DCC

2007年06月23日

Track Cleaning

 DC運転をしていたときにはあまり気がつかなかったが、レイルと車輪の表面はかなり汚れるものだ。DCCでは電流の断続はデコーダの誤作動、サウンドの雑音その他の悪影響の元となる。

 レイルを磨くという方法もあるが、磨くとレイルは確実に減る。少しでも長持ちさせたい。それにはレイル表面を洗うしかない。

 色々な接点復活剤が市販されている。それらを大きく分けると、溶剤系のものと潤滑油を含んだものとに分かれる。

 前者はこれまたたくさんの種類に分かれ、炭化水素、アルコール、エステル、ケトン、その他、あるいはそれらの混合物がある。最近は、リモネンというオレンジの皮からとる物質を含んだものが流行である。しかしこれはかなり強い果物の香りがする。

 蒸発しやすいので何も残らないが、濡れている間にプラスチック、塗料を溶かしたりする。また、その間にこすらないときれいに落ちない。ということはある程度、蒸発速度が小さいものが良いので、順に調べていったところ、リグロインという灯油よりもやや蒸発しにくい炭化水素が大変な好成績を収めた。

 レイルに筆で塗っておいて、列車を走らせると、先頭から10輌くらいの車輪に広がり、走ればこすられるので汚れが落ちる。それは車輪の踏面から横に押し出され、乾いて落下する。レイアウトの周回線路上に何箇所か塗ると、その一日は、ほとんど問題なく楽しめる。

 さらに分子量の大きい「流動パラフィン」という、石油のある溜分を用いても同様であるが、蒸発までの時間が長く、こちらの方を好む人も多いだろう。

 どちらも、人間に感じられる臭いは無く、引火の心配もない。これをタンク車に入れて、DCCで目的の場所に塗布できればとても愉快だ。

2007年06月22日

Speaker

 サウンド装置を取り付けたが、音が小さいのでどうすればよいかという質問を受けた。

 それはスピーカの取り付けに大きな問題がある。スピーカの片方には完全な密閉空間が必要である。要するに、スピーカの振動するコーンと呼ばれる膜の向こう側とこちら側では、位相が180度異なる音波が生じる。これらが混じると、打ち消しあって音が小さくなるというだけのことである。

 筆者は3mm程度のベークライト板を切り出して、スピーカ・ボックスを作る。それにスピーカをはめ、隙間をシリコーンのシーラントでふさいでいる。ほんの小さな穴があっても効果が落ちる。また、箱の大きさは大きいほど効果があるようだ。また、内部に吸音材を入れると駄目である。音が良く反射された方が良い。

 このアイデアはPFM方式が紹介され始めた頃、TMSに載っていたと記憶する。索引をおつくりの方もいらっしゃるので、何号かをお調べ願いたい。確か25年位前だ。

 当たり前のことであり、納得できたのだが、某雑誌社の社長は、「あれは大嘘だ。やってみたけど音は大きくならない。」と触れ回っていた。何を勘違いしたのかは知らないが、物理の本を開いてみるべきだったろう。いや中学校の理科を理解していないのだろう。

 スピーカを床板に下向きにつけるときは、スピーカと床板の間に少しスペーサを挟んでおくと音が大きくなるし、音質も向上する。もちろん、これも、気密性が良くないといけない。

 Tonyの店にもいくつかの商品がある。正しい知識のある人がアドヴァイスしているように見受けられる。

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2007年06月21日

Snubber

Snubber これはリレーである。DCCではあちこちにリレーを使う。筆者の一部のディーゼル電気機関車には、下り勾配用の抑速ブレーキが付いている。

 これはダイナミック・ブレーキ の抵抗で、モータが発電した電力を消耗させるようになっている。始めは凝ったものを作って三段階にしたが、一段で十分であった。

 抵抗器がほのかに温かくなる程度である。表面積の大きな抵抗を使ったからだ。

 このような用途や、発煙装置の大電流を流すためにリレーは便利である。連結器の開放にリレーの動作を使うのも良い方法である。

 リレーはリアクトルであるから、電圧を掛けてもなかなか電流が増えない。逆に、流れている電流はそう簡単に止まらず、逆電圧を発生する。この電圧は、電流を時間で微分しているので、急速に遮断すると数百ボルト以上にもなる。ゆっくり止めれば良いのだが、そういう訳にもいかない。

