開通100年祭に合わせて大量導入された。しかし70年代半ばにはこの車輌はかなり少なくなっていた。殆どが他社に売却されたようだ。

 この図は Intermountain のサイトからお借りしている。ドアはスライディングドアとプラグドアの両方が付いている。この貨車が欲しかったが、ブラス製は無く、自作するしかないと諦めていた。

UP 50ft boxcar 数年前、ジャンク同然の古いプラスティック・キット(50年前発売)を偶然入手した。最近組み始めたが、材質が変化していてとても脆い。ハシゴ類は、取り付けようとランナから外す瞬間に粉々に折れてしまう。仕方がないから細いものは全て捨て、大きな部品だけを使って組み、細部は金属製の部品を取り付けた。ABS製とは謳ってはいるが、やはり50年も経つと駄目である。可塑剤が蒸発したり、酸化されるのだろう。US Hobbies の製品であったから信用していたが、プラスティックという材料の限界を示しているようである。

 模型はブラス製か木製に限る。木材はバカにできない。これは伊藤 剛氏も指摘している。50年前の日本製ダイキャストはことごとく膨張している。その度合いは形によって異なるが、1%弱である。割れてはいないので気が付きにくいが、孔が大きくなって、ブッシュが抜け落ちるものが多い。
 アメリカ製であっても膨らんでいるものがたまにある。これは中国製のようだ。かなり悲惨である。

 ディカールは30年以上前に複数用意してある。当時もらったUPのポスターに、この貨車の60輌編成が曲線を描いて走る写真があった。本当はこの長い編成を作りたかったのだ。

50ft boxcar 塗装は黄色を先にしてしまったのは失敗だった。下地が黒なので、厚く塗らないと色が出なかった。下地が銀なら、薄く仕上がっただろう。艶が出ているので、反射で明るい部分が白く見える。Oスケールだから厚みはごまかせるが、HO以下では悲惨な結果だったと思われる。

 説明書に「この模型はABSで成形されているので、どんな塗料を塗っても問題ない。」とあったのには驚いた。思い切って、ホームセンタで安売りしていたラッカ・スプレイを使ってみたのだが、隠蔽力不足でやや厚い塗膜になってしまった。     

dda40x at 07:09コメント(2) この記事をクリップ!

2023年12月09日

melting brass scrap

Melting brass (6) 900 ℃になればオレンジ色になり、非常に粘り気の少ない液体になる。
 粉状の金属はぎっしり詰めてスタートしても良いが、塊は注意が必要である。熱で膨張して坩堝を割る可能性があるので、必ず縦に入れて長さの変化を上に逃がすようにせねばならない。粉はこぼさないよう樋状のもので流し込む。

 900℃以上では 、ブラスの成分の亜鉛が揮発し、それが空気中の酸素と化合して白い粉をふくのでそれをステンレスのへらで取り除き、煉瓦の鋳型に流し込む。この時クランプで鋳型を締めて漏れないようにするのがミソである。ステンレスは熱伝導率が低いので熱くない。

Melting brass (5) 今回は平たい鋳型であるので、上に浮いたスラグが載ったまま固まってしまった。縦長の鋳型にするとその部分を容易に切り捨てられるが、圧力が高くなるので、隙間から漏れやすい。



Melting brass (1) 30秒も経てば完全に固まるので、それをバケツの水の中に投げ込む。これで500 g強である。ハンダも一緒に融けているので、快削性がある。

 ダライ粉は引き取り値が安いので、こうやってインゴットにしておくと高く買ってくれる。電気代が掛かるが、天気の良いときにやれば、太陽光発電の出力でタダでできる。 

 今回は量が少なかったのでこの炉を用いたが、大量にあるときは大きな 2 kg型を用いる。次回はそれを紹介しよう。

dda40x at 12:09コメント(2) この記事をクリップ!

2023年12月07日

brass scrap

 筆者ほどブラスの材料を購入する人は珍しいだろう。年間数十 kgは買う。今年は、総計280 kg 買った。知り合いの廃金属商から電話が入るとすぐ行って、向こうが勧めるものをすべて言い値で買う。より分けて気に入ったものを残し、要らないものは別の廃金属商に持って行って処分する。そこでまた別の物を売りつけられることもあるが、全て買う。またより分けて…という無限地獄であるが、珍しいものに巡り会えるので、とても楽しい。実質的な消費量は年間30 kgくらいだ。この方法は手間と資金を必要とするが、良い材料を安価に調達できる。友人にも頼まれるので適当なサイズのものを原価で譲り渡す。先日は細い平角棒を頒布したが、HOの方は消費量が少ない。Oゲージの仲間は一度に数kg買う。そういう人にはダライ粉を捨てずに持って来るようにお願いしている。

Melting brass (2) このような方法で、必要な材料は潤沢に持ち、贅沢に切り刻んで使っている。そのときに出るダライ粉(切り粉)は取っておき、磁石で鉄分を除いてから、熔解炉で融かす。900 ℃でトロトロに融けるのでそれを煉瓦で作った鋳型に流し込めば大きなインゴットができる。それをフライスで削って6面が直角の材料を作る。その時に発生するダライ粉は次回で融かす。

Melting brass (3)Melting brass (4) この熔解炉では一度に750 g程度しか融かせないので、何回かに分けて作業する。これはアメリカ製で30年以上前に買ったときの値札がまだ付いている。今はとても高価だ。坩堝はグラファイト製であるから、赤熱すると大量の一酸化炭素を放出する。必ず屋外でやらないと命を落とす可能性が高い。120 V、750 Wである。変圧器で昇圧して使う。100 Vでは融けるまで1時間以上も掛かってしまい、使えない。  

dda40x at 12:07コメント(0) この記事をクリップ!

2023年10月10日

焼戻しの意義

 焼入れは簡単だ。温度さえ間違わねば良い。ガス火で焙る。温度は色で見るのだ。すなわち暗いところでやればすぐわかる

 焼きの入る鋼材はいくつかあるから、クズを入手しておけば良い。
 扱いやすいのはS45Cである。快削性があり、簡単に整形できる。最後にFなどの文字がついているとより快削性があるが、模型製作ではあまり意味がないだろう。 

 焼入れしただけでは、その工具は硬いが脆い。金床の上に落としただけで欠けてしまうことはよくある。靭性(じんせい)を与えねばならない。靭性は英語で toughness という。要するに脆性(ぜいせい)の逆で、そう簡単には割れないということである。磁器などの焼き物は硬いが、すぐ割れてしまう。これは靭性が無い例である。

 焼入れしたものに靭性を与える操作が焼き戻しである。様々な方法があるが、素人でも失敗しないのが、この低温焼戻しである。天ぷら油の中で煮て戻すという方法が長らく紹介されていたが、燃料が無駄であるし、油に着火すると取り返しがつかない。長時間油を加熱すると、徐々に油の中に過酸化物が蓄積され、着火しやすくなるので避けたい。屋外でオーブントースタというのが一番安全であろう。焼入れから時間が経つと良くないと聞いた。直ちに焼戻しに掛かれるように予熱しておく。

 焼戻しは、繰り返し使う可能性のある工具に施す。一回きりしか使わないなら、欠けないように使って廃棄しても構わない。

dda40x at 10:10コメント(2) この記事をクリップ!

2023年10月08日

焼入れ・焼戻し

 径が6 mm以上もあるので、まともにネジを切ろうとすると最初のトッカカリが難しい。ダイスが斜めに入ると悲惨である。旋盤で完全に仕上げても良いが、切り込み深さの決定が面倒だ。旋盤で2回だけ(幅の広い溝を付けるため)切り込んで、そこにダイスをはめると安定化する。労力も激減する。

quenching できたものを煉瓦の上でガスで赤く焼き、水に放り込む。ヤスリが掛からないほどの硬さになる。そのままでは硬過ぎる。ちょっとしたショックでも割れ易いので、焼戻しをすべきだ。工具を硬い床に落とすと割れてしまうのだ。


tempering オーブントースタの古いのを、焼戻し専用機としている。150 ℃から200 ℃で1時間以上だ。太陽光発電が稼働している時にやるとタダでできる。厚い金属板を下に敷き、湯のみ茶碗に入れて空き缶をかぶせる。開放して通電すると、温度ムラができて失敗してしまう。
 このトースタのタイマは15分が最大値なので、13分毎にアラームを設定し、リセットをする必要がある。当然、外でやるのだ。  

dda40x at 10:08コメント(2) この記事をクリップ!

2023年10月06日

工具を作る

cone end tool ちょっとしたプレス工具を作った。ピヴォット軸を車輪に圧入する時、軸の先端をつぶさないように押さえたり、抜く時に使う工具だ。ワークの数が少なければ、押すものは軟鋼のシャフトの先に小さな穴をあけたもので十分だ。

 ステンレスのピヴォット軸は十分に硬く、押し込んだ瞬間に穴が広がり、ピヴォットのテーパと馴染む。10本くらいなら、これで難なく仕事ができる。しかし数百となると、押し込み工具は徐々につぶれ、穴は大きくなって最終的には割れる。その前に全体が太くなってしまうこともある。そうなるとピヴォット軸を押し出した後、抜けなくなるし、車輪の穴が大きくなって使えなくなる。 

 こういうときのために、S45C(炭素0.45%を含む鋼材の番号)の材料を用意してある。適当な長さのものを旋削して作る。今回は2つ作り、一つは中型プレスに付け、他方は小型の簡易プレスに付ける。小型機のラム(上下に動く角棒)にはW1/4のネジが切ってあるので、その雄ネジを切らねばならない。  

dda40x at 10:06コメント(0) この記事をクリップ!

