2024年12月08日

似て非なるもの 出現

 最近、高効率ギヤを採用した方から様々な感想を戴いている。
「大きな負荷を掛けての起動が楽しいですね。」と、よくお聞きする。
ヒステリシスが小さいということが、こんなに素晴らしいとは思いませんでした。」とおっしゃる方があった。確かに、今までの歯車では電圧を上げて無理やり起動していたわけだから、その起動する瞬間のトルクが過大で、発車の瞬間にスリップしてしまった。そうすると摩擦係数が下がるので牽き出せないという理屈だ。これは実物で起こることと同じだ。実物ではそこで砂を撒いて摩擦係数を上げている。

 筆者のすべての機関車には、この駆動装置が装備されている。それを見て、そのギヤだけを欲しがる人が出て来るが、全く理屈を理解しようとしないが多い。怪しいモータにウォームを叩き込んで、ギヤボックス無しで使う人が居る。そういう方には売らないことにしている。
 先日寸法がそっくりのまがい物を見かけたので調べた所、名古屋でOJをヤフオクに出していた人だった。その人が中国あたりで作った物らしい。それを本家より高く売ろうとしていた。彼は中国貿易をしている人なので、著作権などには鈍感な人らしい。自分の作品のみに使うようにしてもらった。
 材質が異なり、歯形が怪しい。潤滑もされていず、開放状態であった。全くお話にならない。こういう人が居ると、本物の評判が下がる

 やんわりと抗議して売るのはやめてもらったが、今後どうなるかは分からない。物事を理解していない人ほど、扱いに困るものはない。そのまがい物と本物を並べてみれば、なるほどと気が付くだろうが、初めて見る人には分からない。それでこちらも巻き添えを喰って評価を落とされてはかなわないのだ。もし見かけたら連絡戴きたい。

オリジナルを凌ぐコピィ無し」ということが分からないのであろう。オリジナルの歯形は普通の歯形ではないのだが、専門家でないと分からないだろう。歯数も大切だ。

 先日来訪した高校の同級生とその御子息は「互いに素」と聞いて、一瞬ですべてを理解した。K国製で4:40があったという話をすると呆れ返った。彼は高校時代は模型工作に熱心だったが、その後やめてしまい全く模型に縁のない生活をしているが、頭の中では完全に理解している。

「でもさ、模型でそこまで考えてあるのは今までにあったのかい?」と聞く。
「メルクリンはそうだよ。他にもヨーロッパにはいくつかあった。日本ではまずないね。2条で相手が偶数のものがあったし、3条ウォームでも割り切れるものを出した店があったんだ。」と言うと、
「歯車の歴史を考えたこともないのだな。オランダの風車の歯車でさえも互いに素にしてある。そうしないと持たなかったんだよな。車のギヤ比も全てそうだ。そうしないと音がすごいんだろうね。」という。彼は工学は趣味程度だが、いくつかの事例を出して細かく解説した。こういう能力がある人は珍しいが、模型を設計する人は少しは考えるべきだ。

 高効率ギヤの現物を、実際に手に取って見るように勧めた。その仕上がり面の美しさには感動した。組立品を動かすと抵抗が感じられない。
「高そうだな。」
しかし価格を言うと、
「その性能がこの価格なら安いな。よく売れているんだろうね?」と聞く。
「そうでもないんだ。日本では無理かな。レイアウトの無い国だからね。」と言うと、
「そうかもしれない。」と妙に納得してしまった。 

コメント一覧

1. Posted by I田   2024年12月08日 14:33
三条ウォームの言葉だけが独り歩きすると、形だけを模倣した「まがい物」が出かねないな、と危惧していましたが、既に出ていたのですね。
dda40xさんが開発されたのは、単にウォームを三条にしただけではなく、伝達効率向上の為に、進み角・ウォーム・ウォームホイールそれぞれの歯形・材質、加えて、スラストを抑制する高精度のギヤケース・ベアリング、等を綿密に計算・設計の上、作製された「精密部品」の「ギヤシステム」だと理解していますので、私のブログでは「高効率ギヤ」と表記しています。また、換装方法なども含め、浅知恵で改悪を加えないよう気を付けています。
4. Posted by 老模型人   2024年12月11日 09:48
やはり出て来ましたか。日本人はやらないだろうと思っていましたが、そういう恥知らずもいるのですね。
この記事に触発されて関連記事を読み漁りました。むすこたかなし氏のブログが読みごたえがありました。非常に客観的です。
この種の記事がどうしてTMSに載らないのでしょう。
https://takatetsu0930.blog.fc2.com/blog-category-9.html
5. Posted by dda40x   2024年12月20日 20:18
 この種の記事は商業誌には載せにくい事情があるのでしょうね。減速装置を売っているのは全て模型店で、彼らは雑誌に広告を載せています。自分の店の製品の性能がひどいと書かれたら、黙ってはいないでしょう。
 それでは例えばTMSが音頭を取って、各社に自信作を持って来させてそれをコンペ的に比較する、という記事を書けるかというとそれは無理でしょうね。
 これはアマチュアが書く以外ないのです。

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