2024年08月

2024年08月30日

最近のTMS

 しばらく見ていなかったが、友人が最近のTMS 2冊を見せてくれた。
「率直な意見を聞きたい」と言う。
「僕はいつも率直にものを言うから、これ以上率直には言えないよ。」と言うと大笑いだ。

「この花火見物はお話にならないね。こんなの鉄道模型じゃないよ。その次の号の大きな橋も鉄道模型の中に入れたくないな。汽車や電車が添え物じゃないか。鉄道車輌が走らなきゃ単なる受け狙いの展示品だな。静止画でしか審査していないからこういうことになる。」

 友人はニヤリとして、
「それを聞きたかった。最近購読をやめた人が多くてさ、どうしてだろうと思ったのさ。今の話で僕自身も納得できた。僕も、もうやめるよ。」


 実は別の友人から一つねじ込まれていた件があった。このブログで採り上げてくれと言うのだ。それは例のアニバーサリー・チャレンジに上位入賞した北海道の湿原を表したレイアウトだ。走行動画が YouTube にある。(人の作品の悪口など書きたくもないが、現実にあるものを紹介するだけであるから御許し願いたい。)
 彼がそれを見つけてコメントを読んでいた時に、外国からの投稿で ”日本の動画の常で、この運転も速過ぎる” というのを見つけたのだ。
 その友人から、
「動画を見てくれ。」
と電話があった。あまり見たくもなかったが、それを見ると確かにそう書いてある。その外国の投稿者は日本の動画が好きなのだろう。その ”速く走るものばかり” というのは筆者にも思い当たる経験がある。いろいろな運転会に行くと、ジャーという音を立てて列車が新幹線並みのスピードで走っている。これはやめて欲しい。そういうものは見たくないのだ。走らせている人は、自分が幼稚に見えるということに気付いていないというところが問題だ。

 動力機構が昔から殆ど変化していないからだろう。ヒステリシスが大きく、適当な速度ではうまく走らないということもある。重負荷時に効率の高い動力装置ではないのだ。筆者のように動力装置の改良に血道を上げる人は極めて少ない。
 この話を最初の友人にすると、知らなかったらしく大変驚いた。
「いい勉強をしたよ。全くその通りだ。今後ますます酷くなるだろうね。」
と言った。筆者は行ったことが無いので知らないが、貸しレイアウトに行くと、どれも新幹線並みのスピードで走っているそうだ。  

2024年08月28日

GarGraves track

Phantom Line GarGraves についての問い合わせがいくつかあった。日本では見るチャンスはまず無いと思われるので、説明をしたい。これがその商標である。


Gragrave & Lionel 左が GarGraves で右は Lionel の三線式線路である。木製枕木というのがなかなか良い。これは3線式の線路で、やや高級路線を行っている。枕木が少し短いように感じるが、それは既存のライオネルの枕木長と合わせて敷き替えを簡単にする目的があるからだろう。 右のように、中央レイルが銀色なのは嫌だという人は多い。特に日本では極端に嫌う人が多い。昔は中央レイルを銅線にして、目立たなくすることが流行ったが、アメリカではそれほど嫌う人は居ない。

 その理由は本物も中央3線式で集電していた時代があるからだ。にわかには信じ難いが、踏切もあった。感電防止にかなりの配慮があったらしい。3線式への嫌悪感というのはアメリカではかなり少ない。しかし、中央レイルが気にならないというのは魅力的だったようだ。中古品もたくさん流通している。ポイントも中央軌条が目立たないようになっていてこれは大したものだと思った。

 GarGravesという会社は Gardner と Graves の二人によって作られた。現在は別の人が所有している。枕木は木製が標準だったが、どういうわけかプラスティック製もある。驚いたことに錆びにくいステンレス板で出来たレイルの製品もあるそうだ。これは屋外使用を考えているのかもしれないが、電気抵抗は極端に大きいはずだ。また摩擦係数が小さく、牽引力は低下する。

