エッチング

2012年01月08日

続々々 Etchant

 長年温めてきたアイデアがあって、検証実験を始める前に、特許を調べてみた。どの程度のものがあるのか知るためだ。
 やはり、ある程度のものは既に押さえられている。「醤油+過酸化水素」の骨子となる物質を特定して指定してあるので、もうその方面のアイデアは面白くない。
 今考えているものは、具体的には言えないがもう少し高級な発想であって、それについては今のところ特許が成立していない。しばらくその方面を考えることにしよう。

 鹿ケ谷氏からクエン酸を過酸化水素と混ぜて使うというアイデアを戴いているが、これはかなり具合の良い方法である。速度が大きく、反応後の液は青緑色になる。廃液は捨てずに取っておいて、過酸化水素を加えればまた使える。この方法がうまく行くのはキレート化が起こるからである。キレートとはリガンドが環状の結合を作ったもので、例えば銅アンモニア錯イオンの二つずつのアンモニアを結んでそれぞれ五角形の結合を作る場合である。

 「塩酸と過酸化水素」の組み合わせは動画が見つかった。美術分野のエッチングである。レジストとしてフェルトペンを使用している。溶解作業中は細かい泡が出ている。反応後の液は黄緑色である。

 すでに述べたように、塩化鉄(III)に頼るエッチングというのは前世紀の遺物と言っても過言ではなく、さらに進化した方法をとるべき時代であることは間違いない。

 また、電解エッチング(電解研磨の延長)や、電解リヴェット生成などは、広く採用されるべきものであろうと思う。 

2012年01月06日

続々 Etchant

 エッチャントは酸性のものばかりではない。アンモニア水でも効果がある。昭和40年代のTMSにも載っていたように記憶する。アンモニアは酸化剤があれば銅と良く反応する。
 昔の冷凍機はアンモニアを使用していた。その中に空気が混入していると、銅パイプは腐食されてしまう。故障した冷凍機の中には、青い結晶が見つかることがあった。それは銅イオンとアンモニアとの化合物である。

ammonia as a ligand 要は金属が溶ければ良いので、「酸化剤 + 溶解を助けるもの」 があればよい。アンモニアは銅、亜鉛、ニッケル、銀に対して良く働く、錯イオンをつくる配位子(ligand)である。鉄、鉛やスズとは反応しないので、青銅、快削黄銅、ステンレス鋼、炭素鋼などには意味がない。 酸化剤としては酸素でも十分であるが、酸素を供給しようとして空気を吹き込むとするとアンモニアが逃げてしまう。それを避けるには低温にするので反応速度が小さくてうまくいかない。
 過酸化水素を加えれば低温でも働く。生成する液が銅をたくさん含んでいれば、極めて濃い藍色になり、美しい。
 快削黄銅は鉛を含み、多少反応しにくい。スズを含んだ合金も困難だ。

 非酸性エッチャントの必要性を感じている。アンモニアより効果が大きく、また蒸発しにくく、さらに臭いが無いものが欲しい。ある程度の候補は見つかっているので、検証実験をする。公表するからには、毒性が低いものでなければならない。
 いずれアマチュア用として良い候補を用意できるだろう。

 もう25年も前に「醤油で機関車を洗うときれいになる」ということを、所属クラブで発表した。これには誰も乗ってこなかった。会報には”Hint of the Mouth" という題でコラムに載った。そのタイトルのつづりがMonthではなく、Mouthだったので、真に受ける人が減ったのかとも思ったのだが、そうではなく、本当に誰も興味がなかったのだ。

 醤油には各種のアミノ酸が含まれ、それらは銅イオンとかなり安定な錯イオン(キレート)を作るので、酸素の助けを借りて銅を溶かす。10円玉を醤油で拭くときれいになる事実をご存知の方も多いだろう。
 もちろん、「醤油+過酸化水素水」 でもよく働く。

2012年01月04日

続 Etchant

 初瀬春日氏のコメントにもあるように、塩化鉄(III)水溶液は常に空気と触れさせていないと能力の低下が著しい。このあたりのことは化学的な常識があればすぐ理解できることなのだが、エッチングの手法を紹介した記事を見てもあまり触れられていない。業界の人は常識だと思っているから書かないし、一般人はたまにしかやらないので調子が悪くても気が付かないのだ。

 その点、過酸化水素を用いる方法は気楽である。ただ浸しておくだけで良い。もちろん両面を同時にやるときは裏にも液が回るように何らかの支えを必要とする。

 筆者は30年以上前からこの過酸化水素を使う方法を採用している。業界でも最近は採用例が多くなってきたようだ。しかし、アマチュアが使っているようには見えない。
 日本で市販されている過酸化水素水は3%であり、全く危険はない。鹿ケ谷氏のコメントによれば、オーストラリアでは6%水溶液が市販されているそうだ。筆者の実験では10%以下ならまず問題なさそうである。この程度であるならば、何かあれば冷水を入れると収まる。横に氷水を置いておくことだ。
 15%では非常に危ない。湧き立って、しかも温度がかなり上がる。これは爆発の前兆だ。20%以上の実験は、怖くてしていない。
 発熱しながら気体が出る反応は、反応を抑える方法がない。エネルギが蓄積し、さらに温度が上がる。すなわち連鎖反応が起こっていて、爆発する。氷水では抑えきれないのだ。
 東京の高速道路での爆発はまさにこの状態だ。運転手はタンクに触れて熱くなっていることに気が付いたので退避したら、直後に爆発している。

