蒸気機関車 模型
2025年03月20日
HOギヤボックスの問題点

要するに、設計の段階でガタを無くするということを全く考えていなかったということである(図はゆうえん氏による)。
ウォームギヤの特質として、バックラッシをゼロにすることが出来るということがある。ゼロにすると、ギヤの精度のばらつきによって引っ掛かって廻らないことがありうるので、ほんの少し隙間が必要かもしれない。潤滑油が通るだけの隙間という表現が当たっていると思う。
この図では黒い部分が隙間で、動軸は上下するから、ウォームホィールの歯のどこにウォームの歯が当たるかは全く見当もつかない。その結果ガリガリゴリゴリという音が出るのだ。
図の赤線部分を削り取って動軸を寄せるとかなり良くなるそうである。しかし、それが設計時の位置なのかは不明だろう。また、反トルクをどこで承けるかを考慮してない場合も多いように見受けられる。トルクアームなどの簡単な装置を付けるネジ孔すらないというのは設計の不備であろう。
高効率ギヤは静かであるという定評を戴いているが、それはこの嚙み合わせ距離が正確に再現されているということなのである。まともなボールベアリングと支給された軸、正しい工具(リーマ)、ロックタイトを使えばだれでも所定の性能が出る。ここまで書いても、言うことを聞きたくない人がいるそうだ。本当に不思議だ。
2025年03月04日
PRR M1

KTMのK4の火室部が太いという話題は過去に出した。その点では、このM1はまずまずである。
40年前、吉岡精一氏がもう一輌のM1を徹底的に作り替え、フル・イコライジングとした。素晴らしい工作であったが、レイルの継ぎ目音がカツカツと響いた。その音が良いということだったが、筆者は好きではない。重ね板バネを付ければ一挙に解決なのだが、OJの人たちはバネをハンダで固めるのが習わしである。
もう20年以上昔、筆者が重ね板バネを装荷してイコライズされた機関車を持ってOJの集まりに行ったところ、
「アイツは分かっていない。」と言われたことがある。それ以降OJの集まりには行かないことにしている。これは宗教の一種であって、話合いでは解決しないのだ。
筆者の機関車はポイントのフログでドスドスという軽い音をさせて通過する。ハンダで固めたものはコツコツ、カチャカチャという感じである。どちらが長持ちするかは自明である。彼らは長距離を重負荷で走らせていないのだろう。

2025年02月28日
Santa Fe の Northern

実物は客貨両用の高速機で動輪径が80インチ(2032 mm)の巨人機である。砂漠の中を無停車で走るために長大な16輪テンダを付けていて、重油を27トン、水を92トンも積んでいる。
初期型は動輪径がやや小さい73インチ(1853 mm)であったが、進化して最終型は大きな80インチ動輪を付けた。圧力も 300ポンド(約21気圧)となり、極めて高性能な機関車となった。この模型の動力を改装してから、もう25年も放置してしまった。各種の部品をロストワックス鋳物に取り替えてあるが、動力逆転機が外れている。

「こんなのあり得ないよ。」しかし、ほとんどの線区でこの状態で走っていた。トンネルがひとつしかない鉄道であったからだ。
テンダはあまりに汚いので、洗った。 塗色が単色で簡単であるので、すぐ塗れるのだが、これも運転室が作ってないのだ。簡単に作って塗ってしまうことにした。
動力はUPのFEFと同等であり、高効率で静粛な動力伝達ができる。貨車100輌を牽いて、当レイアウトを周回できる。
2025年02月26日
Santa Fe の Texas

この機関車は祖父江氏のお気に入りで、「上手く出来た。」と自負していた。
「このでけぇ機関車が、どういうわけか知らねぇが急カーヴを曲がるんだよねぇ。1200Rでも通っちまうんだよ。面白ぇもんだよねぇ。」と言った。
テンダを作り直している最中に代わりのテンダをアメリカのジャンク市で見付けて購入した。この機種のテンダはかなり大量に輸入されていたらしく、あちこちで見たし価格も安かった。買ったと祖父江氏に伝えると、
「テンダなんて箱だよぉ、いっくらでも簡単にできらぁ。でもねぇ、ボイラはそうはいかねぇよ。苦労するぜ。」とのことであった。

この機関車の先台車は1軸であり、その復元力を強くしておかないと曲線から直線に入っても機関車がまっすぐ向かない。
強力モータを付けてあるので、単機で100輌牽いて坂を登れる。現物の写真もたくさん撮ってあるので、塗装が楽しみだ。
2025年02月24日
C62の動輪
C62 の動輪径は 1750 mm だ。1/42 にすると 40.7 mm である。1/45 ならば 38.8 mm だ。この差は無視できない。
手元に C62 用の動輪があった。それが昔の 1/43 用だと信じていたが、測定すると 39 mm であった。これは OJ用 であって、使えない。いくら磨り減ったタイヤでもここまでは小さくならないだろう。
動輪を沢山持っているが、その殆どがアメリカ型の動輪セットで、日本型に使えるものは少ない。41 mm 径はほとんどなく、42 mm径は沢山ある。80インチの機関車用だ。
80x25.4 ÷ 48=42.3という計算である。
タイヤはスティール製だ。磁石に付く。快削鋼でニッケルメッキが施してある。これは賢い方法で、見た目が綺麗で、走らせればタイヤ踏面が削れてスティールが出る。牽引力は大きい。相手がスティール製レイルであるということも大きなファクタだ。集電は良い。
さて、この 1/42 の C62 をどのように料理しようかと考えている。動輪を3Dプリントして、それをブラス鋳物にしてもらうという手がある。タイヤは快削鋼だ。ついでにクロスヘッドなども発注して磨き、メッキを掛ければ簡単だろう。
手元に C62 用の動輪があった。それが昔の 1/43 用だと信じていたが、測定すると 39 mm であった。これは OJ用 であって、使えない。いくら磨り減ったタイヤでもここまでは小さくならないだろう。
動輪を沢山持っているが、その殆どがアメリカ型の動輪セットで、日本型に使えるものは少ない。41 mm 径はほとんどなく、42 mm径は沢山ある。80インチの機関車用だ。
80x25.4 ÷ 48=42.3という計算である。
タイヤはスティール製だ。磁石に付く。快削鋼でニッケルメッキが施してある。これは賢い方法で、見た目が綺麗で、走らせればタイヤ踏面が削れてスティールが出る。牽引力は大きい。相手がスティール製レイルであるということも大きなファクタだ。集電は良い。
さて、この 1/42 の C62 をどのように料理しようかと考えている。動輪を3Dプリントして、それをブラス鋳物にしてもらうという手がある。タイヤは快削鋼だ。ついでにクロスヘッドなども発注して磨き、メッキを掛ければ簡単だろう。
2025年02月22日
C62
稲葉元孝氏の遺品のC62がある。機関車だけで 5.5 kgもある。高いところにあるのを左手で持ったら捻挫を起こしそうになったほど、重い機関車である。
カツミ製でボイラ、キャブが 0.3 mmの板なので、下手に持つとめり込んでしまう。さらに、台枠は 1 mm厚でへなへなである。台枠の下に線路ぎりぎりまで鉛のブロックをぶら下げてあり、それで牽引力を稼いだのだろう。当時の客車の抵抗は大きく、12輌編成を牽くには仕方が無かったのだろうが、これから鉛を外すだけでも大変な作業だ。ボイラ中には融けた鉛を注ぎ込んであるようにも見える。軸もクランクピンもガタガタに減っていて、修理するのはほとんど不可能である。
先日のクラブの年次総会でOZ氏が、三井金属が作ったダイキャスト製のC62を3輌分持って来た。それを改造してOゲージの線路を走らせようという相談だ。下廻りは筆者がブラスの平角棒からフライスで切り出す代わりに、上廻りを1輌分貰うことにした。
その上廻りを持ち帰って手元のカツミ製C62と比べると、ほとんど同じ大きさであった。公称 1/42 のダイキャスト製と 1/43とされている板金製とは同寸と言っても差し支えないほどであったのには驚いた。ひょっとすると、カツミ製を採寸して作った時に計算して1/42だと思ったのかもしれない。寸法は0.5 mm刻みに丸めてあるようだ。
このカツミ製は祖父江氏の設計であった。1/43にした理由は酒井喜房氏の計算による。Oゲージでは、クロスヘッドがクランクピンに当たらないようにするにはここまで大きくせねばならなかったのだ。このことは戦前に模型鉄道という雑誌に書いてあるから、いずれコピィをお見せしよう。
OJではそういうことは考えなくても良く、1/45になった。40年ほど前カツミから売り出された OJゲージC62も祖父江氏の設計である。筆者が名古屋の東山植物園に保存されていたC6217号を隅から隅まで撮影した写真から作られた。当時の園長氏にコネクションがあり、特別の許可を得て、上に跨って撮った写真だ。
それ以降のカツミ製 OJ模型は全て内野日出男氏の設計である。
動輪、従台車、テンダ台車などは持っているので、意外に簡単に組み替えられるような気がしてきた。ロッド類は3Dプリントで作って金属に置き換えれば簡単かもしれない。あまり手を掛けるつもりはない。ただ、改修を終えた「はと編成」を動かす機関車が必要なだけなのである。
カツミ製でボイラ、キャブが 0.3 mmの板なので、下手に持つとめり込んでしまう。さらに、台枠は 1 mm厚でへなへなである。台枠の下に線路ぎりぎりまで鉛のブロックをぶら下げてあり、それで牽引力を稼いだのだろう。当時の客車の抵抗は大きく、12輌編成を牽くには仕方が無かったのだろうが、これから鉛を外すだけでも大変な作業だ。ボイラ中には融けた鉛を注ぎ込んであるようにも見える。軸もクランクピンもガタガタに減っていて、修理するのはほとんど不可能である。

その上廻りを持ち帰って手元のカツミ製C62と比べると、ほとんど同じ大きさであった。公称 1/42 のダイキャスト製と 1/43とされている板金製とは同寸と言っても差し支えないほどであったのには驚いた。ひょっとすると、カツミ製を採寸して作った時に計算して1/42だと思ったのかもしれない。寸法は0.5 mm刻みに丸めてあるようだ。
このカツミ製は祖父江氏の設計であった。1/43にした理由は酒井喜房氏の計算による。Oゲージでは、クロスヘッドがクランクピンに当たらないようにするにはここまで大きくせねばならなかったのだ。このことは戦前に模型鉄道という雑誌に書いてあるから、いずれコピィをお見せしよう。
OJではそういうことは考えなくても良く、1/45になった。40年ほど前カツミから売り出された OJゲージC62も祖父江氏の設計である。筆者が名古屋の東山植物園に保存されていたC6217号を隅から隅まで撮影した写真から作られた。当時の園長氏にコネクションがあり、特別の許可を得て、上に跨って撮った写真だ。
それ以降のカツミ製 OJ模型は全て内野日出男氏の設計である。
動輪、従台車、テンダ台車などは持っているので、意外に簡単に組み替えられるような気がしてきた。ロッド類は3Dプリントで作って金属に置き換えれば簡単かもしれない。あまり手を掛けるつもりはない。ただ、改修を終えた「はと編成」を動かす機関車が必要なだけなのである。
2025年02月20日
cab interior

その昔、アメリカの輸入業者 Max Gray はこのような怪しいバックヘッドを付属させていた。大型機も小型機も同じで、軟らかい鉛合金製だった。いくら何でも、これではまずいと思い、自分で作ることにしたのだ。
しかしここに拘ると永久に出来ないので、前回の 2-8-0 では大幅に譲歩してそれらしく作っただけである。その前の ATSF 4-6-2 でもかなり手を抜いた。
覗き込む人は居る。しかし多分知らないだろうとは思いつつ、 分かっている人が見るとどう思われるかと考えると、手を抜けなかった。それで30年ほど呻吟していたのだ。
最近はあちこちで保存機の蒸気機関車を動かしている。その様子の動画などを見るとキャブ内が写るが、外から写しているので、ほとんど分からない。それを見て少し勇気が湧き、簡単に作ることにした。