 筆者としては軽いのがありがたい。3 ft(90 cm強)が、たったの 140 gしかない。電車で運ぶときは必ずこれを持って行く。中央レイルは外しておく方が誤解が少なくて良さそうだ。そういう製品もある。この線路上でスケールの車輌を走らせると曲線上では脱線しやすい。レイル頭部が丸いからせり出してしまうのだ。ライオネルのようなハイフランジの車輌を走らせるためのものであって、スケール用ではない。しかし、この動画のような直線上で走らせるのは全く問題が無い。


2024年08月26日

YouTube

 Santa Fe のパシフィックが慣性でスリップして走るのを見せて欲しいという要望が来ていた。動画はいくつか撮ってあったが、YouTube にUPしていなかった。今回二つ紹介したい。

 一つ目は博物館の空き線路での走行披露である。この動画は先日渡米した時、あちこちで見せて非常に評判が良かったものだ。手前のプラットフォームの屋根支柱は Dennis がロストワックスで作ってくれたものだ。これを見てDennisは、
「おい、どこかで見たことがあるな。どこの製品だ?」と嬉しそうに言った。「クロム・グリーンの柱というのは良いもんだ。」とのことである。
 わざと、逆転スイッチの音を入れた。0.5 Vほどで起動して少し急加速をするとスリップしているのが分かる。7 V で巡航する。5 V まで電圧を下げて逆転すると、動輪が止まり、スリップする。それ以上の電圧を掛けていると、逆回転ブレーキになる。
 機関車が止まると同時に電圧をゼロにすると実感的だ。こうしないとすぐに逆回転が始まり、スリップする。起動は極めてゆっくりにすべきだ。

 二つ目の動画はより近くで写したものだ。これはこの6月に神戸の会場で撮った。線路は軽い三線式で中空のを持って行った。これは GarGraves の三線式であり、木製の枕木に鉄板製のレイルが打ち込んである。スパイクはない。ただ、レイルの下がまっすぐ伸びていて、それが枕木に打ち込まれている。50年前に買ってほとんど使わずにいたが、今回のように携帯して持ち込む時にはとても軽くて有り難い。
 これを見て、中央レイルに何か秘密がありそうだと考えた人も居たようが、残念ながら無関係である。
 
 これは Phantom Line と呼ばれるライオネルなどのトイ・トレイン用レイルだが、中央レイルが黒くて”幽霊のように見えない”というのが売りだった。見えてはいるが、日本の3線式のような感じは受けない。鉄板製だがスズめっきの質が良いのか、意外に錆びない。また電気抵抗も小さい。洋白などとは比べ物にならないくらい良い。


2024年08月24日

続 Atlas exteded-vision cabooses

Atlas cabooses これらは完成していない。うち3輌は過去に紹介した。  

 DT&I はデッキの手摺を細く作り替えてあったが、その部品は既に行方不明で再度作り直す。B&O、 C&O の手摺は、材料が脆化していたので切り取った。暗いところに置いてあったので、光のせいではない。空気に触れていると可塑剤が飛び易い、あるいは壊れ易いのだろう。すなわち細いもの、薄いものは脆くなりやすいわけだ。先回紹介の UP、 BN では塗装してあるためか、脆化していなかったが、太くて見苦しいので切り取った。

 改良に関しては、
・デッキ手摺を切り取り、金属で細いものを新製する。
・全体に新たな塗膜がないといずれ脆化する。
・台車は板バネの緩衝機能を模したものを付けないと現実味がない。
・肉の厚味が見えている部分は削り取って肉を薄く見せる。
・できれば電装して、ライト類を点灯する。
という程度のことを施すと良いわけだ。特に電装は、絶縁材料で出来ているから簡単である。電池を積めばよい。45年も前、椙山 満氏がご健在だったころ、電装し燈火が点る DT&I カブースをご覧になって、「実に良いですなあ。」と感嘆されたことを思い出す。現在では小さな LED がいくらでも手に入るので簡単なことであろう。 


 Atlas は50年前に非常に優れた製品群を開発したが、それを改良することなく、トイトレイン用として放置したような気がする。スケールの方は需要が小さいので、それ以上手を出さなかったのだろう。

