化学

2017年02月25日

顔料

UP caboose このところ、黄色塗料の使用頻度が多い。この色だけは、フロクイルの塗料に敵うものはない。隠蔽力が抜群である。一回塗りで、下地の色を完全に隠せる。
 隠蔽力は、顔料粒子の屈折率の大きさに関係がある。ダイヤモンドが良く輝くのと同じで、屈折率が高いものは隠ぺい力が高い。この色は硫化カドミウムの色である。カドミウム・イエロゥだ。クロム・イエロゥ(クロム酸鉛)とは少し色調が異なる。

 最近カドミウムに対する風当たりが強く、多分そのせいでフロクイルは廃業してしまった。飲むものではないのだから、問題ないのだが、風評というのは恐ろしい。化学への理解がない人はカドミウムという言葉だけで悪いものと決めつけている。硫化カドミウムはほとんど水に溶けない。
 こう書くと、「少しは溶けるのではないか」と勢いづく、いわゆる自称環境保護派の人が多いが、その程度の濃度は生物にはむしろ必要な濃度である。カドミウムは人類にとって不可欠元素であることを知らないのだ。これはカルシウムの代謝に大いに関係がある。カドミウム濃度が高いと、異常を起こし、骨折の原因になる。これがイタイイタイ病であった。
 それはカドミウムイオンが水に溶ける形で流出したことによるものであって、硫化カドミウムとは直接関係がない。硫化カドミウムは酸にも溶けにくいので、酸性雨の降る環境でも安全である。厳密にカドミウムを制限するのならば、道路の黄色の線にも硫化カドミウムを使うことを反対するべきなのに、それは誰もしない。ドイツはそうしているらしいが、結果として間違っている。 

ATO-912-1-2 次はこれを塗ろうと思っている。この写真はAtlas社のカタログからお借りしている。デカルはかねてより用意してある。他にも5台のゴンドラ(無蓋車)が待っている。 

dda40x at 02:25コメント(3) この記事をクリップ!

2017年02月15日

EJ&Eのboxcar

EJ&E2 この貨車の色について画材屋で調べたところ、ぴったりの色があった。
 viridianは緑の顔料である。水酸化クロムのことだ。クロムと言っても、3価クロムで、安全である。
 昔のペンキの顔料は特定の色しかない。それを混ぜて使うこともあるが、概してそのままを塗っていた。南海電車の緑は、まさにこの色である。

EJ&E ビリジアンの顔料を手に入れなければならない。なければ作るつもりだったが、友人が「『ガイアカラー』という塗料は純色と言っている。要するに単色の顔料だけの塗料ではないか。」と言う。
 早速買ってきた。試し塗りをすると近い色だ。修正を施す必要はなく、そのまま塗っても良い範囲にあると結論した。

 思い切って既存の文字、図案だけをマスクして塗った。結果は上々で、艶だけが異なる。
 後で適当に艶を消し、軽いウェザリングを施せば、十分である。Harmonのところから来たときは、どうなるものかと心配したが、意外と簡単な方法で解決した。
 本物の色はかなり褪せて、白く見える。それもよいかもしれない。この貨車が、当鉄道で最後のアサンの貨車である。厳密にいうとAthearnタイプである。製造はシカゴのオール・ネイションである。この種の模型は戦前からあったのだが、それを洗練した形にまとめたのがアサンである。
 木箱の表面(屋根、妻、側面)に薄いブラスの板を貼り付けて作られている。触ると冷たくて、金属の触感がある。木箱はすべて長持ちするエポキシ樹脂で固めてあるから、100年以上持つであろう。もともとの設計では側板などを細い釘で留めるようになっているが、徐々に緩むことが多いので、スーパーXで貼り付けてある。十分な補重がしてあるので、走りは重厚である。 

 EJ&EはElgin, Joliet and Eastern鉄道である。シカゴの内部を通らず回り道をすれば、却って早く着くという路線だ。Harmonにとっては思い出深い鉄道であったと思う。だからこそ早く色を塗って、奥さんに報告したかったのだ。上記リンクの写真は昔の色の機関車で、現在はオレンジ一色である。

dda40x at 02:15コメント(2) この記事をクリップ!

2016年08月21日

Russian Iron の表現

 この方法は膜が薄いところが良い。電着した膜は加熱によって硬化させる。おそらく、熱硬化性樹脂(エポキシ系か)を用いている。低温ハンダを使うと、ばらばらになるかもしれない。
 常識的にはマイナス極に析出させるはずだ。陽極には溶けにくい金属が良いが、ステンレス板で十分だ。電圧はそれほど問題にはならない。適当に調節すればよい。模型用の電源で十分だ。電流は少ない。

 この方法では、色が自由に選べるので、黒染めの代用になるかもしれない。あらかじめニッケルめっきを施すと色が良くなるだろう。アメリカの機関車の一部にはラシアン・アイアン風の緑色のボイラ・ジャケットがある。それも簡単に再現できるはずだ。 

 先回の黒い被膜の機関車も、この方法で仕上げる方法が可能だろう。 塗装に依らない機関車の仕上げの時代が来るかもしれない。
 HO以下のサイズなら、全体を容易に液の中に沈める ことができる。凹凸があると、凹んだ部分は電界が小さくなるので、やや不利だが、それも工夫によって克服できる範囲にあるとみている。相対する電極をとがらせて、その近くに持って行けばよいのである。電界を狭い範囲だけ大きくするわけだ。

dda40x at 08:21コメント(5) この記事をクリップ!

2016年08月17日

Russian Iron

Greenfield Village (10) ラシアン・アイアンの処理の仕方の説明を探しても、なかなか見つかるものではない。もうすでに誰もやっていないからだ。
 博物館での再生処理は秘伝の方法でやっているのだろうが、公表されているとは思えない。 古い文献を当たると、それらしいものが見つかる。
 筆者の祖父が使っていた金属便覧昭和25年版には、 400 ℃ で融解した硝石(硝酸カリウム)に清浄な鉄板を浸すと書いてある。
 硝酸カリウムの融点は 333 ℃ だから、それほど高くない。ハンダごての先の温度のほうが高い。るつぼに硝酸カリウムを入れて融かし、磨いた釘を入れると確かに酸化被膜が付き、青みを帯びた艶のある被膜ができる。高温の硝酸カリウムは徐々に分解して酸素を放つので、それが鉄に結び付くのだ。
 しかし、これを大きな鉄板に施そうと思うとなかなか大変だ。どういう装置でやっているのだろう。 
 
 出来たものを、油を付けてぼろきれで磨くと、さらに艶が出る。青い色は干渉膜の色だろうから、削らないように拭く程度だろう。昔の機械式の掛時計のゼンマイ・バネの色が近いが、あれはすぐ錆びてしまう。おそらく、緻密な膜ではないのだ。その点、ラシアン・アイアンは屋外で使っても大丈夫だ。

 模型に塗ってあるのをたまに見るが、艶消しになっていることがある。これは明らかな間違いだ。本物はピカピカだ。そうでないと錆びてしまう。塗装で再現するのは難しいが、銀塗装して磨き、さらに透明青塗料を掛けるぐらいしか思いつかない。プラスティック模型の世界には達人がいらっしゃるだろうから、テクニックを紹介してほしいものだ。

dda40x at 08:17コメント(4) この記事をクリップ!

2016年05月26日

oil stain

 オイル・ステインが浸み込んだぼろきれは、丸めておくと、とても熱くなる。要するに、空気と接触させて酸素が十分に溶け込んだ状態で表面積を減少させるから、熱が閉じ込められる。
 オイルステインの主成分の不飽和脂肪酸を含む油脂は、酸素と結合し、樹脂化する。その反応は、発熱的(exo-thermic) である。拡げてあれば、酸素はよく化合するが、その時発生する熱は逃げやすい。丸めると、中の熱は逃げられない。

 実際にやって、この現象を確認した。30分くらいでぶすぶすと煙が出てくる。発火するまでには至らなかったが、周りに燃えやすい物があれば極めて危険だ。アメリカの家具屋で見ていると、そのぼろきれをすぐに水に漬ける。たくさん溜まると拡げて乾かし、燃やしてしまう。砂漠の中であるからすぐ乾いた。
 一回ごと燃やせばよいのにと思ったが、油で濡れたものを燃やすと、炎が大きくなって危険なのだ。

 日本でこの種のオイルステインをあまり見ない。塗料と異なるのは顔料粒子の大きさと、fillerと呼ばれる塗膜構成剤の有無である。フィラは塗膜の厚みを作り出し、その膜内で顔料が特定の波長の光を散乱して色を出す。いわゆるペンキにはフィラが大量に入っている。ステインにはフィラが無く、顔料粒子だけになる。たまに染料も含まれている。binder 固着剤はフィラおよび顔料を固着させるもので、油脂や各種の合成樹脂等が用いられる。

 シンナに顔料を分散させることができたとしても、それを塗ると顔料が相手に載るだけで、触れば落ちてしまう。それを防ぐために、オイルステインにはバインダとして、酸素と反応して樹脂化する油脂を薄めて用いている。塗ると、揮発成分はすぐに蒸発し、残留した油脂が徐々に固まっていく。

 オイルステインだけしか塗っていない家具は肌触りが悪く、また、汚れが付きやすい。その上に厚い塗膜を構成するワニスを塗れば、美しい家具となるわけだ。 我々の使う枕木は触る必要もなく、艶消しのほうが良いので、上塗りをする必要はない。

 日本製のオイルステインは、油脂分が少なく、合成樹脂を主体としているらしい。すなわち、火事にはなりにくいようだ。

dda40x at 05:26コメント(0) この記事をクリップ!

