電気機関車

2023年09月14日

続々 車輪を作る

GG1 Drivers この車輪はGG1の57インチ(1448 mm)動輪だ。  
 Dennisから、早く作れと時々催促があるので、作り始めた。本来は彼から受け取ったロストワックスの輪心と洋白で出来たタイヤを使う筈だったが、あまり気乗りしなかった。すぐに磨り減ってしまいそうだったからだ。それとクイル駆動の輪心が埋もれていて面白くない。この部分は、かなり外に飛び出している。すなわち斜め前方から見ると、その部分の張り出しが見えるのだ。これは1974年に現物を見て確かめてある。

 Φ30のLow-D車輪はかなり前に用意してあったので、それに3Dプリントの輪心をエポキシ接着剤で貼り付けた。なかなか勇ましい。透けて見えないと言う人が居るかも知れないが、実物はほとんど向こう側が透けて見えない。大きなギヤボックスがあるからだ。
 精度が高いので、滑らかに転がる。この動輪はまだ余分があるから希望者にはお譲りする。
 
 タイヤを絶縁紙を挟んで嵌める。プロではないので、時間を掛けても問題ない。短冊に切った絶縁紙を接着剤で巻いて、固まったところで押し込む。タイヤの内側には微妙なテーパが付けてあるのでよく締まる。念の為に、エポキシ接着剤を塗りこんで、拭き取る。

 プロの手法は面白い。絶縁紙(いわゆるファイバー)をかなりふんだんに使っていた。まず、絶縁紙を煮る。柔らかくなるから、それを輪心にかぶせて簡単なプレスで押す。すると浅いカップ状のものが出来る 。それを乾かしてから、輪心に載せて、タイヤを置く。プレス器で押せば自然にタイヤが嵌まる。短冊に切って貼る必要はない。
 こうしておいて、車輪を旋盤にかけてタイヤと輪心の外周が同一平面になるようにする。不要な絶縁紙は同時に切り落とされて同一面になる。また、絶縁紙の切れ目が全く見えないところが素晴らしい。
 ゴミの量は凄まじい。このあとで、めっきをかけるのだ。めっき液は絶縁紙に多少染み込むので、長く水に漬けて洗わないと錆びて来る。60年代の製品には、これが原因の錆が見られることがある。
 ただしこの方法では、絶縁紙の9割以上は捨てられてしまう。昔はこの絶縁紙は安かったのだ。今は貴重品で、売っている店が少ない。 

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2023年09月10日

車輪を作る

 Low-Dの再生産をすることが出来た。しばらく枯渇状態であったから、多くの方から注文を受けていた。価格はかなり高くなった。電気代、切削油、金属材料その他の値上がりが大きいので仕方がない。

spoked wheel center 通常の車輪とは別に、今回は一念発起して、スポーク車輪の生産をすることにした。カツミ製の Φ19車輪の輪心を利用して出来ないかというアイデアであった。
 軸穴がΦ3のブラス鋳物(特注品らしい)をかなりの量、手に入れてあった。通常の商品は、M4-P0.75 の怪しいネジ穴があいていた。ガタガタでお話にならない。締め込むと奥に当たってまっすぐにはなるが、ネジのガタが大きく、心が出ない。走らせると車体がわずかに上下する。台車を組んで、ゆるい斜面を転がすと明らかに速度が変化する。こんなものは駄目である。

truing old wheel ネジの切ってないこの車輪は心が出ているので、これを使えないかと工夫した。Φ19のコレットに軽く銜え、竹べら法で平面を出し、締め付ける。このとき、穴にまっすぐなΦ3のシャフトを挿しておくと、フレがよく分かる。フランジ面を0.25 mm削り、この面を基準面とする。軸穴は振れていない。裏返してネジを突き出させたヤトイに締める。トルクを与えるためにピンを一本打つ。表を0.25mm削り、外周を所定の寸法(タイヤの内法)に削り落とす。絶縁を入れるときは、その分を余分に削る。

 かなりの手間である。4枚やっただけでアゴが出てしまった。こんなことはやっていられない。

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2023年08月21日

続々 山川 眞氏の死去

 山川氏は電気機関車の模型も精力的に作られた。床の間に巨大なEF58があった。1/20 の大きさであり、車内の抵抗器、継電器、空気圧縮機、ボイラなど、これでもかと作られていた。そのまま博物館に置けるような模型である。

 写真、図面などの資料はたくさん集めていらっしゃったが、それだけではこの様な模型はできない。山川氏の強さは、三次元の空間把握力である。見たものは憶えているからこそ、形ができるのだ。土屋 巌氏は輪を掛けて凄かった。デザイナとしての卓抜した能力だ。

EF58 旧車体 OJ の機関車群は全てイコライズされ、滑らかに走った。ただ、各軸に吊り掛けモータを付けていたが、モータのトルク不足でスリップが起こらないのは不満だった。そこで、筆者の6軸ディーゼル電気機関車を見せた。3軸ずつ連動させ、2モータにしたものだ。強大な引張力を期待できる現物を見せたわけだ。平歯車でなければ押しても動かないと思っていたので、3条ウォーム装荷の電気機関車を思い描くことができなかったのだ。

 山川氏は俄然やる気を出し、改装計画を立て始めた。もちろん6軸連動が一番良いが、ほとんどスリップしないので面白くない。筆者の6軸機関車の一部は、3軸ずつ独立させている。 

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2022年05月31日

六角ジョイントの他の例

 六角ジョイントは軸のズレを吸収できる。この図の緑の六角ジョイントは、その機能を利用している。

 電鉄会社のOBは、「これはWN継手みたいなもんだな」と言った。WN継手は、角を丸めた歯車を内歯歯車の円筒の中に収めたもので、多少のズレを吸収できる。わずかなガタがあるので、惰力で走ると妙な音がする可能性があるそうだ。
 六角ジョイントは樹脂でできていて、摩擦も少なく、音が事実上しない。 

 この六角ジョイントの原型はKTMにいた高橋 淑氏がイギリスの模型雑誌を見て導入したそうである。1960年代のことだ。すでに半世紀を過ぎ、どこからも特許侵害とも言われていないので、問題はない。1960年代当時も、WNの特許取得から30年以上も経っている。

Microcast Mizuno (3)Microcast Mizuno (4)Microcast Mizuno (1)Microcast Mizuno (2)




 過去の日本製のHOにもこれが見られる。小栗彰夫氏の指摘によると、50年ほど前にマイクロキャスト水野が発売していたディーゼル機関車にも付いている。この下廻りは、輸出用のディーゼル電気機関車の下廻りを流用している。ということは同様のものが輸出されていたかもしれない。
 それがどうして受け継がれなかったのか、その理由が知りたい。B-B台車であれば、反トルクは、自然に解決する。

 しかし、蒸気機関車の場合は、反トルク承けが無いと不具合を生じる。どうして誰も、それに向かって解決を図らなかったのか、を考えねばならない。走りが悪いということにすら気付いていなかったのではないか、と最近の投稿を見て思う。