 時は流れ、現在 Atlas が販売中のものにはこれらの製品の改良型はないようだ。すべて新開発の中国製ばかりである。トイトレインが「必要以上のスケール化」に走り、”急カーヴを曲がるスケール的な車輌”の需要が生まれ、それに合わせた商品開発がされて現在に至る。今ではスケールの需要はトイトレインの1/30以下だそうだ。
 スケールの人はティンプレートのおこぼれに与っている。だからOスケールの人はトイトレインの妙に細かく出来た上廻りを使った怪しい商品を買わされているわけだ。その下廻りのダイキャストの材質は極めて怪しく、5年で破綻したものもあるようだ。ブラス製でないと結局は駄目ということが分からない人はまだまだ多い。

2024年08月22日

Atlas exteded-vision cabooses

 Atlas は 1972年ごろから、Oスケールの車輌をいくつか出しスケールティンプレートのどちらにもできる、という路線を歩み始めた。
 機関車はDC駆動でスケールの車輪を付けていたが、貨車はプラスティック製のハイフランジ車輪であった。すなわちティンプレート用であるが、簡単に改造できた。

 かなり良く出来た車輌群であったが、貨車の車輪、連結器がトイ・トレイン用であったため、それを改造しなければスケールには使えなかった。スケール用にはRP25を称する取替用車輪が供給されていた。それは出来の悪いブラスの挽物に粗悪な黒メッキを掛けたものだった。連結器もトイトレインの部品で、別途スケールの自動連結器を購入して取替えることになっていたが急曲線に対応するために首が長く、またナックルが折れ易かった。仕方がないので、Kadeeに取り替えた。
 いろいろな点で詰めが甘い製品群であった。当時はブラス製以外にはろくな細密車輌は無かったことと、塗装済み完成品というものが少なかったということもあって、大変よく売れた。怪しい Pola-Maxiとか Rivarossiしかなかった時代だったのだ。もう少し神経が行き届いた売り方をすれば10倍は売れたと思う。型の設計はなかなか良いのだ。

Atlas exteded vision cabooses これらは Atlas の塗装済みを加工したものである。UPの方は電装して、屋根上のストロボ・ライトやマーカ・ランプを付けた。BNは妻面を黄色にした。塗膜が薄いので、傷がつくと下地が見えてしまう。サッシを銀色にすると引き立つ。問題はデッキの手摺である。取り替えようと思って40年経ってしまった。

 全体の造形は優れていたが、細く作るべきところを表現することが出来なかった。おそらく材質の問題だろう。
 当初はよく売れたが、その後より優秀なスケールの車輌が他社からいくつか出て来たので、急速に売れ行きが悪くなった。

 手を入れればかなり良くなるので、一部の模型屋がオリジナル塗装のものを出したり、未塗装のものを売り出したりした。台車はコイルバネを模したベッテンドルフであったから取り替えるべきだ。この2輌は取替済みで、UPの方はボルスタレス台車にした。この実物車輌は70年代によく見たので、記憶をたどって作った。

2024年08月20日

SP bay-window caboose

SP bay-window caboose (2) このカブースは30年ほど前にアメリカで手に入れた。事故車で片方のデッキが無かったのを廉価で購入したのだ。反対側を参考にスクラッチから修復したが、難しい仕事ではなかった。  
 適合する台車が無く未塗装で放置されていたが、一念発起して完成させて塗装した。

 bay‐window 部分は妻の方から見るとオレンジ色である。目立つ色にしておかないとぶつかる人が居るからだろう。

 ちょうどぴったりの良いディカールを入手してあったので塗装できた。デイカールが無いと塗装する気が起きない。逆にディカールがあると信じていたにもかかわらず、そのディカールが不良だと貼れなくて落ち込む。   

 この製品は安達製作所製で、板が厚い。
 屋根板の仕上がりが今一つだ。プレスの角がしっかり出ていないので安達製作所らしさが無い。屋根板に鈍し板(ナマシイタ)を使っていないような気がする。あるいは板が厚過ぎたのだ。しかしハンダ付けは上手で、壊れることはないから、安心して持てる。 

 この安心して持てるというのは、Oゲージでは大事なファクタである。韓国製のどうやって持てばよいのやらわからない模型は、とても困る。結局は壊れて、すべてハンダ付けをやり直すことになる。アメリカの顧客はどうしているのだろう。大半はエポキシで付けていて、修復が不完全である。 

