2026年02月26日

ブラス工作の伝承

 拙ブログに連載のハンダ付け記事に関して、あるHOゲージャーから投稿戴いた。非常に良いところを衝いていると感じた。掲載の許可を得たので紹介したい。

 あくまでもHOゲージについての私見ですが、モデラーの世代交代の時期は10-20年前に過ぎてしまった感があります。ちょうど昨年が昭和100年、戦後からHOが広まったと仮定するなら80年経ちました。昭和18年生まれの父親を見ていると、私が生まれ育った昭和40〜50年代がモデラー的にも市場的にもHO絶頂期だった気がします。ブリキやブラス製品が当たり前、今オークション・サイトに出品されているバラキットもこの時代の商品が多く見られます。 私が小中学校の頃はミリゲージ、今のNゲージが爆発的に流行し始めました。大人はHO、子供はNという棲み分けが発生したように感じられました。我が家はHOしかありませんでしたが、学校の鉄研に入部するとほとんどの部員は小遣いで入手できるNゲージでした。一度手にしたサイズを変えるのは困難ですね。私もHOのまま、ゲージ派はHOに手を出すことも無く、誰もがそのまま進級・進学・就職したことと思います。

 その頃、HOでもプラスチック製のスケールモデルが発売されて話題となりました。その細密感は今までのツンツルテンでオモチャ然とした金属製品を一気に陳腐化してしまい、今までは天賞堂と一部のカスタムビルダーのみであった細密至上主義が、瞬く間に広まってしまった瞬間です。
 それからもう40年近く経とうとしています。結局からHOに手を伸ばす人は稀で、私の父親のようなHOを盛り上げた世代は内装も無いオモチャ然とした金属製車輌をこれまたインサイドギヤ丸出しの重たい機関車でゴリゴリ走らせています。一方、若者から中年層は新発売のプラ製の編成物を自慢げにシャーシャー走らせています。その中で知識と興味がある人は3Dプリンターを駆使して車輌や部品を作り、そして中古市場は鬼籍入りされた方々の遺品整理で賑わっているという現状です。

 
ビギナーが入門用にと年代物のブリキやダイキャストの貨車を買うことはまず無いでしょう。同様にブラス車輌メーカーが発売している入門用のブラス製キットから始める学生がいるのでしょうか? 結局、Nモデラーはのままです。HOモデラーもプラ製品で育った世代は金属製車輌に興味が無く、ブラス製キットを組むノウハウが継承されないまま、10-20年前あたりからあまたの先達が旅立たれてしまったように思えてなりません。プラ製品しか持ってない人が、キハの一輌でも、客車や貨車の一輌でもブラスキットを組立・塗装して走らせていたならば、金属工作の技術もしっかり継承されて望ましい形で世代交代がされていたように思いますが、実際には興味の外のようです。

 しかし、TMSをはじめとする鉄道模型雑誌が、ブラス工作の基礎中の基礎である「ハンダ付け」の原理や正しい手順すら掲載せず、さらにはメーカーのハンダ付け講座の動画も間違いだらけですから困ったものです。



コメント一覧

1. Posted by 一式陸攻   2026年02月26日 08:15
当方の友人知人は蒸気機関車を嗜まれる方が多いため、存在するプラ製品が少ないという問題からブラス工作をされている方が多いです。
プラ製品には親しみのある世代ですが、皆口を揃えてブラスの方が工作が容易と仰っているのは興味深いところです。
模型の加工は多くの場合入手した完成品に手を入れるところから始めると思いますが、プラ製品の価格に対して同等のものだとかなり昔のディティールがプアなものしかなく、ディティールがプラ製品と同等以上のものはが価格がそれの10倍以上だったりするのでとても買う気になれないでしょう。
しかもほとんどの場合動力機構はプラ製品の方が優れているためますます手を出す価値は無いと判断されて仕方ないと思います。
またプラ工作とブラス工作の差異も非常に多いためどちらかのみしか出来ないという方が多いと思います。
自分はこちらのブログの影響でブラス工作を始めましたが最初非常に懸念していた点は糸鋸による切断と半田付けでした。
自分が始めた頃は名著「蒸機を作ろう」といった正確で体系的な書籍などがなく、断片的な情報や古い情報を元に始める他ありませんでした。
デザインナイフで簡単に切断できて常温の接着剤で組み立てられるというプラの特性に慣れていると多くの方はこれらの加工に不安を覚えるかと思います。