左の図はUPのFEFの cab interior である。この通り作ったので大変な手間が掛かった。これは図面が手に入ったので、その意味では楽であった。無いとかなり困る。
塗装してはめ込むと気分が良い。ハンドル部には例の赤い塗料を塗るのがミソである。これが塗ってあると、殆どの人の眼はそれに注意を奪われ、部品や配置については注意力が向かないようだ。
2025年02月04日
Overland (UP の 4-10-2) を作る

HOの模型は KTM-WSM で出ているが、あまり正確でない。SP5000のテンダを替えただけであり、砂箱などはやや不思議な形である。また、8800と謳っているがこれは就役当初の8000型である。
この機関車を知っている人は極めて少なく、作ってみたかった。図面は手に入れてあるから、ボイラは自作することにした。テンダは SP のものに長さは近いが、後半の断面形状が異なる。就役当初は石炭焚きであったが、すでに戦前に重油焚きに改造されていた。すなわちテンダはオイルタンクを積んでいる。


祖父江氏はギヤボックスが横から見えるのは避けたかった。なるべく目立たないようにするには縦に細長くして、エアタンク部で隠すのが良い。アイドラ・ギヤを挟んで伸ばしている。当初はアイドラ・ギヤなしでトルクチューブが斜めに伸びているものが多かったが、横から見ると見えてしまう機種があった。ギヤを挟むと効率が低下するが、祖父江氏は互いに素でしかも正しい歯数のギヤを使ってそれを解決している。きわめて静かで逆駆動しても抵抗を殆ど感じない。
潤滑はモリブデン・グリースである。祖父江氏はこのグリースを使うとあまりにも摩擦が減るので驚いた。ウォーム・ギヤには不可欠である。

当初は90度クランクで行こうということになっていた。両側を同時に見る人は居ないので、中央クランクを135度にすれば、模型の走行としてはまず見破られることはないと考えた。しかし、アメリカサイドからは「120度にしないと買わない」と言って来たので、方針を変更した。120度クランクで絶対に躓かないような加工精度を確保するのは難しいと祖父江氏は言っていたが、出来たものはみな素晴らしい走りを見せた。その点でもこの模型は特筆すべきものである。
ボイラとキャブは 90% 出来ているが、テンダは ほとんどできていない。SPのテンダを切り縮めて、継ぎ足すのだ。ここまで来て放置されているので、早く決着を付けたい。毎日やれば100時間くらいで出来そうだ。その種の工作は得意だが、祖父江氏が見たらきっとこう言うだろう。
「そんなまどろっこしいこたぁやめて、捨てっちめぇ。一から作っちまった方がよっぽど早えぜ。」
2025年02月02日
UP の Southern Pacific

運用区間はロスアンジェルス東方のカホン峠である。3気筒機は、2気筒機に比べ、動軸1回転のうちのトルク変動が少なく、勾配での牽き出し能力が勝っていた。SP は50輌以上保有していたが、UP は10輌ほどだった。番号は 8000 と付けられたが、後に8800 と改められた。
しかし、UP はこの3気筒の機関車の出力と速度に不満であった。この動輪径は 63インチ(1600 mm)であったが、少し大きくして 67インチ(1702 mm)とし、さらに1軸足して UP9000 4-12-2 を発注した。これは速度、牽引力とも十分に満足できるものであって、UPは 88輌も購入し、シャーマン・ヒルの勾配線で使われた。しかし、急曲線に強い単式関節機のチャレンジャが登場すると、それらは勾配線ではなくシャイアンより東側の区間で貨物用として用いられた。そういうわけで UP8800 はカホン峠だけで使われた。
3気筒の機関車は田舎では数が少ないので保守コストがかさんだ。1942年にこれを2気筒に改造したものが UP5090 で、カホン峠で蒸気機関車の終焉まで使われた。カホン峠は急曲線が続くので、固定軸距離が長い UP9000 には向かなかったのだ。第二次世界大戦末期にはこの区間にBig Boyを入線させる計画もあった。関節機は曲線でも無理なく使えたからだ。良い水が無いので、テンダを延長し、8軸としたものを採用する計画であったそうだ。
祖父江氏と筆者が改良に取り組んだ SP5000 を Sofue Project として生産することになった。筆者はそれを改造すれば UP8800 になるはず、とその工程を調べ始めた。
2025年01月31日
SP の Southern Pacific(Max Gray)
軸配置 4-10-2 を ”Southern Pacific” と呼ぶ。SPの注文で作られたのが最初だからだ。この模型はMax Gray向けで、製造は祖父江氏だった。
「こいつにゃあ、苦労したぜ。」と言う。サンドドームを貫通しているスロットルの引き棒の孔を前後で合わせるのが大変だったそうだ。ガタの無い孔で、なおかつ引き棒が曲がってはいけない。正確なジグを作り、ケガキを入れたという。これは難しそうだ。
この SP はアメリカの中古市場で破損品を入手したものだ。徹底的に修理して先輪の復元機構を作り、動力機構を取り替えた。祖父江氏が「あんたもよくやるよねぇ」と呆れるほど手を加えた。3気筒だから先輪の復元機構の厚さがほとんど取れない部分であったが、V字の斜面で正しくセンタリングする機能を持たせるように設計し、作り直した。
3気筒機であるから、中央クランクを作動するように改造した。しかしそれは祖父江氏の目には適わず、さらに2回も改良工事を受けている。この件については以前にも述べた。
外観は完成しているが、キャブ内が作ってなかった。そのまま30年近く放置してあったのだ。極めてよく走り、どんな線路状況でも脱線したことがないので、救出用の機関車として重宝していた。自宅のレイアウトで手が届きにくい場所で脱線した貨車があっても、連結さえできれば牽き出せる。牽引力は大変大きく、信頼性があった。
これもキャブ内を適当に作って塗ることにする。重油専焼型の焚口戸はたくさん用意してある。後はメータ類とブレーキだけだ。その程度の部品が付いていれば、文句はない。
32年前この機関車がほぼ完成した時、神戸の震災で亡くなった魚田真一郎氏に見せた。彼はその構成と走りに驚嘆した。
「こんなに実感的であって強力で、滑らかに走る機関車は世界中のどこにもない。」と褒めちぎった。
それでこのレヴェルの機関車を祖父江氏に作って貰い、世に残すべきだと、祖父江プロジェクトを立ち上げたのだ。
全軸イコライジングで、模型としての完成形を作ろうというものである。祖父江氏という類稀なる能力を持つ人に、正しい資料を適切に提供し、物理的、工学的な監修を施した世界最高の模型を作って貰おうということになった。日米の模型人と交渉して、販売先を確保しつつ、資料と部品の入手に尽力した。晩年の祖父江氏はこれらのプロジェクトで忙しかったが、きっと幸せであったと思う。
Sofue Projectとして8機種の製品が誕生し、それらはOゲージ鉄道模型の最高傑作とされている。
この機関車は動輪径が63インチ(1600 mm)であって、固定軸距離がそれほど大きくはないので急曲線の続くSPの山岳路線では重宝されたのだ。
「こいつにゃあ、苦労したぜ。」と言う。サンドドームを貫通しているスロットルの引き棒の孔を前後で合わせるのが大変だったそうだ。ガタの無い孔で、なおかつ引き棒が曲がってはいけない。正確なジグを作り、ケガキを入れたという。これは難しそうだ。


外観は完成しているが、キャブ内が作ってなかった。そのまま30年近く放置してあったのだ。極めてよく走り、どんな線路状況でも脱線したことがないので、救出用の機関車として重宝していた。自宅のレイアウトで手が届きにくい場所で脱線した貨車があっても、連結さえできれば牽き出せる。牽引力は大変大きく、信頼性があった。
これもキャブ内を適当に作って塗ることにする。重油専焼型の焚口戸はたくさん用意してある。後はメータ類とブレーキだけだ。その程度の部品が付いていれば、文句はない。
32年前この機関車がほぼ完成した時、神戸の震災で亡くなった魚田真一郎氏に見せた。彼はその構成と走りに驚嘆した。
「こんなに実感的であって強力で、滑らかに走る機関車は世界中のどこにもない。」と褒めちぎった。
それでこのレヴェルの機関車を祖父江氏に作って貰い、世に残すべきだと、祖父江プロジェクトを立ち上げたのだ。
全軸イコライジングで、模型としての完成形を作ろうというものである。祖父江氏という類稀なる能力を持つ人に、正しい資料を適切に提供し、物理的、工学的な監修を施した世界最高の模型を作って貰おうということになった。日米の模型人と交渉して、販売先を確保しつつ、資料と部品の入手に尽力した。晩年の祖父江氏はこれらのプロジェクトで忙しかったが、きっと幸せであったと思う。
Sofue Projectとして8機種の製品が誕生し、それらはOゲージ鉄道模型の最高傑作とされている。
この機関車は動輪径が63インチ(1600 mm)であって、固定軸距離がそれほど大きくはないので急曲線の続くSPの山岳路線では重宝されたのだ。
2025年01月23日
Texas and Pacific の Texas


サンドボックスは増設した。裾の丸味はハンダを盛ったものである。これは上手く出来なかったので、祖父江氏にやってもらった。
祖父江氏は大きな銅の焼き鏝を加熱して、サンドボックスをボイラに付けたままで、ひょいひょいと廻して盛ってしまった。その間約2分である。達人の技を近くで見られて幸運であった。50%ハンダを使ったのを確認した。
この機関車は Lima 社の自信作で、主台枠が途中で切れている珍しい一群である。Super Powerというシリーズだ。従台車は無く、曲がる主台枠の後半が、従台車の代わりをする構成であった。Articulated Locomotive という本では、この機関車を関節式の中に入れているほどである。

模型もその構造を再現し、ドロー・バァ(機炭間の連結棒)は後部台枠から出ている。祖父江氏は、「主台枠はここで切れちまって後ろはねぇんだよ。でもねぇ、模型じゃ、モータを入れにゃならねえんでね。」と言った。そのための薄い台枠が火室の途中まで伸びていたのだ。しかしコアレスモータが付いていれば、それは不要であるから切ってしまうつもりだ。
この機関車には祖父江氏の双方向クラッチが付いている。うっかりして箱の中に転動止めの詰め物をするのを忘れて、工作室から撮影のため動かした途端に機関車が動いてカウキャッチャがつぶれた。また作らねばならない。
双方向クラッチはどうも都合が悪いものだ。動輪軸を外して、新規に製作した高効率ギヤ付の動輪軸に取り替える必要がある。これで壊したのは2回目だ。やる気が失せる。
2025年01月21日
Lobaugh の 2-8-4(CNW)

他にも彼が組んだものはあったが、仕掛品はこれだけだった。驚くべきことにディカールが付属していた。1950年代のかなり印刷の甘いものではあったが、使えるかもしれない。早速、膜の補強剤を塗っておいた。駄目なら買い替える。
Lobaugh はその当時からロストワックス鋳物の部品を付属させていた。惜しむらくは、従台車、テンダ台車が軸箱が非可動で、走らせるとオモチャっぽい音がすることだ。すべての軸箱を可動にした。ウェイトは全く付けていないのだが、とても重い。構成材料が分厚いものばかりだからだ。
ボイラは厚肉ブラスパイプを焼き鈍して外型の中に入れ、その内部にプランジャを油圧で押し込み膨らませて作っている。金属バットと同じ製法であり、外型に彫り込んであるディテールが転写されつつ、テーパのあるボイラが出来る。リヴェットなどは完全に表現されているし、各種の補機などの取付穴も同時成型である。それをフライス盤で削ってラニングボードの嵌まり込む溝を付けている。外型は2つないし、3つに分かれるようになっているようだ。火室部分だけが 0.8 mm 程度の厚さの板金工作である。