2023年09月20日

続 17.5 mm車輪の台車群

Athearn trucks これらはAthearn社の Delrin truck群である。デルリンはデュポンの登録商標で、一般名で言うPOM ポリオキシメチレンの中に含まれる。エンジニアリング・プラスティックとして名高い。結晶性であり、長時間力が掛かっていても塑性変形しない。摩擦が少なく、耐久力がある。 すなわち台車の材料としては最適の樹脂の一つである。

 1970年ころにこれらの台車群が発売された。以前はzamak製のダイキャストであったが、同じ型で湯を替えたのだ。他にもAndrews 台車があるが、今回は割愛する。

 3本のコイルバネが見える。台車枠は自由にひねられ、素晴らしい追随性を示す。脱線しないというのは大きな利点だ。compliance 追随性は、このようなコイルバネでなくても実現できる。要するに左右の台車枠が捻り易ければ良いのだ。そういう意味では3Dプリントの台車は一体成型であるが、ボルスタ部分の捻り剛性を少し減らした設計にしてあるので、とても追随性が良い。compliance は、最近は別の範疇でカタカナで使われることが多いが、これは本来の意味である。

 車軸は普通鋼で、RP25車輪は軽いデルリン製であった。筆者は1973年にこれを初めて見て、直ちに購入した。忘れもしない、1組が1.98ドルであった。昼のハンバーガ・セットの価格の1.5倍であった。指で廻してみて、それが軽やかに廻るのには驚いたが、この車輪が金属製であったらと思った。それから10年以上経った1986年、これにはまるステンレス製RP25車輪を1000軸作り、仲間内で頒けた。吉岡氏からは、「RP25は正しい設計とは言えない。もっと良い形状のものを開発すべし」と尻を叩かれたが、この転がりには皆が驚嘆した。
 その後、Low-D の設計が完了し、 この17.5 mmピボット軸だけで2万軸作った。その9割がアメリカに行った。

 この台車は、50年経っても全く性能には変化がなく、たまにボルスタが折れることがあるが、3Dプリントで作ったナイロン製に取り替えれば生き返る。軸受は専用の tuner と呼ばれる工具で深さを調節して、わずかのモリブデン・グリースを付けている。0.2%の坂を下り降りる。 

 この台車の軸長は他の製品に比べてやや短い。すなわち、軸端の距離が短いので、Low-Dをはめるには、上記の工具で軸穴を深くする必要がある。その加工は簡単である。デルリンには快削性があるからだ。 


dda40x at 09:20コメント(0) この記事をクリップ!

2023年07月24日

ABS樹脂製の車輌

 友人から連絡があった。ABSと言っても、ずいぶん差があるそうだ。彼はヨーロッパ型のコレクタである。
 同じ会社の製品であっても、本国製と某C国製では歴然たる違いがあるそうだ。メルクリンでさえもC国製になった。
 結論から言うとC国製は全部駄目だそうだ。その原因は耐候剤が入っていないからだそうだ。これは某製造業の専門家からの情報である。

 耐候剤とは、紫外線、高い温度、空気(酸素)及び潤滑油への暴露などの影響を受けにくくする薬剤である。一番分かり易いのが、自動車の車内の材料への応用である。自動車は屋外で日光に晒されている。耐候剤がなければ、1週間でヒビが入り、1ヵ月で割れてしまうだろう。それを防ぐために数種類の耐候剤が配合されている。

 模型製造企業では、そういう指示を受けていなければ何も配合しない。これらの薬剤はかなり高価なものであるからだ。その結果、そうしてできた製品を輸入して使っている人たちは、光に当て、暑くなるところに放置して、たちまち駄目になるというわけである。

 殆どは室内であるから、紫外線の影響は限定的であろうが、窓ガラスを多少なりとも透過する波長の紫外線もある。その種の模型を大切にしたければ、窓のない部屋でいつもエアコンを効かせておかねばならない。最近のLED照明は紫外線を出さないはずなので、安心できる。蛍光灯をいまだに使っている人は、模型を破壊していることになることを理解して戴きたい。蛍光灯からは無視できない量の紫外線が出る。 

dda40x at 07:24コメント(0) この記事をクリップ!

2023年07月20日

ABS製品の劣化

 先月友人宅を訪ねた折に、洗面台の電灯が点かないのに気付いた。友人と相談して直すことにし、後日手伝いをした。

 Pa社の洗面台で、ABS樹脂でできた本体にパーティクル・ボードの裏板が20本ほどのタッピング・ネジで留められている。既存の電灯を外し、LEDの蛍光灯と交換することにした。部品を外し、新しいものをはめ込んで出来上がりだ。電気工事の範疇には入らない気楽な作業である。圧着端子で締めて、熱収縮チューブで絶縁を施せば出来上がりだ。電源に差し込んで点灯するのを確認し、裏板を嵌めようとした。

ABSの変形 ABSの縦80 cm、横60 cmほどの成形品なのだが、取り付け後28年で歪みが出ている。取付けの圧力と重力であちこちが撓み、ネジを外すと二度と合わない。日射のある場所ではないので、その心配はないと思っていたのだが、ひどいものであった。

 2人がかりで押し込んでなんとか留まったが、3本くらいはネジ穴が割れた。奥さんは、
「無理して直さずに新しいものを付けたら…。」
とは仰るが、その価格を知って仰天した。業者なら、このような苦労はしたくないので、その新品を売りつけるのは当然だろう。

 ABSでもこのような状態である。結晶性プラスティック以外は、時間とともに”樹脂内で目に見えない程度の流動がある”ということは明白だ。
 世の中にあるプラスティック製鉄道模型の末路が見えてきた。 

dda40x at 07:20コメント(1) この記事をクリップ!

2023年07月14日

エンジニアリング・プラスティック

 通称エンプラだそうだ。はっきりと決まった定義はないが、通常のプラスティックより高温に耐え、力学的強度が大きく、長期間の使用においても特性の変化が少ないものを指す。

 POM(ジュラコン、デルリンなど)、ナイロンなどが有名で、製造各社によって仕様が決まっている。これらは結晶性プラスティックであり、常温近辺の温度での使用によって流れてしまうということがない。模型では、歯車、ギヤボックス、台車、自在継手に適する。これら以外のプラスティックは、製造してからしばらくは良さそうに見えるが、時間とともに少しずつ分子間の相対距離が変化し、変形、流動する。
 ただしエンプラとは言え、POMのギヤをシャフトと嵌合させると数年以内に割れる。これは業界ではかなり周知されているのは喜ばしい。

 最近テフロンの話題を出したところ、テフロンで歯車を作れないかという相談があった。結論は言うまでもなく、論外である。軟らかく、擦り減りやすい。摩擦が少ないという長所はあるが、力が掛かれば消滅する。流量計などには使われているが、動力伝達には全く向かないものである。

dda40x at 07:14コメント(0) この記事をクリップ!

2023年06月20日

3Dプリントの台車

 最近3Dプリントが普及するにつれ、様々な方から、3Dプリントで作った台車等を見せられる。形はすこぶる良く、台車のひねりも多少は利いて、脱線も少ないと思うのだが、材質はほとんどの場合、駄目である。ABSや、PLAなどを使っているのだが、いずれ撓んで反ってしまうだろう。

 Oスケールの方が、「おっしゃる通りで、撓みました。台車枠が開いてしまって、用をなさなくなります。」と素直に認めてくれた。大きなものはその結果が早く出る。こういう方がいらっしゃるのは助かる。もっと大きな声で他の人達にも知らせてほしいものだ。

 HOなどの小さな模型であると、モーメントが小さく車重も軽いのでその撓み(長時間掛けると流れてしまい、永久的な曲がりとなる)は見えにくい。しかし、10年、20年というタイムスパンで見ると、駄目になることは必定だ。10年持てばよいのですと、断言する人もあるが、それでは困る人もいるだろう。

steel reinforced truck 先日見せてもらったOJの台車には驚いた。すべての部材に鉄筋が入っている。タミヤの六角シャフトを挿し込んであるのだ。これは熱処理してあるので、そう簡単には曲がらない。この写真の中に6本の鉄筋が入っている。
 3Dで中空の部品を作るのは、簡単である。筆者も思い付いたが、流れない結晶性プラスティックを使えばこれを凌ぐので、採用しなかった。

 結晶性プラスティック製の台車を大量に作って、友人に渡した。近々、素晴らしい車輌がロールアウトする筈で、楽しみにしている。

dda40x at 06:20コメント(3) この記事をクリップ!

2023年06月14日

リニアな人

 条件を変えても測定値は正比例だと考える人は多い。今回の件も、普段経験する圧力でも、その何万倍もある圧力でも、同じ挙動をすると考えているわけだ。正比例は、原点を通る直線に載る(これをリニアであるということがある)関係のことを指す。

こうかも知れない 測定値が2つあると、その2つを直線で結んで、安心する人がいる。その2つが近接していれば、外れではない可能性もあるが、何桁も異なれば駄目であろうことは想像に難くない。しかしこういうことをなんの躊躇もなくやり、対外的に発表する人がたまにいる。

原点を通るとは誰も言っていない 2点を繋ぐならまだマシな方で、測定値が一つなのに、原点と結ぶ人まで居る。原点を通るとは誰も証明していないことも多い。こうなると、一体何を考えているのか、ということだ。

 模型の長さは実物とは何十倍以上も異なり、質量は何千倍も何万倍も違う。材料が同じであれば、ヤング率だけが同じである。すなわち挙動は全く異なる。しかしながら、模型人の中でそこに気付いている人はかなり少ないと感じる。この国の理科教育は、失敗しているのではないかと考えたくなる。世の中は単純ではない。
 前回の友人も実物業界の人だったから、そういう世界からの刷り込みは大きいのだろう。

 模型に実物のような挙動をさせるのは、一筋縄ではいかないはずだ。

dda40x at 06:14コメント(2) この記事をクリップ!

