2008年06月
2008年06月30日
無誘導
慣性で走り抜ける種類の車輪は、脱線事故を起こす事はない。また、径が大きい蒸気機関車の動輪も、フランジがひっかるので問題はない。
どのような車輪が脱線事故を起こすのかについて、興味があった。栗生氏の答は意外であった。
「電車の動力台車の車輪が脱線する可能性がある」というものである。トルクが掛かっているときにフログの欠線部に片方の車輪が落ち込む瞬間、摩擦が減少し、反対側の車輪のトルクで軸が水平面で回転する可能性があるのだそうだ。同様に、「付随車であってもブレーキを掛けると危ない」のだそうだ。
すなわち、慣性で通過するときには全く問題なさそうである。加減速をする瞬間が危険であるということだ。
筆者の手持ち車輌には車輪径の小さい動力車はない。すなわち問題ないと思っていたら、36インチの車輪の動力車が、最近導入されていることに気が付いた。EMDのE8である。シングルスリップを通過するときは、慣性で通過するようにしたい。
2008年06月28日
続々 ダブルスリップの製作
フログ角を図のように大きくしていく。鈍角になるとノーズ・レイル(三角の鼻状の部分)は丈夫になるがウィング・レイル(開いているレイル)が弱くなる。欠線部があるので、衝撃がウィングレイルに掛かる。
作図してみると、フログ角が8度あたりで面倒なことが起こり始める。フランジが有効でなくなるのである。特に先輪のように径の小さい車輪のフランジが無意味になる。要するに、誘導力が無くなるのである。すなわちフログ部で割り込みが起こる可能性が生じるというわけである。
8番のダブルスリップのクロスがその限界であることが分かった。それよりも番手が大きくなると、慣性以外何も無くなるのである。だから、以前作った10番のダブルスリップは可動フログにした。しかしシングルスリップは固定フログである。事故が起これば作り変えようということにしたのだが、意外にも事故は皆無である。
しかし、通過音は異なる。可動フログは、はるかに静かである。今回はその点を考慮して可動フログにした。
先日のOゲージの集会で披露したところ、可動フログを皆で撫で回し、「いいね、これ。」と褒めて戴いた。いかにもメカニズムがむき出しで、楽しめるのである。
鉄道ファンならではの感覚であろう。
栗生氏から「無誘導」という語を教わった。一般人はまず知らない言葉だそうだ。10番以上のクロスで起こりうるというお話であった。それは筆者の経験と一致した。
2008年06月26日
続 ダブルスリップの製作
先回の図では、二組のトング・レイルはちゃんとイコライズしてあるのに、可動フログとのイコライズがないので、うまく作動しないと思われる。
先日、伊藤剛氏とお会いした際、この話題を持ち出すと、イコライズのいろいろな方法を示されたが、筆者の「長孔にする方法」が模型としてはベストであるという結論になった。
2008年06月24日
ダブルスリップの製作

模型では、スペイスの制限が大きいので使いたい。しかも1台ではなく、複数並べて使うと便利さが増大する。
この図ではトング・レイル2組を動かす工夫が描いてある。本物は右のように二組をイコライザで結び、密着を確保する。Oスケールであれば、当然このくらいの工作はすべきだ。しかし左の方法は賢い方法である。弾力の強い線をバネとして、二組を同時に動かす。多少の誤差は、弾力で吸収することが出来る。
このときのハンダ付けは、疲労しにくい銀ハンダを用いないと、すぐに駄目になる。

この図もPaul Mallery氏のTrackwork Handbookからの転載であるが、ややまずい点がある。矢印の部分にご注目戴きたい。このままでは、イコライズしてないので片方が接触すると、もう片方は浮いたままになる惧れがある。よほどうまく調整しないと脱線の可能性がある。
どうすれば良いだろうか。読者の皆様ならどうされるだろう。
2008年06月22日
続 モヂュールの継ぎ手
昨日の絵と違って、シンバリ棒が反時計廻りで締まるようにした。シンバリ棒は軽く締まるが、決して抜くことは出来ない。いわゆるセルフロックの状態である。抜こうと思うとより締まる方向に回転する。
当初、左回転で締まるのはおかしいように思ったが、裏に手を回して締めるので、かえって違和感は無くなった。
アリ溝は力を倍化させる。ほんの僅かの力で、最初から一本であったかのような締結が出来る。シンバリ棒は中心をバカ孔にしておいて、突っ張りの力が所定の場所に掛かるようにせねばならない。朴材では駄目になるかとも思ったが、意外に強いものである。