当時は機関車だけを売っていた場合もあり、テンダは好きなように自作するのが普通だった。木製のテンダもよくあったのだ。
日本製の模型が輸入されるようになり、テンダだけ欲しがる顧客がたくさんいた時代だ。様々な日本製テンダが売りに出ていた。多少形が違っていても文句は言わない人が多かった。あるいは自分で改造する人も居た。
2025年01月19日
Lobaugh の姿勢


地下室の整理をして発掘した機関車の修理・整備・塗装を始めたのだが、あまりにも表面が汚いとやる気が失せる。筆者の処方で酸洗いした。
2種のブラスの色に注目されたい。写真ではその違いが分かりにくいが、肉眼では全く異なって見える。ロボゥのブラスは黄色いのである。どちらかと言うと黄緑色に見えるほどだ。
対するKTM 製は赤い。洗い立てはピンクに近い。銅の含有率を調べると、日本製は80%だ。アメリカ製は75%ほどである。快削性が異なり、日本製には粘りがある。曲げやすく、曲げたものを伸ばしてもう一度曲げても割れない。アメリカ製はそういうことをすると割れてしまうが、糸鋸、ヤスリ掛けは容易だ。
1960年当時、Max Gray は日本のブラスをred brass と呼んで持ち上げた。yellow brass より高級だとしたのである。
筆者はアメリカ製のブラス板を各種持ち帰って、祖父江氏に比べてもらった。両方使ってみて、「あたしゃぁ、やっぱ日本製だね。絞り出せねぇと困るんだよぉ。」と言った。

単純な話だからすぐお分かりになる話だが、進み角を大きくするには、径を小さくせねばならない。実は40年ほど前、最初の3条ウォームを作った時にこの方法で 5 mm軸そのものに歯切りすることも考えた。そうするとボールベアリングの大きなものを採用せねばならなくなり、周速度が大きくなって軸受の中での損失が増えると考え、軸を細くしたのだ。このロボゥの時代はモータがオープン・フレイムの時代だから、その効率は低く、問題にならなかった。当然のことながら、”Free to Roll” とは謳っていなかった。マグネットモータが廻りにくくて、押しても殆ど動かなかったのだ。
歯数は 2/35 で、互いに素になっていることは言うまでもない。良く出来ている。どこかのお間抜けな3条ウォームと比べるのも空しいが、機械工学の分かっている人の製品は大したものである。

ロボゥという会社は、精密機械工作(特殊ネジの製作)を稼業としていた。模型部門は社長の趣味を副業として発展したが、社長の死と共に消滅した。筆者はかなりの数の製品を持っているが、どれも正しい理論に基づいて作られ、当時としては世界最先端の模型を作っていたはずだ。動力部はモータを取り替えるだけで、素晴らしい動きをする。
筆者の高効率ギヤ装置には最適の大きさのボールベアリングが使用されているので、半径比による損失が最小となっていて、それが高効率の実現に貢献している。また、歯車の材質を吟味し、仕上げ精度をさらに上げているので、ロボゥより良くなっている。ギヤを設計するというのは寸法を算数で決めることではなく、歯形をかなり面倒な計算で求めねばならない。歯車屋に行って「これと同じものを作れ」と言ってもできない。そういうことをした人は居るようだが、出来て来たものは動きが渋いのは仕方ない。
2025年01月17日
続 UP7000(Lobaugh製)

通電すると起動に 3 A も喰ったが、12 V で適正速度であった。モータを外し、動輪はフランジの形の良いKTM製と取り替えた。軸が1/4インチ(6.35 mm)であるのは太過ぎるので、5 mm軸にした。軸箱は3/8インチ(9.52 mm)角である。これを10 mm角にした。ボ−ルベアリングは内径 5 mm、外径 8 mm で統一している。
このボイラはとても重い。厚さが 3 mm弱のブラスパイプでできていて、内外の型の中で押し出されて作られている(後述する)。
直接のハンダ付けは難しいので、あちこちに孔をあけ、2-56(約 2.2 mm のネジ)のタップを立てている。相手が厚いのでネジはよく利いている。
この機関車には、形だけは正しいYoung 式ヴァルヴギヤが付いていたが、理屈を理解しているようには見えなかった。
モーション・プレートがヤング式用のものなので、丁寧に作り替える予定だ。構造は難しくないので、壊れにくく作って動きを楽しみたい。
このヤング式は祖父江氏が作ってみたいとは言っていたが、実現されなかった。おそらく実物通りに作動する模型は日本にはないのではなかろうか。
テンダは異常に重い。1.7 kgもある。普通は 500 g程度であるはずだ。床板は鋳物である。タンク部はエンドも一体の構造で、厚肉パイプである。前方の四角の炭庫部分は鋳物を削り出してある。踏んでも壊れないだろう。側面に付いている工具箱はムクの角棒を削ったもので、厚板を組み合わせてテンダ台枠にネジ留めである。
台車は捨ててバネの利くKTM製に取替え、ボールベアリングを仕込んで Low-D 車輪を付けたので、実に滑らかに走る。バネがつぶれているので、硬いバネに取り替えざるを得ない。
2025年01月15日
UP7000(Lobaugh製)
当時はこの UP7000 (4-8-2) とUP5000(2-10-2)とを補機として使用するような勾配のあるレイアウトを考えていたので、複数欲しかった。この機関車の形が気に入っていたこともある。いかにもUPらしい形だ。
もう1輌のロボゥの機関車の主台枠は鋳物で新製した。細かい細工をしているときに少し捻じれてしまい、戻すと折れそうになったからだ。太いネジ貫通孔を沢山あけ過ぎである。これはロボゥの欠点だ。主台枠は作り替えることにした。
祖父江氏は中に補強を入れれば捻りに耐えるようになるので、実用になるとは言う。預けていた別の台枠が帰って来たものを見たら、なんと厚さ 5 mmの板を切ったものを3枚もはめ込んでハンダ付けしてあった。さらに軸箱護りが実物のように噛み合うようにしてあったのだ。これくらいやれば壊れないよ、ということであったが、もっと単純な解決がしたかった。
その頃偶然に高岡の鋳物屋さんと知り合い、発泡スチロールで原型を作る鋳造法の話を聞いたので、お願いした。砲金で作って欲しいと言うと、配合を聞かれた。単に快削の砲金としか考えていなかったので、水道の止水栓をばらして送り、それで鋳造してもらった。
この原型は鋳縮みを計算して作る。砂に埋めて固めたのち、熔湯を注ぐと発泡スチロールは蒸発して空洞になり、その空間が金属で置き換わるという手法だ。発生するガスは負圧にして吸い出すのだ。
鋳物が出来上がったが、一部失敗して欠損したと言う。新たにやり直すにはもう一つ原型が必要なので、そのまま発送して貰った。台枠の後ろを切り離して削り、ブラスの塊を嵌め込んでハンダ付けしてから、縦フライスで切り出した。難しい仕事ではなかった。
軸箱護りもフライスで削り出し、パイロットをガス火で焙ってハンダ付けした。シリンダはロボゥの製品だ。上廻りを載せ、高さを調整してネジで締めた。製品よりかなり重くなった。台枠が厚い鋳物になったからだ。しかもネジは細い M2 の止まり穴だから折れることはない。しかしタップは#3まで使って奥までネジを切る必要がある。ガラはこういう仕事では威力を発揮する。
テンダはロボゥのオリジナルだ。かなり重厚な感じであるが、好きな形ではない。台車は非可動の砲金鋳物なので、捨ててバネの利くKTM製に取替える。
もう1輌のロボゥの機関車の主台枠は鋳物で新製した。細かい細工をしているときに少し捻じれてしまい、戻すと折れそうになったからだ。太いネジ貫通孔を沢山あけ過ぎである。これはロボゥの欠点だ。主台枠は作り替えることにした。
祖父江氏は中に補強を入れれば捻りに耐えるようになるので、実用になるとは言う。預けていた別の台枠が帰って来たものを見たら、なんと厚さ 5 mmの板を切ったものを3枚もはめ込んでハンダ付けしてあった。さらに軸箱護りが実物のように噛み合うようにしてあったのだ。これくらいやれば壊れないよ、ということであったが、もっと単純な解決がしたかった。

この原型は鋳縮みを計算して作る。砂に埋めて固めたのち、熔湯を注ぐと発泡スチロールは蒸発して空洞になり、その空間が金属で置き換わるという手法だ。発生するガスは負圧にして吸い出すのだ。
鋳物が出来上がったが、一部失敗して欠損したと言う。新たにやり直すにはもう一つ原型が必要なので、そのまま発送して貰った。台枠の後ろを切り離して削り、ブラスの塊を嵌め込んでハンダ付けしてから、縦フライスで切り出した。難しい仕事ではなかった。
軸箱護りもフライスで削り出し、パイロットをガス火で焙ってハンダ付けした。シリンダはロボゥの製品だ。上廻りを載せ、高さを調整してネジで締めた。製品よりかなり重くなった。台枠が厚い鋳物になったからだ。しかもネジは細い M2 の止まり穴だから折れることはない。しかしタップは#3まで使って奥までネジを切る必要がある。ガラはこういう仕事では威力を発揮する。
テンダはロボゥのオリジナルだ。かなり重厚な感じであるが、好きな形ではない。台車は非可動の砲金鋳物なので、捨ててバネの利くKTM製に取替える。
2025年01月13日
UP7000
以前完成させたのはこの機関車だ。細密度はこの程度に抑えたもので十分としている。
あと、これと同型の KTM製2輌と、Lobaugh製1輌 がある。図面を調査すると、Southern Pacific のマウンテン MT は、UP の7000型の同型機であることが分かる。動輪は73インチ(1854 mm)で、パシフィックよりも小さい。これらは当時世界最大のマウンテンであって、最強力機でもあった。当時はSPとUPは同じ機種を採用していたことが多い。Max Gray がこの二社の機関車の模型を相次いで発売したのは当然である。
祖父江氏が MT を作り、それを KTM の別の下請け工場でコピィしてUP7000を作った。そのコピィの方をジャンクで手に入れた。テンダが無かったのでスクラッチから作った。UPの9000 (4−12−2) のテンダと同形のものを設計した。材料が厚過ぎて重くなったが、ボールベアリングを付けてよく走るようにした。それを別の機関車に流用したので、この写真のテンダはSP5000用を仮に置いてある。
1977年、ボールベアリングの装着を始めた頃だった。重いテンダの走りを改良するためにはボールベアリングを入れるしか方法がなかった。機関車の改良はその後である。
祖父江氏に見せると、「こいつぁ参ったね。こんなによく走るたぁ思わなかったよねぇ。よぉし、機関車に付けてやらぁ。」と言って、機関車にボールベアリングを装着した。
驚いたことに、その改装が終わった機関車には双方向クラッチが付いていた。工場の試運転線のSカーヴを端から端まで惰力で走った。当時は逆駆動できるギヤが無かったし、コアレスモータも手に入らなかった時代だったからだ。
「素晴らしいですね!」と褒めると、祖父江氏は自虐的に言った。
「おいおい、勘ちげぇしちゃあいけねぇよ。こいつぁオモチャだぜ。本線上でこんな走りじゃあ、事故を起こしちまわぁ。」
その通りである。合葉氏も同じことを言われた。筆者は祖父江氏が作ってくれた双方向クラッチを装備したパシフィックを持っているが、本線上で走らせたことはない。試運転線でも完全に平坦であることを確認していないと、怖くて運転できない。摩擦の多い車輌を牽けばそれなりの走りを示すだろうが、単機では危ない。そういうことを知ってか知らずか、この機構をほめそやす人が居るが、危ない話である。ボールベアリングを装備した客車を牽かせるのは怖くてできない。
あと、これと同型の KTM製2輌と、Lobaugh製1輌 がある。図面を調査すると、Southern Pacific のマウンテン MT は、UP の7000型の同型機であることが分かる。動輪は73インチ(1854 mm)で、パシフィックよりも小さい。これらは当時世界最大のマウンテンであって、最強力機でもあった。当時はSPとUPは同じ機種を採用していたことが多い。Max Gray がこの二社の機関車の模型を相次いで発売したのは当然である。
祖父江氏が MT を作り、それを KTM の別の下請け工場でコピィしてUP7000を作った。そのコピィの方をジャンクで手に入れた。テンダが無かったのでスクラッチから作った。UPの9000 (4−12−2) のテンダと同形のものを設計した。材料が厚過ぎて重くなったが、ボールベアリングを付けてよく走るようにした。それを別の機関車に流用したので、この写真のテンダはSP5000用を仮に置いてある。
1977年、ボールベアリングの装着を始めた頃だった。重いテンダの走りを改良するためにはボールベアリングを入れるしか方法がなかった。機関車の改良はその後である。
祖父江氏に見せると、「こいつぁ参ったね。こんなによく走るたぁ思わなかったよねぇ。よぉし、機関車に付けてやらぁ。」と言って、機関車にボールベアリングを装着した。
驚いたことに、その改装が終わった機関車には双方向クラッチが付いていた。工場の試運転線のSカーヴを端から端まで惰力で走った。当時は逆駆動できるギヤが無かったし、コアレスモータも手に入らなかった時代だったからだ。
「素晴らしいですね!」と褒めると、祖父江氏は自虐的に言った。
「おいおい、勘ちげぇしちゃあいけねぇよ。こいつぁオモチャだぜ。本線上でこんな走りじゃあ、事故を起こしちまわぁ。」
その通りである。合葉氏も同じことを言われた。筆者は祖父江氏が作ってくれた双方向クラッチを装備したパシフィックを持っているが、本線上で走らせたことはない。試運転線でも完全に平坦であることを確認していないと、怖くて運転できない。摩擦の多い車輌を牽けばそれなりの走りを示すだろうが、単機では危ない。そういうことを知ってか知らずか、この機構をほめそやす人が居るが、危ない話である。ボールベアリングを装備した客車を牽かせるのは怖くてできない。
2025年01月11日
Southern Pacific の Mountain


