旋盤
2025年08月31日
クランクピンのネジ切
快削棒材を主軸コレットに銜えて所定の径に削る。ダイスをダイス・ホルダに入れてネジをきっちり締める。偏心があれば薄いシムをはさんで心を出して置く。心押台のテーパをよく掃除し、油を塗っておく。ダイス・ホルダのテーパも同様である。
ネジは一番奥まで切りたい。途中でやめればその後は手でやらねばならない。これを効率良くやりたいわけだ。
ワークを最低速で廻し、心押台をゆっくり押し付ける。クランクを廻す速度はネジが喰い込んでいく速度に同調させる。難しそうに見えるが簡単である。押付け気味にしてもそれ以上の速度では入らないからだ。
ダイスが接触する寸前でクランクの回転(進ませる方向)を止める。するとダイスは喰い込み、引張られて心押台から抜ける。そのまま回転を続けるがネジは切れて行かない。トルクが発生しないからである。すなわちネジ切りはそこで終了である。
心押台を後退させてから、ダイス・ホルダを手で握って主軸を逆転すると抜けて来る。
これは難しそうに見えるが、実に簡単である。コツは送りを止めるタイミングである。ダイスとワークの隙間がなくなる寸前で止めるのである。送りがゆっくりなので失敗はないはずだが、心押台のネジのバックラッシの量を覚えておくことは必要である。
また、テーパの掃除と注油は不可欠である。
<註> 英語では die は単数である。日本語では一つでも複数形に相当する言葉になっている。すなわち、ダイス・ホルダというのは奇妙な表現ではある。
次回にあるように主軸を逆転させると早い。訂正させて戴く。
2024年12月20日
Deagostini の C62
そんな時にA氏と知り合った。彼は機械工学を修めた技術者であり、ご自宅の庭には 45 mmゲージのレイアウトがある。腕はピカ一であるから、この方にお願いするしかないと思った。彼がどのように料理されるかが楽しみであった。
そしてA 氏は45 mmゲージの慣性増大装置を完成されたので、その運転状況を見せてもらった。素晴らしい性能で驚いた。小さな旋盤で大きなものを正確に挽く技量は素晴らしいもので、驚いた。のちに中型旋盤をお世話したので、より応用範囲が広がった。
先日連絡があり、「C62を可動化したのでご覧ください。」と動画を送って下さった。

動輪をどのように作られたのかに興味があった。実はタイヤを快削鋼から削り出すつもりで、旋盤屋と話をしていたところなのだ。そのタイヤをすでに自作してしまったそうで驚いた。
タイヤとフランジに分けてローラを通して曲げ、それを互い違いに嵌めてハンダ付けしている。それを旋盤に掛けて削り出すわけだ。なかなかできない発想で驚いた。歯車は筆者提供の Oゲージ用の高効率ギヤをさらに減速している。きわめてよく走る。
2023年12月05日
続 旋盤上で回転砥石を使う
これが欲しくなった最初のきっかけは、当時持っていた小型旋盤の3爪チャックがかなり偏心していたので、それを削って修正したかったからだ。小型旋盤用のコレット・セットがなかったので、心を出して掴めなかった。爪は十分硬く、熱処理がしてあることがわかった。
目的の太さ近傍の鋼の丸棒を掴み、薄いディスク状に切り落とす。それを爪を開いて一番奥に入れる。直角をよく確かめながらチャックを締め上げる。そうしておいて回転砥石を中に差し込んで削り、3つの爪に砥石が当たることを確認する。チャックは手で少しずつ廻す。始めは粗い砥石を用いて削るが、9割以上削れたところで、細かい砥石に替える。これで削れた中の面は心が出ている。爪を外しディスクに当たっていたところを別の砥石で磨り落としてワークに当たらないようにする。これで完成だ。
こうすることにより、車輪を掴んで軸穴を加工するのは簡単になった。
最近、この話をクラブ内で公開すると、その方法はAmazonで売っている部品の使い方説明に載っていると知らせてくださった方があった。誰でも思いつくやり方なのだが、当時はこの方法を編み出したことが嬉しくて、何人かの友人に見せた。
2023年11月29日
旋盤上で回転砥石を使う
その後で苦労して削ってチューブに挿しているが、もう少し楽にできる方法がある。
この道具はアメリカの友人が作ったもので、20年ほど前に10ドルほどで頒けてもらった。硬いアルミ合金をレーザ?で切ってサンドブラストを掛けてある。とても便利なものだ。ドレメルの先端キャップのネジを外してそこにねじ込む。これを刃物台に付けて、ワークに近付ける。要するに高速回転する砥石を回転するワークに当てて、硬いものでも正確に削り落とす工夫だ。これがあれば焼鈍する必要が無くなる。
砥石も擦り減るから、初めは粗い物を用いて大まかに削り取る。最終的に細かい砥石に取り替えて平行度を確保する。この時、砥粒が飛ぶので、ベッドは保護するのは当然であるが、筆者は電気掃除機を近づける。ボール紙でコーンを付ければ、ほとんど100%吸い込める。写真のように、カッタの幅を調節するときなどには便利に使える。焼きの入った材料でも簡単に処理できる。その時ダイヤモンド砥石は使うべきでない。高温ではダイヤモンドは容易に鋼と反応し、急速に消耗する。
ネジは、3/4インチ 16 TPIである。このネジを切るのは大変であるから、既存のものがあれば利用したい。ホームセンタのネジを一個売りしているところで、この3/4インチ(通称6分)のナットが見つかれば良いが、この16TPIはそう簡単には見つからないだろう。買う前に、売り場でよく確認願いたい。それに角材を熔接すれば出来上がりだ。大した力が掛かるわけでもないので、ロウ付けでも良い。構造をよく考えればハンダ付けでも問題ない。ネジの通販会社でなら見つかるだろう。
たくさんの市販品があるようだ。筆者のものとそっくりのもある。ドレメルのネジは、最近のは粗いネジらしい。上の16 TPIは古いタイプ用の数字であるから、最近買われた方はご注意願いたい。最近の先が細いドレメルはやや粗い12 TPIらしい。
TPIとは "threads per inch" である。
2023年10月30日
続 installing the flywheel
シャフトは Φ5である。リーマを通してあるからギリギリで入る。このとき向こう側の孔に命中しないと大変である。こういう時は、相手側の内側を円錐形に凹ませておく。押し込めば一発で通る(この写真を見て角に傷がついていると思ったが、切り粉が載っていただけであった)。
軸にロックタイトを塗ってゴロゴロと廻しながら待つと、固まる。2023年10月26日
続 turning a flywheel(心を出す方法)
次は expanding mandrel (太くなるヤトイ)である。この三爪チャックは心を出せる製品であるが、それでも多少の誤差はありうる。この太くなる軸を銜えて、ヤトイ自身を削って心を出すのだ。好きな太さにできる。こうすればチャックの調整無しでも、完璧に心が出た状態になる。この写真は粗削りの状態だ。仕上げ削りをして、サンドペーパでぴかぴかに磨く。このとき、ベッドは必ず保護する。ワークをかぶせる。中心のネジを軽く締めるだけで完全に固着する。



・反対側の端面削りをする(左)。
・外面を軽く削るとこの程度の偏心が認められる。外径を Φ51.5 まで削るとこの偏心はなくなったが、さらに削って設計値の Φ51.0とした(中)。
・出来上がり。これで質量は570 gとなり、かなりの減量である(右)。
表面はきれいにしたいので、この後、細かいサンドペーパで磨く。
これで内外の同心性が確保された円筒ができた。ある程度の高速回転(最高1000 rpm強)をするものであるから、心が出ていないと激しいビビリ振動が出てしまう。
2023年10月24日
turning a flywheel(心を出す方法)
筆者に旋盤のテクニックを授けてくれた先生は何人かあるが、Bill Melisの方法を紹介したい。




