2026年06月26日
続 プロのハンダ付け
この客車は日本で安価に入手した。エッチングで表現されたコルゲートを持つ。0.7 mm のブラス板に 0.2 mm と深いエッチングである。半分壊れていたので、素材として入手したのだ。一体誰が作ったのだろう。極めて怪しい設計で、窓配置、ドアなど全て修正が必要だ。コルゲートのピッチもかなり怪しい。ハンダ付けは極めて稚拙であった。元は CB&Q の車輌だと思われるが、自由形と言うべきだろう。これを大改造してAmtrakに作り替えるつもりだ。
先回に引き続き、プロの腕の話をしよう。ステンレス・コルゲートの屋根にある2本のリブを見て驚いた。コルゲートはエッチングで彫って作ってあるが、そこに2本の膨らみがまっすぐに隙間なく付いているのである。すなわち屋根に1x1の角線を直線状に正しく貼るにはどうしたら良いだろうか、というのが今回の話題だ。写真の右は上記の怪しい客車の屋根にハンダ付けが完了している。完全な直線で付いているのがお分かりだろう。左の屋根に今から付けるわけだ。
そのプロの手法を図示してみた。屋根板に Φ 0.8 の孔を30 mmごとにあける。角線はその上に貼られるから孔は見えなくなる。マスキングテープで角線を仮固定する。所定の位置にあることを確認して裏に塩酸を含む塩化亜鉛水溶液を多めに付ける。水滴が盛り上がる位にするのだ。63%ハンダの小片を置き、150 Wのコテを垂直に強く押し付ける。平たいコテの先が、上からは見えない角線の上を完全に押えるようにする。コテからの熱は薄い屋根板(t0.7)を貫通し下の角線に到達する。ハンダは石鹸水のように沁み込み、屋根板と密着する。この時、耐熱性のある堅い板の上であれば、コテを押す圧力がそのまま角線に伝わり、隙間の無いハンダ付けが可能である。こうして小さな孔の前後 10 mm程度にハンダが瞬時に廻る。順時このようにすると、角線の全長の半分以上が屋根板にハンダ付けされる。孔は小さくてもハンダが急速に吸い込まれるのが分かる。たとえ腕が良くなかったとしてもスズ63%ハンダを使うと、とてもうまく行くのだ。塩化水素が少し放散されるので、屋外で行うべきである。
この時、ブラス線ではなく洋白の角線を使うのが筆者の工夫である。熱膨張定数が小さく、伸びる量が相対的に無視できるから、貼った線がくねくねにならない。ハンダは急速に隙間に沁み込み、ほとんど見えない。塩酸が含まれていない塩化亜鉛液では、これほどうまくは出来ない。角線はねじれていると失敗する。事前によく調べてねじれを取っておくことが肝要である。
テープはなるべくハンダが来ない位置に貼ると、熱で変質しにくい。直接熱が加わる位置では糊が融けてへばり付いてしまう。
小さな孔を介してのハンダ付けをしている訳だが、極めてうまく行く。お試しあれ。
コメント一覧
1. Posted by 愛読者 2026年06月26日 10:46
驚きました。すばらしいテクニックです。このような腕を持つ職人はどの程度の数いらっしゃったのでしょう。当時のKTMは大したものだったのですね。
洋白の角線はうまい工夫です。もう手に入りにくいですけどね。
洋白の角線はうまい工夫です。もう手に入りにくいですけどね。
2. Posted by dda40x 2026年06月26日 12:58
40年前までのKTMには高橋氏を始めとして、滝川氏などの熟練の職人が居ました。その後、腕が引き継がれているのでしょうか。つぼみ堂にいらしたNさんもそのころの一時期所属していたようですね。
洋白の線は伸びにくいので、たるませない工夫としては最も簡単な方法です。最近は入手困難ですか。
洋白の線は伸びにくいので、たるませない工夫としては最も簡単な方法です。最近は入手困難ですか。
3. Posted by YUNO 2026年06月27日 05:31
最近は耐熱のマスキングテープも容易に入手できるようになりました。
https://www.amazon.co.jp/s?k=214-3MNE
190℃で1時間加熱しても綺麗にはがせると書いてありますので、短時間ならもう少し高温でも耐えられそうです。ハンダ付けの仮止めや焼付塗装のマスキングなどにも使えると思います。
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4. Posted by dda40x 2026年06月27日 09:47
役に立つ情報ありがとうございます。入手してみます。今回のハンダ付けは心を出して保持するのがキモなので、こういう保持材があると確実です。