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2022年05月25日

続 吊掛け駆動

 吊掛けの目的は、モータの重さの半減にある。すなわち、車軸の横にモータが来ることになっていて、半分を台枠に持たせている

 35年ほど昔、吊掛け式と称する模型電気機関車を、見せられた。それには、各モータが動軸の上にあった。すなわち、モータの全重量が車軸に掛かる。これでは吊掛け駆動ではない。軸距離が小さく、モータが入らないから、そうしたのだ。本物は歯車が無い機関車として有名であった。界磁が、線路に近いところにあって、犬釘、継目板などを吸着してしまい、事故を起こしがちであった。伊藤 剛氏の解説によると、保線の線路工夫が置いたままにしたスパナを巻き込んでしまったそうだ。
 12軸の動輪軸に12個のモータが付いていた。当時は模型用として、そんなに小さなモータが手に入らなかったので、上に積んで、スパーギヤ駆動にしたのだ。これはまずい。

 しばらく前の話題のGG1も同時に見たが、一つの軸の真上に2つのモータが直接載っていた(もちろんカルダンドライヴではない)。
 どちらも吊掛け式と謳っていたが、全くのおもちゃ的構造であって、吊掛け式の概念からは、遠く外れている。モータの質量が全て車軸の上に載っているというのは、情けない間違いだ。どちらも、本物の知識を十分に持っていると自慢する方の模型だったので、言うべき言葉がなかった。小さな模型だから壊れないが、大きな本物であれば、たちまち軸が折れてしまうだろう。

 要するに、見かけだけを表す模型でも良いのだが、本物の構造を良く知った上で、「模型的簡略法をやってみました」と言うのは、良いだろう。しかし「本物の通り」のわけがない。 

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2022年05月23日

吊掛け駆動

 いわゆる吊掛け式とは、一体何だろう。
 元々は、電気機関車の台車内の構造を表す言葉である。重いモータが車軸に付いていると、線路の不整でモータが上下に揺さぶられて、壊れやすいし、線路も傷む。そこで、モータ軸を車軸と近い高さにし、モータの質量の半分を台枠に結び付ける。そうすると、線路からの衝撃はかなり減り、不都合なことが減る。車軸は片足持ち上がる可能性もあるので、固定は一点である。

nose suspension その台枠に結びつけるモータの突出部分を英語で "nose"と言う。飛び出しているからだ。英語で吊掛け式は、nose suspension drive という。趣味人でこの英語表現を知っている人には会ったことがなかったが、最近電鉄会社OBと話したところ、この表現が出てきて驚いた。会社によっては、ノーズという言葉を社内で使っていたようだ。

 この部分はモータの質量を承けるだけではなく、反トルクをも承けている。”吊掛け式”と称する機関車や電車の模型を見せてもらうと、その部分が怪しいものをよく見る。ノーズ部分をきちんと作ったものを見ることは少ない。起動、停止によって、モータがガバガバと上下するものがあるが、それでは全くダメである。反トルク承けが付いていないものは、うまく走るはずがないのだ。

 蒸気機関車の模型では、直角伝動だから、モータはかなり後ろに来る。すなわち、モータの重さは、動軸にほとんど掛からない。しかし、そのノーズは先述の1点支持になるべきなのだが、このあたりの構造が怪しい模型がとても多いと感じている。 

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2022年03月12日

転ばない台車

 普通にイコライズすると転んでしまうが、工夫すれば転ばない。本物の機関車のイコライザの配置を見るのは、楽しい。様々な工夫があるからだ。

B+B w/cross equalizer まずこれを見て戴きたい。B+Bタイプである。片方の台車(右)は、中央寄りにクロス・イコライザが付いている。リンクの厚みが見える。すなわちこの台車は、3点支持で安定している。左の台車は、転ぶタイプであるが、右側台車と結合してしがみついている。すなわち転ばない。筆者もこうすればよかったのだが、高校生の頭では思い付けなかった。のちに椙山氏のところで図面集を見せて貰い、なるほどと思った。

B+B+B 次にこれはどうだろう。中央台車の右側にクロス・イコライザが見える。すなわち中央台車は転ばない。前後の台車は、両方とも転ばないように、中央台車に結び付けられている。すなわち全体が安定化する。


2-B+B 先輪があるときは簡単である。先輪を1点として、残りをイコライザで繋げば、転ぶことはない。蒸機の4-4-0と同じである。その安定化した台車に、もう一つの台車を結び付けている。

 流石(さすが)に、実物では転んだら大変なことになるので、きちんと考えられている。

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2022年03月06日

転ぶ台車

ED17 オークションの写真を見て、高校生の頃を懐かしく思い出した。イコライジングを試みたが、台車が転んでしまったのだ。まさにその状態が、この数枚の写真に写っている。

 ED17はイギリス製であったから、台車は板バネの4点支持である。イコライザが付いているのはアメリカからのものが多い。この模型はどうしたわけか、イコライザが付いている。持ち主は付けたくなったのだろう。その結果はこの写真のとおりだ。

 筆者はED14に似た自由形を作り、これと同じイコライザ付き台車を付けた。軸ごとに小さいモータを付けた。全軸伝導である。完成を急いだが、できたものは、全くお話にならない状態だった。
 台車は前後に自由に転び、収拾がつかない。台車ボルスタの前後の幅を大きくしてみようと思ったが、それは実物の構造とは違う。
 近くの電車の車庫に行って、そこにあった怪しいBB電気機関車(入替とか、小貨物を牽いていた)の台車を見ると、2つの台車が噛み合っていた。回転はするが上下にずれない様になっていたのだ。しかし、それはイコライズしていない台車だったから、何の答にもなっていない。そのうち、台車を互いに引っ張り合わせたらどうかと思い付き、細いコイルバネで引っ張った。なんとか走るようになったが、不安定である。

 最終的に、台車の片側のイコライザを取り外し、各3点支持としたが、全く面白くなかった。このときはクロス・イコライザまでは考えが及ばなかった。その機関車は、友人に譲った。 

 ともかく、イコライザを付けると台車は転ぶという実例を見せてくれているので、教材としては面白い。「続 蒸機を作ろう」にも書いておいたが、実例として見るのは稀である。 

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2021年10月31日

GG1の駆動装置

 3Dの師のS氏が来てくれたので、今後の予定を話し合った。

 懸案のGG1を完成させねばならない。車体と台車枠を提供してくれたDennisが「早く作れよ。」とつっついてくるので、なんとか今年度中には走るようにしたい。  

GG1 driver centerquill drive casting 問題は車輪である。Φ30の車輪を提供してくれたが、あまり実感的でない。この種のクイル駆動の車輪はスポークに相当する部分が外側に出ているべきなのだ。それがタイヤ面と同一なので、実感がない。
 ロストワックス部を作り直そうかと思っていたが、Φ30のLow-D車輪がいくつかある。輪心部は平面なので、そこに3Dプリントのレリーフを貼り付ければ簡単である。 

 Low-Dは摩擦が少ないが、客車10輛を牽く程度の負荷なら、問題はない。客車はブラス製の Congressional である。1輌1.5 kgほどもある重い車輌だが、軸受にはボールベアリングが入っているからだ。

twin-motor GG1は、25ヘルツの交流11000 Vで走る機関車である。整流装置は持たず、交流をモータに流している。そのための低周波数である。
 モータは385馬力の小さなものを12台積み、それらはクイル駆動で動輪を動かす。すなわち1軸2モータである。実は当初それを作ろうと思っていたのだ。本当に作動する駆動方式(実物通りでない方式)も計画に入っていたが、牽引力を考えると難しかった。スリップが1軸でも起これば、牽き出しは難しい。これも、3条ウォームによる全軸連動方式になる。