キャブの中は見えにくいので、いつものようにごく適当に仕上げた。美しい塗装ができれば、誰も文句は言うまい。
配管はある程度正しく、綺麗に仕上げなければならない。給水温め器は日本にはないタイプだ。
数輌の客車を牽いて走ればよいので、走りは静かであれば合格点を与えられる。
この調子で行けば、毎月1輌完成させられるかもしれない。ディーゼル電気機関車と異なり、全て異なる細工なので気が滅入ることがない。塗装も楽しい。ディカールは全て用意してある。
2025年01月09日
続 UP Mikado

煙室の真下にはリヴェットのついた補強板を当てる。その場所を用意しておいた。それを付けるとボイラ中心が少し上がるから、キャブも持ち上がる。そうするとテンダの炭庫の肩の曲がり具合との整合性がよくなる。この部分の整合性が無い模型はたまに見るが、変なものである。Rivarossi のUP FEF3はそれだ。Big Boyのテンダを流用しているので、肩の曲線が全く合っていない。 これは椙山氏ものちに同じことを仰っていたのを記憶している。アメリカの雑誌の記事で、それを修正したテンダを作った話があった。
カウ・キャッチャは硬い材料のものに取り替えたい。ラニングボードは短くして段を付け、その下にエア・コンプレッサを2台付ける。
また、シリンダ部上の排気管(左右で2本)は少し長さが足らなくなりそうで、継ぎ足す方法を考えねばならない。 設計してから作っているのではないので、あちこちを補正しながらの作業である。1輌しか作らないものであるから、気楽である。
キャブはハンダが剥がれて分解してしまった。焼き鈍された板をエッチングしてハンダ付けしてあるが、彼らにはその技量がない。
持つと多少歪む。それが累積するとハンダが割れ、壊れてしまったのだ。硬い板で裏打ちをして、角には角棒を入れて作り直す。
このように補強していくと、完成時には元の製品とは全く異なる剛性のある機関車になる。
2025年01月07日
UP Mikado

砂箱は1つのタイプにする。もう一つ載せたいのだが、そうするとベルを付ける場所に悩む。先回の写真のように煙室前の上に付けると、引っ掛けて壊し易い。

このアジン製の製品はハンダ付けが稚拙で、様々な部品がぽろぽろ落ちる。すべて外してやすりを掛け、63%ハンダで付け直す。接合面に完全に沁み込ませるのだ。
蒸気機関車の製作は、走行装置さえ正しくできれば、上廻りはごく適当に作っている。気に入った写真があって、それらしく見えればOKだ。もちろん各種の機器の機能を理解して、文句を付けられない程度の仕上がりにする。人間が歩く部分は、実際に人形を当ててみて、手摺に手が届くか調べる。これは大事なことだ。
2024年12月30日
3-truck の Climax


様々な部品を手作りしたり、筆者の在庫品から融通して、2年近い時間を掛けて完成したのだ。この機関車の煙突は細いものになった。2-truck の方の太い煙突には、中に小型のスピーカが入っている。
滑らかな走りである。当初は押して動くようにするつもりであったそうだが、ギヤ比がある程度高い構造なので、下手をすると壊れる可能性がある。無理に押すのは遠慮している。
塗装をするべきなのだが、ブラスの鈍い艶が何とも言えない。日本製のブラスではないので、緑がかった光沢である。F氏の奮闘を称えて、しばらくこのままで飾っておきたい。
2024年12月28日
Climax の rollout
F氏に組立調整をお願いしてあった Climax が完成した。帰省の途中に博物館に寄って下さったのだ。試運転を見せてもらった。よく走る。
その後で、3階に資材を運び上げるのを手伝って戴いた(後述)。
この機関車のキットは Lobaugh の製品だ。1960年頃に発売になったが、それが走るところを見た人が居ないと言われて来た。
144輌作られたそうだが、誰一人として完成させられなかったようだ。要するに、根本的に無理な設計であって、動くわけがないのだ。これは Rollin Lobaugh 氏が既に老齢で、直接手を下した模型ではなかったというのが原因だ。彼は動きにはうるさい人だった。筆者は何輌か持っているが、当時としてはよく出来た走行装置を持っている。モータはコアレスに替えるが、他は手を入れなくてもなかなかよく走るのだ。なんと潤滑油を入れ替えると、押せばかろうじて動くものがある。当時から2条ウォームを採用したものがあったからだ。ウォームの前後にはボールベアリングが装荷され、スラストを受けていた。そのボールベアリングのグリースが粘いので、洗って入れ替える必要がある。
O Scale West などの会場で完成品をたまに見たが、staticな模型(動かない模型)であった。飾りに置いておくものだと言う。それにしては高かったので誰も買わなかった。。
それから30年、筆者の長年の友人の Bob Stevenson氏が Lobough の在庫、金型一式を買い取ったと知った。彼は筆者に電話を掛けて来た。
「Hey Tad、お前の好きなLobaugh の Climax だぞ。買うだろ?」価格は約400ドルだった。当時の物価水準では高くはなかった。しかし当時、筆者は忙しく、組む時間がとれなかった。
その後土屋氏が、「何かキットを組みたい。とびきり難しいのが欲しい。」とおっしゃるので、とりあえず譲り渡した。数年後土屋氏は亡くなり、未成品が残された。
それをF氏に見せたところ、「組み立てて走らせてみたい。」とおっしゃるのでお願いした。その後の奮闘は時々お知らせしているが、かなり困難なものだったようだ。動力伝達部分は100%作り直している。
その後で、3階に資材を運び上げるのを手伝って戴いた(後述)。

144輌作られたそうだが、誰一人として完成させられなかったようだ。要するに、根本的に無理な設計であって、動くわけがないのだ。これは Rollin Lobaugh 氏が既に老齢で、直接手を下した模型ではなかったというのが原因だ。彼は動きにはうるさい人だった。筆者は何輌か持っているが、当時としてはよく出来た走行装置を持っている。モータはコアレスに替えるが、他は手を入れなくてもなかなかよく走るのだ。なんと潤滑油を入れ替えると、押せばかろうじて動くものがある。当時から2条ウォームを採用したものがあったからだ。ウォームの前後にはボールベアリングが装荷され、スラストを受けていた。そのボールベアリングのグリースが粘いので、洗って入れ替える必要がある。
O Scale West などの会場で完成品をたまに見たが、staticな模型(動かない模型)であった。飾りに置いておくものだと言う。それにしては高かったので誰も買わなかった。。

「Hey Tad、お前の好きなLobaugh の Climax だぞ。買うだろ?」価格は約400ドルだった。当時の物価水準では高くはなかった。しかし当時、筆者は忙しく、組む時間がとれなかった。
その後土屋氏が、「何かキットを組みたい。とびきり難しいのが欲しい。」とおっしゃるので、とりあえず譲り渡した。数年後土屋氏は亡くなり、未成品が残された。

2024年12月26日
TMS 301号

読んだ覚えはあるが、ほとんど記憶には残っていない。あらためて読んでみると、確かにゴム・ジョイントの話が出ている。図を見れば読まなくても分かる程度の話だ。他の部分も特に学びがあるという記事でもない。

また、ギヤボックスが左右に傾くのを防ぐために詰め物をするなどと書いている。また、左右に振れると音が出るという解釈も書いてある。
何のためのギヤボックスなのか、よく考えて欲しいものだ。ギヤボックスは、歯車にトルクが掛かった時に軸距離が離れようとする(反発力)のを押さえ込む装置である。すなわち軸にはガタがあってはならないのだ。ギヤボックスが傾くということは、ガタがあって当然だということを言っているわけだ。
なかお氏は工学から遠いところの方だったから、ある程度は仕方ないが、こういう文章を書くからには専門家の意見を聞いてみるべきであったように思うのは、無理な話であろうか。
それから50年以上も経つが、同じ記事を再録するというのも、これまた不思議な話だ。工学的知識のある人に読んでもらった上で、今ではこういう工夫もありますという記事が欲しかった。
50年以上前のTMSは、工学的知識のない人が「こうすると良いという記事」を書いていた場合が多い。井上豊氏がそれを見かねて連載記事を書いたが、焼け石に水であった。合葉氏が「正しい鉄道模型」という言葉を出されたが、それを言わねばならないほどひどい状態だったのだ。今でもあまり違わないのかもしれない。
2024年12月24日
続々 Deagostini の C62
さらにA氏から近況を知らせるメイルが届いた。
テンダに慣性増大装置を搭載中である。ギヤを節約する目的があったのかは分からないが、2軸をチェインで結んでいる。この方法を採れば、キングピンのところに ユニヴァ―サル・ジョイントを一組ずつ置けるので、どんな場合でも角速度が等しくなり有利である。慣性増大装置へのエネルギィの出し入れには大きなトルクが掛かっていて、相手の慣性モーメントが大きいわけだから、角速度が一定でないとかなりギクシャクしてしまう。これを避ける賢明な方法である。
フライ・ホィールはチェインで駆動する。ギヤ・タワーを使い、半ピッチの位相差を持たせた二重のチェイン駆動である。これだけ重いと1本では持たない。
この方法はA氏はいくつか試されたそうだが、確かに音が静かになるそうだ。デルリンのチェインは多少伸びるので、この方法が有意義である。伸びない金属製チェインではこういうことが出来ないのは当然である。
車軸に付けたギヤで増速するので、そのままフライ・ホィールを駆動している。これは筆者の機関車と同様である。


