機構学

2021年07月19日

続 クラウンギヤ

 クラウンギヤは、径が十分大きければラックと同等とみなせるが、20枚歯程度では歯型がでたらめである。点接触をしているから、摩耗がひどく、徐々に崩れていく。ピニオンが硬い材料なら、クラウンギヤが適度に減ってそれなりの形で、ある程度の時間使える。しかし、音がするし、効率も良くない。要するに、減ることを前提にしている。

 ところが以前見たものは、大きな40枚歯を硬質クロムメッキしてあった。これはまずい。そもそも、歯車をめっきすると歯型が狂うから、常識的にはしてはいけないことである。光っているから滑らかだと思うのは、勘違いである。顕微鏡で見ると、表面は粗雑だ。(自動車のエンジンのシリンダ内壁はクロムメッキしてから研磨してある。そうすると、その粗雑面の突起が削り落とされ、無数のクロムの金属結晶の隙間に潤滑油が満たされて摩擦を減らしている。)
 
 ところがそれを使っている人は、嬉しそうに「クロムめっきしてあるから減らない」との”効果”を謳うのだ。大ギヤが硬いと、ピニオンがどうなるか、である。そこで見たピニオンは8枚歯のブラスであった。小さいものを軟らかい材料で作れば、たちまち寿命が尽きる。潤滑油が飛び散る開放されたギヤであったから、あっという間であろう。ギヤボックスを付けない人は大半である。密閉式にして油溜まりがあれば、かなり違うはずだ。

 ギヤ比は、8:40=1:5 であった。割り切れるし、ピニオンが小さ過ぎて、歯型がおかしい。走らせるとギャーという音がするが、本人たちは至って無関心で、静かだと言う。また、各動輪が個別に駆動されるから、牽引力が大きいとは思えない。

 こういうことに注意を払わない人は多い。いわゆる腕の良い模型人にも、この種の人はいる。合葉氏の言う「正しい鉄道模型」の実現は遠いと感じる。

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2021年07月17日

クラウンギヤ

 前回紹介した記事ではクラウンギヤが用いてある。これは意外だ。合葉氏に見せてもらったものはすべてウォームギヤであった。作られた時期によって違いがあるのかもしれない。

 合葉氏宅で話をした時、
「貴方はどうしてウォームを使うのか?」
と問われた。答は単純であった。
「静粛であることは、この上ないのです。効率も、工夫すればかなり上げられます。潤滑剤の進歩があり、他のギヤに勝るとも劣らないものができるはずです。」
と言うと、
「それでは、クラウンギヤについてはどう思う?」
と聞かれた。筆者は思い切って挑発的な表現をした。
「クラウンギヤは嘘で固めたギヤです。どこにも正しい部分がない。」
 合葉氏は腹を抱えて笑った。
「その通りなのだけど、そこまで言うかって感じだね。」

 こういうやりとりがあって、合葉氏は筆者のウォームギヤに傾倒していった。合葉氏と会う頃までには、筆者自身もウォーム・ドライヴの歴史については勉強して、実車にも使ってあったことを知っていた。
「初期のPCCカーにも使ってあったのです。」
と言うと、驚かれた。
「よくそんなことを知っているね。伊藤 剛氏は、名古屋市電800型で、それを近代化したのだね。名工大の先生にお願いして、より効率の上がる歯型を計算してもらったのだよ。PCCはその後、グリーソンのハイポイドギヤに切り替わったのだけど、そのギヤが精度高く出来るようになってからだ。」 
「軍用6輪トラックにも多条ウォームが使ってありました。」
と言うと、
「うーん、参った。我々はウォームギヤを再評価せねばならないわけだ。山崎氏は『ウォームは逆駆動出来ない』と、昔のミキストで断言していたので、それは間違いだと指摘したが、わからなかったね。モリコーのギヤも逆駆動できる細い2条ウォームだったのだけど、彼は全く理解しなかった。」
という会話があった。この時点で合葉氏は、
「貴方のウォーム・ドライヴこそOゲージの未来を切り開く。」
と述べた。


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2021年02月17日

センタピンの無い機構

 この機関車も、テンダのセンタピン位置にドライヴシャフトが通るのでセンタピンが置けない。すなわち、台車の回転は何らかの疑似回転運動をさせる方法(仮想心皿方式)を採ることを考えた。今回は単純に回転するだけなので、面倒な計算はいらない。リンクを付けて前後の位置だけ保持し、左右への振れ止めがあればよい。リンクを快削ブラス板から切り出した。

linkage こんなことを考える人はまずいないだろうと思っていたが、友人から坂本 衛氏が凸型電気機関車に採用していたという情報があった。条件が限られれば、誰しも行きつくところは同じである。これは「鉄道模型工作手帳」という本にあったそうだ。コピィを送って来た。筆者が作りかけたものと全く同じ配置であったのには驚いた。これを見て、やる気が失せ、別方法を探ることにした。誰もやってなければ作ってみたが、すでにあるなら冒険するまでのことはない。

 実を言うと、作り始めて分かったが、この方法では台車はかなり不安定だ。台車は一つ 350gもある。持ち方によっては、リンクが曲がって壊れる可能性があった。それを外れて来ないようにうまく支えるのは意外と難しいし、さらにリンクの邪魔をしないように作らねばならず、かなりの工夫が必要だ。
 熟慮の結果、より堅固な方式を採用することにした。

 あとは時間があるときに作れば、70時間でできるという計算だ。今その時間がない。信号機の工事に時間を掛け過ぎてしまった。まだやることはかなりある。


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2020年12月13日

続々 Sofue Joint

 1本ピンのSofue Jointはトルクを伝えているのではない。変位を伝えているのだ。この説明をどのように書けば一番わかりやすいか、といろいろ考えた。

 早い話が、クランクを手で廻していることと同じなのである。フライス盤のZ軸高さを決めるネジのクランクは、本体が重くないと廻せない。小型のフライスでは押さえつけないと、本体が踊ってしまうだろう。
 いつも有用なコメントを送って戴くTavata氏も、「氷かきのクランクと同じ」という解釈を送って来られた。確かにこれも、本体を押さえ込んで足を踏ん張って廻さなければならない。

