モータ

2018年01月20日

回転計とトルク計

tachometer and torque indicator フライス盤の改良で、回転計を用いて回転数を測定した。これはレーザ光を発し、反射光を数えるタイプである。アマゾンで安価にて購入した。写真中央下のものである。この話を教えて下さったのは、時々登場する Dr.Y である。氏は様々なモータを測定して、一覧表にされたのだ。100機種弱を整理されたデータで、非常に興味深い。
 電圧電流が直読できる安定化電源と、トルク計を用いれば測定できるとは言え、大変な労力を投入したデータであり、貴重だ。

 写真中央上はトルク計である。三爪チャックでモータの出力軸を掴み、所定の電圧で廻してバネ秤で直読する形式になっている。表示単位は昔懐かしい ”g重cm” である。 

 Dr.YはHOを楽しまれているので、モータのトルクはせいぜい 100 g重cm である。筆者に見せて下さった時、Oスケール用のものも測定してみよう、ということになった。しかし、たちまち振り切ってしまった。もっと大きなものが必要であった。

torque indicatorcalibration その後、ヤフオクで目を皿のようにして探し、ついに 600 g重cm のものを購入することに成功した。これらの写真をご覧になるとお分かりかと思うが、正逆回転に対応した目盛りになっている。
しかしこれでも振り切るものがいくつかあり、低電圧で測って高電圧のトルクを、外挿して求めることになった。筆者は商売柄 ”Nm” しか使わないので、980を掛けて何桁ずらすのだったか、再計算にやや手間取った。
 径が大きなものはモーメントが大きいので、概して高トルクである。マイティ800に付けてあるのは出力11.5 Wで、大人を載せた客車を牽いても、かなりの加速を示すはずである。もちろん客車にはボールベアリングを付けていることが条件だ。
 
 模型機関車用のモータとして適するのは、強力な界磁を持つ低回転モータで、負荷の掛かった時の回転数が落ちる率が小さい物である。吉岡精一氏が書かれた「モータ調書」のデータとよく一致する。昔から定評のあるEscapの低回転モータは、その点、抜群の性能を持つ。もちろん、伝達系は高効率であることは最低条件で、ろくに廻らないギヤトレインでは、話にならない。

 吉岡氏がデータを採られたのは25年前で、当時無かったモータもあるので、再度調べてみる。近々導入予定のパシフィックの強力機に搭載するモータを決める必要があるのだ。重量客車数輌を牽いて、15.6‰を駆け上がらねばならない。


2015年12月01日

複捲表現の初出

先日、界磁コイルに中点タップを持つものを複捲と書いているものがあるとお伝えしたが、その初出がどこにあるのか、がなかなかわからなかった。
 先日来、伊藤 剛氏の蔵書の整理に掛かっている。その中に注目すべき本があった。
 西尾音吉氏の「模型電氣機關車と電車の作り方」 科學と模型社版 昭和十年十月二十八日発行 である。その中に複捲の話が出てくる。

”複捲キ即チフィルドヲ倍ニ捲イテ ソノ中間ヨリ口出シヲナシ 之ヲブラシュニ續グ 他端ヲ図ノ通リニスレバ・・・・・・”とある。

 西尾音吉氏には30年ほど前に椙山氏の紹介で会ったことがある。芸術家、いや宗教家といった感じの人で、観念論ばかりを話す人であった。
 その時、「機玄」という本をくれた。言わんとすることはわからぬでもないが、工学が抜けていると感じた。鉄道車輛は機械であって、芸術品ではない。

otokichi nishio この「・・・・の作り方」の中身を熟読すると不可思議なところが多い。どなたかがおっしゃる文系工学の教科書のようだ。ユニヴァーサル・ジョイントの位相は間違っているし、スパーギヤをウォーム・ホイールとして使う、空前絶後のアイデアも載っている。ウォーム軸をその進み角θだけ傾けて、ジグザグの駆動軸を持つ電車が紹介されている。

 以前、剛氏にそのことを聞いてみた。
「いやあれはすごいアイデアですが、走るかどうかは別問題ですね。みんなそういうものに飢えていたのです。すごいなーと言って喜んで見てましたがね。」
 その後の言葉は出てこなかった。 


