鉄道模型のあり方

2022年09月10日

続々々 TMS 968号

 友人から、痛烈なメイルが来た。

 既製品を並べるか、ディテールパーツをこれでもか、と貼ったのしか興味のない昨今の模型誌がよく上位に入れたものだと驚きました。 

 これは筆者も同感である。他にも友人が、「入賞はさせないだろうね。TMSは写真映りがよくないものは使わないからさ。」と言っていたので、まさかの入賞であったというのはウソではない。

 古くからの付き合いのある友人を当博物館に案内すると、その路盤の高さには驚く。「向こうが見えないじゃないか」と言うが、逆に質問する。
「僕たちが実物を見る時は、視点の高さはどれくらいだろうね。踏切で見たり、跨線橋で見る以外にあるだろうか。ビルの屋上から見て楽しいかい?」
「そう言われてみれば、今まで気が付かなかったが、視点を下げる、逆に言うと路盤を持ち上げるということは大きな意味があるな。日本のレイアウトは低過ぎるね。」
と納得する。

 本文記事にも書いたが、いずれ日本のレイアウトは路盤が高くなる。HOでも実例がある。Nではもっと高くすべきだろう。ウォークアラウンドなら、1500 mmでも良いのではないか。

 1980年代にアメリカでは急速にレイアウト路盤が高くなった。MRの記事に、”毎年1インチずつ上昇している”と書いてあったことを記憶している。上昇は2000年近辺で止まったようだ。それはウォークアラウンドの普及(DCC, wireless)と同期している。

dda40x at 09:10コメント(6) この記事をクリップ!

2022年08月31日

model railroading

 今回のコンテストの意味について友人と話した。彼が、
「model railroadingのはずなんだけどね。見ていると、車輌とかレイアウトだけなんだよね。足らないと思わないか?」と言う。
 彼はアメリカ生活が長い。模型の楽しみ方をよく知っている。車輌工作だけしかしない人を模型人とは言わない人である。
「この言葉は、オペレイションもメンテナンスもあるよと言っているんだ。動きそうもないものを選んでいるのは、まずいんじゃないかな。」

 TMSの表紙にはHobby of Model Railroadingと英訳がつけてある。この語は正しい。しかしながら、中身は少々この訳語からは乖離していると感じている。

 彼が所属していたクラブでは、オペレイションにかなりのウェイトを掛けていたそうだ。筆者の友人のレイアウトでも、オペレイションの面白さを強調している。
 オペレイションにはいくつかの意味があるが、わかりやすいのは列車の組み替えである。この貨車をある駅で落として、そこにある貨車を拾って来なければならない。
 また、勾配線があると機関車を足さないと登れない。用が済んだ補機は回送して待機させるなど、本物の鉄道で行われていることを、楽しむのである。

 筆者の博物館の場合は、解結作業は少ないが、坂を登るのはなかなか大変である。動画では楽に上っているように見える(with ease などと格好をつけているが、限界である)が、あの機関車の粘着力でなければ登れない。しかも時々スリップしている。当初の案では補機の待機場所も用意していた。

 勾配はできる限り正確に作り、剛性のある構造にして、均一な負荷を作り出せるようにしてある。この種の情報は、今までのどの記事を読んでも得られなかった。


dda40x at 08:31コメント(4) この記事をクリップ!

2022年05月05日

続 来訪者

 TN氏は3条ウォームの威力を目の当たりにし、かなり衝撃を受けたようだ。彼の素朴な疑問である。

どうして模型メーカはこれを採用しないのだろう。高いものではないし、やろうと思えば採用できるはずだ。押して動けば楽しい。特に蒸気機関車は、ロッドの動きが見えるのだから、やる価値は十分にある。」 

 その通りであるが、やろうとしているようには見えない。最初から諦めているのか、顧客が望んでいないと決めつけているのかはわからない。今回のものはOゲージのディーゼル機関車用を流用しているので、ギヤ比がやや小さい。すなわち、6 V付近で無負荷最高速度になるようだ。DCCなら何の問題にもならないが、アナログに固執する人もいる。

unnamed 知人から興味深い強力モータを提供戴いたので、装着例を作って戴くべく、経験の深い友人にお願いしている。それは、12 Vで2200 rpmだそうだ。Φ22で、32 mm長の両軸である。前後で軸の太さが異なるのは、ロータリィ・エンコーダを取り付けるのであろう。
 HO用としてはかなりの大型で、4-8-4や2-10-4あたりでないと火室には収容できそうもない。マグネットはかなり大きく、ずしりと重い。これを収容できれば、極めて調子の良い強力機関車になるであろう。

 要は注文ロット数である。コアレスモータは300台の注文ができれば、新仕様のものが発注できるはずだ。強磁界で巻数を増やせば、低速モータは可能である。もう少し小さな物を注文すべく、メーカは考えるべきだ。

 また、換装を引受ける工房ができれば良い。筆者はHOを触ったことがないので不可能だが、その道の達人はいらっしゃるだろう。必要部品は供給できる。

 高性能のギヤを付けた機関車の走行は、見ているだけで楽しいのだ。このギヤは、極めて高品質のギヤである。過去の模型用ギヤの水準を遥かに超えていることは、見れば分かるはずだ。
 コアレスモータを逆駆動するのは容易だが、有鉄心モータは難しい。しかし、それをいとも簡単に廻すらしい。伝達効率が良いということは、ここにも現れる。

dda40x at 05:05コメント(0) この記事をクリップ!

2022年04月11日

よく走る模型

 しばらく前、この記事を発表した。賛同してくださる方は非常に多いが、そうでもない方が居ることが判った。要するに、TMSの最近の方針に対する批判が許せないらしい。TMSの方針に賛同している方のようだ。

 どうやらその方の頭の中では、細密化⇦⇨走行性能向上という一次元の尺度があるようだ。よく走る模型は細密でないと思っているだろう。残念ながらそれは間違いである。細密化と走行性能は異なる次元なのだ。

 2輌の同型機関車があり、片方は超細密で、他方がそうでないとする。大抵の人は細密な出来の機関車を見て、すごいと思う。これはよくある。
 次にまた別の2輌の同型機があり、その外観が同程度であるとする。片方が滑らかに走り、他方がガラガラと音を立てて走る。なおかつ、つんのめる。当然前者が良いと思う人がほとんどだろう。よく走る模型が良いということには反論が難しい。どなたもそれに向かって努力することを、無駄だとは言い難いはずだ。
 よく走る車輌には価値がある。

 最近仙台発の記事には、走りの改善についての情報が多い。素晴らしいことである。 

dda40x at 04:11コメント(3) この記事をクリップ!

2022年02月14日

入賞作

 読者氏からのコメントを読んで、やはり、という感じがした。TMSの新年号表紙の後ろにあるシャシを見た瞬間、反っている感じがしたのだ。目の錯覚か、レンズの特性か、それとも製版上の問題か、と思っていた。読者氏は実物を見たそうで、かなり派手に曲がっていたと言う。これは褒められた話ではない。車体と組合わせればなんとかなったのかもしれないが、大きな構造物が出ているので、運搬中に加速度が掛かると曲がるだろう。また、走るときにレイルに触らないようにできているのだろうか。しかし、線路には上り下りもある。

 機関車というものは、運転中にさまざまな加速度が掛かるものである。また、筆者は常に軽衝突を想定している。貨物列車に追突した時、ブラス製貨車の何輌かは破損しても、機関車の構造体には何ら影響が出ない程度の堅さに作っている。

 過去の入賞作を見ると、首を傾げるものも多々ある。椙山氏の仰った「コンテストは魔物だ」という言葉が、重みを増す。

 これは作者の問題ではない。コンテスト主催者側の問題である。模型の構造について、何が必要かを理解しているとは思えないのである。そういうものを入賞させると、それが一人歩きを始めてしまう。これが良いのだと読者に思わせてしまうようでは、これこそ「鉄道模型の発展に資する」とは言えない。

 入賞作は、それを真似て作っても問題が起こらない程度の出来でなければならないはずだ。スケールスピードも大切である。走らせて文句無いものしか、入賞させるべきでない。ヤマ氏は、走行テストをして、鉄道模型の名に相応しくないものは落としていた、と書いてあったように記憶する。 

 手厳しい感想を書いたが、例によって、悪口を言っていると感じる人が多いそうだ。そうではない。改善策を提示しているのだ。TMSはこの1年ほど、「鉄道模型の発展に資する」という言葉を、毎月掲げてきたではないか。それに沿った編集を心懸けるという意味だ、と信じたい。読者氏も提言しているように、建設的な討論がなされるべきである。

 古いTMSが博物館に揃っている。70年前からの過去のコンテストの記事を読み始めている。今回の件と共通した、ある問題点が、そこにはあるように感じている。

dda40x at 02:14コメント(3) この記事をクリップ!

2021年12月30日

続々 走らないものも鉄道模型か?

 今野氏の記事中、走らないレイアウトとあったが、それが何を意味しているのかは、よく分からない。この号には無いようだ。

 当ブログで扱ったのは、北海道のレイアウトについてである。雄大な景色を作られたようだが、実物通りの列車を牽けないらしい。これは悲しい。勾配を作るときは、ある程度の計算をして、可能な範囲を掴むはずだ。そして実験をして確かめる、という手順を踏むのが普通だ。被牽引車の抵抗も当然測定してみなければならない。
 高校1年夏休み前程度の初歩の物理であり、難しいことを言っているのではない。自分でやる自信がなければ、友人に手伝ってもらうのも、恥ずかしいことではないはずだ。それをしていないということは、理解し難い。


 たかが模型といえども、物理法則はあまねく適用される。作ってみて駄目だったというのは、中学生の工作までであろう。気分だけで作るというのは避けるべきことだ。

 筆者が博物館のレイアウトを作るに当たって留意したのは、絶対に躓かない運転を確保することであった。
 過去の実験データから確実に実現できる範囲のものを作ったわけで、難しいことをしたわけではない。オペレイションを見せるディスプレイ・レイアウトであるから、走り以外考えることはなかった。

 TMSは、レイアウトの紹介については、大きなミスを犯している。それはディスプレイ・レイアウトという概念を紹介して来なかったことだ。走りを確保しないレイアウトは、存在価値がないということを周知してこなかった。シーナリィ付きのレイアウトの紹介ばかりだ。しかも最近は異常に細かく、綺麗なレイアウトの紹介ばかりである。
 音の問題動き(緩和曲線も含めて)については、ほとんど見ない。それで良いのだろうか。 

dda40x at 12:30コメント(4) この記事をクリップ!

2021年12月28日

続 走らないものも鉄道模型か?

 先頃、表題の記事を発表したところ、異常に多くのアクセスが有り、少々驚いた。ほとんど誰も興味を示さないだろう、と思いながら書いた記事であったのだ。
 コメントは少なかったが、会った友人たちが「ズバリだね。もっと書くべきだよ。」と言う。

 今野氏のブログにも、引用されたようだ。今野氏は、走りにはうるさい方である。筆者は、「おそらく世界で一番、走りにうるさい人(ある友人談)」だそうで、「走らないものを載せるな」という点では、共通する認識を持っていると感じている。 
 最近の模型誌で、走りについて書いてあるのを見たことがない。しばらく前、意味が取りにくい牽引力の表があったが、編集部には物理を理解する人がいないように感じた。分かる人がいれば、もう少しまともな記事になったと思う。

TMS Jan 2122 今野氏の記事には、今月号のTMSの記事について書いてあった。筆者は田舎に住んでいるので、TMSなどの雑誌には接触するチャンスが限られている。先日所用で出掛けた折に、大きな書店に寄って求めた。機械室ドアの開くディーゼル機関車の記事があった。なるほど、このことかと読んだが、得るところは少ない。
 逆に、これを真似する人が増えるのではないかと思った。やってみると分かるが、実用性は無いし、事故が起こる。要するに壊れやすいのだ。
 ディスプレイ用に開きっ放しのものは作ったことがあるが、異なる範疇に属する話題だ。また、車輪の裏が塗っていないのは感心しない。また、除雪装置の先端はレイルに触らないように出来ているのだろうか。

 筆者は、あちこちの蓋が開くのは好きではない。完成品で開くものは、すべて固定する。塗装が剥げやすいのと、その蓋などを亡失しやすいのだ。祖父江氏が、超絶技巧の製品を出したときにも、そのことを危惧した。祖父江氏は、一度はやめると言明したが、後に絶妙な構造のバネと鎖で、蓋を拘束したものを作った。やはり蓋が開いて、内部の構造が見えると嬉しいのだろう。実は、その内部は二人でDenverの博物館で攀じ登って撮った写真が元になっているから、筆者にも多少の責任はある。Big Boyの砂撒き装置など、あまり資料はないのだから。しかし、砂箱の蓋を開けると砂が見えないというのは、奇妙なもので、あまり感動しない。
 祖父江氏は、蝶番で開くものを閉じたときに完全に面が合うように、しかも扉の作動限界が実物と同じになるように作った。ハンドルを廻せば、ちゃんとロックされる。そこは、流石であるとしか言いようがない。今回のHOの作品とは、ちょいと違う。 

dda40x at 12:28コメント(6) この記事をクリップ!