2016年04月30日

ハンダ付けフラックス

 先日の記事で、飽和溶液を使うと跳ねないということを書いた。我が国では薄めて使うのが常識になっているようだ。

 40年ほど前、ある実験で、筆者は何を熱媒体とすべきかを調べていたことがある。例えて言えば、鍋の中に加熱したいものを入れて直接煮るのではなく、何かの液体を入れて、二重鍋で間接的に加熱する方法を調べていたのだ。
 水では100℃で沸騰が起こる。てんぷら油では200℃くらいまでは平気だ。それ以上になると、あまり良いものがない。危ないが、濃硫酸を熱媒体に使うと、300℃まで大丈夫だ。もっと高い物は、ハンダなどの溶融金属を使う。その中で塩化亜鉛飽和水溶液が320℃まで大丈夫だという文献を見つけたのだ。やってみると本当に沸騰しないが、ガラスのビーカはその温度では少し変形した。

 ハンダ付けは実質的に300℃以下で行われるから、跳ねないハンダ付けができる。ハンダは金属の隙間を埋め、完璧に付く。洗うのは水中で歯ブラシでこすれば完璧だ。飽和溶液は空気中の水を集めるから、徐々に薄まる。だからこそ結晶が下に沈んでいる上澄みを使うのだ。小さいスポイトを使って吸い出す。

電気機関車の作り方 このコピィは、山北藤一郎氏の「電気機関車の作り方」という本の一部である。水で薄めている。塩酸に金属亜鉛を溶かしているから、飽和溶液にはならない。そのままでも薄いが、さらに薄めてしまっている。
 どうもこの辺に薄めるという操作のルーツがありそうだ。いろいろ調べているが、濃いのを使うという記事はまず見ない。
 

dda40x at 04:30コメント(4) この記事をクリップ!

2016年04月06日

続 ハンダ付け用フラックスの仕組み 

 最近は塩化アンモニウムを含むものが出てきた。筆者はこれを入れることもあるが、入れないことの方が多い。塩化アンモニウムは分解しやすい化合物である。加熱によって200 ℃以下で分解してアンモニアと塩化水素になる。アンモニアは50℃以上では水の中に溶けていられないので、すぐに放り出される。すなわちアンモニア臭がする。アンモニアの分子量は小さいので、直ちに拡散し、どこかに行ってしまうが、臭うこともあるだろう。

 化学式を出すと拒否反応を示す人もいるので、日本語で説明する。

  塩化アンモニウム + 水   ⇄   塩化水素 + アンモニア↑

という、どちらにも進む反応(化学平衡)がある。高温ではこの平衡が右にずれる。そうすると、ガスが発生して(↑で示している)右辺の物質がなくなるので、右辺の物質(ここではアンモニア)を生み出す方向に平衡が移動せざるを得ない。すなわち塩化水素が生成するのでハンダ付けが容易になる。
 
 残った塩化水素は先回の説明のように、金属表面をきれいにするが、多少はガスになって飛び出す。すなわち、外でやるべきだ。室内では包丁が錆びたり、アルミ・サッシュが傷む元になる。塩化アンモニウムが入っているものは、とにかく多少臭う。 

 面倒なことをたくさん書いたが、塩酸の代わりにあまり臭いがしないものを使っているということである。
  

dda40x at 04:06コメント(2) この記事をクリップ!

2016年04月04日

ハンダ付け用フラックスの仕組み

 今野氏のブログでフラックスの話が出た。ご指名で少し解説をさせて戴く。
 
 ハンダ付けをするには新しい金属面を出さねばならない。そこに融けたハンダが接触すれば、合金化が起こり、金属結合ができる。以前にも書いたが、それはアメルガメイションであり、スズ特有の性質を利用している。
 新しい金属面が出ればハンダ付けが可能だから、酸化されやすいアルミニウムもハンダごての先でがりがりと擦れば、ハンダ付けが可能である。もちろんこの操作は融けたハンダの池の中で行わねばならない。すべての面を均等に擦って新しい金属面を出すのは、かなり難しい。そこで超音波などを当てて、酸化被膜を壊すわけだ。工業的にはこの方法を採っている。

 相手がブラスや鉄の場合には、ある程度の酸化被膜を取ってから、フラックスを塗ると、酸性であるから酸化被膜が溶ける。そういう意味で、塩基性のフラックスは考えにくい。通常の金属の中では、亜鉛、スズ、鉛程度しか塩基と反応するものは無いし、その反応速度も極端に小さい。

 プロは塩酸(塩化水素という刺激のある酸性の気体を水に溶かしたもの)を用いる。塩化水素という気体は水分子と強く結びつくので、 塩酸は高温でも塩化水素がかなり逃げ出しにくい。 しかし多少は飛び出してあちこちの金属類を錆びさせる。塩酸は金属酸化物をよくぬらし、ハンダが浸み込むのを助ける。
 塩化亜鉛はどうだろう。塩化亜鉛の飽和水溶液は、その沸点が300 ℃を超える。ということは蒸発しない。これを用いれば、ハンダ付けの時に飛び散ることがないはずだ。塩化亜鉛はわずかに加水分解して、酸化亜鉛と塩酸になる。このうちの塩酸がフラックスの効果を発揮する。酸化物を溶かして、新しい金属表面を出すのだ。塩化水素は少量しか発生しないし、直ちに金属酸化物と反応するので、飛び出す量は少ない。すなわちあまり臭いがしない。

 ここで大切なのは飽和溶液を使うことだ。ほとんどの方は薄めて使うとおっしゃるが、本当はそれは正しい用法とは言えない。 結晶が沈んでいる上澄みを使うのが良い。少量でよいのだ。薄めたものは沸騰するから、ビチビチと飛び跳ねて、周りのものが錆びる。沸騰して水が飛んでいくと、飽和溶液になって安定化する。すなわち薄めると、大半が無駄に飛んでいくのである。飽和溶液を使うと、跳ねないことに気が付くだろう。
 しかし、場合によって弾かれてしまうことがある。それは下地処理が不十分なのだ。界面活性剤(要するに洗剤)を少し足すと、ぬれを良くするから、フラックスが良く付着するようになる。筆者はトイレの酸性洗剤を一滴足すが、これは妙な香料が入っていて、臭い。
 筆者は、塩化亜鉛を使うハンダ付けする時は必ず外のデッキの上でやる。家の中でやると、鉄レイルが錆びる。         

dda40x at 04:04コメント(4) この記事をクリップ!

2016年03月31日

track cleaning car

track cleaning car 線路が微妙に汚れてきた。なんとなく粘りのある汚れが付いている。おそらくハンダ付けの時に発生するフラックスのフューム(煙霧)だ。ヤニ入りハンダを配線の時に使う。空気の流通を良くして行うので、その時に発生する煙の大半は外に出されるが、完全ではないのだろう。
 こういう汚れを取るにはリモネンに敵うものは無い。リモネンはテルペンといって、植物の樹脂を作る基本成分の分子である。厳密に言うと、リモネンはその基本成分の分子が二つからなる。ヤニはかなりの数の分子が重合したものである。構造が似ているので溶かしやすいのである。

track cleaning car 2 リモネンをレイルに塗って汚れを取るには、この track cleaning car を用いる。ペイント・ローラを切ったものを用意し、中に錘を入れる。筆者は大きめのナットを入れる。その時、回転しにくいように軸と直角方向に、その軸を向ける。 転がすと、中で「ドテドテ」とナットが踊るのが良い。アメリカでは鉛の散弾を入れる人もいるし、もう少し細かいネジ(雄ネジ)を入れる人もいる。要するに、簡単に転がってはいけないのだ。
 この筆者の例では、押すとローラが多少滑っているようだ。これぐらいが良い。

 機関車の前に置いて、リモネンを10 mLほど垂らして、ローラを濡らす。機関車で押すと、レールが濡れているので激しくスリップする。すなわち、動輪もきれいになる。一巡りすると乾くが、またローラがリモネンを塗りつける。これを数回繰り返すとローラはかなり汚れてくる。濡れているうちに、洗浄スプレィで汚れを落としてしまう。新聞紙に汚れた液を落とし、それが蒸発した跡を見ると、茶色の粘りのあるものがついている。

 リモネンが良いのは、毒性が事実上無いというところだ。多少なら飲んでも問題ない。ミカンの皮の油だ。子供の頃、これを手に塗ったことを覚えている。これを付けると輪ゴムがクタクタになった。ゴムと共通の基本成分を持つからである。

 線路が綺麗になると、走行が安定する。サウンド装置の音も良くなる。レイアウト全体が、さわやかなオレンジの香りで包まれる。

dda40x at 03:31コメント(4) この記事をクリップ!