2015年11月29日

直捲電動機

 模型のモータは全てマグネット・モータになってしまったと言ってよい時代になった。筆者がボールベアリング、三条ウォームにのめり込み始めた頃、伊藤 剛氏とモータについて論議したことがあった。文中、dは筆者のことである。

剛 最近は直捲電動機の模型はなくなりましたね。
d  実は今一つ作っているのですよ。
剛 ほう、それは珍しい。どんなモータを手に入れたのだい。
d  Braunの髭剃りを分解して出てきた交流用のモータです。直流なら20Vくらいで回ります。それをさらに改良して12Vで動かないか、調べようと思っています。
剛 それは面白いね。直捲電動機はその中にオートマティック・トランスミッションが内蔵されているようなものだから、出来の悪い模型に搭載しても、よく走るんだね。直流モータの時代になったら、途端に走りが悪くなっちゃったんですよ。
d 今開発中の摩擦の少ない機関車に直捲モータを搭載すれば、グワーンと走ってぴゅーっと滑って行かないかと思っています。
剛 そりゃ面白い。重い列車を牽かせると実感的だろうね。

 その後、筆者の直捲モータの改良は頓挫し、コアレスモータを採用することになった。

d コアレスモータにしましたら、調子が良いのですよ。電源を電圧制御にしたのですが、それが良かったみたいです。以前は電流制御でしたから、このような低電流では速度調節がむずかしかったのですよ。
剛 おお、それは素晴らしい。マグネットモータは分捲特性だから、本来は模型には向かないものだと思っていたけどね。
d いや、本物と同じ動作をさせることが可能ですよ。『下手な工夫より電圧制御』かな。
剛 あなたは電気も強いから、あなたがそう言うならその言葉には重みがあるね。

 その後クラブの会報にはこの話が引用された記事が載った。剛氏の瀬戸電の記事が出たのは、その直前である。あれが日本の模型雑誌に直捲モータの記事が載った最後の号である。瀬戸電には自作の巨大な直捲電動機が装着され、ピヴォット軸受で慣性モーメントが損なわれないようになっていた。12 Vを印加して電流を止めても、「山口さんちのつとむくん」を歌い終わるまで廻っていた。剛氏は、「モータというものは慣性モーメントを最小にするように設計されるものです。これはとんでもない天の邪鬼(あまのじゃく)だね。」と言っていた。 

 ちなみに筆者はそれほど電気に強いわけではない。父親から聞いた話を覚えているだけである。

2015年11月27日

自動逆転器

 最近の若い方は、自動逆転器という言葉を知らない方が多いと思う。界磁が電磁石だったころは、この自動逆転器は高嶺の花だった。モータよりも値段が高かった。ライオネルやメルクリンには標準装備だったが、日本製のものにはほとんどついていなかった。一時期、自動逆転器付きのモータも出ていたが、高価であった。

automatic reverser 界磁コイルに中点タップを付け、両端を切り替える方式だと、逆転器の構成は簡単になる。外国製の模型はそれが多かった。逆転器は電磁石とラチェットでできているものが多く、高電圧を掛けたりすると、車体が動く前に逆転リレィが作動し、小さな接点を付けたローラが回転する。

 この種の界磁はいわゆる複捲ではないのだが、これを複捲と言う人がいる。単なる勘違いである。複捲は直捲と分捲を合わせたもので、それを切り替えたり、同時に使用して抑速ブレーキを掛けたりすることもできる。模型には縁がない、使いにくいものである。

 最近伊藤剛氏や吉岡精一氏が遺された多量のモータを動かし、直捲モータの動きを見て楽しんでいる。それにしても昔のモータは騒々しいのが多い。
 子供のおもちゃとしてのOゲージの動力としては静かである必要はなかった。やかましいモータは、「元気がある」という時代だったのだ。


 

2015年11月25日

続々 スーパー20

114_4069 また、スーパー20かと思われた方も多いと思うが、これはLobaughのモータである。コア厚25.4 mm(1インチ)の強力型である。
 ブラシのホルダを三角の部材で留めているところなど、カツミが真似たことがすぐわかる。界磁は薄い珪素鋼板を積層して、リヴェットでかしめ、それに軸受をネジ留めしている。電機子との隙間は極めて小さく、磁路の障碍も少ない。

