2023年05月

2023年05月31日

洗濯乾燥機

Maytag stackable washer-drierxraytech++5-6-2012-16-49-44 Maytagという家電メーカがある。少々高いが、とにかく壊れない製品を作る会社だった。戦後すぐの洗濯機でも、50年経っても問題なく作動した。友人宅の洗濯機は例外なくMaytagであった。これらの写真はここから引用した。現状は3つに分解した状態であるので、後日掲出する。

 有名なTVコマーシャルがあった。なんという俳優かわからないが、朝8時に工具入れのカバンを持って出社してきて、椅子に座って修理依頼の電話を待つ。時計の針はくるくると廻って、5時になる。「あーあ、今日も仕事がなかった。」と言って帰るのである。これを20年ほど流していた。決して誇張ではないという評判だった。

 壊れないのは本当で、ボールベアリングの大きさが他社の2倍もある。塗装ではなく厚い鉄板に琺瑯(ほうろう)が掛けてある。錆びない。ネジの太さは他社の1.5倍もある。筆者の現在の家にも設置して30年経つが、一回も不具合を起こしていない。

 この写真を見て、Mil-spec washer だと言った人が居る。その通りで、アメリカの軍艦の居住区にはこれがずらりと並んでいる。もちろんその乾燥機は電熱仕様だ。重いが、とにかく壊れないのが取り柄だ。1回に12 kg近く洗える。乾燥機が別なので、連続して使用できる。電熱仕様の乾燥機の出力は4.8 kWもあるので、深夜電力しか使えない。その深夜電力が最近は高くなり、困っている。

 改装中のマンションにも設置してあったが、大きすぎて風呂に入る時に邪魔なことと、音が大き過ぎるので、外して処分することになったが、完動品なので捨てるには忍びない。活用してくれる人が現れたので、引き取られて活躍することになった。
 仕様はAC120 V、60 Hz、電源の昇圧トランスは1.5 kVAが必要だ。その乾燥機はLPガス仕様で直径 4インチ(約10 cm)の排気ダクトが必要である。質量は 110 kg(洗濯機65 kg、乾燥機と脚45 kg)だ。冷水と温水の供給が必要。専用ホースに適合する蛇口は専用のサイズである。
 
 ガスの種類は、天然ガス用のオリフィスを買えば変更が可能だが、アメリカから取り寄せる必要がある。それは今でも売っているはずだ。

 メイタグの製品は、もうすでにアメリカ国内製の物が少なくなり、信頼性はやや劣るようになったと言う人も居る。それを考えるとこの製品は本物であって、信頼性は抜群である。

2023年05月29日

プロの大工

 アメリカで、汽車の友達に大工の棟梁がいた。週に1回現場に行って手伝わせてもらった。仕事を覚えるためで、もちろん無給である。保険は自分で入った。ケガもなく、ある程度のことは覚えられたので、いつか自分で家を建ててみたいと思った。

 ある時、その友人に質問をぶつけた。
「プロの大工とアマチュアとは何が異なるのだろう。」
 友人は笑って答えた。
「単純なことさ。プロはプロの道具を持っている。プロの道具を持てば、お前だって家を建てられるさ。」
「いや、僕は1年しか、しかも週1日しか手伝ってないよ。」
「十分だ。お前はなかなか優秀だ。道具さえ持っていれば大工で稼げるぜ。」

 そんなバカな、とは思ったが、そのプロの道具のリストを作ってもらった。20品目くらいで、総額6000ドルくらいだった。いつの日か、全部揃えようと決意した。銘柄はマキタ、日立、Milwaukeeが多かった。また、日本のあるメーカのものは、買うべきでないと釘を差された。