2014年05月15日

ハンダゴテの手入れ

 昔、ハンダゴテはアカエというブランドのものを使っていた。剣先型の鏝であって、使っていると先の方のハンダが付いているところはよいが、その直後の部分が極端に錆びて細くなった。仕方がないのでそこで切り落し、全体を成形して使った。その時、虫眼鏡で見て驚いたことに、鏝には無数に細かい穴があった。

 父が言うには、「安物のコテは銅鋳物のコテ先だから巣(鬆)が入っている。それを叩き潰さねばならない。」ということで、「貸してみろ。」と取り上げられた。

 火鉢の炭で焼いて還元し、金槌で丁寧に叩いた。そしてまた加熱して叩いてを繰り返した。その処理をしたコテは長持ちした。
「プロ用のコテは銅の角材から作っているから、持ちが違う。」と父は言った。「しかも炭壺に突っ込んでいるから、いつも還元されているんだ。」

 その後塩化亜鉛をフラックスに使うようになると、またもや尖端のハンダが載っているところは良いが、その直後が錆びやすかった。キノコのような形だ。どうやら保管中に錆びるようだった。塩化亜鉛の溶液が付いているからだ。塩化亜鉛は潮解性であって、湿気を寄せ付けいつも湿っているから、錆びてくるのだ。
 しかし水洗すれば簡単に取れる。試しに洗ってみたところ、錆びはほとんど完全に防がれて、コテ先が細くなることもなくなった。

 ハンダゴテは抽斗にしまいたいのだが、熱いと待たねばならない。水道の流水で洗うとたちまち冷えて、すぐにしまえるのが具合良かった。水気があると良くないので、尖端を完全に冷やし、ヒーター部は多少温かい状態でしまうと、水気が完全に飛んでちょうど良かった。

 叩くと加工硬化して腐食しやすくなるという説が出てきたが、それは常温で電解液に浸した時のことで、ここでは関係ない。加工硬化の効果は、釘を海水程度の食塩水にひたひたに浸すと頭と先だけが錆びるという現象を説明できる。しかし高温で水のないハンダゴテには適用できない。しかもハンダゴテの使用温度ではすでに焼き鈍されている。
 一方、釘の頭と先はカッタで切り、ハンマーで打たれているから、加工硬化しているのだ。

 他にもいくつかの説があるようだが、長持ちさせる効き目としては巣を無くすこと、良く洗うことが大きく、他のファクターは無視できる。 

dda40x at 05:15コメント(0) この記事をクリップ!

2014年02月24日

鉄道模型の発煙装置

smoke generator ライオネル、メルクリン、MTHあたりで使われているのは流動パラフィンとかプロピレングリコールである。いずれも常温での蒸気圧はかなり小さく(蒸発しにくい)、100℃以下で十分大きな蒸気圧を持つ(プラスティックが融けない程度の温度でよく蒸発する)物質である。後者はヒータの設計をよく考えて、部分的に150℃くらいまで加熱される部分があると、よりうまく行くはずだ。
 これらの液体を加熱すると発生する蒸気は当然無色透明で見えないが、空気中で急速に冷えて白い湯気に見える。前者は放置してもいずれ蒸発して無くなるが、後者は蒸発しにくい。

 流動パラフィンは吸い込んでも全く害はない。皮膚につけても大丈夫だ。それでもご心配の方このページを読まれると良い。日本語版は説明が少ない。
 プロピレングリコールは食品添加物であるし、害はない。ただ蒸発しにくいのでべとつくが、水に極めてよく溶けるので、水拭きするか、流水でさっと洗えば良い。
 筆者は霧を吹いて、綿棒で拭き取る。べとつきがあると、カビるのではないかと心配される方もあろうが、カビは生えない。この種の化合物は防カビ剤として機能する。濃いと浸透圧が大きくなり、生物が繁殖できないのである。

 写真は01175氏ご提供のサンプルを試運転中のもの。
 

 <追記>
 01175氏から詳しい情報を戴いた。プロピレングリコールはBachman が使っているそうである。
 メルクリンが使っているゾイテ社の発煙液はよりさらさらしているリグロインのように見えるとのこと。
 流動パラフィンよりもうちょっと分子量を小さいものがリグロインである。尤も、沸点で分けているので分子量はややばらつきがあるだろう。同じ分子量でも分子の形によって分子間力が異なり、沸点が違うからだ。
 
 ここに動画があるのでご覧戴きたい。上の写真はかなり発煙して、残り少なくなった時のもので、本当はもっと発煙量が多い。 



dda40x at 02:24コメント(2) この記事をクリップ!

2014年02月22日

舞台のスモーク

 舞台やスタジオで用いられるドライアイスによる霧の発生のメカニズムを考えてみよう。

 コツはぬるま湯を用いることである。ドライアイスは水よりずっと重いので、下に沈む。ぬるま湯から熱を吸収し、盛んに二酸化炭素の気体を発生する。ぬるま湯からは、その温度での飽和水蒸気圧が発生し、それがドライアイスによって急速に冷やされる。これが冷水だと、蒸気圧が小さく、水滴となるべき水蒸気の供給量が少ないから、うまくいかない。

 この方法はプロセスは全く異なるが、断熱膨張と同じ結果をもたらす。すなわち、微細な水滴が気体中に浮いている状態を作るのである。要するに、温かい水から発生した大量の水蒸気が冷やされて、水滴になったのである。

 この方法でも湯気は出来るが、如何せん、二酸化炭素は空気より重いので、蒸気機関車の白い煙を再現することはとてもできない。

 残るは超音波霧化器である。これは技術が確立されているし、特許もすでに切れているので、いくらでも応用できる。発煙材が水なので、全く問題ない。
 しかし、鉄道模型分野ではあまり見ない。オモチャの分野では時々見る。おそらく、鉄道模型での主戦場となるHO、Nでは体積が確保できないのであろう。

 霧化器の心臓部を見ると、水面に下から超音波を当て、水面を振動させる。すると水が揺すぶられて、水滴を発生する。この部分に指を突っ込むと熱く感じる。実際には熱くないのだが、神経を刺激して熱く感じさせるのだろう。健康には良いとは言えないので、そういうことはしないほうが良い。
 この部分が高さ3cmは必要で、HO以下には入りそうもないのだ。


dda40x at 02:22コメント(2) この記事をクリップ!

2014年02月20日

続 水蒸気と湯気

 蒸気機関車のボイラー内の圧力は高い。温度は200 ℃を上回る。さらに加熱されるが、それはこの問題とはあまり関係がない。シリンダ内で仕事をしたのち、やや圧力、温度が下がった水蒸気は煙室内のノズルから煙突へと噴き出す。この時、煙室内の空気が蒸気の噴出によって吸い出され、火室の通風が良くなって燃焼を助ける。

 日本型蒸気機関車には排気膨張箱という不思議な箱があって、排気の脈動を抑えるという言い伝えがあったそうだが、実際には役に立たなかった。諸外国の機関車でそのようなものを付けている例はまず見ない。排気音が、小気味よく弾けるように聞こえるのはそれが無いからである。
「背圧が少ない方が、仕事量が大きくなって効率は上がる」
というのが物理学的な思考である。一部の古い国鉄の機関車はこの膨張箱を付けていなかったので、明らかに排気音が異なった。走りだすとき、パッ、パッ、パッという音がした。

凝結開始 さて、蒸気機関車の排気はどうして白く見えるのであろうか。
 排気はおそらく大気圧の1.5倍ほどの圧力をもっているはずだ。温度は120℃ほどだろう。それが大気の中に放出される。すると、水蒸気は急速に膨張し、大気を押し退ける。その時仕事をしてしまうので、温度が下がる。
 すると、その下がった温度で許される飽和水蒸気圧は小さく、たくさん存在する(濃度の高い)水蒸気の大半は、凝縮して水滴にならざるを得ない。すなわち断熱膨張が起きた結果、水蒸気の濃度が高いまま、温度が下がったのである。

 グラフの右の部分から、左へと行くわけだ。実際には排気は空気と混じって薄められるので、やや下の方に行く。また、このような過渡現象は直線上ではなく、複雑な曲線上にあるはずだが、そのことはここでは無視する。

 「断熱膨張」がキィワードである。この言葉が無いと、説明が出来ない。
 
 結論を言うと、ボイラを持たない模型からは湯気は発生させられない。先回に書いたボイラもどきの蒸気発生器は、大気圧下でやっている限り、湯気は見えない。2,3気圧のボイラがあれば、盛大に湯気を上げて走る模型になるだろうが、怖くてそんなことはできない。

 昨年、伊藤剛氏にお会いした時、氏も同じ質問を受けたことがあると仰っていた。その時、断熱膨張という言葉が出たので、さすがだと思った。

dda40x at 02:20コメント(2) この記事をクリップ!

