旋盤

2011年07月27日

ロクロ作業

 ロクロは旋盤の一種であるが、堅固なベッドを持たない。ロクロ屋さんは日本中にたくさんあったが、その作業を記録したものにはほとんどお目に掛からない。今回伊藤氏を訪ねたのはそれを記録するためである。
1406 これがロクロ作業の「ハシ」と呼ばれる工具である。ワークが差し込まれる孔と刃物を移動させるためのテコを組み合わせただけのものである。この写真ではワークは左から差し込まれる。握りには刃物の動く限度を決めるストッパがついている。
 これは一定の長さで切断するための工具である。これ以外にも目的に応じて種々の「ハシ」があり、ネジ切り専用のダイスをはめる「ハシ」もある。
1403 裏側から見てみよう。右から材料が差し込まれる。ストッパが刃物であり、限度まで強く差し込まれたワークは、端面削りされる。ワークをいったん少し戻し、もう一度差し込む。そこですかさず工具を握ると、切断刃物が動いて切り離される。こう書けば簡単であるが、実はここには面倒なことがある。切断刃物の動く軌跡は円であり、材料に対して直角に動くわけではない。切り込んでいくと微妙に長さが変化する。バーサインが出てくるからである。
14041407 この設定だと長さ数mmの円筒形の部品ができるようだ。切断面が垂直になるためには、長さ方向のストッパが動く必要がある。切断刃物が食い込むと、刃先は切り込むが刃の片方の側面には刃がなく、ワークを横に逃がすための微妙な丸みが付いている。その部分で、仕上がる部品の側面を押しながら刃が食い込む。バーサインで、材料はストッパ方向に少し押し込まれる。上から2枚目の写真のストッパには長穴が付いていて多少動くようになっているのがお分かりであろう。これは適度の強さのバネで押されている。切断に伴い長手方向に動くのをこれで許容する。刃物の反対側の側面には刃が付いていて、材料の端面は多少削れて平面ではなくなるが、それは次の最初の工程で仕上げられるから問題ない。

2010年05月06日

CDCO

Mr. Frank Fan CDCOをご存じだろうか。中国製の安い工具を売っている店だ。シカゴのオヘア空港の近くにある。倉庫街に事務所を置いて、通信販売をしている。価格は、まず一番安いと思われる。
 品物は良くないものもあるが、総じて合格である。この店とは結構長くお付き合いしている。友人に頼まれたものは、大抵ここで買っている。
 重いものが多いので、アメリカに行くときに注文して、アメリカ国内の友人宅に送って貰う。それを持ち帰る。
 今までで一番重かったのは8インチのスクロール・チャックである。20キロ以上あった。木箱に入っていて、荷物検査で引っ掛かって1時間以上待たされた。その他、割り出し盤とか重いものばかりを友人のために買っている。

 刃物類はあまり感心しないが、ブラスを削る分には何の問題もない。そういう意味でお勧めする。ジグ製作などでで鋼を工作する時は、日本製の刃物を買う必要があるだろう。

 長年お付き合いしていても一度も会ったことがないので、今回は事前に訪問予定を知らせておいた。大歓迎してくれて驚いた。おそらく、誰とも会わずに仕事をしているのだろうと思う。こんな笑顔で握手した。また重いものばかり買ったので、スーツケースは空港で開けて検査された。
 QCTP(刃物台で刃の高さを毎回合わせなくても、カートリッジごと嵌めかえればよい工夫)を安く売っている。筆者は20個も持っている。
 この店のホームページでMachine Tool toolingをクリックし、Lathe Toolingを選択すると最初に出てくる。

 みなさん御贔屓に。 

2008年11月02日

Dennis のWork Shop

Dennis' workshop Dennisの車庫には工作機械が並んでいる。一般人でもこの種の機械を持っている人はいる。あまり高級な機械ではない。台湾製の25年位前の機種である。しかし模型を作るには十分である。

 
 アメリカでは住宅地では三相交流の給電は難しい。単相三線の120、240Vしか来ていない。結線を見て驚いた。単相を擬似三相にするコンバータを付けている。小さなコイルと巨大なオイル・キャパシタを組み合わせた原始的なものであった。1本を進角させるだけのもので、2馬力程度なら何とかなるというが、効率はよくない。大きさは縦75cm、幅45cm、奥行20cm程度のものであるが、すごく重そうである。縦フライスの奥の壁に取り付けてあった。どこかで中古品を手に入れたらしい。