2024年08月18日

NP wood caboose

NP caboose finished このカブースは3輌ある。これはBob Weaver氏のキットから筆者が100%手がけたものだ。Minnesota州で現物を見て作りたくなったものである。直後にキットを探して手に入れた。ある程度作って下塗りをしたところで、ディカールを紛失してしまい、8年ほど放置してしまった。最近見つけたので再度挑戦していたのだ。ディカールが無ければ進まないという実例である。

 そういう意味で、将来欲しそうな車種はディカールを事前に手当てしている。だからディカールはスーツケースに一杯分以上ある。
 友人が「模型屋以上あるな」と言っていた。

 その半分はアメリカの友人から来ている。亡くなった友人が生前に譲ってくれたものもある。「もう使わないから持って行け」と言ってごっそり渡してくれたのだ。それらは貨車用で、大半使い尽くした。ありがたいことであった。Oゲージのショウでは、この種のディカールの即売があるから、たくさん買う。気を付けないと肝心の部分だけが無いものもあるから、よく見て買う。 

 今回はディカールとの境目がよく分かるので、何らかの手当てをして消さねばならない。艶消しにするのが一番簡単だが、ある程度の艶は欲しい。

2024年08月16日

D&H wood cabooses

 Bob Weaver氏は、どういうわけか デラウェア & ハドスン の模型をいくつか出している。彼はペンシルヴェイニア州在住であったが、 D&H 方面 の出身だったのかもしれない。

D&H cabooses さて、この会社のカブースは2輌ある。1輌は図面通りであるが、作ってから時間が経ち、部分的に接着剤の剥がれが見られた。あちこちの部品を引張ったり、叩いたりして浮き上がりを調べ、外してエポキシ接着剤で付け直した。こういう時のコツは古い接着剤を完全に剥がしとることである。付け直す時は圧締を完全にすることだ、クランプを工夫して締め付ける。場合によっては、締め付けジグを作ることだ。今回は端梁が緩かったのでその辺りをすべて外し、ジグを介して正確に締め込んだ。これで、軽度の衝突時にも確実に生き残るはずである。塗装は剥げているところを補修し、全体に半艶とした。幸いにも貼られたディカールは生き残った。一部を補修しただけである。

 もう1輌はキュポラオフセットした。塗装も少し変えた。これもディカールが劣化していて駄目であったので今回は貼れなかった。
 色は最大限に彩度の高い塗料を用いた。昔、現役時代のこの車輌を見たことのある友人に聞いたのだ。カブースは目が覚めるくらい、綺麗な赤だったとのことであった。

2024年08月14日

PRR wood cabooses

Pennsy N6's Pennsylvania 鉄道のカブースがいくつかある。自前のもの以外に、半製品を入手したものもあり、意外に輌数が多い。どれも最大限に手を入れ、原型を保っているものは少ない。
 筆者はペンシルヴェイニア鉄道に関してはそれほど知識があるわけではなく、東部の友人を訪ねた折にいくつかの博物館を見た程度である。 Brass_solder氏は大変お詳しいので、戴く助言を最大限に受け容れている。

 木製のN6Aは2輌ある。これは原型の短いカブースを伸ばした時に片方に延ばしたタイプである。すなわち、前後非対称である。キュポラを黒くしたものと車体色と同色のものとした。これらはBob Weaver氏の設計である。メリハリのある設計で、木製とは思えない仕上がりである。キュポラは大きく、建築限界の大きな西部で使われたものだ。

 手摺等は写真でよく見る塗りにする。その色は白と黄色の2種あるようだ。向こう側の車輛は未仕上である。キュポラを黒くするとかなり奇妙な感じがする。ディカールを貼ろうと思ったが、そのディカールが極端に劣化していて断念した。 


2024年08月12日

NKP wood caboose

NKP caboose finished このNickel Plate Roadのカブースは、既に10年以上も製作途上であった。キュポラ側面の連絡用ライトの色がよく分からない。レイル方向には緑、枕木方向には赤のレンズを向けている写真が1枚あっただけで、それがどのような状況のものなのかはわからない。