2023年05月23日

floor plank

 思わぬ反響があって驚いている。オークの床にご興味がある方が意外に多い(正確な発音はオウクである)。

FLOOR PLANK  筆者が使用する床材 (plank)はこの寸法だ。プランクというのは厚めの板材を意味する言葉だ。海賊に襲われて海に落とされる時に歩く板がプランクである。床用のプランクはこのような断面を持っている。tongue and groove(凹凸がついている)であるから嵌まり込んで外れなくなる。この嵌合は絶妙な硬さになっていて、押し込まれると取れない程度になっている。

 斜めに釘を打ち込む前に、ハンマの尖った方で軽くコンコンと板の飛び出している部分を叩いて、凹凸をしっかり食い込ませる。そして釘を打つのだ。斜めに力がかかるので、かなりの勢いでピッタリと押し付けられるわけだ。

 最初の一枚は壁際で垂直に打たざるを得ない。接着剤を塗って動かないようにする。その時の釘はドリルで孔をあけておいて沈める。その頭はトリム材(壁の裾に張るボロ隠し材)で隠れるような位置に打つ。接着剤が固まってから床張りを始める。隠せない時は上から木栓を打って隠す。
 時々、壁からの距離を測定して、壁と平行に打たれているかを確認する。最後はテコでこじて寄せ、最初と同様に垂直に打つ。

 貼り終わったら、サンドペーパをかける。最初は40番、次は80番、仕上げは120番である。全体に1 mm程度削ることになる。これは手ではとてもできない。強力なベルトサンダを使う。かなりの電力量を消費する。18畳程度の部屋で、4 kWh程度である。体育館などでは大型の乳母車のような機械を持ってくる。3 kWほどの出力を持ち、削りカスが山になる。ベルトも10分程度しか持たない。昔は鉋(カンナ)を掛けていたのだ。


dda40x at 05:23コメント(1) この記事をクリップ!

2023年05月19日

床用塗料

tough enough to skate on 床には極めて硬い塗料を数回塗っては研いだ。体育館床用塗料で、缶の表面には、”tough enough to skate on"と写真入りで書いてある。体育館の床塗装用であって、全く隙間のない床ができる。


liquid plastic この種の床板は、日本の家屋ではまず見かけない。現在の家の床にも、全面にこの床板を張った。下地は19 mmの合板だ。専用の釘打機も持っている。太くて長い釘(51 mm)を、斜めに一発で打てる。その釘の頭はL字になっていて、保持力が大きい。靴履きで暮らしてはいないので、床は30年経っても新品同様だ。
 この Liquid Plastic は、塗り重ねることにより、硬いプラスティックの層ができる。厚さが0.6 mm程度になるまで塗った。かなり高価な塗料で、30年前の価格で1ガロン(4 L弱)が30ドルもした。

 この種の塗料は日本でも手に入る。これを模型製作にも使っている。木製キットの下塗りとして使うのだ。

 軟らかいバスウッドでできた車体を、これに漬ける。大物は少し薄めた液を刷毛でジャバジャバと沁み込ませる。吊り下げて乾かすとカリカリになる。それを細かいサンドぺーパで削って、つるつるにする。そのうえでサーフェサを塗って研ぐと、金属製と見間違えるほどになる。

 この方法をアメリカの友人に教えたら、たちまち拡がって、今ではごく普通に使われるようになったようだ。 

dda40x at 05:19コメント(4) この記事をクリップ!

2023年02月06日

続々 太いボイラ

 筆者がアメリカに居た頃に、このK4のボイラが太いということは聞かされていた。シカゴのMike Hill氏は6輌のカツミ製K4sをカスタムビルダに作り直させ、かなりの価格で頒布したそうだ。

 それを聞いていたにもかかわらず、筆者は西部の機関車に興味が向いていたので、現物を見ることがあまりなかった。一方10年ほど前から、三線式のスケール車輌が出廻るようになった。ライオネルの線路を走らせるので、急カーヴを曲がれるように一部のフランジがなかったりするが、上廻りはよくできている。本物の図面を渡して中国で作らせているので、ボイラの外形はとても良い。三線式は販売数がとても多いので、大抵はダイキャストである。時間が経つと壊れる可能性もあるかもしれない。

 カツミの旧製品のK4s パシフィックは、一言で言うと立派過ぎる。火室の大きさだけでこんなに印象が変わるものなのだ。それはチャレンジャについても言える。ビッグボーイの長さを切り縮めただけで、火室が大き過ぎるのだ。後に作られた韓国製、中国製のボイラの形はすこぶる良い。ボイラの形は例外なくシロナガスクジラのように真ん中が太いのだ。キャブの前は絞られている。
 ビッグボーイも近くで見ると、ボイラ中央部が膨れて飛行船のような感じである。

 今回、K4s をじっくり眺めた。横から見ている限りはなかなか良いものである。汽笛の位置、向きは興味深い。Tom Harveyの気持ちもよく分かる。


dda40x at 02:06コメント(0) この記事をクリップ!

2023年01月03日

ダイキャストの変質

 ダイキャストで作られた蒸気機関車の台枠が変形して、走らなくなったという記事があった。Mogul氏は経験ある模型人であり、ブラス板による修復は可能であろうと思うが、面倒なことである。

 戦後数年間に日本で作られたダイキャスト部品は、すでにほとんどが割れて壊滅したと思われる。有名なのはOゲージの軸箱である。EF58などに使われたものは原型を留めていない。ヤフオクなどによく出ているが、例外なく滅茶苦茶な状態である。これを修復するためのロストワックス製のブラス部品も出ていたが、末端までは届いていない。

 昭和30年代に輸出用に作られた部品も、かなり怪しい。少しずつ膨らんでいるのである。当鉄道にもかなりの数が在籍していたが、全てブラスのロストワックス部品に交換した。

 亜鉛ダイキャスト鋳物は少しずつ膨らむ。合金に不純物として鉛などが入っていると、結晶の界面が酸化されて金属結合が断ち切られ、割れてしまう。アメリカ製のはかなり持つと言われていたが、戦前のライオネルの高級な模型(Oスケールのハドソン)もどんどん割れてしまい、現存するものは極めて少なくなったという。

 最近は中国製の模型が市場に溢れている。それらはダイキャストとプラスティックの組み合わせでできているらしい。今後20年のうちに何が起こるか、観察したい。

 ブラス製で正しくハンダ付けされた模型は、1000年超の寿命を持つだろうことは疑いがない。おそらくそういう意味では、ブラス製模型の復権はありうると思っている。但し、今までのような板金を組み合わせて立体を構成する手法は一部となり、大半は3Dプリントを駆使した銅合金ロストワックスとレーザで切り抜きされた板との組み合わせという構成になるだろうと予測する。そうなると、必然的にハンダ付け手法も進化する必要がある。

dda40x at 01:03コメント(2) この記事をクリップ!

2022年12月10日

ABS の劣化

Pullman-Standard 60ft boxcar kit by US Hobbies 思わぬものが見つかった。1970年代に発売されたプラスティック製のキットである。50 ftの Boxcar でPULLMAN-STANDARD の当時の新車だ。製造元は US Hobbiesであり、Kemtron の社長ケマルヤン氏がMax Grayの会社を引き継いで作った会社だ。彼は1976年に亡くなった。これも安価で手に入れたので、ほとんど記憶に残っていない。冷暗所にあったので、劣化していないと思った。しかし箱を開けて細かい部品を手ではずそうとしたところ、ランナの方が折れた。これは要注意のサインで、薄刃のカッタで切り離したが、取り付けようとすると割れてしまった。結局細いものはすべて廃棄した。

LDLD2 全体にもろくなっている。実はほぼ同型をもう一輌組んだのを持っている。それを参考にしようと紙袋に入れて持ち帰ったが、自室で紙袋が破れた。ほんの30 cm弱だが、木の床に連結器から落ちた。 

time-related deterioration この連結器はバネで実際に縮むように出来ており、十分な緩衝力があるから壊れるはずはないと思ったが、妙な音がして連結器の付け根付近から折れてしまった。素材が劣化しているのだ。これは接着剤では直らないから、その縮む部品をブラスで作り直すしかないと覚悟した。
 上記リンクの貨車は自作だからエア・ダンパがついているが、このキットにはそんなものは無い。押し込むと、手を放した瞬間にぴょこんと飛び出すが、適度な摩擦でそれほど速くは飛び出して来ない。

 このキットを組み始めたが、やはりもろい。大きな部材は安心だが、細いものはだめだ。溶剤で溶かして付けるが、期待はできない。可塑剤が加水分解されている可能性が高い。細かい部品はブラスで作るしかない。  

 当鉄道にはプラスティック製のものは少ない。経年劣化が予想されたからだ。いずれこのように割れてくると確信したのだ。ABS製と書いてあってもこの程度である。たった40年でこの調子だから、この先どうなるのだろう。
 非常に虚しい。これは読者諸氏のプラスティック製模型の未来を暗示している結晶性でないプラスティックは、全て同じ運命をたどる 

dda40x at 12:10コメント(2) この記事をクリップ!

2022年12月02日

続々 測定をするということ

 前回のグラフは、いくつか机を並べただけの凸凹のある線路上で採られたものだ。曲線の半径も不明だし、その材質も明らかでない。レイル面が研いであると信じたいが、そうではなかったという情報もある。機関車のタイヤはよく洗ってあるのだろうか。こうなると何をしているのか、本人もわからないだろう。多分、言いたいことは、「張力計を入手したので、テレメータ化しました。」だろう。すなわち、これは測定ではない。牽引力を調べたいなら、平面上で連結器と車止めを張力計で結べばそれで解決だ。効率なら、標準貨車を牽いて斜面を走らせる必要がある。曲線抵抗は別の話題である。

 筆者は小型機の伝達効率を調べる時、サンプルとなる標準列車を用意した。20輌の質量、台車、車輪、潤滑剤は全く同一である。質量はすべて355 gにした。それらを斜面を滑走させて平坦線を転がし、その到達距離がほぼ同じであることも確かめてある。

 均一な斜面で引き上げるときの張力を測定するのだ。目盛りは動かず、一定値を示した。速度も一定値である。このような状況でないと、何の意味もない。効率という概念がわからないまま、「調べた」という記事もどこかで見たような気がする。 

 均一な斜面を作るのは大変であるが、正しい測定値を望むなら、やらざるを得ない。先日OJゲージの方から相談を受けた。アルミアングルで補強して線路を作ったのだが、少し撓むという。見るとまずい設計だ。

反らせない工夫 この図の 水平部分は、ほとんど剛性の増大に寄与していない。どうせなら、平角板を路盤側面に貼るほうが良い。ここで合板を厚くしても、ほとんど意味はない。 
 さらに、ここでアルミ材を使うのは賢明でないことにも気づかねばならない。鋼板は安くて堅いから、それを用いるべきである。アルミはヤング率が鋼の 1/4 ほどしかない。薄い鋼板を横からエポキシ接着剤で直接貼ってしまえば良い。鋼板なら薄くても十分だ。縦の長さの3乗で効く

dda40x at 12:02コメント(0) この記事をクリップ!