 1974年に筆者は、現役時代のGG1を見ている。すでにAmtrak塗装になり、侘びしい姿であった。通勤列車を牽いていた。

 古いTrain誌に記事があり、興味深い話が沢山ある。  

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2021年10月29日

EF58の先台車

lead truck S氏に3Dプリントの作成をお願いしていたが、設計が終わり、先台車が納品された。こういうものは樹脂成形に限る。
 というのは、Oゲージでは先台車枠を広く作らざるを得ないからだ。デッキのハシゴが開き過ぎて、実感的でない。 これを解決するには、接触しても短絡の心配のない樹脂で、なるべく台車枠を狭く作ることだ。そして、デッキのハシゴに関節を付けて、押し上げられるようにする。半径2800 mmの曲線上では、ほんの少しはね上げられる程度にできる。よその線路には持ち出さないので、十分である。

 昔のOゲージを、博物館の線路に適合させるだけだから、難しい工作をする必要もない。伝動装置は3条ウォームの全軸駆動で、モータ軸からはチェインで下げる。もちろん前後の台車は連動し、牽引力を稼ぐ


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2021年05月22日

EF58の再生計画

Nickel Plated 動輪のめっきが出来た。厚い硬質ニッケルめっきだから、スティール製のレイルの上を走っても、そう簡単には剥げることはない。台枠をどうやって作るかを思案中だ。
 オリジナルのダイキャスト製軸箱は、一つも使えるものがなかった。ブラスのロストワックス鋳物に取り替える。Φ3の穴を座ぐってΦ5にし、内径 2 mmのボールベアリングを入れる。機関車であるからΦ2が限度で、細いジャーナルでは折れてしまうだろう。

 板バネは、新たにリン青銅の板から切り出す準備が整った。イコライザは正しく動くように作り直す。リンクは作り直すべきか、調べている。バネ座を正確に作らないとバネが水平にならない。できる限り機械加工して、精度を高めることにする。

 先台車上部のフレイムは、剛性を高めた設計にする。主台枠同士は連結棒で結び、ボディには引張力が掛からないようにする。すなわち、主台枠が回転すると、片方のデッキ部分が、少し中心に引き込まれることになる。
 片方の台車のキングピン穴は長穴にする。そうしておかないと車体が引き伸ばされたり、押し込まれたりして疲労し、ハンダが外れる。列車を加減速するときの衝撃は小さくない。

 先台車は3Dプリントにする。現在のものはあまりにも出来が悪いので、直すのは断念した 。非金属製であれば、ショートから逃れられるし、梯子に当たっても問題ない。梯子はハネ上げ式にする。
 車体には床板を付けるが、ひねりが効くような構造にするアイデアがある。床上に両軸モータを取り付けて、全軸連動させる。軽いが強力な機関車になるだろう。 

 この座グリドリルはあと数本残っているので、御希望の方はコメントを通じてお知らせ願う。コメント本文にメイルアドレスを書かれたい。  

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2021年05月20日

続 EF58の分解

EF58 lead weights 台車が外れたので、次は車内だ。ウェイトを取り付けている帯金を外した。その状態で車体を掴むと、凹みそうである。ウェイトは一つ 1.5 kgもある。これが各3本の 3 mmネジで車体に付いている。というよりもウェイトに車体がついていると言ったほうが正しいだろう。鉛だけで 3 kgもあるのだ。起動電流が 5 Aを超えるのも無理はない。 

 重いけれども堅いウェイトが車体に密着しているので、車体を握っても凹まない。ウェイトが構造部材となっているわけだ。これはなかなか良い方法かもしれない。ウェイトの角の凹みは、テイルライトを避けたものだ。稲葉氏は木で型を作って鉛を流し込んでいる。ウェイトの側面が直立しているのが素晴らしい。普通は上の方がすぼまってしまう。おそらく、それを経験して鋳型を上広がりにしたのであろう。鋳放しではなく、少しヤスリを掛けて、平面を出したようだ。
 3面(運転台面と左右)は暗い青に塗ってある。車内色はこの色だったのだろう。モータに当たるところはタガネで彫ってある。

 こんな重い機関車なので、ウォームは磨り減り、歯型が変形している。もう少しで丸坊主だ。鋼製のウォームを用いると同時に、ギヤボックスに入れてあれば、グリースが保たれてもう少し長持ちしたであろう。同時代に祖父江氏が作って輸出した機関車は、そうなっている。それに比べるのも酷だが、この機関車の設計者は工学的な知識がほとんど無いことが明白だ。

 とりあえず下廻りの塗料を剥がして、工法を考える。先台車の台枠は、ソリッドのT字型のものを作って銀ハンダで付けることにする。先台車で一点、台車側枠で二点の三点支持が2つできるわけだ。車体が柔かければ、側受を付けて四点支持で良いが、堅いのならば弾性支持にする。機関車の質量は1.5 kgにする。軽いから壊れにくくなる。


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2021年05月18日

EF58の分解

 EF58の分解に取り掛かった。とにかく重い。5 kg以上だ。作業台にひっくり返して置くと、パンタグラフはもちろん、屋根上のモニタが潰れる可能性がある。車体は厚さ0.4mmである。本物のようにふにゃふにゃだ。

EF58 trucks (3) 横向きに置いてネジを20本ほど抜くと台車が外れた。ACモータが集電ブラシから直接配線されている。界磁のポラライズはしていない。ということは、前進のみで後退できない。おそらく、電流が大き過ぎてセレン整流器が入れられなかったのだろう。特急用であれば、それで良かったのかもしれない。台車からモータ、車輪、ギヤをひとまとめで引き抜く。

 台車の構造は全く感心しない。本物の構造を知らない人が設計している。梁に相当する部分の剛性が全く足らない。重い車体が載っているのだから、かなり無理をしていて、台車ボルスタはすでに曲がっている。

EF58 trucks (1) 2つの台車も結合していないから、牽引力は車体を介していることになる。(HO以下の模型ではそれが普通だ。)
 デッキ部分の骨は、主台枠に強固に結合していなければならないのに、上下にフラフラしている。側枠の連結器に近い方の表面にはたくさんのネジが有る。そのネジが何のためなのかを考えれば、こんなひどい設計はしない。本物はここが鋳鋼でできていて、相当の厚さがあるのだ。ところが、1 mmの板にデッキの台枠が 2 mmネジ2本で留まっているだけであるから、バネのように上下に振れるのは当然だ。写真の手前を見ると、その部分が撓むのを見越して逆反りにしているのがわかる。これではだめだ。

axle box 全体を作り替える予定であったが、側枠が意外と良い出来で、残すことにした。軸箱のダイキャストは膨れて動かない。ペンチではさむと粉砕された。ブラスのロストワックス鋳物があるから、それと振り替える。数えたら11個しかないので、一つは自作し、速度計部分とすることにした。板バネは作り替える。例のシァはそのために購入したのだ。 

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2021年05月02日

F級電気機関車

 国鉄のF級電気機関車は、一度は自作してみたかったものだ。昔の駆動装置はモータ軸を縦置きにし、ウォームギヤで動軸を廻し、それからスパーギヤを使って他の2軸に伝動していた。これでは効率が悪いのは、仕方がない。