・三爪チャックに材料をしっかりと銜え、端面削りをする。送りを小さくしてきれいな面を出す(左)。
・センタドリルで中心を出す(左中)。
・1/2インチ(12.7 mm)のドリルで貫通させる(右中)。
・次に3/4インチ(19 mm)で拡げる(右)。
中グリバイトで拡げる。このとき「刃物を高くせよ」と厳しく仕込まれた。間違って喰い込ませたときに、被害を少なくするためだ。「刃物をよく研ぎ、送りはゆっくり」である。目的の内径まで、丁寧に拡げる。
2023年08月09日
続 Low-D 再生産
「30年以上前のKTMの車輪が一番精度が良い。」と頷き合っている人たちが居たそうだ。何を見てそう言ったのか知らないが、友人の弁では、
「要するに、彼らはLow-Dを見たことがないからだ。いや、見ても分からないのではないか。」と言う。
他社製の車輪をマイクロメータで測定し、顕微鏡で挽目を見ると、その粗さには驚く。ノギスで測っても、径の違いが分かるものもある。また、軸と車輪を結びつけるネジが粗く、しかも心が出ているとは言えないから、走りは悲惨だ。またジャーナル部分は太く、半径比が小さいので回転抵抗は大きい。
Oゲージの線路上で異常に静かな車輌群が走っていれば、気が付く人は居るはずだ。筆者が、
「OJでは少ないから、見たことが無いのじゃなかろうか。」と言うと、
「いや、あの場にはOJの線路もあり、Low-D装着の電車が走っていたよ。でも気付かなかったんだ。」ということであった。これではお手上げである。
要するに、これは観測能力の問題である。すなわち違いが分かる人ではないわけだ。もう少し若いときに高精度な車輪を見ていれば、考え方も変わっただろうが、すでに手遅れなのだろうか。
実はその中のお二人は会ったことがある。OJ版のLow-Dを見せたこともあり、走っているのも見ていたことを憶えている。しかし、その静かさ、動揺の無さには気付かなかった。恐れ入ったのは、別れ際に、
「サンプルを寄越せよ。テストしてやるから。」と言ったのだ。
これを聞いて、とてもお相手は出来ないと思い、早々に退散したのが5年ほど前だ。自宅に走行用の線路を持たないようでは、音の問題は観測できないだろう。その点では、吉岡氏は別格であった。
走らせていない人には、車輌の性能は比較できない。
2023年08月07日
Low-D 再生産
三菱のジェット機がどういうわけか離陸できなくなり、そのプロジェクトに参加していた工場が、アオリを食らって倒産した。厳密には廃業と言ったほうが正しい。要求に応じて高価な工作機械を買ったが、注文が来なくなり、仕事をやめざるを得なかったのだ。その工場の挽物の品質は最高で、ネジの精度はこの世のものとは思えないほど素晴らしかった。ネジが締まるというのはこういうことなのだ、と分かる精度である。ぎゅっと締まるようなネジはまがい物である。角度にして1度半以下の回転でコツンと締まって緩まない。そういうネジを作れる機械は稀で、その廃業によってこちらはとても困った。その機械を持っている工場を探さねばならなかったからだ。
幸いにも見つかり、交渉の末、再生産に漕ぎ着けた。ウクライナ戦争の影響はここにも出ていて、単価は6割以上、上がった。しかし新たな工夫ができ、より精密な圧入装置を用意して組立工場に渡したので、振れは完全に防げる。
前回の製作では廃業寸前で、製品の組立てにやや問題があり、一部を廃棄する羽目になった。今回は、飛躍的に精密に組める工夫をしたので、正確なものを供給できる。
しばらくの間、国内の供給が途絶えた間に、ヤフオクでは転売で利ザヤを稼ぐ人が何人か居たが、まもなく不可能になろう。十分な供給体制が整ったからだ。数多くの転売があったということは、すでにデファクト・スタンダードになったということである。また、その価格でも買う人が居たということは、その価値が十分に在ったという証明でもある。
2023年07月12日
テーパ・ネジを切る
この頃はホームセンタでも水道管、ガス管は適当な長さで売っていて、両端にテーパ・ネジが切ってある。見ると4箇所に刃の跡が残っているので、工場ではダイスで切っている事がわかる。
機械加工屋と話をしていたら、専用機で簡単にテーパ・ネジを切れるというので、それは当然だろうと思った。汎用機(すなわち筆者の持っているような普通の旋盤)ではできないはずなのだ。このような動画を見つけた。達人が手作業で作っている。
まず、複合刃物台を傾けてテーパを作るが、その次にネジを切る時にはバイトをわずかに引かなければならない。CNCによるサーボ・モータが必要な仕事である。
この人の左手の動きを見て欲しい。神業的な仕事だ。ネジ溝を何回かに分けて切り分けている。ゲージを廻すと、1回で所定の位置まで入るのは素晴らしい。この道10年以上の達人である。
2023年07月10日
続々 配管工事
ガス、水道配管のネジはテーパ・ネジである。ほんの少し先が細くなっていて、締め込むと密着するようになっている。昔は鉛丹を塗って、麻糸をほぐしたものを巻き、大きなトルクでねじ込んでいた。今はしなやかなテフロンテープを巻いてねじ込む。このテープは簡単に塑性変形して馴染み、浸透性がないから漏れを完全に防ぐ。ガスが漏れないのには感心する。
先々回の記事のエルボで、小さい方のネジはテーパ・ネジである。大きい方は平行ネジである。この差を一瞬で見分けられないと、水道屋はできないというわけだ。
水道材料は全て快削ブラスで、気持ちの良い工作である。
上の記事の2つ目のリンクで紹介されている数式の話は60年ほど前に父から聞いた覚えがある。「つまらない話だ」ということであったが、今考え直すと、なかなかのアイデアであると思う。
2023年07月08日
続 配管工事
そもそもインチネジは計算が楽である。全て1/8の倍数であり、歯車の切替えは単純そのものである。親ネジのピッチが1/8インチであるから、話は極めて簡単だ。主軸が1回転する間に、1/12,1/16,1/24、1/32、1/40,1/48,1/56、1/72、1/80インチ動けば良いだけのことである。この算数は小学生レヴェルだ。
昔よそのクラブの例会で、ある人が、
「うちはインチの旋盤だから素人には使えないよ。インチネジを切るのは難しいんだ。」と得意そうに言うのを聞いて、吹き出してしまった。この人はネジを切ったことがないことは明白だ。メートルネジの旋盤のほうがはるかに面倒である。ピッチが何種類もあり、それらが倍数関係になっていないからだ。たとえば、0.5,0.6,0.65,0.7,0.75,0.8,0.9,1.0 mmを作り分けるには何種類の歯車が要るかということである。
2023年01月07日
続 突切りバイトを作る
筆者を攻撃した人たちは、刃先が剥がれるから危ないと言っていたが、剥がれることはないし、たとえ落ちてもそれは下に落ちる。その瞬間はロクロ屋で見たことがある。油が切れたからだ。すなわちその批判は、客観性のない無意味な攻撃である。実際にやったことがない人なのだ。
キィ材を使うのは昔ロクロ屋で教わった。安くて実用的である。S45Cという鋼材は、剛性が大きいので都合が良い(快削黄銅の2倍のヤング率がある)。太さは 8 mm角程度が良い。すくい角は 0 度から始めて、各種作ってみるべきだ。どの程度が良いかは、すぐ分かる。快削黄銅なら、切り粉が細かく切れて出て来るのが理想的である。これは人によって好みがあり、筆者が見た親方の中には、すくい角を付けた上で、刃先から1 mm以内のところにコブ状の膨らみを残して切り粉の連続性を断ち切る(要するに折るわけだ)人も居た。これは、後には ”chip breaker”と呼ばれるようになった。
上記のリンクの中にカンナの刃を二重にする話がある。これは日本の二枚刃のカンナも同じである。アニメイションが実にわかりやすくて良い。
金属であっても似た現象はあるだろう。切り粉は粉々になったほうが、仕上がり面に傷がつかず、綺麗になるように思う。そういう点ではすくい角は少ない方が良いだろう。実際にやってみて好みの角度を探すべきだ。
2023年01月05日
突切りバイトを作る
むすこたかなし氏のブログで紹介されている方法は、日本のロクロ屋で長らく使われた手法である。当時は金鋸の刃を折って作った小片をハンダ付けしていた。フラックスは当然のように塩酸を用いていた。小学生の頃、その作業をよく見るチャンスがあった。
バイトになる鋼の小片は、使い捨ての折るカッタナイフの刃先から作ると簡単である。筆者は45年くらい前からこれをやっている。ハンダで付けると、取れやすいと思っている人が多いらしい。筆者の方法をあからさまにバカにする人もいたが、やってみればわかることで、剥がれることはない。剥がれるのならロクロ屋さんは仕事ができなかったはずだ。
先入感でハンダは弱いと思っているのだろう。それはご自身のハンダ付けがおヘタである以外に、理由は思い付かない。十分な加熱により、ハンダが鋼片をよくぬらしていれば、そう簡単には取れない。ハンダの層が十分に薄いことが不可欠である。融かした状態で、刃先の鋼片を金属棒で軽く押し付ける。
快削黄銅を削るのであれば、何もしなくても刃が外れることはない。相手が快削鋼であるときは切削油が必要である。しかも油を途切れなく、たらたらと流す必要がある。油が切れた瞬間に煙が上がって刃先は鈍り、摩擦熱でハンダが融ける。昔は油を垂らすのは新入りの小僧の仕事であった。小学生の筆者は、小僧が親方に怒鳴られながら油を垂らすのを見ていた。
2022年10月11日
続々々 内野日出男氏の工作
内野氏がどのようにしてそのような能力を身に付けたのかは、よくわからない。ご実家はその種の仕事をしていたわけではない。特定の誰かからテクニックを学んだということでもないようだ。翻訳家の日吉菊雄氏とは、家が近くで親しかったとは聞いている。
遺された工具類を点検すると、全てのヤスリのsafe edgeは見事に研ぎ上げられている。旋盤も良いものだが、特別なものではない。
糸鋸は荒い目の物が多い。#1程度の刃がたくさんある。これでステンレスを切ると、かなり早く切れる。糸鋸の枠も極めて普遍的に売っているもので、特に変わりはない。
筆者も若い頃は目が良かったので、糸鋸加工は得意だった。内野氏達と話していたとき、ケガキ線に沿って切るとき、どこを切るかという話で盛り上がった。内野氏が「ケガキ線を半分残すんだ。」と言ったので、皆が納得したことを思い出す。
2022年04月21日
続 高性能な車輪
同じようなことが、昨年の静岡のトレインフェスタでもあった。非常に静かに、安定した走りを示す電車が、OJゲージの線路を走っていた。全ての車輌が異常に静かなのだ。OJでこんなに静かなのは初めて見た。
OJの車輪は自分で挽く人が多いので、高性能のCNC旋盤による車輪踏面の仕上げ面とは、やや異なる。卓上旋盤のスピンドルの精度は、一部の特殊な例外を除いて、決して高くない。2/100 から 3/100 mmの振れはある。筆者の車輪の振れは、1/100 mm以下である。数あるCNC旋盤の中でも、最高の性能を持つものを使用しているからだ。こういう理由で、音の差は明白で、走行安定性の点でも無視できない差が生じる。車輪や歯車は、作る工作機械の精度がそのまま製品に現れるから、工場を選ばねばならない。Low-D車輪を作る工場は、三菱のジェット機が失速して、廃業してしまった。困ったことになったが、ある方の紹介で、良い機械を持つ工場を紹介してもらえることになった。
さて、そのOJグループの人に聞いてみると、「ある方が非常に安く作ってくれたので、大量に買いました。どうしてそんなに安く、良いものを売るのか不思議です。変わった方ですよ。普通では考えられないことです。」と言った。
そういえば前の年に、そんな注文があったことを思い出し、名札を見せると、彼らはとても驚いた。
「変人かも知れないですね。ただ、これを広めたいだけですよ。」
と言うと恐縮していた。ともかく、当方の目的を達していることは確かである。OJの車輪は、吉岡精一氏の設計により、バックゲージは21.5 mmである。
2022年03月30日
旋盤と縦フライス盤
素晴らしいマイフォードがあった。45年ほど前に買って、30年ほど使ったものらしい。丁寧に掃除してあり、錆一つない。新品同様と言ってもおかしくない。マイフォードは、イギリスでは中古の市場が確立されている。部品の供給もあり、おそらく半永久的に使えるだろう。
筆者も欲しかったが、別のものを入手してしまった。それで満足しているから、今更更新しようと思わない。スタンド込で約150 kgはあるから、それほど簡単には動かせない。屈強な大人2人で、吊り出せるかどうかである。そのあと、トラックに積むには、フォークリフトかユニック(小型クレーン)付きの車が必要だ。
他に、ベッド長500 mmほどのフライス盤がある。送りのガタは感じられない。台湾製とあったが、日本製と遜色ない。いわゆる中華製ではない。これは重そうだ。作業台の上に載っているから、移動の仕方を考えねばならない。鉄パイプにロープを掛けて、4人で持ち上げるのがやっとだろう。3脚を立てて、チェインブロックで動かすべきだろうか。
2022年03月24日
またまた Unimat SLの到来
先日も呼ばれて、かなり遠方に行った。故人は金工職人だったので、趣味で作られたものとは言え、素晴らしい作品があった。その行き先を探して差し上げるわけだが、機械、工具類も素晴らしい。どれもピカピカに磨き上げられ、50年以上使っていたとは思えないものばかりだった。素晴らしいマイフォードの旋盤と500 mmベッド のフライス盤(約200 kg)があった。どなたか興味のある方は、連絡されたい。筆者も20歳若ければ、手を挙げたかも知れない。条件としては、自力で土間から運び出して、トラックに積み込めることである。チェイン・ブロックが必要である。
小さな工具類はどうぞお持ち下さい、とのことで、戴いて来たものがある。小物を作るのにユニマットSLを愛用していたそうだ。このユニマットは、最近は人気がなく、引き取り手が見つけにくいことはお伝えした。
かなりの改造が加えられ、使いやすくなっている。また、切り粉受けが付けられている。この機械はかなり古い。極めて初期のものである。ネジ切り装置を移植できればと思った。
移植後の姿がこれである。簡単に組み換え出来た。ハンドルはアルミ合金で作ってある。プラスティック製は劣化するが、これは変化しない。初期型だけである。引き出しは、自作である。とても手際よく作ってある。チャックやライヴ・センタは防錆油漬けになっていたので、新品同様に輝いている。
ネジ切りを外した機械は、とりあえず、糸鋸盤に改装してみる。オリジナルの設計では役に立たないので、少々工夫をせねばならない。
2022年03月10日
z軸 ハンドル車