 今なら、インバータがあるからそれを採用すべきである。無段変速で急停止用のブレーキ回路まで付いたものが約3万円で買える。それを使えば、ベルトの掛替え、ギヤの切替えが要らなくなる。そのあたりのことは左のリンク先のSEC_SUZUKI氏に相談するとすぐ解決する。単相モータに比べて、三相モータはトルクが大きく、使いやすい。足踏みで急ブレーキが効くと安心でもある。また、起動が滑らかになり、ベルトの傷みも減る。
 単相電源から200Vの三相交流が作り出せ、なおかつ周波数が30〜90Hz程度まで無段階に変動させることが出来る。400Hzまで周波数を上げる事も出来るだろうが、それではモータが分解するだろう。設計の段階では想定していない条件ではあるが、1.5倍なら持つはずだ。入力を200Vのタイプを100Vで使うには、100Vを倍電圧検波(懐かしい言葉!!)する。
 ブレーキ回路は外部に抵抗をつけ、放熱させる必要がある。

 なんとなく、ディーゼル電気機関車のダイナミック・ブレーキを操作する気分でもある。

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2008年01月26日

段付きネジを作る

段付きねじ
旋盤で快削ブラスを削るのは気持ちがよい。

 写真の段付きネジである。台車の側枠を台車ボルスタに付けるネジである。鉄道模型にはいろいろな場面で段付きネジが利用される。回転を許し、外れないようにすることが多いからだ。台車のキングピンも段付きネジにすれば簡単である。頭の溝は鋸でつけるので、あまりきれいではない。本当はスリ割りのカッタでの工作が必要であるが、面倒なのでやらない。

 オークションやスワップ・ミートで手に入る部品は、このような段付きネジが無くなっているものが多い。当然、価値が下がり、安く手に入る。それを活用するためにはネジを作る必要がある。アメリカの友人にも頼まれてよく作る。彼らにはメートルネジが手に入り難いからだろう。

 このような工作にはDROが役に立つ。数字だけ見ていればいくつでも簡単に削れる。

 ネジを切るには、写真のダイス・ホルダを使う。これは自作で、1インチ径のダイスが保持できる。旋盤のスイッチを切り、主軸が止まりかけた時、心押し台を使って押し付ける。3,4回転して止まるが、それまでにネジは切れている。場合によっては足らないときがあるが、手で回して出来上がる。主軸の慣性を使うと、下手をするとねじ切りそうに感じるが、それまでにネジが進むのでモース・テーパが抜き取られて停止する。実に簡単である。

 この台車は昭和30年代に作られたもので、砂鋳物に機械加工して、コイニングで作った部品をハンダ付けしたものである。ボルスタでイコライズして、軸バネ可動という凝ったつくりで、実によく走る。ネジはISOではなく、JISであり、ピッチが大きい。この時代のものを修理するには、各種のタップやダイスが必要である。

2007年10月04日

旋盤の価格

 KKCの皆さんの御意見は一致している。旋盤を持つべきだ。ブラスの機関車一台分で、旋盤が買える。その通りである。

 旋盤があれば何でも出来る。やろうと思えば、フライス盤の代わりをさせることもできる。旋盤を持つと、いろいろなアタッチメントが欲しくなる。おそらく本体以上に出費することになるだろう。そこまでそろえれば、模型屋通いが減る。ほとんど自分で出来るからだ。その後の出費はかなり少なくなるだろう。

 材料はクズ屋で調達できる。筆者は新品の材料はほとんど使わない。切れ端を目方で買ってくればよいのだ。大きな切れ端から作るには大きな旋盤が要るから、旋盤の大きさに応じた買い物をする必要がある。

 旋盤は工作物に応じた大きさが必要だ。大は小を兼ねないし、その逆も言える。筆者の旋盤は心間600ミリ、ベッド上の振り直径が180mmである。改造に次ぐ改造で、かなり原型から遠ざかっている。手を入れた機械は、自分の一部のようなものだ。

 旋盤の部品は、ネットオークションで安く調達できる場合もある。

 このような旋盤工作の達人たちのサイトがいくつかあるのでそれを見てアイデアを頂戴する。もっとも、そのようなアイデアは、ほとんどが長らく現場で伝えられて来たものであろう。