 実はF級に相当する機関車は、いくつか作っている。3軸台車を持つディーゼル電気機関車群、タービン電気機関車などである。    
 しかし、国鉄型のような軸距離が不均等であると同時に、イコライザが稼働する模型は、経験がない。駆動メカニズムは、短い軸距離の方を1群とし、遠い方には可撓ジョイントを経て伝動すればよい。モータは床上に置き、チェインを介し駆動軸に伝達する。全く難しくない方式である。モータは出力5.7 Wのがあるのでそれを使う。出力曲線を読めば、十分な余力があることはすぐわかる。

 35年前にUP4-8-4を作った時、事前に出力のシミュレイションをした。試運転で、ぴたりと予測と実際の数値が合ったので、驚いたことを覚えている。今回の計算はそれに比べてはるかに楽であった。列車の現物があるので引張力は確実な値であるし、ディーゼル電気機関車群の動力測定は済んでいるので、それを踏まえての動力設計は容易だ。
 
 キングピンの真下を駆動軸が通過する部分は、寸法的にやや苦しそうだが、動輪径が大きいので可能だろう。

 今まで直径が22 mm(42インチ)のものが最大値であったが、今回の27 mm径の機関車は少々戸惑う。速度が大きいから、ギヤ比を替える必要がある。動輪は、古いのをたくさん集めて、その中から良いものを選び、旋盤で径を揃えた。形の駄目なものは捨て、フランジを総型バイトで削った。踏面とフランジを#1200のサンドペーパで磨り、光沢ニッケルめっきを掛ける。硬いので磨り減ることはないはずだが、これは摩擦係数が小さい。

 これが組めれば、次はGG1を組んでみよう。これはテキサスから持ってきたもので、Dennisが作った鋳物で構成されている。


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2021年04月26日

軽い機関車でたくさん牽く

 先の記事で、軽い機関車になるということを書いたが、それについてのコメント、私信をたくさん戴いた。表題の概念は、機関車の持つべき特性のうち最大のものであり、実物の世界では、ありとあらゆる方法で、それを実現すべく取り組んできた。 しかし模型の世界では外見ばかりで、実効性のある設計法にはほとんどお目にかからない。


 今回の列車に必要な牽引力は、列車の現物があるから、勾配、曲線上での数値がすぐ測定できる。過去の経験では、引張力はその数字の2割増しであれば、確実な運転ができる。
 摩擦係数から、機関車の動輪上重量は直ちに算出されるから、先従輪の軸重を足せば、機関車の質量はすぐ求まる。この辺りは中学校の理科の題材であろう。

 問題は、機関車の伝導方式である。OJ、Oゲージでは各軸モータ、吊掛け式がもてはやされる。実感的なのだそうだ。ところがどの作品を見せて戴いても、用いているモータのトルクは小さく、しかもギヤ比が小さいものが大半である。スリップしない。ギヤが見えているものがほとんどだ。油は飛ぶし、綿ぼこりを巻き込む。

 スリップしない機関車はモータが焼ける設計時にそこを押さえていないと、重負荷を掛けられない。やはり勾配線で長大列車を牽かせたことが無いから、気が付いていないのではないか。
 
 さらに大事なことを言えば、動軸が連動していない。模型であるから、伝導方式は実物の通りにする必要はない。全動軸を連動させれば、静止摩擦係数による摩擦力の限界まで引張れる。すなわち軽い機関車でたくさん牽けるのだ。そこを考えた模型には、なかなかお目に掛からない。

 動輪が個別にスリップする様子を見たい人が居る、とは思えない。そもそもスリップしないのだ。以前は連動すると押しても動かなかったが、3条ウォームがあるから、いとも簡単に押せば動く。 

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2020年08月01日

続 特急”はと”編成を預かる

JNR passenger cars (4) この客車群には、その細部がすべて再現されている。サボとか細かな標記はすべて実物通りである。デッキ部分の頭上にあった2等寝台などの行燈まで、正確に再現されている。昭和20年代の東海道本線を走った列車がそのまま縮小されているのだ。3次元のスケッチという表現が当っていると思う。
 急行用の一編成もあって、マイネなどの珍しい客車もある。進駐軍に白帯を取られて、黄帯の時代だ。当時としては極限まで細密化された模型であった。
 ちょうど新しく車輪を作るので、引き受けたタイミングは最高であった。台車は通称”文鎮”のTR47を中心とした一群である。3軸台車もあるが、いずれ3Dプリントに取り換える。長軸であれば車輪を取り替えるだけでOJにもなるだろう。

EF58 機関車はとりあえずEF58旧車体が来た。単機で走らせても 5 A以上も喰う。博物館にある電源では動かせない。DC2線式を採用しているのは、椙山氏の方針をクラブ員全員が受け入れたからだ。当時はDCを採用していた人は、少ない。その点四日市のクラブは、全国でもまれなDC2線式100%のクラブであった。
 HOは最初からDC2線式で発売されたものが多いので、逆行が容易なHOに人気が移ったのは仕方がないだろう。

 当然、動力はコアレスモータと3条ウォームに取り換えることになる。50 mAで動くようになるだろう。筆者は高校生の頃、国鉄型を作っていたが、その後数十年のブランクがあったので懐かしく見ている。一流の模型人が工夫を重ねて作った模型は工芸品であり、修復して展示する価値があるのだ。


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2019年04月03日

mule

mulemule (2)mulesmules 1



 これらの電気機関車は mules と呼ばれている。ラバのことである。荷馬車を牽いて、もくもくと歩く動物だ。
 当初はGE製の機関車であった。運転台が前後にあるもので、三池炭鉱によく似たものがあった。当初は船が小さく、かなりいい加減な曳航でも問題はなかった。1970年頃日本製が納入され、再度新型が納入された。
 新型機は、精密機械である。船がどんどん大きくなり、パナマ運河の幅33 mに対し、32 m幅の船が大半になってしまった。要するに両側の隙間が50 cmしかないのだ。船がどちらにも偏らないように静々と進むのは、一種異様な雰囲気である。風の影響もあるだろうが、ほぼ無事故で毎日の業務をこなしている。先回紹介した事故は、かなり稀な例である。
 旧型機ではそういう仕事ができなくなってしまった。ウインチの張力を手加減で決めたり、速度を目測で合わせるようでは、現代の巨大船は運河壁に衝突してしまうのだ。

Panama canal (5)Panama Canal (4) 曳航索・巻取り装置は windlass という。発音はウィンドラスである。ワインドではない。この張力を一定にする装置の開発がキモであったようだ。一定速度での走行、均一な張力の二つが大切である。船の上から見ていると、運河壁との隙間は完全に一定で、文句のつけようが無い。

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2019年04月01日

ラック式機関車の運用

 閘門が開くと、左右の機関車は協調しながら進む。ワイヤの張力は半自動で調整されるようになっている。いつもピンと張っていて、緩むことは無い。何万トンもある船の慣性は巨大だ。動き出したら止まらない。ぶつかると大破する。
 しばらく前に事故があったことを覚えていた。機関車が押し潰された写真が印象的であった。その動画を見つけ出すことができたので紹介する。向こう側の機関車がワイヤをもう少し強く巻上げていれば、防げたような気がする。船首に乗っている pilot 水先案内人 のミスであろう。最初から急角度で進入しているのはまずかった。