 その4年後、その時がやって来た。ボストンから住宅のキットを輸入することになった。ある程度は買い揃えていたが、足らない分を一挙に買った。一人ではできないので、4人の大工を雇った。ほとんど手ぶらで来て、こちらで揃えた道具を使ってもらった。
 彼らを雇うときは苦労した。大工の棟梁を何人か呼んで面接し、麻薬をやってないかを問い質した。
「日本では、マリファナでさえも持っているだけで捕まる。3年は帰れないだろうな。」と言うと、次回の面接には誰も来なかった。仕方がないので、ある宗派のキリスト教徒で、酒もタバコもやらない人を紹介してもらえたので、雇うことになった。

 そのプロの道具とは、直角を含む所定の角度に正確に切ることのできる丸鋸、いわゆる丸鋸盤、60 mmの板を縦割りすることのできる強力丸鋸、ここまではいずれも、1.5馬力以上の出力があるものだ。刃渡り200 mmくらいのレシプロ・ソウ、手持ちのジグソウ、ラウタ盤、強力なベルトサンダ2種、大小様々なクランプ20本くらい、電気ドリル3種、インパクト・レンチ、釘打機3種などが主なもので、その他は小物であった。不思議なのはカンナとかノミが無いことだ。彼らはそういうものはほとんど使わない。一度ノミを準備する場面に遭遇して、絶句した。ベルトサンダで刃先を”削って”いた。研いでいるとは言えない。それで叩き切る、という感じである。

 これらの道具で、自宅の内装はほとんど一人で仕上げることができ、投資額の数倍を稼ぎ出したことになる。また、その後の色々な場面で役に立っている。

2023年05月27日

walk-around layout

 32年前に取り壊したレイアウトの解説を希望されているが、写真が見当たらない。引越し時にどこかに紛れてしまったようだ。

walk around sectional layout 記憶をたどるとこういうことになる。右端の戸棚は自作で、350 mm高、1800 mm幅の扉が手前に倒れて、平面になる。それには、さらに左へ展開できる路盤があって広げていたが、キッチンカウンタの高さが少し上がったので、一部を切り落とさねばならなかった。というのは蝶番で線路が畳まれて、重ねて戸棚の中に収納されていたからだ。蝶番の高さが上がれば、跳ね上げられた部分は天井に当たるのは当然だった。
 その延長は3つのセクションに分かれ、軽く作ったが、ポリ塩化ビニルの路床で音が軽減された。あちこちに下駄を履かせ、高さを整えた。下駄には番号を振り、組立の時間を節約した。

 転車台は簡便な作りで手動である。径は570 mmで、大きな機関車は載らないが十分楽しめた。この動きを楽しむには、高さが大きなファクタであることがよく分かった。 

 赤の矢印は、SWAC のジャック位置である。引抜いて次のところに挿せば、問題なく制御できる。これは魚田氏が大変気に入った。
 後に、右下の方へと仮設の線路を延長して、緩和曲線のデータを取ったが、それは短期間だ。 

LDK2LDK 図だけでは分かりにくいので写真を添えるが、低い戸棚は全く別のものが置いてある。これは貸す直前の状態で、エアコン、ガスヒータ、ガス台、食洗機、壁紙などは当時のものである。 

2023年05月25日

spline joint

 床材を張る部屋が一つしか無い時は良いが、廊下の左右両方に部屋があって、連続的に床を張らねばならない時はどうするかが問題になる。 
spline joint こういう時は廊下の一方の壁に沿って最初の1本を打ち付ける。それは完全な直線上になければならないので、糸を張って確認する。廊下全体を張ったら、各部屋の入り口を連続して張る。部屋の中まで同じ調子でできるだろう。しかし反対側の部屋をどうするかだ。床材のその方向には、tongue(飛び出している部分)が無い。

making a spline 床板の切れ端から、溝にやや固めに入る細い材料 spline を切り出し、紙ヤスリで研いで押し込める程度の厚さにする。 強力な接着剤を塗って押し込む。このスプラインは、長さは30 cmくらいにすると失敗がない。一本ものである必要はないので、何本かに分けて嵌め込むと良い。筆者はこのスプラインを作るのが得意で、Ben が褒めてくれた。 普通の人にはできないのだそうだ。
 こうするとどちらにも凸部がある部材ができるので、そこから反対方向に張り始める。この部材には、最初に両方向から釘を打っておく。そうしないと反対側に打った時にずれるおそれがある。