2022年09月16日

続 HOのギヤボックスの見分

 いくつかコメントを戴いているので、それに答えねばならない。

 現物を見たわけではないので、一般論を紹介する。50年以上前、KTMはいろいろな場所で展示運転をしたらしい。1週間、走り詰めだったそうだ。ギヤはもったが、ギヤの前後に挟んだPOM(デルリンという商品名が有名)のワッシャが擦り切れて、中に綿くずのようになって詰まっていたそうだ。連続使用すると、熱で少しずつクリープ(塑性変形していく)して薄くなり、最終的には糸くずになったわけだ。

 先回のギヤを連続運転すると、熱の逃げ場所がない。摩擦熱は相手のウォームホィールに蓄積され、クリープが起きやすくなる。長時間走って急停止すると、ウォームホィールにはウォームの形が転写されるかもしれない。そうなるともう起動できない。

 材質は吟味する必要がある。ウォームが快削鋼、相手はリン青銅であれば、このようなことは起きない。もちろん正しい潤滑剤が必要だ。
 モヂュールが小さいというのも、この種の事故が起こりやすい条件の一つである。大きなモヂュールであれば、変形は起こりにくいし、起こったとしてもその影響が小さい。モヂュールが小さなプラスティックギヤは、事故を誘発する。もちろん、進み角が小さくて効率が良くないから、発熱するというのもあるだろう。

 もう一つ気になったのは、2軸を結ぶドライヴシャフトが中心にないことだ。台車のひねりでどのような影響があるのかは知らないが、左右対称にしておけばいろいろな点で自然である。

 個人の住宅の中で数分間走らせておしまいなら、かなりの期間、よく走るであろう。


dda40x at 09:16コメント(0) この記事をクリップ!

2022年08月19日

stress release

 日本製のディーゼル電気機関車は繊細な仕上がりで、素晴らしい出来である。しかし、全体がエッチングされた板で出来ているので妙に柔らかい。剛性がないので、ボディを持つと少し撓む感じがする。機関室が狭くなると隙間が見えたりして気分が悪い。仕方がないから、内側にstiffner(補剛材)を入れて剛性を大きくする。

stress release by etching アメリカ製のキット(CLW)の板は堅い。そう簡単には曲がらない。それを切り開いた残骸が残っていたので、裏を見てみる。
 表面をエッチングすると、その部分の応力が開放され、板が微妙に曲がる。中間にはその模様が少し見える。これが気になる人がいるので、日本ではエッチングする板は焼き鈍した板を用いる。だからクタクタなのである。衝突すると、かなり悲惨な状況になる。

 アメリカ製の場合、板は快削材である。すなわち堅い。そう簡単には曲がらない。組む前に板が微妙に反っていれば、修正を施してから組むだろうが、その歪みは微々たるものだ。組んだものは反っていない。
 この写真の筋は微妙な曲がりを補正したものである。左の方には、うっすらと歪みが見える。

 もう日本のメーカが模型を作って輸出するとは思えないが、堅い材料で作って欲しいものだ。焼き鈍したものを使うのは、やめるべきだ。軽衝突でさえ、歪んでしまうのだ。しかも重い機関車は、持つところが悪いと凹んでしまう。 

 以前にアングルがエッチングで溝を掘って曲げやすくなっているのを紹介した。くたくたで全く役に立たない。そういう部品こそ、快削材の板で、焼き鈍しせずに作って堅くすべきだ。多少歪みが出ても曲げるのだから問題ないはずだ。(本来はエッチングの溝無しで曲げて欲しいが、その腕がなければエッチングで少し溝を掘っても良い、という意味である。) 
 要するに、エッチングするものを全て焼き鈍し材から作るのはいい加減にやめるべきだということだ。 

dda40x at 08:19コメント(0) この記事をクリップ!

2022年06月08日

ギヤボックスの変形?

 ギヤボックス購入者から意外な質問があった。

 ギヤボックスの外形を削る必要があって、水研ぎをした。組立てたら、噛み合わせが渋くなった。

 というものである。これは想定外の操作である。水研ぎをしたとあるが、水研ぎとは何が目的なのかを考えねばならない。耐熱性の低い塗装、素材を研磨するときは、摩擦熱の影響を減らすために水を付ける。もちろん削り粉の始末が楽になる、ということも否定できないが、第一の目的は冷却である。一方、ナイロンは耐熱性のある素材で、摩擦熱程度では何ら問題ない。

 この件の原因であるが、次のようなことであろう。
 ナイロンは水との親和力が大きい。水を含むと内部の結合状態(水素結合)に変化が起きて、塑性変形(クリープ等)が起こりやすい。力を入れて押し付けて削るので、微妙な寸法変化が起こるだろう。それをそのまま乾燥すると軸距離の変化が見られるということであろう。言うまでもないが、組み合わせ面を削ってはいけない。

 削るときは乾燥状態で、とお願いしたい。これはマニュアルに補筆せねばならないだろう。

 その購入者からは、削らなくてもよい、薄いギヤボックスの製作を迫られている。それは、色々な点で難しい。

dda40x at 06:08コメント(0) この記事をクリップ!

2022年03月28日

続 糸鋸盤

 古いベルトは、ウレタンのオレンジ色の丸ベルトだったようだ。「ようだ」というのは、よく分からないからである。痕跡を留めないほど、劣化している。
 硬い消しゴムかと思ったが、多少粘り付く。そういう塊がいくつか見つかるが、ベルトの形はしていない。一度融けて液状になり、それが表面張力で丸くなり、重力との兼ね合いでまんじゅうのようになったのだろう。
 やはりウレタンは使うべきではない。

NBR belt-drive 今回買ってきたのはNBR(ニトリルゴム)である。これは耐油性で、そう簡単には変化しない。ホームセンタで、様々なサイズを手に入れることが出来る。紐を巻いて円周の長さを知り、そのサイズを買えば良い。円周長で10 mm刻みで売っている。安いものである。

 これで、3台の機械が専用機となった。博物館の作業台は十分に広いので、便利に使える。

 切り粉が飛ぶので、その処理を考える必要がある。また、ストロークが30 mm程度なので、刃の使ってないところがもったいない。折れたら、未使用部分を、ブラスの針金をハンダ付けして再利用するというのも現実的アイデアだろう。   

dda40x at 03:28コメント(0) この記事をクリップ!

2022年03月18日

modern tank car

NJ Custom Brass tank car このタンク車は質量の90%以上がスクラッチ・ビルトである。


 20年ほど前、アメリカの友人に相談を持ちかけられた。
「このタンク車2輌、なんとかならないか。」
 それは長短のタンク車で、どちらも壊れていた。ハンダ付けした部分は、100%近く、はずれている。自然に壊れたと言う。
「日本製なんだぜ。この下手くそなハンダ付けは、一体何だ?」と言う。タンク・ボディはペコペコに凹んでいる。エンドも同様で、持つと歪んでハンダが外れると言う。手摺りは全て欠落し、ボルスタ部分はもともとハンダが廻っていなくて、壊れている。上部のプラットフォームも、平面性が無い。この作りから判断すると、たぶん横浜のP社製である。

 これはNJ Custom Brassが輸入したものだ。NJは、New Jersey ではなく、Nick と Jackという2人の人名である。とにかく、材質は最低である。タンク・ボディはt 0.3 の焼きなまし板で、タンク・エンドも同様である。持つと凹んでしまう。驚いたのは、その継ぎ目である。エンドは嵌め込まれてハンダ付けしてあるはずなのに、ぽろりと取れた。するとタンクボディはぐわっと開いて、反対側も取れたそうだ。日本製で、こんなひどいハンダ付けは、初めて見た。全くしみ込んでいない。修理は不能でスクラップになった。

 エンドをどのように作るか迷っていたところ、仏壇屋の友人を訪ねた折に、ろうそくの皿らしきものを貰ってきた。耳を落としたら、ぴったりであった。t 0.4板から新たなタンクボディを切り出して、3本ローラで巻いた。加工硬化するから十分堅くなる。 

 エンドを嵌め、50%ハンダをたっぷり付けて、削って丸くした。上のデッキ部はすべて作り直した。ここには硬い銀ハンダを使った。炭素棒で加熱し、完全に取り付けたから、もう壊れることは無いだろう。

 ハシゴは、先の照明塔の部品が余っていたので、組立てて曲げた。側面の配管は、まっ直ぐでないと気分が悪い。硬い長い線を先に取り付け、曲がりが出ないように、あとから0.8 mm角線の支えを銀ハンダで留めた。非常に丈夫である。


dda40x at 03:18コメント(2) この記事をクリップ!