 鉄道模型は造形の美を楽しむだけではない。正しく走らなければならない。それには旋盤を使った工作が不可欠である。


2007年10月02日

ドリルレース

 ドリルレース(Drill Lathe)という言葉があった。最近はとんと聞かないから、死語になってしまったようだ。 レースの発音は正しくない。最後は濁る音だ。
 要するに電動ドリルのチャックにワーク(工作物)を取り付け、回転させておいてヤスリを押し付ける。昔のTMSにはよく紹介されていた技法である。やってみたが、ヤスリに切り粉が完全に詰まってしまう。ヤスリを動かしながらやってみても、うまく行かない。

 ヤスリは次々と新しい刃が接触しながら移動する様に作られているから、同じ刃にワークがこすり付けられることを想定していない。一方、ロクロは固定された刃で削るのだから、旋盤と同じだ。

 金鋸の刃を折ったものを研いで、それでやってみるとうまく行くが、刃先が安定しなかった。仕方がないので刃物を載せる簡単な台を作ってみた。何のことはない。一種の旋盤である。
 よし、旋盤を買おう、ということになって小型旋盤を入手した。その旋盤は、アメリカに引っ越すとき神戸の友人に貸してそのままになっていたところ、地震で壊滅した。各種の自作の工具が付いていたので、もったいないことをした。現在のは3代目である。

 著名な模型人で、「ドリルレースで何でも出来る」と強調される方がいらした。素晴らしい作品を次々に作られたが、走るところは見たことがなかった。あるとき、初めてその走行を見るチャンスがあった。驚いたことに、動輪の心が出ていない。ぐわぐわと揺れながら走った。見てはいけない物を見てしまったような気がした。何を思われたか、その方は筆者に話しかけてきた。

「『ドリルレースで何でも出来る』というのは、あれは私の強がりだった。反省している。旋盤を購入すべきだった。しかしもう遅い。私にはもう時間がない。あなたは偉い。最初から旋盤を使っている。それが正しい。私にはそれを褒める勇気がなかった。旋盤の価格など知れていたのに。」

 心に残る言葉であった。その後まもなく、その方は亡くなられた。

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2006年10月29日

NC旋盤屋

improved frog 当初、RP25でどの程度の走行抵抗があるのか調べたくなった。材質を、摩擦の少ないステンレスにするとどうなるのかも、興味があるところであった。

 材料の自動供給装置付きNC旋盤をもつ旋盤屋を「量産屋」という。量産屋を訪ね歩いて、見積もりを取り、とりあえず発注した。もちろん1000軸単位でしか引き受けてくれない。友人と連絡をとってかなりの数を注文した。
 
 受け取った友人はみな大喜びであった。SUS303ステンレス製のRP25など、どこにも売っていないのだから。しかも原価で頒けたので、価格は信じられないほど安かった。

 しかし、筆者は走行テストを繰り返した結果、まだまだ性能アップの可能性はあると踏んでいた。そういうときに、吉岡精一氏からの助言により、大いに力づけられたのだ。

 フランジ形状のみならず、「ユルミ」まで踏み込んだ検討は、当初の予定を超えていた。「ユルミ」を減らすと、踏面の幅を減らすことができる。RP25の踏面はどう考えても分厚すぎるから、これはありがたかった。これで前面から見た車輪の形状は、かなり改善された。

 吉岡氏との連絡を密にして検討を繰り返した結果、決定版というべきものが生まれた。これを3種の径、軸は2種類で合計 1万軸作ることにした。再度友人からの注文を取り、余ったら海外にも紹介するという予定であったが、殆ど国内で捌けてしまった。しかもあっという間に。これも原価頒布だった。当時はOゲージの車輪が国内では枯渇していたのだ。アメリカには1000軸強を持って行った。

「再度作ってくれ」と云う人が増えて来たので、その量産屋に行ってみたら、更地になっていた。倒産して夜逃げした、と近所の人が教えてくれた。残念であった。

 同じ質量の車輌に同じ台車を付け、筆者のレイアウトのカーヴ上で、突放して停止するまでの走行距離を測定するテストを、繰り返し行った。やはり、RP25の2/3の抵抗しか無いことが判明した。同じ列車でもカーヴ上で五割増しの牽引輌数ということになる。

