歯車

2011年07月05日

続 査読者

 この件で何人かの方からメールを戴いている。私信なので一部を公開するにとどめるが、大体同じことを仰っている。

A氏より
 査読がある、というのは驚きです。載せる記事に責任を持つというメディアの姿勢と理解しました。

B氏より
 dda40xさんが指摘されているように、日本の雑誌のレベルに問題があるのは、投稿された原稿をそのまま載せるという体制に最大の原因があると思います。というか書き手の割に雑誌数が多すぎるのと、コストが低くできて多く売れればよいという雑誌社の姿勢が問題なのでしょうか?

C氏より
 学会誌と同じですね。査読に通れば、それはお墨付きが得られたと同然ですから、大きな進展があるものと思います。…中略… 出せば載るというレベルの低い日本の雑誌とは違うということがよくわかりました。どんな人に査読をお願いしているのでしょうね。

 筆者は、Model Railroaderが世界最大にして最高の模型雑誌たらんとして、努力している雑誌社であると認識している。その世界中に与える影響の大きさを鑑み、慎重であることが素晴らしいと思う。
 
 以前の押して動くギヤも、25年経つと、世界中の色々なメーカが採用していることに気がつく。
 先日のHill氏も、「祖父江氏に頼んで改造してもらった押して動くギヤは素晴らしい。あれも日本人が考えたそうだね。ずいぶん色々な会社で作られているね。」と言うので、「そうですよ。この雑誌です。」と棚の蔵書のMRの旧号を取りだして見せた。「おや、すぐわかるのかね ?」と聞くので、「どこかで御覧になった名前ではありませんか?」と著者名を見せた。
 彼はとても驚き、「どうしてそれを早く言わないのだ。もっと早くに招待していたのに。」と言った。
 MRに載るということは、とても重要なことだと彼は念を押した。

2011年04月26日

モータの界磁磁石を交換する

 Chicagoの O Scale Meet で Low-D 車輪の講演をした。その時、古いOpen Frameモータの界磁をネオジム磁石にするアイデアを披露した。親しい友人がそれを雑誌に発表すべきだと勧めたが、誰でも思いつくことだし、実際にやっている人もいる、と同意しなかった。
 第一アメリカでそんな磁石もあまり売っていないし、日本から飛行機で送ることができないから難しいと考えていた。

 先日送られてきたMicromarkのE-mailによる広告によると、同社はいわゆるPittman型モータ(TMSでは棒形モータと呼んでいた)のアルニコ磁石を取り替える磁石セットを売り出している。どの程度の磁石なのかはよく分からないが、大きさと吸着力から推測するとネオジム磁石のようだ。

 先日の記事にも書いたように、HOサイズの模型には大きな磁束密度を与えるとあまり効果はない。果たしてどの程度の効果があるのか知りたいものだ。 この広告を見ると、飛行機には載せられないので陸続きの48州しか配達できないとある。そのようなことを情報として明示しておくことは大切である。磁石を飛行機に持ち込むことができないということは意外と知られていないからだ。

 やはり鉄心の大きなOサイズの模型モータに採用すべきものであるように思う。  アメリカの友人にはLobaughの古いモータの入手を依頼しておいた。いずれいくつか集まるから、それらを再生しようと思う。回転数がかなり低下するから、歯車の減速比が小さくなる。すると必然的に”Free-Rolling”になる。このアイデアには彼らはかなり驚いたようだ。

2011年01月01日

続々々々々 慣性を増大させる装置

 
               謹賀新年 
 
 このあたりの構成はかなり面倒であるが、設計を試みていた。そうこうしているうちに、産業用の機器に組み込まれた遊星ギヤ装置があるので、その製造元からサンプルとして購入してみることになった。直径が36mm程度である。細いのは11mmというものもある。

 さらに小さなものを探すと、弦楽器のチューニングに使う物もある。ヴィオラ・ダ・ガンバのような大きなものの弦を張るのにはかなりの力が要る。それを同軸減速ギヤを用いて小さな力で行うようにした工夫である。 鉄道模型にはあまり用いられていない。モータ自身の中に組み込まれたものは最近よく見るが、単なるギヤボックスとしての使用例は見たことがない。

 遊星ギヤは同軸であるから、モータ軸の延長上に置くことが出来るし、効率が良い。1段で98%と謳っているものもある。悪くても90%だろう。2段でも80%ある。車軸にべべルギヤを用いればトータルでも70%くらいの伝達効率になるだろう。
 