2014年02月18日

水蒸気と湯気 

 最近の大雪でこの種のニュースは見かけないが、毎年寒さが厳しくなると、新聞に必ず載る写真とその不可解な説明がある。
 たいていは子供たちが口から白い湯気を出して、「蒸気機関車みたいだ!」と喜んでいる場面だ。その解説には必ず、「白い水蒸気を口から出して…」とある。新聞記者は理科の勉強が足らないのが露呈している。

蒸気圧曲線

 水蒸気は見えない見えるのは湯気(水滴)である。我々は常に口や鼻から水蒸気を出しているが、室内でそれらが見えることはない。室温で許される最大の蒸気の圧力(濃度)はかなり大きく、口から出る水蒸気はすぐに空気と混じりあって薄められ、体温から室温まで下がっても凝縮するには至らない。

 寒い風呂場で湯船の蓋を開けた瞬間には、湯気(水滴)が見られる。湯船の上の空間の温度は高く、そこで許される水蒸気の濃度は大きいので、冷たい空気に触れると、その気温で許される水蒸気の濃度以上の水蒸気は凝縮しざるをえないからだ。
 そのうちに風呂場の気温が上がって来ると、湯気は生じなくなる。その気温ではたくさんの蒸気の存在が許されるからだ。

 20年ほど前、友人から相談があった。
「蒸気機関車の煙室内に、小さな電気湯沸かし器のようなものを作って入れてみたのだけども、ちっとも白い湯気が出ない。」と言うのだ。
 この種の間違いは複数回見た。
「真冬の凍える室内なら見えるだろうが、20〜25 ℃の空調の効いた部屋では、望み薄だね。」
と言うと、随分がっかりされたようだ。

 蒸気機関車の排気はどうして白く見えるのであろうか。真夏でも煙突から多少は白く見える煙を出すし、ドレインを吐き出している時は、かなりの距離まで湯気が噴出する。

 グラフは水蒸気圧曲線である。このウェブサイトからお借りした。

dda40x at 02:18コメント(3) この記事をクリップ!

2013年12月16日

続々々々々 Lucin Cutoff

GreatSalt Lake  Lucin Cutoff この築堤の建設により、湖は大きく3つの部分に分かれた。北西部には流入する川がほとんどない。また、塩砂漠とつながっている。したがって、塩分が異常に濃くなってしまった。そこでは、塩湖に生息していた赤い小さなエビは絶滅した。


 一番大きな流入河川は北東部からのBear Riverである。北東部の湾は土砂で埋まり、とても浅いので塩田が発達している。深さ1mほどの見渡す限りの塩田に湖水を導き入れ、太陽光をよく吸収するように青い染料を溶かす。放置しておけば塩が析出するので、それをブルドーザでかき集めて出来上がりである。ブルドーザのキャタピラ(クローラ)は塩水に浸かり、エンジン部分と人間だけが水面から出ている。仕事が終わって陸地に上がってくると、キャタピラは全く錆びていない。飽和食塩水中には酸素が溶けにくいので、錆が発生しないのだ。使用しない時にしばらく外に置いてあると、多少錆びる。

 水面の上下は、降雨量によって決まる。80年代の水面上昇により、Causeway(築堤)は大幅に積み増しを余儀なくされた。防波堤になった貨車は、もう見ることができない。完全に埋められてしまったのだ。
 南北の水面差が大きくなると、築堤に掛かる力も大きくなって、不安だ。製塩業者は湖水の塩分が減少して、商売が上がったりだと訴訟になった。結局のところ、築堤を一部破り、橋を架けて南北の水が通じるようにした。

2003 drought Great Salt Lake その後2003年には異常渇水に見舞われ、湖面は大幅に下がった。この衛星写真を見ると、北東部の湾は事実上干上がり、Antelope島は完全に地続きになっている。莫大な投資で持ち上げた線路も、意味がなくなった。現在は史上最低位に近くなっている
 
 この湖は大きさが九州程度で、深さが7、8m程度らしい。もちろん水位が高くなると、10m以上の深さになる。流入と蒸発のバランスが取れていれば良いのだが、たまにそれがずれると、人間はあたふたするのだ。流出河川のない湖は、往々にしてこのようなことになる。

dda40x at 12:16コメント(0) この記事をクリップ!

2013年11月04日

FMC

Green River Castle Rock 3 駅の反対側まで行って、Castle Rockを見るとこんな具合だ。限られた平地の大部分が鉄道によって占められている。山地の中の川で、鉄道の補給駅としてはここしかない。川はコロラド川の支流で、大した水量はないが、年中流れている。
 駅の構内は線が曲がっていて見通しは利かない。ヤードでの仕立て作業は、難しそうだ。貨車の7割がカヴァードホッパである。その大半にはFMCというロゴが大きく書いてある。

FMC1 GPSと衛星写真で大体の見当をつけて、出掛けた。Green Riverから西に15マイルほどのランプを降りると、そこはまさにワイオミングである。何もない。しばらく北に走ると煙突が見えてきて、工場があることが分かる。
 UPの本線は北に曲がっているから、本線沿いである。

FMC3FMC2FMC4FMC6




 何もないところに突然このような施設が現れる。これは世界最大のソーダ灰の鉱山である。高校の化学でソルベー法なるものを習った人も多いだろう。昔はガラスの原料である炭酸ナトリウムは、かなり苦労して作っていたが、現在は天然品を用いる。
 この地域は石油が出る場所が多いので、石油掘りをしていたところ、地下に分厚いトロナ鉱(炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムの1:1の化合物)の鉱床があることがわかった。一説によると現在の需要量で5万年分だそうだ。大陸横断鉄道の本線の脇に見つかったので、輸送は簡単である。

 水はコロラド川から取り、燃料は近くの天然ガスを使っている。いくらでもとれるのだから、気楽なものである。FMCはFood Machine Corporation だったかの頭文字である。本業がこちらになってしまい、元の会社名の意味が無くなった。

dda40x at 11:04コメント(0) この記事をクリップ!

2012年01月06日

続々 Etchant

 エッチャントは酸性のものばかりではない。アンモニア水でも効果がある。昭和40年代のTMSにも載っていたように記憶する。アンモニアは酸化剤があれば銅と良く反応する。
 昔の冷凍機はアンモニアを使用していた。その中に空気が混入していると、銅パイプは腐食されてしまう。故障した冷凍機の中には、青い結晶が見つかることがあった。それは銅イオンとアンモニアとの化合物である。

ammonia as a ligand 要は金属が溶ければ良いので、「酸化剤 + 溶解を助けるもの」 があればよい。アンモニアは銅、亜鉛、ニッケル、銀に対して良く働く、錯イオンをつくる配位子(ligand)である。鉄、鉛やスズとは反応しないので、青銅、快削黄銅、ステンレス鋼、炭素鋼などには意味がない。 酸化剤としては酸素でも十分であるが、酸素を供給しようとして空気を吹き込むとするとアンモニアが逃げてしまう。それを避けるには低温にするので反応速度が小さくてうまくいかない。
 過酸化水素を加えれば低温でも働く。生成する液が銅をたくさん含んでいれば、極めて濃い藍色になり、美しい。
 快削黄銅は鉛を含み、多少反応しにくい。スズを含んだ合金も困難だ。

 非酸性エッチャントの必要性を感じている。アンモニアより効果が大きく、また蒸発しにくく、さらに臭いが無いものが欲しい。ある程度の候補は見つかっているので、検証実験をする。公表するからには、毒性が低いものでなければならない。
 いずれアマチュア用として良い候補を用意できるだろう。

 もう25年も前に「醤油で機関車を洗うときれいになる」ということを、所属クラブで発表した。これには誰も乗ってこなかった。会報には”Hint of the Mouth" という題でコラムに載った。そのタイトルのつづりがMonthではなく、Mouthだったので、真に受ける人が減ったのかとも思ったのだが、そうではなく、本当に誰も興味がなかったのだ。

 醤油には各種のアミノ酸が含まれ、それらは銅イオンとかなり安定な錯イオン(キレート)を作るので、酸素の助けを借りて銅を溶かす。10円玉を醤油で拭くときれいになる事実をご存知の方も多いだろう。
 もちろん、「醤油+過酸化水素水」 でもよく働く。

dda40x at 01:06コメント(4) この記事をクリップ!

