2023年11月

2023年11月29日

旋盤上で回転砥石を使う

 先日のコン氏の記事で、焼き鈍しの話があった。先方には伝えたが、温度が低すぎる。焼鈍はもっと温度が高くなければならない。
 その後で苦労して削ってチューブに挿しているが、もう少し楽にできる方法がある。

Dremel holder (1) この道具はアメリカの友人が作ったもので、20年ほど前に10ドルほどで頒けてもらった。硬いアルミ合金をレーザ?で切ってサンドブラストを掛けてある。とても便利なものだ。ドレメルの先端キャップのネジを外してそこにねじ込む。これを刃物台に付けて、ワークに近付ける。
 要するに高速回転する砥石を回転するワークに当てて、硬いものでも正確に削り落とす工夫だ。これがあれば焼鈍する必要が無くなる。 

Dremel holder (2) 砥石も擦り減るから、初めは粗い物を用いて大まかに削り取る。最終的に細かい砥石に取り替えて平行度を確保する。この時、砥粒が飛ぶので、ベッドは保護するのは当然であるが、筆者は電気掃除機を近づける。ボール紙でコーンを付ければ、ほとんど100%吸い込める。
 写真のように、カッタの幅を調節するときなどには便利に使える。焼きの入った材料でも簡単に処理できる。その時ダイヤモンド砥石は使うべきでない高温ではダイヤモンドは容易に鋼と反応し、急速に消耗する

 ネジは、3/4インチ 16 TPIである。このネジを切るのは大変であるから、既存のものがあれば利用したい。ホームセンタのネジを一個売りしているところで、この3/4インチ(通称6分)のナットが見つかれば良いが、この16TPIはそう簡単には見つからないだろう。買う前に、売り場でよく確認願いたい。それに角材を熔接すれば出来上がりだ。大した力が掛かるわけでもないので、ロウ付けでも良い。構造をよく考えればハンダ付けでも問題ない。ネジの通販会社でなら見つかるだろう。

 たくさんの市販品があるようだ。筆者のものとそっくりのもある。ドレメルのネジは、最近のは粗いネジらしい。上の16 TPIは古いタイプ用の数字であるから、最近買われた方はご注意願いたい。最近の先が細いドレメルはやや粗い12 TPIらしい

 TPIとは "threads per inch" である。


2023年11月27日

countersunk screw

 子供の頃、皿ネジがミシンの針板に使ってあるのを見た。ネジの頭が出ないので都合が良いものだと思っていた。父にその話を切り出すと、「そういうものではない。」と言うので驚いたことを覚えている。
「確かに頭が出ないことも利用しているが、目的は他にある。」と言った。

 皿ネジの嵌るところは90度に仕上げてある。ドリルの先は118度である。すなわち、ドリルの先で凹ませたものを皿ネジで締めると隙間が空くから、90度のカッタで切り込まねばならない。こうして締めると、その部品は2次元の締め付けができる。要するに位置が決まって動かない。皿ネジ穴を作るには専用工具を使うべきなのだ。

 今回の固定には皿ネジを使って2本で固着している。これは便利である。ネジの耐剪断力が十分であれば、組立分解が容易だ。たくさんのネジを使う必要がない。コメントを戴き解説を書く必要があると感じた。

 構造をよく考えて設計すると部品が減り、工程も大幅に減らすことができる。これは父にうるさくいわれたことである。

2023年11月25日

慣性を大きくするのは簡単!?

