2025年01月19日

Lobaugh の姿勢

2 kinds of brassCNW J4 2種の機関車がある。手前は Lobaugh 製   C&NW の Berkshire であり、向こう側は KTM(祖父江)製の Texas である。
 地下室の整理をして発掘した機関車の修理・整備・塗装を始めたのだが、あまりにも表面が汚いとやる気が失せる。筆者の処方で酸洗いした。

 2種のブラスの色に注目されたい。写真ではその違いが分かりにくいが、肉眼では全く異なって見える。ロボゥのブラスは黄色いのである。どちらかと言うと黄緑色に見えるほどだ。
 対するKTM 製は赤い。洗い立てはピンクに近い。銅の含有率を調べると、日本製は80%だ。アメリカ製は75%ほどである。快削性が異なり、日本製には粘りがある。曲げやすく、曲げたものを伸ばしてもう一度曲げても割れない。アメリカ製はそういうことをすると割れてしまうが、糸鋸、ヤスリ掛けは容易だ。
 1960年当時、Max Gray は日本のブラスをred brass と呼んで持ち上げた。yellow brass より高級だとしたのである。 

 筆者はアメリカ製のブラス板を各種持ち帰って、祖父江氏に比べてもらった。両方使ってみて、「あたしゃぁ、やっぱ日本製だね。絞り出せねぇと困るんだよぉ。」と言った。

Lobaugh 2-thread worm この機関車のウォームギヤは逆駆動できる。ウォームは 3/16インチ(4.76 mm)のシャフトそのものに歯切りした2条ウォームである。進み角は 13度 である。グリースが固いので分解して洗い流した。溶剤に溶けない部分もあったので、削り落としてモリブデングリースを塗った。ボールベアリングはスラストを受けるように出来ていて、軟らかいグリースを入れたら、実に滑らかに動いた。
 単純な話だからすぐお分かりになる話だが、進み角を大きくするには、径を小さくせねばならない。実は40年ほど前、最初の3条ウォームを作った時にこの方法で 5 mm軸そのものに歯切りすることも考えた。そうするとボールベアリングの大きなものを採用せねばならなくなり、周速度が大きくなって軸受の中での損失が増えると考え、軸を細くしたのだ。このロボゥの時代はモータがオープン・フレイムの時代だから、その効率は低く、問題にならなかった。当然のことながら、”Free to Roll” とは謳っていなかった。マグネットモータが廻りにくくて、押しても殆ど動かなかったのだ。
 歯数は 2/35 で、互いに素になっていることは言うまでもない。良く出来ている。どこかのお間抜けな3条ウォームと比べるのも空しいが、機械工学の分かっている人の製品は大したものである。

Lobough C&NW J4 動輪軸の軸受は角棒に穴をあけた構造で、面圧が低く、ボールベアリングに劣らないほど滑らかに走る。油を注す孔がある。動輪の組立てはキィが差し込んであるから、分解は容易だ。

 ロボゥという会社は、精密機械工作(特殊ネジの製作)を稼業としていた。模型部門は社長の趣味を副業として発展したが、社長の死と共に消滅した。筆者はかなりの数の製品を持っているが、どれも正しい理論に基づいて作られ、当時としては世界最先端の模型を作っていたはずだ。動力部はモータを取り替えるだけで、素晴らしい動きをする。

 筆者の高効率ギヤ装置には最適の大きさのボールベアリングが使用されているので、半径比による損失が最小となっていて、それが高効率の実現に貢献している。また、歯車の材質を吟味し、仕上げ精度をさらに上げているので、ロボゥより良くなっている。ギヤを設計するというのは寸法を算数で決めることではなく、歯形をかなり面倒な計算で求めねばならない。歯車屋に行って「これと同じものを作れ」と言ってもできない。そういうことをした人は居るようだが、出来て来たものは動きが渋いのは仕方ない。

コメント一覧

1. Posted by northerns484   2025年01月20日 22:59
このロボウの機関車、何度か拝見いたしましたが、当時利用できた最高レベルの技術で作られたものだという印象を受けました。

今の時代の細密模型?の対極ににあるものだと思いますが、長く残ってゆく模型はいかにあるべきかを語ってくれているような気がします。
2. Posted by dda40x   2025年01月21日 10:30

 50年も昔、Lobaughの機関車を始めて見た時、日本製の繊細なつくりと比べてあっさりし過ぎていると思いました。
 後にそれに適度のディテール加工したものを見て、これは凄いと感じました。構成がきわめてしっかりしているので、手を加えることが出来、なおかつ壊れにくく長寿命です。ボイラはいわゆるスウェイジング加工によるもので、素晴らしい剛性を持ちます。工場でジグを使って穴あけ、溝切りをしてあり、部品は差し込んで炭素棒でハンダ付けという方法です。記事にも書きましたが、踏んでも壊れないだろうと思います。
 テンダも恐るべき丈夫さですが、台車軸受けにバネが入っていないのは残念です。しかし、これは加工によって可動にする人もいました。
 古き良き時代の模型です。私は見かけると買い集めて来ました。アメリカ人の欲しがる人に譲り渡したものもあります。
 あと完成しなければならないものにUPのChallengerがあります。これは3輌並べてやっています。いずれ発表出来るでしょう。

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