 キャブが潰されているが、運転していた人は無事だった。集電装置がショートし、煙が出ている。この種の事故があることは、ある程度想定されているので、クレーン車が用意されている。

turn tableturntable2crane クレーン車は、中央の線路に置いてある。ターンテイブルをポイント代わりにして出動する。このターンテイブルは全回転するものではなさそうだ。ラックが斜めに切られている。レイルも切られている。この部分の線路は、機関車に力が掛かる位置ではないので、このような方法でも良いのだろう。要するに、曳船機関車が走る全線に亘ってラックがある。また、クレーン車が置いてあるところにはラックは無い。牽引しないから、それで問題はない。

 集電装置は細い隙間の奥にある。隙間の周りは絶縁材でできている。シュウ自体には、ある程度の幅があるのだろう。雨が入るので、三相交流480Vで、低電圧である。饋電区間が短いし、出力が大きいわけでもないので、十分である。薄い集電装置の両側面とレイルとで集電しているように見える。ここに製造所の発表している記事があり、それによると、最高速度は10 mph(時速16 km)である。ギヤ比はかなり大きく、回送時にはウィーンと唸りながら走る。
 軌間は 5 ft で広軌である。標準軌より少し広い。昔のパナマ鉄道の軌間である。

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2019年03月30日

パナマ運河

 小学校の時にパナマ運河の本を読んで以来、一度は行きたいと思っていたが、チャンスがなかった。しかし、今回思わぬことで夢が叶った。

New Canal 最近新しい運河が平行してできたのだが、あまりにも大きくて面白味がない。この写真の右側である。できれば旧運河を通りたいと思っていた。どちらを通るかは当日までわからないのだが、運よく、旧の方を通った。通行量は船の大きさによって決まる。客船の場合は乗客数によるらしい。この船で2000万円程度払うのだそうだ。
 小さい船は当然安い。今までで一番安かったのは、冒険家が泳いで通ったときだそうで、36セントだと言っていた。

Panama Canal 水平式のスエズ運河とは異なり、閘門式で、26 mほどの高低差を乗り越えていく。閘門の中はせいぜい300 mほどの長さで、幅は33 mほどである。船との隙間は1 mもないから、ぶつからないように両側から8輌の電気機関車で引っ張る。

 mule trackLock (2)mule閘門部は最大27度の勾配があるのでラック式の鉄道である。新しい機関車は、日本製である。超低速で安定した動きをする。

worn out レイル2本のうち、運河寄りのレイルがかなり磨り減っているのが分かる。機関車は常に張力を与えているのだから、当然である。前部の4輌のうち最前方2輌は勾配部分ではロープを緩めて駆け上がり、上で再度ロープを緊張させる。その間に、次の機関車が駆け上がる。その瞬間には最後部の2輌は軽く引っ張って、船が前に行かないようにする。このあたりの動きが実にきびきびしていて、頼もしい。船は左右に全く振れずに静々と進む。

619_0468619_0471619_0473 閘室への一回の注水で、12mも持ち上がるところがある。船の脇の地面に立つ照明灯が、数分のうちにめり込んでいったように見えた。船が持ち上がったのであるが、あまりにも静かに水面が上がるので、地面が下がったように感じたのだ。船が上下する時は、機関車からのロープは緩まないように少しずつ長さを調節する。

619_0491619_0494 閘室の水面が次の水面と一致すると、閘門が開く。油圧式で、二重になっている部分もある。修理のための予備かもしれない。
 閘門の上には渡り廊下があり、閉ると手摺りがパタパタと立ち上がるのが面白い。開くときは倒れるのである。


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2017年06月05日

続々々 Old Black Joe

OBJ's 年次総会には、完成した何台かが持ち寄られた。沢山つないで走ったが、モータ、ギヤが同じなので完全な協調運転ができる。
 各人が様々なサスペンション(懸架装置)を付けている。コイルバネにした人もいれば、硬い線バネで支えた人もいる。走らせるとそれぞれのバネの特性が出る。コイルバネで浮かせた構造にすると、ポイントのフログで電車のような軽やかな音がする。
  
 会場では負荷をかけての走行はしなかったが、博物館レイアウトの勾配上での負荷試験では、モータの唸りが聞こえた。おそらく、チェインの伸びがその音の一部を作り出しているのだろう。
 チェイン駆動ではスプロケットの角速度とチェイン速度とが、完全には一致しない。それがうなりのように聞こえるようだ。悪い音ではない。以前書いたように、位相をずらした二本掛けにすると変わって来るだろう。

 筆者の機関車が一番重かった。他の皆さんは重くするとモータが焼けると思われたようだ。実は提供したモータは、大変強力な高級モータで、軸重500 g程度でスリップ限界である。鉛をそんなに積み込むことはできないので、どんな補重でも問題のない範囲に収まる訳である。
 事前に計算しておいたのだが、それを他の方に伝えるのを忘れていたのだ。申し訳なかった。

 側面のディカールは、Union Pacificにした。余っているディカールがたくさんあったからだ。他に理由はない。

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2017年06月03日

続々 Old Black Joe 

Old Black Joe 伊藤剛氏のオリジナルはこんな形である。 外側三線式だ。その集電シュウが実によく出来ていて驚いた。適度な接触圧を持ち、垂れ下がらない。パンタグラフは戦前の朝日屋製を改造したような構造だ。

 フリーデザインの車輛であるから、これを縮小して線路に載せると奇妙なものである。今回のOスケール化のポイントはそこである。本物を設計するつもりで、各部の寸法を決め、それを縮小した。基準となるのは車体幅である。幅が広くなると急にトイ・ライクになる。扉の大きさも大切な部分である。要するに、乗る人間の寸法を基準に設計することが、実感のある模型を作る最短の道である。
 扉は開くようにもできる。筆者は開けないつもりだったが、簡便な方法を思いついたので、開閉可能にした。戻りバネを付けて、普段は閉じている。塗装時に気を付けないと、塗り残しが見えてしまうから、開けたままで塗って、その後外を塗った。

 小型機関車では、うっかり手を伸ばして感電ということが多いそうなので、パンタ台で持ち上げ、エアタンクでガードした。
 Sacramento Northernの本を読んでいると、庫内でパンタを上げる時の話が出ていて、それをやるつもりでポールを増設した。本物のポールは先端がT字の形をしていて、本当に接触させるだけの機能しか持たない。数十秒間補助コンプレッサが働くだけの集電機能である。HO用のポールがあったので使った。

 塗装は黒で、それにオレンジのトラ縞模様を付けた。塗装するつもりだったが、Dr.Yがディカールを印刷して下さったので、省力化できた。これをマスキングでやろうと思うと、かなり大変だ。 

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2017年06月01日

続 Old Black Joe

OBJ 車体を仮組みした時の様子である。

 二軸機関車である。軸重はある程度大きい。バネを効かさねば、線路に大きな影響が出るし、音がやかましい。懸架方式は種々考えられたが、硬いバネを独立して付けることにした。本線上のフログを通過する時の車輪の上下量が0.5 mm以下であるので、イコライザの必要はないと結論した。コイルバネでは緩衝性がないので、ふわふわしてしまう。機関車であるから、どっしりとした動きが欲しい。
 
 話は変わるが、先日某所で二軸貨車をつないで走る場面を見た。ガラガラと走るのは仕方がないが、ポイントで飛び上がる様子が見えた。実にまずい。「重くすれば良くなりますよ。」と言う人もいるが、それは間違いだ。重くすれば、運転によって線路が傷むし、飛び上がりが無くなるわけでもない。極めてゆっくり動かせば、飛び上がりはしないが、それはもはや鉄道模型ではない。線路が傷むと言うと「そんな馬鹿な。」と言う人がいるが、これは事実である。フログが減る以外に振動でハンダが疲労し、導通不良を起こす。

