2023年09月

2023年09月30日

続々 Lobaugh の Climax

Climax driver center F氏は、持ち帰った輪心にタイヤをたちまち嵌めてしまった。腕の良い方である。絶縁側は、今試している模様。

  タイヤを掴む時には、そのまま掴むわけにはいかないから、専用のヤトイが必要だ。これらは pot chuck と呼ばれる。F氏は各サイズのヤトイを作って持っている。

 筆者は踏面側を掴んでフランジ内側を削り、次はネジで締めるヤトイに取り付けて表側とフランジを削る。最後にフランジを掴んで車輪のジャーナルに近いところを落とす。12個やると、かなり疲れる。これが筆者にとっては限界値である。
 最初にフランジを掴むと、おかしな製品もあるから、失敗する可能性がある。韓国製の機関車では、フランジと踏面とが同心ではなかった事があるのだ。信じがたい話だが、おそらく太さの足らない丸棒を心の出ていない3爪チャックで掴んでタイヤを挽いたのだろう。そんなものが検査に通っているというのがおかしい。

 旋盤は大小2台持っていると具合が良い。筆者は小さい方をコレット専用機にしている。実は、もう一台欲しいところだ。 

2023年09月28日

続 Lobaugh の Climax

Climmax (2) この機関車の最高速度はせいぜい30 km/h以下である。引張力はそこそこにあるが、出力は引張力と速度との積であるから、モータは小さくても全く問題ない。出力 1 W程度のギヤードモータを搭載していて、音もなくゆっくりと走る。

Climax C この機関車は2台車であるが、F氏は御自分用のは3台車にした。テンダを新造したのだ。



 食い違い傘歯車の噛み合わせが今ひとつだ。心は出ているが、肝心の歯型が、部分的におかしいのだろう。ダイヤモンドの砥石で歯を修正する必要がある。本物の製造工程にも、ヤスリで歯を削っている場面があったことを覚えている。 

 ダイヤモンド・スタック(煙突)の中にはスピーカが入っている。DCCサウンドを出すためだ。 

 動輪とギヤの問題が解決すれば完成であるから、楽しみにしている。 

2023年09月26日

Lobaugh の Climax

Climmax (3) Climaxを持って、F氏が来訪した。未完成だが、静かに走る。この機関車はLobaughが最後に出した機関車キットで、完成したものが走るところを誰も見たことがないという噂の製品であった。博物館で何年も保管していたところ、F氏がぜひ組んでみたいと申し出られたので、お願いした。

Climmax (4) F氏は現在のLobaughの在庫をすべて持っているBob Stevenson氏にコンタクトして、もう一輌買ってしまった。そして2つを並べて作っている。とてもまともには組めないものであるから、ほとんどの部品をスクラッチから作り直し、歯車も一つずつ修正している。駆動方式は全く新しい方式を採用して、横から大歯車が見えなくなっている。
 まだエンジン部分が取り付けてないが、8割方 完成の域にある。

Climmax (2) 動輪の鋳物は良いのだが、偏心していた。またフランジ形状が望ましくなかったが、直すのは難しい。そこで、先日のタイヤを見せると目を輝かせた。カツミの鋳物の輪心、絶縁紙と車軸とをお渡しした。F氏は旋盤工作の達人であるので、全く心ブレの無い動輪を作れるはずだ。


2023年09月24日

絶縁車輪を組む

 輪心に、絶縁紙を巻き付けて貼らねばならない。簡単そうに見えても、これにはかなりの骨(コツ)がある。完全な接着がされていないと、タイヤを押し込んだ時にばらばらになる。また、タイヤの内側には微妙なテーパが付けてある。押し込み始めには全周が嵌まっていなければならないのだ。

