2015年03月27日

2015年03月27日

続 音について

elastomers レイルと車輪の転動音は枕木に伝わり、それがゴムに拡散する。ゴムは振動を熱に変えるので、外に出て行きにくい。これを内部損失と云う。内部損失が大きいものは、肉体である。オーディオの趣味がある人は、観賞室に人間がたくさん入ると、大きな差が生じることに気が付いているはずだ。   

 手で支えると音がほとんどしないのは、気が付く。それでは豆腐、こんにゃくはどうだろうと実験してみたことがある。なかなか良いが、実用性はない。スポンジゴムがダメだったのは、質量がないからである。
 支持体は重いほど良い傾向がある。そこで、ポリ塩化ビニルはどうかと提案した。塩ビはゴムよりずっと重い。1.5倍弱である。配合によって、ゴムのような弾性体(エラストマ)になる。
 土屋氏に手配して戴き、すぐにいくつかのサンプルが届いた。左から、中程度の固さ、それに砂目塗装したもの、柔らかめ、硬めであった。紫外線照射テストのデータ付きであった。直射日光で20年保証とのことである。

 JORC(Oゲージの国内最大組織)の運転会では、合板で作った路盤を会議用机の上に置くとき、2 mmほどのポリ塩化ビニルの軟質シートを敷いてから置く。これが絶大な効果を生んでいる。シートは重いので、運ぶのに不満を漏らす人がいるが、ないとどうなるかを御存じないからだ。

 吉岡氏は直ちに各種の素材でサンプルの線路を作られ、たくさんつなげてテストコースを作った。それに機関車、貨車を走らせて音を調べたのだ。その実験を見にお宅まで行って泊めて戴き、最終確認した。中程度のものがベストであった。砂目塗装はやめ、灰白色の地を出すことにした。これは土屋氏の美的感覚である。
 こういう実験はやろうと思えば簡単にできるのだが、やる人はまずいない。
 「『こうだ。』と言う人はいるけど、やったのかと聞いて、『やった。』という人はいない。それじゃあ、やってみようじゃないかと思った。」と吉岡氏はよくおっしゃった。実験は大切である。人の言うことを信じる人は、進歩できない。
 
 路盤は5.5 mm合板を張り合わせて作られ、線密度は木部だけで620  g / 750 mm であった。それに弾性体、レイル、枕木、饋電線、接続金具等が付くと1本は1100 gを超えた。

 この重さが、良い音を作り出している。軽くは出来ない。軽い材料でできた中空の机に置くと、振動が多少下に伝わり、あまり芳しくなかった。路盤の下にはフェルトを細く切って張った。

 こうして出来た線路を敷き、列車を走らせてみた。フレキ線路のレイル面は、意外と粗雑で、ゴロゴロと音がする物がある。細かいサンドペイパで磨くと改善された。製作見本を複数つないで、機関車(押して動く3条ウォーム搭載)を手で往復させて、継ぎ目の音を聞いていた。そこに奥様がお茶を持っていらして、「あらいい音ね。」とおっしゃるではないか。
「今までのはおもちゃの音だったけど、これは本物の音みたい。」
 吉岡氏と筆者は顔を見合わせてニヤリとした。興味のない方にも、その違いが分かって戴けたのだ。

 車輪もLow-Dとそうでない物には、歴然とした差がある。たくさんの貨車の中で、Low-Dに取り替えてない物は、目をつぶっていても、走っているときにそれを指させる。優秀な旋盤で挽いた時の精度と、怪しい旋盤で挽いて、めっきを掛けたものの差である。めっきは表面の粗さを増幅する。


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