2021年12月04日

続 伊藤 剛氏の瀬戸電を見る

instruction 箱の中には、説明がたくさん書いてある。イラストを入れてあるので、わかりやすい。問題は蓋の中央にあるウレタンスポンジだ。いずれだめになるから、別の材料で作らねばならない。

 TMSの記事は、きれいな状態の写真が載せてある。その後、かなり走らせたあとがあり、そこら中塗装が剥げている。今なら、優秀なプライマがあるから、こんな剥げかたはしないだろう。

 剛氏宅に伺うと、いくつかの車輌を重ねて抱え、剛氏は現れた。そんな持ち方では傷がつくが、へっちゃらである。感心したのは、その持ち方でも壊れないことである。ハンダ付けが完全だから剥がれないのだ。
「落とさない限り、壊れませんよ。」と一向に気にしないようだった。「また塗り直せばよいのですから。」 

 body distortion 車体は急停車で歪み、平行四辺形になるが、この写真ではその様子はわからない。また、車体は枕木方向の軸を中心に前後にピッチングする。すなわち、急停止すると前に傾き、さらに車体が歪むのだ。

 これを披露されたときは、クラブ員一同爆笑した。バネは意外と固いが、車体がかなり重く、具合良くピッチングする。多少の摩擦もあり、よく減衰して実感的である。今考えているinspection carの設計に、とても参考になる。  

dda40x at 12:04コメント(0) この記事をクリップ!

2021年11月30日

走らないものも鉄道模型か?

 展示会の終わりに、出席者が皆で各1分程度自己紹介をした際、ある方が興味深い発言をした。
「最近のレイアウトコンテストに、模型が走らないものを出して、入賞しているのはおかしなものだ。あんなものはレイアウトではない。」

 筆者は思わず拍手をしてしまった。コンテストの主催者は、とんでもない思い違いをしている。観光地の土産物屋で売っているような、その地の風景の立体的なレリーフに、極端な遠近感を付けただけのものがレイアウトの筈がない。それはある分野の芸術作品であるに過ぎないのだ。模型の世界には入って来てほしくない。
 最近の模型雑誌で、走りについて書いてあるのをご覧になったことがあるだろうか。北海道のレイアウトが大きく採り上げてあったが、その上での走りを動画で拝見したいものだ。

 走りの改善に貢献するために、HO用の3条ウォームとギヤボックスの2次試作品を持っていった。どなたも興味深そうであった。価格は安いので、予約された方が多かった。一月以内に出来てくるであろう。中にはお持ちのすべての機関車を改装したいと言う方もあった。確かに押して動くというのは魅力があるようだ。ただし、Oスケールのように1輌を押すと、もう1輌も動くというのはかなり難しい。機関車、テンダのすべての軸受の摩擦を最小にせねばならないのだ。ボールベアリングを付けても、車輪径が半分ほどのHOでは半径比の問題があり、抵抗は相対的に大きい。

 その点でも、O scaleはこういう動きを再現できるギリギリの大きさなのだろうと思う。 

dda40x at 11:30コメント(1) この記事をクリップ!

2021年11月28日

本物はどのように動くか

 本物は重い。この4-8-4は、テンダを含めて400トン強もある。機関車が起動するということは、その質量を持つ物体が動き始めるということだ。徐々にしか動かない。この模型では、その動きを見ることができる。普通の模型は、電圧を掛けると、すっと動き始める。しかし、UP850はじわっと動く。その瞬間、電流は0.5 Aほどである。筆者の普通の機関車は0.1 A以下で動くのであるが、5倍も電流を喰っている。
 そのエネルギィは、フライホイールに注入されて蓄積されているのだ。巡航速度になると、電流は0.1 A以下である。制動時には電流は逆方向に流れる。発電しているのだ。その電流をダイオードで阻止してあれば、かなり惰行する。

 この様子を展示会で再現するように求められた。動かすと拍手喝采である。SS氏は、
「止まるときには、ブレーキシュウのきしり音が聞こえるようだ。」
と言った。なかなか止まらないのだ。

 その後で、T氏が、
「機関車だけで発進するのと、テンダをつないだ状態の発進とを比較してはどうか。」
と提案した。なるほどと思い、切離した。当鉄道の機関車群は、40年前から機関車だけで走るようになっている。
 機関車だけだとすいすいと走り、動きは滑らかだが、模型の動きである。動輪も滑らない。テンダを連結すると、途端に本物の動きになる。スロットルを開けるとじわりと動き、その開け具合が大きいと、動輪が半回転スリップして動いていく。
 これは数人が見ていただけだったが、皆歓声を上げて喜んだ。分かる人には分かるのである。雑誌社の人が分からないのは悲しい。
「分かるわけないよ」と言った人が何人かいるが、分かってもらわねばならない。 

dda40x at 11:28コメント(0) この記事をクリップ!

2021年11月24日

気が付く人

 先日の会合でのことである。何か面白いものは無いかと見て回っているうちに、筆者の展示にいらした方があった。機関車が、ゆっくりと前後進していた。
「あっ」と声を上げ、「ありえない!」と叫んだ。膝をついて見ている。
「一体これは何なのですか。実物の動きですよ。実物の起動停止の再現ができるのですね。DCCのなにかの機能の工夫ですか? いやそんなことではこれは出来ない!」 
と興奮していた。素晴らしい感性の持ち主である。本物をじっくり見たことがあり、普通の模型の動きとの違いに気が付いている方なのだ。模型の世界しか見ない人が多い中で、この方の考察は素晴らしかった。

 筆者は、ヒントを与えずにゆっくり動かすだけで、彼の考察の進展を見ていた。2分ほど掛かって、
「テンダ内に増速したフライホィールが入っているに違いない。」と正解を出した。素晴らしい方である。
「しかし、この静粛性はどうやって確保しているのだろう。」と考え込んでいた。問題点はそこなのである。よくぞ気が付かれたと思う。

dda40x at 11:24コメント(0) この記事をクリップ!

2021年11月22日

続 実物のような動き

 モータ軸にフライホィールを付けるというのは、モータの性能が悪く、均一な回転が出来ないとか、駆動系の出来が悪くて微妙なひっかかりがあるときの弥縫策(びほうさく)である、と剛氏はおっしゃった。根本的な解決ではないということである。また、モータに付いているものは、走行中は良いが、起動停止が不自然であるともおっしゃった。

 機関車の他の部分で慣性モーメントを稼がねばならないから、テンダ内に増速したフライホイールを付けたらどうか、と筆者は、提案した。剛氏は、大きく眼を見開いて、
「それだよ ! それしか無いね !!」
と興奮した。
「作って見せてよ。dda40xさんならできるでしょう!」
とおっしゃるので、頷かざるを得なかった。しかし、ギヤをたくさん使って、どのように効率を下げずに静かに駆動するかは、結構大きな問題であった。遊星ギヤを使う増速なども考えていたが、結局はウォームギヤの逆駆動とチェインによる方法に落ち着いたのは、ご覧の通り。より高性能なウォームギヤ・セットが出来たので、使ってみたのだ。静粛であることは類を見ない。正確な歯型を持つということは大切である。見かけだけの歯車も、世の中には存在している。

 その後、剛氏とは時々この話題で盛り上がった。ディーゼル電気機関車巨大な増速フライホィールを付けたのを持って行った。
「やっぱりこれですよね !  早くテンダに付けて見せて下さいよ。」と催促された。それから30年も掛かり、剛氏にお見せできなかったのは、残念であった。 

dda40x at 11:22コメント(0) この記事をクリップ!

2021年11月20日

実物のような動き

 先日のKKCの展示会でUP850の走行を披露した。主催者のリクエストが有ったので、長い展示スペイスを戴き、往復運転をして見せた。その展示会の出席者は、かなりレヴェルの高い人ばかりで、走行を見て、その違いに気が付く人が多かったのは喜ばしいことだった。

 10分ほどのスピーチの場も与えられたので、歴史的な背景の説明が出来た。その中で、35年ほど前の伊藤剛氏との会話を紹介したが、かなり驚かれたようだ。

setoden1setoden2 剛氏はOJゲージの瀬戸電を作られた。その動きは尋常ではない。木造の電車が、ガタガタギシギシと動く様子を再現していた。側板・妻板にはガタがあり、急停車すると平行四辺形になる。自作モータは軸が垂直に付き、そのアーマチュアが大きなフライホイールになっていた。直捲モータだから、軽いブラシしか抵抗がないので廻り続ける。すなわち、モータ自身に大きな慣性モーメントを持たせている。そのモータの磁路については製作時に打診があり、たまたま筆者の案と剛氏の案が一致した。
 剛氏は、
「どうしてあなたはこんな考え方をしたのか。」と問うた。
「父に聞いた話を思い出しただけです。」と答えると、かなり驚かれたようだった。

 もちろん、大きな慣性モーメントのおかげで、起動もゆっくりだ。巡航速度から電源をOFFにすると、「山口さんちのツトムくん」を歌い終わるまで廻っていた。(図はTMS 400, 401号より)

 運転状況を拝見していると、剛氏はこう言われた。
「もうお分かりとは思うけど、これは邪道です。動力系の慣性モーメントが最小になるように設計するのが常識です。それなのにモータ自身の慣性モーメントを最大にしているのは、おかしなものなのですよ。専門家の皆さんからは叱られそうですね。最近の模型では、機関車の中にフライホィールを付けて滑らかに走るようにしているものが多いのですが、正確に言えば、あれは間違いなのですよ。駆動系以外の慣性を大きくする工夫が必要なのです。誰もそんなことを考えようともしないのですけどね。今回は単車ですから、勘弁してよね。」
  
 電車はゆっくりと惰行して、素晴らしい走りだった。車体はゆらゆらとピッチングし、急停車すると車体がゆがんで、拍手喝采であった。 

dda40x at 11:20コメント(0) この記事をクリップ!

2021年10月11日

来客

visitors 四日市の椙山氏の仲間であったKB氏が来訪された(写真中)。 氏は四日市出身のピアニストで東京藝大の先生であった。1960年から1964年までドイツに留学されたので、そのことは椙山氏から教えて戴いていた。直接お会いすることは長らくなかったが、その人となりは十分にお聞きしていたので、数年前に初めてお会いした時には、懐かしさを感じるほどであった。
 小海線沿いの別荘にGゲージの屋外レイアウトをお持ちで、土屋氏の機関車を持って伺ったこともある。

 四日市郊外にピアノの博物館ができるので、その関連でいらしたのだ。ビデオ作家のK氏から連絡があり、当博物館見学を希望された。

 お話が非常に面白く、あっという間に予定時間が過ぎた。SONYの社長、会長だった大賀典雄氏とはドイツで仲良くしていたという。大賀氏は船でドイツに行ったそうで、航海は横浜からハンブルグまで一月もかかった。途中で船が故障してしまい、動けなくなった。乗組員たちは右往左往して故障を直そうとするが、直らなかった。大賀氏が「俺にも見せろ。」と現場に行って、なんと、直してしまったそうだ。大賀氏は音楽家であったが電気、機械に強く、思わぬところで役に立ったわけだ。

 列車を走らせて、感想を聞いた。静かであることと、100余輛の長い列車が、ほとんどブラス製であることには驚かれたようだ。
「こんなに沢山のブラス製車輌を揃えるのは大変だったろう。」
と心配してくれたが、安達製作所からのジャンクを使って組んだと言うと、
「それでも大変だ。」
と言ってくれた。上り勾配で列車を止め、手で引き上げるときの感触を楽しまれた。
「凄い牽引力だ。でも静かで、モータが焼けないのはどうしてか。」という質問があった。ここまで高効率であることにはかなり驚かれたようだ。カブースの一群には実際に手を触れて、その重さと走行の滑らかさを実感された。

 一周7分間かかる走行を堪能され、列車の10輛ごとに毛色の変わった貨車を入れて、数えやすくする工夫を面白がられた。

 次回の再会を約束してお別れした。

dda40x at 10:11コメント(0) この記事をクリップ!

2021年09月29日

博物館の入場者

 博物館は、開館を目指して細部の工事を急いでいる。運営委員になってくださる方々とは、随時会って意見を交換している。
 合葉氏の「見せると分かる」という意見はその通りであるが、どうやって見せるかということを話し合った。

 博物館での走行を見せるだけなら、動画をたくさん配信すれば、かなりの部分は解決する。最近はリモートでの仕事が多くなっているので、そのような手段はいくらでもある。こちらは経済的に困っているわけでもないので、入場料収入がなくても、なんら問題ない。

 この博物館には貴重な資料がたくさんある。研究者もいるので、そのような方とは直接の対話を大切にしたい。

 関係者と協議すると、入場者は紹介者がいる場合に限るとか、事前登録した人だけにすべきだという案が出て来た。来た人は自由に見られるというのは、思わぬ事故のもとであると言う。多人数で来られると何があるか分からないので、入場人数を制限するとか、考えねばならないことは沢山ある。

 筆者は門戸は広く開けておきたいと考えている。特に若年層に対する啓蒙活動はやりたい。これは、伊藤 剛氏、合葉博治氏の大切にされていた精神である。

 しかし、理解できないこともある。しばらく前のことだ。「余分な車輪があれば譲ってほしい」という連絡がコメントを通じてあった。若い人のようなので、助けてあげたいと思った。ジャンク箱を探して、希望のものをある程度揃え、発送先の氏名、住所、電話番号を知らせるように返信したら、
「知らない人にそのようなことを教えることは危険ですから、出来ません。」
という返信があった。

 これからは、この種のおかしな人が増えてくるのだろうか。そういう人が押しかけてくるのであれば、無制限な公開は避けざるを得ない。地元の警察と今後の話をした。 

dda40x at 09:29コメント(5) この記事をクリップ!