 しばらく前のことである。ある会合に慣性増大装置を付けた4-8-4を持って行き、単機でスリップさせて見せた。何人かの方がそれを見て、興味深そうであった。実際にスロットルを持たせてみると、慣性が大きすぎて怖いという意見もあった。

 そこに登場したある方が、表題の言葉を放った。
「こんなのはテンダを重くすりゃあ簡単にできる。俺のは機関車に自動クラッチが付けてあるからな。どこまででも滑って行くよ。」
と言う。筆者は二の句が継げなかった。その人は続けて言った。
「俺は設計をやっているからな。計算は強いんだ。あんたは計算して作ってる?」これには参った。

「簡単に見えるけど無理ですね。やってご覧なさいよ。」と言うと、「テンダにボールベアリングをつけて重くするだけだろ。やらなくたってできることはわかるんだ。」と言って行ってしまった。かなりリニアな人である。 

 簡単な算数をしてみよう。このテンダに、重い材料の代表の劣化ウラン(密度約19 g/立方cm)を詰めたとすると約16 kgになる。16 kgは重そうに聞こえるが、このテンダの等価慣性質量の1/10以下である。しかし、その質量で軸がへたらないように設計できるのだろうか。また線路は耐えるのだろうか。
 劣化ウランは日本では手に入らない。ウランの単体は酸素と反応して発火するから密閉容器に入れる必要がある。金では高価過ぎるから、タングステンを使うのが順当だろう。しかし全く質量が足らない。

 筆者の10輌編成の客車列車も約16 kgである。摩擦は非常に少ない。それを牽いて巡航しているときに、逆回転ブレーキを掛けて滑らかに止めるのは難しい。ガクンと止まる。機関車の摩擦力が相対的に大きいからだ。

 その人はHOの人らしい。そのサイズではテンダはどう頑張っても 2 kgくらいしかないだろう。しかしそれでもHOの模型としては異常に重い。車軸の設計はどうするのだろう。

 これもファンタジィの世界である。夢を見るのは自由だが、それを口にするとどのような評価を受けるか、という想像力が欠けている。何の設計をしているのかは知らないが、交通機関でないことを祈りたい。

2023年11月23日

ある言葉

 先日の会合で、ある方が興味深い言葉を発せられた。
「dda40xさんが等角逆捻り機構のところで、『あなたの模型はその程度のものですか?』と言われないようにしたいと書かれているので、その気持を大切にしたい。」とおっしゃったのだ。
 筆者は、鉄道模型のメカニズムについて改善を模索してきた。最近になって、一応人に見せても恥ずかしくないレヴェルになってきた。技術者であった父に見せたとしても、「よし、これなら良い。」という言葉を貰えるようになったと自負する。

 模型の展示運転を見ていると、まともに走らないものがある。1 mしか走らないもの、傾いているもの、ギャーという音を立てて走るものに出くわす。どれも素晴らしくきれいに仕上がっているのに、もったいなことだ。しかし、車輪の裏塗ってある人極めて少ない

 筆者の模型は、とにかくよく走るようにしている。5 km程度は無給油で走り、脱線しない。間違って軽衝突があってもそう簡単には壊れない。事実上無音で走る。これらの条件を満たさないものは人には見せないことにしている。
 模型には本物とは根本的に異なる部分がある。それを克服して、本物のような動きをさせるということが如何に難しいか、を感じることが大切である。

 冒頭の方とはじっくりお話をさせて戴いた。素晴らしい模型を作られるであろうと確信が持てた。 

2023年11月21日

ATSF Pacific (rebuilt)

Santa Fe Heavy Pacific (1)Santa Fe Heavy Pacific (2) Santa Feのパシフィックが完成し、お披露目をした。今回のテンダは慣性モーメントを構造が許す最大限にしたので、等価慣性質量は204 kgとなり、前回の値を大幅に上廻った。と同時に機関車の動輪上重量が少ないので、動輪の空転が甚だしく、仮設線路の不具合があると、単機でも出発が困難なほどであった。
 と同時に惰行時のブレーキのスリップ、逆転ブレーキは容易に再現でき、昔の鳥羽駅でのC51の曲芸を堪能できる。右の写真はNortherns484氏の撮影。

 今回の慣性モーメントの算出は前回と同様にできるはずだった。昔の物理計算を思い出しつつ、「角加速度を積分すればできるはず」と取り組んだが、かなり頭が錆びついていて3日ほど考え込んだ。ラジアンは無次元であることを思い出すのに2日も掛かった、というお粗末。
 間に合わないので、工学エキスパートのT氏に助けを求めた。朝9時半にメイルを送ったところ、12時半にはサラサラと手書きの計算結果が来てしまった。昼休みにやって下さったようだ。プロには敵わない。