まず最初にセンタドリルで凹ませ、8 mmのドリルで貫通させる。次にボスの厚みが大きすぎるので、ナットを締める部分を中グリして 5 mm凹ませる。快削材であるから簡単である。
次に三爪チャックの爪を中外逆にする。このBisonの爪を逆に付けるのは非常に簡単である。正面からネジを緩めて逆にするだけである。普通は、爪を抜いて順序を替えて嵌め直さねばならない。面倒であるし、その順番が思い出せないと困る。このバイソンの爪は非常に正確に出来ていて、極めて簡単に所定の位置に嵌まり、ガタがない。センタを合わせておいて、逆に付けてもセンタが出ているのは大したものである。
アルミ板を挟んで締める。ボスの部分を突っ切るのであるが、銜える深さがやや足らない。センタを押さえないと外れてくる可能性が高いから、回転センタで押さえて廻す。
キィは 3 mm角 であるから、フライス盤で切って嵌め込めば出来上がりだ。径が大きくなったので、廻すのが楽である。読者諸氏も、壊れる前に改良されると良いだろう。掃除を入れても、1時間足らずの仕事である。
2021年12月20日
コレット と 割出盤
試しにERを嵌めてみたが、しっくり来ない。少し長いのだ。この旋盤専用のコレットを売っていたようだ。売れた数が多いので、その種の中古市場で手に入れたい。

割出装置があった。どういうわけか48分割一つしかない。奇数、素数のインデックス・プレートが欲しい。レーザで切り出して 、割り出し板を作ってみたくなった。17分割とか23分割のインデックスがあると面白そうだ。問題はホブである。インヴォリュートのホブを手に入れたい。
おそらく、まともな刃物屋で作ると、17枚用と23枚用は歯形が異なるはずだ。高そうである。
2021年12月14日
ユニマットの品質
1970年代になり、Myfordを持っていた人が薦めたので、イギリス製を買うつもりであったが、思わぬことでオーストラリア製の小さな Sherlineを買ってしまった。アメリカに代理店を持っていたためだ。それには、いくつかのアタッチメントを付けて補助機として便利に使っていたが、貸出し先の神戸の友人宅で地震により壊滅した。
80年代にアメリカでMyfordと同じ大きさの小型旋盤を手に入れ、Bill Melis氏の指導のもと、様々なものを作って楽しんだ。その後、日本に持ち帰って部品を取り替え、現在に至っている。
その後ユニマットを見ることもなく過ごしてきたが、故吉岡精一氏の遺品のユニマットを動かしてみて、その精度には驚いた。スピンドルの振れの無さ、各部のガタの少なさ、チャックの締り具合が最高である。
その頃には粗悪な中国製の旋盤が上陸していたが、それらは比較の対象にもならない。国産品、米国製と比べても上回る精度であった。中でも、付属していたフライス用万力には驚いた。ガタはなく、鋼材は熱処理が完全で、とても硬い。
精密機械とはかくあるべき、という信念を持った人が作っている事がよく分かる。酒井のMLシリーズと比べても、一段上である。
2021年12月12日
ネジ切り
本物の小型蒸気機関車の復原時に、ボイラの修理に特殊ネジのタップを必要とした。友人の機械工は、硬い工具鋼から旋削し、熱処理して作った。こういう作業はまず見ることがないので、勉強になった。
ネジを切るのは難しいことではないが、太いネジの場合は切り込む位置を分散して、深く切り込まねばならない。そのずらし方(千鳥という)は、かなりの熟練が必要である。
この徳島弁の旋盤工氏の動画は他にもあるが、どれも素晴らしい。熟練工の凄さを、柔らかなタッチで見せてくれる。旋盤のテクニックは指導者につかないと習得しにくい。そういう意味でも、この一連の動画は実践例として素晴らしい価値がある。
この方法は面白い。ダイスの歯が逓増しているのを利用して、一回の切込みで相当の深さまで削れるが、負荷はかなり大きい。出力の小さな旋盤では難しいだろう。作るのは難しくないのでやってみたい。(この方法は、偶然にも上述の旋盤工の動画のコメントに出ていることに気が付いた。)
2021年12月10日
ネジ切り装置
普通の旋盤上では、ネジ切りはパズルを解くような感じである。どのギヤを使うかを考えて組み合わせる。インチネジは倍数になっているから、1/8という数字を元にして考えればすぐできる。メートルネジでは、親ネジとワークのピッチの比率を作るので、いつも同じ方法では出来ない。早見表がついていればそれを見ればよいが、いつもその早見表がすぐには見つからないから、考えるしか方法がない。
このユニマットSLでは、歯車の切り替えによるネジ切りではなく、親ネジそのものを取り替えるようになっているところが面白い。昔の倣い(ならい)旋盤のようである。ネジの深さは鉋台(かんなだい)の上をなぞる滑り子で制限する。これは、この機種以外の製品にはない機能である。要するに、ネジ溝を”転写”するのである。日本ではメートルネジの親ネジしか売っていなかったが、アメリカではインチあたりの山数で、24,32,40,48,56,64,72,80などがあった。
さて、作動状況を見ていこう。この動画がすべてを物語る。少々速いが、この速度でもできるわけだ。筆者のネジ切りは、この1/3程度の速度である。切り上げが難しいからだ。
切り上げのコツは最初を長く、徐々に短くすることなのだが、思うほど簡単ではない。この動画の6回目(最後から2回目)の切り上げは少々遅れたので、ギギッと音を立てて喰い込んでいる。
訪ねてきた友人に見せると、ネジ切り専用機としてバラさずに使うべきだとの提案を受けた。確かに、そうすると便利である。
兼用にすると、その変換作業が大変で、やる気が失せる。
2021年12月08日
Emco Unimat SL の到来
「ベッドが鋳造ではなく丸棒だ。」
と言うと、躊躇してしまう。重負荷では撓むということになっているからだ。確かに、鋳造品と比べると剛性は少ないだろう。’70年代のModel Railroaderに、どうやって剛性を高めるかという記事があったほどだ。
「そんな重切削をすることもないはずだから、大丈夫だよ 。」
とこれを薦めたが、結局のところ、行先がなくなってしまった。
多少錆びていたので、分解して油を塗り、スティール・ウルで磨いた。サンドペーパで磨くと細くなってしまう。
一緒に届いた箱を開けると、極めて珍しいものが入っていた。ネジ切り装置である。日本で見るのは初めてだ。これは非常に面白い発想で作られていて、親ネジを取り替えて目的のネジを切る。太い親ネジ leader(先導するもの)には一部を切り出した雌ネジ follower(追随するもの)が押し付けられ、ネジの進行が奥のロッドを介して刃物に伝わる。刃物はある程度の力でワークに押し付けられているので、雄ネジが切れる。ネジの深さは、少しずつ深くすることができるようになっている。細いネジ溝だから、深さだけの加減である。希望のネジピッチに合わせて、親ネジとフォロワは8種付属していた。早速組み立てて試運転した。
2021年04月08日
歯車を削る
歯車を薄く削る必要があった。10枚ほどの作業のために、ヤトイを作らねばならなかった。歯車は直径が14 mmで、厚さを 2 mmほど削る。中心にはボールベアリングのインナ・レースが当たるようにボスを突き出させる必要がある。これを掴むためには直径17 mmの丸棒をERコレットで掴み、外径を削って掴む部分を作ってから突っ切る。
コレットに掴む部分は、Φ12.7 にして1/2インチのコレットで掴む。内径14mmの凹みを作り、歯車を掴めるようにする。ERコレットの心は十分出ているし、歯車は薄くするだけで、完全に同心で削らねばならないということもない。だからごく適当で良かったのだが、印をつけてRの文字の位置に合わせている。