2021年08月30日

ダブルスリップの工事

double slip ダブルスリップの電動化工事をしている。リンク機構は出来ているので、それと接続するのだ。狭いところに確実に動く機構を詰め込まねばならないので、なかなか難しい。

 F氏が手伝ってくれると申し出てくれたので、3日ほど掛けて下準備した。一日で終わるはずだったが、難しいことがたくさんあり、結局丸3日掛かった。リンク機構を付けてから、元の配置に戻した。まだ電動機構との接続はしていない。軽く動くのを確認してからである。フラックスを洗い落としてから軽く油を注し、余分なところに引っ掛かりがないことを確認せねばならない。通過頻度の高い場所であるから、確実に動くことが要求されている。極性の異なる尖端軌条が近いところにあるので、気を付けている。 
 機能優先にした。もう一つのダブルスリップは観客の目に触れないところだから、もっと簡単な方式を採るつもりだ。それはモータを4つ付けることだ。DCCのプログラミングで、いかようにも出来る。

 この部分のレイルは、カツミ製のブラスレイルで、加工後に硬質ニッケルめっきを厚く掛けた。このめっきはとても硬く、そう簡単にはめっき膜を破れない。ヤスリが滑るほどである。砥石を使ってめっきを剥がし、小さな部品をハンダ付けした。 

 ダブルスリップは可動部が多いが、欠線部は少ない。可動フログが閉じているので、通過音は小さい。欠線部のあるフログも、Low-Dのタイヤ厚みで静かに通過できる。薄い車輪では、とんでもないことになる。 

 結局、下り本線は1週間ほど運休した。 

dda40x at 08:30コメント(0) この記事をクリップ!

2021年08月18日

観測能力

 観測能力とは、ズバリ言えば、ものが見えているかどうかである。この動画を見るように勧めてくれた友人は、
HOの模型車輛の走りがショボい大きな理由の一つは、動態の観測能力が低いので、問題意識が発生しないせいではないか、と考えています。
と言う。HOは小さいから、ということなのかもしれないが、彼はHOゲージの人である。動体の観測というところがミソであろう。

 彼は自然科学者であり、観測という点ではエキスパートである。見えにくいものは、見やすくする工夫が必要である。視力が低下している人は、きちんとしたメガネを掛けて、よく見なければならない。シリコーン・チューブは本当にまっすぐなのか、長さの変化で無理をしていないかを、確実に見て欲しい。

 例の動画のような状態で、「ヨシ!これで良い。」と言う人は居るのだろうか。

 筆者の世代は、ろくでもないモータとギヤしかない時代に模型を作っていた。「ワーイ、走った!」の時代である。それでもよく走るように最大限の工夫をした。
 そんな時代は遠くに去り、良いモータ、ギヤ(場合による)、ジョイント(これは少々怪しいこともある)が手に入るようになっている。
 それらを組み合わせて、正しい鉄道模型を作ることは不可能ではないが、観測能力が低下していると、ろくでもない模型で満足することになる。 

 先に登場したOJを改良している友人は、筆者より年上だが、その観測能力は凄い。走らせたときの音、振動を丁寧に分析している。正しい鉄道模型を楽しんでいるのだ。

dda40x at 08:18コメント(4) この記事をクリップ!

2021年08月14日

続々々 またまたイコライジング

 前半のイコライザはこの図のようなものである。もちろん、この方法は自分で思い付いたものではない。

 近くの工場に、国鉄からの引込線の入替用蒸気機関車があった。小学生のときに下を覗き込んで、左右を繋ぐイコライザに気がついた。家で絵を描いて見たが、理屈はよくわからなかった。高校になって、もう一度見に行き、その模型を作った。うまく作動し、その意味を深く噛み締めた。一緒に見に行った友人は大変感心し、自分のも改造し始めたが、彼は若くして他界した。

 B型機のイコライザ構成はそういうものだと思っていたが、 それから40数年後、鉄道業界にいたある模型人が、
「そんな構成はありえない。」と否定した。
 どんな根拠でそれを否定したのかはわからないが、絶対にありえないと言う。後に、アメリカで現物を見つけたので写真を撮って見せたところ、絶句した。その後彼が何を言っているかは、定かでない。
「あれは間違いです。」などとは言わないと信じたい。 

 先入観というものは恐ろしい。根拠のない自信というのは、その延長上にある。筆者が客観性ということを繰返し強調するのは、それがなければ進歩できないからである。 

dda40x at 08:14コメント(2) この記事をクリップ!

2021年08月12日

続々 またまたイコライジング

 合葉氏正しい鉄道模型という言葉を使った。それが全くと言ってよいほど、通用していないのである。
 先入観が大きい分野なのであろう。最近は「刷り込み」という言葉があるが、よく言い表していると思う。最初に見た模型の印象が強く影響するのだ。それが間違っていても、その間違いに気付けない。たとえ気付いても、「あの方がこうやっていたのだから、それでよいのだ」と考えるらしい。根本原理を考えることができれば、間違いを指摘できる。筆者は経験が少ないので、原理だけからしか考えることができない。しかしその結果は、客観的である。

 業界人は、自分が現場で見てきたことが世の中の全てだと思う人が多いように感じる。根本原理を考えずに、専門用語を散りばめて怪しい論理を展開する。そういうコメントはよく来るが、排除している。
 

 筆者の高校1年の頃の話だ。Bタンク機関車を持っていた。軸は固定で、走りは実に良くなかった。一念発起して、板バネで軸可動に改造した。当時は左右の動輪を抜きたくなかったので、軸箱は樋状のものを作った。
trough type axle bearing 角材の中心に正確に孔をあけてもらい、底の部分を切り取った。U字型断面にしてひっくり返したのだ。油を注すと油膜ができて摩擦が激減し、これは父に褒められた。ギヤボックスを抱かせ、吊掛けにした。
 前の軸バネの前端をイコライザでつないで、中点を台枠から下に引張り、三点支持にした。実によく走り、静かであった。3線式であったので、後に分解して処分したが、下側の写真を撮っておけばよかった。

dda40x at 08:12コメント(0) この記事をクリップ!

2021年07月15日

走行試験

 先日の記事を読んだHOの友人から、メイルを戴いた。

 ブログの合葉氏の記事は興味深く拝見しました。
 読んでいて思ったのは 日本のモデラーは日常的に走らせないから走行性能に関心が無い、というより判らないのではないかという事です。私の周りには、組線路でも良いから常設に近いエンドレスを持っている人はいません。出来た模型をせいぜい1、2メートル往復させるだけで、試運転完了です。

 やはり環境は大切だと思います。
 私は現在の家を建てる時に、多少お金をかけて、物置の名目で屋根裏部屋を作りました。もちろんレイアウトが欲しいと思ったわけですが、車輛作りの方が面白いので、組線路を敷いただけで30年経ってしまいました。でもすぐに試運転出来るのはありがたいと感じています。
 現在、左右どちらのカーブ上でも不具合が判るように、600Rを90度クロスを入れて8の字に敷いています。


 
確かに往復だけの試運転では、意味がない。この方のように8の字の形に敷くのは良い考えだが、筆者はそれにもう一つのファクタを入れたい。
 それは勾配である。3%程度の勾配があると、機関車の実力がよく分かる。もちろん負荷を掛けての試運転である。単機では意味がない。高校1年の物理の教科書を参考にすると、効率も計算できるだろう。

 読者の方から、合葉氏の指導を受けた方の記事を教えて戴いた。乗越しカルダンで、棒型モータではない。反トルク受けの様子が見たかったが、この写真でははっきりしない。
 合葉氏はスパーギヤによる平行伝動は好みではなかったことは先述の記事にもある。  


dda40x at 07:15コメント(0) この記事をクリップ!

2021年07月09日

”New O gauge”

 最近、遠方からの見学者が2組あった。どちらも2線式Oゲージを見るのは初めてということだった。彼らは、列車が走るのを見て、愕然とした。もっとつまらないものだと考えていたらしい。ガーと走ってギッと止まるものだと思っていたと言う。

 サウンド装置の音が消されると、全く無音で蒸気機関車が走るというのは、かなりの衝撃だったようだ。また電源を切っても、貨物列車が慣性で走り、下り坂ではそのまま下って行くのには、かなり驚いた。また、列車全体の走行音が静かなのは、信じられないとのことだった。
「何が違うのですか?」
という質問を受けた。
 答は、
「すべてが異なるのです。」
である。見ているのはOゲージには違いないが、昔のOゲージとは根本的に異なるものであることを、昔の部品と比較しながら現在の部品を見せた。輪軸、軸受、歯車、モータ、レイル、道床、連結器のすべてが、60年前とは根本的に異なることを納得して戴いた。

「今のHOとも違いますね。」と聞く。
「もちろんです。精度の高い機械で作られた部品のみを用いて構成するとこうなります。歯車は無調整で所定の性能が出ます。音がしないというのが、その高性能の証明です。下廻りは精密機械と言えますが、忘れてはいけないのが、大きさの効果ですね。」と説明した。

「HOでは、これと同じことは出来ませんか。」と聞く。
「大きさの効果は如何ともし難いので、頑張っても同じ結果は出せないでしょう。」と言うと、理解した。
 やってみたいと仰るので、車輪と歯車、ボールベアリング、モータをいくつかお世話し、専用工具も渡した。線路も新規に購入するように勧めた。また、ゴム板の上に線路を敷くことも念を押した。一つでも手を抜くと失敗することは、強調しておいた。

 合葉氏の仰ったNew O gauge" が、60年遅れでやってきたのだ。鉄道の持つ特性が模型にも現れると、その素晴らしさがより感じられるようになる。本物を縮小しようとすることしか考えない人たちには、到達できない目標である。 
 筆者自身は、合葉氏のこの記事は読んだことがなかったので、全く独立に同じ結論を出していたことになる。吉岡精一氏もその結論を模索していたので、筆者と意気投合したのだ。

 既存の3条ウォームとコアレスモータ、ボールベアリングを組み合わせて高性能を得たのは筆者だが、合葉氏によれば、それは模型観を塗り替える程の世界的大発明だったそうだ。その割には普及率は低いのは知らない人が多いからだと思ったが、合葉氏の判断では「走らせている人が少ない」という、単一の原因なのだそうだ。
 だからこそ、走らせて見せるということを主眼に置くべきだと言ったのだ。博物館の建設の最初のきっかけはそこにある。

dda40x at 07:09コメント(0) この記事をクリップ!

2021年07月07日

続々 合葉博治氏の記事

 合葉氏はOゲージを再興するつもりだった。その呼び水に筆者のメカニズムを使うことにしたようだ。二回目にお会いした時は、京王プラザホテルの会議室に呼び出され、ご馳走になりながら、その構想を聞かされた。その時、開発中のステンレス製 Low-D車輪、高性能な動力台車の見本などを渡した。合葉氏は一つ一つ確認して、たいへん驚いた。その時、慣性増大装置についても話した。
「貴方はすごい。どこまで先の事を考えているんだ。すぐには実現できなくても、その構想を書くだけでも、模型界は進歩する。」
と言われたが、実現するまで30年以上掛かった。

「10年前に出会っていれば、世の中は大きく変わっただろうね。でも今からでも遅くない。やってみよう。」
と言う。
「京王百貨店の中の特設会場で、60輛編成の列車がゆっくり動いて止まる、ということを見せれば、分かる人は分かる。山崎氏に見せつけてやるんだ。」
と言った。合葉氏は山崎氏に、「Oゲージの時代は終わった」と言われて癪にさわったようだ。
「精密機械としてのOゲージを見せれば、彼はきっと動く。」と言って、ニヤリとした。 

 その後、筆者は再度渡米し、滞米中何度か手紙を差し上げたが、返事が全く無く、帰国後大変な病気であることを知った。ご本人にもお会いしたが、大変お気の毒な状態だった。

 今回は、合葉氏の”New O gauge”という記事に触発されて、30年以上前の事を思い出した。当時の合葉氏の記事には正しいことが書いてある。他の外見だけの模型とは、一線を画した記事ばかりである。
「模型と工作」という雑誌にもたくさん図解入りの記事を書かれている。子供向けだが、真理を書いているのはすごい、と今でも思う。
 伊藤剛氏と双璧をなしていた。この二人が居なかったら、かなりあやしい状態になっていたのではないかとも思う。 

dda40x at 07:07コメント(2) この記事をクリップ!

2021年07月01日

「二人の模型人」を読んで

 先に発表した伊藤 剛氏の「二人の模型人」について、コメントやメイルで多くの方から、様々な感想をお寄せ戴いた。

 筆者としては、外観重視主義者と、筆者のような走行性能第一主義者との対比を考えていたのだが、殆どの意見が、16.5 mmと12 mmの対比に絡む内容であったのは、意外であった。筆者にとってはその問題はすでに過去のことで、意味がない。
 ゲージ(線路幅)よりもスケール(縮尺)が早く決まったなどという荒唐無稽な話を、根拠なしで流布する人たちとは対話できない。サイエンティフィックではないからだ。語学力の欠如の問題ではなさそうだ。

 それはさておき、ある友人から興味深い手紙を戴いた。部分的に公開の許可を貰ったので、紹介しよう。


 今回の「二人の模型人」を、興味深く拝読しております。一部の人々はHO/ 1:80をガニマタなどと誹謗し、12ミリ 1:87の需要を喚起しようとされているようですが、反発を買うばかりで、ますます12ミリ 1:87の未来を閉ざしていると聞いております。そもそも人様の財産にケチを付けること自体、品性や徳性といったものが疑われるわけですが、人体の欠陥になぞらえてあげつらうというのも、昨今はやかましくなった「コンプラ」的に、いかがなものかと思います。

 日本各地で問題になっている限界集落・その原因のひとつは、移入者に対する住人の偏狭な攻撃性だと聞いておりますが、どこの鉄道模型運転会の写真を見ても、OやHOの場合、参加者の方々の年齢構成から、限界集落ならぬ限界道楽という、つたない造語が脳裏をよぎります。

 今回「二人の模型人」を拝読し、70年以上も前に伊藤 剛氏が偏狭な価値観の押し付け合いに警鐘を鳴らされていたことを知りましたが、この言葉を我々が真摯に受け止めていたならば、現今の限界道楽的な状況はなかったかもしれませんね。


dda40x at 07:01コメント(3) この記事をクリップ!

