2023年01月

2023年01月31日

続 モータ軸からピニオンを外す

removing projection welding A氏が持ち帰って、すぐ連絡があった。
「モータを回転させながら、回転砥石で擦ったら、すぐ取れたよ。」


 さすがである。歯車の軸方向の先端にはわずかに突出した部分があり、その部分を抵抗熔接(projection welding)してあるのだ。接着より確実で早い方法であろう。熔接された部分さえ無くなれば、何の抵抗もなく抜けるわけだ。
done! 今までの苦労は何だったのだろうと思えるほど、エレガントな解法であった。

 軸先端は微妙に細くなる可能性はあるが、問題ない。筆者はこの種のギヤ付きモータを多数持っているのだが、外すのが面倒であまり使っていなかった。そのモータの大きさも出力も適当であるので、大いに利用したい。  

2023年01月29日

モータ軸からピニオンを外す

 A氏が来訪したときに、いくつかコアレスモータを進呈した。それらはテキサスのジャンク屋で買ったもので、軍用の取り外し品である。10年以上前に買ったものだ。おそらく、ミサイル等の操舵部品として装着されていたものが、定時交換されてジャンクとなり、放出されたと思われる。ほとんど新品同様なのだが、たまには動かないものもある。 
 ウクライナで多量のミサイルが発射されたので、しばらくは供給がなくなるだろう。 

projection welding さて、いくつかの軸にはピニオンがついている。これを外すのはなかなか大変であった。今までは万力に銜えて糸鋸で軸と平行に切り、それをニ回やると外れた。切る方向は直角にすると切る量が減るが、やはり大変な仕事で面倒である。

 A氏は、
「これはプロジェクション熔接の可能性が高い。」
と言う。もの作りの現場に居た方だから、広汎な知識をお持ちだ。

2023年01月27日

続 track in track

 HOの線路のフィーダ(饋電線)は、1 mごとに確実に付けるつもりだ。横には巻尺を貼り付ける。サンプリング速度が大きければ、レーザ測距計でも良い。

 ここまで書けば、何をしようとしているかはわかる人は多いだろう。

 測定というものは定常状態で行うものである。さて、何の測定をするのであろうか。
 その測定に必要なものは、
巻尺
時計 (あるいは動画を撮って、毎秒のコマ数 fps を調べる)
の2つである。
 別にOゲージでなくても構わないが、より大きなものの方が、相対的に摩擦は小さく、誤差は小さくなるから、二重に敷いたわけだ。
 何が定常状態になるのだろう。 

2023年01月25日

続 新年会

DE50 (3)DE50 (1) DE50を見たことがある人は少ないはずだ。筆者は中央線、関西線での試運転を見るチャンスがあった。エンジンの音がDD51とは全く異なったのを覚えている。ほとんど使われないまま、お蔵入りになったのは残念だ。

DE50 (2) この模型では、エンジンルームのドアが全て開く。ドアハンドルは内側に錘が付いていて、閉じた状態で安定化する。いつぞやのHOモデルとはさすがに違う。


DD54 (2)DE50(4)DE50(5) 3軸台車は実物のように3軸は独立していて操舵する。リンクは全て実物どおり作動し、バネの横剛性で復元する。急曲線を通るときの挙動が本物と同じで、見ているだけで楽しい。中に巨大なフライホィールが見える。慣性増大装置付きなのである。 

2023年01月23日

新年会

NMRC 所属クラブの新年会があり、新入会員のA氏のデモ運転があった。おそらく誰も見たことのない種類の運転を披露して戴いた。


 45mmゲージでスクラッチ・ビルドされた国鉄のディーゼル機関車2輌が、自律して複線をランダムに往復している。たまたま線路が空いた状態であると、ポイントが切り替わり、渡り線を通る。素晴らしい音響効果があると同時に霧化装置からの煙も出る。動きも重々しい。機械にも電気にも強い方なので、今後が楽しみだ。

DD54 (1) DD54である。実物は整備に関する問題が解決せず、短命に終わったが、造形はとても良かったと思う。この模型は素晴らしい牽引力を持ち、本物のように惰行する。メカニズムは極めてよく出来ている。 

 今までにこの会では、素晴らしい仕上がりの作品をいくつか拝見してきたが、外見だけではなく、中身に注力した模型はあまり見ることがなかった。そういう点でも、会員の気持ちがそちらに向くことになれば、このように中身がある模型が発表されるきっかけとなろう。 

2023年01月21日

track in track

track in track Oゲージの線路の中にHOゲージの線路を置いてみた。意外なことにぴったり嵌まる。浮かないように小釘で打っておくことにする。直線部で分岐に掛からないところだけだから、 長さは 7 mに限られたが、十分に仕事ができるだろう。