114_4071 電機子は旋削され、ダイナミック・バランスがとってある。隙間に見えるブラス片は錘代わりである。この旋削というのがミソで、こうすることによって磁路のギャップを狭くすることができる。もちろん界磁内側も研磨してある。そのためにはリヴェット留めが必要なのである。
 軸は3/16インチで4.76 mmである。カツミ製は 6 mmである。ずっと細い。


114_4072 このモータはpolarizedである。”ポラライズする”とは、整流器を用いて界磁に一定方向の電流を流して、永久磁石代わりにする方法である。こうすればマグネット・モータと同様、手元のスイッチで逆転できる。これがないと、車載の逆転器で方向を変えねばならず、面倒である。1950年代は大きなセレン整流器をテンダに入れていた。これはシリコン・ブリッジ整流素子を使っているから小さい。

polarized motor この図を見れば、どんな回路かはすぐお分かりいただけるであろう。線路の電圧が反転しても、界磁電流は一定方向に流れる。電機子に逆向きの電流が流れると、逆転できる。簡単にして、確実な方法である。これを使えば、直捲電動機の特性が生きるので、かなり手を抜いた電流制御の電源でも気持ちよく走るはずだ。
 現代のようにマグネット・モータが容易に手に入らなかった時代は、この方法を採っていた。マグネット・モータは分捲特性なので、電圧制御でなくてはならず、やや運転しにくい。現在、市販の電源は大半が電圧制御になっているから、どなたもその違いに気が付かない。 


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2015年11月23日

続 スーパー20

 このモータは海軍の技術将校だった人が設計したらしい。当時カツミに入り浸っていたY氏が紹介したという。その設計思想はある程度納得のいくものであるが、現在のモータの専門家の意見はなかなか手厳しい。
 友人のT氏からの手紙の一部を紹介する。

 

 界磁鉄心厚さが厚いだけでは、強力にはならない。巻き数と電流値の積AxT大きくないといけないのだ。とりえは他の形式の電動機より巻線太さが太いので、ブラシにかかる電圧が高くなっていることぐらいか。多少巻数も多いと思う。

 電圧をかけていくと、じゃらじゃらと猫が騒ぐような音を出して回転が上昇する。KB3(安価なモータ)のほうがMax回転数は高いと思う。

 

 そのあと界磁を永久磁石に替えたものを、輸出用に使った。ヤフーではボールベアリング入りと説明があったが、知らない人は幸せですな。とんでもなく太い電機子軸なので摩擦損失は大きい。

 オイルレス・メタル付きなのだが、こんな太い軸にする必要は全くない。怪しいボールベアリングの時と同じ太さにしたのだろう。
 当時、模型店で1000円以上していたかと思う。KB3が180円位の時だ。手で廻してみると、固くて抵抗が大きいのにびっくりした。それが強力の証とはとても思えなかった。


 筆者もT氏も、ネオジム磁石を買って、界磁をパーマグ(permanent magnet)にした。
 低速でのトルクが大きく、減速比が小さくできる。すなわち旧型モータなのに、押して動くモデルができることになる。コアレスモータでなくても、押して動くようにできるのだ。もちろん、鉄心があるのでコアレスほど軽くは廻らないが、押せば動く。
 ヤフー・オークションに出ているモータの界磁磁石は三菱製のものだそうだが、弱い。工場で組み上げてから着磁したそうである。要するに電機子を外すと磁路が切れて弱くなりがちなのだ。



2015年11月21日

スーパー20

 先日の記事スーパ−20のことを書いたら、「そのスーパー20とは何ですか?」という質問を戴いた。

114_4052114_4053 スーパ−20は1950年代にカツミから発売された直捲電動機で、9溝、ボールベアリング入りの高級モータであった。筆者が三線式Oゲージに夢中になっていたころの高嶺の花であった。電機子はskewed(捩じってあって、電機子の位相によるトルク変動を緩和するようになっている。)で、意欲的な製品ではあった。20は、コアの厚みで20mmを指す。”スーパー15”というものもあった。


 後でわかった話だが、外観の設計は祖父江氏で、Lobaughのモータをコピィしたものであった。ロボゥのモータと並べると、ブラシのあたりの処理が酷似している。今だったら、模倣で訴えられるような製品だ。