2021年06月23日

実験をすることの重要性

 友人が新たに組み立て式線路を作るので、材料を融通した。彼は道床にコルクを張るつもりだった。それは止めたほうが良いと言ったが、彼はコルクにも吸音性があると、比較的近年のTMSにも書いてあったような気がする、と言う。その記事は見たことがないが、実際のところはどうなのか、比較実験をするように提案した。

 彼は実験の価値を認めたので、ゴム板、コルク板を交互に使用した線路を作るように勧めた。線路と緩衝材との留め具合も変えるように言った。

 3日後、電話があった。
「仰るとおりでした。コルクは殆ど効果がないですね。カーッとかコーッとかいう音がします。ゴムの上で緩く留めたものは音がしません。大したものです。実験をして良かった。」
とのことであった。

 ところが、さらに3日後、電話があった。
「この間の実験は、Low-D車輪を使ったときの結果です。普通の車輪を使うと、ゴムのほうがはるかに良いが、コルクでも効果がないとは言えないのです。」と言う。
 それでは12 mm合板に直接敷いた線路も作ってみて、試してくださいと言うと、
「それもやりました。それと比べればコルクにも効果があることは否定しないが、騒音がもともと大きいので、無いよりマシという程度です。」

 彼の話から結論をまとめると、こういうことになる。
1 普通の車輪を使うと発生する音量が大きいので、コルクでも多少は静かになる感じはする。
2 ゴムの板の上にゆるく留めたフレクシブル線路上の音は格段に小さく、低速では殆ど無音である。
3 Low-D車輪であると、ゴム板上の静粛性はさらに顕著である。
4 フレクシブル線路は孔を大きくして、釘で緩く留めるべきである。

 要は車輪踏面が粗雑であるとやかましく、何らかの緩衝材がないと実用にならない。コルクよりゴムのほうが、はるかに効き目があるのは間違いない。

 こちらの主張どおりであったから、安心した。ここではコルクかゴムか、留め方が固いか緩いかで、彼はその4種を並べ替えて、走らせて音を聞いたそうだ。簡単なことなのに、この種の比較実験をしない人は多い。

 これだけの事なのだが、やる人は少ないのだ。2つの次元を組み合わせるだけだから簡単だが、実験せずに間違ったことを流布する人は居る。またそれを聞いてすぐ納得してしまう人もいるようで、困ったものである。ウソでも信じる人がいる限り、いつまでも広がっていくだろう。それで損をするのは、善良な模型人だ。
 実は、博物館のレイアウト建設中にその実験をしている。動画を撮ってあるので、探している。ただしそれはLow-D車輪での実験で、普通の車輪の走行実験はしていない。

 実験結果が全てだ。そういう点でも、この国の鉄道模型雑誌のやる気の無さには、ため息しか出ない。 

dda40x at 06:23コメント(2) この記事をクリップ!

2021年06月15日

二人の模型人

 古いTRAIN誌(1948年2月号)に伊藤剛氏が興味深い一文を載せている。この号には軌楽会の栗山 弘氏や椙山氏も記事を書いている。



 二人の模型人が居ます。二人とも私の友人です。二人とも私は尊敬しています。その名前を挙げることに私は意義を認めないから、假に一人をA君とし、一人をB君としませう。
(この書き出しをどこかで見たことがあるって?ーーそうです。これは昨年末新聞の文化評論にあった「二人の書家」のそのままですが、私は全く同じに感じてゐるのです。)
 A君はいわゆるマスプロ屋です。彼に30時間を與えればボギー貨車10輛から成る急行貨物列車をまたたく間に作り上げます。木の角材、セメダイン、ラッカー、ダイカストの台車と連結器、サンドぺーパーは彼が必要とするもの全部です。
 A君の車には細かな器具類はほとんどついていません。しかし奇妙に実物のそのままの感じが出ます。A君はいつも新しい形式を求めて、イヤあそこにある窓が小さい。すみにドアがあった方が好いとっています。A君は常に自からの夢を 最大速度でレールの上に乗せてみたいらしいです。彼は造形美術家の一人と云えませう。展覧会あたりにると、ボール箱に三杯ほども車をつめ込んでレイアウト上に一杯になる程出品します。しかも今も尚6輛編成の急行旅客列車の図面を一晩で書き上げて「君ィどんな色が好いだらう。一週間ばかり色の事を考えてゐるので、頭が痛くなった。」とやってきます。
 彼は”Oゲージ”で1/45ですが、アメリカの16m/mレイアウトを見てやって見たいなあと嘆息しています。
 B君は物凄い腕を持っています。その精密な工作はちょっと類を見ないほどで、ED16の1/40台車に全部スケール通りのブレーキシューをつけたと云ふことから推して知るべしです。B君の客車はフランス人形と云ふあだ名がついてゐますが、窓のカーテンの具合、テーブルクロース展望車の本棚の上に飾られた油絵の額まで、本当に1/40でよくこれまで出来るものだと思はれる程のデリケートな手法で作られています。
 一輛に數ヶ月或いは數年の年月を費やしても決して惜しいとは思いません。気に入らぬ部品はすべて気に入るまで作り直し、非常に高級な材料を選んで製作にかゝります。もちろん現代の日本のダイカスト既成部品は気に入る筈もありません。彼の作品には一種の香りがあります。それは出来上がった品物の美しさより、その工作方法の深く新しい考察によるものでありませう。
”O"ゲージ1/40では充分に工作の腕が振えないのか最近では96m/mか64m/mでライブスチームロコをやって見たいな等と云ってゐます。
 A君とB君もお互いの作品を感心して見てゐます。もっといいことには二人とも自分のサイドのほうが好いとは一言も云わないことです。
「模型はその人の趣味だから」と二人は口を揃えて云っています。しかも二人とも、”Oゲージ”のレールに関する諸規定だけはきちんと守ってゐます。
 二人の模型人があります。二人とも私の友人です。
 二人とも、私は尊敬しています。  この部分不鮮明】

 なるべく原文のまま再現するように努力したが、判読不能部分もあることはご了承戴きたい。 

dda40x at 06:15コメント(1) この記事をクリップ!

2021年05月16日

四日市のクラブ

O scale (1)O scale (2) 当時Oゲージのスケールモデルは人気があり、運転会では各種の模型が走っていた。この2枚の写真は1956年8月26日の四日市工業高校での催しである。橋(伊藤禮太郎氏製作・東海道本線揖斐川橋梁)もある大規模なレイアウト(稲葉氏設計)であり、C53(益田 昌氏作)が走っているのが見える。益田氏はTTゲージを広めようとされた方だ。TMS111号に記事がある。  

 この時期のNMRC名古屋模型鉄道クラブやYRFC四日市レールファンクラブの会報を読むと、その熱気が伝わってくる。この2つのクラブは姉妹クラブで、記事原稿のやり取りをしていた。
 特に椙山氏の文章は、創作意欲を湧き立たせる、リズム感のある筆致で素晴らしい。それに答えて伊藤剛氏の軽妙な、かつ工学的な素養を含む記事が毎月発表されていた。当時のTMSを比較して読むと、4分の1近くが、この2つのクラブの会報に端を発した記事であることがわかる。

慶応三田会レイアウトOct.18,1955 YRFCの機関紙には、慶応の鉄道研究部 文蔵正弘氏からの投稿もある。先のC53を含めてかなり長い記事だ。  
 1955年10月18日三田祭におけるレイアウト(図参照)で、稲葉氏のC62、EF58による特急編成、益田氏のC53による戦前の特急編成、生川氏のモハ42編成の併走の様子などが書かれている。
 電流の事も書いてあり、C62は 2 A、EF58は 5 Aとある。C53はDCモータが2個付いているとも書いてあり、電流は 1〜2 Aだそうだ。セレンは中古の3Aで、パンクを恐れて1輛ずつ運転していたが、しまいには2列車走らせても壊れなかったとある。 
 またC53は、最初は4輛しか牽かなかったが、当たりがつくと調子が良くなって7輛牽き、騒音も小さくなった。後半には電車顔負けの猛スピードで走ったとある。精度の無い歯車しかなかった時代なのだ。 

 この時代の記事を読むと分かるのは、誰もがよく走る模型を目指していたことだ。外観にこだわる人は少数であった。


dda40x at 05:16コメント(2) この記事をクリップ!

2021年04月28日

14輌編成

express train Hato ようやく台車取替が終了したので、郵便車、荷物車も含めた14輌をつないだ状態での、要求される引張力を測定した。井上豊氏からは、たまにそういう編成もあったと聞いた。外国人の団体があると、荷物車が追加されるそうで、重くて大変だったそうだ。
 走行抵抗について正確に測定した。とても小さい。先回の測定時には、台車のブレーキがタイヤに当たっていたものが多かった。
 3Dプリントでは、ブレーキがぎりぎりのところに出力されるので、当たっていても分からない。今回はブレーキを確実に離して、より滑らかに動くようにして測定した。

 14輌編成に対して要求される引張力は、平坦な直線路では 0.2 N(約20 g重)という、信じられないほどの小さな値となった。単純な計算で分かるように、直線では0.3%の勾配で滑り降りるということだ。

 1.56%勾配、3000 mmRでは、必要な引張力は 1.9 N(185 g重)であった。この勾配では、曲線で抵抗があるにもかかわらず、手を離すと列車全体が勝手に滑り降りていき、猛烈な速度になる。

 機関車に要求される引張力は、185 × 1.2 = 222 g重で、摩擦係数を0.2とすると、機関車の動輪上重量は 1100 g重ほどあれば良い。先輪を含めて機関車の質量は1.6 kgで十分である。1.56%勾配をスケールスピード70 km/hで登るとすると、機関車自身の質量を押し上げる仕事率を含めても、1 Wほどの出力があればよい。
 全伝達効率が3割としても、3 Wの出力で足りることになる。実際にはもっと良いので、2 Wでもよいだろう。ということは、勾配を登るときの電流値は0.2 A強である 。

 実際には全車に照明を付けるので、0.6 Aほど喰うことになるだろう。 

dda40x at 04:28コメント(0) この記事をクリップ!

2021年01月20日

自動信号機の設置工事

 信号機の工事をしている。この工事は、博物館レイアウトの最も手間がかかる部分である。信号機の部品を作るのに3箇月を要し、信号橋の中の細かい配線だけでも3週間かかった。センサの取り付け、調整をしてから、論理モヂュール周りの配線準備をした。複数の手でやれば、かなり省力化できるが、一人では難しい。
 この種の仕事に比べると、車輛工作は手離れが良く簡単である。

signal modules 論理モヂュールの設計製作は、電子工学のエキスパートのNS氏にお願いした。素晴らしい動作を見せてくれる。

 細かい配線を一人で進め、残りの大規模な配線を助っ人を頼んで複数人でやるという方法で進めている。年末にNG氏とF氏が駆け付けてくれて、上り線だけの工事を終えた。下り線は今月中に施工予定である。 配線よりも、事前の準備の方が大変である。信号橋の中を、目立たないようにたくさんの線を通さねばならない。観客側からは殆ど見えないようにしたいので、気を遣う。

sensors at signalbridge 赤外光の送受装置の間を列車が通ると感知される。光には暗号がかけてあるから、混信は起こらない。
 信号機周りの線は細い。床下に付けたモジュールにつないでも断線しないように、熱収縮チューブで保護しなければならない。モジュールは計8台あり、普段は畳んで見えないようになっている。点検時はパタンと降りてきて、パイロットランプを確認できる。格納時には、手を触れられない形になる。

 配線はかなり複雑だ。NG氏がうまく配線を整理して下さったので、ターミナルは8端子で済んだ。当初、あと2端子増設するつもりであったから大助かりだ。 LANケーブルは8心であるが6本だけを使う。
 
 一応結線は完了したが、一つの信号が赤で固まって動かない。トラブル・シューティングには5日ほど掛かった。動作を表にして、電圧変化を追いかけ、故障個所を特定できた。なんとLANケーブルの断線であった。細いところを無理に通して引張ったので、角スタッドの鋭利な角で切り裂かれたのだ。外のシースが裂けていた。ハイテクであっても、最も基礎の部分をおろそかにした報いである。
 新しく電線を張り直した。今度は、別経路でゆったりと通した。


dda40x at 01:20コメント(3) この記事をクリップ!

2021年01月14日

scientific であるということ (7)

「実物通り」という言葉は、ある種の魔力を持っているように感じる。客観的にものを考えられない人にとっては、あこがれの対象であり、崇拝したい考え方のようだ。


 先日某所の組立式レイアウトを更新するということで、古いものを引き取ってきた。実は、当博物館3階の空きスペースに試験運転場を作ろうということになって、有志が動き始めたのだ。(博物館の本線上では試験運転はできない。ギヤボックスのない車輛は油を撒き散らすから入線できないので、より気楽に運転できる周回線路の設置を要望されていた。)

 見ると、曲線の部分のゲージがかなり広い。軌間31.75 mmのところ、33 mmほどもある。どうしてかと聞くと、
「スラックが付けてあるんだそうだ。」と言う。
どんな基準で付けたのだろうと訝しげに見ている友人に、誰かが答えた。
「国鉄の技師の〇〇氏が、本物の計算式で付けたと言っていたから、完璧なんだそうだよ。」

 こうなると、もうパラノイアとしか思えない。技師氏はどんなデータを入力してこの数字を出したのだろう。国鉄に半径94mの本線があったのだろうか。軌間は31.75 × 45 = 1429 ≒ 標準軌となるが、それを考えたのだろうか。模型のフランジの形、高さを考慮したのだろうか。模型の線路の数値を実物の計算式に入れたようだ。何もかも虚構であって、めちゃくちゃであった。ここまで軌間が広いと、はまり込む車輪もあったようだが、Low-Dはタイヤ幅が狭くないので、かろうじて助かっている。 

 模型の軌間はスラックを内包しているということが、分からないらしい。車輪ゲージとの差を”ユルミ”というらしいが、これはかなり大きい。Low-Dではそれをかなり減らしている。その結果チェックゲージを保ちつつ、バックゲージ  (back to back) を広くでき、フランジウェイを狭くできる。当然、走りも安定する。

 この結論を見せても、「素人は黙っていろ!」という態度であった。本物縮小主義者は、大体似たような傾向を持つ。しかし、どちらが素人なのかはすぐにわかってしまい、Low-Dは売れ続けた。一方、模型は実物とは異なるのだが、技師氏は最期まで非を認めなかった。
 
スケール効果MCB TMS誌21号(1950年)には、MCB台車の製作記事が伊藤剛氏によって書かれている。揺れ枕の話が出ているが、そこには、模型の揺れ枕は手で押すと動くのが良いが、「實物と同じ揺れ方はしません。(これをスケール効果といゝます)…」と書いてある。現代でも「揺れ枕を本物のように作った」、とご自慢の車輛を見るが、単なる自己満足の域を出ない。伊藤剛氏は揺れ枕吊りを天井まで伸ばしたものを作ってみたそうだが、それでも全然足らないと言っていた。この時代から、実物を縮小しても動作は異なると書いてあるのに、学習しない人は多く存在する。
 
 現代においても「実物通りに作られている」と言うと、平伏する人は多い。運転性能は怪しい。車輪規格を実物に合わせた(つもり)かもしれないが、模型の軌間は実物通りではない。摩擦係数も異なる。どうするのだろう。 


dda40x at 01:14コメント(2) この記事をクリップ!