 そろそろウォームギヤ一辺倒から脱却しても良い時期かもしれない。モータも今、低速回転モータを開発中で、それを使えばギヤなど不要になるかもしれない。

 新年早々 初夢にお付き合い戴いてありがとうございます。今年もよろしく。

2010年12月30日

続々々々 慣性を増大させる装置

 増速装置をどんな構造にするかは少々悩む。
 各軸同じように取り付けられたギヤボックスの上にギヤボックスを重ねてつけるのは、せっかくイコライズしているのに意味がなくなる。なるべくバネ下質量を小さくしておきたい。たいした質量ではないはずであったが、試作してみるとかなりの質量で驚いてしまった。
 駆動軸から平行にユニヴァーサル・ジョイントで動力を取り出し、床上に固定した増速装置につなぐ。
 スパーギヤで増速すると大きい方の歯車の収納に頭を悩ます。筆者は「全ての歯車は密閉式ギヤボックスに収める。」という主義であるので、大きな防塵ケースの取り付け空間を探すのは難しい。

 遊星ギヤのシミュレイタがここにある。この作動は小学生のころから興味があった。これを画面上で確認できるのは嬉しい。
 
 以前から気になっているものに、タミヤの遊星ギヤのキットがある。定価は1500円であるが、カーボンブラシ付きモータが付属していて、それにも興味があった。
 購入して内部を調べた。歯車の材質はエンジニアリング・プラスティックとあるので、油をつけても大丈夫なのだろう。
 子供のおもちゃとしてはよく出来ているが遊星ギヤの保持をしているキャリアがゆるい。3つの小さな遊星ギヤが完全な円運動をするとは思えない。ジャラジャラと音がするのは、その結果のような気がする。これを採用するのなら、その部分を作り直す必要がありそうだ。
 また大きなエネルギ伝達をするので、遊星ギヤ軸にもボールベアリングが必要であろう。
 
 このキットには1/4のセットと1/5のセットが2個ずつ入っているので全部を組み合わせると1/400というギヤ比も可能である。その1/4のセットの遊星ギヤが正三角形の頂点にはないことに気が付いた。
 多分サン・ギヤ(中心の歯車)とのかみ合わせの問題で遊星ギヤを保持する三角形のキャリアが変な動きをしたのだろう。3つのギヤに同じ力が掛かる位置を探してこうなったのだと思う。あまり賢明な設計とは思えない。歯数が少ない(14枚以下)であるから、通常の歯形では駄目である。

 実物は車の自動変速機の中にあり、はす歯歯車を使っているので噛合い率が一定でこのようなことは起こらないはずだ。普通の歯車では、噛合い率が低ければ歯を蹴飛ばす音がし始める。平行軸ドライヴならそれだけのことであるが、遊星ギヤの場合は、キャリアに不等な力が掛かって踊り始める。このようなことが分かったので、遊星ギヤホルダは別途ボールベアリングで二重軸にして支える必要が出てきた。改造は大変だ。根本的な設計変更が必要である。 

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2010年08月20日

Mike Hill氏を訪ねて  その8

control board Mikeのレイアウトは、いわゆるDisplay Layoutである。ディスプレイ・レイアウトには最小限のストラクチャーしかない。ヤードの収容量を限界まで大きくし、列車を順番に運転することを目的としている。エンドレス・トラックの内側はほとんどが留置線である。


 
old timerbaggagecoach その中にこの車輌があった。
 Mikeが、「これは間違いなく日本製であるが、どこにもその記録が見つからない。これを作ったのはだれかということが分からないか?」と聞く。
 残念ながら全く見当もつかない。全ての窓は糸鋸で抜いてある。大変な手間である。側板は卦書き針で筋を掘ってある。エッチングとかプレスを全く使わずに作ってあるのだ。屋根の絞りは叩き出しである。全て職人の技で作ってある。
 読者の皆さんの中で、多少なりとも見当が付く方は、どうかお教え願いたい。

 他に、NYCのモホークを見せられた。「不思議なことにこの機関車の記録もどこにもない。IMPの時代の前のものだろう。このキャブを見よ。」という。
 そこには機関車の番号が浮き出しになっていた。番号が切り抜き文字で貼ってあるのだ。IMPの時代のチャレンジャはそうなっているが、それ以外の機関車では例を見ない。
 筆者は「これは祖父江氏のカスタムの製品です。」と答えた。確証はなかったが、糸鋸で切った目を見るとそのような気がした。帰国後、当時の祖父江氏を知る人に尋ねた。「それは祖父江さんだね。エッチングで出来てくるのを待ちきれなくて糸鋸で抜いてしまうんだよ。腕に自信があるから全部手作りだよ。凄い速さで作ったね。」
 ということであったので、その証言を添えて連絡した。

 この号で マイク・ヒル氏の訪問記を終わる。

テキサスに来ている。今月一杯滞在予定である。しばらく休載させて戴く。

2007年11月13日

再度 All-NationのF3

 栗生弘太郎氏のOスケール・ミュージアムに新車登場である。

 先日来、筆者が「All-Nationは良い」と言い続けたので、ようやく腰を上げられたのだ。たまたま、塗装済があったので紹介して差し上げた。オークションの写真では暗くてよく分からなかったが、素晴らしい塗装だ。多少のはげはあるが一級の仕上げである。