出来たヤトイに歯車がぴったりはまるのを確認して、コレットから外す。凹みを付けた方から糸鋸で十文字に切り込みを入れる。そうしてできたヤトイをERコレットに戻し、歯車を掴んで旋削開始である。歯車は、心を押して密着させる。竹ブラシ法を使うまでもなく、密着する。この竹ブラシ法は「蒸機を作ろう」にも記載されている方法で、旋盤工が使って来たうまい方法である。筆者は竹ブラシではなく、グリスを塗った丸棒を使うことが多い。
歯車の材料のリン青銅は、快削材である。いや、"快削のリン青銅"と言う方が良いらしい(快削でないものもあるそうだ)。シュルシュルと削れて、歯形がきれいだ。ワイヤブラシで軽くメクレを落とせば出来上がりである。楽しい作業であっという間に終わってしまった。へその部分は 0.1 mmも出れば十分なのだが、0.3 mmとした。
ヤトイを英語で pot chuck と言う。
ヤトイを作るための丸駒(適当な長さに切った丸棒)をいくつか用意してあるので、ヤトイ製作は即座にできる。
2021年03月27日
続 ER collet
大きなコレットで細いものを掴むと、掴み損なって振れが発生することがある。こういう時には 、根本にΦ8 のストレートシャンクがついたコレットホルダをさらに銜えて2段にすると、誤差が減る。要するに、細いものは細いコレットで掴むということだ。この写真はER25にER11を挿し込んだ様子を示す。ストレートの部分は長過ぎたので、40 mm程度に切り縮めた。切るのには回転砥石を用いた。ERコレットは、先も奥も同時にワークに接していないと振れてしまう。短いものを掴むときは、コレットの奥にも同じ径の”捨て駒”を入れる必要がある。
たまに、Φ19の車輪を掴みたいが、そのためには自宅の旋盤で、専用のコレットを用いて掴まねばならない。博物館でも作業したいので、昔に買ってあったER32のコレットホルダを付けるようにした。スピンドルのフランジを加工し、コレットホルダの裏側(主軸側)の印籠組み部分の径と合わせた。幸いにも振れは検出できないほど小さかったが(2/100 mm以下)、主軸側からは隙間が無いので、ボルトを差せない。反対側のワーク側からボルトを締めたかった。コレットホルダにバカ孔をあけ、フランジにM8ネジを切って、右側(ワーク側)からネジを締められるように改造した。
と簡単に書きたいところだが、コレットホルダは熱処理がしてあって、ドリルが滑るほど硬かった。既存のM6ネジ穴を拡げてΦ8にするだけだから簡単だと思ったが、とても無理だった。
友人の鉄工所に持って行って相談すると、超硬のドリルなら可能ということで、ドリルを発注した。自宅の道具では無理で、3箇所の孔の拡大はプロにお願いしたが、大変な苦労を掛けたようだ。それほど硬かった。
2021年03月25日
ER collet
ERコレットはいわゆる spring collet であり、多少の誤差があっても平均して収縮するので、1 mm程度のピッチで揃えていれば、いかなる径の物でも掴むことができることになる。この8度、30度のテーパによって平均的に縮みながらワークを把持する。パイプも潰さず掴めるところが有難い。
模型人が使う頻度の高い軸を掴むのなら、ER11(Φ7まで)、あるいはER25(Φ16まで)のセットを持っていると良いだろう。コレットはクランプナットに斜めに押し込まれると、内部の偏心した留め輪に引っ掛かり、抜けて来ない。これは卓抜したアイデアである。
コレットの嵌め替え時に、探すのは時間の無駄であるし、無くす可能性もある。コレットは一覧できるようにすべきである。