2021年01月10日

scientific であるということ (5)

 誰がやっても同じ結果になることを、「再現性がある」と言う。再現性がないものはサイエンティフィックではない。それはマジックかもしれないし、錯覚かもしれない。

 筆者は、サイエンティフィックでない人とはお付き合いできない。それは、物理や化学をしっかり勉強していない人とは付き合わない、という意味ではない。「正しいことは何か」を追求し、なおかつ物事の論理性を大切にし、客観性のある人でなければ、議論しても噛み合わないからだ。例えば、ある話をしているときに、それとは異なる次元の話をしようとする人がいる。


 しばらく前にこういうことがあった。石炭の燃焼熱は、無煙炭(anthracite アンスラサイト)のそれが一番大きく、瀝青炭(bituminous coal ビチューミナス・コール)のそれはやや小さい。燃焼熱の定義は、完全燃焼のプロセスで得られる熱量である。そこには時間の次元は入っていない。酸素を十分に与えて、ゆっくり燃焼させたときの値だ。

 ところが、蒸気機関車での燃焼はそういうものではない。どんどんくべると揮発分が出て、それに火がついて大きな明るい炎を作り、その輻射熱で加熱している。そのためには煉瓦アーチで炎を大きく曲げることが必要で、燃焼室が大きいほど有利である。当然煙も出て不完全燃焼しているが、早く燃える燃料は機関車の出力増大に直結する。出力(仕事率)の次元は、時間当たりのエネルギィであるから、多少燃焼熱が小さい瀝青炭であっても、燃焼速度が大きければ出力が大きくなるのである。それなのに、その人は「無煙炭を燃やす機関車の出力が小さいのは、燃焼熱が小さいからだ」と言って聞かない。燃焼熱は最大であることぐらい、理科年表を見れば載っている。含まれている炭素分が多いからだ。データを読み、何が問題かを正しく捉える姿勢が無いと、議論の入り口まででさえ、たどり着けない。

 これは極めて客観的な話であるのに、先入観に左右されている。次元というものに対する理解がないため、聞く耳を持たない状態であって、大変疲れた。多分、その方は今でも自分の間違いには気付いていないだろう。不思議なのは、その方が実物業界(もちろん技術系)の方であったことだ。


dda40x at 01:10コメント(0) この記事をクリップ!

2021年01月08日

scientific であるということ (4)

 先回の4つのファクタは、35年ほど前、吉岡精一氏から与えられた課題の答である。整理して提出すると、「よし、合格!」と言われた。吉岡氏は、絶対に答を言わない人である。問題を出して答えさせ、そのプロセスを検証するのが趣味であった。これは、取りも直さず、ご自分の答を確認していたのだ。
 その中で異なる材質の組み合わせによる摩擦係数の低減は、氏も気付いていなかったことで、「知らなかった」と正直におっしゃったのには敬服した。そういう点でも客観的な方であった。知ったかぶりは決してしなかったのだ。

 その後フィレット半径、フランジ角の選定のプロセスを黙ってごらんになって、決定版ができたときに、「俺のと同じになった。」と言われた。
 これこそが、サイエンティフィックなプロセスである。誰がやっても同じ結論に到達するのである。吉岡氏は自分の理論が正しいかどうかを、筆者に証明させたのである。その間、ヒントは全く与えず、遠くでニコニコして見ていたのであった。
 また、車輪直径公差を2/100 mm以下にできたので、転がしても左右に偏ることは無くなった。それも抵抗の低減に大いに寄与している。これは吉岡氏の考えた範囲をはるかに超えていた。

 最初の1万軸の頒布以降、これに関する論議は全くなく、採用してとてもうまくいくという賛同者と、根拠無く批判する人の二つに分かれた。前者が圧倒的に多いのは、当然である。使ってみればわかることなのである。

 しかし自分で実験もせずに批判する人が居るのは、理解しがたい。実験して、良い結果が出ることを確かめてあるのだから、口先だけで否定できると思うのは、無理筋である。いまだにLow-Dの大きなフィレット半径の効用を、「個人的見解」と書いて否定しているサイトがあるのには、驚きを禁じ得ない。 すでに3人が独立に証明しているのだ。否定するならそれなりの実験結果が必要であり、それが無ければ単なる知ったかぶりのホラ吹きであろう。模型は実物の一次近似であるというファンタジィに取り込まれて、酔っているのだ。
 2点接触についても、重い実物における損失と、軽い模型での損失を比べれば、模型では無視できない。しかも線路の曲率を考慮していない。

 今回の高梨氏の研究着手に際して、筆者は吉岡氏の態度をそのまま踏襲した。導いてはいけないのだ。
 着実に同じプロセスをたどって、三回目の証明に至ったのはご覧のとおりで、感動した。


dda40x at 00:08コメント(2) この記事をクリップ!

2020年08月09日

続々 最高級のパワーパックを検分する

Tenshodo Power Pack (3) お送り戴いた内部の写真は興味深い。これにもセレン整流器が使われている。その大きさは当方が保管しているものと大差ない。ちょうど能力が半分であると思われる。
 ポイントマシン用の電源は走行用電源のトランスであるから、これでは作動時に速度が一瞬下がる可能性が高い。ポイントマシンの作動電流が大きいので、電圧降下が起こるからだ。

Tenshodo Power Pack (2) 認定番号は付いている。1970年頃のものだそうだ。01175氏によると、Tマークが付いていないものを製造販売できなくなったのは、1968年からということだ。 


 若い方はセレン整流器など見たこともないだろう。耐圧が低く、せいぜい16 V(正弦波実効値)ほどしかない。直流では 25 V くらいだ。電圧降下は 2 V 程度(もちろん電流によって変化する)で、当時の他の整流器に比べて優秀であった。
 鉄板に金属セレンを貼り重ね、カドミウムとスズの低融合金を塗り付けてある。それを通風を良くするために隙間を空けて、ネジで締めたものだ。鉄板は単なる基板であって、整流効果には寄与していない。
 当時は自動車部品として大量に作られていた。自動車整備工場の充電器には、10 cm ✖ 20 cm ほどもある巨大なセレン整流器が付いていた。高温になると壊れるので、扇風機で風を送っているのを見たことがある。


dda40x at 08:09コメント(0) この記事をクリップ!

2020年08月07日

続 最高級のパワーパックを検分する

inside 中はトランス2台と、セレン整流器2基、レオスタット2基だけしか入っていないが、結線数が多いので電線は賑やかである。しかし回路構成は単純明快である。

 最大電流は、セレン整流器の大きさから推測すると、合計5 A程度 6 Aである。セレン整流器を見るのは久しぶりだ。どういうわけか、2つのセレン整流器が並列につないである。不思議な結線である。こうするとどちらかに電流が偏って焼けやすくなるのが常識的な考え方だが、セレン整流器は、電流が増えると抵抗が増えて他方に電流が廻るのだろうか。

 セレン整流器は、過電流で焼けても、その膨らんだ部分をつついて外し、順方向にしばらく通電すると直った。低融点の接合金属が融けただけだからだ。もちろん許容電流は減った。セレン整流器は耐圧が低く、もう使う人も居ないが、多少の高周波まで使える。特性はショットキーバリア・ダイオードに似ているはずだ。
 驚いたことに、今でもセレン整流器は骨とう品としてヤフー・オークションで売っているが、買うべきではない。漏れ電流はシリコンダイオードとは比べ物にならないほど大きく、効率も低い。価格はべらぼうな水準で、失笑してしまう。 シリコンのブリッジで簡単に代用できる。 

 それにしてもスウィッチ類は、現代の感覚では操作しにくい。昔はジーメンスのキィ・スウィッチの操作は気持ち良いと感じたが、今ではやや違和感を感じる。
 操作盤上の番号とポイントマシンとの対応は、分かりにくい。ポイントに立札を立てて、番号を書いておかねばならないし、正位、反位をどう決めるかは問題だ。発売当時のカタログにはどう書いてあったのだろうか。

 DCCの時代に60年前の製品が持ち込まれたのである。何とかして有効利用して差し上げたいが、かなりの工夫が必要だろう。何か良い用途はないだろうか。

Tenshodo Power Pack (1) Litte Yoshi氏から、所有されている同系統廉価版のパワーパックの写真をお送り戴いた。




追記 
 セレン整流器を並列につなぐのは、ごく普通に行われていたようだ。電流が増えると抵抗が増すので、電流は平均化される。昭和30年台のTMSに接続図が載っている。理屈は書いてない。


dda40x at 08:07コメント(2) この記事をクリップ!

2020年08月05日

最高級のパワーパックを検分する

Tenshodo Powerpac (1)Tenshodo Powerpac (2) 先日持ち込まれたのは、これである。天賞堂が1960年頃発売していた最高級のパワーパックだ。未使用とのことで、驚いている。当時の価格を調査中であるが、確か2万円前後であったと思う。大卒初任給が1万円程度の時代であるから、とんでもない製品である。不思議なことに、「天賞堂」の表示は無い。通産省の認定品であることを示す甲種電気用品形式承認のいわゆる " Tマーク " もない。当時はモグリの商品が普通にあったのだろうか。のちにカツミが売り出したものには、その認定番号が表示されたことを覚えている。当時、父にその話をしたが、「当然だ」とのことであった。
 
 2系統6回路でポイントマシンは12台が操作できる。もちろんソレノイド型である。ポイントの制御は別のトランス(50 VA程度の大きさ)で行う。ポイントマシンの電源が共通のトランスであると、走行中の切替え操作で速度が変化した。それを防ぐためで、高級機ならではの仕様である。スウィッチは、倒した瞬間だけ導通するタイプである。補助接点が付いているので、同時に信号機の点滅も可能であったろうが、その出力線を取り出す穴はない。

 車輛の制御はレオスタット方式であるから、電流制御であって、現代の小電流で走る車輛のコントロールは難しいだろう。この部分だけは電圧制御方式に改造せねばならない。メータには電圧・電流が表示されるが、2系統の合計を示している。切替えスイッチを付けて、2系統のそれぞれを見られるようにすべきであったと思う。今なら電圧・電流計は安いのでそれぞれに独立させるであろう。
 ちなみにレオスタットはホィートストンによって導入された言葉である。流れ(rheo)を固定するという意味だ。即ち可変抵抗器である。

 ヤフー・オークションにこのようなものが出ている。同系統の廉価版であるが、基本構成は同じである。興味深いのは「DC16 Vが一定で、変化しない」との説明があることだ。壊れていると思ったのだ。
 可変抵抗による電流制御の意味を知らない世代に入ったわけだ。適正な負荷をつなげば、その負荷に掛かる電圧を変えられるが、思い付かないのだ。これには "Tenshodo" の銘版が付いているが、Tマークがあるかは、分からない。


dda40x at 08:05コメント(0) この記事をクリップ!

2020年07月26日

Blue Star Pacific RR の移設

 椙山 満氏のBlue Star Pacific RRが解体、移動された。

Blue Star Pacific RR  (3)Blue Star Pacific RR  (2)Blue Star Pacific RR  (1) レイアウトの甲板の厚さには驚いた。約32 mmもあった。古くなって多少膨らんでいるようなので正確な厚さはわからないが、26 mm程度の厚さのパーティクル・ボードの上に5.5 mmの合板を全面に接着剤で貼り、その上に線路を敷いている。筆者が手伝ったのは、その甲板が完成した後であったので、構造はよくわからなかった。この甲板部分はすさまじく重い。

 たいていのレイアウトでは薄っぺらな音がしたが、ここの走行音は重々しかった。椙山氏が、「合板が薄いのはいけません」とおっしゃっていたのはこれだったのだ。ようやく合点がいった。過去に数回の小規模レイアウトを製作した経験から、厚さを決められたのだろう。

 甲板の切り離しには電動レシプロソウを用いた。ジャッキで2 mmほど持ち上げて隙間を作り、鋸刃を差し込んで、ホゾごと釘を切った。直径が3mmもある釘が3本づつ打ってあったので、手間取ったが、切り外すことに成功した。梁には細い釘しか刺さっていなかったので、それは一瞬で切り落とせた。延数百本の釘を切り外して甲板を持ち上げた。アメリカ製1種、日本製3種の鉄鋼用刃物を使って切れ味を比較したところ、日立の特殊鋼で出来た刃が一番よく切れた。

moving the layouttenon その下部構造は想像を絶するものであった。家を建てるような太さの柱を6本立てた上で、小柱を20本立て、梁を載せている。梁はほぞを組んで、さらに釘で抜け留めをしている。上で相撲を取っても大丈夫な構造である。分解するのに大変苦労した。腕の良い大工に、十分な手間賃を取らせて作ったことが分かる。全く狂いが無いので、嵌めたガラス戸は、滑らかに動いた。

helperson the truck bed 若い助っ人が何人か来てくれたので、土台から切り離した重いレイアウト本体を運び出してトラックに載せることができた。これで約1/4 である。トラックが2台あったので、2往復である。 
 上物だけで約120 kg、土台は360 kgほどあった。

dda40x at 07:26コメント(0) この記事をクリップ!