114_4056114_4055 ボールベアリングが付いているというのが売りであったが、廻すと何かおかしかった。どれを試してもおかしいと思ったので、買わなかった。というと聞こえが良いが、乏しい小遣いではなかなか難しい価格であったし、それほどのお金を出すなら、もっと素晴らしいものでなければならなかった。

 これも後でわかった話であるが、戦災で焼けたボールベアリングを大量に安く買って、それを嵌めたものであったそうだ。道理で、廻すと変な音がした。

 長老のH氏の談話である。戦後、米軍放出品の器械をばらすとボールベアリングが取り出せた。それをローラ・スケートにつけて楽しんだそうだ。実に滑らかであった。
 ところが模型屋でスーパー20を見せてもらうと、やはりどれも軸受から音がする。「この音は何ですか。と聞くと、『ボールベアリングの音だ。』と言うんだ。『ボ−ルベアリングは、みなこういう音がするんだ。』とごまかそうとするから、冗談じゃないと思ってそんなモータは買わなかったよ。」

 ずいぶんひどい話である。ボールは外から見えるタイプで、シールドがないから、埃は入り放題である。それのせいかとも思ったが、油紙で包んであった新品も同じだったそうだ。消費者の無知に付け込んだ極めて怪しい話である。

 モータの軸は太く、先端の歯車等を付ける部分だけ細いのはどうしてかと思っていたが、その焼け残りのサイズが、たまたまその程度の太さだったからだ。

 ヤフーオークションで出ているのは全くの勘違いで、パーマグモータである。あのモータの価値はすでに極端に低くなった。筆者は10台以上持っていたので、アメリカの模型ショウで売ってしまったが、相場は1台5〜10ドルである。

追記: 当時のカツミを知る関係者の証言によると、様々な人がボールベアリングの売込みに来たそうだ。焼けたのはもちろん、半端物のベアリングを持ち込むので、ロットによって軸の太さは違うそうだ。 

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2015年09月30日

英語の発音

 夕飯をご馳走になり、Bobの奥さんのZoe Annと話をした。彼女は言語学の博士号を持つ大学の先生だ。ちょうど良いチャンスなので、かねてより不思議に思っていた質問をいくつか出して、見解を聞いてみた。

 その中の一つに"teething"があった。普通の辞書に載っている意味は、「歯が生え始めること」を指している。それはよいのだが、問題はその発音である。
 tooth の複数形はteeth だから、ingが付けばそのままの発音だと思ってしまうが、実際にはこの”th”は濁る。動詞になると teethe だから、既に濁っている。brother のthと同様の濁った有声音である。これは英語を母国語としない我々にとっては、まず気が付かないことだ。辞書を丹念に読まないと、その音にたどり着けない。
 どうして動名詞は濁るのかと聞いたところ、後ろに”i”の音が来るときは、口の形がそれを準備するために、濁らせた方が楽なのだそうだ。
 いくつか例を出してもらったが、すぐピンと来るのはsheath(小刀の鞘)から派生したsheathing(鞘およびその用をなすもの)などの語である。前者は濁らないが、後者は濁る。もちろん動詞は sheathe である。

 このほかいくつか、ためになる話を聞いたが、鉄道とはあまり関係ない分野なので割愛する。言語学の先生の知識というものは極めて広汎であって、歴史、地理、哲学などすべてを含んでいる。
 久しぶりに知的好奇心をくすぐられた夜であった。彼女もまた、こちらに質問に丁寧に答えてくれ、「英語を母国語としない人の質問は面白い。」とのことであった。



2011年04月26日

モータの界磁磁石を交換する

 Chicagoの O Scale Meet で Low-D 車輪の講演をした。その時、古いOpen Frameモータの界磁をネオジム磁石にするアイデアを披露した。親しい友人がそれを雑誌に発表すべきだと勧めたが、誰でも思いつくことだし、実際にやっている人もいる、と同意しなかった。
 第一アメリカでそんな磁石もあまり売っていないし、日本から飛行機で送ることができないから難しいと考えていた。

 先日送られてきたMicromarkのE-mailによる広告によると、同社はいわゆるPittman型モータ(TMSでは棒形モータと呼んでいた)のアルニコ磁石を取り替える磁石セットを売り出している。どの程度の磁石なのかはよく分からないが、大きさと吸着力から推測するとネオジム磁石のようだ。