 曲線上でもLow-D車輪では100輌以上の牽引が可能であることが証明されたのである。
 Low-Dとは"Low Drag"すなわち低摩擦のことである。

 写真はフランジウェイが狭いフログ。車輪が落ち込まない。しかし、ガードレイル側は少し広くしてあるが、誰も気が付かない。

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2006年09月28日

太くなるヤトイ

6afeab18.jpg モッチー様が正解である。よくおわかりになられたと思う。あまりよい写真ではないがこれで勘弁願いたい。
 英語ではExpanding Mandrelという。快削材で出来ていて、簡単に所定の太さに削れる。そうしてロック・スクリュウを締めれば多少広がって固定される。つかみ様のないパイプ状のものには適する。
 機関車のタイヤを削る時には不可欠である。

 
 さてJan Lorenzen氏のキットの話に戻ろう。彼のキットはいわゆるエッチング・キットである。昔鉄道模型社が出していたようなものと言えば、お分かりになる方もいらっしゃるであろう。非常に緻密に考えられたキットで、平面を組合わせて三次元の模型を構成する。思わぬところで接合させるので、意外性があって面白い。

 「機関車のキャブの窓枠が、機関士の視線の高さで接合される」と言ったら、信じて戴けるであろうか。当然、添え木を当てることになるがうまく接合されている。

 Janには一度しか会ったことはない。ありとあらゆる機関車、貨車のエッチング・キットを作り出している。しかし、下廻りはどれもこれも感心しない。聞くところによると、建築の方の出身で機械工学は知らないと言う。さもありなんという感じである。コンピュータを一切使わず、すべて手で計算して、原図も手で書くと言っていた。

 まだ、組んでいない彼のキットがいくつかあり、下廻りの設計に頭を悩ませている。最終的に下廻りは捨てて、自分で作ることになる。

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2006年09月25日

続々QCTP

a88cd98a.jpg これはQCTPにつける自作アタッチメントである。複合刃物台の角度が、平行かどうかを確認するためのものである。これは日本製の高級品がつけてある。

 ダイヤルゲージをテスト・バァに当て、刃物台をスライドさせればすぐわかる。もちろんその前にチャックの心が出ているかをこれで確認する。

 今まで面倒な方法でダイヤルゲージを当てていたが、これさえあればたちまち完了する。

 最近中国製のダイヤルゲージがとても安く手に入る。心の振れを見るぐらいなら、何の問題もなく使える。磁石のついた自在台もこれまた安い。こういうものは使えればよいので、アマチュアには低価格はありがたい。目盛りがミリでもインチでも関係がない。動けばよいからだ。
 何種類ものダイヤルゲージを買ってしまった。内径用のインジケータはアタッチメントがいろいろあり、工夫してその組み合わせを考えるだけでも楽しい。

 先ごろ核兵器開発に使える超高級精密測定機器を、低級品と偽装して輸出した件で検挙された会社も、売上をかなり食われていると推察する。最近はかなりの赤字だったらしい。この値段で売られてはたまらないだろう。

 QCTPのカートリッジには、他に綾目のローレットを切るための専用のものもある。2つのローラーがついている。高さを無段階に変化させられるので、先端が首を振らなくても、アタリを均等に設定できて都合が良い。

2006年09月24日

続QCTP 内径削り

13047d7d.jpg 鉄砲鍛冶という仕事は内径削りの作業が多い。あまり詳しく書くと、読者の中で逮捕者が出る可能性があって書けない。ほんのさわりの部分だけにしておく。

 Billの中グリ作業を見学していると、ただひたすら、「刃物を高くせよ」という。刃物は切削によりたわむから、ちょうど中心を通る水平線上に刃物があると食い込んでしまう。その結果えぐった内径が大きくなってしまうから始末が悪い。

 高く保つと、たわんでも刃が工作物から逃げる方向に行くので安心である。角バイトよりも、このような丸いバイトの方が、刃先の角度を調節できるので便利である。この写真では見えないが簡単に目盛りをつけて角度を覚え易くしてある。 