2020年06月20日

走行抵抗を与える車輌

 沢山のコメントが入り、驚いている。

 車軸にモータを仕込んで発電機とし、抵抗で消費させてブレーキを掛けるものは作ったことがあるが、面白くない。安価な有鉄心モータであるから、発電量は位相によって異なり、大げさに言えばカクカクとなった。たくさんつければ均されるが、おもちゃのようなものである。HOでは大きさの点で難しい。

 要はブレーキであるから、効率はあまり関係ない。負荷が均一であることが大切だ。簡単な歯車装置か、摩擦車でも良い。細いバネで軽く押さえれば、用は済む。
 昔アメリカの広告で見た、大きな車を台車の上に置いてフランジから摩擦駆動するものがあったが、あれでよいのだ。その商品は慣性を増大させるものだったように覚えているが、角速度が小さいので意味がなさそうだった。今回は慣性は関係なく、半径が大きければ、摩擦力は小さくて済む。
 どなたかが作られると面白い。 引張力を掛けた状態での走行状況を見るものだから、慣性は無くてもまったく構わない。単なるブレーキ車で良いのだ。

 急曲線の話があったが、左右の車輪を独立にすると摩擦が激減する。これは15インチ(381 mm)ゲージの乗用模型で立証済みである。半径 5 mでも5人乗った客車を片手で押せる。左右の車輪が連結されていると、二人で押さねばならないほど、重かったのである。HOなら、構造は極めて単純で良い。 
 軽便鉄道風の物であれば引張力がなくてもかまわないのだが、本線を走る大型機関車については調べる必要があるはずだ。

 ハンダの色については、いくつかのコメントがあった。最近はKKCに限って言えばハンダの色が見えているものが増えて来た。喜ばしいことである。完全にハンダが廻っていて、壊れにくい。これはその昔、TMSのミスリード記事が元になっていると思う。ハンダを見えなくすると良くなることなど、見かけの問題以外、どこにも見つけ出せない。アメリカのコンテストでも、未塗装の場合、ハンダが見えているものが多い。見かけよりも実質を取るのだ。


 コメントに、自己宣伝を書いてくる人が多くなった。何度も申し上げたことだが、コメントはコメントであり、それ以上のことはご自分のサイトで発表されたい。核心を突かない不要部分は削除して短くするか、掲載をお断りしている。 

dda40x at 06:20コメント(2) この記事をクリップ!

2020年04月09日

コンテストの結果

 4月4日に結果が発表された。筆者はそれについてコメントできる立場にはないが、様々な方からメイルを戴いた。

 このコンテストは商業的な博物館のコンテストである。筆者は結果をある程度予測していたが、このコンテストに応募するように勧めてくれた友人は、かなり落胆していた。しかし、これによって3条ウォームの露出が増えて、興味を持つ人がたくさん出て来ると言っている。

 原氏はウォームギヤが嫌いであった。スパーギヤ、ベベルギヤによる伝動しか認めないという姿勢を崩さなかったのだ。筆者が3条ウォームを実用化し、逆駆動が可能になってからも、原氏は一切その話題には乗って来なかった。地震で亡くなった魚田真一郎氏は、「あの人も困ったもんだ。どうして認めないのだろう。」と嘆いていた。魚田氏も3条ウォーム派であって、殆どの機関車を改造したのだ。

 原鉄道模型博物館には「ウォームギヤは逆駆動できない」と掲示されている。これはおかしい。否定の証明は難しいのだ。まさにその反例を突き付けている。
 筆者が応募したのは、この掲示を外してもらう良いきっかけになると思ったからである。FEF4の慣性のある動きはテンダのウォームギヤの逆駆動による動力ピックアップによる。もう誰も否定はできない。
 鉄道模型は科学的な思考を育て、それによって再生産されるはずだ。その科学的思考に誤りがあると、その産物は正しい物とは言えないだろう。

 また、先日1980年代後半のミキストを拾い読みした。その中に逆駆動されるウォームギヤに関することが2行程度だが書いてあるのを見付けた。山崎氏はどうして接触して来なかったのだろう。

 今回発表されている写真を見ると、ボイラー脇のラニングボードが派手に曲がっている。持ち方を指定する図まで添えたのだが、ここをわしづかみにされたかもしれない。完全に真っ直ぐではなかったが、曲がりが極端に増している。ラニングボードが薄かったのだが、厚いラニングボードはオモチャ的で、筆者は好きではない。本物もへなへなと曲がっているので、より「実感的」ではあるが、出品者としてはあまり嬉しくはない。
 審査風景の中にもテンダをわしづかみにしている場面がある。これも持ち方の図を無視している。一応補強を入れておいたので生き残っているが、それが無ければ、確実に壊れていただろう。模型に対する愛情、情熱が不足した人が審査しているのだ。補強を入れた判断は正しかった。 

dda40x at 04:09コメント(15) この記事をクリップ!

2020年02月23日

続 Model Railroader Feb.2020 issue 

「HOは 最初から1/87.1 以外を指さない」と言っている人がまだ居るようだが、このような客観性の無いことを大声で言うことは、まさに宗教である。教義を唱えて、それに反するものは異教徒として抹殺しようとするのと変わらない。

 その怪しい新興宗教の教義を唱える人たちは、この最近号のMRを見て、何と言うのだろう。その教義では説明できない。この号にはある日本人の写真が載っているのも、奇しき縁である。これらのページを見ていないのだろうか。
 
 その不発弾のお方は、その教義を流布する文書で、筆者を攻撃している。様々な方から、再度の不発弾を転送してもらっている。話のついでに要約を紹介する。
 
 決着のついている件に口出ししている。自分が注目されたくて理屈をこねているだけである。かき回すのが目的の人だから、最初から結論を出そうとしているわけではない。話をすり替え続けるだけだ。ああ言えばこう言う人であるから、相手にするな、と言っている。

 これはご自分のことを言っているのではないだろうか。すでに事実が判明しているにもかかわらず、捏ね繰り回した屁理屈を作って、さもそれが真実のように流布するのは法律に触れる可能性が高い。「ああ言えばこう言う」と言うのは、反論出来なくなった人が吐く決まり文句である。出来ることなら、反論するべきである。 

 決着は付いている。HOは最初から 1/87.1であったというのは虚構である。某国のように歴史を捏造しているのだ。ゲージが先に決まっていて、スケールは各社が自由に決めたのは歴史的事実である。日本型を1/80で作ってHOゲージの上を走らせて満足している人に向かって、お前たちは間違っていると言う必要などさらさら無い。また、日本型の1/80、16.5mmゲージの方たちは、「私たちはHOゲージを楽しんでいる」と、自信を持って大きな声で言うべきだ。
 昔から16番という小難しい言葉を使う模型屋は、親TMS派の模型屋で、大半の模型屋はHOゲージと言っていた。何も間違っていない。それこそ世界標準である。

 先日「ヒットラー〜最期の12日間〜」という映画を見た。完全に追い詰められて、もうダメというところまで来ているのだが、「勝利はわが軍にあり」と叫んでいる。重なるところがあると感じた。

 問題はTMSというメディアのあり方だ。史実を捻じ曲げて報道するつもりならば、自分の首を絞めることになる。名取氏の舵取り能力が問われるところである。 社長は口を出さないと宣言しているが、手を出すのは良いとは言わないだろう、と信じたい。

dda40x at 02:23コメント(2) この記事をクリップ!

2020年02月21日

Model Rairoader Feb.2020 issue

Feb.20 MR cover 最近はMRをとっていない。電子配信を購入していたが、殆ど読むべき記事もなくなり、1年前に期限が切れた。なくても気にならなかったので、そのままにしていた。思えば、すべての記事・広告を舐めるように読んでいた時期があったが、当時は若かったのだろう。最近はアメリカの友人から連絡があると、その記事を送ってもらって用が足りていた。


p.10 Feb.2020MRp.11 Feb.2020MR この号のコピィを友人が送ってくれた。その記事には興味深いことが書いてあった。10ページのカブースの紹介には「HO scale」、11ページの子供向けアセラのショーティーには「HO gauge」と書いてある。要するに、前者は最近のスケールの製品であって、後者はHOゲージを走る玩具である。プラレールを進化させた程度の、子供向けである。
 これは以前から彼が指摘していたことであるが、
   HO scaleは1/87.1の意味、
   HO gaugeはゲージが 16.5 mmの意味
であることを、MR編集部はルールとしている
ということの証である。

 

 HOの本家本元といわれているアメリカでも、HO gaugeという概念が残っているわけだ。この概念は O gauge、O scale の概念と同じである。
 
 「HO gaugeは和製英語」などと大々的に発表していた人が居たが、それも削除され、平和が訪れたのかと思っていた。
 ところが最近ある友人から、「ゲージ論の決着はつかないのですか ?」という質問を受けた。それには少々驚いた。
 決着はついている16.5mmゲージはHOゲージである。これは明確に示されている。HOスケールというのは、最近は 1/87.1であるようだが、これも戦後ずいぶん経ってから、ようやく決まったことも、文献が示している。今回示された記述は、その実例に過ぎない。
 いまだに情報操作が続いているとしたら、由々しき事態だ。



dda40x at 02:21コメント(1) この記事をクリップ!

2020年02月11日

慣性

 昔は駅ごとに貨物取扱があって、何輌かの貨車が止まっていた。日通の倉庫もあり、貨物用に起重機(古い言い回しだ)もあった。貨車移動機もあって、入替をしていた。押された貨車は切り離され、200 mほど先まで滑って行った。途中で係員が飛び乗って、足でブレーキを踏んだ。
 子供のころ、それがやりたくて同じような線路を敷き、軸受に油を注して押したが、全く走っていかない。父に聞くと、「はずみ車を入れれば何とかなるが、お前にはまだ無理だ。」と言われた。

 おもちゃの自動車を押した。いわゆるフリクション・ドライヴである。床に押し付けて前進させると、ぴゅーと走っていく。なるほどとは思ったが、これを全ての貨車に付けることができるとは思えなかった。

 要するに、模型の慣性はとても小さい。1/48なら、慣性による滑走距離も1/48になるということは、以前示した通りである。小さな体積に詰め込んだものにエネルギィを蓄え、見かけ上の慣性を表現するのは、このはずみ車以外ない。DCC運転では、ある程度の慣性表現ができるが、それは電気的に作られた見かけの慣性である。物理的な慣性の方がはるかに実感的である。
 幸い、高効率のウォームギヤの逆駆動により無音で増速でき、チェインでさらに増速できたので、比較的軽く、また、小さくまとめることができた。

 テンダはオリジナルで1.3 kgある。砂鋳物の台車であってかなり重い。それに丈夫な支持台とはずみ車が付いているので2.4 kgほどである。補強には材料を100 gほど使った。重くないと摩擦力が稼げないが、重過ぎると摩擦力が増え、チェインに負担が掛かる。

 テンダの先台車は、2軸から動力を採取している。一方、5軸台車の方は4軸から動力を採取しているので、後者のトルクは2倍である。後部のチェインには前部の2倍の張力が掛かる。ここにはスペイスがあるので、いずれスプロケットを増設して、2本掛けにする。そうしないと、加減速の時のチェインの音を小さくできない。

 こんなに小さなフライホィールなのに、回転速度が大きいので、蓄えられるエネルギィは大きい。機関車の起動時、テンダ無しなら1.3 V、75 mAで動き出すのに、4 V 0.80 A必要だ。非常に重い列車を引っ張っているかのようだ。もちろん動き出したら、ほとんど電流は喰わない。
 このフライホィールは570 gほどしかないが、170 kgほどの錘と同等の慣性を持つ。大人の男性2人強の静止質量が、摩擦の無い台車に載っていると思えば良い。出発時、ある速度に到達するまでの間、かなりの時間、力を入れて引張り続けなければならない。高校で物理を習った時、F = ma を実感させる実験を見たことがあるかもしれない。重い物を早く加速するには、大きな力が必要である。細い紐で引張ると、切れてしまう。
  
 この模型で、その紐に相当するのはチェインである。初めの作例よりフライホィールを小さくしたのは、全体を軽くして摩擦力を減らし、トルクを制限する必要があったからである。元のままではチェインは、いずれ切れると予測された。それほど、この慣性は大きいのだ。

 慣性モーメントの計算は久しくやったことがなく、 かなり手間取った。
S氏やT氏の助けもあり、慣性の値を確定させることができた。当初の筆者の計算値は、10%ほど小さめであったが、加速時のチェインの張力は、見当が付いたので質量を小さくした。作品が戻ってきたら、チェインの補強をするつもりだ。ここを歯車にすれば良かったのに、との能天気なご意見も戴いたが、それでは事故時に修復不能なダメージを受ける。工作機械にベルト伝導が用いられているのと同じである。チェインは、電気器具で言えば、フューズの役割も持っていることになる。 

 走行状況を Youtube にUPした。とりあえず英語版だけである。 

dda40x at 02:11コメント(3) この記事をクリップ!