 頑丈な構造体の中に、ある半径のクランクがあって、他方の腕でそれが廻されているわけだ。沢山の腕で廻すと考えると、多気筒の星形エンジンも似ているだろう。
 丈夫な構造体を作る余裕があれば、製作は容易で、動作は確実である。微妙な芯ずれが許されるのは、製作者にとってはありがたいことだ。

 今回製作中の機関車に組み込むかは思案中である。

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2020年12月09日

続 veranda GTEL を作る

 スパン・ボルスタを持つ車輛は比較的少なく、その構造をじっくりと考えるチャンスは、今までほとんどなかった。今回はアジン製のGTEL を観察して、その問題点を洗い出した。衝突時に力がどのように掛かるかを考えると、弱いところは2箇所のセンタピン周りである。台車にはほとんど力は掛からない。

 連結部からの衝撃力は2箇所のセンタピンを剪断するように掛かる。センタピン周りの構造体は折り曲げられるだろう。祖父江氏はそこに角材を貼り付け、補強していた。しかしセンタピンだけは細いままだったので、
「ぶっつかったらさー、センタピンが切れっちまうからね。」
と言っていた。筆者はそのセンタピンをスティール製に替えた。しかし、その周りが弱いので、どうなるかは不明だ。

 速度を出すつもりは全くないが、なにかの間違いで追突することは、考えておかねばならない。長大編成での連結器切れは起こりうる。一編成45 kgほどあるので、置き去りにされた貨車にぶつかるとかなりの被害が出る筈だ。貨車は壊れても機関車は温存したい。

lap joint 主台枠中心にはチェインを通すので、角穴が開いている。だから、そこが弱くなる。その部分は 3 mmの厚板を用い、縦の部材を追加している。一方、前後の床板は薄い1 mmを使っている。3 mmの板と1 mm板は、祖父江氏の手法で欠き取って重ね継ぎをしている。ハンダが廻ると、最初から一枚板だったような剛性がある。

 今回設計の主台枠とスパン・ボルスタ2本の質量は、約 1 kgである。ジグを作って押し込み、ガスバーナで焙ってハンダ付けした。そう簡単には壊れないものが出来たが、やや過剰品質ではある。  

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2020年12月07日

veranda GTEL を作る

 長年放置してあったヴェランダ・タービンを完成させるべく、とりかかった。台車は30年以上前にAjinで調達したものだった。
 どうしようもない部分もあるが、台車の側面のディテールだけは秀逸で、 手を入れれば十分使えた。問題は、彼らが実物の図面からそのまま作っていたことだ。ペデスタル部には必要以上の凹凸がある。実物通りに作ったのだ。上下の滑りを確保しつつ軸受の距離(枕木方向)を保つのは良いが、台車ボルスタがへなへなで何の意味もない。ボルスタを補強し、重い本体が載ったときにもへたらないように、せねばならない。強度が不足しているし、また模型として作りやすい構造にすべきである。

 久し振りに鋳物に細孔を開けた。下穴ドリルを折り込んでしまい、ステンレス塩水漬けで3日待った。うまく錆びてくれたので取り出し、ネジを切った。ネジはあまり使わないM1.7で、タップの予備が無いのでヒヤヒヤであった。

 スパン・ボルスタは衝突に耐えるようにした。祖父江氏がAjin製GTELの剛性のなさを指摘していたので、材料置き場をひっくり返し、厚さ4.2 mmのnaval brass (ネーバル黄銅)の大きな板から切り出した。この長さを糸鋸で切るのはとても自信が無いので、ジグソウに金工用刃を付け、時間をかけて切り出した。自宅のフライス盤で直方体に仕上げ、台車の嵌まる部分を少し彫り込み、前後端のバッファを削り出した。
 ネーバルは海水に耐える材料である。廃金属商で入手したものだが、粘りがあって加工は大変だ。フライス刃は喰い込みやすく、難削材用の刃を用いる必要がある。さらに、切削油をたくさん使って削らねばならない。また、ネジを立てるのは一苦労であるが、とても丈夫である。

GTEL span bolster スパンボルスタの中央部はさらに1 mmと2 mm の板を貼り重ね、全面ハンダ付けをした。ここの部分には孔が開いているので弱く、本物も丈夫に作ってあるのだ。

 本体の骨組みは9.5 mm角のアングルで3 mmの板をはさみ込み、スパン・ボルスタのセンタピンはΦ8である。ここが弱いと衝突時に剪断されてしまう。 
 中心部は高さを稼いで撓みを防ぐ。トラス橋と同じである。


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2020年11月25日

続々 Sofue Joint 

 先日紹介した現物以外にかなりの数の実例がある。いずれ写真をお見せしよう。

 また似て非なるものとして、中心ピン付きのものもある。これはトルクを伝えている。
Sofue Joint 2 これが実用化されている例があるのだろうか。かなり探したが見つかっていない。これはDDA40Xなどの4軸台車を全軸駆動する時に使う。以前はこのジョイントを六角のルース・ジョイントでつなぎ、反トルクをバネ材で承けていた。バネ可動時に無理をしないようになっているのだ。
 現在なら、可撓継手(フレキシブル・ジョイント)を使うが、当時は無かった。