 QCTPは中グリ時には大いに威力を発揮する。刃物をy軸方向のみならずz軸方向にもネジで動かせるので、高さの調整をしやすい。これがシムによる調整だけではとても難しい。BillはQCTPではなく、特製の中グリ用刃物台で高さを決めていた。

 昨日の写真で心押台に付いている銀色の丸いものは何かという質問を戴いた。それは傘センタ(Bull Nose Live Centerという)である。大きな丸い穴が空いている物に押し込むことによって安定保持ができる。作っても良かったが、安いものなので完成品を買った。パイプを切ったりするときは不可欠である。

 その写真では複合刃物台のDROの取付け法も分かる。多少傾けてあるので見やすい。

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2006年09月23日

QCTP

5a17a1f0.jpg  QCTPというのはQuick Change Tool Postのことである。旋盤の刃物台の一部を瞬時に取り替えられる工夫である。

 旋盤作業で面倒なのは、刃先の高さを合わせる作業だ。刃物の下に敷くシムをたくさん用意しておいて、刃物を締め付ける。切粉が入ると誤差を生じて面倒なことになる。

 QCTPはひとつの刃物ごとに高さをネジで調節してロックする装置がついている。ということはどの刃物も取り替えただけで刃先の高さが合う。

 これは大変な変化をもたらす。作業時間が大幅に短縮されるのだ。今まで刃物を3回取り替えれば、そのたびに数分間が無駄に費やされ、合計15分ほどは仕事をしていない。QCTPならその時間が限りなくゼロに近くなる。

 刃物を取り付ける部分(カートリッジという)を刃物の数だけ持っていると良い。以前はそれがかなり高価で、なかなか買えなかったが、現在は中国製の廉価版が出ている。たくさん買っても、悩まなくて良い価格であるので、20個ほど持っている。上にあるネジを廻して高さを決め、ロックナットで固定する。

 カートリッジはいろいろな形があり、角バイトをはさむ形はもちろんのこと、丸い刃物を保持するものとか、突っ切りバイトを保持するものなどがある。

 どれもかなり出来がよい。完全な互換性があるので番号さえ間違えなければ、どのメーカの部品も合う。

 ツール・ポストはピストン式といって上のレバを廻すと1mm程度飛び出してくる。するとカートリッジが斜面に密着して固定されるのだ。


2006年09月19日

Self-Ejecting Chuck Wrench

e75a0824.jpg これは旋盤のチャックを締めるハンドルであるが、小さいスプリングがつけてあるのがミソである。

 旋盤を持っている人なら、どなたも一度や二度はハンドルを挿したまま起動させて、冷や汗をかいた経験がおありではないだろうか。
 
 Billの旋盤では、このスプリング付きのハンドルを使った。手を放せば飛び出してくるのである。
 うまい工夫だと感心していたら、「そんなもの、戦争前からあるぞ。」と言われてしまった。日本ではまず見ないように思うが、いかがだろうか。Bisonの製品はこんな形である。

 筆者のチャック・ハンドルには、スプリングをはめるのに適する細くなった部分があるので、適当なスプリングをはめて使っている。あまり堅いスプリングでは押し込みにくいので、かなり柔らかい物を使うのが良いようだ。

 ボール盤のドリル・チャックのハンドルを、挿したまま起動することもたまにある。鎖でぶら下げてあるので飛んでくる心配はまず無いが、かなりびっくりする。これも同じ理屈で出来ないかと試作したが大変調子が悪い。太くなりすぎて良くない。
 中心の部分が、ぴょんと飛び出るようにできればいいのだが、熱処理してあって穴をあけるのは難しそうだ。焼きなまして加工してみようと思っていたら市販品があった。
 ただし、これはかなり大きなキィである。小さいのを作ってみたいものだ。人間の考えることは世の東西を問わず、みな一緒であると納得した。