 さて何をしているのだろうか。HOゲージの線路は、Oゲージ車輌の走行の邪魔にはならないことが判明したので、しばらくはこのまま仮固定しておくつもりだ。 

 準備はできたが、肝心のHO機関車がない。唯一の機関車は、デモンストレータとして貸し出しているので、しばらく戻って来ないだろう。

2023年01月19日

続々 突切りバイトを作る

むすこたかなし氏のブログで連続的に掲載されている記事が面白い。先入観に捉われることなく、客観的な事実だけからやり方を導き出している。実にサイエンティフィックである。

 60年ほど前までは、この種のテクニックは職場ごとに存在し、互いによそが何をやっているかということは、うかがい知ることがなかった。職工はテクニックを「盗んで覚える」以外なく、それは工学的な知識が元になっているわけではないから、見当外れのものもあった。
 ただ言えることは、うまくいかないものは使わなくなるから、使える方法だけが生き残っていたわけだ。筆者はその最後の時代にそれを見るチャンスが有った。

 しかしながら、自分でやってもいないのに、頭ごなしに「そんな方法は間違いだ。」と言って、鼻で笑う人も居た。こういう人は今でもたくさん居る。
 筆者は各種のバイトをその方法で作ったが、ハンダが剥がれるようなことは一回たりともなかった。すなわち、むすこたかなし氏も言われるように、正しくハンダ付けができれば大丈夫なのだ。 
 今回 Φ12 の快削黄銅棒を切断しているが、なんの問題もない。筆者はもっと太いものも切る。これは刃先が細く抵抗が小さいから、可能なのだ。

 SKS材は日本刀の材料である。実際には日本刀は天然の合金鋼で、マンガン、バナジウムなどを含む。カミソリも同じである。硬く焼入れが出来て、切先を鋭くできる。これはハイスには出来ない芸当である。ただ、焼きが鈍るとダメになるから、鋼を削るときは、低速で油漬けでの仕事をせねばならない。(ハイスはHi-Speedの略である)

2023年01月17日

続 内野日出男氏のD62

Mr.Uchino's D62 (5)Mr.Uchino's D62 (3) Tavata氏、春岡電鉄氏が正解である。寸法を測ってみると全長は200 mm強で、1/100である。線路が見当たらず、探し回って載せた線路が大きなヒントになってしまった。枕木部分を消すと、もう少し難しくなったかも知れない。


Mr.Uchino's D62 (1) この機関車の話は内野氏から聞いていたが、現物が出てくるとは思わなかった。小さな箱に入っていたので、気が付くまでに時間が掛かった。 

 1/100というサイズは他に例がないので、列車を走らせて楽しむことは出来ず、ただ作ってみただけで終わった。鉄道模型は仲間が必要であると悟ったそうだ。

Mr.Uchino's D62 (6) Mr.Uchino's D62 (7)共通のゲージ、共通の(似通った)縮尺が必要である。独善的な模型は孤立するのだ。


2023年01月15日

内野氏の工夫

 I氏より、とれいん誌の1996年11・12月号に内野氏の工作技法メモが載っていると連絡があった。
pull to expand 今回の edgewise に絡んで、リヴェットのピッチを合わせる方法も開陳されている。これは割合知られたアイデアのようだ。祖父江氏も「引っ張って合わせりゃいいんだよ。」と言っていたし、筆者もそうしていた。

 旧型国電などのドア上のリヴェットである。エッジワイズで作った部品にリヴェットを打ち、ヘッダを張るときに問題になるのだが、調整はわけない。金属は伸び易いものなのだ。

 人間の眼は、平行とは垂直はよく認識するからごまかせないが、長さは絶対値を認識していない。相対的な値としてしか認識しないから、このような方法が成立する。 

2023年01月13日

続 edgewise

 早速 F氏から連絡があり、写真をいくつか送って戴いた。大学の工房に鉄の帯やアングルをRに曲げる工具があり、それを参考に帯をどうすれば曲げられるかと考えました、とある。

Mr..F's method (2) この写真では木の板に孔をあけ、そこに段を付けたブラス棒を差し込み、クランプで軽く締めながら、帯板を挟んで曲げる。板にはどこまで曲げるかを描いてある。戻りがあるので、90度なら100度曲げる必要がある。


Mr..F's method (1) 孔をあけるためのジグである。棒(rung という)を差し込む位置が正確に決まる。




Mr..F's method (3) 図面をコピィして貼っておけば、その通りのものが作りやすい。 




 
 エッジワイズは難しい技法ではない。曲げる瞬間に加工硬化するので、多少の力が掛かっても、曲がりにくい。もしこれがエッチングによる切り抜きであると、あまりにもクタクタで、まっすぐに取り付けることさえ難しいだろう。 