Sofue Joint 2 (2)Sofue Joint 2 (1) 中心ピンで反トルクを承け、外周ピンでトルクを伝える。これは先回のと比べると使い方が簡単である。周りの剛性も必要がないが、駆動軸が振り廻されないような支持法が必要である。ここでは、中心の2軸が、台車内で左右に動かないことが必要である。動軸が左右にガタがあってブレる模型を見ることがあるが、そのような車輌には応用できないということである。コンパクトにまとまり、安上がりである。音は聞こえない。
Sofue Joint 2 (3) これは軸が可動であっても無理なく力が伝わる。厳密には等速ではないが、曲がる角度が非常に小さいので等速と見做せ、問題ない。各軸にはボールベアリングが装荷され、3条ウォームで極めて軽く作動することが、うまく行く秘訣である。

 この継手が成功したので、祖父江氏は嬉しそうだった。全く問題なく作動したので、いくつかの輸出モデルにも付けたはずだ。この種の継手は、模型全体が総合的に正しい設計でないと正しく作動しない。採用を考えていらっしゃる方は、その点をご理解戴きたい。

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2020年11月23日

続 Sofue Joint 

Sofue Joint 祖父江氏開発の一本ピンのジョイントが話題になっているようだ。このページへ訪問者が異常に多い。検索サイトからいらっしゃる方が、普段の数倍もある。
 brass_solder様からの情報で、TMS516号1989年7月号に載っていることを確認し、写真を拝借している。

 理屈を勘違いしている人もかなりあるようだ。コメントでいろいろなことを書いて来られるが、根本的に間違っているものは掲載していない。撓み継手のピンを減らしただけだというのは、最も多い誤解釈である。

 この継手はトルクを伝えているのではない。この継手を囲む構造体が大切で、それが前後上下左右に動かないように押さえつけている。この点はTavata氏のご指摘の通りであるが、そのコメント掲載後にも誤った解釈がいくつか来ている。

 TMSの新製品紹介にあったC57は、筆者の機関車を完成させた直後に、祖父江氏のアイデアを実現したものである。これ以外にカツミがHOに使用した例があるのだろうか。
 TMSの解釈は、コアレスモータは軸方向の力に耐えられないからだとある。それもあるかもしれないがそれだけではない。僅かな軸ずれを許容できるメリットが大きいのだ。

 そのC57のギヤボックスの中の写真がある。なんと4条ウォームで16歯のヘリカルギヤと組んでいる。そのあとはまたスパーギヤ2段で1:4にし、全体で1:16にしてある。これではだめだ。「互いに素」になっていない。動きが渋いそうだ。これがもし、互いに素で、モリブデン・グリースが使ってあったら、全く違う動きを見せ、評価は大きく変化しているはずだ。ウォームの進み角は非常に大きく、歯型が心配だ。これは角速度が一定にならない可能性がある。

 ところで、このギヤボックスにはトルクアームが付いている。これは明らかに祖父江氏の指導である。不思議なのはこの手法が使ってある模型が極めて少ないことだ。どうしてトルクアームを付けないのだろう。

 4条ウォームの模型が日本にもあったというのは驚きだ。韓国製で4:40というおかしなものがあったらしいことは聞いている。


「歯車 互いに素」を検索すると、拙ブログの記事が最初の方に出て来るそうだ。毎日の読者数のある一定の割合で、この記事を検索する人がいるわけだ。模型の記事なのできっと驚いているだろう。 

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2020年11月15日

Sofue Joint

Sofue Joint 1 このジョイントには参った。常識では考えられない構造だ。二つの向き合った円板が、たった一本のピンで引っ掛かって廻っている。相手は長溝で、ピンの太さより微妙に幅が広い。Φ1.6のピンに対し、2.0 mmのスリットである。ピンは硬く、スリットは軟らかい。このジョイントで、軸の心ずれ、軸長手方向の伸縮、微妙な傾きを全て吸収する。オレンジ色の矢印はピンである。バランスは取れていないが、軽く半径も小さいから、影響は少ない。
 幾何学的には問題がある。しかし、比較的低トルクで、回転数も知れている。磨り減ったらスリット側を取り替えれば良いのだが、ほとんど減る気配はない。モリブデングリスを少しだけ塗ってある。沢山塗ると飛び散るだろう。

 初めはこんな子供だましの方法ではだめだと思ったが、走らせているうちに、これは無視できない方法であると評価した。筆者の8軸ディーゼル電気機関車の半分ほどに装荷されている。どの機関車も、複数のモータ搭載であっても全部の軸が連動し、同時に回転する。こうしないと牽引力は稼げないが、この理屈に興味を示さない人は多い。


Sofue Joint 2「インチキのように見えるけど、これでもいいんだぁ。軸重が大きいから問題ねえよ。レイルがあるから上下動はねぇってわけだし、台車は左右にゃ動かねえんだから、トルクは伝達されるさ。昔からアイデアはあったんだけどねぇ、付けたのは初めてだよ。」と言った。
 そんな馬鹿な、と言いたくなる設計であるが、問題なく作動する。オルダム継手は摩擦損失が大きいがこれは少ない。面白い設計だ。これは3条ウォーム、ボールベアリング装荷だからこそ通用する工夫で、ドライヴそのものの損失が大きいと振り廻されて、振動の元になってしまうはずだ。駆動軸でトルクが小さいから問題が目立たなくなるということもあろう。
 また、Oスケールの大きさだからこそ、うまく行くのだと思う。HOの大きさでは、径が小さい割に変位が大きく、難しいだろう。

 角速度変化はないとは言えないが、全く検知できない。重負荷でも音は聞こえないのだ。その後、かなりの文献を調査したが、これに関するものはまだ見付けられない。祖父江氏のオリジナルなのだろうか。1987年に取り付けられている。
 先例を見付けられた方は、お知らせ願いたい。

