2018年06月10日

O Scale West での講演 1

 今回の公演の演題は勝手に決められていて、
”Museum of Sofue Drive" であった。
「ちょっと待ってくれよ。祖父江ドライヴの発明者は僕なんだ。」
と伝えると、Rod の答は、
「確かにそうなのは知っているが、”Tad Drive" と言っても理解する人は居ないだろう。一言付け加えるから我慢してくれ。」ということになった。
 結局のところ、”Museum of Sofue Drive, by the inventor Takashi Daito”ということになった。これは非常にうまい言い方だと、感心した。

 今回の講演は60分から75分で頼むと言われていた。自宅でやってみると90分掛かるので、いくつかを削った。長すぎるといやになる人もいるので、面白い話題を10分ごとに入れて、気分転換をするようにした。動画はなるべく感動的なものを、と考えて撮った。

 3条ウォームの話から入った。3条ウォームはライオネルが採用しているから珍しいものではないということを最初に言った。そうでないと論点がずれる可能性があった。3条を採ったのは、工作の容易さ、効率の高さを考えたからである。
 1980年当時パソコンは普及しておらず、三角関数表と計算尺と電卓のみで3か月ほど掛かってグラフを作って検討した話は受けた。ウォームの進み角を増やすと多少効率が上がるが、18度以上はホブで切る場合、 tooling cost(異なる形状の刃物が別に必要になり、金が掛かること)の点で採用できなかったが、17度と効率が1%も違わなかったことを話すと、どよめいた。最高のものを求めたかったが、そんなに金を掛けないでやりたかったことを理解してくれたのだ。

 Model Railroaderに発表したら、世界中から手紙が来た話で、
「そのすべての手紙で、『歯車だけを欲しい』と言って来たのは、おかしな話だ。」と言うと皆笑った。いちばん必要な物は、精度の高いギヤボックスとスラストベアリング、潤滑剤、コアレスモータなのだ。そのことを書いて送ったら、誰も返事が来なかったと言うと、また大笑いだ。皆よく分かってくれている。
 実は日本でその3条ウォームをギヤボックス無しで付けた人もいて、動かないと大騒ぎであった。物の理屈を考えられない人に売るべきではなかったのだが、なかなか難しいことである。

  祖父江氏はアメリカからの受注がなくなって困っていたが、3条ウォーム化の改造を引き受けて生活を支えるというビジネスモデルは、非常にうまくいった。そして祖父江ブランドが確立されて、アメリカに浸透したのだ。この場面ではみな立ち上がって拍手をしてくれた。
「人を助けるために努力するというのは、大切なことだ。よくやった。」
 自己犠牲というのは、キリスト教の精神で、最も大切なものとされているらしい。
「祖父江氏は天才であったので、彼を潰すと世界的な損失だと思ったからだ。」
と言うと、
「あなたがいなければ、我々は19世紀のドライヴで我慢しなければならなかった。それをアメリカに紹介してくれて、我々は感謝している。Sofue Engines が紹介されたのも、模型界に大きなインパクトを与えた。」
と言ってくれた。これには筆者も感動した。 

コメント一覧

1. Posted by 一式陸攻   2018年06月10日 06:20
三条ウォームの設計について大変な労力を掛けられたこと、また機会あるごとに親切に説明してくださることに敬服し、感謝致します。
お陰で私のような勉強が不得手な者でも、易しく正しい情報を手に入れることが出来ています。
2. Posted by 藤井   2018年06月10日 17:46

祖父江氏は、2度お電話で話す事しか出来ませんでしたが、
このブログを通して、これからも色々教わりたい事が沢山あると感じています。是非、お会いした時に教わりたいです。その節はよろしくお願します。

3. Posted by dda40x   2018年06月11日 07:08
「3条ウォームは逆駆動できる」としか理解していない人がある確率で存在しています。
高効率の歯車装置であれば、程度の差はあれ、どんなものでも逆駆動が可能なはずです。
当時は手計算でしたが、良い値を求めることができました。その後コンピュータで計算しましたが、結果は同じでした。

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