 先日の記事にも書いたように、HOサイズの模型には大きな磁束密度を与えるとあまり効果はない。果たしてどの程度の効果があるのか知りたいものだ。 この広告を見ると、飛行機には載せられないので陸続きの48州しか配達できないとある。そのようなことを情報として明示しておくことは大切である。磁石を飛行機に持ち込むことができないということは意外と知られていないからだ。

 やはり鉄心の大きなOサイズの模型モータに採用すべきものであるように思う。  アメリカの友人にはLobaughの古いモータの入手を依頼しておいた。いずれいくつか集まるから、それらを再生しようと思う。回転数がかなり低下するから、歯車の減速比が小さくなる。すると必然的に”Free-Rolling”になる。このアイデアには彼らはかなり驚いたようだ。

2011年01月23日

続々々 磁気回路

 モータの設計においては、磁力線が外部に漏洩しないようにせねばならない。皆さんのお近くにある缶モータと称するものに、鉄片を近づけてみられるが良い。くっつくものは磁気回路がまともではない。うまく処理すれば、よりトルクが増大するであろう。ちょうど内径の合う鉄パイプをかぶせると良いのである。
 一部のコアレスモータでもそのようなものがあるのは不思議だ。

 いわゆるOpen Frame Motorであっても、適正な磁気回路を設計して界磁を作れば、かなりの効率改善が見られるはずである。
界磁のコアは積層になっているが、直流モータでは積層の必要はない。ムクの軟鋼塊で良い。切るのはレーザで十分ですばらしいものが出来るであろう。

 問題はその積層鋼板を締め付けるネジである。もっとも大事な部分に孔を空けて、こともあろうかブラスのビスで締めているものがある。これは当然鉄ビスを使うべきであろう。
 磁気抵抗が大きい部分があると、磁束は外部へと漏れ出してしまう。磁気回路が途中で遮断されれば磁気漏洩は当然起きる。

怪しいトランス しばらく前のセンタ試験の物理の問題で、閉じていない磁気回路を持つ変圧器が発生する電圧の問題があった。問題を作った人は実際にトランスを作ったことがない人であるのは明白だ。答えは理想的なトランスでの値で、実験値は、想定値の8割くらいであった。
 これを指摘した人は工業高校の先生で、実技の経験豊富な人だ。モータの設計においても全くその通りで、エアギャップは少なく、その他の磁気抵抗も最小になるように工夫せねばならない。
 Lobaugh series wound motorLobaugh motor いま、その形を模索しているところであり、いずれ発表できるであろう。Lobaughと言えども完璧ではない。しかしその電機子の作りはすばらしい。スタティック(静的)なバランスしかとってないが、廻してみても振動をほとんど感じない。

 この写真の軸にギヤがついているのは、そこにボール紙で作った羽根を貼り付けた痕である。例の光学式回転計で測定した直後に撮影したのだ。12V で9700回転であった。

 強磁界によりモータの回転数が1/4になれば、減速比が小さくなり、ベベルギヤ1段でも十分になるであろう。すると容易に、押して動く機関車が実現できる。ウォームギヤは過去のものになる日が来そうな気配である。




 無事であれば、今頃筆者はまた、カホン峠あたりをうろついている。帰国までしばらく休載させて戴く。

2011年01月21日

続々 磁気回路

 先日、高橋淑氏にお会いして聞きたかったのは、誰がOゲージ用モータの設計をしたかということであった。なんと祖父江氏であった。Lobaughのモータを元に彼が絵を描き、それを元に電気屋を何軒か回って作るところを探したのは高橋氏であった。道理で、ブラシ支え部分の作りが似ているわけだ。しかし、ほとんど完璧な真似であったのでかなり良いモータであった。
 当初5溝のロータを作ったのだが、プレス型がでたらめで、重ねると極の位置が違って、がたがたになる。巻線機で巻くとひっかってエナメル線が切れてしまう。しょうがないので、ひとつずつヤスリで削るなどということをしていたそうだ。
 より良い抜き型を作るまで苦労したそうである。仕方なく合印を作って、特定の位置で縦にそろえたのだ。