 この種のテクニックは友人の大工から学んだのと、本を読んだことから得た。400ページくらいの本で、それを読むと体力と機械があれば家を建てられる。日本の大工の腕とは異なる次元のテクニックなのだ。最近は日本の大工も機械を使うようになったので、それにやや近付いていると感じている。 

spline splineは自分で作るものと思っていたが、調べると市販されている。1.2 mの長さで3.5ドルだそうだ。自信のない人には、ありがたいだろう。 問い合わせたところ、30 m分で160ドルというのもあった。この材料は堅木でなければならない。

 数学を勉強された方はスプライン曲線という概念をご存知だろう。有限個の点を通るなめらかな曲線を作る工夫だ。この図では三次スプライン曲線になるが、曲がり方が大きいので、多少ずれる。 
 spli〜で始まる言葉は、ほとんどが木を細く裂いたものに関係がある。splint は骨折の治療に用いる副木(そえぎ)である。ギプスが実用化されるまではこれしかなかった。  

2023年05月23日

floor plank

 思わぬ反響があって驚いている。オークの床にご興味がある方が意外に多い(正確な発音はオウクである)。

FLOOR PLANK  筆者が使用する床材 (plank)はこの寸法だ。プランクというのは厚めの板材を意味する言葉だ。海賊に襲われて海に落とされる時に歩く板がプランクである。床用のプランクはこのような断面を持っている。tongue and groove(凹凸がついている)であるから嵌まり込んで外れなくなる。この嵌合は絶妙な硬さになっていて、押し込まれると取れない程度になっている。

 斜めに釘を打ち込む前に、ハンマの尖った方で軽くコンコンと板の飛び出している部分を叩いて、凹凸をしっかり食い込ませる。そして釘を打つのだ。斜めに力がかかるので、かなりの勢いでピッタリと押し付けられるわけだ。

 最初の一枚は壁際で垂直に打たざるを得ない。接着剤を塗って動かないようにする。その時の釘はドリルで孔をあけておいて沈める。その頭はトリム材(壁の裾に張るボロ隠し材)で隠れるような位置に打つ。接着剤が固まってから床張りを始める。隠せない時は上から木栓を打って隠す。
 時々、壁からの距離を測定して、壁と平行に打たれているかを確認する。最後はテコでこじて寄せ、最初と同様に垂直に打つ。

 貼り終わったら、サンドペーパをかける。最初は40番、次は80番、仕上げは120番である。全体に1 mm程度削ることになる。これは手ではとてもできない。強力なベルトサンダを使う。かなりの電力量を消費する。18畳程度の部屋で、4 kWh程度である。体育館などでは大型の乳母車のような機械を持ってくる。3 kWほどの出力を持ち、削りカスが山になる。ベルトも10分程度しか持たない。昔は鉋(カンナ)を掛けていたのだ。


2023年05月21日

Powernailer

Power Nailer 意外なことに、床についての問い合わせがたくさん来た。釘打機の写真を見たいとのことで、自宅の地下室から発掘してきた。30年ぶりに取り出したが、傷んでは居なかった。


 タイルの大きさが 30 cm角であるから、大きさの見当は付くであろう。 ハンマは900 gである。かなり重い。ゴムの付いている方で、叩き込む。反対側の尖っている部分は、床材を叩いて密着させる時に使う。自宅を建てる時に雇った大工のBenは 2 mの大男で、一発で叩き込んだが、普通の人は2回叩かないと入らない。叩く力が強過ぎると、その部分の板が強く寄せられてまっすぐにならない。Ben が絶妙の力で一回で打ったのには感心した。

floor nails 左に飛び出している銀色部分に釘を入れる。釘は接着剤で固めてあり、この写真の4倍くらいの量を収容する。オークは極めて硬く、普通の釘を手で打つことはできない。釘が折れ曲がる。このL字の釘は厚さ1/16インチ(1.6 mm)の鋼板を打ち抜いたもので、加工硬化して極めて硬い。打ち込まれて先端が入ると、その後は鋸状のギザギザがあって、オークを粉砕しながら貫通する。そして最後のL字の頭が喰い込んで止まる。このあたりの設計は巧妙で、実にうまく留まる。と同時に床材は相手に固く喰い付いて、隙間は出来ない。