 瞬間接着剤で貼る手もあるが、全てを均等に密着させて貼るのは、かなり難しいのではないだろうか。筆者は下記の方法で貼る。

pinching insulator 絶縁紙を細く切るが、厳密に幅を合わせる必要はない。長さは、[所定の寸法+5 mm]に切り、末端を折る。
 そこをつまんだ時に、全体に張力が与えられるような位置を折るのだ。エポキシ接着剤を塗り、巻き付けてつまむ。このまま10分置くとほぼ固まる。そこで、外してつまんだところを切り取る。重ならないように長さを正確に決めて切る。その部分を押さえるようにクランプで締める。この時は、接着剤はまだ完全には固まってはいないので、押し込まれて滑らかにつながる。長さが足らなくなって、わずかの隙間が空いても構わない。
 写真左は輪心表側である。クイル駆動のレリーフを貼るために、凹凸をサンダで削り取ってある。右は裏側である。裏のボスは、祖父江氏の手法であり、張り出している。当然、この車軸はその分短い。この写真でも分かるように、絶縁紙は少し裏側にはみ出している。後で切り落とすから、気にする必要はない。 

 接着剤の硬化後、よく切れるナイフで、はみ出した絶縁紙や接着剤を落とす。全体に軽くヤスリをかけて、押し込み側の角を落としておく
 平らな金床(かなとこ)の上に置き、タイヤをゴムハンマで丹念に叩き、少しずつ沈める。裏が面一(ツライチ)になったら出来上がりである。絶縁紙が少しめくれた所があれば、エポキシ接着剤を爪楊枝で押し込み、固まったら削り取る。この作業の時、踏面、フランジにはヤスリ等を当ててはいけない。

 この作業は両手指がエポキシまみれになるので、あまり好きな作業ではない。横に溶剤スプレイを置いて、紙タオルの小さく切ったものを湿らせて拭き取る。とても手間のかかる作業である。

 プロの手法はその点は大したものだ。おそらく、速度が2桁以上違う。

2023年09月22日

メタルタッチの背骨

metal touch 背骨に連結器座を取り付けるブロックを作り、ハンダ付けした。このブロックは、フライスで背骨に嵌るように削ったものである。フラックスを塗り、押し込んでガス火で炙ればそこにあったハンダで完全にくっつく。

 段を付けるためにフライスで1 mm削り落とし、ネジ穴を用意した。ここに連結器座を介して連結器を取り付ける。実に気持ちよく連結器が収まる。縦に床に落としても平気である。もちろん連結器は壊れるだろうが、背骨、床板は大丈夫だ。

 次は台車を取り付ける部分を角棒から作って、フライスで溝を付け、背骨にはめ込む。ネジで締めれば出来上がりだ。この時、背骨の縦の部材には、一切傷を付けないようにせねばならない。5 mm角の棒は断面積が過剰であるから、ネジ穴をあけても問題ない。

 台車はウィングバネの付いた通称ナポレオン・ハット台車を新造した。バネ座の部分がナポレオンの帽子に似ている。

2023年09月20日

続 17.5 mm車輪の台車群

Athearn trucks これらはAthearn社の Delrin truck群である。デルリンはデュポンの登録商標で、一般名で言うPOM ポリオキシメチレンの中に含まれる。エンジニアリング・プラスティックとして名高い。結晶性であり、長時間力が掛かっていても塑性変形しない。摩擦が少なく、耐久力がある。 すなわち台車の材料としては最適の樹脂の一つである。

 1970年ころにこれらの台車群が発売された。以前はzamak製のダイキャストであったが、同じ型で湯を替えたのだ。他にもAndrews 台車があるが、今回は割愛する。

 3本のコイルバネが見える。台車枠は自由にひねられ、素晴らしい追随性を示す。脱線しないというのは大きな利点だ。compliance 追随性は、このようなコイルバネでなくても実現できる。要するに左右の台車枠が捻り易ければ良いのだ。そういう意味では3Dプリントの台車は一体成型であるが、ボルスタ部分の捻り剛性を少し減らした設計にしてあるので、とても追随性が良い。compliance は、最近は別の範疇でカタカナで使われることが多いが、これは本来の意味である。