磁気回路短絡 その後、どの位置でも合う抜き型を作るところがあったので、それ以降は合い印はないということだ。昔筆者の持っていた三線式のOゲージの機関車のモータは軸受け部の支え板が鉄板製であった。父は「こんな馬鹿な設計はない。」と憤慨して、ブラスの板で作り直してくれた。要するに磁気回路が短絡されて、トルクが減るのである。

 これについて、高橋氏に聞くと驚くべき答が返って来た。「あれはコストを下げるためにやったのです。無論私は反対しましたよ。でも、『安くせよ』と言うもので仕方なくなるべく薄い鉄板で作ったのを付けたんです。多分動かないだろうと思っていたんですよ。でもトランスをつないだら一応廻りました。社長の『廻るじゃねえか』の一言でおしまいだったんですよ。」

 このあたりに、日本のOゲージがおもちゃで終わってしまった大きな原因が隠されているように思う。「より良いものを作ろう」という気迫が全く感じられないのである。
 ところが輸出用の模型のモータはどれも例外なく、軸受け部の支え板がブラス製である。磁気回路は短絡していない。
 インポータの指示があったのである。当時のインポータは「金はいくらでも払うから良い物を作れ。」と言ったそうだ。

 当初のEB電関の台枠は、ブラスの1mm板であった。それを安くするために0.9 mmにし、さらに0.8 mmまで薄くしたら、強度がなくなった。ところが、蔵前にあったある問屋の下請けが0.7 mmの鉄板で作ってきた。これは安く、丈夫であったのでそれが標準となった。
 台枠を固定するリベットも最初は銅であったのがアルミになった。
 我が家のEB電関はこの鉄板製台枠であった。軸穴の中でブラス製の軸が回転する。当然軸は磨り減って細くなり踊るようになる。またまた父の怒りは炸裂した。
「軸は硬い材料で、軸孔は軟らかい材料でというのは鉄則だ。何を考えているんだ、こいつらは!」とブラスの軸受けを作ってくれた。軸は鉄製のを手に入れたから、改造は簡単であった。

2011年01月19日

続 磁気回路

KTM 30mm Core Motor Magnet Removed 次に1970年ころ製造のKTM製モータ②の磁石を外した。これはアルニコ系の磁石で、高橋氏によると三菱系の会社の製品だそうだ。もうすでに磁力は落ち、吸着力はたったの300g重(3 N)しかない。これを外した空間に30x15x5 mmのネオジム磁石(吸着力8.2 kg重、83 N )を入れ、残りの部分は軟鋼板のつもりであった。しかし、20 mmもの厚さを板で埋めるのは大変である。

KTM 30mm Core Motor Modified そこで外した磁石を90度ひねって吸着させたところ磁極に関係なく着いてしまった。いかにネオジム磁石が強いかがよく分かる。しかしアルニコの磁極が生き残っていると面白くない。何かの本に、衝撃を与えると、容易に磁極の変更ができると書いてあった話を思い出した。ネオジム磁石に吸着させたまま大きなクランプで磁気回路を形成するように挟んで金床の上に置き、割れない程度に金槌で百回ほど叩いた。すると本当に磁極が90度転換してしまった。それを押し込んだら改造は完了である。これなら早いと思ったが、実のところ思わぬ障碍があった。磁力が強すぎてフレームがたわみ、電機子に接触した。少し修正して廻るようになった。

 電流を通じると、起動電圧が1/4以下になり(7 V⇒ 1.5 V)、12 Vでの無負荷電流も1/3(1.2 A⇒0.4 A)になった。このデータは以前の状態がいかに駄目であったかを物語っていて、ネオジム磁石がどの程度機能しているのかはわからない。
 しかしトルクはかなり大きくなっていて、測定はしていないが、数倍になっているような気がする。7溝であるのでさしたるコッギングもなく、調子よく回った。

torque meter 今トルク計を設計している。トーション・バー(ねじり棒)にパイプをかぶせ、それに付けた針が、ねじり棒上の文字盤のどこを指すかを見ればよい。回転しているからストロボで短時間の発光をさせて見る必要があるが、最近はデジカメの時代だから撮影、検証は容易だ。定常状態で行うのでブレーキを掛けつつ、電流電圧を表示させ、写真を撮らねばならぬ。このような実験装置を作るのは楽しい。何かの発見があるかも知れぬ。
「ノーベル物理学賞を取ろうと思えば、まず実験装置を自作せよ。」とは、よく聞く話ではある。