この方法はA氏はいくつか試されたそうだが、確かに音が静かになるそうだ。デルリンのチェインは多少伸びるので、この方法が有意義である。伸びない金属製チェインではこういうことが出来ないのは当然である。
車軸に付けたギヤで増速するので、そのままフライ・ホィールを駆動している。これは筆者の機関車と同様である。
2024年12月22日
続 Deagostini の C62

きわめて効率良く動力が伝達され、単3電池1本でするすると動く。
短い線路上であるが、試運転している様子の動画があるのでご覧戴きたい。
さすがに素晴らしい腕前で、文句のつけようがない改装である。伊藤剛氏もさぞかし喜んでいらっしゃる筈だ。
2024年12月20日
Deagostini の C62
伊藤 剛氏から引き継いだ未組みのC62をどうするか、しばらく悩んでいた。筆者は 45 mmゲージにまで手を広げる余裕がなく、誰か腕のある方にお願いすべきだと候補者を探していた。
そんな時にA氏と知り合った。彼は機械工学を修めた技術者であり、ご自宅の庭には 45 mmゲージのレイアウトがある。腕はピカ一であるから、この方にお願いするしかないと思った。彼がどのように料理されるかが楽しみであった。
そしてA 氏は45 mmゲージの慣性増大装置を完成されたので、その運転状況を見せてもらった。素晴らしい性能で驚いた。小さな旋盤で大きなものを正確に挽く技量は素晴らしいもので、驚いた。のちに中型旋盤をお世話したので、より応用範囲が広がった。
先日連絡があり、「C62を可動化したのでご覧ください。」と動画を送って下さった。

動輪をどのように作られたのかに興味があった。実はタイヤを快削鋼から削り出すつもりで、旋盤屋と話をしていたところなのだ。そのタイヤをすでに自作してしまったそうで驚いた。
タイヤとフランジに分けてローラを通して曲げ、それを互い違いに嵌めてハンダ付けしている。それを旋盤に掛けて削り出すわけだ。なかなかできない発想で驚いた。
歯車は筆者提供の Oゲージ用の高効率ギヤをさらに減速している。きわめてよく走る。
そんな時にA氏と知り合った。彼は機械工学を修めた技術者であり、ご自宅の庭には 45 mmゲージのレイアウトがある。腕はピカ一であるから、この方にお願いするしかないと思った。彼がどのように料理されるかが楽しみであった。
そしてA 氏は45 mmゲージの慣性増大装置を完成されたので、その運転状況を見せてもらった。素晴らしい性能で驚いた。小さな旋盤で大きなものを正確に挽く技量は素晴らしいもので、驚いた。のちに中型旋盤をお世話したので、より応用範囲が広がった。
先日連絡があり、「C62を可動化したのでご覧ください。」と動画を送って下さった。



歯車は筆者提供の Oゲージ用の高効率ギヤをさらに減速している。きわめてよく走る。
2024年12月14日
UP Heavy Pacific



この機関車のボイラの残骸だけを、別に1輌分持っている。アメリカの友人がこの下廻りを何かのボイラと組み合わせてパシフィックを作った。その残りを安く引き取った。このテーパ・ボイラをばらしてある。エッチングなので板が薄くて柔らかいのには参る。持つだけでボイラが凹みそうだ。大半の部分を捨てて作り替える。キャブは使えそうだが、板が鈍してあってくたくたである。裏打ちをして堅くせねばならない。

実物は、Big Boyの牽く貨物列車に補機として使われることがあった。脚が短いので、下り坂では過回転で恐ろしいほどの振動が起こり、生きた心地がしなかったとTom Harvey が言っていた。63インチ(1600 mm)動輪なのに、75 mile/h(120 km/h)で下り降りるのだから当然だろう。Big Boyは69インチ(1750 mm)だから余裕がある。Big Boyは85 mile/h(136 km/h)までは平気で出せたそうである。
2024年12月04日
日本の模型人
模型の動きについて再度書きたい。
筆者はきわめて初期の段階から、スケールスピードを大切にしている。本物が動く様子を再現したいからだ。本物はきわめてゆっくり動くことが出来る。連結時は特にゆっくりだ。速いと衝撃で壊れてしまう。
先回にも述べた通り、筆者の機関車はきわめてゆっくり動かすことが可能だ。機関車単独でもかなりの低速が可能だが、慣性増大装置付きテンダを付けていると、さらに安定した低速が可能になる。
これを実演して5 mの線路の端から端までをゆっくり往復させる。しかし、「凄いなー」と見てくれる人は1割程度だ。殆どの人は通り過ぎてしまう。展示で並んでいるD型機関車群ばかり見ている。性能に興味がないようだ。先回も述べたように無音で走ることにも注意が向かない人が多い。
これが日本の模型人の姿なのだ。外観に興味があり、走りは興味の範囲外のように見える。しかし、工作材料には興味がある人は多い。持って行った快削ブラスの角棒は人気があった。
逆に、先日博物館に来てくれたアメリカ人は、走りに興味があった。「凄い、凄い!」の連発であった。列車の貨車の数を数えて感心し、勾配の途中で電源を切ると滑り落ちる様子には驚嘆した。殆どの車輌が重いブラス製であることは信じがたいと言う。すべての車輌 の車輪が Low-D であることの効果を噛みしめていた。
今年もブラスの材料(厚板、平角棒その他)を持って行った。数キログラムも売れて驚いた。この頃はこういう種類の材料が手に入れにくいのだそうだ。
筆者はいろいろなルートでその種の材料を手に入れている。それを小分けしてこういう場所に持ってくると、喜んでくれる人がいるのは嬉しい。
リクエストがあった。モリブデングリースが欲しいのだそうだ。最近は田宮などで扱っていないという。適当な容器を探して詰めて来よう。大きな容器に一杯ある。昔アメリカの友人が、ジェットエンジンの整備用のをくれたものだ。とても死ぬまでに使い切れない量だ。
筆者はきわめて初期の段階から、スケールスピードを大切にしている。本物が動く様子を再現したいからだ。本物はきわめてゆっくり動くことが出来る。連結時は特にゆっくりだ。速いと衝撃で壊れてしまう。
先回にも述べた通り、筆者の機関車はきわめてゆっくり動かすことが可能だ。機関車単独でもかなりの低速が可能だが、慣性増大装置付きテンダを付けていると、さらに安定した低速が可能になる。
これを実演して5 mの線路の端から端までをゆっくり往復させる。しかし、「凄いなー」と見てくれる人は1割程度だ。殆どの人は通り過ぎてしまう。展示で並んでいるD型機関車群ばかり見ている。性能に興味がないようだ。先回も述べたように無音で走ることにも注意が向かない人が多い。
これが日本の模型人の姿なのだ。外観に興味があり、走りは興味の範囲外のように見える。しかし、工作材料には興味がある人は多い。持って行った快削ブラスの角棒は人気があった。
逆に、先日博物館に来てくれたアメリカ人は、走りに興味があった。「凄い、凄い!」の連発であった。列車の貨車の数を数えて感心し、勾配の途中で電源を切ると滑り落ちる様子には驚嘆した。殆どの車輌が重いブラス製であることは信じがたいと言う。すべての車輌 の車輪が Low-D であることの効果を噛みしめていた。
今年もブラスの材料(厚板、平角棒その他)を持って行った。数キログラムも売れて驚いた。この頃はこういう種類の材料が手に入れにくいのだそうだ。
筆者はいろいろなルートでその種の材料を手に入れている。それを小分けしてこういう場所に持ってくると、喜んでくれる人がいるのは嬉しい。
リクエストがあった。モリブデングリースが欲しいのだそうだ。最近は田宮などで扱っていないという。適当な容器を探して詰めて来よう。大きな容器に一杯ある。昔アメリカの友人が、ジェットエンジンの整備用のをくれたものだ。とても死ぬまでに使い切れない量だ。
2024年12月02日
慣性増大装置の tuning

要するに機関車の牽引力とテンダの慣性とのバランスが悪かったのだ。機関車の牽引力が不足して動きにくかった。テンダは最大限に作ってあってそれを減らす必要はなく、機関車の牽引力を増す必要があった。
モータの出力、伝達効率から計算すると、動輪の軸重を900 gw 増しても良いことになる。とりあえず 720 gの錘を鋳造して取り付けた。材料は活字金である。非常に正確に鋳物ができるので、ボイラ内にきっちり嵌まるように作れた。重心位置も計算通りだ。この後少しずつ補重していく。
結果は非常に具合が良く、1 Vで起動し、50 mAで走行する。しかもこれが無音で走るのである。
5 Vで構内を走る程度の速度になるから、3 Vにして逆転を掛けると動輪がロックして滑って行く。これは実物では絶対にやってはいけないことになっている。動輪踏面にフラットができるからだ。
1 Vを掛けて放置すると、超低速で少しずつ動く。動輪一回転に10秒ほど掛かる。
「『低速コンテストで優勝できる』とありましたが、本当ですね。」とおっしゃった方がいる。お褒め戴くと嬉しいが、その後ろでこんな声も聞こえて来た。
「Oゲージだからできるんだよ。」
それを聞いてある方が、
「失礼なことを言ってはいかんよ。世界中のどこにこんな動きができる模型があるんだ。Oゲージだからできるんじゃないよ。dda40xさんだからできたんだ。」と言ってくれたので、助かった。
今野氏はお気に召したようで、低速走行をじっくり見ていらした。
一般によく見る模型の走行は、決して褒められた状態ではない。それを解決する一つの方法が高効率ギヤの採用である。今野氏はそれを見極められたようであり、嬉しく思う。
非効率な伝動装置では、ヒステリシスが大きく、ガッと動いて、ガクリと止まる。中間速度での滑らかな動き、負荷が掛かった時の速度の落ち方、負荷がなくなった時の加速というものを感じることが出来ないのだ。だから、いわゆるオモチャ的な運転しかできない。
今回の披露で、「サウンドが付いていると良かったのに」という御意見を戴いたが、実はわざとサウンドなしでお見せしている。無音で走るというところを強調したかったのだ。無音走行ができる機関車は、まれな存在であることを知らせたかったからだ。
KKCの集会では、最後の会員の個別のスピーチで、高効率ギヤを採用して好結果を得ている旨、何人かから発言があったのは嬉しい。
HO用は貫名氏が販売して下さっているので、希望される方は連絡されたい。
2024年11月30日
cab interior

窓からも後ろからもキャブ内は丸見えであるから、ごく簡単にbackhead(火室後部)を作っておいた。

正確な水位が分かるのは良いが、これがあると室内はさぞかし暑かっただろうと思う。普通型の水面計に比べ表面積が10倍以上もありそうだ。そこが約 200 ℃である。
オイル焚きであるから、火室扉はそのタイプにした。メータ類は文字も針もなく、白いだけであるが、誰もそれには気付かない。ハンドル類は例によって赤く塗った。機関士は Weston製があったのでそれを乗務させた。たくさんあったのにもう残り少ない。


2024年11月18日
続 UP2-8-0
蒸気機関車の塗装は気楽で楽しい。ディーゼル機関車や客車などと比べるとかなり大まかである。
バラして順に塗るのだが、塗り分けの境目をどうするかだけは手順をよく考えねばならない。
今回は煙室、火室はグラファイト色に塗った。室内は天井と壁を緑で塗った。床は黒である。火室後部は外せるようにして別に塗る。各種ハンドルも筆で赤く塗った。カドミウム・レッドである。この写真では煙室とキャブ内をマスキングしている。煙室は普通のマスキングだが、キャブ内にはスポンジを詰め込み、窓枠の内面に当てている。こうすればキャブ内には吹き込まない。