 今後の調整としては、動輪上重量を今の 1.5倍まで増やしたい。そうすると、もう少しキビキビとした動きになるはずだ。
 先回は超大型の4-8-4で動輪上に2.7 kg載っていた。今回は大型とは言え、パシフィックで動輪上には1.3 kgしか載っていない。これでは単機でも起動に苦労するのは当然だ。

 実物のデータを記しておこう。機関車より重いテンダを付け、砂漠の中で長距離を
無停車で走る急行列車に用いられた。1919年製、1936〜47年更新改造 
 ボイラ圧力 15.2気圧   
 機関車質量 154トン
 動輪軸重   31トン
 テンダ質量 180トン
 テンダ軸重 30トン
 水積載量   78トン
 重油積載量  30トン 


2023年11月19日

続 ATSF cabooses

ATSF CAbooses (2) この2輌は工事中である。右は先回で紹介のKTMの製品である。派手に壊れたもの2輌からのニコイチである。もう壊れないように太い骨を入れた。垂直に落としても、連結器は壊れるだろうが他は無傷のはずだ。台車は 3D print のナイロン製である。極めて低摩擦で調子が良い。もちろんピヴォット軸受である。  

 左は Lobaugh(ロボゥと発音する)のキットから組んでいるものである。おそらく1950年代初頭の製品である。この2つは根本的には全く同じ形であるはずなのだが、ずいぶん異なるように見える。窓枠は追加することになっている。
 Lobaugh の会社の住所を訪ねたことがあるが、近くに Santa Fe 鉄道の線路もあり、彼らは現物を見ていたはずである。それならば自社で製品化されたものと比較することも容易だから、正確なものが出来たはずなのだが、ちょっと異なるような感じがする。遠く離れた日本で作られたもののほうが、忠実度が高いように見えるというのは不思議である。

 Lobaughのキットはやや厚めのブラス板で構成され、しかもその板は快削材で堅い。すなわち鷲掴みで持っても、全く歪むことがないし、衝突しても生き残る。筆者の好みの頑丈なキットである。車体だけはオリジナルを使用し、あとは自作である。
 デッキ部分などは怪しい構成であるので、全て角材からフライスで削り出す。床下は木材との混成で実に不思議な構成だ。すべて捨てて作り直す。

 こういうものをアメリカに持って行って友人に見せると、是が非でも欲しがる人が居るのは面白い。そういう意味でも、手に入る物は手に入れておいて損はない。


2023年11月17日

ATSF cabooses

 改修中のサンタフェのカブースが4輌ある。KTMが輸出した安達製作所の製品が2輌、木製キットを組んだもの1輌、もう一つはアメリカ製のブラスキットである。

ATSF CAbooses (1) 木製キットはQuality Craftで45年ほど前に出したものである。よくできたキットで、実感的である。1930年代の木製車輌を模している。作るのは大変だが、仕上がりは美しい。仮台車の上に載っている。車輪が未塗装なのはご容赦願いたい。

 右はインポータがUS Hobbiesで、おそらく1965年頃の生産であろう。アメリカで見つけたジャンクから再生したものである。破損品の塗装を剥がして修理し、再塗装したものだ。ブラス製であると、如何ようにも改修できるので気楽である。

ATSF 1952 窓ガラスを入れてないと、いかにも未完成品である。当鉄道では、必ず窓ガラスを入れている。 

2023年11月15日

スポーク車輪

spoked wheel center (1) 3Dプリントで輪心を作ってみた。1次試作品である。これは銜え代が少なく、コレットで銜えるのが少々難しかった。2次試作品は少し長くしたから大丈夫だろう。


