2006年08月30日
フラックスとハンダ

小物を付けるときには松ヤニの入ったペーストを用いる。これは洗わなくても錆びにくいことは事実だが、何年も経つと錆びてくる。
筆者は趣味で水道工事も手がけるので、給湯用の銅配管を何度か経験している。切り口の面取りをして継手の中、銅管の外を磨き、ぺーストを塗って差し込む。ガスバーナの炎を当て、泡が吹き終わった頃、糸ハンダを当てるとつるりとハンダが沁み込んで行く。融けたハンダが境目にきらりと光り、一周しているのを確認できれば、そのままそっと冷やして出来上がりだ。濡れ雑巾で外をよく拭いてペーストの残渣を残さないようにする。内側は熱湯が通るので自然に洗われる。
昔は鉛を66%含んだハンダ(鉛管用ハンダ)を用いたが、今では無鉛ハンダが用いられる。右のハンダがそれである。錫98%アンチモン2%だ。240℃で融解・流動する。流れは良いとは言えない。かなり粘い。温度をかなり上げないと流動性が少ない。強度はかなりありそうだ。計測したわけではないが、ブラスの板にブラスの線を、このハンダで付けて引き剥がすと、0.8 mmの線は切れてしまった。普通なら剥がれるはずである。
模型の組立では、これを大物の接合に用いて、中程度のものを普通のハンダで留め、最後に小物をスズ63%のハンダで付けるというのが、コツである。彼らには、ハンダが接合面全部にいきわたるという前提があるからだ。大物にはバーナを使えということである。
もっともBillに習った頃は無鉛ハンダではなく、銀ハンダを使えとの指示であった。最近、日本でも銀ハンダは手に入るが、どういうわけか2%のものだけである。これは電子部品の表面にめっきしてある銀が、普通のハンダに拡散してもろくなるのを防ぐため、あらかじめ2%の銀を入れたものらしい。2%というのは、銀が自然に拡散する時の限界値だという。オーディオ機器に銀ハンダを使うと音が良くなるというウソが、まかり通っているらしい。全くのデタラメである。
本物の銀ハンダは3から5%の銀を含んでいる。硬く、接着力は強い。コテで付けるのはかなり難しい。よほどの高温にならないと真の流体にならないからである。バーナで250 ℃くらいにすると、さらさらになる。逆にコテでつけると、粘土のように盛ることができる。こねて山を高くすることさえできる。そんな付け方でも、接着力はバカに出来ないくらい強い。「ブラス鋳物の鬆(ス)を埋めるのはこれしかない」とアメリカのクラフツマン達は口をそろえて言う。
手持ち量が100 gを切ったので、そろそろ買わねばならない。