2025年03月02日

折込んだタップの処理

rusted out 1 うっかりタップを折ってしまった。ガラしか使わなくなったので、ここ数年タップを折らずに来た。トルクしかかからないから、M1.4でも折ることはない。今回は M2 を切っていたので折れるはずはなかった。ところが作業中に電話が掛かり、片手で保持したままポケットの電話を探っていたところ、ぽきりとやってしまったのだ。作業中は電話を遮断すべきだった。
 タッピング用の潤滑剤を塗っているので、極めて簡単にネジが切れる。この潤滑剤を使わない人が居るというのは理解できない。クラブの会合で、小容器に入れたものを50円で販売するが、飛ぶように売れる。実はその容器が50円なので、実質的にタダで頒布しているわけだ。
 折れた断片が入ったまま放置してあったが、今回思い立ってステンレス・食塩水による除去作業をした。

rusted out 2 まず溶剤を使って潤滑剤を取り、強力な洗剤で良く洗う。完全に油気を取らねばこの方法は機能しない。ステンレス板(磁石に付かないもの)の小片を紐で縛り付ける。今回は長いものを入れるので、牛乳パックを使う。海水程度の食塩水を必要量入れて1週間ほど放置するだけだ。水が蒸発するので時々足す。適当な形状のステンレス容器があれば良いのだが、今回の主台枠を入れるためには大きなものが必要になり、水溶液もたくさん要る。
 作業後、ステンレス容器に錆が付いたのを洗うのはかなり面倒であるが、このような牛乳パックならそのまま捨ててしまっても良い。

rusted out 3 ステンレス片が密着していることが肝要である。要するに、銅合金にステンレスの何かが付着していれば、食い込んだ鋼の工具は溶けていく。すなわちステンレスのネジをねじ込んでおいても、同じ結果が得られるわけだ。


 油は完全に取れていたようで、1週間でタップは見事にサビの粉になっていた。歯ブラシでよく擦って砲金の面を清掃した。


コメント一覧

1. Posted by ゆうえん・こうじ   2025年03月02日 09:41
ステンレス・食塩水法による折れ込みドリル・タップ除去は愛用させていただいております。
ところでこの技法を使うとき、ステンレスでもSUS304とSUS430で効果に差があるのでしょうか教えてください。
またステンレス板の表面積は反応の進む速度に関係がありますか?

余談となりますが、この方法で、ステンレスと対象物が接触していないといけないということが頭から脱落している方も多いようです。うまくいかないという方の話を聞くとたいていそこが抜け落ちています。ステンレスなしで塩水に漬けただけで溶けると思っていた方もおられました。

2. Posted by dda40x   2025年03月02日 10:27
 厳密に言いますとSUS304の方が電位が高いので効果は大きくなります。しかしその差は小さいのです。
 流れている電流はマイクロアンペアの桁でしょうから、電流密度(面積当たりの電流)は考慮する必要はないはずです。現にM2のネジを1本ねじ込んだだけのものでも、十分に機能しました。
 これは局部電池を構成するわけですから、ステンレス板(正極)と工具(負極)とが回路を形成していないと意味がありません。この回路が無いと、銅合金と工具だけの回路ですから電圧が低く、かなり長い時間が掛かります。
 化学の話ですから、設定どおりに実行しなければうまく行かないのは当然なのですが、そこのところを考えない人は確かに居ます。また、思いつきで勝手なことをして失敗する人も居ます。理科教育の失敗例でしょうか。
3. Posted by 最近読み始めた者です   2025年03月02日 11:26
このブログが面白いと聞き、読み始めた者です。
今回の記事は素晴らしく、リンクをたどって昔の記事も読みました。2006年10月07日の記事から読み始めて2006年分を読み終えました。素晴らしい記事が並んでいます。最近の模型誌には絶対載っていない記事ばかりです。
このような記事を模型誌に載せるべきなのですが、難しいのでしょうか。
4. Posted by dda40x   2025年03月02日 18:12
 ご愛読感謝します。
 鉄道模型は工学、理学を必要とする趣味です。そういう知識を必要とする人は必ず居ますので、このような記事が必要だろうと、このブログを始めました。
 私は科学者の端くれでありまして、どんなことも理屈が説明できなければ採用しません。またあるアイデアがあれば、それを改良して良い結果を誰でも出せるようにしたいと考えています。しかし、理屈を考えない人はたくさんいます。測定器を買うと、スウィッチを入れただけで「測定した」と発表する人が居ます。物理的な次元を考えずに「出力」とか「効率」という言葉を発して、自分自身がそれに酔う人もよく見かけます。
 本来は雑誌の記事にそういうことを定期的に書いて注意を喚起すべきなのでしょうが、現在のどの出版社もそういうことには興味がありません。殆どの記事が素人の思い込みだけで書かれています。それに対する査読もないのです。必要であれば査読を無償でして差し上げるとは申し出たのですが、その気はなさそうです。その点ではしばらく前の記事のMRは大したものです。
 
5. Posted by RT   2025年03月03日 21:51
この方法で何度か助けていただきました。いつもは大きなステンレス容器を使うのですが、今回は新しい工夫がありますね。牛乳パックなら、塩水の量がうんと少なくて済みますし、あとで洗う手間もありません。ステンレスの小片を縛り付けるとか、ステンレスネジを締めるというアイデアには驚きました。
電子の流れる回路を作れば良いわけですね。大変勉強になりました。
6. Posted by ヒロtk   2025年03月07日 10:22
 塩水による工具の除去、「蒸機を作ろう」に発表なされた記事を読んで以来、利用させて頂き、まことにもって重宝いたしております。唯一厄介なのが、ステンレス容器の底に残る錆で、薄い容器の場合はやすりで削るのも心配で、もらいさび状態になり、私の場合は5、6回を超えたくらいから容器の底から水漏れするようになりました。もっとも、使用しているのは100円ショップで購入した板厚の薄い容器です。最近の百均は昔のような宝の山ではなくなりましたが、これは一応磁石につかないステンで、ダメになったら買い替えればよいだけの話ですが。
7. Posted by dda40x   2025年03月07日 10:38
 私のアイデアをお使い下さりありがとうございます。
 発表以来、何人かの方から同じようなご意見を戴きましたので、「ステンレス片を縛り付ければよいのですよ」とお答えしてきました。そうすると使い捨ての豆腐の容器でもうまく行きます。
 今回は長いものでしたので、牛乳パックを用いました。ステンレスネジをねじ込めば、ステンレス片を探す必要もなくなります。お試しください。

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