2006年09月18日

x軸 DRO

7c283d38.jpg どうしても目盛りが半分に表示される装置が欲しいので、電子工学の専門家のK・K氏に頼んだところ、二つ返事で作ってくれた。

 これがその装置である。任意の場所でゼロを設定することが出来、直径および半径の差分が表示される。

 これを使うと便利な事この上無い。あと0.02 mm削るなどという切削も訳なくできる。これを導入してから殆ど失敗が無くなった。

 このような便利な装置がどうして売られていないのだろうと調べてみたら、三軸DROを買えばその機能が付いていることがわかった。しかしとても高価だ。


 しばらく前に写した写真であまり整頓していないところはお許し戴きたい。
 写真の右奥が昨日の説明の心押台である。4インチ(約100 mm)のノギスをちょん切り、ブラスのリング状のスクラップと角材で作った支持台につけた。見やすいように角度をつけてある。
 z軸は6インチ(15 cm)のノギスをつけた。これもジャンク箱を探してそれらしい部品を介してつけた。
 x軸はKK氏に戴いた物で、Mitutoyoの高級品であった。デジタル出力を強引に取り出してある。

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2006年09月17日

”DRO"について

bc373a4d.jpg これがC型コレットとクローザ(締めるもの)である。主軸を貫通して締める。中空軸であるから長尺材を通したまま、つかめる。入手したものに少々の加工を施して筆者の旋盤に合わせた。

 ブラス色のものは前述のEmergency Colletで好きな太さの穴をあけて使える。今はミリサイズの穴を空けて使っている。

 今日の表題のDROとはDigital Read Outのことである。すなわちデジタル読み取り装置だ。普通、こういう装置は20万円以上するものだ。しかしいくらなんでも高すぎる。
 

 筆者はインチサイズの旋盤を使用している。インチのネジが手に入りにくかったので自分で作るには便利であった。しかし、そのようなネジも日本で簡単に手に入るようになり、わざわざ自分で作ることも無くなった。車軸はミリ規格だし、いちいち換算して作るのが面倒になってきた。送りネジをメートルネジに取り替えればメートル法の旋盤になる。この際、取り替えてみようかと考え始めた。

 そんな時、中国製のデジタル・ノギスが異常な安さでアメリカで市販され始めた。1本20ドル以下なら迷うことも無い。たくさん買って来て友達に分けたりした。4インチ、6インチのノギスを旋盤に当ててみたらどうやら使えそうだ。それでは、DROを限りなく安く作ろうということになった。ノギスの首をはねて、取り付け金具を介して固定するのだ。そうすれば、インチもミリも両方同時に使える。

 心押台のドリルの進み代は今まで、1回、2回と数を数えてこの目盛りまでという具合で加工していた。それをデジタルで直読できればありがたい。いつでも0に戻せるので、0起点からの深さがすぐ出る。思いついたその日に作ってしまった。

 次はz軸である。これも訳なく作れた。x軸(前後方向、つまり工作物の太さの方向)には参ってしまった。取りつけたは良いが、1 mm進むと直径は2 mm細くなる。今まで失敗したことが無いのに、DROをつけたら余計に失敗するのである。どうしても数字を信用してしまうからである。だから、直径をあと0.05 mm削るところを0.10 mm削ってしまうことが多くなった。
 しかも、もう材料が無いものに限って失敗して、頭を抱える羽目になる。どうしても刃物が進む量の二倍を表示するものが必要である。

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2006年09月16日

コレット

9790f6f0.jpg これは筆者の持っているコレットのカタログである。すでに30年は経って印刷も変色している。

 引棒は中空のステンレス製で、握りに荒いローレットが刻まれている。コレットは中古をE-bayで探して買い集めている。どうしてもミリサイズも要るので、それは新品を買わねばならない。

 下の列の中央がコレット・スリーヴである。MTにはめて使う。

 主軸が回転中に、このコレットを開閉する装置もあるが、筆者は量産はしないので買わなかった。メカ的には面白そうで欲しかったが…。

 この種の旋盤付属品はE-bayを見ているといくらでも手に入る。問題は発送方法と送り先で、殆どが海外には発送しませんとある。たまに海外発送するとあっても、航空貨物に限るとある。それは大物で高価な品なら十分に引き合うが、安い小物では贅沢すぎる。

 仕方が無いので、友達に頼み込んで受取人になって貰う。幾つか集まったら再発送を頼んだり、現地に行く用事があれば取りにいく。いつぞやは工具を50 kgも頼んでしまい、スーツケースに木箱ごと入れておいたら検査で引っかかり、一時間も調べられてしまった。

 どうしてもミリ規格の工具が要る時は仕方が無いが、切削工具はインチ・サイズで問題ない。その方がトータルでは安くつくのは間違いない。

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2006年09月15日

くさび

3a55bdd0.jpg これがMTを外すためのくさびである。これは必ず生の材料(要するに焼きが入っていない材料)で作れと教わったので、拾ってきた鋼材の端を切って作った。