 この頃は祖父江氏がチェイン・ドライヴで様々な試行をしていた頃だ。ありとあらゆるところに使ってその音と耐久性を調べていた。

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2020年08月29日

続 メルクリンの失敗

 先日のメルクリンの不合理なユニヴァーサル・ジョイントについて、01175氏から調査結果をお知らせ戴いた。これはドイツ製ではないそうで、驚いた。

 メルクリンは、2006年に創業一族からイギリスのファンドに売却されたが、2009年に倒産しているそうである。そして2010年に自力再生を果たしたとのこと。
 そのファンドに売却されたのちの製品は中国のサンダカンという会社(現在はバックマンに吸収された)に製造させたものがある。そのジョイント部分がおかしい2007年製の電気機関車(ジーメンスのユーロスプリンタ)もサンダカン製かもしれないということである。

 話題になったH型スパイダ金具は、製造初年1957年の 44型蒸機機関車に既に使われていた。写真を出したディーゼル機関車は1966年製の V90 という入替用機関車だそうである。


 メルクリンがこのような初歩的なミスを犯すはずは無いので、なにか怪しいと思っていたら、案の上中国製であった。これでは改良部品を所望しても無理だろう。捨てるしかない。それにしても01175氏の情報収集力には驚きを禁じ得ない。

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2020年07月24日

メルクリンのuniversal joint

 知人に古いメルクリンの機関車の整備を頼まれた。B型台車を二つ付けたディーゼル機関車である。今までメルクリンは眺めていただけで、手に取るのは初めてであったが、興味があって引き受けた。綿ボコリを噛んでいるのを取り、上下バラして注油するだけの事だと思っていたが、意外な展開であった。

 開けて見て驚いたのは、モータが、車体に固定されている。台車は派手に首を振るので、そこには何らかのしなやかに曲がる動力伝達装置が必要である。

Maerklin (4) モータからスパーギヤで減速されるのだが、途中のギヤはかなり大きい。そのギヤには大きな穴が二つ開いている。グリスが詰まっているのが、固まっているようだ。
 台車を抜くネジを外すとパラリと部品が落ちた。それは、H字型の板であった。スティール製で、4つの角を丸くしてある。 

Maerklin (1)Maerklin (2)   バラバラになった状態では機能がわからなかったが、再組立てしてみるとなるほどという構造であることが分かった。そのH型板がユニヴァーサルジョイントの中間軸を構成していて、4つの角は2つのスパイダの代わりをしている。部品の数を大幅に減らして、ほぼ同等の機能を得たわけだ。これを見ると角度はほぼ等しく、十分に等速であると推測する。
 これらの写真をご覧になると、その機能がお分かり戴けるだろう。

Maerklin (3) そのH型の部品は硬いスティール製で、2つの孔の中で動く。この部分を掃除して、新しいグリスを詰めた。モータ軸には保油装置が有り、そのスポンジに注油すると、スパーギヤの方にも油が広がっていくようになっている。このあたりの設計思想は素晴らしい。ただし油は撒き散らされる。それが集電の突起あたりにも付いて、滑りが良くなっているのかもしれない。ダイキャスト鋳物は出来がよく、緻密である。直捲3極モータは回転が意外と滑らかであってトルクは十分だ。軽くはないが、押して動く。自動逆転器の作動は確実である。歯の数は、ちゃんと互いに素になっている。また、あちこちにコンデンサが入れてあって、雑音防止に寄与している。


 ライオネルも、メルクリンも、よく出来たおもちゃである。学ぶべきところはたくさんあるが、いわゆるスケール・モデルにはほとんど採り入れられていないように見える。

 電源と線路一巻きを借りてあったので、完工検査をしてお返しした。以前よりずっとよく走るそうで、安心した。


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2020年05月13日

トルクアーム、トルクチューブ、吊掛け式

 コメントが多いので、予定を変更して稿を起した。

 吊掛け式は、トルクチューブの先端に剛の状態でモータが付いていると考えられる。そしてそのモータの一部を、僅かの自由度を与える方法で(ゆうえん氏は両面接着テープで)フレイムに取付けている。要するにモータ軸の延長線に対して垂直の動輪軸が、減速装置を介して廻るだけ、と考えることができる。その動軸が、バネその他の懸架装置で、レイルに押し付けられている。

torque tube 左の写真のトルクチューブはその先端が一点で固定されている。SKT氏の指摘通り、長孔があり、多少の伸縮(チューブが斜めになっているから)があっても逃げられるようになっている。この方法ではモータは固定できる。これはOスケールではありがたい。モータは350 gもある。そのモータが吊掛け式で動くと壊れやすい。また吊掛け式ではモータ固定ネジが、軸方向から締められるので、どうやって締めるべきか、設計に苦労する。また、吊掛け式ではバネ下質量が大きいから、軸重は均等にはならない。即ちレイル接続部を渡る音が、同じ音ではなくなる。

 トルクアーム方式は機種ごとにトルクアームの位置を考えねばならない、ところがトルクチューブはすべて共通部品で済む。モータ軸とドライブシャフトとはほぼ同一直線状にあれば良い。ルース・カプリングを介して付ければ、全く無調整でよく走る。トルクチューブには簡単な腕を付け、その先端にはピンを差すようになっているだけで、とても簡単である。モータ・ブラケットに小さな腕をつけたのは祖父江氏のアイデアである。これは優れたアイデアで、簡単に、かつ確実にできるので、量産には都合が良い。筆者のプロトタイプは、配線用のゴムのグロメットで承けたが、これでは経年変化が無視できない。10年でパリパリになったので改装した。

 この駆動方法は、祖父江氏が改造して世界中に出て行った1000輌のほとんどすべてに使われている。即ち、Sofue Drive である。

 愛読者氏のコメントで質問されているフレイムが曲がる話は、ギヤボックスや反トルク承けとは全く無関係の話である。おそらく、高ギヤ比の減速装置の付いたモータを取り付けたが、動輪が何らかの原因で廻らなかっただけのことである。単なる勘違いであるので、削除した。