2020年01月22日

鳥羽給炭所

 もう60年以上昔の話だ。親戚が居たので、志摩半島に年に一回は行った。
 名古屋から亀山までの湊町行き快速列車は、たいていはC51と C57の重連だった。快速は、亀山までの60 kmがちょうど1時間で、表定速度は60 km/hである。単線での蒸気列車としてはかなり速い。快速用の機関車は磨かれて、輝いていた。
 亀山からはC51の単機が牽いた。それも快速列車だった。姫路から来る快速もあった。伊勢を過ぎて鳥羽までは、平坦線であって軽やかに走った。当時は伊勢まで行くのでも、国鉄の方が近鉄の中川乗り換えより、ずっと早かった。


 筆者の世代は、蒸気機関車が全速力で走るのを見た最後の世代であろう。蒸機はノロいと思っている人が多いだろうが、決してそんなことは無かった。速い乗り物の代表だった。筆者の父親の世代はもっと速かったのだ。蒲郡駅で上り下りの特急がすれ違うのを見るのが楽しみだったそうだ。どちらもC53で100 km/hをはるかに上回る速度であったと聞いた。蒲郡駅はどちらからも下りで谷のようになっている。 
 

 参宮線の六軒駅で大事故があり、機関車が証拠物件なのか、長く放置してあった。ブレーキの構造が重連仕様でなかったのが原因らしい。アメリカの機関車は重連用のブレーキ管を持っている。 

 当時の国鉄鳥羽駅はそこそこに大きな駅で、貨物も扱っていた。三重交通志摩線では貨物も扱っていたし、鳥羽港で陸揚げした砂利置き場もあった。プラットフォームは1本しかなく、到着列車は海側に着くことが多かった。その窓からは転車台が見え、給水タンクも目の前であった。接続電車まで時間があると、客車の窓から機関車の動きを見ることができる。
 切り放された機関車は軽やかに走って転車台に向かい、転向する。水をたくさん呑んで、前後に走り、ポイントを渡って先頭に着く。

 ちょうど目の前に機関車が来た時、機関士が大きな声で叫んだ。
「おーい坊主!見てろよ。」
 機関士はスロットルを少し強めに引き、動輪をしゅるしゅると一回転させて発進した。それは禁止されているはずであったが、見せてくれたのだ。単機でも動輪がスリップするのは初めて見た。単なる格好つけであるが、少年の眼には焼き付いた。その後、機関車は列車の先頭に行って停止するが、その時もブレーキを使わずに、動輪を逆回転させて停めた。実に見事なスロットルさばきで、機関車が止まる瞬間に動輪も止まった。機関士は満面の笑顔で、どんなもんだい、という顔をした。こちらは飛び上がって喜んだのは言うまでもない。

 その時の情景は鮮明に思い出される。いつかあんな動きをする模型を作ってみよう、と思ってから50年以上経つ。今それが完成したのだ。
 列車を牽いている時にスリップさせることは容易だが、単機では不可能だったのだ。

 
 
 T氏から、このウェブサイトを紹介戴いた。元機関士の方が公開している。写真は自由に使ってよい、とあるのがすごい。また、別の角度からの写真を紹介するウェブサイトもある。懐かしい風景だ。近鉄が鳥羽に乗り入れて、志摩線も買収された。標準軌が賢島まで続いたので、貨物は廃止された。以前は電車が貨車を牽いていたのを見たことがある。

19670224tobaekimeikanban 国鉄の旧鳥羽駅には真珠と海女の看板があったのはよく覚えている。日和山(ひよりやま)のエレベータにも乗った。天気が良ければ富士山が見えるとあった。しかしそれは、鳥羽駅が火事になって延焼してしまった。
 写真は上記の藤田憲一氏のサイトからお借りしている。

dda40x at 01:22コメント(14) この記事をクリップ!

2020年01月16日

続 ”Super 800”

 問題はテンダである。キャブが伸びた分だけ、台枠を伸ばさないと連結できない。今まで ストーカ・エンジンが入っていた部分は、水と重油で置き換えられる。容量は 23,500 gals から、25,000 gals(94.5㎥)になる予定だったとある。体積を計算すると、既存のもので賄える大きさであったので、手を入れたのは、前部デッキだけである。機関車とテンダの長さは 12 mm(580mmほど)長くなる。薄い板では壊れるので、4 mmの板から削り出して、銀ハンダで付けた。そのすぐ後ろの床に大きな開口部があるので、太い材料で枠を作り、耐衝撃性を持たせた。オリジナルより丈夫になったはずだ。

 友人は、例の慣性増大装置を入れよ、と言った。その点はなるほどと思った。他に例がない。コンテストでそれを評価させることができれば、大きな前進だ。5軸イコライザは作ってあるが、作動の自由度が大きすぎて、素人が持つと外れてしまうことが考えられる。個別スプリング式で行くことにする。コンテストの審査会で壊れてしまっては、元も子もないからだ。冒険は避けたい。

Flywheel (1) フライホィールの材料は入手してあった。廃金属回収商で買った外径 47 mm、内径 20 mmの砲金の中空材である。水道部品製作用の連続鋳造品で、均質である。長さが300 mmほどあるので、旋盤のチャックに銜えて心を出し、内外を削った。同心であるから、フレはない。中削りは神経を使うが、正確にできた。質量は980 g  である。支持は5 mm軸で、ラジアルとスラストのボールベアリングを付けている。本当はもう少し太くしたいが、例の撹拌抵抗のことを考慮して、なるべく細くした。
 テンダ中にはボールベアリングが、46個使われている。


dda40x at 01:16コメント(0) この記事をクリップ!

2020年01月10日

500時間

 昨年末、ある機関車を作った。正味2箇月しか時間が無かったのだ。500時間で作らねばならなかった。各単元分野の仕事は、大体の時間が計算できるので、工程表を作れば、製作可能かどうかが分かる。

 9月末に、親しい友人からその話が持ち込まれた。コンテストに出せ、というのである。筆者のコンテスト嫌いは知られていて、過去一度も出したことが無いし、今後も出すつもりがなかった。友人は、
「このまま逃げ切るつもりか。お前は作品を出すべきだ。世界の模型界に影響を与えた過去の作品群も、コンテストの入賞作であったら、日本国内でのインパクトがさらに大きかったはずだ。コンテストに出てないから、山崎氏が意図的に無視したので広まらなかった。」と言った。
「でもさ、それを審査する人達の資質の問題があるんだよ。外観ばかりじゃないか。自宅にレイアウトを持っていないような人が審査するんじゃ、意味は無いよ。こちらは最高の走りを実現することが目的だ。外観なんてそこそこに出来ていれば十分だと思っているのだからね。
 過去の実際の入賞作には、構造が根本的に間違っている作品が多々あったことは前にも話しただろう。審査する側に能力が欠けていることは明白だ。そんな人たちが審査するコンテストなんて、意味がない。」 
と蹴飛ばしていた。
「それじゃ、内容を審査するように、説明をちゃんと付ければよい。実際に走って見せて、驚かせればいいんだろう?」と畳みかけられた。

 その後主催者側に通じている人に聞くと、運転して審査するということだったので、それならやってみるか、ということになった。


 作ろうとしているモデルは、実際には製造されなかった機関車なので、どうあるべきかを考えねばならない。資料は集めてある。関係者からの情報を精査し、ありうる形にしなければならない。その機関車は、当時の最先端の技術を採り入れた史上最強力の機関車であった。誰も模型化していない。雑誌に紹介記事が載るのだが、例によってBenett氏の絵があって、いくつか間違いが含まれている。蒸気機関車の構造が全く分かっていない人が描いた絵などには価値はない。

 その話をすると、
「それじゃちょうど良い。むこうが『恐れ入りました。』というものを作ればいいんだよ。」
とけしかけられた。

 さて何を作ったのだろう。正解者は今のところお一人である。かなりヒント発表されているのだが。

dda40x at 01:10コメント(2) この記事をクリップ!

2019年11月22日

中澤 寛氏の死去

 中澤 寛氏の奥様から、訃報を受け取った。あまりにも早く、ただただ驚いた。博物館の完成時には来て戴けるとのことで、お互いに楽しみにしていた。

 中澤氏は2年ほど前から体調を崩され、時々入院したりしていたが、とても精力的に活動されていた。筆者とは頻繁にメイルをやり取りし、例のTMS問題では、今後改善されるのか、ということを心配されていた。

 先月末に、「マイルが貯まっているので、点滴の合間に、来月、Empire Builder大陸横断弾丸ツアーをする予定です。Seattle -> Chicago、金曜発で水曜夜に帰ってきます。往路はSFO乗り継ぎで、電車の乗りつぶしもしてきます。」との連絡があった。その土産話を楽しみにしていたところだ。
 類まれな、手先の器用な方で、アイデアを形にする天才であった。お互いに情報交換をして、楽しい時間を共有できたのは、筆者にとっても幸福なことであった。

 中澤氏は、「走る鉄道模型」を実践された方だ。とはいえ、ディテールの表現、ギミック、塗装は素晴らしく、バランスの良い模型を作られた方である。
 ご冥福を祈る。

dda40x at 00:22コメント(5) この記事をクリップ!

2019年05月27日

続 模型を走らせるためには

 船の中で友人に、日本の模型界の話をした。時間があるから、二日掛けて説明をした。メモ用紙を数十枚使って、細かく説明をしたのだ。彼はよく理解したと思う。並の日本の模型人の数倍、よく分かった筈だ。彼はイギリスやドイツに居たこともあるから、現地での模型事情も非常によく分かっている。日本には2回しか来たことが無い。

 彼の答は本質を突いていた。
「あまり走らせていないのだね。走らせている人は走りを確保しなければならないから、そのような些末なことは無視するね。(It has to be subtle.)」
 この些末なこと、無視しても良いこと、という言葉が出て来たことが、彼らの姿勢を表している。"subtle" という言葉には、”微妙” とか、いろいろな意味があるが、ここでは些末という言葉が当てはまる。これは本人に確認したから間違いない。

「走らせずに、机の上の短い線路に置いて、眺め廻すのだろうね。妄想が膨らんで、『こうするべきだ、これではけしからん』
ということになるのだろう。実は、自分もそうだった。君に会う前はね。
 君が3条ウォームのドライヴを開発した。後にLow-Dを実現した瞬間に、そんなものはどうでも良くなったんだ。」

 彼はProto48というグループに出入りしていた。すべてを1/48にするという狂信的グループである。よく走らなかったので、彼は疑問を抱いたのだ。車輪踏面に塗料が付いていることを指摘したら、愕然とした。無駄なことをやっていることに気付いたのだ。
「そうだよ、48倍したらとんでもない状態だ。タイヤに旋盤の挽き目が見える時点で、もう何をやっても同じだ。大体ね、車輪の直径が左右で3/1000インチも違うんだ。だからね、片方に寄って走るんだよ。これではだめだ。」
と言う。筆者のLow-Dを見たら、もうこれしかない、と脇目も振らず採用に踏み切った。Low-Dは、航空機部品を作る工場で作られているから、精度は一桁上である。
 彼は模型の「走り」を第一に考える人である。そういう意味では、筆者の良き理解者の一人だ。レイアウトの仕様はすべて筆者の様式を踏襲した。静かで、脱線せず長編成が可能だから、とても喜んでいるし、友人たちに自慢している。

 彼のように走りを中心に考える人にとっては、ゲージが広いとか、タイヤが厚いなどは些末なことなのだ。自宅にある程度の大きさのレイアウトを持たず、車輛のみを玩ぶ人たちは、線路幅、タイヤ幅に興味が集中するのだ。レイアウトを持ち、脱線しないように走らせようと思えば、そんなことを言ってられなくなる。そういう経験が少ないのではないか。ファンタジィの世界に閉じこもって、現実を直視することから逃避しているのかもしれない。

 ある方が耳打ちしてくれた。
「そういう世界の人たちは、撮り鉄から入った人が多いのです。」
 これには驚いた。そうかもしれない。模型工作から入った人は、ゲージのみに捉われるのはまずい、と直感的に気付くものだ。現在ではお金で買うことができるから、いくつか買い揃えて並べることができる。すると欠点には気付かず、並べた時の満足感が大きくなるのだろう。ものを作る経験が少ないと、そういうことになるかもしれない。 

dda40x at 05:27コメント(0) この記事をクリップ!

