2022年11月

2022年11月30日

続 測定をするということ

 その実験は何が目的なのか、を考えない人は実験をしても発表する意味がない。見せられても当惑するだけだ。

ある”測定値”「牽引力を調べる実験をしました」とあるので見ると、こんなグラフがあった。これを見た瞬間に読もうとする力が萎えてしまった。これが結論だそうだ。このグラフは張力測定器を貨車に積んで、出てきた値をコンピュータの画面に出しただけのものである。これは多次元のファクタが ”ごった煮” になったもので、この中から牽引力の次元の測定値だけを取り出すのは極めて難しい。だからと言って取り出さずにそのまま見せて良い訳はない。
 このグラフは単に、「測定器のスウィッチを入れました」というだけのものである。中学生にノギスを持たせて、何かの大きさを計測させると、とんでもない”測定結果”を持ってくる。それと大差ない。

 測定というものは難しいものだ。筆者は測定の専門家だったこともある。他分野でそれをしていたが、かなりの熟練が必要だ。
 あるデータを取ろうと思うと、最初にやることはまず2つある。
・ゼロ点が出るか。(これはそれほど難しくない時代になった)
・化学で言えば、基準物質を作り、そのデータが必ず毎回同じになるかを調べる。もし結果がずれていれば、何がそのずれの原因なのかを究明せねばならない。基準物質のみならず、計測器の誤差も考える。

 後者は非常に難しい。その基準物質を精製し、安定に保存するだけでも一苦労だ。この模型の場合で言えば、牽かせる車輌が完全な平面上でどの程度の抵抗があるのかを測定することである。10数輛を牽かせていたようだが、個別のデータを取る必要がある。それをどのようなつなぎ方をしても一定の張力で一定の速度を保っているかを調べねばならない。むしろ、機械ブレーキを積み、一定の摩擦力で抵抗を作り出すという手を用いれば1輌で済むから簡単であろう。

 連結器のナックルというものは意外に撓みやすく、張力を掛けると多少伸びる。すなわち列車には固有振動数があるのかも知れない。激しい乱高下が示されているが、そのファクタが無視できない可能性がある。このような測定をしたいなら、測定用の負荷を作り出す専用列車を仕立てる必要があるだろう。多数輛による列車であるなら、連結器はガタのない剛性の大きな材料を使用すべきだ。 
        

2022年11月28日

測定をするということ

 測定というものは、その結果がどうなるかを予測して行うものである。結果が見当もつかないものは測定できないのだ。

 最近の話題では牽引力を測定するという事例があった。牽引力を縦軸に、時間を横軸にとると、どのようなグラフになるだろうか。出発時は牽引力をゼロとする。次の 4つの中から選んでみよう。

4つのグラフ ここで大半の人は B を選ぶはずだ。停止している機関車がゆっくり動き始めると連結器がピンと張り、列車が動き出すだろう。他のグラフでは、その数値が表す挙動を考えると、そんなグラフはあり得ないと思うのが普通だ。       

 こうして B のグラフを予測して実験し、それから外れるようなら何がその原因なのかを調べねばならない。測定値が負であれば、線路が水平でないとしか考えられない。測定値が一定値で動かなければ、定常状態である。定常状態を作り出すにはどうしたら良いか、も考えておかねばならない。
 ここまで読むと、「思った通りの結果が出るように実験する」と勘違いする人が出てきそうだが、それは捏造であって論外である。

2022年11月26日

慣性増大装置の今後の展開

 先日のKKCの会合で披露された3種の慣性増大装置についていろいろな意見を頂戴している。否定的な意見はないが、「HOの作例が思ったほどではなかった。」という感想を戴いた。

 作者のT氏も認めているように、小さなものは本物の挙動との乖離が大きくなる。慣性モーメントは大きさの関数であるので、小さくなると極端に不利であり、一方、摩擦というものは小さくしにくい。ボールベアリングは摩擦を減らすと信じている人も多いが、中のグリースの撹拌抵抗は無視できない。また、軸の径はそれほど小さく出来ないので、相対的に抵抗は大きくなる。
 それでもある程度の効果は見られ、この動画でもそれは分かる。