 トングがついていれば楽に外せるが、もしこれがトング無しであるならと考えてみられよ。筆者の工具箱の中のMTのうち、大半はトングなしである。そのようなMTを使っていると外せなくなるというのは日常茶飯事であろう。
 
 運がよければ、引きネジの頭をプラスチック・ハンマで一撃すれば取れるだろう。それでも取れなければこれは悲劇である。

 イギリスの工具屋はMTをたくさん扱っている。上記のような問題を承知して使うよう勧めているのだろうか。アメリカではMTは人気が無い。

 イギリスにはMTの斜面を使ったコレットが市販されている。アメリカの商品にもある。これは良く締まるだろうが外しにくいだろう。しかもスピンドルの内側を毎回滑らせるわけだから、使用頻度が多くなると磨り減って、テーパが狂う。また、コレットは貫通型には作れないので長い材料は使えない。

 筆者はスピンドルのMTに嵌るコレット・スリーブを入れ、Cコレットを差し込んで使っている。コレットの引き棒は、当然中空で長い材料が貫通する。



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2006年09月13日

心出し可能な三爪チャック の内側

64c2532d.jpg 内側はご覧のとおりで右の穴に左の飛び出したフランジが嵌まり込むようになっている。嵌めあいは緩く、1/32インチ(0.8 mm)くらいの遊びがある。つまり0.4 mmの偏心は吸収できるわけである。

 右の方で少し飛び出した黒いネジは、偏心の微調整用である。本来は直交しているべきなのだが、何かの部品を逃げるためにこのようにやや傾いた形になっている。使用上は全く不都合は感じない。

 昨日の写真の長いネジは十分に細く、チャックの偏心をその撓みで吸収して締め付けるようになっている。このあたりの発想が実に賢いと感じる。

 爪はリヴァーシブルであり、Soft Jaws(生爪)にも簡単に取替えできる。

 BillにBisonを勧められてから、彼が勧める理由は何だろうと考えつづけてきたが、その答は使ってみてようやく分かった。今までチャックは中国製、日本製、イギリス製を使ってきたがBisonは抜きん出てよい。

 これに味をしめて、フライス用のチャックもBisonを買った。日本製より安いのには驚いた。

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2006年09月12日

心出し可能な三爪チャック

74e13bc8.jpg Bisonの鋼の質が一番良いということだったので、苦労して探した。鋼の専門家が言っていたのだから信用するしかなかった。
 アメリカ製のBisonはすでに市場にはなく、Poland製の物しかない。それは、すでにBillのお勧めのBisonではないことになる。

 E-bayの工具のところを、ずいぶん長い間探していた。ついに「新品、30年ほど棚ざらし品、少々錆あり」という絶好のものを格安で見つけた。

 発送も船便で出してくれるという最高の条件の店であった。大きな箱にすると運賃がかさむので、なるべく小さい箱でと指定した。そうしたらチャックにぴったりした箱で送ってくれた。あたかもダンボール一枚を巻いたような状態で、10 kg以上の鋼の塊そのものを送ってくれたのだ。E-bayのほとんどの工具屋は「航空貨物で発送する」以外、受け付けない店がほとんどである。高価品は良いが、このような安い品では、運賃の方が高くなってしまう。
 配達に来た郵便屋さんは重くて持ちにくいので、郵袋にいれて抱えて来てくれた。申し訳ないことをした。税関も中身をちらりと見て、そこから錆が見えたらしく、免税であった。

 旋盤のスピンドルを少し加工してチャックのバックプレートを付けた。普通はバックプレートを加工するのだろうけど、筆者は「旋盤は工具」と割り切っているので、さっさと削り落とした。このあたりはBillからの仕込である。

 今日の写真は正面から撮った物で長いネジは固定ボルト、チャックの円周面に小さく黒いネジが見えているのが調整ネジ。バックプレートにはそれがあたる部分が見える。

 錆はそれほど深く進行していたわけではなく、丹念に磨いて防錆油を塗った。動作は完璧で、焼き入れした物をつかむと、その剛性感が直接感じられる。低級品では硬いものをつかむと、内部のどこかがつぶれるような感触がある。 