2019年05月25日

模型を走らせるためには

 以前も書いたが、模型は本物とは異なる。

 曲線を通る列車がなぜ曲がるのか、という単純なことさえ、本物と模型は大いに異なる。本物は遠心力が大きいのでフランジが当る。フランジの摩耗は保守上、大切な点検箇所だ。しかし曲線半径が相対的に小さい模型でも、設計手法によっては、それを避けることは可能である。稚拙な設計では当たる。RP25は確実に当たっている
 本物と模型とでは材質が異なるし、速度が異なるので、摩擦係数が異なる。人も乗っていないのだから、乗り心地は考える必要はない。本物業界の人の中には、本気でそれを主張する人がいるが、全く考慮に値しない。

 模型では遠心力は無視できるほど小さい。カントの効果は無いに等しく振り子電車(自然振り子)の実現は不可能である。

 模型の曲率は大きく(急カーヴである)、線路は実物に比べてずっと不整である。路盤は実物に比べてはるかに堅く、サスペンションは実物の目的とは全く異なる目的のみの為に存在することになる(脱線防止、集電向上のためである)。人は乗っていないから、バネによる乗り心地向上など考慮しない。

 鉄道模型はそのような条件下で作られてきた。ゲージはいくつかに集約され、フランジ厚み、高さは必然的にある大きさを使わざるを得なかった。したがって、タイヤはある程度の厚さを持たせないと、フログで落ち込んでしまう。
 そういう中で多少はファイン化が進み、現今の規格ができたわけだ。要するに、完全縮尺ではうまく行かないことが多いから、現実路線を採っているわけだ。

 模型人の中で少数の人たちは、それでは飽き足らず、より実物に近いものを欲しがり、既存のものの一部だけを改変した物を作り出した。最初はゲージのみだったが、徐々にフランジ形状、タイヤ厚みを変えていった。総合的な力がある人が指導者になり、線路ゲージを頒布し、車輪も提供できれば問題はなかったはずである。しかし、それらの一部が欠如している場合が多く、出来たものの中には、直線の往復しかできそうもないものもあるようだ。

 模型は実物の完全縮尺では機能しない。これは、工学を修めた人ならだれでも知っていることである。飛行機はその点顕著であり、レイノルズ数という概念が導入されている。その他の場合でも、縮小されたものは実物の挙動とは全く異なる動きをする。それなのに、線路幅だけは実物に似せたいという欲求に負けてしまう人が、ある程度の数、居る。そういう人は、フランジ厚さ、車輪の厚さは考えないらしい。要するに、理想的に、「静止した模型」を考えているだけではないか。

 走る模型では、いろいろな点で「インチキ」を認めざるを得ないのである。それが大人の考え方である。部分的に「インチキ」を排除しても、破綻することが多いし、その労力たるや、他所事ながら心配するほどである。「実物通り」という言葉に拘るのは考え物であるということだ。過去に、実物通りと自慢する模型をいくつか見たが、素晴らしいと感じたものは無い。見かけは良いが、挙動がおかしいのである。車体は堅く、しなやかには走らない。
 
 先月、2週間ほど船に乗っていたので暇があり、アメリカ人の模型観と、日本人の模型観との差を、友人と討論しながら考えた。

dda40x at 05:25コメント(1) この記事をクリップ!

2019年05月23日

続々 Empirebuilder氏からの最終意見

 日本のゲージ論は、以上のように、思い込み、恣意的な歴史の歪曲をベースにすることが多く、意味を成しません。山崎氏が主役のゲージ論は、もう必要ないのです。私が歴史は関係ないと言ったのは、そういう意味です。 

 今回のきっかけとなったファインスケールについてですが、finescale としてまず書きます。初期の鉄道模型はおもちゃ、TOYであると書かれています。それが一歩進んで、スケール志向が出てきます。ゲージが主であった時代に縮尺が規定され、車体の大きさとゲージの関係が重要視されてきました。NEM規格やNMRA規格はこの集大成として作られたわけです。ただ、これでも縮尺通りになっていないとして、さらに追及することにより finescale が生まれてきました。 

 NEMNMRA規格にも finescale 規格がありますが、現実問題としてきちんと製品化された製品はないと思います。したがって、一部の技術のある人たちが、すべて自作する覚悟で作るための規格だと思います。線路ではポイントが特に問題となります。また曲線もHOで半径数メートルといったサイズで、とても一般的とは言えません。現状では夢物語に違い規格ですが、日本では、ゆがんだ形で車輪のみ、エセfinescaleのような真鍮製品が作られています。線路の自作を強いるような製品を、なぜ作るのか疑問です。原因は日本には規格がない、ホームレイアウトは夢で年数回体育館サイズのレイアウトで走らせることがせいぜい、ということが原因と思います。つまり、鉄道模型として楽しむことを、かなりの部分諦めている状態です。そのため、走行用にはHO規格に沿ったプラ製か、Nゲージの選択となっているようです。本来の鉄道模型からすると、ゆがんだ状態と思いますが、日本という特殊な国ならでは、といったところでしょうか。いずれ高価すぎる真鍮製品はいずれ消えると思います。と言うより生産量を考えると完全な絶滅危惧種と言えます。プラ製品が主流になれば、ホームレイアウトも増えるかもしれません。プラ製品には、ぜひNMRA規格に沿ってもらいたいものです。 

ゲージが縮尺通りならば、ファインスケールである。」との解釈は、dda40x氏のおっしゃる通り、誤解のもとです。雑誌が使っているのを知って、その見識を疑います。雑誌の編集者には、もうプライドもないのでしょうか。カタカナ化すると、英語本来の意味を失う好例でしょう。 

 HO gaugeが和製英語と信じている方の説得はできません。ただ1/80HOであると考える根拠がある、と知って戴けたと思います。自分には、もう関係がないと思えることも書いてきましたが、これは一種の将来への警告です。このままでは、将来大きな問題が生じます。



dda40x at 05:23コメント(2) この記事をクリップ!

2019年05月21日

続 Empirebuilder氏からの最終意見

 互換性のない、勝手な規格の製品が、日本でかなり出てきました。規格に対する理解のないモデラーを相手にしているためなのか、メーカー自体が規格を知らないのかはわかりませんが、それを市場が受け入れているのが不思議です。車輪にはエンドウと日光規格、伸縮カプラーも互換性のないものが多く出ています。製品の選択肢が増えて喜んでいるのでしょうか。車輪も薄くなっていますが、それに適合する線路はありません。トラブルを指摘するコメントも多く、問題になっているようです。私は使いません。シノハラが廃業した後、どの線路を使うのでしょうか。ちなみにこの薄い車輪は、もちろんNMRA規格のHOではありません。規格に関しては日本の模型界は原始時代に逆戻りしたようです。 

 「1/80HOではありません」について考えましょう。ONについては複数の縮尺を認めています。ところがこの主張によれば、HOは縮尺、1/87を意味するので複数の縮尺は存在しないというものです。HOのオリジナルはメルクリンですが、16.5mmゲージが決まってから、いろいろあって、1/87 に落ち着いたという文献が複数ありました。またHはハーフで、1/43.5 のきっちり半分と書かれていますが、1/43.5 は英国向けの特殊スケールです。日本型HOが 1/87 ではなく、1/80 を採用したのと似たような理由で採用された縮尺です。わざわざ特殊なスケールを引き合いに出していますが、オリジナルの 1/45 はどこに行ったのでしょうね。またHO gaugeは和製英語と書かれています。自説を主張するために、とんでもないことを書いているのです。HOゲージの使われ方を知っていたため、HO gaugeと言う英語が存在することを否定せざるを得なかったのでしょう。また多くの文献でHOはおよそOの半分という記述がありますが、これも否定しています。
 ところで、イモンの通販用のリストでは、
KadeeカプラーをHOではなく 1/80 に分類しています。イモンは、KATOの箱に「HOと書くな」と言っていますが、それならKadeeにもクレームを付けなければいけませんね。エンドウの線路は 1/80 で、KATOの線路は 1/87 です。「1/80 HOではありません」と信じる方は、納得されているのでしょうか?

 よく読めば、自社製品のPRのためでしたが、多くの人がこのようなプロパガンダを信じてしまうことは恐ろしいものです。                        

 16番ゲージでは、山崎氏についてよく引用されていますが、氏が故人となったため、好き勝手に引用されている印象です。氏は、とうとう規格は作りませんでした。16番ゲージという言葉は規格のように使われていますが、公式な規格でも何でもありません。16番に恣意的に意味を持たせることはやめるべきです。メーカーが規格を作るなど許せませんが、立場上適任者であった氏が、どうして規格を作らなかったのか、聞いてみたい気がします。

 個人的には、OOの規格が実質的にHOと同じで、日本型1/80HOも、HONMRA規格と同じ規格を作ることになり、その必要性を感じなかったのではないか、と推測します。ただ1/80HO規格を使用する、と明言しなかったことは大失態であったと思います。エンドウ規格、日光規格など、メーカーが勝手に自社規格を作り出す原因になっています。誰がこの2種の規格で利益を得るのでしょうか。メーカーには絶対に規格作りをさせてはいけない好例です。メーカー頼みの出版社の限界なのでしょうか。
                        (続く)

dda40x at 05:21コメント(0) この記事をクリップ!

2019年05月19日

Empirebuilder氏からの最終意見

 今回のやりとりで、いろいろなことを知ることができました。最新のNMRA規格をベースに説明してきましたが、そもそも規格すら知らない方が多いことに驚きました。規格がないと思っている方もいるようです。それだけ規格が浸透している、と思えば良いかもしれませんが、現状は、声の大きい人の言葉が規格のようになっているようです。

 私は規格通りにやってきました。現今の規格外れの製品を買うこともなく、部品も中古で入手できるなど、問題には直面していません。ただ、1/80HOではありません」との主張が、根拠もなく流布され、信じる人が出てきたことに違和感があります。何を言いたいのか、最初はわかりませんでした。私には直接の利害関係はありませんが、他者を否定する必要はないはずです。その怒りが今回のコメントの始まりとなりました。

 さて、規格についてまとめてみます。NMRANEMは乱立する規格をできるだけまとめて、互換性を担保するために作られました。それゆえ、各社の製品でも、規格通りならばいっしょに楽しめます。規格がないと思っている方は、ただ規格を知らないだけ、と言えます。通常米国の雑誌の製品の紹介では、規格に合っているか書かれています。一番重要なことは、規格品は価格が安いことです。これだけでも規格を重要視する価値があります。
 何度か説明しましたが、規格は車輪、線路、車輌限界が最も重要と考えています。縮尺については、車輌限界内であれば十分と考えます。最新のNMRA規格を参考にしたのはこの理由です。日本型の古典機などの縮尺は、その作者のセンスで決めればよいと考えます。規格で縛るのは野暮です。もともと鉄道模型は、スケール通りにはできないことを考えれば、スケールにあまりこだわる必要はなく、設計者のセンスのほうが重要と思います。規格は最小限がベストです。1/80Jスケールとよぶ方は、1/75で設計した古典機を何スケールと呼ぶのでしょうか。スケール通りに鉄道模型ができればノーベル賞ものです。最近はスケール重視が言われていますが、フログ上を車輪が落ち込むことなく、スムーズに走れることは、より大切です。NMRA規格の最初のページに書かれています。もう一つ言えば、国土の広い米国でもHO入門用はR450ですが、狭い日本でR750とはおかしくありませんか?

 一部で車輌限界と建築限界についての言及がありますが、今回の件では、建築限界は直接には無関係です。車輌限界は車輌の断面の寸法が示されます。線路が直線で平らであれば、

車輌限界=建築限界

ですが、曲線や勾配がある場合は建築限界が必要になります。ストラクチャーなしのレイアウトであれば複線間隔だけで済みますが、レイアウトにホーム、架線柱、トンネルなどがあれば建築限界が必要です。建築限界を設定するためには実物、スケールは無関係で、使用する曲線、車輌の種類とその構造について決めなくてはなりません。現実的には米国のオート・ラック、関節型機関車が建築限界測定車の役目を果たします。

                         <続く>



dda40x at 05:19コメント(0) この記事をクリップ!

2019年05月17日

過去のゲージ論

 寄せられたコメント(公開されていない)には、山崎喜陽氏の言葉の引用が多い。最近、手を動かせないので、博物館の蔵書を少しずつ点検しがてら、目を通している。山崎氏の言葉は、時が経つにつれ、徐々に変遷している。一貫性がなく、その場しのぎとしか言えないような表現もある。このような現実を踏まえると、山崎氏の言葉を基に考えるのは、適当ではない。Empirebuilder氏が「歴史は意味がない」と言ったのはこのことである。

 Empirebuilder氏のコメントには、やや皮肉な表現や、比喩表現があり、真意を理解できない人も多かったようだ。今回、氏と打ち合わせて、表現を大幅に変え、分かりやすく発表することにした。
 昔国語の時間に、「筆者は何が言いたいか。」という設問が多くあった。これは意外に難しいらしく、枝葉末節に拘る例(当然✖が付く)をたくさん見て来た。今回もそうかもしれない。
 最終的な意見であるので、筆者の意見を入れて、なるべくすんなり頭に入るように書き直して戴いた。

 先回の記事に対するコメントの中には、山崎喜陽氏と松本謙一氏が会見した時の様子を、その現場に居たような書き方をした方もいらしたが、その様なコメントは、とても採用するわけにはいかない。「歴史は作られる。」という言葉があるが、まさにそれを地で行くような話である。どうして、共産主義国家で書記長が最高位にあるか、という意味がよく分かる。

 コメントの採否は筆者の一存である。明らかにおかしなことは載せない。それに腹を立てる人も居るが、お門違いである。そういうことは、ご自分のウェブ・サイトを立ち上げて展開されるのが、筋であろう。

 ここからは客観的な話である。鉄道模型は、他のホビィとは根本的に違う要素を持つ。それは線路の上を走るということである。
 線路を100%自分で作れる人は稀有であろう。市販品の線路を購入するのが、現実的である。車輪についても同様で、参入者はまず既製品を購入するであろう。ということは、多くのメーカが、様々な製品を出しているゲージは強いということだ。
 今回シノハラが廃業して、困ったのはどのゲージか、ということを考えてみよう。Z,N,HO,O は困らない。手に入れようと思えば世界中のどこかから、良質な線路が手に入れられる。その他のゲージは困るだろう。特に困るのは日本型に特化したゲージだ。12 mm、13 mm、24 mmは他から手に入れるのが難しい。たとえゲージが合っていたとしても、枕木が異なると気分が良くないのだろう。

 On30という模型がある。16.5 mmの上を、1/48 のナロゥが走る。初め、それが発売された時、一過性のものだろうと思っていたが、アメリカでは一大勢力になった。既に、On3は吹き飛んでしまいそうな勢いである。まさに「既存ゲージは強い」である。

 最近は3Dプリンタがあるから、できないことは無いだろうが、枕木を自作するのは、コストの面では難しい。 


 Empirebuilder氏から、最終的な意見が届いているので、3回に分けて掲載する。
コメントはその後でお願いしたい。

dda40x at 05:17コメント(2) この記事をクリップ!
Recent Comments
Archives
Categories
  • ライブドアブログ