 摩擦を減らす工夫が必要であるので、ある方法をヒントとして差上げたところ、たちまちそれを実用化する方策を立てられたようだ。楽しみである。  

2022年11月24日

ジャンクの再生

junk covered hopper この貨車は30年以上も、このままの形で放置されていた。ホッパ下部の部品がない。それだけを直せば良かったのだが、特殊サイズのチャネルが必要で、それが仕事を億劫にしていた。一念発起して部材を作り、その他の細かい部品を手作りした。もちろん連結器と背骨を結ぶ部材は、1.5 mm厚である。こうしておけば、ガシャンと連結しても全く安心である。

 カヴァド・ホッパというものは立派に見える貨車で、いつも何のディカールを貼るべきかと迷う。特にこの側面が三角に空いて居るタイプは1950年代のデザインであって、珍しい。すなわち、そのタイプを採用した鉄道会社は少なく、塗色、文字、ロゴなどすべて特殊である。手持ちのディカールの中で適合するものは少ない。アメリカの市場で探すのだが、思うようなものは見つからない。 

 この貨車は落下品らしく、細かい部品が紛失し、屋根が少し凹んでホッパが壊れていた。屋根は外して裏から押し上げると、ほとんど気にならない程度に直る。
 貨車というものは、実物もあちこち凹んでいることが多く、全く気にならない。伊藤 剛氏のおっしゃる ”Authentic" である。

 いくつかのディテール・パーツを作って足すと、世界で1台のカスタムモデルになる。こういうものをアメリカからの客に見せると、よだれを垂らす。複数あれば、1輌進呈すると飛び上がって喜び、次回行くと最大の歓待をしてくれる。


2022年11月22日

新車のロールアウト

 しばらく前から用意してあった貨車を塗った。このところ天気が良いので、順次塗っている。ミッチャクロンのお陰で、そう簡単には剥げない塗りができる。

UP wartime composite hopper これは先回の記事で、天地逆に転落したと書いたものである。ありがたいことに、ほとんど被害はない。
 これは1942製のwartime composite hopperである。直訳すると、「戦時型・複合材料ホッパ車」である。要するに、鋼板を節約するために、木板で囲いを作ったわけだ。滑る部分は鋼板でないと滑っていかない。安達製作所製である。本当は1944年製にするべきだったかもしれない。

B&O wartime composite hopper これは連結器を下にして落ちたが、トリップ・ピンが僅かに曲がった程度で、他には全く傷がない。
 これもwar emergency composite hopperである。このように「非常」という言葉を入れることもある。アメリカとは言えども、材料の節約はかなり徹底して行われたようだ。連結器から、斜め上に、ホッパの滑る部分を支える支柱がある。ここを補強すると、今回のような事故に耐えうる車輌になる。

WIF boxcar これは1949年に塗ったことになっている。西インド諸島果実航送鉄道である。フロリダとハヴァナを結んでいた。実物を見たわけでは無いが、筆者の好きな絵柄だ。northerns484氏の作図とDr.Yの作成による特製ディカールである。大きなものを貼るとき泡が入らないようにするのは、かなりのテクニックが必要である。同型をあと2輌作っている。

 塗り立てを持って行ったので、まだウェザリングを施してない。   

2022年11月20日

転落事故

 慣性増大装置の実演をしている時に2輌のOゲージ貨車が落下した。線路の末端の車止めに雑誌が広げて置いてあり、貨車が乗越え易くなっていたのだ。ジャンクから組直したもので、もとは事故車を安く買ったものである。そのジャンクは衝突事故で、両端が潰れた状態であった。連結部がめり込んでいたのだ。壊れやすいのは背骨の末端の連結器がついている部分である。板が薄くて座屈していた。そのあたりをすべて切り離し、新しく部品を作り、組み直した。

fixing reinforcement in the spine その部分に1.5 mmの厚板を貼り重ね、連結器の付く部分だけを、フライスで0.3 mm削り落とす。厚板は背骨の溝の中に完全にハンダ付けする。これは炭素棒でないと無理である。こうすると極端に丈夫になる。もちろん上下左右には細かい骨で支えてある。たっぷりのハンダを付け、接合部の隙間には完全に流し込む。この種の仕事はコテでは難しい。既製品では、このあたりのハンダ付けがチョイ付けであるから弱いのだ。全面的にハンダが流れるようにする。連結器はエポキシ接着剤で付ける。接着は剪断力に対しては強い。重しを掛けて、接着剤層を薄くするのが秘訣である。
 事故直前にご覧になったTMSの名取編集長が、
1.5 mmですか!?」と驚かれたが、「必要なのですよ。」とお答えした。  