続く
2. Posted by 一式陸攻   2026年02月26日 08:16
続き

また本文中にもあるとおり今や3Dプリントの暴風が吹き荒れているといった状態で、誰でもこれができる状態になったために今までブラスの牙城であった古典機などの分野も崩されてきています。
ただ、これらの模型が果たして20年後生き残っているかというと疑問を抱かざるを得ず、その点でブラスという人間の尺度ではほぼ不変と呼べる素材の価値が逆に浮き彫りになる可能性もあるのではと考えています。
当方はその後ブラス工作の面白さに目覚め、旋盤やフライス盤も導入し今春から旋盤関係の仕事に就くほどになりました。
これからはその道の従事者としてブラスという素材、その加工の良い点の敷衍するお手伝いができればと考えています。

終わり
3. Posted by 化石人   2026年02月27日 06:38
私の所属するクラブでは、Nのプラ製品から、HOに入った人が大勢います。と言うよりも、その人たちが30〜50歳で会の主力メンバーとなっていますが、
金属工作に手を出さないのが共通点です。
また、「もうしんどい」と金属用の工具一式を手放しプラ工作に転換する人もいて
古い会員の人とは、ハンダ付けは、伝統工芸の領域になったね、と苦笑しています。
平成になったころから新品だけでなく鑑定団ブームで中古や委託の価格が高騰し、キットを含む金属製品に手を出せなくなったことや、半田付けが拙かったためか折角入手した中古品で車体の割れや部品の脱落が発生し、落胆した経験なども若者が金属工作から離れた要因と思います。
正しい知識があれば幾らでも再生出来る素晴らしい素材と思うのですが、残念です。
4. Posted by Tavata   2026年02月27日 14:08
一式陸攻氏同様、私もNゲージ世代です。小学生の時、16番が欲しかったものの価格的に到底手が出ず、親から「Nなら買ってあげる」と言われて始めました。その後、高校の時にワールド工芸の古典蒸機で真鍮キットを組み始め、大学の時にOn30を始め、それ以降HOナローなどにも手を出して複数ゲージ・スケールで楽しんでいます。
Nだけの頃は「N以外を買うべからず」という自分自身の縛りが強かったですが、縛りから解放されると一気に選択肢が広がりました。

真鍮は素人でも製品並ないしはそれ以上の強度や精度で作れるのが特徴に思います。プラやダイキャストでは大規模設備がなければフレームやモールドを作れませんが、真鍮なら自作できます。接着面積がほとんど不要なのも半田の強みです。つまり真鍮は下周りやパイピング工作で真価を発揮すると思います。裏返せば、強度や精度の不要な上周り(あくまでHO以下の小型模型の場合)は真鍮の必然性がないと思います。

真鍮工作者が減ったのは(工作自体をしない人の増加とは分けて考えると)、電車指向と推測します。先述のように下周りの精度や強度、複雑なパイピングを求めるのは機関車、特に蒸機でしょう。一式陸攻氏の言うように蒸機工作をする人はどのスケールでも必然的に真鍮工作に手を出しているように思います。一方で電車なら台車などは市販品利用なので下周りは工作対象ではなく、パイピングも限定的なので半田付は必須ではありません。
そうなると上周りは真鍮ではなく切断の容易なプラやペーパーを選ぶのではないでしょうか?(編成の窓を真鍮板から切り出すのは大変ですし、編成の真鍮キットは途方もなく高価です。)

纏めますと、趣味界がN主体ゆえ真鍮工作をしないのではなく、スケールに関係なく電車指向の人が真鍮工作をしないと推測します。(真鍮で素晴らしい電車編成を作る方はいますが、かなりレアケースに思います)

コメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価:  顔   星
 
 
 
Recent Comments
Archives
categories