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2006年09月11日

step collet

6171601b.jpg これらがステップコレットのステップである。用途に応じて、ありとあらゆるステップが作ってある。

 筆者の持っている旋盤の教科書(日本語3冊)をもう一度おさらいした。やはり、コレットについてはさらりと説明してあるだけである。ひたすら四爪チャックで心を出すテクニック、ヤトイを作って心を出す方法、いろいろ書いてある。

 アメリカ人の工作の達人たちは、必ずコレットをたくさん揃えている。このあたりの違いはどこから来ているのだろう。しかも生爪(ヤキの入っていない軟鋼の爪)を使う方法も日本の教科書には紹介されていない。筆者の持っている教科書が偏っているのだろうか。
  
 普通のコレットも生の材料で出来たものを売っている。中にはブラス製のコレットがある。耐久性は無いが、望みの径に中グリして使える。これを "Emergency Collet” という。非常用というのは言い過ぎのような気がするが、持っていれば便利ではある。

 Billは「チャックは高くても良い物を買え」と言っていた。銘柄を聞くと
"Bison”が良いと言う。筆者の旋盤に合うBisonを長年探して、ようやく見つかった。

 今まで三爪チャックはスピンドルにぴったり合う、いわゆる印籠組みになっていた。これではチャックの固有の誤差は絶対に除くことが出来ない。チャックのつかみ径が違えば、その径での固有の誤差が出てくる。多分 0.1 mm 以下の誤差ではあるが許されるものではない。この誤差を克服するには、スピンドルの印籠部分を 0.5 mm 程度細く削ってしまい、そこにチャックをつける。チャックの締めボルトをほんの少し緩めておいて、工作物(ワークという)の「振れ」がなくなるまで、チャックをプラスチックハンマーでコンコンと叩いて心を出す。要するに、チャックをスピンドル軸に対してわずかに平行移動させて偏心させるわけだ。これは近くの工場の経営者に教えてもらった。

 こう書けば面倒くさそうだが、意外に早くできるものである。練習すれば1分くらいで可能である。もちろん、調整が終われば、ネジを締め上げて、再度チェックしてワークを削る。

 明日はその叩く操作をネジで行うタイプのものの内部を紹介する。もちろんBison製である。これを、Adjustable Chuckという。商品名は"Set-Tru"である。最近の価格は信じられないほど高い。

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2006年09月09日

ステップ・コレット

f128182d.jpg 皆さんよくお分かりである。 


 Billは「旋盤を持っているか」と聞いた。
「旋盤を持っていないと鉄道模型は作れない。小さいのでいいから買うんだな。」と勧めた。
 それからしばらくBillの旋盤で練習をさせてもらった。

 三爪チャックで締めると多少の心振れが出る。それを修正するわけだが時間が掛かる。「コレットを使うのだ」と言って、見せてくれたその数の多いことには驚いた。1/32インチ(0.8mm)ごとに全寸法を持っていた。六角や四角のコレットもあった。

 日本で見た旋盤の教科書には、コレットのことはあまりたくさん書いてなかったように思う。コレットは、その構造上、心が完全に出る。その代わり、つかめる範囲はきわめて狭く、±1/64インチぐらいの余裕しかない。

 錆びるといけないので油で湿らせたぼろきれに包んであった。蒸気機関車の動輪のように大きくまた、クランクピンが飛び出しているものを心を出してつかむには、特製のコレットを用意する。

 今日の写真がそれである。これはまだ未加工のものでスリ割の幅の広い部分に同じ厚さのものをはさんで引き、絞り上げる。その状態で、くわえたいものの大きさまでコレットを削る。車輪の踏面にはテーパがついているのでそれもつける。フランジのフィレット(丸み)を面取りで逃げて、フランジの斜面で当たるようにしておく。クランクピンの逃げは最初から大きくえぐり取っておく。

 このようなコレットは、Dish Collet とか、Step Colletと呼ばれる。どうしてステップなのかというと、削り取る穴を階段状にすると各種の大きさの物がつかめるからである。Billは、あたかも階段教室の如く、深く加工したものをたくさん持っていた。

 このようなブランクのコレットはそれほど高価ではないので、まとめ買いをしておく。

dda40x at 09:09コメント(0) この記事をクリップ!
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