2008年06月20日
モヂュールの継ぎ手

精度の高いアリ状ホゾは木工所に注文した。寸法が大切なので、プロの腕に任せたのだ。安くて良いものが出来た。
ホゾの材料は、朴の木である。適度な硬さで具合が良い。電気接続はスペースが確保してあるので9芯の接続が出来る。完全DCC化が出来れば2本の線で完了であるが、DC用にさらに7本を確保したのだ。
2008年06月18日
機関区部分の設計
さらに「トラヴァーサの終端にはターンテイブルを用意せよ」との指示まで戴いた。それで、急いで描いた絵がこれである。実物にも、ほとんど例がないであろうと思われる。
トラヴァーサの橋部分は、上から見ると長方形なので、回転する場所は、周りに線路がないところまで出た状態でないと回らない。これを動力化するのはかなり難しい。深さがあれば可能であるが、全体で30 mmしか深さがないのである。「どうしましょうね」と問うと、「なーに、手動でOK」とのことである。言われてみて初めて悟ったが、機能だけを考えれば、手動で十分である。プラレイルのようで楽しいデザインである。
ターンテイブルの上に橋を載せて、半回転すれば用は済む。少ない面積で多くの車輌を収容し、機能的に出し入れできるという点で、優れたアイデアである。
橋の部分はトラスで作り、下路構造にすることになるだろう。それとも柔構造にして、支持レイル(この図のたての線)の数を増やすという手もある。すぐ作るわけでもないので、しばらく考えてみたい。
2008年06月16日
ヤードを設計する
ラダーの最終端は、二本が平行になるようなモヂュールを用意してある。
連続分岐はどの順番で並べても作動するようにするのはやや困難である。DCC方式なら全く問題ないが、外部での運転会ではDC車が当然やってくるので、その運転のためには、旧来の方式も電気回路に含めなければならないからだ。
DCCなら2本の線で全て足りるのだが、DC対応のためには、DC用回路を設け、各モジュールに切り替えスウィッチを用意せねばならない。
ダブルスリップは省スペースには絶大な威力を発揮する。この3線DSは幅が300mmのモヂュールである。今、これを作っている。いずれ複線化したときには不可欠になる。片渡りDS付きはすでに作った。クロス部分は、可動式である。
当初は単線であったが、複線化の機運が熟してきたのだ。せっかくのダブルスリップ製作のノウハウが忘れ去られてしまうのも惜しく、製作に踏み切った。すると曲線ポイントはあまり出番がなくなる。単線時のみの使用となるだろう。
2008年06月14日
続 フログを作る
短いレイルを正確に丸く曲げるのはきわめて難しい。長めに作って端を切り落とす。
レイルをペンチの類ではさんで曲げると、レイルに傷がつく。また、狭い範囲に応力が集中し、めっきがはがれたりする。ハンダ付けしたあとで曲げると、ハンダがはがれる。
硬い革で出来ていて、相手に傷をつけない。当然、めっきもはがれない。これでゴムの厚い板の上で気長に叩く。これはアメリカで買ったが、どういうわけかイギリス製である。
曲線上のポイントはフログ番手が大きくなる。筆者のレイアウトには12番というフログがある。どうしてもその番手を使わないと、最急曲線を下回ってしまう事情があったからだ。
2008年06月12日
フログを作る
軌間が狭いと同じ番手であってもとりあいカーヴ半径が小さくなる。たかだか8mmの違いであるが、それは大きな違いをもたらす。国鉄の規格を調べていると、最小は8番である。ところが標準軌であると、7番でもよいらしいことが分かった。
ちなみに、OJの8番ではとりあいカーブは2048mmと計算される。Oの2720mmとは大きな違いである。すなわち、OJを採用する人は曲線フログを採用しないと、とりあいカーブを大きく出来ないということなのだ。
筆者は、フログを直線で作った。左右同形にするためである。しかし曲線上のポイントでは、フログは曲線でなければならない。それにはハンダ付けしたフログを少しずつ曲げてそれらしくした。このような細工はレイルが黄銅製であればこそ出来る。腰の強い材料では困難だ。厚いゴムの板の上でローハイド・マレットで叩く。この件については後述する。
写真の曲線ポイントは半径2800mmと4300mmの分岐である。フログは8番である。フログ位置を算出するのに、随分手間が掛かった。幾何学的方法でフログがどこに来るか調べたのだ。やや時代遅れの方法であった。コンピュータによるシミュレイションをすれば、楽であったろう。
