鋳造

2018年12月29日

活字金鋳造

 友人から、活字金鋳造をやりたいと申し出があった。詳しく教えてくれとのことだったが、
「簡単なことだから一つだけ守れば良い」
と伝えた。

casting1 彼は ”とれいん” 464号の記事を見て心配になったという。
「うまく行かないような気がする」
と言うのだ。その記事では型は片面だけで反対側は板で押していると言う。薄い型では出来るわけがない。
「こちらの言うとおりにすればできる、くだらない記事は無視されたい。」と強く念を押した。
 その一つだけ守るべきことは、「押し湯を十分にする」である。

casting2 その号は博物館にあるので開いて見た。案の上、記事では融解した活字金をゴム型に板で押し付けている。粘土細工ではないのだから融けたのを押し込んでもダメだ。融けた金属の表面張力は極端に大きい。金属結合が強いからだ。水銀の粒がまん丸であるのを見ればわかる。シリコーン・ゴムの型は金属をぬらさないから、押し込んでも無駄な努力だ。10何回かの試作で台車枠2枚ができたそうだが、それでも奇跡に近い。写真2枚は、同号から転載した。

 二つの型の間に挟まれた空間に、融けた金属に圧力を掛けて押し込むしか方法はない。そのために遠心力を使ったり、水蒸気の圧力を使ったり、あるいは型を多孔質にして裏側を真空にしたりしている。大昔はそんな方法がなかったので、重力を使った。融けた金属の注ぎ口を高くするのだ。その分の圧力が、金属の表面張力に打ち克って、型の隅々まで押し込むのだ。高さは 10 cmほどでもかなり効く。金属は密度が大きいので、少し高くするだけで十分なのだ。活字金は固まるときに体積が縮まないので、高くしても問題が起きない。筆者は最高 30 cmほども、上げた。活字金を使う時は、まかり間違って湯口が先に固まっても、問題ないのだ。

 素晴らしいものができたと喜びの電話があった。指南した甲斐があった。同時に、この記事への不満を聞かされた。この筆者は一体何なのか。自称技師と言ってみたり、今回は「指導」と書いてあるではないか、と彼は怒る。確かに通読すると、そこには"サイエンス"が抜け落ちていると感じる。合金の性質、表面張力、ぬれなどの知見が全くない。これでは成功するのは困難だ。

 その号には、越後要介氏、佐野匡司郎氏、田野倉要介の素晴らしい工作法が紹介されているのに、あまりの落差に驚いてしまった。

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2018年12月31日

続 活字金鋳造

 活字金は硬く、加工性が良い。フライスで削れるし、タップでネジも立つ。今野氏のブログにギヤボックスの蓋を鋳造で作られた件が紹介されている。うまい方法である。油が飛ぶから、ギヤボックスの底の部分には蓋が要るのだ。それを作るのは結構面倒だが、一つ作って型を取り、それを活字金で鋳物にすれば非常に良いものが簡単に大量にできる。採用したい。

 場合によっては、ギヤボックス全体を活字金で作っても問題ないだろう。そういう時には金型を作る方が良さそうだ。予熱しておかないと、最初のいくつかは失敗する可能性がある。冷えすぎるからだ。空気抜きの細孔もあると良いだろう。下手をすると押し湯で噴き出す可能性もあるから、理屈をよく考えて安全な構造の型を作るべきだ。

 人形とか、ストラクチュア関係の小物も活字金で作れば簡単だし、しかも丈夫である。シリコーン・ゴム型でも平気である。鉛では融解温度が高いので、壊れてしまう。3Dプリンタで原型を作ってゴム型を作り、それを活字金で複製するわけだ。かなり簡単にできそうである。
 今まで、活字金は比較的高価であった。しかし最近は値崩れしているから、いくらでも使える。この活字金の利用法をもっと考えるべきだ。

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2019年01月06日

角倉彬夫氏の鋳造法

 先日のコメントでrailtruck氏からご指摘戴いた角倉氏の記事を開いて見た。昔読んだ覚えがあるが、忘れていた。
 角倉氏は活字金を使った鋳造の話をしているのだが、副題はどういう訳か、
石膏型とソフトメタルで” 
とある。編集部は活字金とソフトメタルが同じものだと思っていたのだ。これは記事の価値を損なっている。ひどい話だ。きっと角倉氏は怒っていたに違いない。