 そこで、この図にあるようなダイオードを一つ入れておく。すると、ダイオードがその逆電圧を逃がすので、コイルの磁界は急速に消滅し、リレーの復帰も早くなる。つけないと、デコーダが瞬時に壊れる

 このようなダイオードをQuencherと言っていた(と思っていた)。最近はSnubberと言うらしい。

 Quenchというのは「急に冷ます」という意味で、焼入れなどの時に使う言葉だ。鋼製車体のひずみ取りに、お灸をすえるという方法があるが、あれもQuenchingと言う。
のどの渇きを急に癒すような飲み物もQuencherと言ったりする。リレーの内部の磁界を消滅させると言う意味ではとても正しい。

 Snubという言葉は、船のもやい綱が繰り出されていくのを止めるときぐらいにしか使わない言葉で、このような電気工学的な場面で使うとは思わなかった。Snubberはスナッバと発音する。今後よくお目にかかる言葉であろう。

2007年06月20日

続々 Back EMF

 筆者の手持ちの機関車は、全てコアレスモータ、3条ウォームまたはベベルギヤ駆動、全軸ボールベアリング装備である。貨車は全て低抵抗車輪で、車体質量が400g以上は全てボールベアリング入りなどという模型鉄道は、まずどこにもないのである。そこで行われている実験を、なるべく客観的に解説しようというのがこのブログの狙いである。

 Back EMFを効かせると人工的な動きをするというのが結論である。本物は質量があリ、慣性が大きい。本物の機関車の動きを間近で見た世代の人間は、指示された所定の速度で必ず走るような機関車など見たくないのである。

 直線ではスロットルを戻し、カーヴに入るとスロットルを開く。停車時は連結器を詰めて止まる。発車時には連結器遊間を利用しなければ起動できないような重い列車を、工夫しながら牽いていた機関士たちの話を聞いていれば、その運転の苦労がわかるような運転をしてみたいのである。

 昨日も書いたが、出力の小さい機関車で重い列車を牽き出す時、連結器が伸びていくと速度が明らかに下がる。そこでスロットルを少し開くと、空転が始まる。空転を制御しながら、牽き出すのは楽しい。実物を運転する時のこのテクニックは、井上豊氏からよく伺ったものだ。


 昨日は、無音型デコーダでバックEMFを採用するのは困難だ、と少し遠慮して書いておいたが、物理的に不可能であるのは自明である。工学的な話ではなく物理的に不可能なのである。このあたりのことを理解せず、周波数を上げれば可能だなどと言う人がいる。

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2007年06月19日

続 Back EMF

 それではパルス幅を短くして、パルスの回数をうんと増やすとどうなるだろうか。すると、モータから出る音は高周波になり、人間の耳に聞こえなくなる。

 その程度の高周波では、リアクトル(高周波成分を通しにくくするコイルと鉄心)の効果が大変大きくなる。小さなリアクトルとそれに合う平滑コンデンサを入れておけば、直流給電になる。これが完全直流デコーダであり、コアレスモータは無音で廻る。

 動力装置が高性能であれば、この種のデコーダは非常に実感的な動きを再現する。それには、低速での「つんのめり」がないことが必要である。もともと低電圧で超低速が可能な機関車であれば、まさに実物どおりの動きを示す。機関車に3条ウォームギヤとボール・ベアリングが装備されていれば、このような動きが可能になるのだ。

 Back EMFは人工的な効果を与えているので、発車時の「連結器が伸びて負荷が大きくなると機関車が止まりかける」といった情景を再現できない。筆者のレイアウトで86輌を牽き出す時の様子をビデオに撮り、アメリカの友人たちに見せたところ、「オウ、本物と同じ動きだ。それ頑張れ!」と応援していた。

 無音型デコーダをバックEMF方式にすることは難しい。バックEMFを測定するためにはある程度の時間が必要なので、給電をやめる時間が短い高周波タイプのデコーダでは困難だ。
 
 どうしてもやりたければ、モータに直結したタコ・ジェネレータあるいはフォト・インタラプタで回転数を常時測定して、別回路でフィードバックを掛けるしかない。大変高級な回路になり、もはや鉄道模型の領域を超えてしまうだろう。