Nylon's difficulty 旋盤で削ると切り粉が出るが、ナイロン製であるとそれが切れにくい。糸のように繋がって出て、それを切るのが面倒だ
 
 バイトをよく研いで切れ味を最高に良くしても、結果は変わらない。この点ではデルリン(POMの一種)は優秀である。それを「快削性がある」という表現をするのには少々疑問があるが、とにかく削り粉が切れて出てくる。

 スポークが細くて実感的ではあるが、この車輪は剛性が足らない。車軸を持って車輪を触ると、軸がタイヤ裏面に対して垂直でなくなるのだ。もちろん力を緩めれば元に戻るが、少々ドキリとする。
 ということは動輪には使えそうもない。蒸気機関車の動輪のような大きなものはとても無理である。最近の電気機関車のようなボックス動輪でも、工夫をしないと剛性が足らないだろう。やはり3Dで作ったプラスティックの原型を金属に置き換える事が必要なのかもしれない。

2023年11月13日

thread gauge

M5-P0.9 コン氏から連絡があって、M5-P0.9という今となっては極めて珍しいキャップボルトを譲って戴いた。友人が「30年以上昔、コン氏から貰ったんだけど。」と知らせてくれたのだ。友人はそのネジを実測して、ピッチが 0.9 mmであることを突き止めた。
 コン氏ご本人もお忘れになっていたようだが、それを伝えると探し出してくださり、ドンピシャリと嵌った。ありがたいことである。
 実は、筆者はほとんど諦めていて、この M5 の穴を拡げて M6 に作り変える予定であった。寸法的には可能であるという判断だったが、何もしなくてもよくなったのはありがたい。
 40年ほど前、モデル8の澤田節夫氏から蝶ネジを捨てて改造したと聞いた。ネジは合うのがないから切り直したようなことをおっしゃった。どうされたのか、詳しいことは聞いていない。

thread gauge これは筆者の持っている各種のネジゲージである。大抵のものはこれで判別できる。インチとメートルが混在している環境なので、これは必需品なのである。細かく言えばネジ山の角度も異なるが、そこまでは見えない。  

2023年11月11日

機能美

ore cars ジャンクの貨車の再生が進んでいる。たくさんあったブラス製オア・カーの下廻りを更新し、衝突、落下に耐えるようにした。オリジナルは薄板の構成で、 連結時のショックでもめり込みそうであった。
 例によって t 1.5の板を、背骨のチャネルに食い込ませてハンダ付けし、連結器を付けた。台車のキングピンの位置が少しおかしい。構造を考えれば、縦の部材の奥になければならないのだが、少し中心寄りにある。これでは、わざわざ金属疲労を進ませるための設計である。構造設計の専門家は、
「正しい設計のものは、単純な構造で丈夫さを作り出すから美しいのさ。」と言う。

Max Gray ore car 寸法を順に当たっていくと、台車のホィールベースが長いのが原因であることに気付いた。要するに、短いアーチバーであればオリジナルの設計にできるが、ベッテンドルフでは無理ということだ。この写真ではホィールベースが短いアーチバーを使っているので、非常に素直な感じがする。車輪は端梁から外に出るのが普通である。「列車長あたりの積載量が全て」の世界であるから必然的にそうなったのであろう。
 このブラスのオア・カーは、程度の悪いジャンクで、かなり手を入れてある。古いデザインにしたので、アーチバー台車でも良いわけだ。

Atlas ore car ところで Atlas のプラ製品は一見しただけで何か違和感を感じる。友人と話したら、それは「機能美がないからだよ。」と言う。「間違った部品(台車)を使って間違った設計にすれば、変だと気が付くのが普通さ。」
 側枠の四角の部分は上下を噛み合わせるときのラッチで、無い方が良い。この写真を見れば、右のAtlasの製品はキングピンが内側に入っている。正しい位置に付けると、車輪が端梁に当たってしまう。端梁も奇妙に伸ばしてある。台車の型を新たに作るのをサボって、無理やり押し込んだのだ。もう一つの無視できないファクタもある。これらの貨車は鉄道玩具としてアメリカに導入されたのだ。フランジ高さが2.5 mmもある車輪を使ったので、正しい位置にキングピンを置くと、端梁にフランジが当たってしまう。遠ざけざるを得なかった。こういう模型を世界中に何十万とばらまいたのは罪が大きい。
 左のアーチバー台車は正しい位置に付いていて気分が良い 。かねてより、このAtlasの貨車には何とも言えない気持ち悪さを感じていた。ようやくその原因が判明したが、かれこれ40年ほど掛かったことになる。70年代のMRにこの貨車の端梁を短く切る記事があったが、それは固定連結器を付けるための方便で、根本的なところは放置されていた。
 プラ製品のAtlasは10輌ほどあるので、どうやって処分するか考えている。