 少々脅かし過ぎたが、勝手な判断で濃度を上げると大事故になるということは肝に銘じておかねばならない。
この種の情報は、部分的に伝えられて、聞いた人が勝手な判断をすることが多い。「成功事例というものは、そこにある情報を元に完全に再現されたときにうまく行く。」のだが、勝手な改変をして失敗する例はよく聞く。基礎的知識を十分持たない人は、謙虚であるべきだ。


2012年01月02日

Etchant

 エッチャントとはエッチング液のことである。

 塩化鉄(III)は銅や亜鉛を酸化し、自身は還元される。すると、ある条件下では沈殿ができることがある。これは二価と三価の鉄イオンが組み合わさった化合物である。また、銅が酸化されたときに二価のイオンができればよいのだが、往々にして一価の銅イオンの化合物ができて沈殿に混じる。塩化鉄(III)を用いる反応は工場のように条件を一定にできる条件なら良いが、素人が扱うには問題点が多すぎる。

「過酸化水素 + 塩酸」は手軽であるのと、銅イオンが二価だけしか出来ないので、あとの処理が容易である。筆者は物好きにも、あとで銅を回収し、廃品回収業者に渡すが、一般人はそこまでやる必要などない。 筆者の処方はいわゆる濃塩酸と3%過酸化水素水を1:1に混ぜるだけである。反応速度が小さくなってきたら、過酸化水素を足す。一回ごとに捨てなくても上澄みをガラス瓶に入れて冷蔵庫に入れておき、次回に過酸化水素を少し足せば使える。反応容器はプラスティックの皿である。冷蔵庫で保存するときは、密栓せずに少し蓋を緩ませた状態で丈夫なポリ袋に入れて口を軽く縛る。多少は過酸化水素が分解して気体が発生するかもしれないので、その安全のためである。過酸化水素の分解は鉄(III)イオンの存在、何かの固体物質の表面が触媒になるので、鉄の釘などを落とさないこと、沈殿は保存容器に入れないことである。
 頻繁にやるのでなければ一回ごと廃棄する方が良い。消石灰と混ぜて反応させ、沈殿を燃えないゴミで出せばよい。銅イオンは毒だと書いてあるサイトもあるが、問題にはならない。ブドウ園に行けば、硫酸銅水溶液をボルドー液と称してばらまいているが、公害が起こったという話は聞かない。

 硫酸の場合は、濃硫酸を水で薄める。この時、かき混ぜながら水の中に少しずつ入れる。逆にすると大事故が起きることがある。かなりの発熱があるから、プラスティック容器が変形することもあるので気を付ける。パイレックスなどのガラス容器中で薄めるのが良い。
 三倍に薄めた物に、過酸化水素水を1:1で加える。塩酸とさほど変わらない腐食速度である。これも同様に液を保存できる。廃棄の仕方も同じである。

 酢を使うこともできる。酢と過酸化水素水を1:1に混ぜると出来上がりだが、多少腐食速度は小さい。これらの反応では酸は、単に銅イオンの相方のイオンになる。銅イオンを水に溶かしているだけである(沈殿ができないようにしているという意味)。酸化剤はあくまでも過酸化水素であって、過酸化水素が消耗する。継ぎ足すのは過酸化水素水である。

2011年12月31日

続々 エッチング

 裏表にレジストを付けることができれば、両面エッチングができる。エッチングをするには塩化鉄(III)の液を使う。これは溶かしたものを電気部品屋で売っているが、やや高価であるし、速度が遅い。

 電子部品用の基板に貼りつけられた銅箔の厚さはおおむね 0.05 mm 以下であって、その程度のものを溶かすには塩化鉄(III)で十分である。しかし厚いものを両面から腐食するときは、腐食速度が大きくないと、レジストがだんだんはがれてきて、最終的には失敗する。短時間に溶かしたい。

 一番速いのは硝酸である。但し有毒な二酸化窒素が大量に出るので、室内ではできない。風の強い雨の日を狙って屋外で行う。台風がやってくると、エッチングができて嬉しいという困った人もいるのだ。このガスは水に溶けやすいからだ。
 3分程度で 0.3 mm 厚でも貫通する。硝酸が指に付くと黄色くなり、始末に困る。ゴム手袋をはめて行わねばならないし、環境保護の観点からも、あまり感心しない。