 車軸は普通鋼で、RP25車輪は軽いデルリン製であった。筆者は1973年にこれを初めて見て、直ちに購入した。忘れもしない、1組が1.98ドルであった。昼のハンバーガ・セットの価格の1.5倍であった。指で廻してみて、それが軽やかに廻るのには驚いたが、この車輪が金属製であったらと思った。それから10年以上経った1986年、これにはまるステンレス製RP25車輪を1000軸作り、仲間内で頒けた。吉岡氏からは、「RP25は正しい設計とは言えない。もっと良い形状のものを開発すべし」と尻を叩かれたが、この転がりには皆が驚嘆した。
 その後、Low-D の設計が完了し、 この17.5 mmピボット軸だけで2万軸作った。その9割がアメリカに行った。

 この台車は、50年経っても全く性能には変化がなく、たまにボルスタが折れることがあるが、3Dプリントで作ったナイロン製に取り替えれば生き返る。軸受は専用の tuner と呼ばれる工具で深さを調節して、わずかのモリブデン・グリースを付けている。0.2%の坂を下り降りる。 

 この台車の軸長は他の製品に比べてやや短い。すなわち、軸端の距離が短いので、Low-Dをはめるには、上記の工具で軸穴を深くする必要がある。その加工は簡単である。デルリンには快削性があるからだ。 


2023年09月18日

17.5 mm車輪の台車群

 17.5 mm Low-D車輪を作った。インチで言えば、33インチである。これはピヴォット軸で、貨車の車輪として大量の注文がある。いつもはアメリカから一度に数百も注文が来るが、今回はまだ静かだ。先に国内で捌けるだろう。ピヴォット台車の存在を知らない人が多いが、3Dプリントで色々なものを作っている。日本型も製作は可能であろう。

 caboose trucksこれらはカブース用台車である。あまり良い製品がないので、作ったのだ。まだコイルバネが入れてない。
 左から、UPのwood beam を用いたものである。樫の木で骨組を作った台車である。静かだったという話があるが、それは疑わしい。脱線すると壊れたという話もある。
 中はBettendorf 社製の leaf spring 付きの台車で、緩衝力があり、乗り心地が良かったそうである。 
 右はUPの高速台車である。ボルスタ・アンカ がついている。これもコイルバネはまだ入れていない状態だ。コイルバネは形だけのものである。


apssenger truck & freight truck 左は軽量連接客車用の台車だ。1935年にUPの49erの新車輌用に開発されたもので、車輪径は34インチである。カンザス州の工場で作られた。
 
passenger truck ブレーキ装置が斜めに付いていて、これをブラスで作ったら、一体何個のロストワックス鋳物を積み重ねなければならないか、考えただけで疲れる。内部のバネまで再現されていて、素晴らしい。わずかにひねる事ができるので、脱線しにくい。

 ナイロン素材の柔軟性は素晴らしく、バネがなくても極めて優秀な弾性を持つ。走行音は静かだ。


National type B springplankless truck 右はNational B type springplankless truckである。普通の台車にはコイルバネを受ける座板が左右を結んでいるが、それをなくして軽量化したものだ。UPのタンク車にはたくさん採用されていた。

2023年09月16日

center sill

 鉄道玩具の床板を分解し、余分なものをすべて外した。先回作ったcenter sill(背骨)は10 mm角であって、 重過ぎた。
 高さがあれば良いので、5 mm角に、9.5 mm(3/8インチ)x0.8 mm(1/32インチ)の平角棒を左右に貼った。

center sill さすがにこのハンダ付けは、炭素棒では難しい。出来ないことは無いが、連続使用すると電源が焼ける虞れがある。30秒以内の使用に限らねばならない。
 複数のクランプで締め、ガス火で炙る。薄板は温度が上がり易く、膨れ上がるから、クランプを順に緩めながらハンダを流す。全体が温まれば、膨れ上がりは収まる。63%ハンダを使えば、全面ハンダ付けは簡単だ。この状態で質量は 93 g とかなり軽くなった。剛性は十分にある。(写真左は細い背骨だけを示す。右3つは細い背骨を置いてみただけである。まだメタルタッチになっていない。薄い床板にはプレスで膨らみが作られ、照明部品などを差し込むようになっていた。それらを全て切り取らないと背骨が密着しない。)