 この床材を日本で購入して使う人がたまに居るようだ。ウェブ上でその結果を披露している人も居るが、大抵は隙間が空いて埃が溜まってしまうと不満をこぼしている。それは本質を理解しないで、うわべだけを真似したからだろう。

 床材は入荷してすぐに釘を打ってはいけない。一年中でもっとも乾いた時期に打ち付けるのだ。そんなに待っては居られない場合は、エアコンを利用する。床材の封を切り、床一面にばらまいて、エアコンで除湿する。2週間乾かして張るのだ。そうすれば、隙間は空かない。そういうことは床材の説明書にちゃんと書いてある。それを無視して、「隙間が空いた」という不満を書くのはいかがなものか。急いで作りたい人は、化粧合板の床材を使うべきだろう。

 大工仕事は経験上の裏付けがあって確立されている。素人の浅い知識だけではできないこともあることを知るべきだ。 

2023年05月19日

床用塗料

tough enough to skate on 床には極めて硬い塗料を数回塗っては研いだ。体育館床用塗料で、缶の表面には、”tough enough to skate on"と写真入りで書いてある。体育館の床塗装用であって、全く隙間のない床ができる。


liquid plastic この種の床板は、日本の家屋ではまず見かけない。現在の家の床にも、全面にこの床板を張った。下地は19 mmの合板だ。専用の釘打機も持っている。太くて長い釘(51 mm)を、斜めに一発で打てる。その釘の頭はL字になっていて、保持力が大きい。靴履きで暮らしてはいないので、床は30年経っても新品同様だ。
 この Liquid Plastic は、塗り重ねることにより、硬いプラスティックの層ができる。厚さが0.6 mm程度になるまで塗った。かなり高価な塗料で、30年前の価格で1ガロン(4 L弱)が30ドルもした。

 この種の塗料は日本でも手に入る。これを模型製作にも使っている。木製キットの下塗りとして使うのだ。

 軟らかいバスウッドでできた車体を、これに漬ける。大物は少し薄めた液を刷毛でジャバジャバと沁み込ませる。吊り下げて乾かすとカリカリになる。それを細かいサンドぺーパで削って、つるつるにする。そのうえでサーフェサを塗って研ぐと、金属製と見間違えるほどになる。

 この方法をアメリカの友人に教えたら、たちまち拡がって、今ではごく普通に使われるようになったようだ。 

2023年05月17日

改装工事

 キッチンのカウンタ・トップは36インチ(915 mm)であり、そこに下駄を履かせた路盤を置き、高さ1 mの線路を作った。これは1978年ころから作ってあったが、改装前の高さは850 mmであった。少しでも持ち上げると見やすくて具合が良いことがわかった。
 
 ポイントを5つと小さな転車台を設置して、機関車の入換ができるようにした。長さ 7 mほどで、なかお・ゆたか氏製作の機関庫界隈の拡大版のようなものであった。最終的には少し曲線を作って10 m強の長さにしたが、マンション住まいではそれが限界であった。神戸の魚田真一郎氏がたびたび来訪して、高効率ギヤの運転を堪能していた。しばらくすると魚田氏は同じような線路(13 m長)を作って、楽しむようになった。そのポイントは、筆者が作った。
 発車後手元のスロットルのプラグを抜き取っても、電源がその電圧を保持するので走って行き、先方で差し込むとそのままコントロールが出来た。これらは日本初のウォーク・アラウンド方式であったことは間違いない。