2023年01月11日

edgewise

edgewize  (3) 内野氏はポケットからこの曲がったハシゴの材料を出して筆者に見せた。
「どうやって作ったか分かる?」

 筆者はピンと来た。糸鋸で切り抜いたのなら、わざわざ見せまい。そんな事例はいくらでも紹介されているのだから。

edgewize  (1) そこで筆者は答えた。
「ジグで挟んでおいて、引きながら曲げたのではありませんか?」
 内野氏は口を大きく開いて驚いた。
「知ってるのか!」

 そのようなやり取りがあってから、筆者は内野氏とは非常に親しくさせて戴いたように思う 。この方法は小学生の頃から父から聞いていた。大きな変圧器、モータ等の巻線はこの方法で作る。
 「エッジワイズというのだ。」と父は教えてくれた。「丸い線を巻くと隙間が大きくて損なのだ。角線を巻けば隙間はかなり少なくなるからな。」

edgewize  (2) "edgewise"という言葉は英語ではたまに出てくるが、角線を曲げるということに使うのは特殊な場合で、日常には遭遇しない使い方である。この言葉が戦前から日本に伝わっていたということは、イギリスか、アメリカからその概念が輸入されていたわけである。模型の世界では使われていなかったようだ。

 祖父江氏は抜き型で作ったものを使っていた。数の問題があるからそのほうが安上がりだったのかもしれない。プレスは、時間が節約できるからだ。穴まで同時に抜いていた。 

2023年01月09日

内野日出男氏のD62

Mr.Uchino's D62 (4)Mr.Uchino's D62 (2) 内野氏宅からお預かりしている物の点検は、ようやく最終段階に来た。

 これは一体何であろうか。寸法は伏せて写真をお見せする。ゲージ、縮尺を当てて戴きたい。

 内野氏はこれを1968年に作った、と箱に記してある。そのころのTMSを調べているが、記事には載っていないようだ。それから55年も経とうとしている。この掲載記事が雑誌にあれば、お知らせ願いたい。 

 連結器はKadeeを用いている。石炭は半分ほど剥がれているので、これは修復したい。ホコリがついているので清掃して陳列する。場合によっては塗装のタッチアップをすべきかもしれない。

 とにかく、フル・スクラッチ・ビルトである。もちろん動輪も手作りであり、これは内野氏がユニマットを入手してまもなくの作品である。 

2023年01月07日

続 突切りバイトを作る

 刃先は、200 ℃を超えると焼きが戻り始める。ということは、ハンダが剥がれない温度範囲で使えば、全く問題ないわけだ。このような理屈を理解していれば、安心して使える。

 筆者を攻撃した人たちは、刃先が剥がれるから危ないと言っていたが、剥がれることはないし、たとえ落ちてもそれは下に落ちる。その瞬間はロクロ屋で見たことがある。油が切れたからだ。すなわちその批判は、客観性のない無意味な攻撃である。実際にやったことがない人なのだ。

 キィ材を使うのは昔ロクロ屋で教わった。安くて実用的である。S45Cという鋼材は、剛性が大きいので都合が良い(快削黄銅の2倍のヤング率がある)。太さは 8 mm角程度が良い。すくい角は 0 度から始めて、各種作ってみるべきだ。どの程度が良いかは、すぐ分かる。快削黄銅なら、切り粉が細かく切れて出て来るのが理想的である。これは人によって好みがあり、筆者が見た親方の中には、すくい角を付けた上で、刃先から1 mm以内のところにコブ状の膨らみを残して切り粉の連続性を断ち切る(要するに折るわけだ)人も居た。これは、後には ”chip breaker”と呼ばれるようになった。

 上記のリンクの中にカンナの刃を二重にする話がある。これは日本の二枚刃のカンナも同じである。アニメイションが実にわかりやすくて良い。
 金属であっても似た現象はあるだろう。切り粉は粉々になったほうが、仕上がり面に傷がつかず、綺麗になるように思う。そういう点ではすくい角は少ない方が良いだろう。実際にやってみて好みの角度を探すべきだ。

2023年01月05日

突切りバイトを作る

 旋盤上での「突切り」という切断は、なかなか難しいのだそうだ。市販の突切り刃物では思うようにできないと言う人は多い。それぞれが様々な工夫をされているが、決定版と思われるものは無さそうだ。糸鋸を押し付ける方法をよく見るが、寸法が出ないから、感心しない。
 むすこたかなし氏のブログで紹介されている方法は、日本のロクロ屋で長らく使われた手法である。当時は金鋸の刃を折って作った小片をハンダ付けしていた。フラックスは当然のように塩酸を用いていた。小学生の頃、その作業をよく見るチャンスがあった。