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2020年05月09日

続々々々 ATSF Heavy Pacific

torque tube 動力部分を示す。過去に何度か触れたトルクチューブである。これは筆者の発案で、祖父江氏が全面的に採用したメカニズムである。ギヤボックスから生えた剛性のある円筒の後ろをピンで支える。発生するトルクは、そのピン一本で受ける。ギヤボックスは自由に動くので、サスペンションに何ら影響を及ぼさない。トルクをリンクで承けるのも良いが、そのリンクは意外に目立つものである。トルクチューブは目立ちにくい。

 この種の反動トルク承けは実物にとっては大切な機械要素であるが、そのスケールモデルと称する模型に正しく付いているのを見ることは、まれである。TMSの記事で出現確率を調査されると面白いと思う。コンテストの入賞作品でさえも、ついているものはまれだ。

 スリップさせながら(最大のトルクを発生)、フログなどの不整部分を通過させる時、バネ、イコライザの動作があっても、全く同じように引張力を発揮することが求められる。要するに動輪の上下動があっても、引張力が変化してはならないのである。これはサウンド装置を働かせながら、重列車を牽いてポイント上で起動するとよくわかる。

 ギヤボックスは負荷の大小に関係なく、自由に動かねばならないのだ。 

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2019年10月11日

続 歯車の要件 

 他の友人たちとの会話の中で、歯数の少ない正しい平歯車が欲しいという話が出た。どれもこれもやかましいのは、角速度が一定にならないからだ。市販のものは怪しい歯型で、しかも偶数歯の物ばかりだ。奇数歯のものがあれば、かなり助かる。”互いに素”を作りやすいからだ。しかし一般的に言えば、14枚以下のものは感心しない。

 他のゲージも含めて走行音を聞いて歩いた。歯車の音がするが、正直なところ、誰も気にしていない。本物ではありえない音を立てていると、気分が悪い。車輪の音も誰も気にしないのであろうか。明らかに「めっき音」がする。
「めっき音」というのは、筆者が勝手につけた名前だが、精密な旋削だけで出来たものと、ブラス素材をめっきした物と比較すると如実にその差が分かる。めっきしたものはゴロゴロ音がするのだ。表面が粗雑なのだが、光っているので研磨されていると信じてしまうのだろう。
 以前にも述べたが、細かい紙やすり(#1200程度)で磨くとかなり改善される。

 話が飛んだが、模型用の正しい歯型の、奇数歯の歯車が欲しい。こういうものこそ皆で共同して出資し、作るべきである。模型クラブ組織があるのだから、出来ないことではない。インヴォリュート歯車の設計能力のある人も居る筈だ。歯車は意外と高くないものなのだから。

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2019年10月09日

歯車の要件 

 スパイクモデルの2条ウォームをたくさん持っている、という友人Bob氏が来た。
「残念だよね。dda40xさんの記事を読めばすべてのノウハウが書いてあるのに、それを読み取れないんだね。どうせ盗まれてしまう特許より、名を残すという手に出ているんだから、教えてくれと言われたら教えたんだろ?」
「そりゃそうさ、世界で一番素晴らしいものが作れるように指導したさ。」

 現実に出来たものは感心しない出来で、このブログで検討されている。それでも動くそうだ。割り切れるギヤ比で、もったいない話である。ダイキャストの型代を掛けて、変なものを作っている。もし正しい設計の物であれば、素晴らしい走りを提供し、模型界を席巻したに違いない。模型人は人の指導を仰ぎたくない人が多いらしい。”オリジナルを凌ぐコピィなし”ということが、わからないのだろう。

 インヴォリュート歯車は角速度を等しくするために作られたのだが、それを忘れた実例もある。歯型が正しくないものはダメなのである。「動きます」とは言うけれど、正しい角速度で動いている証拠を見たいものだ。重負荷をかけて高速で駆動する時、角速度が等しくなければ音がする。
 ウォームギヤの特質は、バックラッシを理論上、ゼロに出来ることである。こういう歯車は他にない。即ち無音に出来る(現実には潤滑油が廻るように、ごく僅かの隙間を空けるが、普通の歯車より、ずっと近づけることができる)。工作機械で使う割出し盤にウォームギヤが使われているのは、そういう理由である。
 オルゴールに付いている2条ウォームもどきが、どういう動きをしているかはよく分からない。スプリングモータで軽い羽根を動かしているので、この場合、問題は見えて来ない。

 平坦線でぐるぐる廻しを楽しむ分には、それでも良かろう。最近問い合わせを戴く方々は、筆者と同じように勾配線を重負荷で登りたい、そしてエンジンブレーキを掛けて下りたいという人達だ。正しいギヤを使わないと泣きを見る。 
 先日博物館のレイアウトを見学にいらした方は、本当に無音で機関車が動くので、とても驚いた。彼は、
「想像したのと違っていた!」
と叫んだ。ある程度はガラゴロ音がするのだと思っていたらしい。
 道床のエラストマも騒音減少に貢献しているが、動力車の無音化は、それとはまた違う話だ。

 歯車の最小歯数については既に述べた。そういう歯車しか使っていない人がこれを見れば、驚くのは当然だろう。

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2019年10月07日

関西合運参加

go-unn 年に一回だから、行かねばならない。自宅から山を越えて街道を行く。早朝で交通量も少なく、平均速度は 50 km/hだから、かなり速い。高速道路は山崩れとか、いろいろな障害があって、渋滞気味で避けた。燃費の良い車で、35 km/L も走る。軽快なドライヴであった。

3D printing 今年は新作の貨車3輌と切断機(テーブルと折れたハンドル、その代替品)を展示した。高精度3条ウォームの実物を見たい、というリクエストもあったので、持って行った。
 3D プリンティングの見本を置いておくと、興味のある方はじっくり見ている。質問にはお答えした。今まで紹介されている材料とは違うことに興味がある人が多い。

 切断機の諸問題については、興味のある人が多く、テーブルと新ハンドルの注文 を受けた。テーブルは、あと6台ある。もう再生産はしない予定なので、売り切りである。ハンドルは、1/2インチネジのを持っている人は不安で、注文が多かった。皆さんフライスはお持ちのようで、こちらも気楽である。キィ材と共に送る予定だ。ご希望の方はコメントを通じて連絡されたい。