2022年03月16日

PRR H21 hopper

 発掘された貨車にペンシルヴェイニア鉄道のH21 ホッパ車があった。これは60年前に安達製作所が作ったものだ。 少ない資料から、手際良く作られている。細かい部分は省略されているが、塗装して走らせるには、申し分ない。

PRR H21 (3)PRR H21 (4)PRR H21 (2) 筆者はこの形式が好きであった。過去にブラス製は1輌しか入手できず、Atlasの塗装済プラスティック製を求めた。細かい資料を得て作ったのだろうから、細部まで出来ているような感じはする。しかし、気に入らなかった。台車の性能が悪いことは承知の上であって、取り替えてある。他に、どうしても我慢できないことがあった。

 模型は本物とは異なり、やや高いところから見ることが多い。すなわち、上からの見え具合は大切なのである。この貨車は、プラスティック製だから、宿命として、肉厚である。しかし、工夫して薄く見せることは可能であったはずだが、そのままである。特に、角の部分の当て板が許せない。こんな形であろうわけがない。

PRR H21 (5)corner plates 石炭を載せてあるのだから、工夫の仕方はいくらでもあったはずだ。左のブラス製は薄さが出ていて、素晴らしい。右の写真を見ると、2 ft ナロゥの hopper のような感じを受ける。

 この厚さが気に入らなくて、このAtlas の貨車は、棚に入れて横からしか見ていない。縁を斜めに削いでやると多少は見られるかも知れない。そのときは、角の当て板は金属製にするべきだろう。せっかく細かく作ってあるが、台なしである。

 ブラス製には多少のディテールを足すつもりだ。ディカールはDr.Yにお願いするしか無い。台車は本物の図面があるので、S氏にお願いして、3Dプリントにしたい。今は仮にAndrewsを付けてある。アンドルーズ台車は時代的に合わないものである。

 塗装されているが、接着が甘く、部品がポロポロと取れてくるのには参る。全て外してスーパーXで付け直した。このような車輌を走らせると、脱落した部品を踏んで、事故が起こることは必定である。
 そういう点では60年前の日本製は、間違いがない。 

dda40x at 03:16コメント(2) この記事をクリップ!

2022年02月22日

ハンドル車の破損

 博物館の小型フライス盤のZ軸を動かすハンドル車(英語では hand wheel という)が壊れた。ここは力が掛かる箇所だ。フライス盤のクイル部分の質量は、10 kg以上ある。それを上げ下げしている。もっとも、改造してガス・スプリングで支えているから、かなり楽にはなっている。とは言うものの、他のハンドル車に比べたら、格段に力がたくさん掛かっている。

broken hand wheel 作業中にボロリと欠けてしまった。無茶な操作をした覚えは無い。外すとこんな状態であった。オリジナルは握りが回転しなかったので、力が入らなかった。回転する握りを購入して付け替えてある。ネジをM5からM6に切り直した。しかし、それが割れの原因になったわけではない。プラスティック製のハンドル車のねじ込み部分の構成が良くない。ブラスのインサートを入れてある部分を、少し太くしておくべきだったろう。力が掛かるたびに、周りが疲労して壊れたのだ。賢い設計ではない。

 鋳物のハンドル車はモノタロウあたりで買える。径を少し大きくして100 mmとした。またM5ネジを拡大し、M6を切り直した。
 購入したハンドル車はボスの肉が厚いので、10 mmほど削り落とす必要がある。掴みにくいからアルミ板で当て物をして、3つ爪で廻して、削り落とした。材料は快削であるから楽だ。切り粉は新聞紙で受けて、ブラス屑と混じらないようにしないと、引取り価格が下がる。   
 キィ溝を付けねばならない。本当は旋盤上で、キィ溝カッタを使って往復動で切るのだが、面倒なので、縦フライスで切り込む。あっという間に終わる。溝の底は丸くなるので、浅めにしておいて、角ヤスリで仕上げる。多少の丸い隙間があっても何ら問題はない。
  
   

 読者諸氏の機械のハンドル車も、いずれ壊れると思う。早めに交換の準備をされるべきだろう。これも力を入れている時に壊れると、怪我をする羽目になる。交換するときは大きめのハンドル車にすべきだ。それと、交換ついでにガス・スプリングを装着することをお薦めする。安いものであるし、工作は容易だ。

dda40x at 02:22コメント(0) この記事をクリップ!

2021年08月20日

シリコーン・チューブについて

 様々な情報が寄せられた。その中でやや視点が異なるものがあったので紹介したい。あまりにも長いので短くした。一式陸攻氏のコメントに対するものである。

 ギヤボックスのウォーム軸端とモータ軸端との距離が小さいと、チューブのそこそこある剛性がトルクアームの役割を多少担っているので、前後進で差が出にくいという運の良い状況になっていたのではないかと思われます。そういう場合は少ないのですが、その方は一般的に通用すると思い込んだのでしょう。
 対する一式陸攻氏は、その運の良い状態がそこにあることに気付かずに、一般論を話しているので噛み合わなかったものと思われます。

 おそらくこの推測は当っていると思うが、いずれにせよ、軽負荷のときに限られる。重負荷ではゴムは捻じられてあらぬ形になる。この件については後述する。
 それでは軽負荷であれば万々歳なのか。軽負荷ではゴムの巻き癖の影響が、相対的に無視できなくなるだろう。01175氏のコメントにあったように、ギヤボックスがコトコトと動いているのに気付かないだけなのかもしれない。
 大型の 4-8-4 や 2-10-4 に装備するものとして適切かどうかは、自明であろう。もちろんボイラに十分補重して、勾配で長い列車を牽かせることを考えて欲しい。

 もしも、イモンが金に糸目を付けずに良いものを提供するという信念を持っているなら、シリコーンゴムのチューブをまっすぐ作って(決して不可能ではない)売ればよいのである。

silicon and silicone Silicon シリコンとSilicone シリコーンの現物の比較である。シリコンは、硬い結晶である。特定の方向には、エッチングしやすいので、ダイヤモンドの砥石刃で薄く切り、模様を焼き付けてエッチングしたり、特定の元素を沁み込ませたりする。これは切り残した部分。
 対するシリコーンはゴム状である。シリコーンは雨が入らないように絞り出して使う防水シール材である。英語の発音も似ている。前者はスィリカンで、3つ目の母音はなくなって2音節になることが多い。後者は語尾をコウンと発音する3音節の言葉である。どちらもアクセントは前にあるからややこしい。


dda40x at 08:20コメント(0) この記事をクリップ!

2021年08月16日

シリコーン・チューブ

 友人から、
「感心しない動画があるから、見たらどうか」
と言ってきた。これである。

 呆れてしまう内容で、見た後、気分が良くなかった。この動画を編集した人はどういう人なのだろうか。あれで調子が良いと言うのは、どうかしている。
 そもそも工業製品のチューブは、その寸法を考えると巻いて出荷する以外なく、生産されてすぐ巻くはずだ。ゴム弾性を示すものだから、加硫を施すわけだ。成分が異なるので、天然ゴムの仲間のように硫黄化合物を使うのではないが、ある薬品で架橋させてゴム弾性を作り出す。そのプロセスは一瞬では終わらないので、リールに巻いてからも多少は続き、巻き癖が付いてしまう。

 シリコーン・チューブはゴムではありません、とか書いてあるが、意味不明である。英語でもsilicone rubberシリコーン・ゴムと言う。ゴム弾性を示す物をゴムというのは正しい。正確にはエラストマ elastomerというが、そんな言葉を知っている人は少ない。天然ゴムを始めとする炭素骨格を持ったゴムではありません、と書くべきだろう。また、シリコンとシリコーンが混在しているが、これらは別物だ。 

 巻いているものを伸ばして使えば、当然回転にはむらが出る。OJの友人の模型は、それが原因で押しても動かなかったのだ。

 ところで、この動画中、ユニヴァーサル・ジョイントはうるさいということにしてあるが、どう見てもその音は位相が間違っていることに起因する。

 この動画では、いろいろな意味で、良くない事例をたくさん見せてくれている。送ってくれた友人はサイエンティストである。彼は、
「これが良いという人は、観測能力に問題がある。」
と言う。
 要するに目が見えていない、と言っているのだ。そういう筆者も視力が低下して居るから、大きな事は言えない。しかし、チューブの曲がりに起因する不都合と、ユニヴァーサル・ジョイントの位相の間違いによる不都合は、よく見える。 

dda40x at 08:16コメント(5) この記事をクリップ!

2021年07月27日

続 枕梁を更新する

 この枕梁は、快削ブラスの角棒から削り出したものを作ったことがあるが、上の3つの峰の部分を作るのが面倒で、一つ作ってやめた。

 その後10年も走らせていると、破損台車が20台以上溜まってしまい、なんとかせねばならなかった。もう供給が少ないので、修理する以外無いのだ。
 この製品は昔は安かったが、今はバネ入れの人件費が高いらしく、完成品は手に入りにくい。バラの状態では売っていたが、買う人がなく、それも消えてしまった。折れるから、枕梁だけは売っていたが、それも見なくなった。唯一の入手法は、コンヴェンション会場のスワップミートで、台車目的で中古貨車を買って、車体を捨てることだ。

 こういうものこそ、ナイロンで3Dプリントすべきである。見かけ上大切な、3つの峰と嵌め合い寸法だけは気を付けて、他は強度第一の設計にした。
 枕梁が割れるのには、もう一つのファクタがある。キングピンの頭だ。もともとは4-40 (2.8 mm径) というインチネジのはずだが、日本ではM3のネジがちょうど良い太さで、それを使うように車体にメネジを立てる。このM3の頭は、台車枕梁の穴にぎりぎり入るので、ねじ込むと抜けることがないから便利だと思った。しかし、ねじ込むことによってストレスを与え、ヒビを生じさせるのだ。枕梁の穴には抜き勾配があって、ネジを締めると食い込んで広がるのだ。筆者はそれに気が付いて、その工法は止めたが、その後遺症が出ているのだろう。この方法は、直ちにやめるべきだ。
 もう一つ、光による影響がある。塗装してない台車は劣化が早い。 中古貨車の部品は劣化していることが多い。

fixed bolster  例によってバネを嵌めるのは大変だが、デンタル・フロスを使った。台車は古く、埃が積もっているのはお許し願う。 

 一部の台車にはボールベアリングを仕込んである。車重が1 kgもあるような貨車にはそうせざるを得ない。3本のバネは中くらいまで撓んでいる。浮いている状態だから、ポイントを渡るときの動揺が実感的である。

dda40x at 07:27コメント(0) この記事をクリップ!