こうして塗った状態がこれである。フロクイルなので、塗ってから1週間は塗膜が軟らかい。
机の上で寝かせるときは必ずこのようにクッションを敷く必要がある。窓枠は別の色で筆塗りするので気にすることもない。
バラして順に塗るのだが、塗り分けの境目をどうするかだけは手順をよく考えねばならない。




2024年11月16日
UP 2-8-0
この機種はC57と呼ばれることが多いが、様々なヴァリエイションがある。この模型がどの形式をプロトタイプとしているのかは不明だが、Max Gray はカリフォルニアの会社だったから、西海岸のどこかにあったものを参考にしていた筈だ。
弁装置も各種ある。ボールドウィンで作られたものの中には、Vauclain Compound もあった。ヴォークレイン複式は往復動慣性質量が大きく、高速では走れなかった。アイデア倒れで、多少効率が良くても、使いにくいものであったらしい。メンテナンス・コストも大きかったので、後に大半が標準型に改造されている。
この絵はこのサイトからお借りしている。これはオーストラリアに輸出されたもののようだが、いかにもアメリカ的なデザインである。
さて、筆者の模型のことであるが、キャブ前方のドアは開放とした。すなわち夏仕様である。窓枠は緑にした。この種の小さな機関車は相対的にキャブが大きいので、中を覗き込まれてしまう。すなわち、「室内は室外である」わけで、ある程度は作っておかねばならない。火室後部は丸見えであるから、先回の Rawlins で撮った写真を基にまとめた。正確ではないが、それらしく見えるようにしただけである。
ウェザリングは最少にして、やや艶のある状態を楽しむことにした。

この絵はこのサイトからお借りしている。これはオーストラリアに輸出されたもののようだが、いかにもアメリカ的なデザインである。
さて、筆者の模型のことであるが、キャブ前方のドアは開放とした。すなわち夏仕様である。窓枠は緑にした。この種の小さな機関車は相対的にキャブが大きいので、中を覗き込まれてしまう。すなわち、「室内は室外である」わけで、ある程度は作っておかねばならない。火室後部は丸見えであるから、先回の Rawlins で撮った写真を基にまとめた。正確ではないが、それらしく見えるようにしただけである。
ウェザリングは最少にして、やや艶のある状態を楽しむことにした。
2024年11月14日
D型機


Lobaugh の下廻りを利用したミカドを完成させたいが、やや時間が足らない。スクラッチから作っているマウンテンは ヴァルヴ・ギヤをヤング式にしているが、これも間に合いそうもない。そうなると 30時間で出来るものは 2-8-0 しかなかった。
綿商会館は来年には取り壊されるようなので、そこでは今年が最後になるとのことだったが、来年は取り壊し前の9月に行うとの発表があった。


筆者としては細いヴァンダビルト・テンダの機種が好きである。石炭焚きでも、箱型テンダは好きではない。右の写真はテンダを太いものと振り替えている。これは 2-10-2 用のテンダのように見える。
この模型は30年以上前に入手したもので、動力改良を施してある。Tom Harveyの家の近くの公園で実物と対面した。小さいが、バランスの取れた機関車である。
製造はKTMだが、祖父江製作所ではない。この種のストレイト・ボイラのものは祖父江氏のところに注文が行かなかったようだ。内側を覗くと、ハンダ付けのプラクティスはかなり違う。ハンダが完全に廻っていない。
引越しを何度か経験しているので、あちこち壊れていて、部品がかなり無くなっている。塗装済みのものは丁寧に梱包するが、未塗装のものは、つい荒っぽく扱ってしまったようだ。ハンダ付けが完全でなかったのが大きな原因だろう。
ジャンク箱を探してそれらしきヘッドライトその他を探し、手摺を付けた。あちこちのハンダ付けもかなり緩んでいたので、炭素棒で完全に付け直した。力のかかるところは銀ハンダで付けた。もう壊れることはないだろう。
よく水洗し、乾燥させた。Canonのモータの外側がかなり錆びていたので削った。再塗装する。
この機関車は黒塗装だから簡単だが、メリハリのあるものにしたい。現役時の、ある程度艶ありの状態にするつもりだ。
2024年09月01日
JAM
貫名氏と会ったときにJAMでの様子を聞いた。
高効率ギヤに興味を示す人は居るが、実際に取り組むという人は少ないという。手持ちの機関車の一輌がこの動力機構を持つとすべてやりたくなるものなのだが、非常に大きな障壁があるそうだ。やればそれほど難しくない筈なのだが、乗り越えられない人が多いらしい。
貫名氏は購入希望者に事前に換装手順書を送り、持っている工具の確認をすることにしていると言う。孔はリーマを通すように念を押す。リーマなしではできないと伝えると手を出さないそうだ。安い工具であるのに入手しようとしないらしい。
決して叩き込んだりせず、ボール盤などでゆっくり押し込むように言うのだが、言うことを聞かない人も居るようだ。
すなわち、相も変わらず「コンコン改軌」を得意そうに語る人はまだまだ多いようだ。
OJの人にも車軸を叩く人はたくさんいるようで驚いている。
ある友人の話が印象的だった。彼はなかなかのクラフツマンで工作は上手だ。
「最近のTMSに載るような超絶技巧(というのは褒め過ぎか)の作品を作るのと、高効率ギヤへの換装とを比べてみれば前者の方がはるかに難しい。僕もやろうかと思ったけど自信がないよ。ところが後者はできる。やろうと思えば一日で出来る。動輪のクランクの位相合わせだって、ジグを作ればよいのだ。その作り方はいろいろな方法が発表されている。簡単なのを作ればよい。それがあればどれだけでもできる。そういう工作ができないと言いながら、外観を細かく作るというのは解せない。」
と言う。彼にはカスタムビルダになるように勧めておいた。
JAMにはたくさんの精緻なレイアウトがあったが、どれもこれも猛スピードで走るものが大半であったそうだ。これは悲しい。
前回にも述べたが、スケールスピードは大切だ。正しい動力伝達機構を持たせれば、ごく自然にできることなのだ。
高効率ギヤのギヤ比は低い。3:23である。それでも低速での走行が安定しているのはどうしてしてだろうか、と考えて欲しい。
高効率ギヤに興味を示す人は居るが、実際に取り組むという人は少ないという。手持ちの機関車の一輌がこの動力機構を持つとすべてやりたくなるものなのだが、非常に大きな障壁があるそうだ。やればそれほど難しくない筈なのだが、乗り越えられない人が多いらしい。
貫名氏は購入希望者に事前に換装手順書を送り、持っている工具の確認をすることにしていると言う。孔はリーマを通すように念を押す。リーマなしではできないと伝えると手を出さないそうだ。安い工具であるのに入手しようとしないらしい。
決して叩き込んだりせず、ボール盤などでゆっくり押し込むように言うのだが、言うことを聞かない人も居るようだ。
すなわち、相も変わらず「コンコン改軌」を得意そうに語る人はまだまだ多いようだ。
OJの人にも車軸を叩く人はたくさんいるようで驚いている。
ある友人の話が印象的だった。彼はなかなかのクラフツマンで工作は上手だ。
「最近のTMSに載るような超絶技巧(というのは褒め過ぎか)の作品を作るのと、高効率ギヤへの換装とを比べてみれば前者の方がはるかに難しい。僕もやろうかと思ったけど自信がないよ。ところが後者はできる。やろうと思えば一日で出来る。動輪のクランクの位相合わせだって、ジグを作ればよいのだ。その作り方はいろいろな方法が発表されている。簡単なのを作ればよい。それがあればどれだけでもできる。そういう工作ができないと言いながら、外観を細かく作るというのは解せない。」
と言う。彼にはカスタムビルダになるように勧めておいた。
JAMにはたくさんの精緻なレイアウトがあったが、どれもこれも猛スピードで走るものが大半であったそうだ。これは悲しい。
前回にも述べたが、スケールスピードは大切だ。正しい動力伝達機構を持たせれば、ごく自然にできることなのだ。
高効率ギヤのギヤ比は低い。3:23である。それでも低速での走行が安定しているのはどうしてしてだろうか、と考えて欲しい。
2024年08月26日
YouTube
Santa Fe のパシフィックが慣性でスリップして走るのを見せて欲しいという要望が来ていた。動画はいくつか撮ってあったが、YouTube にUPしていなかった。今回二つ紹介したい。
一つ目は博物館の空き線路での走行披露である。この動画は先日渡米した時、あちこちで見せて非常に評判が良かったものだ。手前のプラットフォームの屋根支柱は Dennis がロストワックスで作ってくれたものだ。これを見てDennisは、
「おい、どこかで見たことがあるな。どこの製品だ?」と嬉しそうに言った。「クロム・グリーンの柱というのは良いもんだ。」とのことである。
わざと、逆転スイッチの音を入れた。0.5 Vほどで起動して少し急加速をするとスリップしているのが分かる。7 V で巡航する。5 V まで電圧を下げて逆転すると、動輪が止まり、スリップする。それ以上の電圧を掛けていると、逆回転ブレーキになる。
機関車が止まると同時に電圧をゼロにすると実感的だ。こうしないとすぐに逆回転が始まり、スリップする。起動は極めてゆっくりにすべきだ。
二つ目の動画はより近くで写したものだ。これはこの6月に神戸の会場で撮った。線路は軽い三線式で中空のを持って行った。これは GarGraves の三線式であり、木製の枕木に鉄板製のレイルが打ち込んである。スパイクはない。ただ、レイルの下がまっすぐ伸びていて、それが枕木に打ち込まれている。50年前に買ってほとんど使わずにいたが、今回のように携帯して持ち込む時にはとても軽くて有り難い。
これを見て、中央レイルに何か秘密がありそうだと考えた人も居たようが、残念ながら無関係である。
これは Phantom Line と呼ばれるライオネルなどのトイ・トレイン用レイルだが、中央レイルが黒くて”幽霊のように見えない”というのが売りだった。見えてはいるが、日本の3線式のような感じは受けない。鉄板製だがスズめっきの質が良いのか、意外に錆びない。また電気抵抗も小さい。洋白などとは比べ物にならないくらい良い。
一つ目は博物館の空き線路での走行披露である。この動画は先日渡米した時、あちこちで見せて非常に評判が良かったものだ。手前のプラットフォームの屋根支柱は Dennis がロストワックスで作ってくれたものだ。これを見てDennisは、
「おい、どこかで見たことがあるな。どこの製品だ?」と嬉しそうに言った。「クロム・グリーンの柱というのは良いもんだ。」とのことである。
わざと、逆転スイッチの音を入れた。0.5 Vほどで起動して少し急加速をするとスリップしているのが分かる。7 V で巡航する。5 V まで電圧を下げて逆転すると、動輪が止まり、スリップする。それ以上の電圧を掛けていると、逆回転ブレーキになる。
機関車が止まると同時に電圧をゼロにすると実感的だ。こうしないとすぐに逆回転が始まり、スリップする。起動は極めてゆっくりにすべきだ。
二つ目の動画はより近くで写したものだ。これはこの6月に神戸の会場で撮った。線路は軽い三線式で中空のを持って行った。これは GarGraves の三線式であり、木製の枕木に鉄板製のレイルが打ち込んである。スパイクはない。ただ、レイルの下がまっすぐ伸びていて、それが枕木に打ち込まれている。50年前に買ってほとんど使わずにいたが、今回のように携帯して持ち込む時にはとても軽くて有り難い。
これを見て、中央レイルに何か秘密がありそうだと考えた人も居たようが、残念ながら無関係である。
これは Phantom Line と呼ばれるライオネルなどのトイ・トレイン用レイルだが、中央レイルが黒くて”幽霊のように見えない”というのが売りだった。見えてはいるが、日本の3線式のような感じは受けない。鉄板製だがスズめっきの質が良いのか、意外に錆びない。また電気抵抗も小さい。洋白などとは比べ物にならないくらい良い。
2024年05月28日
またまた Original Whistle Stop