筆者はER25用のセットを回転するホルダに入れてある。大きなER32は、堅木で傾けて作ったホルダに入れ、取り出し易くしている。 2021年02月23日
続 テンダと台車を結合する
床板を載せるとこんな具合だ。床板の抜け留めは、上から締めるM2ネジで受け持つ。細いように見えるが、持ち上げた時に台車の重さを支えるだけのものだから十分だ。
そのネジを締めるのは、この 5 mm板の上からだ。大きなワッシャを介して締めるのだ。この板の裏側は 2.2 mm彫り込んである。丸棒の飛出し分は 2.0 mmだが、多少の隙間が無いと台車の動きが良くないからだ。ネジを締める部分はΦ4であるが、穴はΦ4.2である。これも多少の動揺を許容するためである。本来はバネを介して締めて、台車と床板下部の密着を良くするべきだが、上部がかなり重いので、その必要はなかった。かなり面倒な方法ではあったが、台車はテンダ床板との滑らかな回転を確保しつつ、堅固に結び付けることができた。普通のテンダではないので、強度、耐久性に留意した構成となった。
2021年02月21日
テンダと台車を結合する
キングピンは床板を貫通して上に出るようにする。写真に見える大きな穴(Φ10)にぴったり嵌まる丸棒を旋削し、台車上蓋に銀ハンダで留める。牽引力はその丸棒で受け持つ。ロウ付けではなく、銀ハンダで十分だ。フライスで追加工しても、はがれることはない。ブラスの色が見えている面は摺動面である。塗装せず、モリブデングリスを塗布する予定である。軸を太くしたのは、いつも大きな力が掛かるので、細いピンでは穴がガタガタになってしまうからである。
台車キングピンが、車軸よりかなり高い位置に来ている。何も工夫しないと、牽引力が掛かった時に軸重移動が起き易い。すべてウォーム軸でつながっているから、引張力の総和は変化しないのだが、軸重移動を少しでも減らすために前後に長い面で接触させている。軸重移動は脱線の原因の一つだ。
軸バネはよく効いている。重い車輛はバネが作動する様子が良くわかる。底衝きがあると衝撃でボールベアリングが傷む。これは当然のことなのだが、ボールベアリングが壊れるということを信じない人が居る。こんな重いものが、ある程度の速度で走っていれば、フログや、高さの微妙に異なるレイルの継ぎ目でゴンと当たれば、たちまち異音を発するようになる。
作動範囲で浮いていることが大事だ。
2021年01月16日
むすこたかなし氏の実験
すべての段階で、筆者の歩んだ筋道を全く同じように歩まれた。なかでも、旋盤を使って旋削していく様子は、緊迫感があった。
高梨氏はサイエンティストであるから、実験の手順が正しい。この報告は、今後いろいろな場面での模範となるべき例である。意味のない実験をしても気が付かない場合もあるから、参考にされたい。
基礎実験は手間がかかる。その多大な手間を惜しまず、丹念に一つの次元を少しずつ変化させ、データを取っている。先の伊藤剛氏の実験も、簡単なことなのだが、やらない人が大半だ。
データ取りの仕事は単調でつまらない。やらねばならないことではあるが、それをしない人は多い。この場面で二つの次元を変化させるようでは、何の価値もない。
筆者も30年前、かなりの時間を掛けてデータを取った。サンプルを作るのが大変であった。サンプルはたくさん作って、所定の寸法のものを選り出し、実験の再現性を高めた。
車輪を均一に作るのはなかなか難しい。総型バイトを使うのは駄目である。負荷が大きく、組んだ車輪など挽けるわけがない。
小型の旋盤ではうまくいかない。フィレットは、先を調整した剣先バイトで作る。拡大鏡と特殊なスケールが必要だった。高梨氏は先端Rの決定に、スローアウェイ・バイトの丸みを利用している。これはうまい工夫だ。
踏面の勾配を決めて、フィレットまで一気に旋削している。これは筆者と同じである。基本を守ったやり方で、負荷が小さく、削り面がきれいである。
総型バイトを過信する人は多いが、結果は見えている。失敗例はアメリカでもよく見た。挽き目が残るようでは、車輪として用をなさない。総型バイトを特注したと自慢する人は居たが、挽き目を見せてもらったことはない。
そういう筆者も1つだけ、細いヤスリから総型バイトを作った。削ってできたフランジの角を落とすためのものである。この部分は適当で良く、表裏両面を早く旋削できることに価値があった。
旋盤作業は熟練が要る。高い旋盤を欲しがる人が居るが、要は骨(コツ)であって、価格はあまり関係ない。うまい人の作業を横から見ていないと、進歩できない。最近は、youtube で素晴らしい例がたくさん見つかるので、見るべきである。それと、旋盤を買ったままで使う人が多いが、一度ばらして整備すべきである。それと、どんどん改造して、自分の”工具”として使えるようにした方が良い。筆者の機械は殆ど原型を留めていない。
車輪を挽くのは大変だ、と述べた。機関車の動輪8枚を挽くくらいは、やるかもしれないが、貨車の車輪を1000軸挽くのは不可能である。こういうところでケチるのは間違いで、量産屋に発注するべきだ。昨今は不景気で、引き受けてくれるところはあるはずだ。最近の機械の精度は驚くべきものがある。
今回の発注でできた車輪の径、厚みは1/100 mm以下の誤差範囲である。マイクロメータでも測定できない程度のばらつきしかない。精度の高い車輪を装着すると、それだけで走行抵抗が減少する。
2020年07月04日
続 Kemtronの台車
ボルスタ・アンカを快削ブラス材から削り出した。よく切れるバイトと高回転の出せる旋盤さえあれば、こんな楽しい作業はない。つるつるの丸棒である。ごく適当にゴムブッシュに相当する部分を表現して、それをハンダ付けするわけだ。大きなものに小さなものを付けるのは難しいことになっている。こういう時は炭素棒に限る。接合面にハンダめっきしておいて、位置決めして押さえ込む。つなぎ目に先を尖らせた炭素棒を当て、やや高めの電圧を短時間掛ける。先端がほんのり光るくらいでやめるのだ。ハンダがきらっと光って、滑らかな面が出現する。それでおしまいである。隙間なく、完全に付いている。この時のハンダはeutectic(共晶)であるべきだ。要するに液体と固体しかないのであるから、付いているか、付いていないか、のどちらかしかない。非常に簡単にできる。
ハンダの性質について無関心な人は多い。特別に上手な方以外は、皆苦労されているはずだ。この際、炭素棒ハンダ付けとeutectic solder を導入されてはどうだろう。完璧なハンダ付けが可能になると、世の中が違って見えるようになるはずだ。
ともかく、部品の間違っていた台車はすべて満足に組み上がり、車体への取り付けができる状態になった。
問題は、客車車体が一つ行くえ不明であることだ。かれこれ2年ほど行くえ不明である。困った。
〔10年前の自宅レイアウトでの貨車行くえ不明事件〕
それは思わぬことで解決した。自宅レイアウトの一番奥に点検用の 45 cm角の孔がある。その脇で発生した脱線事故で1輌だけが、どういうはずみか、転落したらしい。その下には毛布が畳んで置いてあって、そこに軟着陸したのだ。そこに2年ほど寝ていたようだ。破損無しで助かった。気が付いたのは、運転中にまたもや脱線事故があり、転落する場面を目撃したからだ。回収に行くと、枕を並べて寝ていた。偶然ではあるが、全くの無傷で助かった。
2020年01月06日
ワッシャを作る
メインロッドとコネクティング・ロッドの間に挟みたい。色はブラス色は避けたい。快削のステンレスは持っていないので、洋白の板から作った。色が良くないが、仕方ない。作り終わってから写真を撮ってないことに気が付いたので、別の部品を作るときに撮り直した。作り方を紹介する。

まずΦ10のブラス丸棒に洋白の t1.2を二枚ハンダ付けし、水洗いする。こういう時には炭素棒で付けるに限る。但し洋白板は熱伝導が良くないので熱が廻らず融かしてしまう惧れがある。ブラスの方を加熱する。コレットに銜え、角を落として所定の寸法にする。快削ではないが簡単である。