2021年03月15日

続 アメリカ製の切断機

shear 1 もう一つ、根本的なミスがあった。
 刃当たりを調整する送りネジがある()。それはステンレスネジであった。筆者はステンレスネジは原則として使わない。伸びたりつぶれたりするからだ。ネジ穴から抜けなくなることがありうる。この写真の()は先回の面取りの足らない部分である。
 今回の送りネジは、締め込んで相手の鋼製ブロックを押すのだが、馬鹿力で締めた跡があり、先端がわずかにつぶれて太くなっていた。ネジがつぶれると太くなると同時に、ピッチが狂うから始末に負えない。こうなると緩ませて抜くことは不可能だ。こういうところには、鋼製ネジを使わねばならない。仕方がないから、時間を掛けて先端のネジ溝をヤスリで削って拡げ、抜き取った。ひどい話だ。

 このステンレスはオーステナイトと云う状態で、塑性変形が起こりやすい。力を掛けてはいけないものなのだ。ステンレス・ボルトで締めると時間が経つと緩むのはこのせいだが、日本ではそんなことはお構いなしで、あちこちで使われて事故を起こしている。
 近所で上水道の大規模水漏れ事故があった。交通を遮断して掘り返すことになり、自治会としての立ち合いを求められた。見るとおバカなことに、このステンレスボルトが使われていた。水道事務所の工事担当者は、
「緩んでいるのは不思議だ。締め付けトルクの記録もあるのに。」
と言うので、このことを教えたら大変驚いた。
 後日上司から感謝の電話があった。今後すべてのステンレスボルトを、順次高張力ボルトに切り替えると言っていた。ついでに濡れるところではステンレスと鋼とを混用しないように釘を刺した。今まで税金をドブに捨てていたのだ。世の中こんなものらしい。

 アメリカ製の物で、間違って使われているのを見るのは初めてだ。アメリカ人はステンレスボルトを使うのに、ためらうことが多い。いろいろな弊害を知っているのだ。これはおそらく、指示間違いであろう。

dda40x at 03:15コメント(2) この記事をクリップ!

2021年03月13日

アメリカ製の切断機

 複数人でアメリカから取り寄せた切断機について書きたい。動画を見て、設計の妙に驚き、注文した。日本製のものにはない工夫が凝らされ、どうしても使ってみたかった。過去に遠藤機械製の切断機を改良する工夫はしたが、根本的に異なる発想から出てきた製品を見たかったこともある。
 消費税の10%を逃れる術はなかったが、たまたまセールで割安であったのと、多人数で運賃を割って大幅に節約できたのは有難かった。今回の幹事は、このブログにもよく登場するF氏である。

 生産地のオクラホマは、未曾有の大雪で交通が1週間ほど遮断され、発送には時間が掛かったが、無事に到着し、F氏の献身的な努力で無事配送された。一つだけ部品が足らなかったが、電話を掛けてすぐに解決してくれたのは有難かった。

Shear1 鋼製の本体に、硬いアルミ合金製のプラットフォームと足が付いている。黒染め処理で美しいが、作動状況は芳しいものではなかった。可動刃が微妙にせり出しやすく、固定刃の上に乗ってしまう。そのまま押し込むと刃がへたり、修復が難しい。上の可動刃を安定させ、一定の位置で降ろすようにせねばならない。何度も分解して検討した。この写真では乗り上げていない。ちらりと四角の金属板が見えているのは、後述するバネを兼ねたシムである。 

 問題点はいくつかあった。
 設計は素晴らしいと思う。しかし、クラフツマンシップには大きな疑問点があった。良いものを作って、客を喜ばせようと考えているようには、見えない。工員の質が悪いのである。
「言われた通りに組んだから、これでいいだろ?」と言わんばかりだ。

 分解して気が付いたのは、バリが取ってないところがあることだ。面取りが不完全だから、直角に仕上げた入隅に押し付けても、隙間から光が透けて見える。密着させるためには、双方の面を良く仕上げるのみならず、出隅の角の面取りを念入りに行う必要があるのは常識だ。また、削りクズが残っていて、はさまっている。


dda40x at 03:13コメント(0) この記事をクリップ!

2021年01月28日

しなやかな太い電線 

woven wire 大型の変圧器により、大電流のハンダ付けができるようになった。しかし炭素棒を保持する手元のテフロン被覆電線が固くて、取り廻しが難しい。置くと弾力ではね返り、落ちてしまうことがある。熱いものが落ちるのは絶対に避けねばならない。アース線は多少固くても困ることはないが、しなやかな太い電線が欲しい。

 電線の断面は、5.5平方mm欲しい。3.5では熱くなって、どうかなりそうだった。電線のカタログを順に見ていて、平編線に行き当たった。この線は厚さが1.4 mm、幅が9.6 mmで、細いΦ0.12 の線480本で出来ているから、しなやかである。
 被覆をどうするかが問題だ。柔軟な素材でないといけない。この編んだ保護チューブは見かけは細いが、長さを縮めると太くなり、先の編み線を入れることができた。

 細かな穴があるから完全な電気絶縁はできないが、使ってみてショートすることはないから十分だ。結線は圧着端子で行う。その時、末端を折り曲げて細くし、端子に押し込む必要がある。

 ほかにもしなやかな電線はあるようだ。Dr.Yのお勧めは、これだ。
細い線を使っている。普通の線はΦ 0.17程度の線を使っているが、これはΦ 0.08だそうだ。概算で1/16以下の剛性しかないことになるから、柔らかいだろう。 

dda40x at 01:28コメント(0) この記事をクリップ!

2020年11月29日

続 "しょうなんでんしゃ"の記事

 実物車輌がレイルの上に載っている時、車輪、レイルともにわずかに凹む。その量は目には見えない程度だが、確実に凹む。これは弾性変形である。
 D型蒸機機関車の動輪半径は小さく、C型蒸気機関車では大きい。同じ粘着重量でもD型の方が粘着力がある。それは動輪が小さいことによる。半径が小さいもので押すとよく凹むのである。それによって摩擦力は増大する。米国の入換機には、動輪が極端に小さなものがあったが、それはこの摩擦力が大きいことを狙ったものだったのかもしれない。

 こういう話が模型でも通用するだろうか。ここまで書けばお分かりのように、模型では、軸重による線路の弾性変形などは完全に無視しうる範囲にある。しかし、こういう話をとくとくと語る模型人が居る。それは実物の話なのだが、模型でも起きていると言うのだ。それを信ずる人も、信じがたい話だが、多少は居る。この種のファンタジィから出られない人なのだ。   

「実物をそのまま縮小した模型」というのもよく聞くフレイズだ。本人は正しいと思っているが、車輪の厚みを考えていないから、台車の内側に当たる。昔、吉岡精一氏は、「実物を縮小したら模型になると思っている人は、ソリッドモデルでも作っていなさい。」と言った。その通りなのだが、この現代においてもその呪縛から逃れられない人はかなり居る。
 吉岡氏はさらに続けた。「実物の図面を持って来て、それを元に作るというのは、実は難しいことではないんだよ。頭を使う必要がないからね。走る模型を作るには頭が要る、ということが分からない人は多いんだよ。」

 Low-Dの設計にはかなりの時間を掛けている。初めは2次元の図面だけで判断していたが、後に3Dの画面で覗けるようになった。設計は完全に正しく、最初のロット1万軸は、国内外でたちまち捌けた 。曲線での抵抗は格段に減り、神戸の運転会で好評を得て、国内ではデファクト・スタンダードになった。その後増産され、3万5000軸強が出て行った。アメリカの富豪は一人で4000軸も買った。利益を考えていないから、価格は十分に安いが、受注は製造所の景気に左右されるところが問題だ。

 模型の線路は十分に堅く、凹まない。車輪も凹まないから、うまく設計すれば1点接触に出来る。RP25ではそれができない。  

dda40x at 11:29コメント(0) この記事をクリップ!

2020年08月21日

非金属製車輌の末路

Sway-backed この郵便車は、車齢36年である。American Standardの社長が連絡してくれて、購入した。硬質発泡ウレタンの鋳物を機械加工してある。裏側をフライスで削って、床板、窓ガラスを嵌めるようになっていた。よくできたキットであると思った。

 表面は彼の工夫により滑らかで、塗料ののりも良く、工作は容易だった。接着はエポキシ樹脂である。もともとが軽過ぎるので、床下器具は重い物を使っている。全質量は1.2 kgほどであるから、標準的な重さの客車となった。急行列車のheadend(機関車の次位)に付けてかなりの距離を走った。数年前車輪を更新したが、それを塗装をするのを忘れていることに今頃気付いた。

 建造して10年ほどで、何かおかしくなってきた。いわゆる sway-back (弓なりに反ること)になってきたのだ。社長のRalph Brownに連絡すると、
「不思議だ。そんな例はまだ聞いていない。」と返事が来た。
「今度持って行くから見てくれ。」と連絡したのだが、いろいろな都合で、その後彼とは会うチャンスがなかった。大した価格ではなかったので良いのだが、癪にさわる話ではある。急行列車の鋼製郵便車が垂れ下がっているのは、あり得ない。この時は、まだ垂れ下がりは大したことはない。

 その後組んだ彼のキットには、すべて中に金属板(鉄板、ジュラルミン板など)を仕込んで、垂れ下がりに抗うようにしている。おかげで、垂れているのは1輌だけに留まっている。


dda40x at 08:21コメント(2) この記事をクリップ!