 その4年後、現在の家の地下室にレイアウトを作ったが、設計する時のポイントの条件、緩和曲線などの基本的なデータはここで得た。それが32年前である。

new window sash and oak floor 国が補助金を出しているので、窓は断熱ガラスの窓枠に取り替えた。例の二酸化炭素による気温上昇の話だ。  
 断熱性の向上により、化石燃料の使用量を減らす事ができるので、外国に流れていく金を減らして内需に向けるわけだ。怪しい話に乗せられて、多額の国富を流出させている。一番得をしている国はロシアなのだが、誰もそれを言わないのは理解しがたい。要するに国土が狭くて人口が多く、工業が発展している国は二酸化炭素排出権を買わねばならないのだ。
 価値のないものを買うということを少しでも減らすために補助金を出したらしいが、根本的解決ではない。
 1億7000万年前、地球上の二酸化炭素は今の2倍以上あったことが確かめられている。その時の気温は今より7度も低かったのだ。さてこれをどう説明するのか。
 太陽の活動は一定ではないから、その影響としか考えられないのだ。地球人にとっては自らの活動で改善できることではない。おそらくあと数年で小氷河期がやってくるだろうが、二酸化炭素をばらまいても効果はない。

 新しいサッシは素晴らしい遮音性能があるので、国道からの騒音がなくなり、住みやすくなる。エアコンを最新型にしたら、とてもよく効くようになり、電気代を節約できる。

 傷んだ床の一部は削って研ぎ直し、再度塗り直した。3/4インチ(19 mm)の厚さがあるので、1 mmほど削ってもなんら問題ない。

2023年05月15日

近頃あれこれ

 勘の鋭い人が居るものだ。電話を掛けてきて、こう言った。
「最近、車輌工作をしてないんじゃないのか。」

 これには参った。その通りなのである。筆者は、何かで忙しくてもそういうことを文面に出すのは避けたい。ブログは、工作とは直接関係ない話題でつないでいたのだが、バレてしまった。経緯を話すと、そのほうが面白いから書けということになった。

 正直に言うと3月から、この2ヶ月ほど、原寸大のストラクチュアの工作をしている。昔住んでいたマンションを修理しているのだ。長く貸してあった人が退去したのだが、廃墟のようになってしまっていた。長く病気であったようで、全くメンテナンスがしてなかった。天井は落ち、壁紙は剥がれ、電気系統のトラブルがあったので、全て一新した。外注するととんでもない金額だそうだが、自分でやると数分の一でできる。 

 このマンションは和室もある普通の間取りであったが、30数年前、アメリカから帰る時、内装材料、家具、電気器具を送り、完全にアメリカ仕様に改装した。間仕切りを取り払い、LDKを18畳にした。当時はアメリカの経済が最低で、ドルが安く、厚いオークの床板、家具を廉価で買えた。一部を120 Vにして、大型家電はアメリカ製であった。キッチン家具は、友人の家具職人に作ってもらった柾目オーク製のかなり重厚なものである。それは汚れを落としただけで元に戻った。厚さが21 mmもあるムクの扉は、日本ではまず見かけない。 

 帰国して半年間は時間の余裕があったので、その間に改装工事を自力でやった。アメリカの大工の友人のところで修行させてもらった時に、彼が指定した電動工具を、ある程度買い揃えていた。そのおかげで訳なく出来た。壁紙もアメリカの仕様で貼った。

leaking 何年か前の台風で上階が浸水し、その水が天井に入って一部が剥がれ落ちた。また床の塗料も部分的に浮き上がっていた。そのときにすぐ言えば保険で賄えたのに、借り主が入院していたようで、そのチャンスを逃したのだ。 