 今回の事故の1輌は連結器を下にして垂直に落ちたようで、Kadeeのトリップピンがわずかに曲がっていた。もう1輌は完全に裏返しで落ちたようだ。上面にかすり傷があった。 
 前者は事実上被害なしである。後者は、タッチアップして補修完了である。Pタイルの床には傷がついたかもしれない。
 
 奇しくも、事故によって頑丈さが立証された。何人かから、どうして壊れなかったのかという質問があったようだが、この程度の答で良いだろうか。この種の貨車は引っ張りには十分強いが、圧縮には弱いので、そこを補強するのがミソである。既製品の構造ではとても足らない。当社の貨車はすべてこの仕様で作られているから、かなり荒っぽい連結作業にも耐える。 

2022年11月18日

続 慣性増大装置

 この動きについて、いろいろな人から感想を戴いた。実物の鉄道の慣性の大きさ(すなわち、摩擦の少なさ)には改めて感じ入るものがある、というものが多かった。

HO gauge momentum emphasizer これはHOゲージ用である。T氏が作ったものだ。最初はこの径の材料を挽く旋盤がなかったので、5円玉を重ねて作った。次に筆者に連絡があったので、ちょうど良い材料を挽いて差し上げた。軽く動くが、如何せん、小さいので素晴らしい効果と言えるほどではない。しかし、1 mほどは惰行する。
小形の4-4-0あたりに牽かせると、逆回転ブレーキを実現できるはずだ。
 設計をさらに工夫すると、もっと軽く動くようになると思う。

 今回は大型のマウンテン(4-8-2)しかないので、とてもその慣性を実感するほどのことは出来なかった。そのマウンテンはHO用の高効率ギヤを搭載し、極めて滑らかに走る。低速も高速も自在で、しかも静粛なことこの上ない。

 ある人が見ていて、走行音がしないのには驚いたようだ。高効率ギヤの組見本を触って、その滑らかさ、静粛性に感嘆した。押したときの感触にも驚いたようだ。
まがい物とは全く違いますね。モータが付いていないような感触です。」
と言う。実際には押すと発電してライトが点く。

2022年11月16日

慣性増大装置

 13日のKKCの総会で、3種の慣性増大装置を披露した。

 OゲージはいつものFEF4ではあるが、例の「逆起電力キャンセラ」を追加搭載している。逆回転ブレーキが、熟練しなくても出来る様になった。等価慣性質量は170 kgで変化はない。

G gauge momentum emphasizer 今回はA氏にお借りしたGゲージの補助テンダを披露した。質量は約 5 kgだが、等価慣性質量は 700 kgである。要するに軽自動車ほどの質量を、摩擦の非常に小さな台車に載せているのと同等である。押しても動かない。しばらく力を入れていると、少しずつ動き、止まらない。長さ5.4 mの線路をゆっくりと端から端まで転がった。ギヤはOゲージ用の高効率3条ウォームである。全く無音で動力採取、放出が出来る。チェインは2本掛けで、計4本ある。2本ではとても持たない。各2本を、位相を半分ずらして取り付けている。本物のような鋼製のチェインであれば、このようなことをすると直ちに壊れるが、この模型のチェインはPOM製で少し伸びるのだ。だからこの形が音の点で最良となる。 

 A氏は自宅庭に敷いた線路で運転しているが、この車輌は実物換算350 mの惰走をしたそうだ。曲線上の記録であるから、直線なら実際はもっと走るはずだ。

2022年11月14日

乗越カルダン

乗越カルダン 電車の台車を作り始めた。近鉄電車はもともと大好きであったので、それを作らないかという誘いに乗ってしまったわけだ。

 台車は当然3Dプリントで、ナイロン製である。適度な細密性を持ち、最高の動力性能を持たせることが狙いだ。こういうものは試作が重要である。3D図面の上で検討しても、思わぬ伏兵があるものだ。これは3次試作品である。ようやく、他人に見せてもあまり恥ずかしくない形にはなったが、まだまだである。