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2007年06月18日

Back EMF

Back EMFとは逆起電力のことであり、モータの回転数に比例して生じる。DCCでは、直流を給電しているとは言え、実際には時間軸でのの長短パルスで給電している。その定積分値が加えられた電力である。

 すなわち、インバータ式電車と同く、場合によってはモータから異音が発生する。有鉄心モータ(普通のモータ)ではリアクタンス(電圧増大時にて電流が増えるのを妨げる働き)が大きいので、そのような音は聞こえないことが大きい。

 給電を休んだ瞬間にDCCのデコーダはモータへの給電線に返ってくる電圧を測定する。すなわち、モータが発電機になって発電した電圧を調べる。もし、その電圧が想定していた電圧より小さければ、回転数が落ちている訳である。直ちに、次の給電パルスを長くする。そうすれば回転数は増加する。勢い余って、パルスが長すぎれば回転が早くなり過ぎ、発電電圧が大きくなるのでそれを検知して、給電パルスを短くする。

 このようなことを毎秒100回位も繰り返す。大したものである。このお陰で多少動きのよくない機関車もまずまずの動きをする。すなわち、低速でも安定した動きを見せるわけである。

 このパルス間の電圧測定の時間は、全く給電されていないわけである。すると、コアレス・モータのようにモータのリアクタンスが小さく、慣性モーメントが小さいロータは、パルスに忠実に回転しようとして、異音を発することになる。初期のデコーダからの音は、プーンとかピーンという音であった。そのうち、乱数を発生させて音の高さを一定にしないようにしたものが登場した。しかし、腹立たしい音であった。特に蒸気機関車には許せない種類の音である。

 Back EMFを掛けないと静かになるかとも思ったが、そうではなかった。パルス幅で電力制御するのは、根本的にコアレスモータの駆動には向かないのである。しかもブラスの機関車ではたまに共鳴することがあり、珍妙な音がする。

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2007年06月17日

続 サウンド装置

ESU Lok Sound サウンド装置の音源は本物の音である。したがって現在保存されている機関車の音声は全て手に入る。
 問題はそうでない機関車の音である。発売されている音を編集して、低音を強くするとか多少の変化を与えることが出来るが、根本的には変わらない。

 ESUという会社は自由に音を編集するサウンド装置を売り出した。ビデオなどの音声を取り込んで自在に編集できるそうだ。筆者はまだ購入していないが、雑誌などの記事を見る限りかなりのことができそうである。写真は最新型ではなくやや古いものを示す。

 おそらく、アマチュアの中に「特定の機関車の音の編集引き受けます」という者が出てくることだろう。サウンド装置のカスタムビルダである。これは商売として十分成り立つと思う。

 蒸気機関車は停車中も結構音が出る。保火中の機関車も時々ストーカが動いたりする。ブローダウンにより塩分濃度の高い水を捨てたりする音がする。
 前照灯を点ければ発電機の音がするし、時々インジェクタの作動音がする。結構細やかに音を出している。

 機関車の火室下に赤い電球と黄色い電球をつけ、フリッカー(光のちらつき)をさせると本物のようで気分が良い。運転室の中に黄色の電球を入れ、時々強く光らせると、火室内部を覗くときの光の漏れを再現することが出来る。伊藤剛氏はその瞬間に火室扉を開くようにせよ、罐焚きが中を覗く動作もさせよとまでおっしゃる。

 ディーゼル機関車はアイドル回転音の他にコンプレッサ音、エアタンクのドレイン抜きの「パシッ、パシッ」という音がする。ドレインは日本の機関車にはない音であるが、アメリカの機関区に行くとそこらじゅうでこの音がする。
 サウンド装置は走行中もさることながら、停車中も楽しめる。レイアウトのスイッチを入れた瞬間に、機関区全体からいろいろな音がするのは素晴らしい臨場感である。

2007年06月16日

サウンド装置

From Tony's website これはHOのシェイにサウンド装置を入れた写真である。Tony'sのWebsiteから引用した。動力用のデコーダとは別個にサウンド用を入れている。これは賢明な方法である。スペースが許せば、動力用とは分けておきたい。