2023年05月13日

重い機関車

 伊藤氏の機関車のボディ・シェルは、EA, EBとも1.3 kgであった。確かに重い。

 CLWの PA-1は1.3 kg、PB-1は1.2 kgであった。どちらも砲金鋳物の妻板とボンネットがついているが、床板が無い。骨組みだけである。
 EMDのE7A、Bはどちらも1.2 kgであった。これは CLW の製品であるから、同じような理由だ。これらは、衝突には強いはずだ。砲金の前頭部は厚さが 4 mmほどもあり、そう簡単には壊れない。ハンダ付けは難しい。組立て説明書には、接合面を滑らかにヤスって、クランプで締める。フラックスを塗ってガスバーナで加熱して、糸ハンダを押し当てる、とある。その時、鋳物を加熱せよと書いてある。板を加熱すると変形するだろう。

 KTM製のErie-builtは不思議なことに1.1 kgもあった。これは床板付きの質量だ。当時は板厚をあまりうるさく言わなかったのだろう。輸出用のものは材料をふんだんに使ったのだ。

 駆動装置はそれぞれ 1 kg程度であるから、軸重は0.4 kgwほどで不合理ではない。本物は3軸台車の中央の1軸を遊輪としているが、当鉄道の方針として、車体中央に近い軸を遊輪とし、残りを駆動軸としている。この方式では曲線上の挙動が、はるかに良くなる。

 UPの黄色の旅客列車が、2編成できる予定である。1編成当たり、20 kgを超えるだろう。全軸ボールベアリング装荷である。これらには慣性増大装置は要らないはずだ。下り坂では、何らかのブレーキが必要になるだろう。 

2023年05月11日

Erie-built

Erie built 先日の写真の左端は何か、という問い合わせを複数戴いている。
 これはいわゆるErie-built である。Fairbanks MorseがGEのErie工場で作らせた一群である。
 模型としては Max Gray がKTMに作らせている。これは以前説明した祖父江氏のギヤボックスを備え、上廻りは稲見武夫氏が作ったようだ。模型としての評価は高くない。時々、ポロっと中古市場で出るが、価格は安い。筆者はABBAの4輌を持っている。

 残念なことに本物とは似ていない。それもあって価格が安いのであろう。一部のUP以外は運転室の窓が大きい。この写真の右は最近出たAtlas社のプラスティック製である。何が違うのかはもうお分かりだろうが、屋根の深さが異なる。
 左はUPの上下が平行の狭い窓を作っているのだが、後ろの断面が違っているから、辻褄が合わなくなる事がわかり、この10年頓挫している。屋根板を、より深く作り変える予定である。屋根を二重にすることにしたのだ。

ALCO PA1 PB1 FM Erie-built その他、側面もいくつかおかしな所があり、改造せねばならない。時期的には伊藤氏の作品と同じ頃なのだが、出来が全く異なるのは困ったものだ。  

2023年05月09日

続 伊藤英男氏のハンダ付け

 この写真を伊藤英夫氏のディーゼル電気機関車ご覧戴きたい。屋根は側板の上から 1/3 と一体である。曲げる時に万力の幅を超えない程度の長さにしているのだ。それをネジで接合している。
 床板を留めるL字の部品もネジ留めしてから、ハンダ付けしてある。もちろんネジの先は削り落としてある。ドアなども全てハンダ付けの前にネジで締めてある。
 これが伊藤氏のやり方だ。頑丈であることは比類ない。

伊藤英夫氏のディーゼル電気機関車前頭部 前頭部の接合部を再度見ていこう。t1.0の板を叩き出して丸みを付け、それを側板と組合わせている。この接合なら、正面衝突しても生き残る可能性が高い。衝突相手も同程度の剛性を持っていれば、スカートは交換せねばならないだろうが、上廻りは無傷だろう。
 当然のことながら、接続はネジを介している。こういうところにこだわるのは、頑丈さを求めているからである。この1輌に使われたネジは120 本 ほどである。

2023年05月07日

伊藤英夫氏のハンダ付け

伊藤英夫氏のハンダ付け これは前頭部を裏から見た写真だ。パイロットの裏はこのように付いている。ハンダが滑らかに流してある。このハンダの色は50 : 50のハンダだ。融点は高いから、よほど強く加熱しないとこのような仕上がりは望めない。大きなコテでじっくり加熱したのだ。当然のことながら、その間に動かないようにしなければならないので、ネジで留めてから加熱している。