 乗越カルダンで、1軸伝動だ。これで2輌牽ける。もちろん相手が「Low-D + ボールベアリング装荷」の場合だ。両軸モータであればその倍ということになる。例のジョイントを使っている。これはやや怪しい作りのジョイントで、角速度がどのようなグラフになるのかと問い合わせたところ、「わかりません」ということだった。要するに考えていなかったのだ。当初のカタログには「等速」と謳っていたので、それは削除すべきであると伝えた。
 とりあえず、前後対称に曲がるように使えば等速になるはずではある。
 

センタピン保持 キングピンは軸を通すので二股になる。それも3Dプリントで作ったが、底に孔があいているので弱くて、加工中に割れてしまった。とりあえずブラス片からフライスで作ったが、手間がかかるものだ。改良品を発注する。

2022年11月12日

銀ハンダ

 銀ハンダのことをここに書いても、実用化する人はほとんどいなかったようだ。最近このブログで拝見し、心強く思った次第である。
 筆者は銀ハンダを多用する。それは温度差を利用して、細かい部品が落ちないようにするためである。もちろん、硬さを利用して、間違った孔の埋戻しに使う。小さなブラス片を押し込み、塩化亜鉛を塗ってガスバーナで炙れば良い。ロストワックスの鬆(す)を埋めるときも使う。
battery lid 銀ハンダというものは、あまりうまく流れてくれない。ガスバーナで焙ってもこの程度である。すなわちこれを使う限り、ハンダで埋まってしまうということはまずないのだ。



 この部品は、ディーゼル電気機関車の脇のデッキ上にあるバッテリィ・ボックスの蓋である。ラッチを立てて引き上げるようになっている。ここが単なる歩み板では面白くない。思い付いて孔をあけ、裏からロストワックスの部品をはめた。この部品は売るほどあるのだ。孔を正確にあけなくても、バーナで炙って裏から銀ハンダを押し付けると、適当に流れて孔の隙間が埋まる。その時、細部が埋まってしまうことはない。このときの裏の盛り上がり具合をご覧になると、流れにくさが実感できるはずだ。63%を用いると、一瞬で裏に廻ってハンダが全体に均一に付いてしまう。上の部品は部品がまっすぐ付いていないことに気が付いてやり直した。

 こうして出来た部品を炭素棒で所定の位置に取り付ける。強く加熱しても、細かい部品が落ちることはないから気楽だ。 


2022年11月10日

続々 ある装置

 先に写真で示した装置の一群は、トランジスタを組み合わせたもので、作動することは作動するが、起動電圧が低くはない。3 V程掛けないと動かないので面白くない。1 Vで起動するようにしたかった。  
 しかもトランジスタは抵抗器でもあるので、多少の発熱もあるから良くない。その後開発されたものはSCR(Silicon Controlled Rectifier) を使っている。通称サイリスタ(Thyristor)である。
 はじめはそれと等価なものをトランジスタの組合わせで作ったのだが、損失が無視できなかった。定数を変化させて効率の良い部分を探したが、SCR にはとても敵わなかった。

 SCR は発熱が少ないから放熱板は要らない。ゲートが on になれば、そのまま導通を保つ。回路は、ある程度詳しい人なら、たちまち分かるであろう。原氏の電車群にはこれが大量に採用されているはずだ。

 筆者は機関車を改良していたので、この装置は使っていない。フライホイールをモータ軸に付けたものをこれで廻すと、確かに惰力でよく廻り、止まりにくいが。それは鉄道車輌の本来の動きではない。動力車は慣性モーメントが小さくなければならないのだ。
 付随車に十分な慣性を与えるべきである。


2022年11月08日

続 ある装置

 昨年のKKCの総会で、筆者の慣性増大装置付きの機関車を披露した。短い線路の上でまずまずの走りであったが、電源装置に問題があった。中点OFFなのだが、惰行させるには線路が短か過ぎて、操作が難しい。ところが、この逆起電力キャンセラを搭載すれば、何も考えなくても、惰行の途中で逆転ブレーキを掛けられる。テンダに内蔵されたフライホィールからのエネルギィ放出を、動輪の逆回転で行うことができるのだ。これは今までは、かなり広い場所でないとできなかったのだ。
 秋のKKC総会でそれを披露することになった。