 筆者は機関車には動力用を、音声デコーダはテンダに入れている。機炭間の接続は8端子のカプラを採用している。これだけ回路があれば、電灯の配線も容易であるし、連結器の動作も可能である。

 正直なところ、動力用のデコーダを良く焼いた。その原因はようやく分かってきた。ブラス製の機関車ではいたるところにショートする可能性がある。完全に防護してあるつもりでも、機炭間の接続あたりでは何かが起きる。前進時に良くても、逆行時にショートするのは、大抵ここだ。
 電流制限を掛けていないと、ショートすればデコーダが燃える。ハンダが融け、何もかもめちゃくちゃになる。
 
 最近サウンド・デコーダの価格が急速に下がり、買いやすい価格になった。しかし国内の価格はまだまだ高い。これでは普及を妨げているのと同じだ。海外から買って、航空運賃を入れても、まだずっと安い。

 インターネットの普及で、海外の製品がオンラインで簡単に買えるようになった。送金もクレジットカードで簡単にできるが、それに対して、しり込みをする傾向も強い。筆者は過去一度もトラブルになったことがない。大変安心で信頼できる方法である事を強調しておきたい。初心者にはTony's の店をお勧めする。親切な店である。


2007年06月15日

電流計

Tony's DCC電流計 DCCを採用するようになって一番困ったのが電流計である。一般の交流と異なり、DCCでは矩形波を採用しているのと、周波数が高いことで手近にあるテスタなどの交流電流計が使えない。

 試してみるとそれらしい値を示すが、それが正しいのかどうかは判らない。多く表示されるのか少なく表示されるのかも、不明である。RMSという概念がある。交流の実効値という意味である。正弦波のときは計算で補正できる。しかし矩形波で、なおかつ周波数が大きいので、ダイオードが電圧の立ち上がりに追随出来ず、妙な値を示す。

 色々調べてみるとセレン整流器は立ち上がりに追随する能力が大きいことがわかった。しかし、メータはMoving Coil(可動線輪)型なので、高周波ではインピーダンスが変化して測定値が変化する。しかもONとOFFの時間も変化するから厄介だ。

 昔、アマチュア無線を始めた頃勉強したことに、高周波電力計は、電力を熱に変えて熱電対で測定するという方法があったことを思い出した。それを作る以外ないと決心したが、ちょうどTonyの店がRMSを表示できる電流計を出してくれたので、二つ買った。全く同じ値を指示するので驚いた。

 これがあると運転が楽しい。筆者のレイアウトでは機関車の効率が良く、付随車の摩擦が少ないので、本物のような動きをする。すなわち、加速時は電流値が多く、巡航時は電流が少ない。減速時には事実上、電流はゼロである。

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2007年06月14日

Macro

 Macroは、もともとはコンピュータ用語であったが、ここでは複数のポイントの操作を一括して行う機能を指す。

 例えば4本以上の側線がある操車場とか駅の構内のポイント切替では、「3番線開通」と指示すると、#1、#2、#3のポイントが動き、次に「2番線開通」と指示すれば#2だけが動くと良いわけである。このようなシーケンスをあらかじめプログラムして全自動で行うのがマクロ機能である。
 
200通りのパターンを記憶させ、各10台のスウィッチ・マシンを操作することができる。キャスケード、ルート・コントロールという呼び方をする会社もある。

 この機能はNCE-Wangrowによって開発されNMRA規格に採用されたものであり、DigitraxのChiefが出現するまでは唯一の存在であった。




 DCCではヤードの全ての線路に通電されているので、何かの間違いでそこに止まっているはずの機関車が動き出したりする可能性がある。ヤードの根元には、ポイントと連動するマイクロ・スウィッチでヤード全体をOFFにする必要があることもあるだろう。

 これは扇形庫の枝線にも言えることである。機関庫に止まっている機関車がランプを点けていたり、音を立てたりするのも良いが、突然動き出して、ターンテイブル・ピットに落ちるのは避けたい。これは実物でもたまにある事故で、写真集に紹介されていたりするが、自分のレイアウトで起こることは望まない。安全装置として枝線ごとのスウィッチもあってもよいが、光も音もなくなる。