今回は1時間弱の訪問であったので、模型は見せずもっぱら動画を見せ合って話した。この動画はYoutubeで見たが鮮明さと滑らかさに欠けると言う。そこでオリジナルの動画を差し上げた。
慣性増大装置の動作を見て驚嘆し、仲間を呼んで見せた。
「凄い!お前はいつも世界の最先端に居る。」と言ってくれた。お世辞であっても嬉しい。
パシフィックが単機で、ゆっくり前後進し、その度にスリップして止まる場面を見せた。極端な低速であるが、それでもスリップするのが面白いそうだ。
「一体、このテンダはどれくらいの質量があることになるのだ。」と聞くので、「約430ポンド相当だ。」と答えた。
「ワォ、それはすごい。まさか本当にその質量を持つと思う奴はいないだろうな。」
「それが居たんだよね。」と、かいつまんで話した。
彼は爆笑してこう答えた。
「アッハハハ。簡単にできると言うなら、どうして今までそれを誰も見たことが無いのか教えて欲しいね。」
2024年05月04日
続 最近のDCC
Dennisは筆者のYoutubeを見て、関節式機関車の前後のエンジンが微妙にスリップしているのを感じ取った。その機関車には2個のモータが付いて、前後を独立に駆動しているからだ。きわめて自然である。
ところが見せて貰った Bluenami には、あたかも "スリップしているかのような音" が出るモードがあるのだ。
まず、一般の機関車は左右で2気筒であるが、3気筒を選ぶことができる。これはコンタクト・ホィールを付けているわけではないから、モータの回転から読み取るタイミングの間隔を狭くするだけであって簡単な話だ。しかし、そのタイミングは完全な三等分になっていないところがミソである。
問題はその次で、スリップ・モードである。加速率を少し上げると、動輪が滑っているわけではないのに、スリップ音がするのである。その機関車の動輪を近くでじっと観察していると、奇妙なものである。
関節機の場合は1回転で4回音がするのが2つあるわけだから、合計8回のドラフト音がするはずだ。その4つのタイミングを微妙にずらして坂道でのスリップを模擬する。片方だけ派手にスリップする様子も再現できる。しかしここまで来ると、何か詐欺にあっているような感じである。でも、売れているのだそうだ。HOのサイズで 5 mも離れていれば動輪の回転など見えはしないのだろうか。もちろん単機でも派手にスリップする音が出る。それはないよと思うのは、筆者だけなのだろうか。
ところが見せて貰った Bluenami には、あたかも "スリップしているかのような音" が出るモードがあるのだ。
まず、一般の機関車は左右で2気筒であるが、3気筒を選ぶことができる。これはコンタクト・ホィールを付けているわけではないから、モータの回転から読み取るタイミングの間隔を狭くするだけであって簡単な話だ。しかし、そのタイミングは完全な三等分になっていないところがミソである。
問題はその次で、スリップ・モードである。加速率を少し上げると、動輪が滑っているわけではないのに、スリップ音がするのである。その機関車の動輪を近くでじっと観察していると、奇妙なものである。
関節機の場合は1回転で4回音がするのが2つあるわけだから、合計8回のドラフト音がするはずだ。その4つのタイミングを微妙にずらして坂道でのスリップを模擬する。片方だけ派手にスリップする様子も再現できる。しかしここまで来ると、何か詐欺にあっているような感じである。でも、売れているのだそうだ。HOのサイズで 5 mも離れていれば動輪の回転など見えはしないのだろうか。もちろん単機でも派手にスリップする音が出る。それはないよと思うのは、筆者だけなのだろうか。
2024年05月02日
最近のDCC


Dennis のところで最新型の Blunami を見せてもらった。これは例の Tsunami の発展型である。こういうものに日本語を使うのも不思議だ。Tsunami が出てすぐに東日本大震災が起き、"Tsunami" が国際的に認知される言葉になった。彼らはその名前を使い続けるのかどうかを気にしていたが、結果として変化はなかった。今までのサウンド装置と比べてはるかに高性能で、大音量で明確な音がすることは間違いない。これは高価であったので、Econami というラインも発売している。
今度の Blunami には不可思議な機能が付いている。不可思議というのは筆者の主観的な感想である。一般には”大したものだ”と受け入れられているのだそうだ。
2024年03月24日
free to roll drive for steam engines
来訪者に機関車のメカニズムを見せたのち、駆動装置本体を手渡して、車軸を廻してもらう。駆動軸が高速回転するが、あまりの滑らかさに愕然とする。全く抵抗を感じないのだそうだ。
これほど軽く廻るなら、テンダに付けて巨大なフライホィールを廻すのも問題がないことに気が付く。
HOの機関車の見本も1輌置いてある。短い線路だが、機関車を押すと発電してヘッドライトが点く。これは優れたディスプレイである。いかに高効率か、がよく分かるからだ。
これを見ると誰しも欲しがる。貫名氏が在庫を持っているはずだと言うと、すぐに注文すると言う。
このギヤを採用すれば、今までの駆動装置はいったい何なのかということになるだろう。その魔力にはまってしまった人は何人もいる。
高効率ギヤを採用した人が運転会に持って行くと、注目を浴びるそうだ。欲しがる人は多いが、動輪を抜いて元に戻さねばならないと知ると尻込みしてしまう人が多いという。
90度ジグを作るのは難しいことではないし、それを作れば他の人の機関車の改造を引受けてアルバイトもできるはずだ。
以前も書いたが、この国の模型界で一番不足しているのが、この種の仕事を引き受けるカスタムビルダの存在である。だれでもができるわけはないので、できる人が適価で引き受ければ良いのだ。その種の特技を持つ人は少なくない。小遣いを稼ぎながら、模型界の進歩に貢献できる楽しい仕事のはずだ。
今月からとれいん誌に貫名氏がHOの高効率ギヤに関する連載を始めた。
これほど軽く廻るなら、テンダに付けて巨大なフライホィールを廻すのも問題がないことに気が付く。
HOの機関車の見本も1輌置いてある。短い線路だが、機関車を押すと発電してヘッドライトが点く。これは優れたディスプレイである。いかに高効率か、がよく分かるからだ。
これを見ると誰しも欲しがる。貫名氏が在庫を持っているはずだと言うと、すぐに注文すると言う。
このギヤを採用すれば、今までの駆動装置はいったい何なのかということになるだろう。その魔力にはまってしまった人は何人もいる。
高効率ギヤを採用した人が運転会に持って行くと、注目を浴びるそうだ。欲しがる人は多いが、動輪を抜いて元に戻さねばならないと知ると尻込みしてしまう人が多いという。
90度ジグを作るのは難しいことではないし、それを作れば他の人の機関車の改造を引受けてアルバイトもできるはずだ。
以前も書いたが、この国の模型界で一番不足しているのが、この種の仕事を引き受けるカスタムビルダの存在である。だれでもができるわけはないので、できる人が適価で引き受ければ良いのだ。その種の特技を持つ人は少なくない。小遣いを稼ぎながら、模型界の進歩に貢献できる楽しい仕事のはずだ。
今月からとれいん誌に貫名氏がHOの高効率ギヤに関する連載を始めた。
2024年02月15日
exhibition in Kobe
神戸のポートアイランドでの催しに参加した。青少年科学館がOゲージのクラブ他、3クラブに声を掛けて、この3連休に催したのである。
筆者はいつもその一年に仕上げた車輌を中心に持っていくことにしている。今年はブラス製のホッパ車15輌を中心にRailgon の無蓋車5輌を選んだ。機関車は慣性増大装置を搭載した2輌の蒸気機関車である。
UP850が本線を走っている。子供が中心の催しであるので、本物の蒸気機関車の運転を見たことがない人ばかりである。しかし、中には孫を連れて来た老模型人も居て、動輪が空転している様子を見ると目を丸くして驚く。
「模型でこんな運転ができるとは思わなかった。」と言ってくれるのは嬉しい。
当ブログの読者で昨年慣性増大装置の運転があったことを知った方が、今年もきっとあるだろうと遠方から見にいらしたのを知り、驚いた。Youtubeなどで、すでに動きはよくわかってはいらしたが、パシフィックが現実に目の前で急ブレーキを掛けて動輪がロックしたまま滑っていくのをお見せすると、大変興奮された。
JR東日本の新幹線車輌と並んだOスケールの機関車は小さく見える。この新幹線車輌は 1/45 であり、蒸気機関車は 1/48 であるからだ。


「模型でこんな運転ができるとは思わなかった。」と言ってくれるのは嬉しい。
当ブログの読者で昨年慣性増大装置の運転があったことを知った方が、今年もきっとあるだろうと遠方から見にいらしたのを知り、驚いた。Youtubeなどで、すでに動きはよくわかってはいらしたが、パシフィックが現実に目の前で急ブレーキを掛けて動輪がロックしたまま滑っていくのをお見せすると、大変興奮された。

2024年02月13日
casting weight
慣性増大装置を付けたパシフィックにはウェイトが不足していた。持って帰る時にウェイトとかモータを捨ててしまったのだ。
動力改装時に重いモータを火室に入れたので、前の方が妙に軽い。牽引力不足で、起動時のスリップが激し過ぎた。
測定の結果 350 gの補重で前後のバランスが取れることが分かり、活字金からの鋳物クズを再利用して鋳造することにした。
鋳型はアルミのビール缶を切り開いて巻き、針金で縛る。それを別の空き缶の中に立て、隙間に砂を詰め、湿らせる。それを水の入った容器に入れ、冷えやすくする。隙間が空くと漏れて損失が多いので、円筒の鋳型には餅焼き網を載せ、レンガのかけらで重しを掛ける。
この程度でも深さ 35 mm程度なら問題なく湯を注げて、漏れることはない、
湯の温度は融解点より20度程度高くする。高過ぎると固まりにくく漏れやすくなる。金網の上から注ぎ込むとあっという間に固まり、出来上がりだ。活字金は鉛のように体積が減らないので、真っ直ぐな鋳物ができる。ボイラ内の所定の位置にネジ留めする。
これに穴をあけてネジを切る。快削なのでネジ立ては簡単だ。わずかの接着剤を付けて緩み止めとする。
これで機関車は前後のバランスが取れ、質量は 2.6 kgとなったが、まだ足らない。重心の位置にもう少し足してみよう。このテンダの等価慣性質量の204 kg というのは、この機関車にはいささか大き過ぎたようだ。慣性増大装置はまだ2台目で、経験が足りない。考えられる最大の等価慣性質量を実現するために、テンダの断面積が大きな形式を選んだが、パシフィックにはそれほど大きな値を必要としなかったようだ。
動力改装時に重いモータを火室に入れたので、前の方が妙に軽い。牽引力不足で、起動時のスリップが激し過ぎた。
測定の結果 350 gの補重で前後のバランスが取れることが分かり、活字金からの鋳物クズを再利用して鋳造することにした。