 確かに、ブラスのF3,F7は少ない。後に韓国製はあるが、日本で作られたものはない。これを見れば「無駄な抵抗は止せ!」という感じがする。さすがのMax Grayもこれのブラス製は作る気がしなかったのだろう。All-Nationのセールス・コピィによれば、「本物の図面から型を起こしているので、正確無比」だそうだ。
 
 栗生氏は動力機構に興味を持たれたようだ。ドライヴ軸をモータ軸から平行に下ろすために、ヘリカルギヤが使ってある。

 実に静かで効率が良い。筆者も1台だけオリジナルのドライヴを持っているが静粛で力強い。全体が重いので、実に堂々とした走りである。全軸イコライズしてあるので、レイルの継ぎ目の音もよく響く。

 このような製品を1952年に売り出す国と戦争をしたのは間違いであった、と言うコメントを戴いている。この模型を手にすると、"King of All Scales"という言葉が思い出される。

 明日からそれについて書きたい。


2006年11月30日

トルクチューブ

torque tube トルクチューブの説明をしておきたい 。

 筆者は自動車の構造にも興味がある。もちろん、動力で動くものはみな好きだが…。
 小学生の頃、乗用車のスプリングは「リーフ・スプリング」であった。急加速するとばねが妙な形にねじれるのを知った。作用・反作用の原理で説明できた。ばねの隙間の摩擦が振動を吸収することもよくわかった。

 そのうちに「コイルスプリング + ショックアブソーバ + リンク」の時代が来て、リンクが反作用を受け持つのを知った。ショックアブソーバがないといつまでも車体の揺れが止まらないことも理解した。

 鉄道模型を、固定軸の「EB電関」というおもちゃで始めたころはわからなかったが、動輪がスプリングで可動するタイプの機関車を見て、これはインチキだと思った。というのは、反作用でギヤボックスが倒れてくるのを支えるものが何もない。怪しげなゴムのチューブでつながっていて、反作用があればそれがたわむ方向または伸びる方向に作用した。しかし、ゴムチューブは硬いらしくびくともしない。ということは、ギヤボックスの自由な運動を妨げている。TMSを読んでもほとんどそれに関する記述を見たことがない。

 しばらくしていすゞのジェミニという車が発売された。その動力伝達機構は、それまでのタイプとやや違っていた。反作用を受け持たせるリンクがなく、単純な構造であった。これでは走らないはずだと、よく調べたら、ドライヴ・シャフトが、やや太目のパイプの中を通っている。そのパイプの一端が車体に取り付けられている。これを「トルクチューブ」と呼んだ。当然、推進軸の反作用もそれで受けている。当時、いすゞはGMと技術提携していた。GMの車にはこれを採用したものが多い。ポルシェも採用している。

 うまい工夫である。これを採用しようと思った。構想を祖父江氏に伝えると、「それはいい」と採用され、標準仕様となった。現在、祖父江氏の工房で動力機構を改装すると、このタイプが採用されてくるはずだ。これは祖父江ドライヴとして確立された。

dda40x at 07:30コメント(5) この記事をクリップ!

2006年11月23日

斜歯歯車

kyusan.u.井上研究室website AJINに行っていた時、材質、加工、伝導など、ありとあらゆる相談を受けた。
 一番驚いたのはギヤボックスだった。ちょっとした工夫で、トラクション・モータ型のギヤボックスを作ってあり、中に平歯車を入れて2段減速の製品だった。

 「どうも調子が悪いので、どこを直せばよいのか教えてくれ。」ということであった。ふたを開けて驚いた。単純なスパーギヤではなく、斜(はす)歯歯車であった。

 斜歯歯車は、回転時にスラストを発生する。多段であれば、回転数が大きい時はトルクが少ないので歯の角度は大きくなる。低回転部分ではトルクが大きい分だけ、歯の角度を小さくする必要がある。

 一つの軸に大歯車と小歯車があれば、その両者が発生するスラストが打ち消しあうようにせねばならない。すなわち、歯の傾く方向は互いに逆向きになるべきである。

 ところが、見せられた製品はスラストが助長しあうようになっていて、モータの回転により、歯車がギヤボックスに強く押し付けられながら回転するようになっていた。摩擦は極めて大きい。それを指摘し、歯の角度を反転させたところ、極めて調子のよいものとなった。

 このようなことが次々に改善され、AJINの製品は急速に向上した。しかし、アメリカのインポータの意向で、押して動くギヤが採用されることはなかった。 Overland Models の技術力のなさが露呈していた。


 写真は自動車用の変速機の内部。ギヤ比に応じてねじれ角が変化し、なおかつスラストが互いに打ち消しあう設計になっている。 

dda40x at 07:23コメント(1) この記事をクリップ!
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