2024年08月06日

Weaver の PFE

 棚の奥から、もう1輌の冷蔵車を取り出した。Weaver社の音の出る機械式冷蔵車である。Prototype Blue Printsの通りに作ったとは書いてあるが、実感味が全く無く、見たくないので奥の方に置いてあったのだ。LVMの木製の模型との違いを見ていこう。

 2008年まで、Weaverという会社はアメリカ製で賄うという方針を堅持していた。車体のモールドは細かくは出来ていないが全体の印象をよく掴み、筆者が好きな模型であった。筆者は社長のBob Weaver氏に頼まれて、90年代には日本での代理店をしていたこともあるのだ。
 それがBobの逝去とともに変質していった。車種が急に増えたが中国での製造になり、実感味の乏しい模型ばかりになった。 別の車種2輌も入手したが、もうこの会社の製品を欲しいとは思わなくなった。木製キットか日本製の古いブラス製の方がずっと良いのだ。

wood or plastic (2)wood or plastic (1) 何が気に入らないのかと言われれば、凹凸の無さである。この2輌を比較すると、縦のリブの奥行きがあまりにも無い。またドアの部分は飛び出しているはずなのに平面である。プラグ・ドアの構造を知っていれば、こんな形にはなり得ない。ドアレイルの深さが無い。側面の写真と簡単な図面しか与えずに模型を作らせているのだ。本物を見ればリブの高さが自ずと判るのに、見ていないのだ。妻板のドレッドノートも薄っぺらだ。本物はごつごつしている。

 外見はつまらないが、中身は良いと言いたいところだが、中身も怪しい。DCまたはDCCで運転すると、集電して音が出る。
yellow lampgreen lampred lamp エンジンが起動し、黄色のLEDが点く。エンジンが定常運転をしている間は緑のLEDが点いている。しばらくするとエンジンは止まり、赤のLEDが点灯する。エンジン音はまずまずである。これを繰返すが、集電が悪いので、雑音が入り、時々奇妙な電子音(ピーポー音)が出っぱなしになる。

closed door 機械室ドアを閉めるとこんな具合だ。本当はこのドア・レイルは少し斜めに手前に飛び出している。開くときにリブに当たるのでそれを避けて手前に出るのだが、平面である。リブが低いので気が付かなかったようだ。
 全軸集電にしたので多少良くなったが駄目である。電源を浮かせておくべきだった。今ならスーパ・キャパシタを入れるべきだろう。

 車体の下側の台枠のモールドも下手くそだ。肉の厚くなるところは工夫してヒケが無くなるようにすべきだが、出鱈目な設計でめちゃくちゃだ。見えないところだが、とても気分が悪い。床下機器も例によって裏返しの上に前後逆だ。エンジンの排気管の位置も点対称の位置になっている。文字の印刷も気に入らない。ロゴが違うのだ。

 この冷蔵車の発売直後におかしな点を羅列して知らせたが、応答はなかった。もう二度と買うことはない。Bob は草葉の陰で泣いているだろう。  

コメント一覧

1. Posted by 読者   2024年08月07日 23:21
"prototype blue prints" と書いてあったのですか。
やはりそういう言い方をするのですね。よそのブログにprototype という言い方はおかしいと書いてあったのを覚えています。

さて、この模型はひどいですね。リブや扉枠がありません。これでは似ていません。さりとて修復する方法も思い付きません。  
2. Posted by Tavata   2024年08月08日 11:32
Prototype Blue Printsの通りに作ったということ自体、実感的な模型の本質から乖離していると感じます。
主要寸法を縮尺寸法通りに作ることまでは良いのですが、細部寸法まで縮尺通りに拘るのはナンセンスに思います。
例えば、隙間の幅や深さは、実物なら光が入らず暗い線として見えますが、模型では可視光の波長まで縮尺通りになるはずが無く(もしそうなったら色が変わってしまう)、隙間への光の入り方が変わるので、縮尺通りの寸法では隙間が暗くならず、のっぺりして見えてしまいます。
そもそも模型は、製造上の都合で隙間やリベット頭、塗装の厚さなどを縮尺通りにできるはずがありません。したがって、色々な妥協と感覚的な実感味を咀嚼して数値化する所に模型設計者の力量が問われると思います。(前オーナーさんはこの力量が素晴らしかったのでしょう。)
安易に「実物の図面通りです」という謳い文句を示すのは、暗に「模型のための設計ができていません」と露呈しているように思いました。
(もっとも、この例では実物図面すら正しく理解していない模様ですが)
3. Posted by dda40x   2024年08月09日 11:07
 コメントありがとうございます。
 全く同様なことを吉岡精一氏がおっしゃっていました。
「実物の完全縮小版を作るということは、物理的にできる範囲でやることはむしろ簡単なのだ。頭を使う必要が無いからね。祖父江氏は上手い。何が違うかは判っているだろう?」
「油絵ですか?」
「そうだ。うまいことを言うね。写真ではないのだ。太い筆でぐいぐいと描いている。模型としてのメリハリが凄いんだ。他の人とは根本的に違うんだよ。内野君は別の意味でうまいが、二つを並べたら、祖父江氏の方が抜きん出て良い。それと、祖父江氏は工場勤めをしていたから、工学的な素養がある。これは素晴らしいことだ。もともとアマチュアではないのだ。最初からプロとして仕事をしていたんだよね。」

 今回のBob Weaver氏はもともと印刷屋を経営し、アートワークに長けていた人でした。趣味で木製キットを作っていたのですが、そのデザインのセンスが素晴らしく、初期のプラスティック製品はその流れを汲んでいます。
 彼の引退後、娘婿が業務拡大を図って、製品の質はあらぬ方向に行きました。でも儲かったのでしょうね。

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