 背骨の裏をベルトサンダで研磨して平面を出し、鉄板の薄い床板にネジで締め付ける。連結器座の高さまで到達しないので、別部品を作ってハンダ付けし、持ち上げる。それをフライスで正確に削って、連結器座とメタルタッチさせるわけだ。 

 ここで気が付いたのは、荷物車の床板高さは他車の床板高さより 3 mmも低いことだ。すなわち、押出しの型が違うということである。そうするメリットがあるとは思えない。車輌外形は全く同一である。妻板は同じなので、妻板の取り付けには妙なスペイサを挟まねばならない。理解不能だ。  

 その床板が低かったので、ムクの背骨は、まだ細くて済んだわけだ。そうでなければ、13 mm角を使わざるを得ず、諦めて別の方法を採ったであろう。

2023年09月14日

続々 車輪を作る

GG1 Drivers この車輪はGG1の57インチ(1448 mm)動輪だ。  
 Dennisから、早く作れと時々催促があるので、作り始めた。本来は彼から受け取ったロストワックスの輪心と洋白で出来たタイヤを使う筈だったが、あまり気乗りしなかった。すぐに磨り減ってしまいそうだったからだ。それとクイル駆動の輪心が埋もれていて面白くない。この部分は、かなり外に飛び出している。すなわち斜め前方から見ると、その部分の張り出しが見えるのだ。これは1974年に現物を見て確かめてある。

 Φ30のLow-D車輪はかなり前に用意してあったので、それに3Dプリントの輪心をエポキシ接着剤で貼り付けた。なかなか勇ましい。透けて見えないと言う人が居るかも知れないが、実物はほとんど向こう側が透けて見えない。大きなギヤボックスがあるからだ。
 精度が高いので、滑らかに転がる。この動輪はまだ余分があるから希望者にはお譲りする。
 
 タイヤを絶縁紙を挟んで嵌める。プロではないので、時間を掛けても問題ない。短冊に切った絶縁紙を接着剤で巻いて、固まったところで押し込む。タイヤの内側には微妙なテーパが付けてあるのでよく締まる。念の為に、エポキシ接着剤を塗りこんで、拭き取る。

 プロの手法は面白い。絶縁紙(いわゆるファイバー)をかなりふんだんに使っていた。まず、絶縁紙を煮る。柔らかくなるから、それを輪心にかぶせて簡単なプレスで押す。すると浅いカップ状のものが出来る 。それを乾かしてから、輪心に載せて、タイヤを置く。プレス器で押せば自然にタイヤが嵌まる。短冊に切って貼る必要はない。
 こうしておいて、車輪を旋盤にかけてタイヤと輪心の外周が同一平面になるようにする。不要な絶縁紙は同時に切り落とされて同一面になる。また、絶縁紙の切れ目が全く見えないところが素晴らしい。
 ゴミの量は凄まじい。このあとで、めっきをかけるのだ。めっき液は絶縁紙に多少染み込むので、長く水に漬けて洗わないと錆びて来る。60年代の製品には、これが原因の錆が見られることがある。
 ただしこの方法では、絶縁紙の9割以上は捨てられてしまう。昔はこの絶縁紙は安かったのだ。今は貴重品で、売っている店が少ない。 

2023年09月12日

続 車輪を作る

 たまたま3Dの師のS氏がやって来たのでその話題を出すと、「それは諦めるべきだ。ナイロンの成形品を作るべし。」との御宣託で、鋳物の加工をやめることにした。この鋳物は市販品よりはずっとまともなものであったが、しょうがない。

 カツミの市販品の車輪は、1950年代にロクロ屋で家内工業で作っていたのだ。ネジはガラで切った。手で持ってネジを立て、斜めに入れば逆に傾けて切り、最後にまっすぐ通して出来上がりとしていた。このような怪しい作り方なので、ネジがガタガタなのは当然だ。
 
fastebing wheel center 車軸は、ローレットを切ったものを用意してあるので、話は簡単である。問題は3D成形品の表面の粗さである。タイヤがはまりにくいかも知れない。廻しておいてサンドペーパを当てれば良い。その廻す方法を考えた。旋盤を持っていない人でもできるという条件だ。それは銜え代(くわえしろ)を外側に付けておくことである。