 当初、ターンテイブルは、完全自動で目的の番線に合わせるタイプを導入するつもりだった。友人のレイアウトでDCCでコントロールするのを見ると、却って自動化していないほうが自然な動きをすることに気が付いた。要するに、自分で運転するほうが面白いということだ。

 DCCで運転すると、機関士席のみならず、転車台のオペレータ席にまで、1/48になった自分が座って操作しているような気がする。すなわち、DCCを導入すると、人間が縮小されて運転台に座っているように感じるのである。

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2007年06月13日

Cab

 Cabを複数持つと面白さが倍増する。キャブとは運転室のことである。すなわちDCCの運転装置であり、それは手の中にある指令装置のことである。

 機関車を重連するときは、Consistという操作を行う。コンシストとは動力車の編成のことである。例えばディーゼル機関車の多重連を考えよう。それぞれの機関車の前後は決めておかねばならない。編成したとき一部の機関車が逆行することは避けねばならないので、1台ずつF,Rを指定してコンシストを組む。

 すると、先頭の機関車の番号の指令が編成中の全ての機関車に同時に伝わる。すなわち、最前方の機関車の番号が編成の番号となるので、その番号を使って呼び出すことになる。汽笛は最前方の機関車しか鳴らない

 ディーゼルの時はこれで、ほとんど不満はない。蒸気機関車の時は二台目以降にも機関士が乗っているので、本務機と補機が、多少違う動きをするほうがはるかに面白い。発車するときは本務機が汽笛を鳴らし、補機が応えて汽笛を鳴らしたり、加速時に片方がスリップするのを見るのは楽しい。

 列車の最後部に補機を付けるときは、補機がサボると坂を登れないというのも実に面白い。両手にキャブを持ち、一人で遊んでも面白いが、2人でやるともっと面白い。

 大きなレイアウトでは、「おい、この機関車を受け取れ。」と声が掛かる。あわてて番号を入れると、自分のキャブがその機関車をコントロールするようになる。

 これがDCCのもっとも楽しいところである。

2007年06月12日

電流制限装置

 線路をいくつかのセクションに分けて、電流を制限するのは、実物も同じである。事故のときの被害を最小限に食い止めることが出来る。各社が3セクション、4セクションの電流制限器を発売している。どれでも良いが、リバース自動切り替え装置内蔵のものもあり、目的をよく考えて買えば経済的である。Tonyの店には自社ブランドのものもあったが、DCC Specialitiesのものに収束されていった。 
 
 制限電流は何段かに変えられるようになっている。筆者が心配しているのは、電流制限装置の必要性が、あまり理解されていないことである。DCCでは線路には12〜16Vの電圧が常に掛かっている。何かの故障で短絡して3アンペア流れたとするとそれだけで30〜40Wの発熱がある。ハンダゴテを電源に差しっ放しにして冷や汗をかいた人は多かろう。火事になるかも知れないのだ。

 今のところ、プラスティック製機関車が融けたくらいの話であるが、いずれ火事を出す人が現れるだろうと危惧する。それは何を引き起こすか?

 私たちは、世間は製造者の責任を追求することになるだろうと予測する。そうすれば、日本でDCCを販売している会社は、直ちに販売をやめざるを得なくなる。

 筆者のレイアウトでは、全ての電源をワンタッチで切ることが出来るようにしてある。なおかつ、通電中はパイロットランプが付くようにしてある。レイアウトルームから出るときはそれが消えていることを確認する。これだけで火事になる心配はなくなる。

 DCCを売る会社はその点を十分指導しなければならないし、それだけでなく構造的に火事が起こらないような方策を施して売るべきである。一度火事を出せば、それはDCCの普及にとって、致命的な事故となるだろう。

 日本でDCCを売っている会社はその辺りのことを考えているだろうか。


2007年06月11日

続 NCE

NCE 10A Starter Set NCEキャブは、いわゆるフル・ファンクションのキィ・パッドである。小さな手には収まりにくいかも知れない。

 フル・ファンクションの良いところは初心者にも間違いがないところである。他社の製品では、一つのボタンをシフトボタンを押しながら操作して、いくつもの機能を持たせたものが多い。これはvisitor(そのレイアウトに初めて来訪した人)には運転が困難である。

 NCEならボタンを見て、それを押せば問題ない。それとディスプレィが二段になっていて情報量が多いということがありがたい。暗いところでもバックライトがあって都合が良い。

