2025年01月13日

UP7000

 以前完成させたのはこの機関車だ。細密度はこの程度に抑えたもので十分としている。

 あと、これと同型の KTM製2輌と、Lobaugh製1輌 がある。図面を調査すると、Southern Pacific のマウンテン MT は、UP の7000型の同型機であることが分かる。動輪は73インチ(1854 mm)で、パシフィックよりも小さい。これらは当時世界最大のマウンテンであって、最強力機でもあった。当時はSPとUPは同じ機種を採用していたことが多い。Max Gray がこの二社の機関車の模型を相次いで発売したのは当然である。

 祖父江氏が MT を作り、それを KTM の別の下請け工場でコピィしてUP7000を作った。そのコピィの方をジャンクで手に入れた。テンダが無かったのでスクラッチから作った。UPの9000 (4−12−2) のテンダと同形のものを設計した。材料が厚過ぎて重くなったが、ボールベアリングを付けてよく走るようにした。それを別の機関車に流用したので、この写真のテンダはSP5000用を仮に置いてある。

 1977年、ボールベアリングの装着を始めた頃だった。重いテンダの走りを改良するためにはボールベアリングを入れるしか方法がなかった。機関車の改良はその後である。
 祖父江氏に見せると、「こいつぁ参ったね。こんなによく走るたぁ思わなかったよねぇ。よぉし、機関車に付けてやらぁ。」と言って、機関車にボールベアリングを装着した。

 驚いたことに、その改装が終わった機関車には双方向クラッチが付いていた。工場の試運転線のSカーヴを端から端まで惰力で走った。当時は逆駆動できるギヤが無かったし、コアレスモータも手に入らなかった時代だったからだ。
「素晴らしいですね!」と褒めると、祖父江氏は自虐的に言った。
「おいおい、勘ちげぇしちゃあいけねぇよ。こいつぁオモチャだぜ。本線上でこんな走りじゃあ、事故を起こしちまわぁ。」

 その通りである。合葉氏も同じことを言われた。筆者は祖父江氏が作ってくれた双方向クラッチを装備したパシフィックを持っているが、本線上で走らせたことはない。試運転線でも完全に平坦であることを確認していないと、怖くて運転できない。摩擦の多い車輌を牽けばそれなりの走りを示すだろうが、単機では危ない。そういうことを知ってか知らずか、この機構をほめそやす人が居るが、危ない話である。ボールベアリングを装備した客車を牽かせるのは怖くてできない。

KTM UP7000 この工事中の機関車の主動輪のクランクピンは、細くしてボールベアリングを入れるようにしている。ベアリングなしでは穴が大きいので、自作のロッドが重さで垂れている。 


コメント一覧

1. Posted by 通りすがり   2025年01月20日 21:30
双方向性クラッチのことについて複数回書いておられますね。
面白そうですから私も作ろうと思っていましたけど、やめた方が良さそうです。
ただ、私の車両はどれもあまり摩擦が少ないとは言えないので、安心かもしれません。
2. Posted by dda40x   2025年01月20日 23:22
O scaleの場合は、全軸ボールベアリング支持の場合、重くて何も抵抗がないので、運搬用の箱の中でさえも暴れてカウキャッチャが曲がったりします。
 ボールベアリングで承けた客車などをつなぐと、挙動が予測できないほどです。
 動軸にボールベアリングが付いていない機関車であれば、機関車自身にある程度の摩擦がありますから、安全かもしれません。
 できれば避けて戴いて、高効率ギヤを装備されることをお薦めします。

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