 バイトになる鋼の小片は、使い捨ての折るカッタナイフの刃先から作ると簡単である。筆者は45年くらい前からこれをやっている。ハンダで付けると、取れやすいと思っている人が多いらしい。筆者の方法をあからさまにバカにする人もいたが、やってみればわかることで、剥がれることはない。剥がれるのならロクロ屋さんは仕事ができなかったはずだ。
 先入感でハンダは弱いと思っているのだろう。それはご自身のハンダ付けがおヘタである以外に、理由は思い付かない。十分な加熱により、ハンダが鋼片をよくぬらしていれば、そう簡単には取れない。ハンダの層が十分に薄いことが不可欠である。融かした状態で、鋼片を金属棒で軽く押し付ける。

 快削黄銅を削るのであれば、何もしなくても刃が外れることはない。相手が快削鋼であるときは切削油が必要である。しかも油を途切れなく、たらたらと流す必要がある。油が切れた瞬間に煙が上がって刃先は鈍り、摩擦熱でハンダが融ける。昔は油を垂らすのは新入りの小僧の仕事であった。小学生の筆者は、小僧が親方に怒鳴られながら油を垂らすのを見ていた。

2023年01月03日

ダイキャストの変質

 ダイキャストで作られた蒸気機関車の台枠が変形して、走らなくなったという記事があった。Mogul氏は経験ある模型人であり、ブラス板による修復は可能であろうと思うが、面倒なことである。

 戦後数年間に日本で作られたダイキャスト部品は、すでにほとんどが割れて壊滅したと思われる。有名なのはOゲージの軸箱である。EF58などに使われたものは原型を留めていない。ヤフオクなどによく出ているが、例外なく滅茶苦茶な状態である。これを修復するためのロストワックス製のブラス部品も出ていたが、末端までは届いていない。

 昭和30年代に輸出用に作られた部品も、かなり怪しい。少しずつ膨らんでいるのである。当鉄道にもかなりの数が在籍していたが、全てブラスのロストワックス部品に交換した。

 亜鉛ダイキャスト鋳物は少しずつ膨らむ。合金に不純物として鉛などが入っていると、結晶の界面が酸化されて金属結合が断ち切られ、割れてしまう。アメリカ製のはかなり持つと言われていたが、戦前のライオネルの高級な模型(Oスケールのハドソン)もどんどん割れてしまい、現存するものは極めて少なくなったという。

 最近は中国製の模型が市場に溢れている。それらはダイキャストとプラスティックの組み合わせでできているらしい。今後20年のうちに何が起こるか、観察したい。

 ブラス製で正しくハンダ付けされた模型は、1000年超の寿命を持つだろうことは疑いがない。おそらくそういう意味では、ブラス製模型の復権はありうると思っている。但し、今までのような板金を組み合わせて立体を構成する手法は一部となり、大半は3Dプリントを駆使した銅合金ロストワックスとレーザで切り抜きされた板との組み合わせという構成になるだろうと予測する。そうなると、必然的にハンダ付け手法も進化する必要がある。

2023年01月01日

作った塩化亜鉛をフラックスとして使う

 ジャンクのカヴァド・ホッパを順次組んでいるが、車体がねじれていることがわかった。下部のホッパがまともに付かないのだ。よく考えてみれば、ジャンクであるということは、それなりの理由があるわけだ。なにかの失敗で、かなり歪んだのを廃棄したのだろう 。全てバラして合板で簡単なジグを作り、その中に押し込んでハンダ付けし直したところ、下部のホッパは正しく付けられた。これで完成まで持ち込める。

 細かい部品を作り、少しずつ付けている。コテで仮留めして木のブロックで押さえ込み、ガスバーナで炙った。ハンダが沁み込み固着する。そう簡単には取れない。作り立てのフラックスを使った。塩酸がわずかに過剰で、よく付く。問題は、揮発した塩化水素が金属を錆びさせることだ。

 活性炭フィルタを持つ空気清浄機に、煙を全て吸い込ませている。祖父江氏のとは異なり、塩化亜鉛を主体としてわずかに塩酸を含んでいるだけなので、さほど問題はないだろう。しかし、机の上に飛び散ったものからは塩化水素が出るだろうから、それは濡れ雑巾で拭い取る必要がある。塩化水素は、鉄合金に対しては極めて錆を発生させやすい。鉄の表面の酸化皮膜を簡単に破ることができるからである(鉄そのものは、湿度55%以下の清浄空気中では全く錆びない。瀬戸大橋の主ケーブルはこの理屈を利用している。脱湿した空気を循環させているのだ)。
 だから、鉄をハンダ付けするときは塩酸が適する。昔自動車工場では鋼板のつなぎ目にはハンダを流して大きなヤスリで擦っていた。フェラーリのテスタロッサの側面の羽根状の付け根も、全てヤスリ仕上げであったと聞いた。 

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