この程度でも深さ 35 mm程度なら問題なく湯を注げて、漏れることはない、

これに穴をあけてネジを切る。快削なのでネジ立ては簡単だ。わずかの接着剤を付けて緩み止めとする。
これで機関車は前後のバランスが取れ、質量は 2.6 kgとなったが、まだ足らない。重心の位置にもう少し足してみよう。このテンダの等価慣性質量の204 kg というのは、この機関車にはいささか大き過ぎたようだ。慣性増大装置はまだ2台目で、経験が足りない。考えられる最大の等価慣性質量を実現するために、テンダの断面積が大きな形式を選んだが、パシフィックにはそれほど大きな値を必要としなかったようだ。
2024年02月05日
lesser thickness gearboxes
HOの蒸気機関車に用いるには、厚さがあると使いにくいそうである。当初はこれで十分ということだったが、イコライザが仕込んであったりするとギヤボックスはもっと薄くないと入らないらしい。
その開発を頼まれたが、難しい点がたくさんある。3D出力のときの最低厚さが決まっているので、減らせない部分たとえばウォームの前後のボールベアリングのフランジが当たる部分は薄くできない。
3Dの師のS氏は面白いアイデアで切り抜けた。その部分を外側に飛び出させ、厚みを持たせて成形した上で、組立後にヤスリで外に出た分をを削り取るというものだ。こうすればその部分は極端に薄くできる。
あちこちの寸法をすこしずつ削って、ようやく試作品が完成した。現在は三次試作品まで来た。
左右を締めるネジの位置なども、工夫して移動している。これがうまく収まることを確認してから、まとまった量を発注する。
これができれば、機種をあまり考えずに採用できるというわけだ。 3月ごろ、貫名氏から発売予定。
その開発を頼まれたが、難しい点がたくさんある。3D出力のときの最低厚さが決まっているので、減らせない部分たとえばウォームの前後のボールベアリングのフランジが当たる部分は薄くできない。

あちこちの寸法をすこしずつ削って、ようやく試作品が完成した。現在は三次試作品まで来た。
左右を締めるネジの位置なども、工夫して移動している。これがうまく収まることを確認してから、まとまった量を発注する。
これができれば、機種をあまり考えずに採用できるというわけだ。 3月ごろ、貫名氏から発売予定。
2023年11月21日
ATSF Pacific (rebuilt)


と同時に惰行時のブレーキのスリップ、逆転ブレーキは容易に再現でき、昔の鳥羽駅でのC51の曲芸を堪能できる。右の写真はNortherns484氏の撮影。
今回の慣性モーメントの算出は前回と同様にできるはずだった。昔の物理計算を思い出しつつ、「角加速度を積分すればできるはず」と取り組んだが、かなり頭が錆びついていて3日ほど考え込んだ。ラジアンは無次元であることを思い出すのに2日も掛かった、というお粗末。
間に合わないので、工学エキスパートのT氏に助けを求めた。朝9時半にメイルを送ったところ、12時半にはサラサラと手書きの計算結果が来てしまった。昼休みにやって下さったようだ。プロには敵わない。
今後の調整としては、動輪上重量を今の 1.5倍まで増やしたい。そうすると、もう少しキビキビとした動きになるはずだ。
先回は超大型の4-8-4で動輪上に2.7 kg載っていた。今回は大型とは言え、パシフィックで動輪上には1.3 kgしか載っていない。これでは単機でも起動に苦労するのは当然だ。
実物のデータを記しておこう。機関車より重いテンダを付け、砂漠の中で長距離を
無停車で走る急行列車に用いられた。1919年製、1936〜47年更新改造
ボイラ圧力 15.2気圧
機関車質量 154トン
動輪軸重 31トン
テンダ質量 180トン
テンダ軸重 30トン
水積載量 78トン
重油積載量 30トン
2023年10月22日
Broadway Limited
友人から様々な情報を戴いている。この食堂車はブロゥドウェイ特急の食堂車だということが判った。この特急名は複々線区間のある自社路線を誇るものらしい。この路線を走るAmtrakの列車には乗ったことがある。並行する川は、はじめはせせらぎであったが、一日それに沿って走ると最後は大河になった。
戦前の塗装は難しい。戦後の塗装にするつもりだ。
ちょうど50年前、筆者はPhiladelphiaでBill Wolfer氏と会っていた。彼はフィラデルフィア警察の殺人課の刑事で、趣味としてPennsylvania鉄道のOゲージ模型を制作・販売していた。電話を掛けて予約し、夜間に会った。東洋から来た若い趣味人に対し、彼は親切であった。地下のレイアウトでブロゥドウェイ特急の編成を走らせてくれたのだ。それはGG1によって牽かれた8輌編成であった。室内まで作られて、点灯すると内部が見えた。彼は得意満面で見せてくれた。
その時、映画の話題が出たが、「あれはハリウッド映画だからな。車内はセットで撮っている。参考にはならない。本物はもっと良い。」
機関車は本物を撮っている。その中で流線型のK4から受け継いでHarrisburgの橋
(59:51)を渡る機関車はなんと4-4-0である。これはD16だ。現在博物館に飾ってある機関車そのもののようだ(リンク先のOur Train中、No.1223を探されたい)。
Billはその後カリフォルニアに引っ越したが、30年以上の親交を結べた。3条ウォームの開発に関し、いくつか助言を貰ったのはその後の発展に大きく影響を与えた。会うと最大限の歓待をしてくれ、奥さんも「貴方は私の亭主にとって特別な人だ。」と言ってくれた。祖父江氏を案内して訪ねたこともある。
戦前の塗装は難しい。戦後の塗装にするつもりだ。
ちょうど50年前、筆者はPhiladelphiaでBill Wolfer氏と会っていた。彼はフィラデルフィア警察の殺人課の刑事で、趣味としてPennsylvania鉄道のOゲージ模型を制作・販売していた。電話を掛けて予約し、夜間に会った。東洋から来た若い趣味人に対し、彼は親切であった。地下のレイアウトでブロゥドウェイ特急の編成を走らせてくれたのだ。それはGG1によって牽かれた8輌編成であった。室内まで作られて、点灯すると内部が見えた。彼は得意満面で見せてくれた。
その時、映画の話題が出たが、「あれはハリウッド映画だからな。車内はセットで撮っている。参考にはならない。本物はもっと良い。」
機関車は本物を撮っている。その中で流線型のK4から受け継いでHarrisburgの橋
(59:51)を渡る機関車はなんと4-4-0である。これはD16だ。現在博物館に飾ってある機関車そのもののようだ(リンク先のOur Train中、No.1223を探されたい)。
Billはその後カリフォルニアに引っ越したが、30年以上の親交を結べた。3条ウォームの開発に関し、いくつか助言を貰ったのはその後の発展に大きく影響を与えた。会うと最大限の歓待をしてくれ、奥さんも「貴方は私の亭主にとって特別な人だ。」と言ってくれた。祖父江氏を案内して訪ねたこともある。
2023年10月18日
Climaxの食違い交差軸受
F氏から工作の途中の写真をいくつか送って戴いた。
食違い交差の軸受である。同じ寸法になるように工夫して機械加工している。こういう場合のジグの設計は経験が要る。どうすれば最も簡単で、しかも正確にできるか、を考えねばならない。F氏はいつも巧妙・簡潔な発想で解決している。見習いたい。
切り込み量を測定している。この種の測定具は使い方次第で大きな威力を発揮する。
この万力は2つのネジで締めるので、アゴの端であっても平行に締める事ができる。これは木製の万力でも同じことである。
できたものを並べたところだ。これをハンダ付け用のジグの上で組む。硬いハンダを使うので壊れることはない。
フライス作業は楽しいが、頭を使う仕事だ。




フライス作業は楽しいが、頭を使う仕事だ。
2023年10月04日
Climax の台車を作る

傘歯車には、thrust(軸方向の推力)が発生するので、それを承けねばならない。ギヤボックスがあれば、ラジアル・ベアリング(法線方向の力を支える軸受)で、かなりのスラストを受けられるが、ここにはそれがない。外に独立したスラスト・ベアリングを置かねばならないわけだ。F氏は歯車の噛み合い部以外の摩擦を最小限にするために、あらゆる方策を講じることにしたようだ。
動輪軸は Φ3 でかなり細い。駆動軸はそれを跨いでいる。歯車はどうしても調子が悪いようで、新規に発注すると言う。
そのような製作所はどこにあるのかと心配したが、思わぬ方法であった。たくさんのギヤの中からまともなものを探し出し、それを彫金の工房に持ち込むのだそうだ.3次元測定器でデータを取り、それで樹脂型を作る。後に金属で置換をする。どれくらいの価格なのか、ヒヤヒヤしていたが、それほど高いものでもないらしい。
2023年10月02日
Climax の動輪


すなわち、絶縁紙をエポキシ接着剤で隙間なく固めて、飛び出したところがないか指先で撫でて確認する必要がある。その上で、嵌まり込む部分をヤスリで角を落とす。45度に削ってタイヤに当てるのだ。間違いなく入りそうであれば、ゆっくり押し込む。
プレスがあれば良いが、ゴムハンマでまんべんなく叩くと、少しずつ入る。絶縁紙の一部は、削れて押し出されて来るだろう。それが全周に亘って、均一に出て来なければならない。
難しそうに聞こえるかもしれないが、それほどでもない。6年ほど前に名古屋のクラブで "Old Black Joe" の部品頒布を担当したが、全員が簡単に組めて、車輪の心が出ていて素晴らしいと伝えて来た。
2023年09月30日
続々 Lobaugh の Climax

タイヤを掴む時には、そのまま掴むわけにはいかないから、専用のヤトイが必要だ。これらは pot chuck と呼ばれる。F氏は各サイズのヤトイを作って持っている。
筆者は踏面側を掴んでフランジ内側を削り、次はネジで締めるヤトイに取り付けて表側とフランジを削る。最後にフランジを掴んで車輪のジャーナルに近いところを落とす。12個やると、かなり疲れる。これが筆者にとっては限界値である。
最初にフランジを掴むと、おかしな製品もあるから、失敗する可能性がある。韓国製の機関車では、フランジと踏面とが同心ではなかった事があるのだ。信じがたい話だが、おそらく太さの足らない丸棒を心の出ていない3爪チャックで掴んでタイヤを挽いたのだろう。そんなものが検査に通っているというのがおかしい。
旋盤は大小2台持っていると具合が良い。筆者は小さい方をコレット専用機にしている。実は、もう一台欲しいところだ。
2023年09月28日
続 Lobaugh の Climax


食い違い傘歯車の噛み合わせが今ひとつだ。心は出ているが、肝心の歯型が、部分的におかしいのだろう。ダイヤモンドの砥石で歯を修正する必要がある。本物の製造工程にも、ヤスリで歯を削っている場面があったことを覚えている。
ダイヤモンド・スタック(煙突)の中にはスピーカが入っている。DCCサウンドを出すためだ。
動輪とギヤの問題が解決すれば完成であるから、楽しみにしている。
2023年09月26日
Lobaugh の Climax


まだエンジン部分が取り付けてないが、8割方 完成の域にある。

2023年09月04日
新しい歯車の入荷


非常に美しい仕上がりで、金貨のようである。価格も金貨とは行かないが、銀貨よりは高い。歯の仕上がり面の美しさはなんとも言えない。普通の模型用の歯車より、2桁ほど精度が高い。
このような出荷用のケースがあり、そこに詰めて渡してくれる。袋にドサッと入れるようでは傷だらけになる。歯型に影響が出てはいけないのだ。精密機械の部品であることをご承知願いたい。
40インチ動輪のディーゼル電気機関車用はギヤ比が 3:23 である。蒸気機関車は動輪の径が2倍ほど大きいから、蒸機用は 3:32 とした。速度の点では前者でも特に問題はなかったが、牽引力の点では不満があった。テストで重列車を牽かせるとモータが焼けそうであった。軸重を減らせば問題ないのであるが、それでは重列車が牽けなくなる。
今までは2段減速であったが、ギヤボックスが見えにくい1段にした。そのギヤボックスを制作中である。
新しいOゲージ蒸機用は、新設計のトルクチューブ付きにする。台枠への取付けは非常に簡単であって、反トルクは完全に抑え込め、なおかつ走行は滑らかになる。