2012年01月04日

続 Etchant

 初瀬春日氏のコメントにもあるように、塩化鉄(III)水溶液は常に空気と触れさせていないと能力の低下が著しい。このあたりのことは化学的な常識があればすぐ理解できることなのだが、エッチングの手法を紹介した記事を見てもあまり触れられていない。業界の人は常識だと思っているから書かないし、一般人はたまにしかやらないので調子が悪くても気が付かないのだ。

 その点、過酸化水素を用いる方法は気楽である。ただ浸しておくだけで良い。もちろん両面を同時にやるときは裏にも液が回るように何らかの支えを必要とする。

 筆者は30年以上前からこの過酸化水素を使う方法を採用している。業界でも最近は採用例が多くなってきたようだ。しかし、アマチュアが使っているようには見えない。
 日本で市販されている過酸化水素水は3%であり、全く危険はない。鹿ケ谷氏のコメントによれば、オーストラリアでは6%水溶液が市販されているそうだ。筆者の実験では10%以下ならまず問題なさそうである。この程度であるならば、何かあれば冷水を入れると収まる。横に氷水を置いておくことだ。
 15%では非常に危ない。湧き立って、しかも温度がかなり上がる。これは爆発の前兆だ。20%以上の実験は、怖くてしていない。
 発熱しながら気体が出る反応は、反応を抑える方法がない。エネルギが蓄積し、さらに温度が上がる。すなわち連鎖反応が起こっていて、爆発する。氷水では抑えきれないのだ。
 東京の高速道路での爆発はまさにこの状態だ。運転手はタンクに触れて熱くなっていることに気が付いたので退避したら、直後に爆発している。

 少々脅かし過ぎたが、勝手な判断で濃度を上げると大事故になるということは肝に銘じておかねばならない。
この種の情報は、部分的に伝えられて、聞いた人が勝手な判断をすることが多い。「成功事例というものは、そこにある情報を元に完全に再現されたときにうまく行く。」のだが、勝手な改変をして失敗する例はよく聞く。基礎的知識を十分持たない人は、謙虚であるべきだ。


dda40x at 01:04コメント(0) この記事をクリップ!

2012年01月02日

Etchant

 エッチャントとはエッチング液のことである。

 塩化鉄(III)は銅や亜鉛を酸化し、自身は還元される。すると、ある条件下では沈殿ができることがある。これは二価と三価の鉄イオンが組み合わさった化合物である。また、銅が酸化されたときに二価のイオンができればよいのだが、往々にして一価の銅イオンの化合物ができて沈殿に混じる。塩化鉄(III)を用いる反応は工場のように条件を一定にできる条件なら良いが、素人が扱うには問題点が多すぎる。

「過酸化水素 + 塩酸」は手軽であるのと、銅イオンが二価だけしか出来ないので、あとの処理が容易である。筆者は物好きにも、あとで銅を回収し、廃品回収業者に渡すが、一般人はそこまでやる必要などない。 筆者の処方はいわゆる濃塩酸と3%過酸化水素水を1:1に混ぜるだけである。反応速度が小さくなってきたら、過酸化水素を足す。一回ごとに捨てなくても上澄みをガラス瓶に入れて冷蔵庫に入れておき、次回に過酸化水素を少し足せば使える。反応容器はプラスティックの皿である。冷蔵庫で保存するときは、密栓せずに少し蓋を緩ませた状態で丈夫なポリ袋に入れて口を軽く縛る。多少は過酸化水素が分解して気体が発生するかもしれないので、その安全のためである。過酸化水素の分解は鉄(III)イオンの存在、何かの固体物質の表面が触媒になるので、鉄の釘などを落とさないこと、沈殿は保存容器に入れないことである。
 頻繁にやるのでなければ一回ごと廃棄する方が良い。消石灰と混ぜて反応させ、沈殿を燃えないゴミで出せばよい。銅イオンは毒だと書いてあるサイトもあるが、問題にはならない。ブドウ園に行けば、硫酸銅水溶液をボルドー液と称してばらまいているが、公害が起こったという話は聞かない。

 硫酸の場合は、濃硫酸を水で薄める。この時、かき混ぜながら水の中に少しずつ入れる。逆にすると大事故が起きることがある。かなりの発熱があるから、プラスティック容器が変形することもあるので気を付ける。パイレックスなどのガラス容器中で薄めるのが良い。
 三倍に薄めた物に、過酸化水素水を1:1で加える。塩酸とさほど変わらない腐食速度である。これも同様に液を保存できる。廃棄の仕方も同じである。

 酢を使うこともできる。酢と過酸化水素水を1:1に混ぜると出来上がりだが、多少腐食速度は小さい。これらの反応では酸は、単に銅イオンの相方のイオンになる。銅イオンを水に溶かしているだけである(沈殿ができないようにしているという意味)。酸化剤はあくまでも過酸化水素であって、過酸化水素が消耗する。継ぎ足すのは過酸化水素水である。

dda40x at 01:02コメント(3) この記事をクリップ!

2011年12月31日

続々 エッチング

 裏表にレジストを付けることができれば、両面エッチングができる。エッチングをするには塩化鉄(III)の液を使う。これは溶かしたものを電気部品屋で売っているが、やや高価であるし、速度が遅い。

 電子部品用の基板に貼りつけられた銅箔の厚さはおおむね 0.05 mm 以下であって、その程度のものを溶かすには塩化鉄(III)で十分である。しかし厚いものを両面から腐食するときは、腐食速度が大きくないと、レジストがだんだんはがれてきて、最終的には失敗する。短時間に溶かしたい。

 一番速いのは硝酸である。但し有毒な二酸化窒素が大量に出るので、室内ではできない。風の強い雨の日を狙って屋外で行う。台風がやってくると、エッチングができて嬉しいという困った人もいるのだ。このガスは水に溶けやすいからだ。
 3分程度で 0.3 mm 厚でも貫通する。硝酸が指に付くと黄色くなり、始末に困る。ゴム手袋をはめて行わねばならないし、環境保護の観点からも、あまり感心しない。

 アメリカでは過硫酸アンモニウムなどを使う。過酸化物なので酸化力が大きいが、これは日本では手に入れにくい。アメリカで買って日本に持ち込むのも難しい。

 その代わりに過酸化水素を使う方法は手軽でよい。そこそこに速いエッチング能力がある。
 塩酸、硫酸、酢酸何でも良いから酸と混ぜて使う。酸は銅を溶かした後、水溶液になっていて欲しいので加えているだけである。ここでの酸化剤は過酸化水素である。3%水溶液はオキシドールとして売っているのでそれで十分だ。ただし、塩化鉄(III)と混ぜてはならない。激しい反応が起こって、容器から噴出し、取り返しのつかない結果をもたらす。
 酸と混ぜる過酸化水素の濃度が高いと速度が大きいが、危険である。素人は3%以外使ってはならない。濃いものは一般人が買えないようになっているはずだ。高濃度のものは何かの間違いで突然爆発する可能性があるので、使うべきではない。この種の事故は意外と多い。 

エッチングのメカニズム 塩化鉄はポリ袋中など、密閉された条件で使う例が示される場合が多いが、それは良い方法ではない。鉄(III)イオンは銅を溶かして還元されてしまい、そのまま役に立たない状態で存在している。これはもったいない。
 しかし、空気に触れさせると、エッチング速度が増すのだ。空気に触れれば再度酸化されて元の鉄(III)イオンに戻り、銅の溶解に参加するからだ。
 工業用のエッチング装置はこの仕組みを最大限活用している。ポンプで空気を細かい泡にして下から送りこんだり、エッチング液を霧状にして空気で吹き付けることを行う。また、反応速度は温度が高いほど大きいので、ヒータで加熱する装置もある。

dda40x at 12:31コメント(3) この記事をクリップ!