センタ・ドリルでセンタを出し、Φ3のドリルで穴あけをする。炭素棒で挟んで加熱し、挽物を外す。ドリル穴付近で塑性変形して、二枚が喰い込んでいるので、外れにくい。熱いうちに木槌で叩いて外す。
リーマを通し、ハンダを油目ヤスリで取るとできあがりだ。この間8分。慣れれば早い。この丸棒は、コレット全長の長さが必要である。短いものを先端だけで掴むと、正確に銜えていないことがありうるからだ。あるいは、短いものを掴むときは、コレットの反対側に別の同径の短いものを銜えても良い。
何に使うのか。この部品である。手前の人形その他は無視されたい。向こうのロッドのビッグエンドの留め環である。人形はこの後、姿勢と色とを調整した。2019年12月27日
四角棒を削る
旋盤のコレットに四角棒を銜えた。自宅の旋盤のコレット群はアメリカ製で、6分割になっているから、六角棒は具合よく銜えられる。博物館のは8分割であるから、四角棒を銜えられる。本当は多少傷が付くので避けるべきなのだろうが、表面を磨くので問題ない。快削材なので調子よく削れて、短いスプラインができた。伸縮は僅かに0.8 mm以下である。ガタガタのユニヴァーサル・ジョイントを使えばスプライン無しでも行ける範囲だったが、音がするのが許せないので、この方法を採った。
ごく狭い範囲の軸ずれを吸収するには、例の六角ジョイントが良い。これも部品を作る。六角棒を削って作るのだ。六角ジョイントの構造は、先が丸味を持っているヘキサレンチを考えれば良い。多少の傾きを吸収する。角速度は、厳密には一致しないはずだが、角度が小さいので、無視できる範囲にある。実際に使ってみて、振動、騒音は感じられない。かなりうまく出来たものであると思う。
2019年11月29日
快削材のパイプ
35年前にUPの4-8-4 2輌を作った時は、S45Cで作った。明らかに過剰品質である。リーマを通して、つるつるに仕上げて嵌めた。油がいつも注してあるので錆びることはない。
今回は砲金で作った。たまたま切れ端があったからで、快削ブラスでも良かった。ぴったりの寸法のブラスのパイプもあったが、旋盤には掛からないので諦めた。食い込むからリーマを通せないのだ。
今回、材料置き場を丹念に探すと、40年以上前にアメリカで買ったブラスパイプが出て来た。11/32、13/32、15/32インチの滑り込みの三兄弟である。試しに糸鋸で試し切りをするとサクサクと切れる。
煙突を作らねばならなかった。きちんと寸法の出ているものを4本作るのはなかなか難しいから、これは有難かった。快削丸棒から中グリして作るつもりだったから、大幅な材料と手間の節約である。外径13/32インチ(10.31 mm)が希望寸法に極めて近いのでこれを使った。チャックでは潰れるので、ERコレットで掴んで廻した。切粉がカンナ屑のようにシュルシュルと出て、見事であった。
この小型卓上旋盤はまだDRO化されていないので、ハンドルを廻し、ダイヤルの目盛を数えて廻した。久しぶりのことだ。4個は全く同じ長さに無事作成でき、台座にハンダ付けして完成に近づいた。さて何を作っているのだろうか。正解者は今のところお一人である。
2019年11月27日
遠藤機械製切断機の回転軸を削る
5/8インチ(15.87 mm)かと思っていたら 16 mm径であったという現物を預かった。筆者の自宅の旋盤は 3/4インチ(19.05 mm)まで通せる貫通穴があるので、簡単に銜えられる。今回は、心が出ていなくても全く問題にならないが、一応心出しをして削った。Set-Tru Chuck は便利である。ブラスの旋削作業をしているので、切り粉を掃除すべきなのだが、今回はごく微量の切り粉しか出ないから磁石で取り除ける。
やはりSS(軟鋼)は削りにくい。軟鋼は、快削でないブラスのようなもので、切り粉が刃物にまつわりつく。ワークが綺麗に見えない。削ってもざらついて面白くない。これがS45Cなら、硬いがかなり削りやすい材料なのだ。
快削鋼はとても素晴らしい削り味だが、こういう用途には向かない。ねじ切れる可能性がある。
他の購入者は無事交換できたと信じたい。折れたら交換する、という方も居るが、それでは意味がないのではないだろうか。折れたら大けがをする可能性が高いのだ。テイブルが付いていると、余計危ないことになる。
ところで、鋼材屋で聞いた話によれば、我が国ではインチ材が珍しくなった。あることにはあるが、直ぐには揃わないらしい。SS(軟鋼)はよいが、S45Cの材の切り売りは勘弁してくれ、とのこと。買うなら定尺物(4 m)を買ってくれということだ。1万円ほどの価格だ。440 mmにしても、8本しか取れないだろう。刃の厚みもあるからだ。希望者が8台分あれば発注する。
2019年09月15日
ウォームを外す
手伝いに来て下さるクラブ員に聞かれた。「このモータが安くて強力なので使いたいが、ウォームが外れない。どうしたら外れるものだろうか。」
最近話題になっているモータであるが、ウォームが固着していて、そう簡単には取れないらしい。今野氏の話を思い出した。ウォームを掴んで旋盤で廻せばよいのだ。
早速、術式を真似してコレットでつかんだ。9 mmのコレットがぴったりだ。深く掴んで、高速で廻し、突っ切りの先を変形させたバイトで削った。コレットは心が出ているので、モータは微動もしない。
軸の手前まで削って、虫眼鏡で見ながら軸に触る寸前までバイトを進めると、ぽろりと取れる。後は万力にウォームを銜えて、糸鋸で平行に二回切る。軸に傷を付けないように気を付けて、軸の近くを平行に切るのだ。ペンチで挟んで捻れば取れる。簡単である。
時間にして5分足らずである。見ている間に出来たので、依頼者はとても喜んだ。読者の皆さんもお試しになると良い。
2018年03月11日
続 旋盤のカスタマイズを終了
後ろの切粉ガードは高さが足らないので、合板を継ぎ足した。その時横に延長して、回転するコレットホルダを付けたのだ。コレット群は、手の届くところにあれば探す手間が減る。結局、この旋盤はER25コレット専用機となった。貫通穴が要らない時は鋼製引きボルトで引いている。手前に置いてあるのはコレットの締め外しに使う工具である。28.5 mm(1-1/8インチ)のスパナがなかったので、このモンキィ・レンチが常備品になった。長いので楽である。切粉ガードの中ほどに棚を付けて、QCTPなどの部品を置く。アルミのアングルで手前に落ちないようにしている。左右は解放で、飛び込んだ切粉を掃除しやすいようにした。
10mmの厚肉パイプを 4つ、旋盤で挽いて切断し、ブラス板にハンダ付けした。各種の工具を挿すようにしたのだ。剥がれては困るので、銀ハンダで付けた。融点が高いが、ガスバーナで焙ればすぐである。
すべてのハンドルを取り替えた。オリジナルはガタガタの細い回転ツマミであったが、正確に廻そうと思うとある程度の大きさが必要で、丸味があったほうが良い。M4のネジを M5に広げ、新しい回転するものと取り替えた。ハンドルの丸味は大切である。
銀ハンダについて質問を戴いている。これは銀を 4 %含む無鉛ハンダであって、融点は約 240 ℃ でやや高いが、硬い。また、引き剥がしにくい。アメリカ製であるが、同等品は日本でも売っている。筆者は無鉛ハンダは好きではない。流れにくいからだ。強度を要求される場所に使う。日本ではオーディオ用として暴利で売っているようだが、効果はあろうはずはない。鉛ハンダで十分である。
通販で買うのが楽だ。銀ハンダは高価であるが、本当はそんなに高いはずがない。銀 1 g は数十円なのだ。模型屋で売っているロストワックス部品の方がはるかに高価だ。
2018年03月09日
旋盤のカスタマイズを終了
旋盤をコレット専用機としている。先日の写真はこれである。長い材料を順次送って細かいものを作るときに、貫通穴があると便利である。 筆者は貫通穴が必須だと思っているが、友人たちはあまり興味がなさそうだ。長い材料を使わないのだろうか。あまり長いと材料が撓んで面倒なことが起こるので、材料承(うけ)も作らねばならない。
本来はスティールで作るべきである。薄肉鋼管が手に入っていたなら、全体をスティールで作っただろう。ロウ付けして剛性の高いものになるはずだった。
しかし、せいぜい Φ6 程度の材料を掴んだコレットホルダの抜止めなので、手で締めるだけで十分である。したがってブラス製でも壊れないだろう。
材料は、金属回収業者で手に入れた丸棒の切れ端である。最初にネジを切って、貫通穴を開けた。このように太くてピッチの粗いネジは、ダイスで切り込むと失敗して斜めに切れてしまうことがある。最初の2山は旋盤でネジ切りをして、ダイスを嵌めて最低速で廻す。卓上旋盤では無理な芸当である。もちろん脂を付けて、時々逆転して行う。ネジ切りは楽しい 。
握りは、フライス盤上で割出し機で廻して削った。単純な形である。径を大きくすると締めすぎて壊すので、小さくした。薄肉のブラスパイプを切って嵌め込んだ。フラックスを塗り、バーナで焙って銀ハンダで付けた。まずまずの使い心地である。
この割出し盤は横にして心押台を使えば4軸フライスになるが、やらない。背が高いので、剛性が足らなくなるのである。もう少し大きな機械でないと、難しい。2018年01月28日
続 砥粒
早速メイルを戴いたので紹介したい。
砥粒の話、そのように教えられたり聞いてはいても、気にしないモデラーが多いでしょうね。実際に擦り減って支障を起こすほど使わない(使用時間が長くない)からでしょう。問題が発生しない、もしくは擦り減るという経験をしていないので、理解できないのだと思いますね。
模型車輌の軸受の構造も、よくこれで持つよなあと思うものが大半です。海外メーカーの米国型HO蒸機がギクシャクして肩を振るようになったので分解してみたら、単に長方形に切り欠いただけの軸受に真鍮の車軸が嵌まっていて、擦り減っていたということを経験しています。ちゃんと注油し、綿埃などは取り除いていたにもかかわらずです。油が砂埃?を巻き込んだのが却っていけなかったのかもしれません。
こういう場合はグリーセムのような固体潤滑の方が良いかもしれませんね。ギヤの露出も問題です。埃だらけの居間の壁際に敷いた線路で、ずっと走らせていればそういうことにもなるのだろうと思います。長時間連続して走らせることなどは、想定外なのでしょうね。博物館や商店の展示レイアウトの車輌の消耗やメンテナンスはどうなっているんでしょうね。
おっしゃる通りで、アマチュアの旋盤で、磨り減るほど使ったものにはお目にかからないから、良いのかもしれないが、正しいことを知っているべきである。固体潤滑はこの用途には適さないだろう。
筆者も現役のころは旋盤、フライス盤に向かうのは週に1時間ほどであった。最近は毎日2時間くらいであろうか。これくらい使えば減るかもしれない。ベルトは擦り切れて2回取り替えた。刃物の消耗はかなりあるが、最近はダイヤモンド砥石があるので、研ぎ直しは簡単だ。
建設中の博物館の車輌は、すべて密閉式ギヤボックスを持ち、軸受はボールベアリングである。それらは十分持つだろうと思う。問題はロッドである。ひと月に一度溶剤スプレィで洗い落とし、再注油する。洗うと黒いものがたくさん落ちる。これはロッドの金属粉なのだろう。
数年に一回、ロッドの孔のスリーブを入れ替える必要があるかもしれない。これは比較的簡単な作業である。
模型においては消耗ということを考えることは少ないが、博物館が開業するとそれは深刻な問題になりうる。そういう点ではLow-D車輪は減りにくいから良い。
JRなどが開いている博物館のHOレイアウトでの車輌の消耗は相当なものである。どんどん下廻りを取り替えているらしい。
しばらく前、3条ウォーム、コアレスモータ、Low-D車輪の組み合わせをHOでやりたいという人が現れ、図面を提供した。博物館のメンテナンス・コストを小さくするという触れ込みで、応札したらしいが、見事に負けたらしい。勝ったのは既存の模型店で、イニシアル・コストが低いからであったそうな。当然メンテナンスには多大な金がかかり、模型店は左うちわだそうだ。資源の浪費は著しい。困ったものだ。
2017年12月07日
続 modifying tailstock
大切な点は、スピンドルの精度である。ベアリングのガタがなく、心押台のセンタとぴたりと合えば、まず問題ない。その他の部品は気が済むまで改良していけばよい。改良用の部品は無数にある。昔はそれが何処に売っているのか見当もつかなかった。工具屋に行って聞いてもよくわからない。
町工場の社長が一番よく知っている。友人の父君には色々なことを教えてもらった。様々な部品も貰って、それを加工して使った。アッと驚くテクニックもあって、勉強になった。
最近「ミニ旋盤を使いこなす本」久島諦造著 を再度熟読した。ほとんどのことは頭に入っていたつもりだったが、チャックに入らない太いドリルでワークに孔をあける方法には再度驚いた。ゆうえん氏が「パズルゲームのようなもので」とおっしゃったが、本当にその通りである。
模型工作の蘊蓄を語る人は多いが、旋盤を持っている人は少ない。旋盤を持てば、人生観が変わるはずだ。少ない金額で、これほど楽しめるものはない。模型屋に行く回数は激減するだろう。
写真は自宅の旋盤で、転車台のシャフトを挽いている様子だ。自分で改造した移動振れ止めで支えながら、Φ40の砲金の棒を中グリしている。刃物も自作である。刃先の位置が、振れ止めの位置と一致するところがミソである。写真では拭き取った後でよく分からないが、ワークの外側にはグリースを塗って作業する。昔鉄砲鍛冶に手ほどきを受けたので、中グリは得意である。 シャフトは最大限に太くして、剛性を大きくしないと、回転橋の動きが珍妙になる。
2017年12月05日
modifying tailstock
テイルストック(心押台)は、既製品のままでは具合が悪い。繰り出し量が少ないから、何とかしようと思っていた。畏友U氏が同じことを考え、改造されたことを知った。左ネジを切った長い押し棒を作られたのだ。筆者も自分で作ることにし、材料のS45Cの丸棒を調達した。長いから、削るときに中間を移動振れ止めで押さえねばならない。その準備もして、左ネジを切る算段をしていたのだが、久し振りのことでネジ切りの歯車セットをどこにやったのか、思い出せない。もたもたしているうちに、U氏が作って送って下さったので、ありがたく頂戴し、嵌め替えた。ネジが長くなったので、MT-1のテーパ・シャンクが長過ぎる。U氏に教えてもらった通りにテーパ部を22mmとした。何で切ろうか迷ったが、結局のところ、Brass_solder氏のアイデアで糸鋸で切った。1本12分かかって、糸鋸刃は1本折れる。計算通りだ。
この旋盤のテイルストックには他にも問題があった。繰り出しのリミッタを兼ねるネジが、こちらから向こうに、水平に押している。これではセンタの心が出ない。
やはりU氏も同じことを考えられ、スリ割りを入れてネジで締める形にされている。早速、1 mm のスリ割りを入れた。鋳鉄だからと甘く見たのはとんでもない間違いで、切削油を大量に使っても、切るのは苦労した。後で油の処理が大変であった。
肉が薄いのでやや心配したが、M5のネジを立てて、セレーションのついたネジで締めた。この方法では全体を絞るので、センタが出る。当然、締める座はフライスで削って平らにした。
廻り止めを兼ねた繰り出しリミッタは、20 mmずらして先端に近いところにM4タップを立てた。短いネジを締めたら、それだけで一発で解決した。
刃物台も、セレーションの付いたクランプネジで締めた。道具を使わなくても操作できるので楽である。よく使うところはこれに限る。目立つ色にしたのは正解だ。刃物台が鈍く光っている。軽く面取りを施し、ゴム砥石で研いだのだ。来たばかりの時はフライス目が出てザラザラであった。ザラザラだと錆びやすいのだ。
2017年10月14日
home-made Set-Tru
筆者はこのSet-Truが欲しかったが、何年も買えない時期が続いた。仕方がないから作ってみようと、寸法を当たってみた。細いネジは、M4くらいの鋼製ネジを使えるだろう。やや太い貫通孔はかなり大変だが、あけられると思った。その場所もないわけではない。
問題は左のフランジの突出部が小さく、移動ネジが当たる場所がほとんど無いことであった。ネジ移動を諦めれば、コンコン叩いて移動できるから、それで我慢することもできる。
大真面目でその作業工程を考えていたことがあるが、結局改良工作はせずに、Set-Tru に移行した。たまたまe-Bay で新古品が安く出ていて、競争無しで2万円ほどで手に入ったのだ。しかもアメリカ製であった。運が良かったとしか言いようがない。
現在新品は、安い店でも10万円ほど出さないと買えないようだ。しかもポーランド製だ。品質は悪くないと思うが、高過ぎる。
コレット、万力(vise)、正直板等は良いものが欲しい。昔のアメリカ製の新古品をいつも探している。