2020年07月12日

続 3D プリンタで用いる樹脂

 ポリエチレンはどうだろう。柔らかく、しなやかな買い物袋を想像すれば良い。流れて役に立ちそうもないが、意外なことにポリエチレンは結晶性なのである。結晶性の物は、高分子鎖のあちこちで、同種の分子鎖が寄り添い、固まって動かなくなっているのだ。そう言えば、ポリエチレンシートは、僅かに白く濁っている。原則的には、分子鎖が近づきやすく、横に大きな突起がない高分子が結晶性を持つことになっている。

 ポリエチレンのフィルムを切って短冊にし、それをゆっくり引き延ばしてみよう。白くなって、引っ張っても切れにくくなるはずだ。引っ張られて長い分子が整列し、分子間距離が小さくなって結晶し始めたのである。結晶化が進むと白く濁るのだ。その時、熱くなる。自由な分子運動ができなくなるので、エネルギィを捨てざるを得ないからだ。荷造り用として売られているプラスティックの薄いテープ状のギシギシした紐は、まさにこれである。ほとんど伸びない。長さ方向には極めて強いが、縦裂きは容易だ。長さ方向にずらすには、結晶構造内の分子間力を全長に亘って同時に切る必要があるが、縦に裂くと、一つづつ切れば良いからである。この紐状のものを加熱すると、くちゃくちゃと縮む。エネルギィが与えられ、分子が束縛から解き放たれて自由に動いたからだ。結晶化すると少し密度は大きくなる。包装用紐の巻いたものは、意外に重いことに気が付くだろう。 

 ポリエチレンは何もしなければ結晶化しにくいので軟らかいし、軸受部分の摩擦による発熱にはとても耐えられない。無理やり伸ばさない限り(これを延伸という)結晶化しない。また、耐熱性がなく、塗装、接着の困難さにより、模型材料には使われることはない。

 他にはポリプロピレンがある。これは形が異なるものが3種あり、その一つは極めて優秀な結晶性を示し、身の周りにたくさん使われているが、模型用には適さない。接着塗装が難しいのだ。ポリプロピレン製のコンテナなどは、重い物を載せても形が崩れない。

 さて、模型用として実用的な結晶性プラスティックの例を挙げよう。POM(デルリン、ジュラコンなど)、ナイロンなどが有名である。これらはある温度で急に融けるように見える。それまでは、形はほとんど変化しない。隣の分子と固く結びついているからである。即ち、常温では流れにくい。歯車、カム、リンクなどに適する。

 台車の材料は結晶性プラスティックであったほうが良い。Oスケールの場合、軸重は5 N(約500 gw)を超える場合がある。放置されていても台車がヘタることがあってはならない。もしこれがポリスチレンなら、徐々に歪み始めて、20年もすれば、あらぬ形になる可能性がある。


 いわゆるPETボトル(これをペットボトルと言うのは正しいとは言い難く、外国では通用しない場合が多い。英語では、ピー・イー・ティー・ボトルという)は透明だが、ある温度に保つと白く濁って堅くなる。結晶化したのである。一部のボトルのネジ部が白いのはこの方法による。ネジが内部の圧力によって抜けないようになっている。

 3Dプリンタでは、ナイロンが適する。ナイロンはとても堅く、摩擦も少ないから台車に適する。ただ、ナイロンは水に濡らすと、流れる可能性がある。要するに、濡れた状態で極端に大きな力を掛けると、塑性変形する可能性があるのだ。水に対する親和力が強く、水和により分子間力が弱まってしまう。高分子どうしを結び付けていた水素結合が水との結合に振り向けられるからだ。
 染色は容易だ。染料は水と同じく、この高分子に電気的引力で付きやすいからである。


dda40x at 07:12コメント(3) この記事をクリップ!

2020年07月10日

3D プリンタで用いる樹脂

 3Dプリンタでいろいろなものを作ってみた。細かい造作を必要とするものはアクリル樹脂で作ったが、台車はそうはいかない。台車にはいつも力が掛かっている。要するに車重を支えているし、走行時は様々な角度から加速度が与えられるから、瞬間的にはかなり大きな力が掛かる。へたらない材料で作る必要がある。



 合成樹脂は熱可塑性熱硬化性に分かれる。前者はいわゆるプラスティックであり、加熱すると流動する。後者はベークライトで代表されるような加熱しても融けない樹脂である。元々は、plasticとは、こねて形を作れるという意味である。漢字の塑という字に相当する。

 さらに熱可塑性樹脂は、非晶性結晶性とに分かれる。
 
 非晶性のものは、力を入れると少しずつ伸びていく。伸びたものは元に戻らない。塑性変形するのだ。また温めてやると徐々に柔らかくなり、形が変わる。融点がない。即ち、ある温度で急に液状になるということはない。冷やすとその形を保ちながら収縮する場合が多い。
 普通の人が想像するプラスティックはこれに類する挙動を示す。これを「流れる固体」と称する場合がある。常温では固体のようにふるまうが、大きな力を掛けると少しずつ変形する。温度を上げると見るからに流体であるが、低温ではその粘性が極端に大きく、固体に見える。このようなものを台車に使うとどうなるだろう。長い年月が過ぎると、台車は少しずつ撓み、ボルスタは線路面まで下がるだろう(いわゆるクリープが起きる)。
 常温でその粘りけが無視できるくらい固いもので作ったものが、いわゆるプラスティック・モデルである。これは夏の暑い日でも垂れてくることはない。しかし力を掛けていると徐々に変形するはずだ。80 ℃以上ではくたくたになることがある。それには、ポリスチレンという樹脂が使われている。
 軽い物なら良いが、重い物を支えると変形するわけである。また、温度を上げて200 ℃以上にすると極めて流動しやすくなり、ポンプで型に押し込むことができる。これが injection mold 射出成型 だ。非晶性のものは高分子の側鎖が大きく、お互いに近づきにくいものが多い。たとえば、ポリスチレンでは大きなベンゼン環が飛び出していて、邪魔をしている。より耐熱性を持たせたものはABSである。

 ここまでを読むと、不思議な気がするに違いない。HO、N のプラスティック車輛にはABSが使ってあるが、へたっているようには見えない。
 それは車重が小さく、目に見える変形を起こすほどの力が掛かっていないからである。しかし、何十年何百年も経てば少しずつ変形するはずである。しかし、人間の寿命はそれほど長くはないかもしれないから、それで良いことになっているわけだ。しかし、早く変形する模型もあるだろうし、長生きする人もいる。また、エアコンのない部屋に放置するということもあるかも知れない。

dda40x at 07:10コメント(5) この記事をクリップ!

2020年05月15日

貨車の塗装

 外出が制限されるようになり、自宅に居なければならない。天気が良いので、塗装を始めた。夜準備をし、洗剤でよく洗う。長年の間に油汚れが付いているからだ。扇風機で軽く風を送っておくと朝までには完全に乾く。

ACF Covered Hopper (1) 外の塗装台に被塗装物を並べると、日が当り、ほどほどに温まる。コンプレッサをonにし、タンクに溜まった水を捨て、圧力を見て開始する。今回の貨車はGreat Northernにする。これはアメリカ人がブラスで作ったものである。キットなのか、スクラッチから作ったのかもわからない。これも手際良く作ってある破損品を安く買った。部品を作って修復するのに10年以上かかっている。この種の破損品は、現在のアメリカではとても安く手に入る。誰も直せないからだ。
 たまたま少し残っていたNYCの Jade Green(ヒスイの色)の始末をするのが目的で、それに僅かに黄色を足して作った glacier green (氷河の色) である。似ていれば良いので、適当である。
 貨車の色というものはもともと怪しいものである。殆どが日焼けして、さらに錆びている。この色が正しいとか、これはおかしいと言われても、そうでしょうかねという程度のことだ。完成時の色はどうなのかということなのだろうが、あまり興味が無い。
 艶を出して塗って、それにディカールを貼る。番号もごく適当である。ディカールは沢山あってちっとも減らない銘柄を、貼った。実物には無いはずの組み合わせだから、参考にされないようにお願いする。
 車輪を塗って、少し汚すとできあがりだ。十分な仕上がりになった。

dda40x at 05:15コメント(0) この記事をクリップ!

2020年01月04日

マボーコー

磨棒 ボ−ルベアリングを装着する軸が必要であった。生憎、必要なサイズを切らしていた。
 表題の店に電話して、すぐ手に入るサイズを聞いた。漢字では「磨棒鋼」と書くのだ。昔、初めてこの発音を聞いた時、中華料理の名前かと思った。一般には「磨き棒鋼」と言っている。あるいは「シャフト屋」である。

 Φ2から、2.5、3、4、5のステンレスSUS304シャフトを注文した。長さは2m単位である。もう少し太いものだと 4 mだから乗用車には載らない。その場で半分に切ってもらって、持ち帰る。ワンカット150円くらいだと思う。細い物はボルトクリッパを持って行って自分で切る。
 写真は添え木に縛り付けたものを示している。裸で渡してくれるわけではない。ちゃんと曲がらないように配慮してくれる。

 この手のシャフトは、すべてマイナス公差である。まかり間違っても表示寸法より太いことは無い。ミニチュア・ボールベアリングは滑り嵌めが原則である。ミシン油を付けて、にゅるにゅると入るのが正しい寸法だ。するするでは駄目なのだ。
 彼らは専門家であるから、よく知っていて、何も言うことはない。

 一般人には縁遠い店だが、筆者はよく行くので、ついでがあれば購入してお分けする。上述の寸法であれば、手持ちの物を切って、即納できる。長さはレターパックに入る長さを基本とする。ボールベアリングを普通鋼のシャフトに嵌めるのは避けたい。普通の保管法では錆びて抜けなくなるからだ。

 蒸気機関車の車軸用の、SUS303材の末端を加工したシャフトを注文する必要がある。どのくらいの価格で応じてくれるか、楽しみである。
 動輪の嵌替えは、最適の材料、工具、テクニックが無いと難しい。今までは祖父江氏がやってくれていたが、筆者が引き受けざるを得ない状況になってきた。ノウハウはすべて受け継いだ。問題は動輪を掴むコレットの種類があまりないことだ。80インチ、63インチはできる。他のサイズ用は作らなければならないが、そのコレット材料がないので、ebayで探している。

dda40x at 01:04コメント(0) この記事をクリップ!

2019年12月21日

洋白材を削る

 ロストワックスの部品が足らないので、それらしく自作する羽目になった。機械加工で作る。1.2 mm厚の洋白材をブラスの2.6 mm厚の切れ端にハンダで貼り、それを縦フライスの万力で銜えた。この洋白材は快削だと信じていたが、そうではなかった。 

milling 1 刃はΦ1.0 とΦ0.5 である。細い工具には回転数が必要であるから、ベルトを掛け替えた。結果はこんな調子である。普通のブラスよりはマシであるが、粘りがある。切粉がさらさらとは出ない。

 DROの数字は事前に何度も検算し、間違いがないことを確かめる。初めの(0,0)点を決め、刃を降ろす前に計算値の通りに一周して、ワークからはみ出さないかを確かめる。

 切削はすべてDROの読みだけで行うので、ワークはあまり見ない。というよりも切粉が山盛りで、見えない。荒神箒(こうじんぼうき)で払っても取れない。Φ0.5を使うので、回転は最高、送りは最小である。7 mmx4 mmを一周するのに10分かけた。
 荒神箒は旋盤などでの快削材の切粉払いには最適である。最近はあまり見かけない。見付けると買い占めて、仲間で分ける。

milling2 周りは太い刃で削り落とす。さて、何を作っているのだろう。

dda40x at 12:19コメント(4) この記事をクリップ!

