2006年11月16日
試作



左から順に、1条、2条、3条のウォーム
しばらくして祖父江氏の工房を訪ねたとき、「こんなものがある。」と言って小さなギヤボックスを見せてくれた。「モリコーといってね、昭和20年代の終わり頃、こんなギヤを出していたんだよ。」
それは、まさに頭の中で考えていたものであった。ただ、スラストベアリングがなく、ちゃちな板金のギヤボックス内に、小さなベアリングの玉がむき出しで入っていて、カラカラと音を立てて廻る玩具っぽいギヤであった。ウォームは2条で細く作られ、進み角は15度くらいであった。
これを厚板または鋳物で作ったギヤボックスに入れ、もっと進み角を大きくして、スラストベアリングを装備すれば完成する。
祖父江氏もまた同じことを考えていたのだ。「ディーゼル機関車用の13:2というギヤに、よく油をさせば動くんじゃないか?」という。そこで3条ウォームの話を持ち出した。
「ギヤ比は互いに素にして、細いウォームを作り、潤滑剤は二硫化モリブデン、スラスト・ベアリング装備にすれば完璧ですよ。」
祖父江氏は大満足であった。もやもやとした考えがはっきりとした形になったのだ。早速、歯車屋に注文した。「歯車屋は動くもんか。」と言った。「動いたらタダにしてやらあ。」とまで言った(実際タダになった)。
その2ヵ月後、祖父江氏から電話があり、ギヤボックスの試作品ができたという。「動くけど動きが思ったより渋い。どうしたらよいだろう。」と言う。
見ると、普通のグリースを使っていた。よく溶剤で洗ってから、持って行った軟らかい二硫化モリブデンを塗った。すばらしい動きであった。祖父江氏は感動していた。「何であんたこんな潤滑法を知ってんだ?」