 パイロットは t 1.5の板である。裏を欠き取って曲げてから、外側を削って鼻筋を出してあるところが上手い。これはなかなかできない方法である。

 右の屋根を見ると、ところどころに僅かにネジの跡が見える。それはハンダ付けの前にネジを締めているからだ。ハンダが十分に流れたあとでネジの先を削り落としている。
 この種のハンダがたっぷり付けてある作品を見て、ヘタクソだなどと言う人が居るが、無知の極みである。

伊藤英夫氏のEA, EB これは床板の仕上がりである。側面に当たる部分は6 mm角を貼り付けてあるが、これもネジで留めてからハンダ付けしてある。前頭部の丸みは 6 mmの板を丸く切り抜き、貼り付けてある。伊藤氏は角材を曲げることを嫌った。内側が太くなり、外が薄くなるからだ。
 筆者は角材に切れ目を入れて曲げ、盛り上がり部を削った。  

2023年05月05日

伊藤英夫氏の作品

EMC EA,EB EMD E7A,B 上の A,B が今回の機関車である。下は対比のために置いたCLWの E7 である。大きさは正確だ。キャブ上の流線型のフィンはホーンを囲む形で付けてある。これを見る限りは、伊藤氏はB&Oの写真を見たことは間違いない。

 伊藤英夫氏は数年前に亡くなった。それを知らずに筆者の博物館のレイアウト開通を知らせる手紙とDVDを送ったが、宛先不明で戻ってきてしまった。
 半年後にお宅のあったところを訪ねると、すでに更地となり、現在は高層分譲住宅になっている。

 友人らからの情報によると、たくさんあった模型は、タダ同然で買い受けられ、売り飛ばされてしまったそうだ。30分の1,35 mmゲージの秀作は、Oゲージでもなく、Gゲージでもないので、規格不明品として安値で売られてしまったと言う。彼は客車の台車だけ買ったそうだ。自称"経験ある中古業者"というのも、この程度の人達なのだ。 
 今回のディーゼル電気機関車はその中にあったのだろう。よくぞ無事で、筆者のところに辿り着いたものだと、感激している。 

2023年05月03日

続々々 思わぬ到来品

roof construction これは伊藤氏の作品であった。名前が書いてあるわけではないが、間違いなく伊藤氏である。この写真をご覧になると分かるだろう。

 床板を外した瞬間で、埃が積もっているのはご容赦願いたい。屋根板は長いものを一気に曲げたのではなく、短いものを順次つないでいる。大きな機械を使わず、確実な仕事をする工夫である。ハンダ付けした後、丁寧にヤスリを掛けて曲率を合わせている。このあたりは名人芸である。

 板厚はすべて1 mmである。ハンダはきわめてよく廻っている。その技量も大したものである。現在では、炭素棒を使えばこれぐらいのことは出来るが、コテでやろうとするとかなり難しい。大きな船の模型を作る手法だ。 

2023年05月01日

続々 思わぬ到来品

EMC EA,EB  EMD E7A,B この機関車が誰によって作られたものかは不明であった。明らかに祖父江氏ではない。ハンダ付けの手法が異なる。稲見氏でもない。板が厚いし、床をネジ留めする手法が全く異なる。しかもネジ頭が沈ませてある。また、パイオニアのような怪しい作りでもない。

 とにかく重い。下の2つはアメリカのCLW製である。それらに優らず劣らず重い。側板が1 mmの板であった。床板も1 mm厚で、それに6 mm角の角棒が縁取りとして付いている。

 たくさんのネジを外して内部を見て驚いた。ハンダ付けの手法、ネジの使い方、厚板を組合わせてネジ留めし、ハンダを廻してからネジを削り取る手法は、見覚えがあった。 

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