2019年12月17日

非快削材を削る

快削ブラス 複数枚の部品が必要な時は、板をハンダで貼り合わせて切り抜く。糸鋸でも良いが、フライスが使える物であれば、機械加工の方が楽であるし、正確だ。刃の太さを考慮した図面を描き、基点を決めて切削を開始する。刃が細いので、回転は最高に上げる。

 この4つの孔はハシゴになる。正確にケガいて糸鋸で切っても、不揃いになるから面白くない。昔は念入りに切って、ヤスリ掛けをした。最近はDROを使って機械で切り抜く。半径 0.5 mmのRで抜けるから、丸い形の物はそのままで良い。
 これは快削材であるから、すいすいと切れてバリもない。

快削 非快削 次の部品を切り始めたら、それ(右)が快削でなかったようだ。もう少しであるのに、くしゃっと行ってしまった。腹が立つが仕方が無い。捨てて、快削材で作り直した。ハンダ付けが全面にされてなかったことも原因の一つだが、粘る非快削材であったことが大きなファクタである。

ladder 出来上がったステップの踏み板は、薄手の滑り止めの付いたエッチング板があったので、折り曲げて貼った。間隔が揃っているので、気持ちが良い。こういうものは機械加工には敵わない。
 この種のステップは、蹴込みの深さも大切だが、向こう側に板があって、足が滑り込まないようにすることが義務付けられている。その板は連続であったり、分かれていたりする。この安全基準が設けられたのは1940年頃だ。
 Alco社の図面を参考にしたので、間違いはなかろう。

dda40x at 12:17コメント(0) この記事をクリップ!

2019年12月01日

快削ブラス

 最近、模型界では快削ブラスが市民権を得たような気がする。40年前は、おそらく殆ど知られていなかった。大阪の福原金属だけが売っていたという情報はあるが、大半の模型屋で売っているものは普通のブラス板であった。本当に切りにくくて腹が立った。一方、建材の引戸レイルは、糸鋸でとても切りやすかったことが印象に残っている。大きなモータに付いている銘版の廃品を貰ったが、これは粘い材料で、油を付けても切りにくかった。

 アメリカに行くと、ブラス板は少々色が違って緑っぽい感じがした。糸鋸ですいすいと切れるし、シアでは、すとんと切れる。
 性質が違い過ぎて、同じ金属とは思い難かった。日本製のブラス模型の色は赤く、アメリカ製は黄緑色であった。

 日本の材料屋でその違いについて聞くと、「快削と指定して取り寄せてあげるよ」と言う。それならばと、t0.3から順に定尺を全サイズ買った。色は普通材と同じであった。とても使い易く、友人に譲ったりして、その後は快削しか買わない。今は 0.3 mmが市販されていないようである。昔は、この板は時計の歯車用に大量に消費されていた。

 今野氏と知り合ってそのことを伝えると、KKC内部での頒布材料は、すべて快削材になったと言ってよいだろう。いろいろな場面で感謝されることがある。

 しばらく前、クラブの会合に手持ちの半端材料を大量に持って行って、安価で処分した。半分ほどは快削でなかったので、印を付けておいた。そうしたら、買おうとした人が、「えっ、快削じゃないの?僕は快削しか使わないんだ。もう普通のブラスなんて買う人は居ないよ。」と仏頂面で、のたもうた。その言い方にはとても驚いたが、内心とても嬉しかった。皆さんが使ってくれているんだと知って、多少なりとも貢献していることを実感した。これには今野氏の努力が大きい。この記事など、読んでくれた人など殆ど居ないのだから。 

dda40x at 12:01コメント(0) この記事をクリップ!

2019年11月29日

快削材のパイプ

 ブラスの材料の話である。たいていのブラス製パイプは快削でない。主動輪のクランクピンにボールベアリングを入れる時にハウジングを作らねばならなかったが、その材は快削でないと無理である。
 35年前にUPの4-8-4 2輌を作った時は、S45Cで作った。明らかに過剰品質である。リーマを通して、つるつるに仕上げて嵌めた。油がいつも注してあるので錆びることはない。
 今回は砲金で作った。たまたま切れ端があったからで、快削ブラスでも良かった。ぴったりの寸法のブラスのパイプもあったが、旋盤には掛からないので諦めた。食い込むからリーマを通せないのだ。

 今回、材料置き場を丹念に探すと、40年以上前にアメリカで買ったブラスパイプが出て来た。11/32、13/32、15/32インチの滑り込みの三兄弟である。試しに糸鋸で試し切りをするとサクサクと切れる。

turning smokestack 煙突を作らねばならなかった。きちんと寸法の出ているものを4本作るのはなかなか難しいから、これは有難かった。快削丸棒から中グリして作るつもりだったから、大幅な材料と手間の節約である。
 外径13/32インチ(10.31 mm)が希望寸法に極めて近いのでこれを使った。チャックでは潰れるので、ERコレットで掴んで廻した。切粉がカンナ屑のようにシュルシュルと出て、見事であった。

 この小型卓上旋盤はまだDRO化されていないので、ハンドルを廻し、ダイヤルの目盛を数えて廻した。久しぶりのことだ。4個は全く同じ長さに無事作成でき、台座にハンダ付けして完成に近づいた。さて何を作っているのだろうか。正解者は今のところお一人である。


dda40x at 11:29コメント(0) この記事をクリップ!

2019年11月27日

遠藤機械製切断機の回転軸を削る

turning shaft 5/8インチ(15.87 mm)かと思っていたら 16 mm径であったという現物を預かった。
 筆者の自宅の旋盤は 3/4インチ(19.05 mm)まで通せる貫通穴があるので、簡単に銜えられる。今回は、心が出ていなくても全く問題にならないが、一応心出しをして削った。Set-Tru Chuck は便利である。ブラスの旋削作業をしているので、切り粉を掃除すべきなのだが、今回はごく微量の切り粉しか出ないから磁石で取り除ける。

 やはりSS(軟鋼)は削りにくい。軟鋼は、快削でないブラスのようなもので、切り粉が刃物にまつわりつく。ワークが綺麗に見えない。削ってもざらついて面白くない。これがS45Cなら、硬いがかなり削りやすい材料なのだ。
 快削鋼はとても素晴らしい削り味だが、こういう用途には向かない。ねじ切れる可能性がある。

 他の購入者は無事交換できたと信じたい。折れたら交換する、という方も居るが、それでは意味がないのではないだろうか。折れたら大けがをする可能性が高いのだ。テイブルが付いていると、余計危ないことになる。

 ところで、鋼材屋で聞いた話によれば、我が国ではインチ材が珍しくなった。あることにはあるが、直ぐには揃わないらしい。SS(軟鋼)はよいが、S45Cの材の切り売りは勘弁してくれ、とのこと。買うなら定尺物(4 m)を買ってくれということだ。1万円ほどの価格だ。440 mmにしても、8本しか取れないだろう。刃の厚みもあるからだ。希望者が8台分あれば発注する。


dda40x at 11:27コメント(2) この記事をクリップ!

2019年09月23日

続 金属疲労

 クラブのNG氏はこういうことに詳しい。
「ネジ溝からだね。おそらく、遠藤機械には情報が入っているはずだ。ネジを変えたっていうのも、それに関連あると思うよ。設計変更で折れにくいネジにしたのじゃないか。」
 自動車ならリコール事案だろう。

screw extractors 博物館に来てくれたので、埋まっている折れたオネジを取り出すことにした。こういう時のために、専用の工具 screw extractor がある。それを使ったところ、折れてしまった。エクストラクタには逆ネジが切ってあって、ドリルであけた穴にねじ込んで、取り出す。それがあっけなく折れたのだ。日本製だったから意外だった。これには焼きが入っていて硬いから、それを取り出すのは難しい。写真は細いものを示している。
 件のネジは、よほど強くねじ込まれていたのだ。仕方がないので、周りに小さな凹みをドリルで掘った。そこにポンチを当て、抜ける方向に根気よく叩いた。ところが、エクストラクタを使った時にネジが太くなってしまったのか、全く廻らなかった。

broken screwbroken screw2 最終手段として、カッティング・ディスクをドレメルに付け、ネジに溝を切って、大きなネジ廻しで廻すことにした。径の大きなディスクを当てると、周りに傷がつく。多少減って径の小さくなったものを使うと具合が良い。左の写真では、孔の周りに傷がついている。この程度は仕方がない。ネジ廻しの先端は砥石で研いで、角を出してから始めた。
 ところがそれでも廻らない。モンキーレンチを使って二人がかりで廻した。少しずつ廻って、取ることに成功したが、時間が掛かった。大きなネジ廻しは、ねじれて壊れてしまった。それは父の代からの60年以上使った古いものであった。

 あまり力を入れると、また右手が壊れそうで、ひやひやしながらの作業であった。一人ではとてもできなかった。NG氏には感謝する。
 材料が塑性変形し易い。ネジを思い切りねじ込むと、少し変形して抜けにくくなるのだ。次回はロックタイトで抜け止めをし、トルクをあまり掛けないようにしたい。

 どうするかを相談した。もちろん、現行のハンドルは捨てて、新しいハンドルにする。現行ではネジを折る形になっているから折れやすいのだ。そういう愚かな設計は避けたい。留めネジはやめて、キィにしよう。 
 さてどうするか。思い切った形の物にしようと思う。疲労しにくい形が良い。きっと欲しがる人も居るだろうから、余分に作ろう。そうするとまた売れ残るかもしれないが。


dda40x at 09:23コメント(0) この記事をクリップ!
Recent Comments
Archives
categories