 機関車自体はほとんど見かけ上の変化はない。あと、HOの機関車に3条ウォームを搭載したデモンストレータを持っていく。現物を触って、その効果を確かめられると良い。内野氏の作品も高効率ギヤに取り替えてあるものを持っていく。

2022年11月06日

ある装置

BEMF canceler この装置は1984年に作ったものだ。試運転だけしてそのまま放置され、埃にまみれていたのを洗ってみた。
 
 当時、筆者と祖父江氏は、走りの改善に血道を上げていた。たがいに、思いつくすべてのことを実験した。どんな些細な思いつきでも報告しあい、可能性がないか探っていた。その中で祖父江氏が、芦屋の原邸で電車を走らせているのを見て、問題点を報告してきた。コアレスモータ + スパーギヤでよく走るのだが、惰行が良くない事がある。
「スロットルを下げると減速してしまうんだぁ。中点オフの逆転スイッチで回路を遮断するとうまくいくんだけどね。なんかうまい工夫がないもんかい?」
と聞いてきたのだ。電源装置の中でモータの発生した電力が喰われてしまっているというわけだ。

 要するにモータの逆起電力を遮断することができればよい。印加電圧より発生電圧の方が高いときは回路が切れればよいわけだ。様々なことを考えたが、友人の電気マニアが考えた回路が一番簡単であった。早速作って試してみた。これはその初号機である。
 数台作って祖父江氏に渡したが、筆者はその後出国してしまい、しばらく会えなかった。その間に色々なことがあったようだ。原氏の電車を作っていたT島氏の弟が電気技術者で、同様のものを作り、その方が性能が良かった。それを採用したようで、問題は解決した。しかし筆者は電車をほとんど作らないから、筆者の興味の外にあった。

 その後永末氏が作ってくれた筆者専用のDCC完全直流デコーダでは、惰性で走るときは完全にOFFになるので、具合が良い。これは1985年に得た教訓を生かしたわけだ。

2022年11月04日

ヒステリシス

 histeresis ヒステリシスは、物理の時間に出てくる。磁気ヒステリシスという言葉に記憶がある方も多いはずだ。

駆動ヒステリシス この模型の挙動をグラフにするとこうなるだろう。印加電圧を横軸に、動輪回転数を縦軸にとる。分巻特性のマグネットモータだから電圧で問題なかろう。通常型の場合は、ある程度の電圧を掛けないと動かないから、原点からしばらくは横に行く。伝達部の様々な障碍を乗り越えると、途端に回転が始まり、その速度は大きい。その後は滑らかに加速していくだろうが、起動時の挙動は面白くない。減速時は起動時ほどではないが、あるところで突然止まってしまうであろう。
 逆転時は、これまた困ったことが起こるかもしれない。「往きはよいよい、還りはこわい」で、そう簡単には動かないかもしれない。このグラフではそれを強調している。
 実際には、このグラフが逆になっていることもあるだろう。すなわち後退はよく走るが、前進はちょっと…という場合である。

 一方、「高効率ギヤ + 六角ジョイント + トルクアーム」では赤線のようになる。囲まれた部分の面積は小さい。この面積(積分値)は損失に比例する。
 損失は少ないに越したことはない。


2022年11月02日

高効率機関車の挙動

 友人が、高効率歯車を搭載した機関車を運転した感想を伝えて来た。一言で言うと、スロットルの廻し具合と、機関車の動輪のトルクが一致するのだそうだ。

 比較的急な勾配で、ある程度の負荷を牽かせると、途中でスリップして止まってしまう。普通ならそこからの再起動はできない。動輪が滑るだけで列車は止まっているはずだ。  
 ところが高効率ギヤを付けている場合は、ゆっくり再起動して、動輪の再粘着により、少しずつ引っ張り上げて行く。滑ればスロットルを戻し、少しずつ引き上げることが出来るという。
 通常の動力装置であると、電圧を上げてもなかなか動かず、ある程度の電圧をかけた瞬間に回転を始め、スリップして摩擦係数が減るので動き出せない。再度止めて起動しても、結局は同じ結果であるらしい。 

 この様子を別の工学系の友人に説明したところ、興味深い言葉が出てきた。
「つまり、通常型の場合はヒステリシスが大きいのだね。」

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