先日の
TMS 997号の記事について長文の意見を戴いた。転載の許可を得たので発表する。
表紙を飾るレイアウト写真は、平野和幸氏製作の第1次千曲鉄道からインスパイアされたものと分かりますが、ご指摘の通り俯瞰による画像ばかりでは、山岳線の雄大さを感じる事ができません。次の雪原のモジュールレイアウトもしかりで、空間的な広がり感はありません。 次の雪原のモジュールレイアウトも、空間的な広がり感は皆無です。
私は海外の鉄道雑誌を眺めることが好きで、欧米のレイアウト紹介記事を目にする機会も多いのですが、そこではレイアウトの平面図上に撮影ポイントと方向を示した「寄せ」の画像が基本で、俯瞰画像はあっても冒頭の全体紹介文の所にある位です。今までは、漠然と眺めていただけですが、今回ご指摘のTMSとの違いは何なのかを改めて考えてみました。
要因の一つは、記事の画像は全て製作者が撮影、投稿したもので、編集者の取材や意図が盛り込まれたものではないからだと考えられます。プロの編集者が介在すれば、少し良くなる可能性はあります。ただ、それだけで本当に改善されるのか?という疑問もあります。
と申しますのは、日本のレイアウト紹介記事のスタイルが「レイアウト製作入門書」の域を脱していないと思うからです。TMSのこの記事は、海外の初心者向けレイアウト製作ガイドブックと同様の構成だと感じます。同じガイドブックでも、中級以上、または、目的別(森林鉄道など)に特化したものでは、俯瞰ではなく見せる画像の割合が多くなっています。
ここから言える事は、レイアウトの製作過程を説明する事が主眼となっており、出来栄えをどう見せるか、どう楽しむかというところまで到達できていないからだと考えられます。過去の日本では「レイアウトを持つこと」がステイタスで、どうやって場所を確保したかとか、こうやって作った、の説明がもてはやされています。過去のTMSレイアウト記事もその趣旨で綴られており、他の雑誌も概ねこれに追随する形となっていました。
いつまでも旧態然とした考え方に囚われるのではなく、新しい視点で(海外では既に常識ですが)レイアウトと向き合う事が必要だと思います。その意味では、これもdda40xさんのブログに連載された「レイアウトの分類学」は、何を目的に製作し、出来上がった後をどう楽しむかが具体的に提言されており、今後のレイアウト製作、発表の指標になると思います。