 いくつかのコマンドを出しても、それが完全に実行されるところがNCEの最大の特長ではないだろうか。コマンド(命令)は出しっ放しではない。それが実行されるまで命令を出し続ける。

 これは無線の時には特に大切なことである。しかし、それがいやだと言う人も居る。コマンドを続けて出そうと思うと、多少の時間的遅れが生じ、腹が立つのだそうだ。これはそのシステムを良く理解すればそのような不満は無くなる。

 友人のレイアウトで採用していた10 A出力の機械を買ったが、これはあまり賢い選択ではなかった。筆者のレイアウト上には、高効率の動力車とLED照明の車輌しかなく、いつも2 Aくらいまでしか消費しないからだ。しかも何かの事故で短絡すると9 Aほど流れてレイルが熱くなる。下手をすれば、デコーダもあっという間に燃えてしまうだろう。

 その後、いくつかのセクションに分けて、電流を制限する装置をつけたので安心だ。

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2007年06月10日

NCE

NCE Cab NCENorth Coast Engineeringというのが正式名称である。
DCCのハイエンド製品を扱っている。とは言っても、現在の趨勢ではハイエンドも廉価版もさほどの差はない。既に体力勝負の様相を見せている。価格はほとんど限界まで下落しているように思う。

 日本ではどういうわけか、DigitraxLenzが売れているようだ。アメリカではNCEが強い。Atlasもいい勝負をしている。商売の形態としてはNCEが手堅い。主だった鉄道模型クラブを良く押さえている。それには理由がある。大きなレイアウトでの沢山のキャブを連動させる点で、一番自由度が高いからである。現在では当然のように使われている仕分けヤードでの複数のポイントを、番線指定するだけでルートを作ること(ルート・コントロールと言う)を始めて実用化したのは、NCEである。要するに、アメリカの大きなレイアウトを制御するのはNCEしか出来なかった時期があった。


NCE New Software
 NCEの良いところはアフターサービスである。顧客管理が良く出来ていて、時々手紙が来る。ソフトウェアをアップグレードするので、申し込んでくださいと。費用はどこに住んでいても15ドルである。小切手を送ると、すぐにROMを送ってくれる。電源を切って差し替えると、最新仕様になる。もう少し気を付けて送ってくれると、このように足が曲がっては届かないのだが。

 家庭用ならばどこのシステムを使っても一緒である。車輌用デコーダの価格は下がる一方で、安い物は1台10ドル台前半である。この値段なら、DCCを採用しない方が珍しい状態になっても当然である。


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2007年06月09日

赤い箱

赤い箱 「赤い箱」と呼んだのは、筆者が最初である。なるべく見たままの姿で呼ばれる方が良いと思ったからだ。アメリカには「ブラウン・ブック」などという外見そのままの名前が定着したものが多い。それを狙った。

 赤い箱は、機関車のプログラムを簡単にする。これを導入するまでは大変面倒な作業をこなしていた。まずノートに機関車のデコーダ内部のCVを読み出して書き、次にそれが何を意味しているのかを読み解き、そして内容変更をしてノートに書き込む。そのノートは大切に保存しないと、次の作業がまた繰り返しになる。

 この作業をするのに、1台あたり2時間くらい掛かった。あまりにも面倒で機関車のアドレスだけを書いて、あとは知らぬふりを決め込むことも多かった。

 そのうち、RS-232Cケーブルを通してコンピュータで内部を見るソフトが売り出され、それを使ったが、これまたスピードが遅い。1台30分掛かる。以前のことを思えば速いがそれでも、勘弁してくれと言いたくなる。

 永末さんが、赤い箱を開発中であることを知り、「一度いらっしゃいませんか?」とお誘いした。見せていただくと、とても速い。コンピュータとレイルの間に繋ぐだけで、機関車のデコーダの内部が丸見えとなる。変更するとその効果をすぐに確かめることも出来るところが素晴らしい。

 今までは内部の情報を書き替えると、すぐにレイルに載せてみてコマンドを送り、その効果を確認しなければならなかった。赤い箱があればその必要もなく、極めてスムーズに出来る。

