2015年02月
2015年02月04日
熔接

観察できたことだけを書こう。
熔接はジュール熱ではない。アークの高温プラズマを利用している。筆者がやっているのはいわゆる被覆棒熔接で、アーク熔接とはやや異なる。
アーク熔接は砂状の被覆材をかぶせて電極を機械などで平行移動させる。船、鉄道車輛などの大物を作るときに使う。
さて、熔接棒は二重構造で、内部には鋼の芯金があり、外はセラミックスの粉末を塗って焼き固めてあるようだ。
熔接を始めるにはアークを発生させねばならない。よくやるのは相手の金属を熔接棒で軽くこするのである。するとぱちぱちと小さい火花が出て先端が熱くなる。そこで、先で突いてやると同時に軽く引くと、連続したアークが出る。
芯金は融けて飛び散り、廻りの被覆材が昇華する。このセラミックスの蒸気がアークを作り、プラズマ状態になっている中を電流が通る。被覆材は融けてガラス状になり、それはスラグになる。プラズマの温度は 4000 ℃以上あるから、鉄はたちまち融ける。一部は昇華するだろう。

だから、途中で冷えた熔接棒を使って再度スタートさせる時は周りの一部を削りとる必要がある。それはこすると云う操作だ。
防護ガラス越しに見ていると、融けた鋼がスラグの下に入り込むのが分かる。鋼は重いからだ。母材を融かして固まると、母体の金属が相手と連続したことになる。熔接は下向きが容易だ。垂直だとやや難しい。上向き熔接はさらに難しい。これは金属同士のぬれを利用している。
電流が大きすぎると飛び散る量が多いので、電流を減らすと良い。持っていった熔接機は電流が3段階しかないので、その辺りが難しい。家で使っているのは、無段調整出来るので、相手に合わせて調整できる。
スラグが赤熱しているときは、熔接棒をそれに接触させるだけで、再度アークが発生し始める。融けたスラグ内ではイオンが動きやすく、電気が通じるからだ。スラグは白熱し、プラズマが発生する。
20年ほど前のセンター試験で、「高温のガラスは電気が通り易い。」と云う文章の正誤を問う問題があったが、まさにこのことを言っている。
融けた金属は小さな水たまりのようになり、それを連続して作ることが出来れば、完璧な熔接が完了する。
あとは生成したガラス状のスラグをハンマで叩いて割れば熔接は完了である。余分な部分を削り取って完成である。
アメリカに来ている。O Scale West で講演を頼まれた。しばらく休載する。
2015年02月02日
続 ポリウレタンの劣化
お預かりしているOJのキットがある。それを点検していないことに気がついて、開けてみた。案の上、ウレタン・フォームが融けかけている。指で押すと、「ポリウレタンに指紋が付く」ような感じである。出来たてのパンケーキの感触に似て、怖くて触れない。
幸いにも全ての部品がポリエチレンで包まれているので、くっついたらその袋を捨てて、新しい袋に入れればよい。
このC62は動輪がむき出しであったので、少しくっ着きかけである。早速出して、溶剤で拭いた。イソプロピルアルコールが入っている溶剤噴射スプレイを使った。樹脂は溶けて取れたが、めっき部には、くっついた部分に錆が発生しているように思う。目の細かい紙やすりでさっと研磨すれば大丈夫だろう。

左が清掃前、右が清掃後である。クランクピンのあたりが少々荒れている。よく磨いて、油を塗って組めば問題はないはずだ。
このEF53のキットも融ける前兆が出ている。しかし、全ての部品が包装されているので、しばらくは問題なかろう。
EF58も大丈夫だと思ったが、思わぬ伏兵が居た。
前頭部は潰れ難いように、内部にポリウレタン・スポンジが入っていたのだ。
空気の流通がないようにしっかり包装してあるので、変化は起こりにくいと思ったが、出して見ると、内部は錆かけていたし、スポンジは握ると元に戻らなかった。
キャブの内側を丁寧に拭いて、別の袋に入れた。
これらのキットは筆者が組むことはないので、誰か得意な人に組んでもらうつもりである。
幸いにも全ての部品がポリエチレンで包まれているので、くっついたらその袋を捨てて、新しい袋に入れればよい。




EF58も大丈夫だと思ったが、思わぬ伏兵が居た。
前頭部は潰れ難いように、内部にポリウレタン・スポンジが入っていたのだ。

キャブの内側を丁寧に拭いて、別の袋に入れた。
これらのキットは筆者が組むことはないので、誰か得意な人に組んでもらうつもりである。