2025年04月11日

続々 塗装剥がし

アセトン 結局、3回目を有機溶剤で実施した。再度 シンナ + アセトン の混合液を作り、硬い刷毛でこすった。比率は体積比で 3:4 とした。


 アセトンを入れる理由を質問された。アセトンはいわゆる極性溶媒で、分子に電気的な偏り(δ+δ−)がある。水分子が電気的な偏りを持つことは誰でも知っていることで、かなりの種類の物質を溶かす力がある。しかし水を弾く物質に対してはそれを溶かすことは無理である。例えば油を塗った物質では水は弾かれてしまい、その物質を溶かすことは出来ない。

塗装剥がしに用いられる溶媒 ガソリン(オクタンなど)やナフサなどの炭化水素は油を溶かす(希釈力)。その時ガソリン等に混じる極性のある溶媒が入っていたとしたら、様々な固まったものを溶かす力(溶解力)があるはずである。それがラッカ・シンナである。
 ラッカ・シンナには各種のエステル(酢酸エチル等)が入っている。エステルは極性があり、なおかつこれらはガソリンなどの炭化水素によく溶ける。
 ガソリンのように揮発性が大きいものだと引火して火事になりやすいので、適当な沸点範囲の炭化水素と混ぜるのが普通だ。ベース材としてはトルエン、o-キシレンなどが選ばれる。これらは分子の形が完全に対称ではなく、多少の極性がある。

 そこに極性が非常に大きなアセトンを足すと、固まった塗料の表面の電気的に偏った極性のある部分にくっつく。そしてそれをトルエンが取り囲んで引き離すというわけだ。シンナの中の極性分子を増やしてやるとエポキシなどの高分子も溶けやすくなるのだ。ただ、アセトンは蒸発しやすく、100%のアセトンでは使いにくい。
 

stripped かなり強くこすったので、刷毛は擦り切れてしまったが、塗料は 99% 以上取れた。あとは磨き砂で丁寧に擦れば、ブラスの光沢が戻るであろう。この作業は外で行った。かなりの風があったので、近所にはあまり迷惑を掛けていないはずだ。 

dda40x at 04:11コメント(2)化学 | 塗装 この記事をクリップ!

コメント一覧

1. Posted by 愛読者   2025年04月12日 19:42
この種の話はどこにも載っていないので、ありがたく読みました。
いわゆる塗料シンナーはナフサ(粗製ガソリン)なのだそうですね。ラッカーを溶くことは出来ません。細かい粒子が出来ます。そこにラッカーシンナ―を足すと溶けていきます。
なるほどと感じました。
それを乾かすとシンナ―が少ないときは変な具合になりますから、やらない方が良いですよ。
2. Posted by dda40x   2025年04月13日 21:32
 いわゆるシンナには二つの働きがあるということに気付いていない方が多いと感じます。
 希釈と溶解は異なる概念なのですが、区別する人は少ないのです。そういう意味では、いわゆるラッカ・シンナは良く出来た製品です。よくこんな組成を思い付いたものだと感心します。
 塗料シンナは灯油とガソリンの中間の分子量を持つものです。UPのStreamliner M10000の燃料でもありました。

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