 レイアウト上のプログラム・トラックに接続しておけば、それだけで全ての用が足りる。

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2007年06月08日

続 DCC

DCC Crossing Wiring Original DCCを採用すると、レイアウトの配線が桁違いに簡単になる。ポイントの配線など沢山あると、その連動方法など考えただけで頭が痛い。

 DCC化すれば、各ポイントマシンをポイント用デコーダにつないで、あとはアドレスを割り振るだけである。いわゆるルート・コントロール(ヤードなどの番線を指定すれば、関係する全てのポイントが連動して、ルートを作る操作)の設定も容易である。

 ポイントのみならず、いわゆるリヴァース線も全自動で操作出来る。クロッシングのフログの極性切り替えは、面倒であった。これもリヴァース線用のユニットを使えば、何も考える必要が無くなる。

 図は2000年頃思い付いて、アメリカのメイリング・リストのフォーラムで発表したものである。アメリカではかなり有名になっている。インターネットでのみ発表されているので、印刷物にはなっていなかった。

DCC Crossing Wiring from DCC Projectこの写真は、昨日のDCC Projectsの32ページにある。上の回路図と全く同一である。事前に連絡してくれれば、著作権を主張しないと伝えたのに。わかりにくい写真になったのは残念だ。

 このクロッシングの配線は一例で、三枝ポイントとかデルタ線の配線も、極端に簡単になる。
 

2007年06月07日

DCC

DCC  DCCについて書けというコメントをいくつか戴いている。Digital Command Controlのことである。

 筆者は1997年よりDCCを導入している。ちょうど今年で10年目である。いろいろな雑誌で紹介されているが、どれもこれも中途半端であって、満足のいく記事が無かった。それもそのはず、DCCは雑誌というメディアで扱うものではないという事に気付いていなかった。

 当時はDCCが急速な発展を遂げているまっ最中で、原稿を書いた瞬間にも急速な陳腐化が起こる商品であった。

 DCCをメインのテーマにしているウェブサイトがいくつかあった。日本のサイトは、残念ながら外国のサイトを見て受け売りのものが多く、独自の視点で書かれたものは少ない。筆者はアメリカのDCCメイリングリストに参加した。そうしなければ最先端の話が入ってこないし、日本にもこういう人が居るということが分かってもらえない。

 最近DCCはようやく成熟期に入り、いろいろな意味で勝負がついてきた感じである。筆者が気が付いたいくつかのことをまとめて小冊子にしようと思っていたが、その必要性がなくなってしまった。

 この本である。筆者が言いたいと思っていたことがほとんど書いてある。もちろん、それ以上に大切なことも書いてある。筆者の下手な説明より、ぜひご一読をお願いしたい。美しい写真と、メジャーな商品の説明が簡潔に書いてある。種々の応用例も実に明快に説明している。 

2007年04月12日

Layout Tour   Bobを訪ねて その1

Bob Jarvis and his layout Bobは建設業を営んでいた。腕の良い左官であり、息子たちと会社を作り建設工事一般を請け負っていた。

 初め車庫の上の屋根裏があまりにも寒く、また狭いので地下室を作ると言っていたが、結局それはラドンの問題でやめになった。屋根裏を半分取り壊して、2倍に増築し、断熱をうんと良くして、新規撒き直しということになった。

 増築したのは5年くらい前で、一度見に行った。昨年、「もう退職したから、レイアウトに専心できる。見に来いよ。」という連絡を貰った。

 行ってみて驚いたことに、ほとんど完成していた。商売柄、仕事は速いし的確である。線路の敷き方が正確であるのには感銘を受けた。

 彼とは長い付き合いである。彼は、20代の頃、Western Pacific 鉄道で働いていたことがあり、WPSPUPの実物の知識はすばらしい。

 UPの旅客列車の全盛期を間近で見ているので、その時代の列車を再現することが目標である。

 このレイアウトもDCC化されている。側線のポイント操作は側面のつまみを押したり引いたりして行う。本線のポイントはDCCによるルート・コントロールが出来る。 

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2006年12月03日

続 関節式機関車の駆動

Jabelman Challenger ディファレンシャル・ギア(差動歯車)の話を続けたい。自動車の左右車輪の回転の和が動力から伝わるようになっている。片方がぬかるみでスリップすると、反対側の車輪の駆動力は殆どなくなる。