 電気ドリルのチャックに銜えて廻すわけだ。表面がきれいになって所定の寸法になっていれば、タイヤに押し込んで出来上がりだ。もし緩むのが心配なら、スーパーXを塗れば固着する。銜え代は切り離すわけだが、よく切れる薄刃のニッパで落とせるようにしておけば良い。もちろん銜え代は輪心の外側である。その部分は見えにくいし、精度が要らない。切ったあとは何らかの方法で削るのは良いだろう。軸のジャーナル部は段付きになっているから、ボールベアリングがはまる位置は、輪心とは無関係に決まる。

 この方法を用いれば、カツミの怪しいスポーク形状とは縁が切れるわけだ。Low-Dのスポーク車輪を欲しがる人が多いので、かなりの需要を満たせる。もちろんOゲージ、OJゲージ用を用意している。バックゲージはOでは29.0 mm、OJでは21.5 mmである。また、タイヤ幅は 4 mm、3.5 mmである。 これらの数字は Low-D を機能させるための数字であって、守らないと脱線する可能性がある。


2023年09月10日

車輪を作る

 Low-Dの再生産をすることが出来た。しばらく枯渇状態であったから、多くの方から注文を受けていた。価格はかなり高くなった。電気代、切削油、金属材料その他の値上がりが大きいので仕方がない。

spoked wheel center 通常の車輪とは別に、今回は一念発起して、スポーク車輪の生産をすることにした。カツミ製の Φ19車輪の輪心を利用して出来ないかというアイデアであった。
 軸穴がΦ3のブラス鋳物(特注品らしい)をかなりの量、手に入れてあった。通常の商品は、M4-P0.75 の怪しいネジ穴があいていた。ガタガタでお話にならない。締め込むと奥に当たってまっすぐにはなるが、ネジのガタが大きく、心が出ない。走らせると車体がわずかに上下する。台車を組んで、ゆるい斜面を転がすと明らかに速度が変化する。こんなものは駄目である。

truing old wheel ネジの切ってないこの車輪は心が出ているので、これを使えないかと工夫した。Φ19のコレットに軽く銜え、竹べら法で平面を出し、締め付ける。このとき、穴にまっすぐなΦ3のシャフトを挿しておくと、フレがよく分かる。フランジ面を0.25 mm削り、この面を基準面とする。軸穴は振れていない。裏返してネジを突き出させたヤトイに締める。トルクを与えるためにピンを一本打つ。表を0.25mm削り、外周を所定の寸法(タイヤの内法)に削り落とす。絶縁を入れるときは、その分を余分に削る。

 かなりの手間である。4枚やっただけでアゴが出てしまった。こんなことはやっていられない。

2023年09月08日

続 既製品の客車を手直しする

reinforced Daylight floor ブラスの角棒を所定の長さに切った。連結器座の深さ分をフライスで削って差し込み、ネジを立てて留めた。すなわち、前後2つの連結器座が完全につながる。これで、垂直に床に落としても生き残るだろう。

 背骨だけで350 gもあるから、断面がチャンネル状になるように切り込むことも考えた。それをやると反るだろう。

 全体で1 kg強だ。ピヴォット軸を採用した3Dによるナイロン台車の許容軸重を2倍以上、上廻る。ボールベアリングを使わねばならない。
 この編成の車輌だけが全金属製で元々重かったこともある。他の車両は側板と妻だけがブラス製で、残りは木製なのだ。450 g程度であるから、ピヴォット軸受の許容値である。 

 この客車は、5輌セットの3線式であった。例によって大きなカプラがついていたが、つないだ瞬間に壊れてしまいそうだった。鉄道玩具であるから、扱いが模型よりはるかに荒いはずだが、何の手立ても施されていない。 