 窓ガラスがあると実感が出るのは間違いない。 取り付けはかなり面倒な作業ではある。平面度の高いアクリルガラスの薄いものを用いている。

 この赤白の塗り分けは美しい。ディカールの予備が無いので、ずいぶん緊張して貼った。木板の継ぎ目で浮かないように、下地には塗料を十分に沁み込ませて水を吸わないようにする必要がある。その上に十分艶のある塗料を塗る。ディカールを水だけで貼って、切り込みを丁寧に入れてから柔軟剤を沁み込ませた。この操作を3回繰り返し、泡を押し出したので何とかなった。

 この種の泡を追い出す手法はいろいろなやり方があると思う。筆者は薄く削いだゴムベラを使う。決してこすらず、押さえるだけである。カッタの刃で軽く切れ目を入れておいて空気を押し出す。切れ目は全て平行に入れるのがミソである。切れ目が交差すると、ディカールはこま切れになってしまう。

 40年ほど前だが、この手法で貼った模型をとれいん編集部に持って行ったことがある。彼らは非常に驚いた。
「外板の切れ目にディカールが馴染んでいる!Oゲージだとそこまでやるのか?」と言うので、
「Model Rilroader の Paint Shopにもこの方法が載っている。HOでもやるべきだ。」と答えると驚いた。 

 この写真の左の方の ”radio equipped”の稲妻マークは手作りである。製品のディカールが壊れたので、白い部分を切り取り、つぎはぎで仕上げた。左右で微妙に異なる。

2024年08月10日

finishing cabooses

 しばらく前から掛かっていた塗装済のカブースを数輌仕上げた。ディカールを貼って、手摺などの彩色をした。窓ガラスも入れた。

 当鉄道に見学に来られる方々の中には、カブースの窓にガラスが入っているのに驚く方がある。筆者は、それを聞いて逆に驚く。ガラスの嵌まっていないカブースを考えるのは困難である。乗務員が乗っているのだから、ガラスが無いわけにはいかない。 

 ウェザリングも多少は掛けるが、余りひどくはしない。人が乗っているのだからそんなに汚くしているわけがないのだ。たまに洗っているのを見かけた。

UP CA9 このUPカブースは到来物で元の持ち主は改造を断念したものだった。あちこちが左右裏返しになっていて、かなりの部分を作り直した。床下は手抜きである。床下が左右逆になっているのはよくある。上からの透視図を下からと勘違いするのだ。本物の場合、下からの図面があったとしてもとても使いにくいはずだ、ということに気付かない人たちが作っているわけだ。

 ディカールはありあわせのもので、当時実際にありそうなものを選んでいる。これでUPのカブースは10輌目だと思う。


2024年08月08日

ventilated reefer

Ice reefer (2) 隠しヤードの奥の方に埋もれていたブラス製貨車を発見した。未塗装だということは何か特別な事情があるわけである。

 この貨車は25年ほど前にアメリカのオークション・サイトで見付けたものだ。オリジナルは横浜のパイオニアという模型屋の製品で、1960年代にアメリカの US Hobbies に輸出された。例によってハンダ付けは怪しく、ぽろぽろと壊れやすい筈だが、かなり手直しがしてあり、壊れにくい。当時の最新型のプラグドアタイプだったが、観音開きに改造してある。
 この貨車はオーストラリアの人から購入した。地理的な問題もあってアメリカ本国からの入札は少なく、筆者は比較的安価で落札でき、日本への運賃も安かった。

Ice reefer (3) この貨車は、ドアが開くように改造してあったが、普通の製品と同等以下の価格で入手できた。筆者はドアが開いたりするものは好きではない。壊れやすいし、塗料が剝がれる。この改造を施した人は、なかなかの腕前である。驚いたことに閉鎖テコは作動し、ロックできる。 

 いつぞやは日本のHOの機関車で機関室のドアが開くものの話題を出したが、あの種のギミックは避けるべきであると思う。開けるなら完全に開いた状態で固定すべきである。一般人にはまともなものは作れまい。しかしあえてそれをやって、それが間違って評価されてしまうとその影響は無視できなくなる。正しい模型を見たことが無い人が多いのだ。