2011年12月29日

続 エッチング

Press'n Peel 円高のおかげでレターサイズ(A4に近い)1枚100円強である。熱転写してはがすタイプと、水で溶かすタイプがあって、価格は一緒である。プリンタはレーザ・プリンタか、コピィ機である。トナが融ける必要があるので、インクジェットでは駄目である。

 調べると日本にも入っている。多少高いが、それでも便利である。小さな銘板を作るのなら1枚当たり1円ほどであろう。

 このサイトでは試行錯誤の跡が見られる。小さく切ってプリントするときのアイデアは面白い。
 これは日本で販売している会社のウェブサイトである。ラミネータを使う方法も紹介されている。
 薄いアルミ板をエッチングする試みもある。

 しかし、鉄道模型に使ってみたというレポートは日本ではとても少ない。今回どっさり買ったので、ご希望の方にはお分けしたい。
 二種類あって、青いフィルムのものは大半使ってしまった。これは意外と使いにくい。プラスティックのフィルム(たぶんマイラ)が微妙に伸縮し、位置決めが意味をなさない。電気工作の片面基盤には適するのかもしれない。筆者は両面エッチングして抜き落としをしたいので、より良いものを使いたい。
 白い紙(これは青い方と違って艶のある方に印刷する)はあまり伸びないので具合が良い。また、青い方と違って多少の埃を噛みこんでも密着するように感じる。

dda40x at 12:29コメント(1) この記事をクリップ!

2011年12月17日

圧着端子

GOW_3190 今回頒布の手持ち電極の接続部分は圧着端子を用いた。大電流を間違いなく通すためには、この方法しかない。
 裸端子用の圧着工具を一般の方はお持ちでないだろうと、締めてからお渡しすることにした。そうすると握り部分を通す必要があり、結局手持ち電極全体を作ってお渡しすることになった。この工具は30年も前に購入したものだが、使用頻度は年に数回である。今回200回ほど締めたので、10年分以上に相当する。
 完全に締まるまで、開くことができない安全装置が付いているから、これで締めれば、品質は保証できる。 
 旋盤工作は別にむずかしいことではないが、ネジ切り、圧入、握りの穴開け、軸との接着、電線の切断、圧着をこなすのに1週間ほど掛かってしまった。そういうわけで、工程表から4日遅れの発送となった。

GOW_3186 さて、圧着端子はこのような形のものである。純銅を打ち抜いた板を丸く曲げ、付き合わせてロウ付けしてある。軟らかいロウを使っているのだろう。その部分をプレス工具でつぶしても、他とつぶれ具合に差があるわけでもない。そして、スズめっきを掛けてある。さて今日の本題はそのスズの働きである。

 圧着工具でプレスしたあとの圧着端子を糸鋸で切り、中の電線をほぐしてみようと思っても、全て堅く結び付いてばらばらにすることはできない。あたかもハンダで固めたような感じである。 これはどうしてだろうか。
 今回の電線の中の細い線は、スズめっきしてある。それが非常に大きなファクタを持つ。単なる錆止めではない。これはハンダ付けがなぜできるかということと、同じ原理である。

 ハンダにはスズが含まれている。最近の無鉛ハンダにもスズは含まれている。しかし、スズの含まれていないハンダがないわけではない。それらにはインジウムが含まれているはずだ。スズ、インジウム、水銀などは他の金属と接触により合金を作り易い。水銀は常温でも自然に混じり合うほどだ。すなわち、他の金属を濡らしやすい。
 スズはある程度の高温で、母材に拡散し合金を作る。これは圧力を掛ければ常温でも起こる。

 圧着端子の中ではスズを媒介としての、金属結合が形成され、電気伝導性が飛躍的に良くなる訳だ。極端な話をすれば、水銀を塗って締めると合金化し(これをアマルガムという)一体になるが、危険なので誰もやらない。

 ハンダ付けができるのはこの合金化(amalgamationという)による。アマルガメイションが起きる金属元素は、常識的な範囲では上記の3つほどしかない。     

dda40x at 12:17コメント(0) この記事をクリップ!

2011年09月08日

津波被害の機関車の修復

 津波で海水に浸かった機関車を修復するプロジェクトがクラブ内で進んでいる。捨て去るにはあまりにも惜しい記念碑的な機関車をなんとか救いたいと、クラブ員が努力されているのだ。頭が下がる。
 筆者も、アドヴァイスを求められている。

 モータはまず駄目である。というのは海水に浸かっているうちに、イオン化傾向の差で鉄が急速に溶け出し、錆になる。銅と鉄が組みあわさっているので、全体が電池を形成することになる。コイルは絶縁してあるのだが、水につかれば絶縁紙が膨張し、あちこちでショートして部分的な電池を形成してしまうからである。真水であれば洗って乾かせば何とかなるが、塩水ではどうしようもない。伊勢湾台風の時、水につかった機械の修復を父が指導していたが、海水に浸かったモータは全部ばらしてコイルを巻き替えていた。模型用モータのコイルを巻き替える人はおそらくいまいし、より高性能なモータに取り換えるのが普通だろう。

 ブラス部分は物理的に錆びを落とせばよいが、問題はダイキャストである。これは亜鉛合金を高圧で型に入れたものである。亜鉛のイオン化傾向は大きく、銅合金と接触した状態で海水という電解液に入れられたので、亜鉛は急速に溶けていく。尤も、中性条件なので反応速度は多少小さく、溶けだしたイオンは水酸化物として析出する。亜鉛は両性元素なので、その水酸化物は酸にも塩基にも溶ける。酸で洗えば他の金属が溶けるが、塩基なら水酸化亜鉛だけが溶ける。
 
 強塩基は危険で一般家庭にはない。その代わりになるかなりの強さの塩基の作り方を紹介する。炭酸水素ナトリウム(いわゆる重曹)を水に入れて3分間煮沸すると炭酸ナトリウムに変化し、pHは12程度になる。この操作はステンレスなべ中で行う(アルミの鍋は反応するおそれがある。)
 
 はたして錆を落としただけでよいのかどうかは分からない。亜鉛ダイキャストは、粒間腐食割れという現象が起きて体積が膨張して割れる。腐食によってそれが助長される可能性もある。それは何年後に起こるのかは分からない。しかも、一部の亜鉛合金の中にはマグネシウムを含むものもあるので、それは海水中ではかなりの速度で溶け出す。
 もし筆者が「どんなことをしても良いから何とかせよ。」と言われたら、真空電気炉で加熱し、中に潜り込んでいる水、気体を排除し、そのまま真空樹脂充填する。しかしあまりにも高度な処理で、それを一般人が行うのは無理だ。

 クランクピンが鉄であると、その部分は電位差の影響で錆びやすい。これはブラスにねじ込まれた場合である。
亜鉛ダイキャストにねじ込まれている場合は亜鉛が犠牲電極になって、ピンは錆びにくい。
 ダイキャストは、色々な意味で不安定である。筆者がブラスにこだわるのは、それが一番安定であり、1000年以上の寿命を持つからである。ダイキャスト部品は外して、ブラスのロストワックス鋳物にするのが筋であろう。

 錆を落とす物理的方法は、サンドブラストが一番楽である。これは最近ホームセンタで安く売っている。少々埃が出るので、屋外でやるのがよい。そのあと超音波洗浄機で良く洗って注油する。

dda40x at 09:08コメント(0) この記事をクリップ!

2011年09月06日

続 フラックスの役目

 塩化亜鉛飽和水溶液の沸点は極端に高い。薄くても加熱によって水が蒸発するから、飽和溶液になる。この時、沸点は300℃を越える。これは、化学実験で反応容器を高温に保つ時の熱媒体としても使われた歴史があるくらいなのである。もちろん、その中では多少の加水分解が進み、塩酸が生じ、それが銅などの酸化物を溶かす。
 すなわち金属容器は溶ける可能性があるから、ガラス容器中で実験を行うというのは常識である。
 
 ハンダ付けの最中は300℃ほどであろうから、その加熱時間中に母材表面がきれいになるというわけである。
 昔から建築板金職人は塩酸を使っている。人により、その中にトタン板の切れ端を放り込み、表面の亜鉛を溶かす人もいた。要するに塩化亜鉛と塩酸の混合溶液である。この時、地金の鉄板はイオン化傾向の差で溶けない。そうして作った液を、竹の串で相手に塗りつける。竹の串は先を潰して細かく裂き、液が保持されるようになっている。

祖父江氏の塩酸入れ 祖父江氏は希塩酸を湯のみに入れ、それが倒れないようにブラス板で作った支えを付けていた。やはり竹串を使うのだが、節を利用して上まで塩酸が滲みて来ないようにしていたのが興味深い。