 すでにテーブルを買われた方が、感想を知らせてくれた。横についている定規が便利で、役に立つということである。テーブルが薄くて、小さなクランプで材料を留められるのも有難いとのことだ。設計者としては、この種のお褒めは嬉しい。

 遠藤機械の切断機については、専門家のコメントとして、「ハンドルが折れないのが奇跡だ」という話には、皆驚いていた。

 3条ウォームの新しいギヤボックスには興味津々で、廻してみて愕然とする人が多かった。ただ廻りますというのとは、異なる世界であることがお分かり戴けたのだ。押して動かす動作をすると、感動するらしい。  

 紹介した本の英語版、日本語版を置いておいた。意外なことに、日本語版は持っている人が多いことがわかった。英語版の著者名にLinn Westcott氏の名前を確認すると、皆さんは安心するようだ。 

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2019年08月24日

中澤 寛氏の記事

 中澤氏から、TMSに載らなかった写真が送られてきた。掲載する許可を戴いたので、ここで紹介したい。

Nakazawa1 ロンビック・イコライザの一種の方法で、片軸だけに依存するタイプである。この方法は、ガタが大きいと、動作が不確実になる可能性がある。それを強調する人も居るが、作ったことが無い人だろう。作ればすぐに理屈が分かり、解決法が得られる。
 このタイプは、ガタが無いように作ることができれば、イコライザの回転中心と軸とが同じ高さにならなくても良い。つまり、菱形タイプより、はるかに作りやすい。どちらかと言えば、初心者にはこれをお勧めしたい。アメリカの講演会で見せた時も、このタイプの方が人気があった。軸の中央に、ボールベアリングを嵌めて、そこを保持することができれば、さらに具合が良くなるだろう。

Nakazawa2 伝動台車である。電車では1軸に伝導することがあるので、そこにイコライザ支点を置く方が良いことがある。微妙にひねられるが、その角度が小さければ、コジることはないだろう。
 これは、台車枠を外した状態である。スペイスがあれば、手前に支点を置いて、ギヤボックスを完全に浮動させる方がより良いが、実際にはそのようなスぺイスを得るのは難しいだろう。


Nakazawa3 集電シュウは先を二股にしている。接触点を増やし、接触抵抗を低減させる。ブラシは極めて薄いものを使うべきである。全軸がイコライズしていて、なおかつ、全軸集電であるから、走りは極めて滑らかな筈である。


 TMSがどうしてこれらの写真を使わなかったのかは、極めて不可解である。全くイコライザというものを理解していないのではないか。写真を見て、その作動状況が目に浮かぶ人なら、必ず使うであろう。車輛の外観だけにしか興味のない人が編集に携わるのならば、この雑誌の存在価値はない。どうして、スタッフに工学を理解する人材を入れないのだろう。見つからないのなら、連絡してくれれば助言くらいはして差し上げる。出典に書いてあるのだから、連絡が付かないことはない筈だ。 

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2019年08月07日

TMSの記事

 正直なところ、TMSを読んだのは久しぶりだ。旧体制のころからやっているドイツの”速報”とやらを、1年も続けているのは、どう考えてもおかしなものだし、小林氏の記事も連載するようなものでもない。金をとって見せるのだから、もうすこし良い記事が欲しい。

 今月号の中澤 寛氏の車輛は素晴らしい。ところが記事がおかしい。皆さんの中で、あの記事を熟読されて、意味を完全に理解できた人が居るのだろうか。
筆者は何が言いたいか」を忘れてしまった編集だ。
 何回か読んだが意味が分からないので、中澤氏にそれとなく聞いてみたら、やはり筆者の推察した通りであった。説明に対応する写真を殆ど載せていないとのことだ。走行性能を向上させる工夫について画像が全く無くなっていたのは、心外であったそうだ。

 言えることは、編集者は模型工作をしたことがあまりにも少ないのではないか。ゼロではないだろうが、糸鋸、ヤスリ、ドリル、ハンダゴテを使って、ブラスの板から、イコライジングやその他のメカニズムを作り上げた経験がほとんどないのではないか、と思う。あまりにもトンチンカンな記事で、情けなくなってしまった。

 30年前のヤマ氏のころ、実物誌が増えてきたので、実物の話題を載せるのをやめるとの決断があった。またぞろ実物の話題が載っていて、しかもそれが間違っているのでは困ったものだ。
 金を取っているということを忘れてはいけない。先のM氏が書いた不発弾の中に、「TMSを100円にして、イモンの広報紙とする」という案が書いてあった。その第一歩なのかとすれば、あまりにも悲しい。


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2017年08月04日

荷物車の中

 荷物車は窓がほとんどないので、中に色々な工夫を詰め込める。
 
 5輌のうち2輌は、大きめのショック・アブソーバをつけるつもりだ。ラジコン用の部品を、リンク機構で前後を一つで受け持つ。

 荷物車には貫通幌がないので、連結面が当たる寸前まで縮んでも大丈夫だ。トラベルは各 5mm程度にしないとみっともないので、2輌の4箇所に付ければ、総トラベルは20 mmになる。

 普段は所定の位置まで延びていて、急停車時には縮む。20 mmでも、力積はうんと小さくなるから、連結面の座屈は起こりにくい筈だ。連結器のピンも壊れないだろう。
 
 アメリカ人の組んだ客車には台車抜きで2 kgもあるものがある。中に補強のつもりで、3/8インチ(9.5 mm)の角材が2本も入れてある。床面は平角棒で固定してある。重いわけだ。ボールベアリングを付けたら、凄まじい転がりを示すが、急停車時の事故が怖い。これが脱線転覆すると、周りに甚大な被害が及ぶ。
 スケールスピードでの運転をするが、信号をよく見て、事故が起こらぬよう十分に注意をする。