 祖父江氏の模型はドアが開くものがあるが、それらは完璧な構造で、閉じると周りと曲率が一致し、ロックが掛かれば完全に同一面になる。模型ではそんなことは実現できないと思っていたので、見せてもらって愕然としたことを思い出す。達人である。

Ice reefer (1) さてこの模型は、氷室の中が見えてそれなりに面白い。改造した人は本物の構造に興味があったのだろう。売主は誰が改造したのかは知らないと言った。断熱材の厚みも見えている。


 案の上、蝶番は壊れて扉はぷらぷらしていた。これは閉鎖して固定する。車内は実物のように床を持ち上げて作ってあり、壁、扉にも断熱材が張ってあった。また、氷室との境の壁も実物のように作ってあった。
R-30-18_750 氷室の上の蓋は、折角だから、空いた状態で固定してみよう。季節によっては開放状態で走っていた。その状態では氷は入れない。この写真はKoh’sのサイトからお借りしている。

 塗色はオレンジ色PFE にするか、黄色の Burlington にするか迷っている。非常に良いディカールを持っているのだ。どちらも捨てがたい。 

2024年08月06日

Weaver の PFE

 棚の奥から、もう1輌の冷蔵車を取り出した。Weaver社の音の出る機械式冷蔵車である。Prototype Blue Printsの通りに作ったとは書いてあるが、実感味が全く無く、見たくないので奥の方に置いてあったのだ。LVMの木製の模型との違いを見ていこう。

 2008年まで、Weaverという会社はアメリカ製で賄うという方針を堅持していた。車体のモールドは細かくは出来ていないが全体の印象をよく掴み、筆者が好きな模型であった。筆者は社長のBob Weaver氏に頼まれて、90年代には日本での代理店をしていたこともあるのだ。
 それがBobの逝去とともに変質していった。車種が急に増えたが中国での製造になり、実感味の乏しい模型ばかりになった。 別の車種2輌も入手したが、もうこの会社の製品を欲しいとは思わなくなった。木製キットか日本製の古いブラス製の方がずっと良いのだ。

wood or plastic (2)wood or plastic (1) 何が気に入らないのかと言われれば、凹凸の無さである。この2輌を比較すると、縦のリブの奥行きがあまりにも無い。またドアの部分は飛び出しているはずなのに平面である。プラグ・ドアの構造を知っていれば、こんな形にはなり得ない。ドアレイルの深さが無い。側面の写真と簡単な図面しか与えずに模型を作らせているのだ。本物を見ればリブの高さが自ずと判るのに、見ていないのだ。妻板のドレッドノートも薄っぺらだ。本物はごつごつしている。

 外見はつまらないが、中身は良いと言いたいところだが、中身も怪しい。DCまたはDCCで運転すると、集電して音が出る。
yellow lampgreen lampred lamp エンジンが起動し、黄色のLEDが点く。エンジンが定常運転をしている間は緑のLEDが点いている。しばらくするとエンジンは止まり、赤のLEDが点灯する。エンジン音はまずまずである。これを繰返すが、集電が悪いので、雑音が入り、時々奇妙な電子音(ピーポー音)が出っぱなしになる。

closed door 機械室ドアを閉めるとこんな具合だ。本当はこのドア・レイルは少し斜めに手前に飛び出している。開くときにリブに当たるのでそれを避けて手前に出るのだが、平面である。リブが低いので気が付かなかったようだ。
 全軸集電にしたので多少良くなったが駄目である。電源を浮かせておくべきだった。今ならスーパ・キャパシタを入れるべきだろう。

 車体の下側の台枠のモールドも下手くそだ。肉の厚くなるところは工夫してヒケが無くなるようにすべきだが、出鱈目な設計でめちゃくちゃだ。見えないところだが、とても気分が悪い。床下機器も例によって裏返しの上に前後逆だ。エンジンの排気管の位置も点対称の位置になっている。文字の印刷も気に入らない。ロゴが違うのだ。