2023年09月06日

既製品の客車を手直しする

stupid coupler base この連結器座を見て戴きたい。
 アメリカのティンプレート(三線式鉄道玩具)の会社がK国の某メーカに作らせた製品を、2線式スケールモデルとして少数売ったものである。形は良いが、元々は鉄道玩具なので、期待は出来なかった。購入して初めて連結した瞬間に、妙な感触があった。連結器座が奥行きの無い形で、しかも床板が薄いので、ぐにゃりと曲がった。先に床板が逝ってしまったのだ。この写真は壊れていない例を示している。

durable coupler base 薄い床板を補強しても、連結器が浮いているようでは意味がない。ここはやはり全長を貫く堅い背骨を入れるべきである。ちょうど良い太さのブラスの角棒があったので、座の厚み分をフライスで削り、メタル・タッチにした。連結器を留めるネジが貫通して締まる。

 背骨の質量は350 gもあったので、客車車体の質量は1 kgとなった。この車体はアルミニウム合金の extrusion (押出し) の断面が一体になっているもので、比較的軽いが、他の車輌より重い。

2023年09月04日

新しい歯車の入荷

gold coins 歯車屋から新しいギヤが納品された。今回の発注は、このHO用新型歯車(薄型)と、新設計のOゲージ蒸気機関車用の歯車である。

new gears Oゲージ用の歯車の写真を示す。左側が新規の蒸機用で、右側は今までのディーゼル電機用である。右は手元にあったものを、きっちり詰めるようにしただけで、他意はない。


 非常に美しい仕上がりで、金貨のようである。価格も金貨とは行かないが、銀貨よりは高い。歯の仕上がり面の美しさはなんとも言えない。普通の模型用の歯車より、2桁ほど精度が高い。
 このような出荷用のケースがあり、そこに詰めて渡してくれる。袋にドサッと入れるようでは傷だらけになる。歯型に影響が出てはいけないのだ。精密機械の部品であることをご承知願いたい。

 40インチ動輪のディーゼル電気機関車用はギヤ比が 3:23 である。蒸気機関車は動輪の径が2倍ほど大きいから、蒸機用は 3:32 とした。速度の点では前者でも特に問題はなかったが、牽引力の点では不満があった。テストで重列車を牽かせるとモータが焼けそうであった。軸重を減らせば問題ないのであるが、それでは重列車が牽けなくなる。
 今までは2段減速であったが、ギヤボックスが見えにくい1段にした。そのギヤボックスを制作中である。

 新しいOゲージ蒸機用は、新設計のトルクチューブ付きにする。台枠への取付けは非常に簡単であって、反トルクは完全に抑え込め、なおかつ走行は滑らかになる。 

2023年09月02日

続 摩擦の少なさ

 軸受は大きなファクタであるが、もっと大きな損失を作るものがフランジ形状だということを話した。模型の曲線は実物より遥かに急なので、フランジが当たると損失が大きい。だから、フランジが当たりにくい形状にし、フィレット部分を大きなRとして、微妙な乗り上がりで行路差を取り戻すことを簡単に説明した。

 これは非常に説明しにくいことなので、最後尾のカブースを切り離し、坂の頂上から転がした。ゆっくり転がり始めたが、直線部分になると、極めて速くなった。そのまま曲線に入ると微妙に減速し、貨物列車の最後尾に絶妙な速度で連結された。
 これは非常に良いデモンストレイションであったようで、曲線での抵抗の存在を知らせることが出来た。

 もしこれが普通のフランジであったら、曲線上では半分も滑っていかないという例を見せたかったが、その様な車輪は処分したので出来なかった。ただ、K国製の車輪とLow-Dとは比較して見せた。
 左右の車輪径の差が 1/100 mm以下であるという点には驚いたようだ。
「並の工業製品のレヴェルではないね。」ということだった。

 この博物館は模型の博物館ではなく、物理の応用例を示す博物館と標榜したほうが良いと言う者が居た。
「これを見て、力学を考える糧とすべきだ。見ても何も感じない人は
その道を諦めたほうが良い。」と言う。
「評判は良いだろ?」と聞かれたので、
「いや、中にはフランジ形状について、今だに否定する論陣を張っている人も居るんだ。」と答えると、
「見に来れば良いのに。」と言う。
「実は見に来たんだけどね・・・」

 全員が、救いがたいという顔をした。 

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