2023年11月09日

続 塗装日和

painted この種の貨車の下廻りは入り組んでいるので、塗料が奥まで入るように塗装の順番を考えておく必要がある。最初に裏返して垂直に吹き、次いで45度の角度で全体を廻しながら塗る。
 次に水平に塗らないと入らないところがあるので、そこを吹く。最後に45度の角度で上から吹いて出来上がりのはずだが、届かないところはある。そこは細い筆で補う。


tankers 2輌目以降は1輌目の経験を生かして、先に筆で入りにくいところを塗っておく。その後は手順通りに塗れば簡単に出来上がる。このTexacoのタンク車は70年代によく見た。この60輌編成を夢見ていたこともあった。現在はその1/5までしか来ていないが、未組みはもう1輌しか無いから、実現できそうもない。

wiping off 台車は車輪をはめた状態で、網の上で塗る。ひっくり返して全体を回転させながら、車輪を少しずつ廻して塗る。塗料がもったいないので、霧を細かくして無駄を減らす。踏面まで塗られてしまうので、シンナを付けた綿棒で拭き取る。塗った次の日なら、まだ塗膜は軟らかく簡単に取れる。Low-Dの鈍い光が魅惑的である。
 この写真は拭取り途上であるが、この後フランジの裏側も少し拭取る。そうしないと分岐のガードレイルの上に塗料が剥げたものが積もる。実物の車輪の裏側も、踏面以上の高さまで光っている場合が多い。実物のガードレイルはやや高いことが多いからだ。模型の場合はそんなに高いものはまず見ない。NMRAの規格ではレイルヘッドと同じだからだろう。祖父江氏の工房では出荷前にポイントを通す試験をしていたが、そのガードレイルは 1 mmほど高い。
「これで通りゃあ、文句あんめい。」 

2023年11月07日

塗装日和

 ここしばらくは天気が良い。風も弱く、湿度は低い。このような条件を待っていた。作り溜めした貨車を引張り出して洗剤で洗い、完全に乾かす。  
 エア・コンプレッサに注油し、エア・シリンダから水を抜く。油は専用油を用いる。これがなくなると焼き付いてしまうから気を付ける。

 ガンを空吹きして空気の出を確かめ、シンナを吸わせて細かい霧になることを確かめる。塗料は薄めてパンストの切れ端で濾過し、所定の瓶に入れて開始だ。 

masked 塗り分けが必要なので、先に塗って1日置き、塗膜が十分に硬化したものにマスキングを施してある。このマスキングには1輌あたり30分以上掛かる。漏れないように細かく切ったテープの小片を、はしごの裏などにもぬかりなく貼ってある。 

2023年11月05日

続 糸鋸弓の故障

 修復するには、このネジの規格を調べる必要がある。はじめはインチネジだと思い込み、手持ちの全てのネジゲージに合わせてみたが、合うものはなかった。それではメートルネジで、と調べてみた。径から考えるとM5のようだが、合わない。