 日本ではあまり採用例がないが、塩酸から生じる塩で熱分解しやすいものなら何でもよく、塩化アンモニウムでも良い。これは200℃くらいで分解して塩酸とアンモニアになる。アンモニアは多少臭いが、分子量が小さいのですぐ拡散するし、どこにでも多少はある物質なのでさほど気にならない。残る塩酸は酸化物を溶かす。

 いわゆるペーストの中には酸性ペーストもあって、塩化亜鉛、塩化アンモニウムを大量に含む。それでは普通のペーストでは何が働いているのであろうか。松脂の中にはいくつかの有機酸が含まれ、融けた状態ではそれが酸化被膜を溶かす。獣脂は加熱によって分解し、グリセリンと脂肪酸になる。脂肪酸も弱いながら多少の溶解力を持つ。

 大気中に酸素がなければ、一度磨いた金属は錆びないから、フラックスなしでハンダ付けできる。伊藤剛氏がクラブ内での会報に興味深い漫画を描かれた。宇宙服を着て、月面で機関車のハンダ付けをしている絵だ。
「何もここまで来てやることもないだろうに…」とつぶやく同僚飛行士を尻目に楽しんでいる誰かさん。

 一度使ってみたいのは、超音波を発するコテである。それを母材に当てると、酸化被膜が壊れて母材が露出する。すなわちフラックスなしでハンダ付けが完璧にできる。どこかの研究室が捨てるときが来れば、声を掛けてくれるよう頼んである。難しそうだ。

dda40x at 09:06コメント(0) この記事をクリップ!

2011年09月04日

フラックスの役目

 帰国して3日目だが時差調整が、なかなかできない。どうしても朝早く目が覚め、夕方から眠い。以前は2日で何とかなった。これも老化の一つの形なのであろう。
 炭素棒ハンダ付け装置はたくさんの申し込みを戴いたので、電気屋の社長にも頼み易くなった。これで申込は締め切らせて戴く。

 留守中に戴いたコメントに興味深いものがあった。アース板に鉄板を使うというものだ。これは一理ある。鉄の電気伝導度は比較的大きく、厚い板でしかも距離が近いから、電気伝導性ということでは全く問題ない。磁石が付くからそれで押さえるのは良い考えかもしれない。問題は錆びである。
 
 日本の模型人でブラスのハンダ付けにいわゆる油性ペーストを用いる人はほとんどいないだろう。筆者はたまに使うが、塩化亜鉛水溶液の方が楽である。接合部をあまり磨かなくても必ず付くからだ。すなわち、塩化亜鉛は表面の酸化被膜を溶かす力がある。塩化亜鉛の水溶液は酸性が強く、金属酸化物を溶かし金属面を露出させる。そこに融けたハンダがその表面をぬらし、金属結合を形成する。ペーストは磨いた母材金属面を覆い、酸化されないようにするのが主目的で、積極的に酸化被膜を取り除くわけではない。
 日本では松脂を使うことが多いが、昔、他国では獣脂を使うこともあった。すなわち、油気を取らねばならないというのは説得力がない説明であり、むしろ良く磨くべきというべきである。

 さて、鉄でも油性ペーストでハンダ付けができるが、かなりきれいに磨かないと付きにくい。塩化亜鉛であれば、一瞬でハンダが母材をぬらして滲み込むのが観察される。塩化亜鉛は鉄の表面も溶かしているのである。

 「鉄は錆びにくい金属である」と書くと、正気を疑われそうであるが、事実である。磨かれた鉄の表面には水を含んだ酸化被膜(不動態膜)が形成され、そう簡単には錆びない。現実には大気中の硫黄酸化物、海塩の微粒子などが結合し、その酸化被膜を破るので錆びが進行する。
 例えばこのような実験が可能である。鉄板を磨き、机の引き出しなどに入れて十日ほど待つ。たぶん錆びていない。その一部に塩化亜鉛水溶液を付け、5分経ったら、水で洗い落とす。乾燥してから、また引き出しに入れ、十日ほど経ってから観察する。
 不思議なことに塩化亜鉛水溶液が付着したところだけ、錆びが発生する。塩化物イオンが不動態膜を壊したのである。全体をよく磨けばまた錆びにくくなる。ハンダ付けの時に押さえに使うペンチなどは、いくら洗っても赤さびが発生するのはこのせいである。
 筆者は高級な鋼製工具はハンダ付けの現場周辺には置かない。押さえには、某国製の安物しか使わない。また、発生する煙霧(fume)は全て強制的にフィルタでろ過する。塩化物イオンを含む霧が拡散すると、機械、レイル、車輌、配線が腐食されるということである。

 要するに塩化亜鉛を使うハンダ付けを常套手段としているアマチュアは敷板として鉄板を使うことは避けるべきである。毎日多量のハンダ付けを行うプロであるなら、錆びる暇がないだろうから、それはそれで価値があるかもしれない。亜鉛めっきした鉄板は錆びにくいが、いずれ亜鉛が擦り減るので同じことである。

 アルミ板を敷板にするのはどうかという質問もあった。利点としてはハンダが付かないということであるが、厚いブラス板は、熱容量が極端に大きく、そう簡単にはハンダが流れることがない。そこまで加熱すると、ワーク(工作の対象物)がばらばらになるであろう。また、アルミ板の表面は透明な酸化被膜で覆われていて、電気伝導性が良いとは言えない瞬間がある。その時火花が散って、ワークにキズが付くこともあるだろう。

dda40x at 09:04コメント(0) この記事をクリップ!

2010年10月15日

続 ”まねる”ということ

 1912年にアンモニア合成法が開発されて、早速日本にも輸入された。

 その装置は水素と窒素の混合気を数百気圧まで圧縮し、加熱して触媒に接触させるというものであった。反応容器は二重構造で、内側は低炭素鋼管、外側はそれに密着する無数の穴を開けた高炭素鋼管であった。
 この構造は実にすばらしく工夫された造りで、高温高圧の水素が鋼管にもぐりこんで、内部の炭素と反応してメタンになるのを承知した工夫であった。炭素が抜ければ鋼管はただの鉄管になる。圧力には耐えきれない。
 外側の穴あき鋼管は、内部から漏れ出した水素を素通りさせて、耐圧性能を保持するための工夫であった。内部の鋼管を定期的に取り替えていれば、破裂の心配はない。鋼の水素脆化という概念がなかった頃の話である。
 日本の担当者は穴あき鋼管を見て、それを穴の開いていない鋼管に取り換えればより丈夫になると思ったのである。
 早速そのように改造し、爆発事故が相次いだ。それが元の様に戻されたのは、それから何年も経ってからのことである。しかも、それはその担当者が居なくなってからのことであったそうな。

 この事案は、基礎研究がいかに大切かということを雄弁に物語る。「やり方」では済まないものがあるということが、基礎研究をしていないものには分からない。
 最近ノーベル賞が日本にも多くもたらされている。それは2,30年前の業績に対してである。日本が基礎研究に力を入れ始めたのは、その頃からである。その後、日本人の精神構造はかなり変化している。ほとんど不自由ない生活を国民の大半が享受できるようになった。あるものを利用していれば不満はない。
 これからも、基礎的な分野の研究に力を入れ続けられるだろうか。


 模型と関係ない話をしたが、上のことは模型の分野にもそのまま当てはまる。正しいものを作った人がいるのに、それを能力に欠けた人が改造して製品化する。購入者は迷惑するのである。
 模型は小さな機械である。表面的なものを適当に再現してあれば喜ぶ客も居るのだが、性能を考えた模型はそうはいかない。

 また、こうすると良いという記事は時々見るが、データがない。「測定」という最も大切な部分が抜け落ちている。客観性のない記事にはお付き合いしかねる。測定すなわち客観という概念がないのだ。
 測定もデジタル機器を使えばそれで良いと思う人が多い。較正をしているのだろうか。測定器が正しいかを調べなければ意味がない。 
 機関車の効率測定には斜面を使う方法がある。実に簡単な方法なのだけれども実行している人はまずいない。

dda40x at 10:15コメント(3) この記事をクリップ!

