力学

2007年08月09日

ジャックマン・シャフト

DT129 ジャックマン・シャフト YU様よりのコメントを拝見し、ジャックマン・シャフトという言葉をお教えいただいた。ED75という機関車のDT129台車に付いているそうだ。

 ED75という機関車は、いろいろな意味での試行を集大成したような機関車らしい。現物を見たことは無い。スリップしにくく、小さくても牽引力に優れた機関車であったそうだ。

 実物の機関車の牽引力はスリップさえしなければかなり増大する。各軸モータの電気機関車はその点不利である。空転検知に多大な苦労がある。制動時も同様である。

 Tom Harveyも盛んにそのことを言っていた。牽引力は馬力では決まらないと。Big Boyの牽引力はGP-9の5台分に相当するそうだ。

 ところで今日の写真はquazyan氏のウェブサイトから拝借したものである。検索中に偶然見つけたのであるが、凝りに凝ったCGグラフィックの集大成である。
 
 この図中、気になるのは、牽引力伝達棒が斜めになっていることである。2軸の中心のレイル面に仮想の接地点を置いているのだろう。この手法をとるには、台車枠にひねりに対する十分な剛性が必要である。そうでないと、輪重が変化する。

 最近の電気機関車などにはこのような工夫はないようだ。軸重移動を防ぐ抜本的な方策がほかにも見つかったのであろうか。

2006年12月06日

慣性を大きくする

Flywheel equipped Diesel Engine 本物の慣性は大きい。山手線など駅を出たら次の駅まで慣性だけで走っていく。運転士は「動かしているのか止めているのか判らない。」とまで言う。

 模型は質量が小さいと同時に速度が小さい(これは二乗で効く)ので、慣性はほとんどない。内部に隠したはずみ車を高速で回すしか、見かけ上の慣性を稼ぐ方法はない。チェイン・ドライブを作る時、はずみ車を作り、ボールベアリングで支えた。もちろんスラスト・ベアリングも組み込んで、衝突に耐えるようにした。

 多少増速して、モータの回転以上で回るようにした。この効果は大きく、巡航速度に達すれば、電流を切ってからエンドレスを周回するほどである。

 あまり速く廻すと、ジャイロの効果でカーブを廻り損ねる可能性があるかもしれない。DCCによる起動時のモメンタム(擬似慣性効果)とは全く違う、本当に質量がある様な走りをする。

 この機関車(Aと呼ぶ)と、普通のはずみ車のない機関車(Bと呼ぶ)を重連で貨車なしで走らせていた時、非常に面白い現象に気がついた。

 Aを休ませておいてBだけで駆動すると、たった2輌しかないこの重連が、極端な重さを感じさせるのである。しかし動き始めたら止まらない。発電ブレーキで止めなければならない。これは何かに使えないだろうか……。

 子供の頃、機関区で仕業につく蒸気機関車が単機で走っていくのを見ていた。その時、スロットルを開くと、動輪がシュルシュルとスリップする。止まる時もかなり荒っぽく止まるので、動輪がロックした状態で数メートル滑っていく。たまに逆転して止まるのもいた。これが再現できるはずである。普通の模型ではそれは絶対に再現できない。サウンドと組合せるとそれは絶大な面白さを演出する。 

 テンダにこのはずみ車を入れたい。センティピード・テンダなら、見かけを損なわずに簡単にできる。増速を強めに掛けておくとどうなるか。単機で走り出してもスリップするはずである。本物のように。止まる時は逆転を掛けて止まるということもできそうな気がする。おそらくテンダは巨大なはずみ車を収容して、機関車より重くなるだろう。軸受の摩擦が少ないので、凄まじく大きな慣性を生み出すはずである。

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2006年12月01日

トルクアーム

torque arm トルクアームはギヤボックスの倒れ止めに過ぎない。簡単な工夫で、軸箱の上下動を保ちつつ、反トルクを受け持つ。

 このような工夫さえない機関車が多く存在するというのは、この国の理科教育がいかに無力かを知らせているようだ。

 ゴムチューブでつないだものをよく見るが、軸箱の上下動を妨げている。前後進で調子が変わって当たり前である。

 ずいぶん昔の話になるが、故酒井喜房氏がUnitedの設計をされていた頃である。「前進と後進で調子が違う。バックのほうが調子がよいのは駄目だ。」とインポータのPFMに言われたそうだ。「仕方がないから、ウォームを逆のねじれにしたところ、前進の調子が良くなった。」と嬉しそうに話された。それを聞いて、「トルクアームをつければいいのですよ」と言うと、「あっ、そうか。」と妙に納得されたようだった。その後改良されたかどうかは確認していない。

 ギヤボックスをなぜ必要とするかというのはギヤの分離力(反発力)に耐えて軸距離を保ち、スラストを閉じ込め、外部にはトルクのみが現れるようにするためである。要するに、モータとはトルク以外何の関係もない状態にせねばならない。モータとの継ぎ手はオルダム継手ユニヴァーサル・ジョイントのようなルースな継ぎ手が望ましい。オルダム継手はここに動画がある。 

 モータ軸に直接ウォームをつける方法は、相変わらずよく見るが、どんな理論武装をしてみても褒められる話ではない。モータというものは、モータ軸にスラストを掛けてもよいようには設計されていないし、反発力が押さえ込まれていないからである。

dda40x at 12:01コメント(5) この記事をクリップ!

2006年11月30日

トルクチューブ

torque tube トルクチューブの説明をしておきたい 。

 筆者は自動車の構造にも興味がある。もちろん、動力で動くものはみな好きだが…。
 小学生の頃、乗用車のスプリングは「リーフ・スプリング」であった。急加速するとばねが妙な形にねじれるのを知った。作用・反作用の原理で説明できた。ばねの隙間の摩擦が振動を吸収することもよくわかった。

 そのうちに「コイルスプリング + ショックアブソーバ + リンク」の時代が来て、リンクが反作用を受け持つのを知った。ショックアブソーバがないといつまでも車体の揺れが止まらないことも理解した。

 鉄道模型を、固定軸の「EB電関」というおもちゃで始めたころはわからなかったが、動輪がスプリングで可動するタイプの機関車を見て、これはインチキだと思った。というのは、反作用でギヤボックスが倒れてくるのを支えるものが何もない。怪しげなゴムのチューブでつながっていて、反作用があればそれがたわむ方向または伸びる方向に作用した。しかし、ゴムチューブは硬いらしくびくともしない。ということは、ギヤボックスの自由な運動を妨げている。TMSを読んでもほとんどそれに関する記述を見たことがない。

 しばらくしていすゞのジェミニという車が発売された。その動力伝達機構は、それまでのタイプとやや違っていた。反作用を受け持たせるリンクがなく、単純な構造であった。これでは走らないはずだと、よく調べたら、ドライヴ・シャフトが、やや太目のパイプの中を通っている。そのパイプの一端が車体に取り付けられている。これを「トルクチューブ」と呼んだ。当然、推進軸の反作用もそれで受けている。当時、いすゞはGMと技術提携していた。GMの車にはこれを採用したものが多い。ポルシェも採用している。

 うまい工夫である。これを採用しようと思った。構想を祖父江氏に伝えると、「それはいい」と採用され、標準仕様となった。現在、祖父江氏の工房で動力機構を改装すると、このタイプが採用されてくるはずだ。これは祖父江ドライヴとして確立された。

dda40x at 07:30コメント(5) この記事をクリップ!
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