 7月下旬から、アメリカに来ている。今回はLAXから入国して、アリゾナ、ニューメキシコ、テキサス方面に行く予定だ。本業の取材を兼ねて来ている。
 しばらく休載する。



2017年05月04日

ブレーキの設定

 よく考えてみれば、鉄道車輛にとってブレーキは生命にかかわる部分だから、細心の注意を払って設計されているはずだ。
 前に付いているからトレーリングだと信じ込んでしまったことは、恥ずかしい。物理的な考察をせずに、見かけだけで判断してしまったのだ。

self actuating brake 図を描けば、ぶら下がったブレーキと同じであることに気が付く。Aはリーディングであることは明白だ。B2はAと同じでリーディングである。ブレーキの腕には押す力が掛かる。B1は腕が引っ張られているだけの違いでこれもリーディングに相当する。物理で、「押すと引くは同じだ。向こうから見るかこちらから見るかだ。」と習ったのに、忘れてしまっている。この図ではB1とB2はつながっているように見えるが、別のものを考えている。

 またまたモップの絵を描くと右の図である。上を押すのと、下を引くのは結局は同じことだ。

 昨日から、いろいろな人と意見の交換をしていた。出てくる意見はどれも面白い。動輪が減るとどうなるかということを気にする人が複数いた。確かに接線が中心に近づくと支点を通るようになりかねない。おそらくその手前でタイヤを取り替えると思う。ブレーキ・シュウを取り替えても関係ない。ブレーキ支点を移動できれば良いのだが、そうなっているようには見えない。

 self-actuating (自己倍力装置)である前提で設計しているので、必要とされるブレーキ力を下回ることは許されない。おそらく、機関士はそういうことには極めて敏感だから、効きが悪ければすぐに報告されるだろう。特に高速で走る旅客用機関車にとっては、旅客の生命が掛かっているから、その整備は大切だ。

 昔はそのような伝承があったのだろうが、現在の数少ない保存機の場合は、「これはブレーキが効かないのではないか」とは、気が付かないだろう。タイヤの摩耗限界が、そのような基準で決められていたことも知らない世代に入ってしまったのではないかと危惧する。事故が起こらなければ良いが。

2017年05月02日

日本の蒸気機関車のブレーキはリーディングである。

 先回の記事が出た直後に、表題に示す連絡を受けた。連絡してきたのは、工学のエキスパートのT氏である。(leadingと言うよりも、むしろself-actuatingと言うべきかもしれない。)
 T氏は、鉄道車輌よりももう少し大きなものの姿勢を制御する専門家である。
 

 そんな筈はないとも思ったが、彼の言うことが間違っていたことは、過去に一度もない。食事の時も上の空で、皿と箸でシミュレートした。彼の意見は正しいことが分かった。わざわざ、ブレーキを効かないようにするはずはない。

leading 結論は出たが、どうやって説明するかである。極端に簡略化した絵を描くとこうなる。それを平面上のモップにすると、下の絵になる。
 モップを塀の上に載せて、下から横に引っ張ると、モップは質量と重力加速度によって生じる摩擦力以上の摩擦力を生じる。喰い込む方向に力が掛かるのだ。エスカレータのベルトを拭くときにこういう装置を付けると、喰い込んで止まってしまうかもしれない。 

JNR C62 leading brake 実物の機関車の写真をじっくり見た。これはC62である 。確かに支点は接線より中心に近いところにあることが分かる。
 これで井上氏がよく効くとおっしゃった意味が、ようやく分かった。

 この件に関するコメントを沢山戴いているが、トレーリングであるという前提のご意見ばかりなので、掲載は控えている。ヨーロッパの機関車には、支点を接線上に持って行って前後進でブレーキ力の変動が起きないような設計にしたものがある。

 それにしても、T氏の眼力には恐れ入った。実はT氏からは、例の”天秤棒イコライザ”に関する解析も戴いているので、いずれそれも紹介したい。イコライザではないということである。

 追記: 添付のC62のブレーキの写真は、提供者のmon氏のご厚意で、圧縮前の、より鮮明な写真と差替えました。  

2016年11月15日

メカニズム

 しばらく留守をしていた。東京で所属クラブの会合があったのだ。今回は久しぶりに全員が顔を合わせたので、一人ずつ自己紹介をした。
 筆者は、
「模型の外観は適当にできていれば十分であるが、メカニズムには最高を求めることにしている。いかにして低電流でたくさん牽くか、貨車や客車はいかにして摩擦を減らして遠くまで転がるかしか興味がない。」 
と言うと、みなさんはどっと沸いた。

 家に帰ってみると、少々手に余るコメントが来ていて、無視しようかとも思ったが、載せておいた。反論も来ているが、それもそのまま載せた。

 最近、妙なコメントが時々送られてくる。お前のブログに、俺の自己主張を載せろ、と言わんばかりのものがある。 
 お断りしておくが、コメントはあくまでもコメントであって、この場を借りて自分の主義主張を発表する場所ではない。それはご自分でブログ等を立ち上げて発表されればよい。メイルアドレスが書いてある場合は、それをお伝えして消去している。

 今回のコメント主は、拙ブログをほとんど読んでいらっしゃらないことがわかる。筆者は考えられるメカニズムをすべて作っている。それを祖父江氏がさらに改良したものも持っている。傘歯車駆動の機関車は3輌ある。人にお勧めできるものではない。
 価格の面でも問題があるが、一番大きな問題は音である。祖父江氏の腕をもってしても、歯車の音は無くならない。蒸気機関車がヒューと歯車音を出して走るのは問題だ。当時は若かったので、耳が敏感であったこともあるが、気になった。
 芦屋の御大の機関車はすべてこの音がする。彼はそれがお好きなようだったが、筆者は容認できない。
 また、摩擦係数と摩擦とは異なる次元の話であり、コメントの趣旨はよくわからない。