 アメリカでは過硫酸アンモニウムなどを使う。過酸化物なので酸化力が大きいが、これは日本では手に入れにくい。アメリカで買って日本に持ち込むのも難しい。

 その代わりに過酸化水素を使う方法は手軽でよい。そこそこに速いエッチング能力がある。
 塩酸、硫酸、酢酸何でも良いから酸と混ぜて使う。酸は銅を溶かした後、水溶液になっていて欲しいので加えているだけである。ここでの酸化剤は過酸化水素である。3%水溶液はオキシドールとして売っているのでそれで十分だ。ただし、塩化鉄(III)と混ぜてはならない。激しい反応が起こって、容器から噴出し、取り返しのつかない結果をもたらす。
 酸と混ぜる過酸化水素の濃度が高いと速度が大きいが、危険である。素人は3%以外使ってはならない。濃いものは一般人が買えないようになっているはずだ。高濃度のものは何かの間違いで突然爆発する可能性があるので、使うべきではない。この種の事故は意外と多い。 

エッチングのメカニズム 塩化鉄はポリ袋中など、密閉された条件で使う例が示される場合が多いが、それは良い方法ではない。鉄(III)イオンは銅を溶かして還元されてしまい、そのまま役に立たない状態で存在している。これはもったいない。
 しかし、空気に触れさせると、エッチング速度が増すのだ。空気に触れれば再度酸化されて元の鉄(III)イオンに戻り、銅の溶解に参加するからだ。
 工業用のエッチング装置はこの仕組みを最大限活用している。ポンプで空気を細かい泡にして下から送りこんだり、エッチング液を霧状にして空気で吹き付けることを行う。また、反応速度は温度が高いほど大きいので、ヒータで加熱する装置もある。

2011年12月29日

続 エッチング

Press'n Peel 円高のおかげでレターサイズ(A4に近い)1枚100円強である。熱転写してはがすタイプと、水で溶かすタイプがあって、価格は一緒である。プリンタはレーザ・プリンタか、コピィ機である。トナが融ける必要があるので、インクジェットでは駄目である。

 調べると日本にも入っている。多少高いが、それでも便利である。小さな銘板を作るのなら1枚当たり1円ほどであろう。

 このサイトでは試行錯誤の跡が見られる。小さく切ってプリントするときのアイデアは面白い。
 これは日本で販売している会社のウェブサイトである。ラミネータを使う方法も紹介されている。
 薄いアルミ板をエッチングする試みもある。

 しかし、鉄道模型に使ってみたというレポートは日本ではとても少ない。今回どっさり買ったので、ご希望の方にはお分けしたい。
 二種類あって、青いフィルムのものは大半使ってしまった。これは意外と使いにくい。プラスティックのフィルム(たぶんマイラ)が微妙に伸縮し、位置決めが意味をなさない。電気工作の片面基盤には適するのかもしれない。筆者は両面エッチングして抜き落としをしたいので、より良いものを使いたい。
 白い紙(これは青い方と違って艶のある方に印刷する)はあまり伸びないので具合が良い。また、青い方と違って多少の埃を噛みこんでも密着するように感じる。

2011年12月27日

エッチング

 エッチングが鉄道模型に使われ始めたのは日本が最初という説がある。鉄道模型社が始めたということになっているらしい。ところが、1970年代にアメリカ人に聞くと、「そんなものは戦前からあった」と言っていた。
 電気機械の銘板には昔からエッチングが使われて来たし、戦前に発行された田口武二郎氏の「蒸気機関車の作り方」という本にも重クロム酸カリ(現在は二クロム酸カリウムと言う)を用いたマスキングを使う感光式エッチングの話がある。
 アメリカの模型界で、商業的にエッチングを用いた最初の企業はケムトロンであろう。経営者のKemalyan氏はもともとは印刷業界の人で、銅版画を作る手法を模型に応用した。以前にも書いたが、ケムトロン社の模型は他社製品とは材質がやや違う。エッチングがしやすい配合の銅合金(亜鉛が多い)を用いているので、ブラスの色が緑がかって見える。Lobaughのテンダもエッチングでリヴェットを表現している。

 さて時は流れ、エッチングは簡単にある程度の模様をブラス板に上に刻み、抜くことができるので、鉄道模型の主要な工業的製作手法となった。
 作図して製版屋に渡せばフィルムを作り、エッチング、抜き落としまでやってくれるが、ある程度の数が無いと難しい。また高価である。時間も掛かるだろう。1枚しか欲しくないのにたくさん作ってクラブ内で頒布ということをするしかないわけである。

 1枚しか欲しくないものを1枚だけ作る方法が、しばらく前からネット上で紹介されている。『F式』と呼ばれるコピィのトナを熱転写してレジストとする方法である。
 この方法はどこかで見たとは思ったが、なかなか思い出せなかった。

 鹿ケ谷氏のウェブサイトで紹介されていたPress'n Peel という言葉で思い出した。

 アメリカに居た時友人が使っていた。これは安くて確実な方法である。早速取り寄せて使って見ることにした。
価格があまりにも安いので驚く。

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