2018年06月12日

O Scale West での講演 2

 3条ウォームの特質で一番大切なのは、高効率を求めると、同時に逆駆動ができるようになるということである。決して逆駆動だけが目的ではなかったと言いたかったのだ。音のことも強調した。
「スパー・ギヤ、べヴェル・ギヤ・ドライヴでは蒸気機関車がヒューと音を立てて走るから許せない。」と述べると、皆納得した。ウォームの静粛性には敵わない。

 一部の人達は「祖父江ドライヴは歯車比が小さいから、牽引力がない」と勘違いしているが、それはモータが小さいだけである。高価だが12 Wクラスのモータを入れれば、UPの4-8-4が重いプルマンを12輌牽いて1.6 %の勾配を駆け上がることができる。その様子を動画で見せると、皆愕然とした。全効率は60 %弱であると言った。低ギヤ比の方が効率が良いことと、祖父江ドライヴには 15 W の伝達能力があるということを強調した。

「そういうモータはいくらぐらいのものだろう?」と聞く。
「場合によるが定価は300〜500ドルくらいだろう。」と言うと驚いた。
「高級なスポーツカーでは、その製造原価のうち、エンジンは40%くらい、トランスミッションが20%くらいを占めるのだから、当然ではないか?」と言うと妙に納得した。

B&O EM-1 + 125cars + caboose 次いで、126輌編成がドッグボーンを周回して機関車とカブースが逆向きになって平行になった状態を見せた。その状態でカブースを後ろに引く。約 0.7 mほど引くと連結器の隙間(slack)が伸び切って、機関車が後ろに引張られて動く。今度はカブースを前方に押して行くと、スラックが閉じて機関車が前に押される。
 この場面は非常に感動的で、会場内は騒然となった。
 機関車が軽く動くから驚いたのではない。そんなことは承知の上だ。126輌の貨車の連結部のスラックが波のように伝播し、押し寄せてくるところが感動的なのだ。皆大拍手である。動画を再演した。
「ありえないシーンだ。」と叫んだ者もいた。
 これを実現するために貨車の台車を全て取り替え、Low-D車輪に取り換えたからである。それを説明すると、場内は静寂に包まれた。その手間とコストを考えたのだ。

drag そこでこの図を示した。
「誰しもボールベアリングを使うと摩擦が減ると信じている。ところがボールベアリングにはグリースが詰まっているから、負荷が小さいときはピヴォット軸に負けている。軸重が4 oz. (約 100 g)を超えると初めてボールベアリングの効果が表れる。」
と言うと、これまた大ショックだったようだ。
「ここにある貨車はすべて16 oz(455 g)以下だから、ボールベアリングは全く使っていない。」

 そこでLow-Dを付けた貨車を短い 2 mほどの線路上で転がした。極めて静かに慣性を見せつけて走った。これにはみなとても驚いた。
「実物の貨車は、摩擦式軸受の場合 5 ‰以下の坂で動き始めることになっている。しかしこれは3 ‰ でも動く」
と言うと、さらに驚いた。
 ただし、実物は慣性が48倍あるから、その動きとは違うは説明した。これは少々難しかったかもしれない。   

コメント一覧

1. Posted by たづ   2018年06月13日 23:35
従来どおりの1条式にしても、なぜ鉄道模型の大半(というか殆ど全て)がウォームギヤ式なのか、ようやく理解できました。
蒸気機関車でギヤ音はやはり不自然です。
2. Posted by dda40x   2018年06月14日 09:52
根本的には蒸気機関車の伝導方式は直角伝導なので、ウォームが使われ始めました。最初はメルクリン、ライオネルなどに見られるようなスパーギヤ伝導でした。ウォームギヤの採用によって、収まりがよくなり外観が向上しました。と同時に、音が静かになったのでしょう。
と言いましても、静かなモータが手に入ったのは80年代以降です。それまではモータの音がかなり喧しく、その効果について考えられることが無かったと思います。
祖父江氏はウォーム嫌いの原氏から注文があって、平歯車、傘歯車のメカニズムも作成しましたが、「音がする。」と言って、ウォームギヤに軍配を上げました。
原氏は平歯車の音が好きだったのです。これは本人から聞きました。「ウォームギヤほど効率が悪いものは無い」ともおっしゃっていましたが、計算をしたり、実験をされたことは無いです。

サウンド装置を付ける人は、ウォームギヤ、コアレスモータでないと我慢ができないでしょう。ようやく、それがスタンダードになりつつあります。

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