Tachometer and Optical pick-up 
 回転計は旋盤の主軸回転数を測る光学式のものがあるので、それを外して一時的に使用する。旋盤用は40枚の羽根がついているので、それを4枚にすれば回転数測定時には、単に読みを10倍すればよいことである。


 トルク × 回転数で出力が計算される。電流 × 電圧で電力が算出されるので、それらを元に効率も知ることができる。ネオジム磁石によってどの程度改善されたかが分かり、コスト・パーフォーマンスが客観的に示されることになる。
この客観的というところが大切で、このようなデータは模型雑誌ではついぞ見かけることがないものである。
 どんなに良いといっても信じがたい話が多い。特に機関車の性能についての記事は、怪しいものばかりだ。

2011年01月17日

磁気回路

 磁気回路という言葉をご存じない方が多いと思う。モータ、変圧器などの中を通っている磁力線の通り道が一周しているその通り道である。筆者は幼少のころより、父から散々聞かされて育った。

 最近話題のネオジム磁石を模型用DCモータに使うとどうなるだろうか、という話を土橋和雄氏とした。土橋氏は本物の電車の電路屋さんだ。
 既製品のモータはアルニコかフェライトの磁石を使用している。直巻モータよりは省電力(界磁を励磁する必要がない)だが、界磁の磁束密度が高いとも思えない。これをネオジム磁石にすれば単純計算で10倍くらいにはなる。すると逆起電力は10倍になるから回転速度は落ち、トルクは増大するはずである。いろいろなファクターがあって一概には言えないが、全て良い方向に行くはずである。

 改造すべきモータをジャンク箱から探し出した。

①Lobaughの直卷モータ コア厚み38.0mm(1.5インチ)電機子径31.75mm(1.25インチ)7溝
②KTMのマグネット・モータ コア厚み32mm 電機子径32mm 7溝
③All-Nationのマグネット・モータ コア厚み25.4mm(1インチ)電機子径25.4mm(1インチ)7溝
④中村精密のマグネットモータコア厚み20mm 電機子径12.5mm 5溝

 磁石はNeoMag社から購入した。注文すれば即日送ってくる。ぴったりの寸法がなければ軟鋼板を削って隙間に入れれば改造完了である。

 久しぶりに糸鋸で鉄板を切った。バローべの2番でがしがしと切り、ニコルソンのヤスリですり落とした。普段のブラス工作とは違い、刃物の切れ味がもろに分かる。ニコルソンのヤスリは鉄工には不可欠だ。
 よくブラス工作にもニコルソンでなければ…と言う人がいるが、筆者にはどれでも良いと感じる。ブラスは軟鋼に比べればはるかに快削であって、どんなヤスリでも大差なく削れるはずだ。

Modified Nakamura Seimitsu MotorOne magnet is removed to ensure bertter performance 最初に④のモータをばらして磁石を捨て、25x5x10というサイズの磁石を嵌めた。吸引力は5.1 kg重(52 N)もある。もちろん軟鋼板を隙間に入れた。
もともと二つの磁石があったが、磁気回路を考えると無い方が良いということになって、ひとつだけ嵌めた。

 これは失敗であった。磁力が強すぎて、電機子の鉄心が吸い付けられ、コッギング(英語ではTeething)が起き、電流を通じてもそれを引き離すだけの磁力が生まれなかった。もっと弱い界磁にしなければ動かない。これは5溝しかないことも大きなファクタである。完全に磁極にはさまれる瞬間があるからだ。多少電機子をねじった(Skewed)状態にしても追っつかない。
 5 A も流せば吸引力から逃れることが出来るだろう思ったが、とても無理で焼け始めた。この種のモータにはもうすこし弱い磁石が適する。しかし現況のは弱すぎて全く力がない。電機子の巻き数も多くすると良いだろうが、磁気飽和を考えると無駄かもしれない。薄くて安いものを買ってみよう。

 後述のOゲージ用モータに比べると、当時のHO用のモータの設計は見るからに駄目そうである。  

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