ヒールの位置(トング・レイルの根元)があまり開かず、長いポイントになった。曲線ポイントは、いろいろな点で設計が難しい。特にフログ角を指定すると極端に計算が難しくなる。
2008年06月10日
続々々 ポイントを作る
「P点がポイントの語源」説は、今の所、旗色が悪くなってきた。
ところで栗生氏が、わざわざブログの一面を割いて、筆者の「フログ番手の記事」の批評を書いてくださった。番手が大きくなると、正規の式でも、簡易式でも差が小さくなる。
現場では番手が大きく、全くどうでもよいことなのであろう。 角度を測るのはとても難しいが、寸法には、はっきりとその差が出てくる。
どうして筆者がこの件を大きく採り上げたかというと、例の組立て式線路の中に、
分岐モヂュールを入れねばならなくなったからだ。標準の直線モヂュールは1本の長さが750mmである。どうしてこの寸法に落ち着いたかは、吉岡氏による収納場所調査の結果である。「日本家屋の押入れの有効深さが800mmである」という数字を見せられて同意した。ダンボール箱に入れて800mm程度にしたかったからだ。
すると8番分岐はこの中に納まらないことが分かった。
P点を中心に置かねばならないので、底辺が375mm、高さが50mmの直角三角形を考えると、そのタンジェントは1/7.5=0.13333333となる。しかし、フログ角θを作図してみるとかなりの差が出る。その番手は、7.53332 である。当初はこのフログを自作するつもりであったが、以前用意した8番フログがかなりあったので、それを生かすためにはtanθ=0.12549のモヂュールを作るべきだということになったのだ。
単独の分岐であれば、8番分岐を750mmの中に収めることも可能であったが、ヤードを機能的に分割するには、P点を中心に置く手法を採用せざるを得なかった。それで797mmという珍しい数字が出てきたのだ。
筆者の親しい友人は、「例によって、極端な機能最優先設計だね。」と批評する。
2008年06月08日
続々 ポイントを作る
早速、栗生氏からコメントを戴いた。ご紹介の語源については筆者も承知していた。実はこの図の表題には, "making the points" と書いてあったのだ。
必ず複数形なのでポインツという表現をする。ご紹介の記事にもポインツと書いてある。ポイントは単数の音なので、P点ではないだろうかと推察したのである。
これは30年以上前のアメリカでの経験に基づいている。地元の鉄道に勤めていた友人がどこかのヤードの本物の図面を見せてくれた。当然のことに、レイルは2本描いてない。すなわち、骨格図しか示されていない。
分岐の詳細な図面も見せてくれた。 その交点を示して、彼はポイントという言葉を使ったのである。トングレイルのことではないのかと聞きなおすと、"それはPointsで、これはPoint Pである。”と言ったのだ。
トング・レイルと言う言葉も、場合によっては使わない。単にポイント・レイルと言うこともある。
その友人は故人となり、聞き直すことも出来ないが、当時の筆者にとっては大発見で、なるほどと膝を打った。
このあたりの言葉は、イギリスから来た言葉とアメリカから来た言葉の2種類あり、歴史的な順番もあるだろう。北海道はアメリカのプラクティスなので言葉が多少違うかもしれない。
必ず複数形なのでポインツという表現をする。ご紹介の記事にもポインツと書いてある。ポイントは単数の音なので、P点ではないだろうかと推察したのである。
これは30年以上前のアメリカでの経験に基づいている。地元の鉄道に勤めていた友人がどこかのヤードの本物の図面を見せてくれた。当然のことに、レイルは2本描いてない。すなわち、骨格図しか示されていない。
分岐の詳細な図面も見せてくれた。 その交点を示して、彼はポイントという言葉を使ったのである。トングレイルのことではないのかと聞きなおすと、"それはPointsで、これはPoint Pである。”と言ったのだ。
トング・レイルと言う言葉も、場合によっては使わない。単にポイント・レイルと言うこともある。
その友人は故人となり、聞き直すことも出来ないが、当時の筆者にとっては大発見で、なるほどと膝を打った。
このあたりの言葉は、イギリスから来た言葉とアメリカから来た言葉の2種類あり、歴史的な順番もあるだろう。北海道はアメリカのプラクティスなので言葉が多少違うかもしれない。