 二軸貨車はリジッド(固定車軸)でよいという暴論を見たことがあるが、それは走らせていない人の意見だ。たとえ走らせていたとしても、節度のない走り方にも不満を感じない人であろう。二軸貨車こそバネが必要である。そこそこに硬いバネで、しかも緩衝性があれば、実に快適に走らせることができる。これは高校生の時に実験して確かめた。
 小サイズの模型の場合は、ゴムを使えばかなりコンパクトに収められると思う。しかもこの方法なら、前後の台車が多少捻られるようにするのは簡単なはずだ。イコライズ方式でも良いが、音の点ではバネ、ゴムには全く敵わない。


2017年05月30日

Old Black Joe

OBJ しばらくチラ見せしていたのは、これである。軸配置がまさか2軸とは思わなかった方が多いだろう。今月のTMSに載っているそうだ。筆者はまだ見ていないが、写真が一枚掲載されているとのこと。

 オリジナルは伊藤剛氏の1946年製の機関車である。元は35mmゲージだったらしい。それを32mmゲージにしたので、少々バランスが良くない、当時はそんなことを言う人はいなかった。
 戦争中、外地でイギリスの凸型機関車の写真からスケッチを起こし、それを日本に持ち帰ったらしい。その機関車はこんな形をしていたようだ。

 今年は名古屋模型鉄道クラブ結成70周年で、本来は伊藤剛氏の存命中にということで、75周年を5年早めて大規模な集会をするつもりだった。伊藤剛氏が、不慮の事故で他界され、少々淋しい年次総会ではあった。

OBJ on track 今年の競作は伊藤剛氏の記念作 ”Old Black Joe" を各ゲージで作るというもので、Oゲージ部会では、ステンレス板をレーザで切り抜いて頒布し、動力は筆者が提供した「3条ウォーム」 + 「コアレスモータ」で、すべて押して動くようにした。ステンレス車輪でタイヤ絶縁だ。1台で数輌の機関車を牽引することができる。

 レーザで切り抜いた板を頒布できたのが少々遅くなり、実質2箇月で製作せねばならなかった。原作の雰囲気を残しつつ、スケール感を出している。

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2017年04月24日

再度 teasing

the engine しばらくここに停まっている。架線がないので動けない、というのは大ウソである。
 パンタグラフをひっかけたので、少しゆがんでいる。パンタグラフの最大上昇時の高さは 25 ftもある。アメリカの鉄道の架線高さの最大値は 24 ftなので、これでは高すぎる。少し工夫して、上がらないようにせねばならない。
 すでに信号橋には当たっている。相手が軽いプラスティックだから良かったものの、金属製を導入する予定だから、とても危険だ。 

 信号橋は複線用をつないで接着し、4線をまたぐようにしてあるが、非常に弱い。接着部がぽろぽろ剥がれて来る。副木(そえぎ)を当てているが、いずれ壊れることは見えている。
 新しく、スティール製にする予定だ。これはそう簡単には壊れないので、5線をまたぐようにするつもりだ。見本になる本物を物色している。
 4面トラスのタイプが良い。内部にはXブレイスがところどころ入る。信号機はすべて上に突き出させる。上面は人が歩けるようにし、手摺りもつける。

 倒れると重大な事故が発生するので、路盤に固定する。

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2017年03月29日

パンタグラフとポール

OBJX パンタグラフは台の上に載っている。このような背の低い機関車では、乗務員が手を伸ばしたときにパンタグラフに触って、感電することがある。それを防ぐためになるべく高くするのがふつうである。

 パンタ台はアングルを組んで作るが、そのアングルを作らねばならなかった。ジャンク箱で見つけたアングルは 、なんとエッチングで溝を掘って曲げたものだった。エッチングの前に焼き鈍してあるから、くたくたでパンタ台の用をなさない。よくもこんな役に立たない商品を作るものだ。ジャンク箱から全部出して点検すると、そういうものが何種類か出て来た。一部は捨て、残りは角の内側に角線をハンダ付けして保管した。
 アングルは曲げたものでないと硬さがない。加工硬化が必要なのだ。例のベンダを持ってきて、t0.4板を曲げた。曲げたものをシアで切り落として、50 mm程度のものを10本ほど作った。多少反るから、修正して使う。

 パンタ台ごと外せるように、台の下にネジを出し、屋根を貫通させた。当然パンタグラフ本体を固定するネジは余分を切り落とした。この径の超硬のドリルは持っていなかったので、普通のハイスのドリルを、ステンレス用の切削油を用いて使用した。切粉が硬く、手に刺さると痛い。すぐに始末した。このステンレスは磁石に付かない組成のものだが、切粉は付く。熱で構造が変化するのだ。強力な磁石でほとんど拾い集めることができる。

 ジャンク箱からHO用のポールが見つかった。壊れたところを修理すると使えそうだ。Sacramento Northern の一部の機関車は構内で始動時にポールを使用している。大型のパンタグラフは重く、バネ上昇ではない。空気圧で上げなければならないのだが、その圧縮空気を作るのに補助コンプレッサを始動する。その電源を取るためだけのものだ。一度パンタグラフが上がれば必要がなくなり、走行時には降ろしている。長さがないから、走行時には使用不能であることは、意外と知られていない。この写真では、ポールのネジがまだ締めてないので、傾いている。  

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2017年03月27日

懸架装置

spring 板バネはすぐに用意できたが、バネ鞍その他の部品を作らねばならない。バネ鞍は扁平角パイプを見つけたので、それを輪切りにしたのち、一部を欠き取ってわずかに開き、無理矢理にフレイムにかぶせた。押出し材であるからとても硬くて都合が良い。細い孔をあけて、下から釘を差し、上で軽くハンダ付けする。その時、バネを巻くバンドも同時にくっつける。上の方は見えないので実にいい加減だ。機能すればよいので、外見には拘らない。

highspeed drillpress 板バネの先にはカマボコ型の部品をハンダ付けし、それに巻き付かせるバンドを作った。これらの部品は精度がないと不揃いが目立つので、全て機械加工で作った。細い薄板に小さな穴を開ける必要があり、高速ボール盤を使った。普通のボール盤では食い込んで滅茶苦茶になる。
 銘柄はSEIKOSHAの"Micro Star"である。ずいぶん前に買ったものだ。1万2千回転出るので具合が良い。高校生のころ、細いドリルを普通の電気ドリルに付けて孔をあけていたが、よく折った。それを見て、父が、
「無駄な努力だな。高速ドリルを使わないと駄目だよ。切削速度には最適域があるんだ。」
と言った。それで、中古の良品を買った。全体の上下が、カラムのボールねじ風の大きな握りを廻してできるのが気に入っている。ステンレスでも超硬のドリルで一発でOKだ。もちろん、切削油はステンレス用のものを選ぶ。ふつうのドリルビットではすぐダメになる。

 作ったバネ関係の部品をフレイムに取り付けるには長いリンクを介している。イコライザがないので、本当はこんなリンクは要らないのだが、フレイムの下の方に孔があいているので仕方がない。
 作った台枠に、軸重470 gw になるように錘を取り付け、走らせてみたところ、フログでドスドスという音をさせて通過した。合格である。ストロークは、0.7 mm程度である。軸距離が短いので、十分なのである。錘は鉛で鋳造した。鋳型は10 mm厚のバルサである。
 バルサは軟らかく弾力があるので、クランプで締めて、台の木に釘で打つと漏れない。 また、熱にも強く、焦げても強い臭いがないのが良い。