 関節式蒸気機関車ではボイラーからの蒸気はレギュレータを通り、前後のエンジンに分配される。片方のエンジンがスリップして蒸気の消費量が多くなると、レギュレータで絞られているので、もう片方への蒸気供給圧力は格段に減る。というわけで、実物の引き出し時のスリップは重い列車を牽き出せないことに結びつく。

 差動歯車の作動は、まさにこの関節式機関車の前後のエンジンへの蒸気分配状況を再現するのに最適なはずであった。

 R/C用の差動歯車を買って、ボイラーの底を切り裂き、無理やり載せた。成功ではあったが、ボイラーの底をかなり切ったので横から見ると透けて見えて不細工であった。仕方が無いので、ボイラーの下半分を作ってフレーム側に付け、透けて見えないようにした。当時のR/C用差動装置は金属製で、スリップ時にガラガラと音が出る代物で気分を害したのは事実である。

 メカニカルな方法は制作意欲をかき立てるが、電気式解決法にはいろんな点で負けてしまう。やはりDCCが一番のようだ。

 永末さんの DE5 8Fx DUAL DC DECODERは、出力を前後で変える事が出来、しかも完全無音で、ブラスの機関車のビビリ音は完全に解消している。このデコーダはBEMF(逆起電力)検出によるフィードバックはついていない。なぜかというと、効率がよいメカニズムなのでどの回転域でも滑らかに回り、あえて定速にする必要がないからである。BEMFは低速で躓く可能性のある機関車には有効であろう。
 

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2006年12月02日

関節式機関車の駆動

early Challenger mechamism 古いチャレンジャを廉価で3輌入手した。e-bayのおかげである。動力機構は、例によって2つのギヤボックスをゴム・チューブで繋いだ野蛮な構造で2条ウォームを用いてボールベアリングで支えてあった。しかし、駆動軸を支える軸受もあり、トルクチューブのチューブのない構造であった。
 なぜ3輌かというと、どうせ作るなら1輌も3輌もさほど手間は変わらないからである。考えている時間の方がよほど長いからだ。部品を外注するのにも数が多いほど安くつくことになる。昨日のトルクチューブの写真はそれである。

 実は完成させたものを、もう2輌持っている。これはアメリカにいたとき買ったもので、友人が手放したものである。これらの伝導方式はベベルギヤでボイラの中央に巨大な穴をあけてモータを収めてある。もちろん、モータの下側にはその切り欠きをふさぐボイラーの一部が用意されているので、穴は全く見えなくなる。以上の話は前部エンジンの駆動の話で、後部エンジンは通常どおり、火室にモータを入れている。
写真はそのうちの1輌で前期型である。今、一部手直し中でデコーダも外してある。

 2個モータにすると重負荷時の起動で、本物のように、片方だけスリップするようになる。現役時の映画を見ていると前部エンジンだけが、するするとスリップする。機関士がスロットルを少し閉めると再粘着して走り出す場面がある。これを何度も見た。どうしてもやりたかった。

 故井上豊氏が、生前「俺がやり残したこと」として、単式関節機(simple expansion articulated steam engine)の前後エンジンを自動車用の差動装置で結ぶ方式について、いろいろな案を示された。「君がやれ。」と言われたのでR/C用の差動装置を買ってきて試してみたが、その差動装置が優秀でなく、ガラガラと音を立てたので、諦めた。

 2個モータにすると簡単であったが、なかなか思うようにスリップしてくれない。そんな時、永末さんとお知り合いになれた。筆者のレイアウトでチャレンジャの走行を見て、「これはいけますよ。」と専用DCCデコーダを作ってくださった。簡単そうに思えたが、何度も試作を重ねて、実証試験を数十時間行った。途中で煙を吹いたりする事故もあったが、すばらしいデコーダが完成した。

 要するに、2台のデコーダが同時にコントロールされるが、起動時、前部エンジンへの供給電力をあらかじめわずかに増やしておくのである。スリップしたら、スロットルをわずかに戻すと前後が同一出力になる。極めて自然な起動状況で、説明しなければ誰もその仕組みについて疑問を持たないほどの出来である。大型のHOテンダの中になら、入る大きさである。

dda40x at 08:02コメント(3) この記事をクリップ!
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