 最近皆さんもお気付きのようだが、低回転高トルクモータを用いて、低歯車比にすると静かで高効率の機関車ができる。筆者の「3条ウォーム+1段減速」は8:1程度であるが、新モータを用いて、その半分程度にすることを目標にしている。

2015年03月03日

天秤棒の件

 米国にいる間に、メイルをいくつか戴いた。中身は全て同じで、最近号のTMSの記事で、小林義和氏が執筆された記事について、意見を求めるものであった。
 どれも記事の完全なコピィを送ってくれたわけではなく、不鮮明な画像しか送ってくれなかったが、単なるバネ装置の範囲から出ないことはすぐわかった。
 帰国後、時差ボケがひどく、昼間は頭痛がしていたが、書店に行った。最近、TMSは近くの書店にはなく、街の本屋まで出かけて確認した。

Athearn truck mouting 思った通り、単なるバネ装置でイコライズはしていない。これは形は異なるが、1940年ごろからアメリカで売っているAthearnのOゲージ貨車の台車マウントと同じである。
 二つの台車が、床板の上に貼りつけられた板金製の台枠にはめ込まれた雌ネジに取り付けられる時、径のやや大きなコイルばねを介してネジで留められる。雌ネジの台車に当たるところは狭く、台車はかなり自由に傾く。

 バネは台車の傾きに抵抗する。レイル上の突起に乗り上げると、片方の台車枠は持ち上げられ、車体に対して捻りを伝える。しかし、もうひとつの台車は平面レイルの上にあるから、それは車体を元の位置に保とうとする。その二つの力のつり合いによって、平均値である捻り角の半分ほどのところで車体が落ち着くはずだ。ただし、車体はバネで支えられているので、ふらつく。

 Oゲージの場合、このふらつきがなかなか良く、ポイントを渡るときは実感的である。もちろんバネの固さ、ネジの締め付け具合は経験上、一番良いところを選んでいる。ただキットを組んだだけでは、そのような動きはしない。バネ座部分の多少の摩擦がダンピングに効果を発揮している。3点支持ではないので、どちらの方向に走っても具合が悪いことはないと云うところが良い。これはバネで制御された2点支持である。

 車輪が突起に乗り上げると、その反対側の車輪の輪重は低下する。ちょうど自動車の一輪が突起を踏んだ時と同じである。対角線上の一輪に対する荷重が増え、その他の荷重は低下する。自動車の場合はスタビライザ・バァが付けられているので、反対側に多少は荷重を増やすように働く。しかし等荷重にはならない。自動車にはショック・アブソーバと云うダンパが付いているので、揺れも収まり、乗り心地の改善に貢献する。この天秤棒は、スタビライザ・バァそのものである。

 鉄道模型にダンパが付いているのを見たことがない。積層した板バネはダンパだが、それを正しく働かせている例を見ない。たいていは上の1,2枚だけを利用している。筆者はハイドラクッションの模型を作った時に自作のエアダンパを付けた。実にうまく作動して効果的であった。オイルダンパは20年経つと油が漏れてきてダメになった。

 この小林氏の作例もダンパが付いていると、かなり走りが改善されるであろう。ダンパは空圧、油圧のみならず、摩擦方式もあるので、簡単な方法で大きな効果が得られるであろうと思う。

 今野氏のブログで議論が白熱し、非常に良い結果が出た。このようなインターネットを手段とした議論は、おそらく日本の模型史上最初のことではないかとも思う。小林氏は潔く非を認められ、訂正をTMSに対して申し出られたのである。これは大人の対応であって、とても素晴らしいことである。
 

2013年09月07日

機構学

 機構学というのは工学の一分野で、英語ではMechanismという。
 鉄道模型とは何か、という問いに対する答で、筆者が一番高く評価しているのは、「鉄道模型から、色々なものを外して最後に残る本質はメカニズムである。」というものだ。若いときはそれほどでもなかったが、歳をとると、その意味が良く分かるようになった。
 実物を理解し、模型のサイズまで小さくすると何が起こるかも理解できなければならない。実物の動きをまねできる模型の構造に到達するのはかなりの修練が必要である。それが出来るとその走りは素晴らしい。

 先日のJAMでのクリニック(講演)の参加者から、いくつかメイルを戴いている。その中で、筆者の気持ちを代弁してくださったご意見を紹介する。

 

 今回の「等角逆捻り機構」にとどまらず、機構学的要素を模型造りに展開されているdda40xさんの取り組みには、大いに共感を覚えます。

 

 動くことを重要な要素としている、鉄道模型においては動かすための構造(機構)は重要です。ただしそれは、サイズの違いで実物と同じ構造がとれないが故に、模型独自のものでありましょう。車体全体を使った「等角逆捻り機構」も「三条ウォームによる可逆伝動」も然りだと思います。これらの機構を考案・実現することが模型造りを「科学」に昇華させる手段であると思います。かつてそう認められていたように。

 

 先輩諸氏が鉄道模型に取り組まれた時代は、動力や伝動装置を一から造り上げねばならなかったと思います。そんな中でも凝った大作が数多く生み出されてきました。翻って現状を見てみますと、模型雑誌の記事には、市販量産品に対してチョッと手を加えて見栄えを良くした程度のモノが取り上げられ、それとて「科学」の対極にある「アート」の域には程遠い、なんだか中途半端なモノが溢れております。


 伊藤 剛氏をはじめとする先輩諸氏のアイデアが現代の模型の根本にある。それらはまさにメカニズムの工夫なのである。最近模型雑誌を読まなくなったのは、その種のアイデアを紹介する記事がほとんどないからである。姿型のみに興味がある人が増えている。走らせてみると素晴らしいとは言い難い。
 最近は youtube などで動画が見られるが、素晴らしい走りを見せるものには、なかなかお目に掛からない。

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