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2017年03月23日

動力機構

 サスペンションはバネ付きでないとフログが壊れ易い。軸重は500gwであるから、硬い軸バネが必要である。Big Boy用のが見つかったので、枚数を減らして使った。

 機関車であるから、牽引力を必要とする。ステンレス車輪であるから、かなり損である。多少重くするから、バネが効いていないと壊れてしまうし、音がひどくなる。モータはエスキャップのΦ18の高級品である。これは同径では当時世界最高の起動トルクを誇った。低回転型で、模型には極めて適するが、非常に高価であった。出力を最大限に利用すべく、出力曲線をもとにギヤ比を選定した。
 設定としては 10 V で動輪がスリップするようにした。こうしておけば、焼けることはありえない。15.6‰の勾配を、標準貨車12輌を牽いて楽に登れる。

OBJ Drive 動軸は連動しないと牽引力が損なわれる。実物の構造に拘って、1軸1モータにするのは賢明とは言い難い。モータは水平にウォーム軸と平行に置き、チェイン・ドライヴで駆動する。このチェインはプラスティック製で、アメリカでは40年も前から売っている。Bill Wolfer氏が使っていたので、頒けてもらったのが最初だ。トルクが少ないので1本だが、出力が大きい時には2本、3本を平行掛けにして、位相を1/2歯あるいは1/3歯ずらすと効率が良くなるはずだ。これは金属製ではないので、伸びを考えたときの推論である。 

 モータはブラスの板を巻いて作ったホルダに収めた。ホルダはギヤボックスにハンダ付けした台座にネジ留めである。長穴にしてあるので、微調整が効く。

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2017年03月21日

競作

 珍しいことに電気機関車を作ることになった。50年ぶりである。チラ見せする。最近はやりの teasing advertising(じらし広告)である。  

OBJ 1 所属クラブの70周年記念例会に、伊藤剛氏追悼の電気機関車を作ろうということになった。剛氏が作られた原型を各ゲージでアレンジして、好きなように作るというのが主題である。
 Oゲージ部会では、ステンレス板をレーザで切って作ることになった。車体にレーザ加工板を使うのは初めてである。車体寸法を決めるのに、時間が掛かった。元が自由形なので、縮尺を変えるだけでは意味がない。Oゲージの車体幅は63 mmを超えると、ろくなことが無い。手摺りなどの突起物を考えると車体幅は61 mmとなった。基本設計は土橋和雄氏が担当し、工場に渡すプログラムは、例によってnortherns484氏にお願いした。


 伝導装置は筆者が設計して、提供した。強力コアレスモータと3条ウォームギヤ軸をチェインドライヴする少々贅沢な組み合わせである。車輪はΦ25のLow-Dがあったので、配布した。軸箱はフライス盤で切り出したボール・ベアリング用を用いた。ロストワックス製のものを好む人もいるので、その方達には、ボール・ベアリング用の穴を開けてお渡しした。

Sacramento Northern 654 and 652 10-3-09rr 外観は全く自由なので、筆者はアメリカン・スタイルにした。実はSacramento Northernの電機に惚れていたのである。いつか、ものにしたかったのだが、作ることはあるまい、とも思っていた。
 ジャンク箱をかき回して、カウ・キャッチャを見つけた。大きさは良いのだが、一つしかない。仕方がないので採寸して図面を描き、作る準備をした。そこまでやったところで、もう一つ見つかったので、図面は投げ捨てた。

 さて軸配置は何であろうか。BrassSolder氏は、一発で当ててしまわれた。

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2016年12月23日

ED14の台車

ED14 equalizer 読者の方から、この連載が始まってから現場まで行って撮影した、という写真をお送り戴いた。掲載の許可も戴いているので、予定を変更してお見せする。
 見事に2本のピンがあるのがわかる。距離が近いので効果は少なそうという感想も戴いたが、そんなことはないと思う。心皿の中心との三角形を考えれば十分に機能している。

ED14 trucks この角度から見ると、イコライザは台車と平行である。即ち、傾きはない。イコライザはアメリカで発達した。イギリスの機関車で、(蒸気機関車を含めても)イコライジングを採用したものは極めて少ない。日本に輸入されたED17にも、イコライザはない。バネ材が優秀なのだろう。

 イギリスは大規模な土木工事で、線路をほとんど真っ直ぐに敷き、勾配を減らした。また保線状態が極めてよかった。それに引き替え、アメリカは未開の土地に猛烈な勢いで線路を敷いたので、保線は劣悪で、その線路に追随するためのしなやかな車輛を要求された。また、バネの鋼材の質も良くなく、折損の危険を減らすために、イコライザが必要となった。このことは椙山 満氏から何度も伺ったし、井上 豊氏からも体験談をお聞きした。

 おそらく、この2本ピンの方式はその中の試行錯誤から得られた「体験知」であろう。ベストの解ではないが、「これでうまく行く」という方法を採ったのだ。これはまさにプラグマティズムである。
 プラグマティズムは哲学の一分野であるが、それは何かと説明を求められても、筆者にはうまく一言で説明できない。簡単に言えば、「唯一絶対の解を求めなくてもよい。」ということだろう。この2本ピンの方法は、教条主義で理論派の人からは、「あるまじき発想」と攻撃されるだろうことは、想像に難くない。しかし、これでほとんどの場合はうまく行くのである。それならそれで良いではないか、ということだ。現実にこの機関車は日本にやってきてから何十年も問題なく働いてきた。  

2016年12月21日

類似の機関車

 伊藤 剛氏保管の図面コピィを探すと、類似機種が見つかった。

DEKI400 名鉄 デキ400 これはイコライザ・ピンが1本である。二つの台車はリンクで結ばれ、バネで押されている。車体には引張力が掛からない。モータは75 kWが4つで400馬力というわけだ。牽引時は台車はどちらも同じ方向に傾こうとするが、リンクで十分持つのだろう。このモータは電車用で、車体内に電動送風機はない。すなわち、走らないとモータは冷えないから、重い列車は引き出せない。
 デキ400の図面を見てみよう。横ずれを防ぐリンクがあるが、押し引きは押金と引張りリンクだ。バネで突っ張っている。他には何もない。
 台車の力学的中心を結ぶ線分の近くにリンクと押金がある。 

DEKI 600 この写真を見ると、台車は後ろに少し傾いている。これは許容範囲であろう。この程度の出力ならイコライザ・ピンが1本でもなんとか行ける、ということなのだろう。写真は土橋和雄氏撮影。


ED14 ED14は900馬力ほどもあるので、台車が転ぶのを防ぐ積極的な策を講じたのだろう。ピンが二本であると転びにくい理屈は、極端な例を出せばこういうことだろう。平面に細い棒を立てると転びやすい。その棒の下に小さくてよいから板を釘で打てば、多少は安定して立つ。台車のピン孔はやや縦長になっている筈だ。 こうなるとイコライザ(equalizer)という意味は薄れる。「掛かる力を分散させている装置」というわけで、バネ折れを防ぐことには貢献している。
 このような方策を施した機関車は、国内にいくつかあると、そのDFには書いてある。