ところで、ブラスの材料置き場の敷き板として、こんな物を使っていたのを見つけた。30年ぶりに発掘されたのだ。さてこれは何であろうか。鉄道とは関係がないが、アメリカで少年期を送った方ならだれでも知っているだろう。ボーイスカウトに子供たちが誘われたときに、これを渡されて、親も手伝って参加せよと言われたのだ。 汚れはご容赦願いたい。
いくつかお答を戴いているが、正答の発表は、しばらくお待ち願う。
2017年10月12日
truing 3-jaw chuck
条件としては、スピンドルがフランジを持つことである。要するに三爪チャックがそのフランジを覆うように嵌まり、ネジを主軸台側から締めるタイプであることだ。まず三爪チャックで各サイズの丸棒をつかみ、廻して振れを測定する。たとえば 0.5 mm振れていれば、チャックをある方向に 0.5 mm動かせばよい。
三爪チャックがバックプレートを介して付けられているときは、手間はかかるが、細工は簡単だ。バックプレートのネジ穴を大きくする。
振れを無くする方向にヤスリで削ってしまえばよい。沈め穴があるときはフライスで削る。なければドレメルでも削れるだろう。一回で成功することは難しいので、二、三回やってみて、具合を見る。バックプレートに段があるときは、下記の方法をおすすめする。小型旋盤にはこのバックプレートは無い場合が多い。
バックプレート無しの場合は、スピンドル・フランジの外周を 0.5 mm削る。もちろん面取りを施す。チャックが、ごそごそと 1mm ほど動くだろう。その遊びの中で振れを吸収する。フランジの、ネジが通る穴をヤスリで少し大きくする。チャックをネジで軽く仮締めし、丸棒をくわえて廻す。振れが少なくなる方向に、チャックをプラスティック・ハンマで叩いてずらす。何度も測定して、誤差をゼロに持って行く。そこでネジを本締めしてできあがりだ。慣れると、この工程は2分でできるようになり、四爪に勝るとも劣らない精度を出せる。コレットを持たない人には具合が良い方法だと思う。
この工程を心押し台方向からできるようにしたのが、Set-Tru chuckである。最小の5インチを手に入れたので、出来の悪い四爪は廃棄した。使うたびに腹の立つ思いをしていたので、ストレスが無くなった。現在、この微調整の利く新品を買おうと思うと、とんでもない価格である。程度の良い中古を探すべきだ。そうするとアメリカ製が買えるかもしれない。
心を出すことを英語で truing という。
2017年10月06日
ミニ旋盤
この旋盤も無期限貸与ということになった。この写真は置いてみて、位置関係を調べたときのもので、ゴミだらけである。高級機ではないが、整備すれば十分使えるので、有難く受け取った。付属部品にコレットがあったので、コレット専用機として使うことにした。小物をある程度の量、細工するには便利なはずだ。
三爪は使わないことにする。この国で作られたチャックは材質が軟らかく、締めたときにカツンと締まらないのが嫌だ。
心が出ていないが、それは価格相応で、文句を言ってはいけない。この価格で心の出ている三爪チャックがあるわけがない。チャックだけに数万円ほど出して、日本製を手に入れれば話は別だ。通販サイトで、この機種に対する不満コメントにそれがたくさん見つかるが、常識がない人たちである。ヤトイを作るか、コレットか生爪を使うべきだ。あるいは、スピンドルのフランジをやや小さくして、チャック全体が少し動くようにし、ずらして締めるという高級テクニックもある。
筆者が最初に買った旋盤は、ネジ込みのチャックだったので、その方法が採れなかった。1 mm弱偏心していた三爪は、爪を内側から回転砥石で擦って調整し、ある程度心を出した。
旋盤というものは、使う人が工夫して使うべきもので、買ったらすぐ所定の性能が得られると思うのは間違いだ。しかし、精度を出す準備作業について書いてある手引書は、まず見ない。
筆者はこのような小型機は使ったことが無いので、練習が必要だ。いずれDROを付ける。この機種は、感心なことに、ベルトドライヴになっている。
中国製の機械はどれも手触りが良くない。何を触ってもざらざらしていて、角が手に痛い。油目のヤスリで、すべての角を一舐めしてから、ゴム砥石で磨く。レイル磨き用のもので十分だ。
丁寧に擦ると、つるつるしてくる。手になじむ感じがしてきたら、よく掃除する。砥石の粉があるといけないので、掃除機で丹念に掃除し、溶剤スプレイで洗い落とす。
摺動部に注油して動かしてみた。ベアリングのガタを調べるために、快削材をコレットに銜えて表面を一舐めしてみる。十分な性能である。
後ろのガードの背が足らないような気がする。Swarf (キリコ)がどのように飛ぶのか研究してから、追加を付けることになるだろう。
2016年08月27日
gas engine
これがそのガス・エンジンである。gas motorとも言う。「〇×モータース」という言葉はここから来ている。アメリカではいまだによく聞く。diesel motorという言葉もある。
さて、エンジンはこの配置であったのだ。排気ガスは観客のほうに出て行ったらしく、途中で切れている。軸受は二つで、クランクケースはない。コンロッドやピストンの潤滑はどうしたのだろう。シリンダの中頃にパイプがある。そこから潤滑油を滴下したのであろう。油は飛び散り、ブロゥ・バイ・ガスはすさまじいものだったろう。点火プラグが見えないから、焼玉エンジンのようなものであったのかもしれない。窓を開けないと、とても運転できないだろう。当時は電気モータは非常に高価だったようだ。また直流送電の区域では大電流が取れず、使えなかったらしい。
翼の組み立てはここで行われたのだ。堅い木を接続して作られ、ワイヤで引張って羽を捩じる工夫がある。細かい細工は自転車の技法を駆使してあり、自転車屋ならではである。
この一角にはボーリング中のガス・エンジンがある。4気筒だ。既存のものでは役に立たなかったので自作し、出力を上げている。この大きさでもせいぜい12馬力であるが、他の熱機関に比べると、対質量比で大きく勝っている。風洞では、揚力を羽の断面を変えながら測定していた様子が分かる。彼らは職人であると同時に科学者であった。考えながら作るというところが、他の挑戦者と大きく異なるところであったことを実感した。理屈だけではだめなのだ。
2016年08月25日
Curator
Edisonの研究所とか、Wright Brothersの自転車店もそのまま本物を移築して、内部も再現してある。エジソンの研究所には電池の開発のための、ありとあらゆる試作品があった。試薬瓶もかなりたくさん当時のものを置いてある。錫箔に録音した当時の機械を実際に作動させて、音声の再現を見せてくれる。ただしアルミ箔であった。

