2025年02月04日

Overland (UP の 4-10-2) を作る 

UP8802 1940 この機関車 UP8800 は SP の機関車に比べ、煙室の手摺がやや武骨であるのと、テンダの形が異なる。この写真の TFF は、FTT の誤植である。
 HOの模型は KTM-WSM で出ているが、あまり正確でない。SP5000のテンダを替えただけであり、砂箱などはやや不思議な形である。また、8800と謳っているがこれは就役当初の8000型である。

 この機関車を知っている人は極めて少なく、作ってみたかった。図面は手に入れてあるから、ボイラは自作することにした。テンダは SP のものに長さは近いが、後半の断面形状が異なる。就役当初は石炭焚きであったが、すでに戦前に重油焚きに改造されていた。すなわちテンダはオイルタンクを積んでいる。

Sofue SP5000 (2)Sofue SP5000 (3) 機関車の下廻りは、ブースタが無いだけで、SP も UP も実質的に同じである。模型のドライヴ方式はトルクチューブである。この方式は祖父江氏の改造方式の定番になり、開発者としては嬉しい限りだ。

 祖父江氏はギヤボックスが横から見えるのは避けたかった。なるべく目立たないようにするには縦に細長くして、エアタンク部で隠すのが良い。アイドラ・ギヤを挟んで伸ばしている。当初はアイドラ・ギヤなしでトルクチューブが斜めに伸びているものが多かったが、横から見ると見えてしまう機種があった。ギヤを挟むと効率が低下するが、祖父江氏は互いに素でしかも正しい歯数のギヤを使ってそれを解決している。きわめて静かで逆駆動しても抵抗を殆ど感じない。
 潤滑はモリブデン・グリースである。祖父江氏はこのグリースを使うとあまりにも摩擦が減るので驚いた。ウォーム・ギヤには不可欠である。

Sofue SP5000 (1) 120度クランクで、第一軸はメインロッドから逃げて曲げてある。熱間鍛造で作り、それを鋼製ブロックに嵌め込んで、旋盤で削ってある。動輪を圧入してからブロックを外して磨いてあるのだ。畏るべき技量である。完全に心が出ている。

 当初は90度クランクで行こうということになっていた。両側を同時に見る人は居ないので、中央クランクを135度にすれば、模型の走行としてはまず見破られることはないと考えた。しかし、アメリカサイドからは「120度にしないと買わない」と言って来たので、方針を変更した。120度クランクで絶対に躓かないような加工精度を確保するのは難しいと祖父江氏は言っていたが、出来たものはみな素晴らしい走りを見せた。その点でもこの模型は特筆すべきものである。

 ボイラとキャブは 90% 出来ているが、テンダは ほとんどできていない。SPのテンダを切り縮めて、継ぎ足すのだ。ここまで来て放置されているので、早く決着を付けたい。毎日やれば100時間くらいで出来そうだ。その種の工作は得意だが、祖父江氏が見たらきっとこう言うだろう。
「そんなまどろっこしいこたぁやめて、捨てっちめぇ。一から作っちまった方がよっぽど早えぜ。」


コメント一覧

1. Posted by たかひろ   2025年02月04日 07:34
ギヤボックス下蓋の3本目のビスはグリース注入口でしょうか?
2. Posted by dda40x   2025年02月04日 09:29
 モリブデン・グリースを塗布してあるウォーム・ギヤには注油は不要なのですが、下の方の平歯車にはギヤオイルが必要、ということなのですが、実際には注油はほとんど必要ないのです。ギヤボックス蓋に溜まりますからそれが再度巻き込まれていきます。
 この油孔を無くそうとしたのですが、アメリカ側から要望があって残しました。彼らは注油ということに大きな意味を感じているように見受けられます。入れ過ぎないようにという注意書きは入れました。
 日本とは異なり、機械文明に対するものの考え方が異なります。メンテナンスをすることに意義を感じる人が多いのです。日本では自転車のチェインに油を注さずにキーコキーコと音を出している人を見かけますが、アメリカではまず見ません。ドアのヒンジには年一回油を注し、様々な機械(芝刈り機など)には作動前に注油します。模型にも注油するのが常識のようです。 
 この機関車のギヤボックスは密閉式なので油を入れると出て行くところがありません。蓋のネジを緩めてしばらく放置し、出るものが出てから少量入れるようにと書きました。数年に一回裏蓋を外して摩耗粉があれば洗うようにと指示しましたが、やっている人は居ないようです。 
3. Posted by たかひろ   2025年02月04日 09:47
ご回答ありがとうございます

> 「120度にしないと買わない」

90度だとGresley Gearの動きが変になるとかの理由ですかね
4. Posted by dda40x   2025年02月04日 10:38
 いや、私が手を加えた1輌目の SP5000 は90度、135度でした。前からヴァルヴ・モーションを見てもそれほど不自然さは感じませんでした。15度程度では動いているものの位相差に気が付くとは思えません。
 アメリカ側が言って来たのは、将来の商品価値を考えたのでしょう。自分は良いと思っても、次にそれを買う人が何を考えるかはわかりませんからね。嗜好品ですから、そういう観点は重要です。

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