2016年12月19日

ED14

9784777019557 さらに土橋氏はこの特集号を示された。DFの20号に大きな写真が載っている。もう少し近くによればよいのだが、かなりはっきりと2本入っているのがわかる。囲み記事に、2本にする理由も書いてあるのには驚いた。 


 観察をせずに憶測で、あるいは先入観で物を考えてはならない、ということを守らないと失敗する典型的な例である。現物の機関車の近くに住んでいらっしゃる方も多いので、見に行かれるべきであった。かくいう筆者も、ピンは1本だと信じていたから、人のことは言えない。

 模型を作ってうまくいかなかったのは当たり前で、その時現場に行っていれば、すぐに解決したのだ。実は模型製作の1年前に友人と現物を見に行っているが、高校生の頭ではそこまで気付かなかった。製作後に行っていれば、気が付いたかもしれない。それから50年も経って気が付くとは、情けない限りだ。

 この機関車をイコライザ・ピン一本で作られた人は居ないのであろうか。どのような動きをするのであろうか。転び止めはどうされたのであろうか。拝見したいものである。 

2016年12月17日

イコライザ付きの台車

 二つの板バネ間にイコライザが付いた二軸台車は、不安定である。台車枠が前後に転んでしまう。
 このことはずいぶん前にこのブログで理屈を説明した。 模型でこれを作ると連結器が垂れてしまったり、上を向いたりする。また、集電ブラシは可動範囲外になり、ショートする。

 高校生の時に作ったイコライザ付き自由形BB電機は、台車間に転び止めのオスメス嵌め合いを付けたりしたが、今一つ具合が悪かった。調子が悪かったので、片方で3点支持に作り替えたが、すでに譲ってしまい手元にはない。

 その後、時は経ち忘れていたが、こちらのブログに採り上げられた。ED14は、模型とするには好適な大きさであるから、皆さん御興味がおありなのだ。たくさんのコメントが投稿され、栗生氏がそのすべてをバッサリ切り捨てた形にはなっている。「〜大いなる謎(1),(2)」とあるので、いずれ(3)が発表され、正解が公表されるのだと思っていたが、まだその気配はないようだ。

 先日土橋和雄氏とお会いした時、その話が出た。氏が仰るには、
「誰も現物を見ていないのではないか。ED14の台車イコライザのピンは1本ではない。」
とのこと。
 その証拠に、と雑誌を示された。写真を目を凝らして見ると、何となくそんな感じだ。たくさんの写真を見るうちにその指摘が正しいことが分かった。近接した二本のピンがある。その抜け留めのピン(コッタ)も二本ある。4点支持だ。傾こうとすると抵抗する。
台車のキングピンの心皿を広くして転び止めとするのは、いろいろな点で得策ではない。
 この機関車を設計した人達には敬意を表したい。

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2015年11月13日

EF58の牽く列車

EF58 leads the trainEF58 これはEF58が牽く東海道本線の急行列車である。非常に神経の行き届いた構成である。当時、写真を撮ってその通りに作られたもので、まさに「そのもの」である。

 パンタグラフの枠の側面は感電防止で赤く塗られていたことがわかる。客車のレタリングは非常に細かく書かれている。これこそまさに写実であり、時代考証の一次資料として役立つ。


 I氏はたくさんの客車をスクラッチビルドされている。東京への往復で利用した機関車、客車をつぶさに観察し、スケッチと写真でそれをまとめられたのだ。 

an express train circa 1950 急行列車の荷物車、郵便車の細かい造作も、最大限再現されている。最近、いろいろな作品を見ても、あまり感動しなかった。しかし、この列車を見て、戦慄を覚えた。
  

2011年08月02日

35mmゲージレイアウト

1304 伊藤英男氏から、レイアウトの本線が開通したので見に来てくださいという連絡が入ったのは2年前であった。複線の予定の半分だけだが列車の運転ができるようになったのだ。
 
 作業場は50坪ほどある。はじめは20坪ほどだったのだが、盛業中どんどん広くして、その後は物置になっていた。それを片づけて線路を敷き始めたのだ。
 レイルは伸銅所に頼んで作ったものだ。道床は何とブラス製である。全て糸鋸で切ったもので、「余った板ですから、使ってしまおうと思いまして…」ということである。空洞であるから響きそうだと思ったが、要点が押さえてあり、しかもバラストがあるので静かである。この写真はバラストの無い部分を特に写したものである。

1312 あちこちにブラスの板、角材、丸棒がある。また、ダライ粉が一斗缶に何杯かあった。このレイアウトを作図するのに使ったコンパスを見て驚いた。50 mm × 5 mm の平角板を延長して半径4mの円を描いている。途中がたわむので、中間に支えの台車が付いている。

伊藤氏の作業場は、僅かに片方の土台が沈下してしまったそうだ。すると、一周70m強のエンドレスの1/4が登りで1/4が下りになってしまった。勾配は15パーミルほどである。
 これは運転の妙味を倍加させている。上り坂で力行し、下りではノッチオフする。伊藤氏は、運転方向が一定だからと、下りの部分の電気配線を外してしまった。すなわちエンドレス全長の1/3ほどは無電区間である。その区間は惰力と位置エネルギィだけで走る。それを過ぎると力行するのだが、電気機関車の場合は、本物のように唸りを上げて加速していく。「安いモータを使ったのでしょうがないです。」と仰るが、実感があり、とても素晴らしい。

 立体交差も計画中で、何本かの鉄橋を作られる予定である。橋の実物図面も用意してあり、リベットだらけのすごい橋であった。
 車輌は例によって超精密なものばかりである。全て実物の1/30に作られている。床下機器はもちろんのことブレーキ装置まで実物と同様に作動する。

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2010年01月27日

equalized と sprung その6

F級台車のイコライジング F級電気機関車の先台車のキングピンにバネを入れたという話を最近聞いた。「落ち着かない走りをしたから、やはりバネ付きイコライザは駄目だ。」と言うのだ。

 それはおかしな話だ。先台車にはバネは入れなかったという。3つの動軸には重ね板バネ型を摸したたわまないものを付け、実物同様のイコライザを入れているそうだ。それでは駄目だろう。この方法では全体でバネは一か所であるから、荷重変化により、台枠全体の姿勢が大きく変わる。すなわち板バネは大きく向きが変わる。また、線路の不整で跳び上がることがある。
 全ての重ね板バネをわずかにたわむ様に硬めに作るべきである。この図の先台車には、コイルバネ風のものが描いてあるが、本当は重ね板バネのような内部損失の大きなものが適する。
 バネ付きイコライザを正しくセットするのは難しいだろうと思う。姿勢が少しでも変わると、板バネが傾く。その向きを全て水平にしようと思うとかなりの調整時間が必要だろう。

 40年ほど前、実物のF級電気と並走しているときに、その動作を眺めたが、バネはほとんどたわまない。しかし目に見えない位はたわんでいるはずだ。その程度のたわみなのである。

 HO模型を作っている人から、「仰ることは全て正論なのですが、HOの大きさではバネ付きにするのはとても難しいと思います。」というご意見を戴いている。
 ゴム片を付けるか、井上方式の簡易イコライザの主イコライザにバネを付ける以外ない。実はゴム方式はK氏が近々発表されると思うし、バネ付き簡易イコライザは筆者がチャレンジャのテンダに付けるべく製作中であるのでお待ちいただきたい。

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