2008年06月06日
続 ポイントを作る

Not to Scale である。
P点が中心に来ている。このP点こそ、ポイントの語源であるはずだと思う。分岐のSkelton(骨格図)を描くと、とりあいカーヴ無しで描かねばならないから、このP点が現れる。目には見えない点であるが、図面にははっきり出る。これがSwitch Pointであり、それを初めて聞いた日本人は「ぽいんと」と覚えたに違いないと、筆者は考えている。もちろん、トング・レイルの先端も point(s)と言うが、それとは別の言葉である。
転轍機の図面をたくさん見ていると、鉄道会社、国、地方によって各種のプラクティス(設計手法)があることに気が付いた。大きく分けると二つある。トング・レイルが曲線か直線かの違いと、フログが曲線か直線かの違いである。京浜急行や阪神電鉄はフログが曲線である。これはアメリカのインタ・アーバンのプラクティスであろう。
この図ではトング・レイルは曲線、フログは直線である。とりあいカーヴは、フログの直線が終わったところから始まる。作図して計算すると半径は2720mmと出た。これは最急曲線よりかなり大きいので、良しということになった。
フログ角は、2(arctan1 / 2N)で、その角度は7°9′9″(7.152668°)である。
その角度のタンジェントは0.12549、サインは0.124513である。タンジェントが0.125でないところがミソである。ここを勘違いすると作図できなくなる。このあたりのことは昔のTMSなどに正しいことが書いてなかった。
2008年06月04日
ポイントを作る

以前、地下室のレイアウトを作るときには、コード125を用いた。ダブルスリップ、シングルスリップ、クロッシング、三枝ポイントを各1台、各種10番ポイントを24台、8番、6番ポイントを数台作った。レイルが細いと、トングレイル、ストックレイルが弱くなり、その補強が難しい。前回はスティール・レイルだったからよかったものの、ブラスでは細いレイルは難しい。
エンドレス、直線部分にはATLAS製のコード157を使用している。高さは同じだが、断面積はカツミ製の約半分ほどしかない。
レイルをバイスにくわえて、フライスで斜めにそぐ。8番ポイントのトングレイルの傾斜は1/35である。ここまで傾斜がゆるいと片面だけそぐと、先端が浮いた形になるから、頭を内側に曲げて中心部が出るようにする。
図はPaul Mallery氏の"Trackwork Handbook”より転載
削り終わったら、ベルトサンダで研いで、めっき屋に持って行く。めっき屋は、普通の人には縁遠い商売であるが、電話帳で調べて、訪ねて行くと簡単に引き受けてくれる。小さい工場で、「領収書なんか要らないから」と言えば安く引き受けてくれる。
ニッケルめっきにもいろいろあるが、硬質と言えばすぐ分かる。レイルに使うのだから厚く着けてくれと言えば、「あんたも物好きだね」と言いながらもそうしてくれる。
フログは振動を受けるので、銀ハンダを使う。普通のハンダより流れ難いが、接着力が優れる。これだけはガスバーナで加熱する。
2008年06月02日
続 組立て式線路
ハンダゴテの握り方にご注意願いたい。この握り方でないと力が入らない。「ハンダ付けは力でつけるのだ。」という祖父江欣平氏の言葉の通り、うんと熱くしたコテを、「エイ」と押し付ける。勝負は一瞬である。あまり長く加熱するとPCボードから銅箔がはがれる恐れがある。肘は机の角に当てておく必要がある。手首の曲げ方の調整で位置が決まり、力が入りやすい。
写真のハンダゴテはたまたま見る角度が悪く、極端に薄く見えるが、ごく普通のものを改造して100 W→125 Wとしたものである。単に、ニクロム線を少し短くしただけである。コテ先は削って先から 5 mmのところを細くし、フログの中などの狭いところに届くようになっている。
PCボードはガラスエポキシ製を用いる。紙フェノール樹脂ではそりが出る。シァでざくざくと切り、型紙となる合板に原寸図を描いたものに、粘着テープで仮留めする。レイルはコード157のカツミ製レイルである。これは高校生の時に入手したものであり、それに硬質ニッケルめっきを掛けた。光沢めっきで非常に平滑である。もちろん引き抜きレイルにはかなわないが、走行音は合格である。この硬質ニッケルはとても硬く、ヤスリがすべる。砥石をつけたモトツールで切り落とす。めっきさえなければ、切り口のヤスリはよくかかる。