2024年08月02日

ショック・アブソーバの構造

 ショック・アブソ−バをどのように作ったのかという質問が多かった。初めはラジコン用のショック・アブソーバを使うつもりだった。分解してみるとその構造はかなりいい加減で、gland packing(軸が出入りする部分)のOリングの摩擦が大きい割に、内部でヒステリシスを作り出す弁が無いものであった。要するに出入り両方に同程度の減衰力を与えるもので、お話にならない。現在市販されているものも、高価な商品以外は同様である。
 仕方がないので内部のピストンに可動式の弁を付けようと思った。作り始めたが、全体を大きく作り直さねばならず、床下に出っ張って横から見えてしまうのだ。細いものを作ろうと思うと、構造を限界まで単純化せねばならない。

air damper そこでエア・ダンパにしてはどうかと考えた。辷り込みの角パイプを用意し、内部の空気を殆ど押し出せる位置にピストンを置き、air escape(空気の抜ける小穴)をあけた。リード・ヴァルヴを作り、研いでハンダ付けした。要するに「往きはよいよい、還りはこわい」にして、外部の大きなバネで縮みを復元するわけだ。還りの空気はリード・ヴァルヴからの漏れである。ヒステリシス曲線を描くと囲まれた部分の面積はきわめて大きくなる訳だ。押す瞬間にはプスッと音がし、戻るときはク−という。

 作図して5つほど作ったが、良いものを2個残して捨てた。多少の潤滑油が必要である。これが無いと空気が漏れる。
 リード、細孔付近ともに砥石で良く研いで、隙間を極力無くすことが肝要である。ヤスリでは粗いから空気が漏れ過ぎる。ハンダ付けは一番遠いところで確実に付ける。塩化亜鉛が洗い難いので、水の中に2日ほど漬けて完全に洗う必要がある。もちろん水は頻繁に取り替える。

 固定された車止めに激突させても、極めて落ち着いている。撥ね返ることもない。48年経っても間違いなく作動した。現物をご覧になった人は一様に驚き、褒めて下さった。

 現在、ブラス製の客車を14輌ほど量産中である。総質量は 25 kg以上だ。何かの間違いでぶつかると、先頭車はもちろん、後続の客車に大被害が出ることは必定である。列車前方にこのダンパの付いた車輌があれば、被害はかなり軽減されるはずだ。
 その車輌は荷物車である。幌が無いので車輌間隔が衝突時に縮んでも差し支えないことを利用する。普段は適切な連結間隔であることは言うまでもない。

 車止めにはこの方式お勧めする。 

コメント一覧

1. Posted by 通りすがり   2024年08月03日 10:23
コンパクトに作られたエアダンパ―が本物のショックアブソーバーと同等の性能を持つというところがすごいです。
中身が空気だと、それ自体でバネの役目も果たしますから一石二鳥ですね。
2. Posted by dda40x   2024年08月05日 10:04
 太いものと細いものを同時に試作しましたが、細い方が動作が自然でした。辷り込みの角パイプの精度の問題もあり一概には言えませんが、押し込み時の空気の逃げ道が限られていたからなのかもしれません。穴は複数開けたものも試しました。リード弁の隙間の仕上げは難しいものです。

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