ライト兄弟は自転車屋を開いていて、その利益で飛行機の開発をした。当時の自転車はとても高く、現在の3000ドルほどもしたそうだ。だからこそ、開発資金が賄えたのだ。裏には自転車を加工する工場があり、その一角で飛行の原理を研究した。風洞なども当時の本物がある。研究ノートも再現してある。

1989年に行ったとき、筆者はその工場の動力がないのに気が付いた。天井にはベルト駆動で旋盤、ボール盤を動かすシャフトがあるのに、どこにも動力がない。たまたまやって来たキュレイタに、
「この工場の動力は何を使っていたのですか。ないのはおかしい。」と聞いてみた。
彼女は博士号を持つキュレイタで、
「確かにおかしいですね。蒸気機関はこの工場にはあまりにも大きすぎて維持が大変ですし、水車というのも考えられない場所です。小型のgas engineかもしれない。」と言う。ちなみにガスエンジンというのはガソリンエンジンのことである。
「とても素晴らしい質問です。早速調査して、今度お越しになるときには、納得のいく形にしておきます。」ということであった。
今回はその確認もあって、楽しみにしていた。
2012年11月24日
Leo を訪ねて
Leoは80歳だ。毎日地下の工作室で仕事をしている。それを邪魔したわけだから申し訳なかったが、訪問をとても喜んでくれた。この工作室で一番驚いたのは、工作機械の数だ。ボール盤は7台、旋盤5台、フライス盤は縦横合わせて4台ある。 あとはシァとかプレス機である。




どうしてこんなにたくさんの機械があるのかと聞いてみると、
「私はアマチュアではなかった。プロフェッショナルであったからだ。」という答えが返ってきた。詳しい話を聞くと、彼は超高級オーディオ装置の少量生産をしていたのだそうだ。アルミのシャーシに穴を開けるときには、一つずつやっていては大変なのでドリル毎にセッティングをして、次から次へと仕事をしていたのだそうだ。旋盤も同様で、刃物のセッティングを動かしたくなかったので、旋盤を増やした。フライスも同じことで、横フライスも必要になってしまったと言う。その理屈はよく分かる。しかし、この工作室の面積はせいぜい12畳ほどである。
すでにその種の仕事をすることは無くなったので、半分くらいしか使っていない。どの機械もよく整備された状態で、いつでも使えるようになっている。ロータリィテーブルやジグなどもたくさんある。筆者のように12個以上の生産をしないと決めている人の工作室は単純であるが、量産をする人の仕事場は複雑怪奇で面白い。
2012年06月14日
続 Stuを訪ねて


この旋盤は三相交流で動いていたが、ゴルフカート用の大型直流モータが安く手に入ったので、直流サーボモータ駆動にしてしまった。回転速度は自由に変えられる。トルクは信じられないほど大きい。彼はインヴァータ制御より、信頼できると言う。刃物台に触った感触は素晴らしく、バックラッシュは感じられない。こういう旋盤が欲しい。電磁クラッチ2個で減速率の変化をさせるようにしてある。巧妙な仕掛けである。
左手の木製の丸ハンドルは、コレット・クローザ(コレットを締めるもの)である。

自分の旋盤をどのように整備すればこの状態に保てるか、しばし考え込んでしまった。 旋盤は大小3種類ある。どれも使いこまれ、ピカピカである。大は小を兼ねないので、小さい旋盤も欲しい。しかし、市販の小型旋盤にこの旋盤ほどの性能があるかは、大いに疑問である。
コレットは5Cの規格をフルセットで持っている。筆者は3Cであるから、少しこちらの方が大きい。リーマもかなりたくさんの寸法を持っていて、必要に応じて使えるようになっている。2012年06月12日
Stu を訪ねて
Stu Kleinschmidtは名だたる精密工作屋である。名字からして「小さな鍛冶屋」であることに興味を持った。彼の名前はもう30年以上も前から知っていた。時々会うが、なかなか気難しい男で話ができなかった。StuはStewartの短縮型である。シカゴの会合で祖父江氏の業績を伝えるプレゼンテイションをすることになって、それが告知された途端に問い合わせがあった。「参加したい。期待している。」ということであった。
その席上、「Mr.Sofueは偉大だ。尊敬している。」という発言があり、その後筆者のテーブルに現れて、1時間ほど色々な話をした。
「一度お宅に伺いたいが、」と申し出ると、「ぜひとも来てくれ、明日の午後はどうか。」ということになった。
道を説明してくれたが、「GPSがある。」というと「すぐ来られるよ。」ということであった。
実のところは大変手間取った。もらった名刺の住所にミスプリントがあったのだ。近くで何度か聞いて、1時間遅れで到着した。
先方は首を長くして待っていた。玄関先に来ていた荷物の住所は、筆者の受け取った間違った住所であったので、聞くと、「運送会社は間違いを知っているから問題なく配達される。」と言った。筆者の到着が遅れたので、「訂正してない名刺を渡したことに気がついた。」と言う。クラインシュミット氏は親が電気機械の製作修理をしていたらしい。幼少の頃から家業を手伝った。「アメリカ製の電気器具は全て直せる。」と自負している。真空管式の各種のラジオ、アンプ、無線機が大量に置いてある。全て完動品である。未使用の真空管もどっさりあった。
工作機械は全てアメリカ製とドイツ製である。その数も凄い。ちょっとした町工場である。かなり大きな旋盤が、地下室にある。どうやって入れたのかと聞くと、全てばらして小さくして運び込んだ。「最大200ポンド(100 kg弱)にすれば、滑らせて入れられるさ。」とのことである。出すことは考えていないようだ。
2012年04月19日
続々 友人 Harmon
ハーマンは大量の図面を持っている。全て本物の図面だ。それを元に作っているので正確そのものの模型である。洋白材の丸棒、角材、板が大量にあった。旋盤はもう一つあり、それは7 × 10である。7とは回転させられる最大径のインチであり、175mm程度である。
10は10インチの長さのものまで回転させることができるという意味である。最近買ったというのだが、調子が悪いので使いたくないと言う。
調べてみると刃物台のgib(いわゆるカミソリ)の調整が良くない。また、それを留めるネジの穴の周りが膨らんでいる。間抜けなことにこの中国製の旋盤は、刃物台を仕上げてからネジを切っている。タップが通れば塑性変形も起こるので、ネジ穴が膨らみ、よそに当たっている。
全てばらして、研ぎ直し、カミソリも800番のサンドペーパの上でバリを取り、良く油を付けて拭き取った。これを組立てたところ、非常に調子が良くなり彼は大喜びだ。ちょっとしたことなのだが、それが出来ていない旋盤など使えないのは当然である。
「中国製だから駄目なのかと思っていたが、そうではなかった。」
という言葉が出てきたのは意外であった。
「この整備法を友達に教えてあげるといいよ。」と言うと、
「もちろんだ」ということになった。

これは動輪の組立ジグである。へその部分が凹むので、挟んで締めれば出来上がりである。アマチュアの自作品である。ブラスが使ってあるので、あまり頻度高く使うと、変形するであろう。プロ用は別の場所で見たが、全て鋼製である。プレスはラックを使ったタイプでアメリカには良くあるが、日本ではほとんど見ない。
最後にこのエプロンをご覧戴きたい。裾にベルクロ(いわゆるマジックテープ)が付いていて、机の下のテープと噛みあう。仕事を始める前にエプロンを仕事台と結びつければ、部品が無くならないと言う。
後記 鹿ケ谷氏のサイトに写真入りの説明があるので、それをご覧戴くと分かりやすいと思う。