 手持ちの全てのタップを動員して調べたところ、M5-P0.9という旧JISネジのタップがスルスルと通った。同じネジのダイスにももう一つの雄ネジが通ったので、これで間違いはない。
 最近はネットショップがあるので助かるが、これはそう簡単には見つからない。頭が六角穴のキャップボルトを買いたいが、極めて難しそうだ。今までは蝶ネジの頭が邪魔であったが、それが小さくなると取り扱いやすくなるはずだ。
 製品が見つからなければ、雌ネジも捨てて、全て新しく作ることになるだろう。

fastening screw on coping saw 今回のネジの故障の原因は、四角ナットの片方で刃を押さえたことによる。すなわち、四角ナットがいつも傾いて締められたのだ。これを避けるには、反対側に糸鋸刃と同程度の厚みの板を付けるべきだ。0.3 mm程度の板を貼るだけで解決するだろう。あるいは工具鋼のかけらから、そのような四角ナットを削り出せば良い。暇をみて、やってみたい。今回の四角ナットは、刃を押さえる側がプレスによってギザギザの模様が付けられている。すなわち加工硬化しているので、雄ネジがより駄目になりやすかったのだろう。
 国産の弓には、厚目のバネ板で挟んでからネジで糸鋸刃を締めるものがあるが、それはネジに対するストレスが小さいはずだ。 

2023年11月03日

糸鋸弓の故障

 最近糸鋸を使うことが多い。客車の改装で、厚い床板、妻板を荒目の糸鋸でガシガシと切っている。

 この弓は50年以上前にクラブのM氏から購入した。M氏は、工具は「イギリス製が一番」という信念の持ち主で、ありとあらゆる工具を個人輸入して適価でクラブ員に頒布していた。工具屋にも卸していたほどだった。
coping saw (2) その弓は、Eclipse(日食、月食などの意)というブランドであった。比較的軽く、剛性が大きな使いやすい弓であった。他にも3種類くらい持っているが、これをかなり頻度高く使ってきた。


coping saw (1) 先日、糸鋸刃が折れたと思い、取り替えようとしたが、握りに近い方から抜けているだけであることに気付いた。その直前にしっかりと締めたはずなのに…。ネジを緩める時、妙な感触があった。緩める瞬間に抵抗がゼロであったのだ。すなわち、ネジ山が潰れたと覚った。

coping saw (3) 抜いてみるとこんな状態である。完全に逝ってしまっている。筆者の人生の中で、ネジが擦り切れたのを見たのはこれが初めてだ。
 60年も昔、父との会話の中で、雄ネジと雌ネジのどちらが先に磨り減るかという話題が出た。父は「雄ネジに決まっている。」と言った。その理由を聞くと、「径が小さいからだ。」軸と軸受も同様で、「材質が同じなら、必ず軸が先に磨り減る。」と言ったが、当時の筆者には理解できず、差はなさそうに思えた。

 今回の事故は径の大小以外に別のファクタがある。 


2023年11月01日

続々 installing the flywheel

 フライホイールを取り付ける台は、以前紹介したギヤボックスの鋳物を再利用した。内側を削って軽くし、軸受部にはブロックを貼り付けた。全て銀ハンダで作ったので極めて頑丈である。

support block 台枠のアングルにネジで締める。側面は皿ネジを使って沈めた。こうしないと上廻りがかぶせられない。衝突時のショックを受け止められるように、構造を十分に検討した。



clearance 回転部の沈め具合はこのような具合で、隙間は 0.4 mm程度だ。床下器具のハンダは銀ハンダで付け直した。重い構造物を付けたまま、台車を外して机に置くと、妙な力が掛かって外れる可能性があるからだ。 

finished flywheel ラジアルベアリングをよく吟味した。20個ほど出して順に取り付け、廻してみて最も静かなものを選んだ。重いものを廻すので、かなり過酷な条件である。
 選ばれたのはやはり日本製であった。残り少ない虎の子の日本製である。これでこのサイズの日本製は払底した。これを買ったのは35年ほど前である。ベアリング屋の番頭が親切にしてくれたことを思い出す。
 スラストベアリングは近くのベアリング専門店で買った。奥さんが、念入りに調べてNMBのを出して来てくれたが、価格は意外に安かった。この店は親切で珍しいサイズもよく揃うのでよく行く。

 慣性増大装置第2弾はこれで完成だ。12時間ほど掛かった。次回はこの半分で作りたい。 

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