 ソフトメタルは鉛を主体とする低融合金で、スズ、アンチモン、ビスマスなどを添加している。その後、スズを主体とするものもたくさん出てきたが、それは装飾に使うものが大半で、模型用は鉛主体のものが多い。名前通り、それほど硬くないことはご存じだろう。凝固に際して体積変化は大きい。ほとんどが縮む。

casting1 角倉氏の記事は石膏型で、draft angle(抜き勾配)がないと不可能である。二つの石膏型の合わせ目に、剥がれるようにススを付けるところなど、時代を感じさせる。この記事では活字金で鋳込む他に、
”ルツボなどの便がある方は真鍮等でも構いません。”
とまで書いてある。すごい話である。できるだろうが、型の温度の設定などが難しい。簡単な型でなければ、遠心鋳造をしないと入らないかもしれない。

casting2 押し湯の件は間違いなく書いてある。空気抜き穴も紹介してあり、素人ではない。しかし活字金は縮まないということをもう少し大きく書くべきである。
一般論で言うと、押し湯ではその湯口の部分が最後に固まるようにするのである。そうすると凝固時の収縮が、その湯口の内部で融けている金属が湯口を通って鋳型内に注入されて補償されることが、期待される。


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2019年01月08日

続 角倉彬夫氏の鋳造法 

 ほとんどの金属による鋳造では、湯口の円錐形の中に、大きな凹みができている。それが見えると、多分成功である。
 活字金ではそれが全くない。場合によっては少し膨れ上がる。ということは、湯口を無理やり急冷すると、圧力が鋳型の中に生じるわけだ。膨れると言っても大したことは無い。縮まないと表現したほうが間違いがないだろう。型の中に隅々まで注入されれば、何の心配もなく、素晴らしいものができる。

 角倉氏のは石膏型だが、シリコーンゴムを使えば、アンダーカット(Fig.1のB)があっても良いのだ。二回に分けてシリコーンを注型しなくても、一回でシリコーンゴムの中に埋没し、横からナイフでギザギザに切って、型を二つに分ければ良い。ギザギザが型のずれを防ぐだろう。空気抜きは、よく切れるナイフでV溝を付けても良いが、シリコーンゴム型を圧迫して隙間を無くすときに、何かのパウダを合わせ目に軽く塗るだけでも用は足りるだろう。

 実は今、上廻りがそれほど細かくできているわけではないイギリス型客車の台車を作ることを頼まれている。現状の台車はかなりひどいので、多少は良いものを作りたい。簡単に作れて線路追随性の良いものにする。暇を見て実行したい。

 台車枠にはネジを切って、枕梁を付ける。タップを立てるわけだが、うまく行くだろう。コメントの中に棒台枠を作りたいという話もあった。理論的には出来るだろうが、たくさん作るわけではないので、レーザカット、ワイヤカットを使うべきだろう。 

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2019年01月10日

鉛合金の鋳物

 コメントを戴いている。

 既存の模型雑誌に出ていた「ホワイトメタル」は、やはりソフトメタルのようですね。 
なんであんなに形が甘いのかと思ったら、収縮が第一要因なのですね。 
この一連の流れだとメーカーと言えど、押し湯を理解せずに作っていたのか、と思いました。 
遠心力や重力を使っていたら、ソフトメタルでもだいぶ出来栄えは違っていたのかもしれません。

 内容が、いま一つ掴み切れないが、おっしゃりたいことは分かる。鋳物の中に形が良くないものがあり、それが収縮によって角が出ていないということなのだろう。筆者は現代の日本製の部品を知らないので何とも言えないが、そういうものもあるのだろう。昔のことを言えば、床下器具のぼてっとした部品は押し湯が足りなかったのは明白だ。材料は活字金ではない安価な鉛合金を用いている。柔らかく、ニッパーで切ると、ねちっとする。活字金はぱちんと音が出て切れる。
 
 最近の部品は非常に細かくできているものが多い。それは遠心鋳造による。ホワイトメタルの部品はほとんどこの方法による。ゴム型を作る。円盤に放射状に作った原型をゴムに埋没し、ゴムを二つに分ける。原型を取り去り、その放射状の空洞部に遠心力で熔湯を流し込むと数秒で固まる。それをゴム型から取り出して、枝を切れば良い。枝の部分は融かして再利用している。
 この方法では圧力が大きくなるので、ゴム型の隅々まで湯が廻り、部品の角が完璧に出る。この遠心鋳造による方法は、ロストワックスによるブラス鋳物に比べ、はるかに安価である。


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