2010年10月03日

Track Cleaning Car

 答はTrack Cleaning Car である。

IMG_2665 Centerline Products という会社がTrack Cleaning Carを売り出している。使っているのを見たが、ローラが軽すぎると感じた。また全体がダイキャストで、ある程度の重さがあるのだが、もっと重い方がよいと思った。

 先回テキサスに行ったとき、その話が出ていた。特許ではないのだから、仲間内で作る分には問題はなかろうということになった。Jimが木型を作り、デニスが鋳造した。これは、はるかに重い。全体で1kgである。ローラだけでも250gある。これは筆者が旋盤で挽いて作った。台車は、連結器が付いたものがジャンク箱にあったのでそれを付けた。ジムは木彫りの名人であることは御承知と思う。

truck cleaning car roller ローラはソリッドのブラスの棒だが、一説によると、中空にして内部に堰を作り、鉛の散弾を半分くらい入れると良いという。これはゴロゴロと転がるのではなく、ドタドタと引きずられるのが良いということだ。多少の摩擦が生じて、レイルを擦る様になるらしい。それならばと、ローラを斜めにして、いつも横方向のずれを作るようにしようと考えている。次回までに原型を作ることにした。その角度は、試作してみないと決められないであろう。

 ペーパタオルを巻き付けて、リモネンを垂らし、レイアウトを2周ほど走る。ぺーパタオルは真黒になる。新しいのを再度巻き付けて何回か繰り返すと、汚れが付かなくなってくる。
 貨車を外して見ると、車輪がきれいになっている。要するに、レイルの表面がリモネンで濡れると、それが車輪にも付き、汚れが浮きあがる。それが再度レイルに付いて拭き取られるということを繰り返している。

 考えてみれば、レイルの清掃など、レイアウト建設以来、あまりしたことがなかったが、ポイントのフログ付近の黒い汚れも、たちまち無くなった。
 運転前には、これを牽いて2周するのが習慣になった。

 リモネンの消費が増えたので、500g入りの大きな瓶を買った。4000円くらいであった。おそらく2,3年は使えるのではないかと思う。試薬なので純度が高く、残り香が無い。不純物が入っていると、揮発分が乾いた後、妙な臭い(高沸点の不純物の臭い)がする。

dda40x at 10:03コメント(0) この記事をクリップ!

2009年06月30日

リヴェット形成法

 リヴェットを表現する方法は、大きく分けて2つあった。裏から押し出す方法と、表面から植え込む方法である。

 どちらも使っているが、裏から押し出すには組み立て前の準備段階しかできない。リヴェットをつけ忘れたときは表から植え込む。決して難しい作業ではない。正確に穴を開けて、差し込んでハンダ付けする。適当な高さに切りそろえてから丸くする。
 歯科及び彫金用の刃物でコーンカップカッタというものがある。飛び出している線の先端を丸くする道具だ。これで丸く仕上げるのだが、深さの問題があり、市販品では深すぎる。砥石で擦って、穴を浅くする必要がある。
 歯科用のカッタには、純粋のコーン(円錐)を形成することができるタイプのものがある。それを使えば円錐型リヴェットも可能である。

 祖父江欣平氏の植え込みリヴェットはハンダ付けされていない。ドリルの穴は微妙にマイナスである。専用のドリルを用意しているようだ。そして差し込む線をぐっと押しこむ。その勘どころは彼にしかできないのだが、抜けて来ない。引っ張っても抜けない。押し込んだ時に塑性変形してひっかかってしまうのだ。筆者はまねをしたが、抜けてしまう。

 電解生成リヴェットの形は良いが、生成には少々時間がかかる。0.3mmほど盛り上げるのに1時間はかかる。組み立て済みでも局所的に電解液につけることができれば良い。極端な話では塗装済みの車体の鼻先にHゴムを付けることもできない話ではない。
 また、旗竿の先端を丸くすることもできるし、煙突先端に縁取りをつけることもできる。

 いろいろな応用例が考えられる。
 
 

2009年06月28日

続 電解研磨とリヴェット

ブラスめっきによるリヴェット生成法 高校生の時に作った近鉄2200のお面のリベットは、この方法で作った。これを特許出願しようと思ったこともあるが、誰もそれを買わないだろうと諦めた。被覆材に何を使うべきかがわからなかったことも、その理由の一つだ。ラッカーでは、薄いと電気が通ってしまう。最近のプリント基板のマスキングならうまくいくかもしれないと思っている。リヴェットを表現する部分を針で傷をつけるのであるが、印刷できればそれに越したことはない。当時は傷をつけるために、ジグを使った。
 丸いリヴェットは見かけが良い。打ち出しリヴェットもよいが、板が全く歪まないのが利点である。それと、曲面や細い棒にもリヴェットをつけることができることが利点である。組み立て後にリヴェットを付け足すことも訳なくできる。

 銅のリヴェットは柔らかいのでブラスのリヴェットにしようと思った。陽極に銅と亜鉛を並べ、電解液を硫酸銅と硫酸亜鉛の混合液にすると、どういうわけかブラスメッキができる。理論的には怪しいのだが、実用上は問題ない。これは電気化学便覧に書いてあった。色々な商品がこの方法でブラスメッキされている。
 一部のソフトメタルやダイキャスト製品にも応用されている。

 このアイデアは、長年温めていたものだが、個人で秘匿していても意味がないので公表することにした。
 現代のCNCの機械でリヴェットを押し出す方法もあるが、この電解法によるリヴェットの方が形が良い。CNCの機械に細いフライスカッタを付けて所定の位置の被覆剤をはがすのが最も良い方法であろう。

 エッチングは3段くらいまで実用化されているが、それはへこませるだけのことである。膨らませるのはこの方法の利点である。しかも丸く膨らむ。Hゴムのような半円弧状の断面は、実によく再現できる。


2009年06月26日

電解研磨とリヴェット

メッキによるリヴェット成形法 電解研磨は容易である。これを使わない手はない。ヤスったあと、細かいサンドペーパで磨いてもせいぜい2000番くらいの細かさである。
 適当な酸の中にぶら下げて陽極とすればよい。陰極は何でも構わないので、適当なブラスの板を使う。
 筆者は希硫酸を使うが、硫酸が手に入りにくいときには希塩酸でも構わない。トイレ用の酸性洗剤を5倍くらいに薄めて使えば良い。電圧は3Vくらいで良い。電圧よりも電流の方が大切である。30秒おきくらいに取り出して見るわけだから、気にするほどのこともない。
 サンドペーパで磨いた痕が無くなるのがわかる。鏡面になるわけである。しかし、塗装を前提にすれば、そのような研磨にはあまり意味がない。ロッドなどを磨くときには良い。

 このような作業は屋外でするべきである。場合によっては陽極で塩素ガスが発生するし、陰極では水素が発生する。酸のミスト(霧)も発生する。筆者はデッキの上でやり、終わった後は水で流す。

 ところで、メッキは角に集積しやすいと書いた。平面の中央には、付きにくい。それでは全体を絶縁材で被覆して、平面の真ん中だけ物理的に絶縁材をはがしたらどうなるだろうか。
 この方法は高校生の時に思いつき、やってみた。部分的にメッキができるだけだと思っていたら、意外な結果がもたらされた。その部分が盛り上がるのである。しかも丸くなる

 これはリヴェットになる。Hゴムの表現にも使える。ただし、被覆材が良質でないとそこかしこに変なものが析出する。

 ここに公表したので、すでに公知の事実となり、誰もこの件の特許出願はできない。

2009年01月03日

続 金属の臭い

 金属は良い触媒となり、手の表面の皮脂を変化させる。おそらく酸化を早める。また、酸化的分解も起こすだろう。すると短い分子になり、揮発性が増すはずだ。何になっているのかは、しかとは分からぬが、金属元素ごとに触媒能力が違うので、生じる分子の形も違うであろう。皮脂は、スクワレンという二重結合をたくさん含んだ炭化水素を、30%以上も含む。これが変化すると考えるのが自然だろう。脂肪酸も二重結合を含んでいるものを20%程度は含まれるので、反応するだろう。

 機械油は、炭化水素をベースに添加剤として脂肪酸が入っているのでそれが触媒によって変化する。しかしアルミニウムはあまり臭わない。

 鉄錆を指先でつぶすと、独特の臭いを感じる。これなどは酸化鉄の触媒作用によるものであろう。

 最近の学説によると、亜鉛イオンはタンパク質の形を容易に変化させる優れた触媒であるそうだ。タンパク質を分解するプロテアーゼという酵素の活性中心である。それも臭いに関係するかもしれない。

 ヤスリ掛け、糸鋸で切るなどの操作で、金属の微粉が生じると、表面積が大きいので反応速度は大きいだろう。

 ハンダ付けして塩化亜鉛が付着している模型に手を触れても、これまた臭いがする。しかしこれをよく洗うと臭いは全くしなくなる。祖父江欣平氏の工房を訪ねると感じる独特の臭いも、まさにこれである。

 「モータの臭い」と言う表現があるが、これもコミュテータの銅の上で何かの油が変化した臭いであろう。誘導電動機では聞かない表現である。  

Recent Comments
Archives
Recent TrackBacks
Categories
  • ライブドアブログ