 この冷蔵車の発売直後におかしな点を羅列して知らせたが、応答はなかった。もう二度と買うことはない。Bob は草葉の陰で泣いているだろう。  

2024年08月04日

ショック・アブソーバの効果

 ショック・アブソーバの作動をご覧になった方は、皆さんとても驚かれる。
「さすがですね。でもこれはOゲージを走らせたことが無いと意味が分からないでしょうね。」
長大編成の運転時、これがあれば脱線事故は減るでしょう。」
といった感想を戴く。

 Oゲージでも軽い模型ばかりを作っている人には、事故などによる急停車での脱線の経験は少ないと思われる。筆者のように金属製の車輌で低摩擦であれば、何かの事故で急停車すると、その慣性で途中の車輌が脱線する。過去には空中に飛び上がったこともあった。

 最近は全ての機関車が「押して動く駆動装置」を付けているので、衝突以外には急な減速は無い。しかも博物館のレイアウトでは保線が完璧なので、脱線は無い。連結器の高さはすべてそろい、耐久性のある金属製の Kadee を付けているので、列車がちぎれることもない。

 唯一の懸念は、外部から持ち込まれた機関車である。車検基準には、「電流値が 0.5 Amps以下、全軸集電、イコライジングまたはバネ懸架、密閉ギヤボックスを装備、車輪踏面は清拭してあること」と謳ってはあるが、「押して動くこと」とは書いてない。その種の機関車は電流を切れた瞬間に急停止するので、後ろからドン突きが起きて脱線する可能性がある。

 100輌以上(約45 kg)の牽引の経験のある人はまず居ないので、配慮を求めるのは難しい。そういう時にこの種の車輌が入れてあると、事故が激減する。

 HOであっても考慮が必要な方はいらっしゃるはずだ。   

2024年08月02日

ショック・アブソーバの構造

 ショック・アブソ−バをどのように作ったのかという質問が多かった。初めはラジコン用のショック・アブソーバを使うつもりだった。分解してみるとその構造はかなりいい加減で、gland packing(軸が出入りする部分)のOリングの摩擦が大きい割に、内部でヒステリシスを作り出す弁が無いものであった。要するに出入り両方に同程度の減衰力を与えるもので、お話にならない。現在市販されているものも、高価な商品以外は同様である。
 仕方がないので内部のピストンに可動式の弁を付けようと思った。作り始めたが、全体を大きく作り直さねばならず、床下に出っ張って横から見えてしまうのだ。細いものを作ろうと思うと、構造を限界まで単純化せねばならない。

air damper そこでエア・ダンパにしてはどうかと考えた。辷り込みの角パイプを用意し、内部の空気を殆ど押し出せる位置にピストンを置き、air escape(空気の抜ける小穴)をあけた。リード・ヴァルヴを作り、研いでハンダ付けした。要するに「往きはよいよい、還りはこわい」にして、外部の大きなバネで縮みを復元するわけだ。還りの空気はリード・ヴァルヴからの漏れである。ヒステリシス曲線を描くと囲まれた部分の面積はきわめて大きくなる訳だ。押す瞬間にはプスッと音がし、戻るときはク−という。

 作図して5つほど作ったが、良いものを2個残して捨てた。多少の潤滑油が必要である。これが無いと空気が漏れる。
 リード、細孔付近ともに砥石で良く研いで、隙間を極力無くすことが肝要である。ヤスリでは粗いから空気が漏れ過ぎる。ハンダ付けは一番遠いところで確実に付ける。塩化亜鉛が洗い難いので、水の中に2日ほど漬けて完全に洗う必要がある。もちろん水は頻繁に取り替える。

 固定された車止めに激突させても、極めて落ち着いている。撥ね返ることもない。48年経っても間違いなく作動した。現物をご覧になった人は一様に驚き、褒めて下さった。

 現在、ブラス製の客車を14輌ほど量産中である。総質量は 25 kg以上だ。何かの間違いでぶつかると、先頭車はもちろん、後続の客車に大被害が出ることは必定である。列車前方にこのダンパの付いた車輌があれば、被害はかなり軽減されるはずだ。
 その車輌は荷物車である。幌が無いので車輌間隔が衝突時に縮んでも差し支えないことを利用する。普段は適切な連結間隔であることは言うまでもない。

 車止めにはこの方式お勧めする。 

Recent Comments
Archives
categories