ちょっとした工夫

2024年03月18日

TV camera

 クラブの長老H氏からTVカメラを付けて欲しいと依頼があった。レイアウトの車庫の奥には目が届かないが、安心して最奥まで列車を収めたいのだ。H氏は片手が不自由なので、高いところにカメラを付けたり細い穴にケーブルを通したりするのは難しい。工具一式を積んで喜んで出かけた。30分のドライヴである。

 どんなカメラなのかと聞くと、しばらく前に購入した防犯カメラで中国製であった。マニュアルはあるが、マニュアル通りには作動させられない。あると書いてあるボタンがなかったり、無茶苦茶である。
 8心のLANケーブルが要る。これはバッタ屋でお値打ちに調達したものだが、ちょうど良い長さであった。

TV camera 接続して調子を見るが、ちっとも言うことを聞かない。壊れているのか、機種が違うのか、ヴァージョンが違うのか分からない。30分くらい格闘して偶然にもよく写った瞬間に写真を撮った。設定の再現性を確認して操作手順書を作った。こういう仕事は楽しくない。中国製のものは買うべきではないことを再確認した。

 ともかく、カメラはヤードの全体を俯瞰している。H氏はとても喜び、早速運転を開始した。走らせて楽しむ模型人である。自宅にレイアウトを持っていない人は、つまらぬ(失礼!)ディテール付けの競争に向かうのだろう。我々はよく走る模型の製作に勤しんでいる。

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2024年03月06日

Sn 63% - Pb37% solder

 63%ハンダの使用量が多く、余分な60%ハンダから作っておくことにした。母体となる60%ハンダには、どういうわけか70という番号が打ってある。
 
 これが 210 gある。それにスズを何 g 足すと63%ハンダになるか…という中学1年生の数学である。
 スズはかなり前に手に入れたものだ。たまたま東急ハンズで見かけて買ったような気がする。昔はこんなものまで売っていたのだ。

63% solder 棒状のスズを大きなハサミで切って、所定の質量を量り取る。それをるつぼの中で融かしたハンダに足せば良い。針金で掻き回して均一にする。温度が高くないので、ダンボール箱を傾けた溝に流して三角の断面にすれば良い。あっという間に固まって出来上がりだ。これが鉛であると、300 ℃以上でダンボールは燃え上がってしまうことがある。燃えなくても焦げてしまうだろう。屋外のデッキの上でやっているが、こぼれたとしても火事になる心配はない。

 加熱すると瞬時に必要な範囲が完全に融け、加熱をやめて息を吹きかけると、瞬時に固まる。
 50% や 60% のハンダとは全く異なる世界である。63%ハンダは白い。固まるときにはこしあん状態にはならないので、失敗することもない。このこしあんの状態で少しでも動かすとハンダにヒビが入って失敗である。

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2023年12月05日

続 旋盤上で回転砥石を使う

 ドレメルを保持して何を削ったのかという質問があった。
 これが欲しくなった最初のきっかけは、当時持っていた小型旋盤の3爪チャックがかなり偏心していたので、それを削って修正したかったからだ。小型旋盤用のコレット・セットがなかったので、心を出して掴めなかった。爪は十分硬く、熱処理がしてあることがわかった。

rotary tool on the lathe 目的の太さ近傍の鋼の丸棒を掴み、薄いディスク状に切り落とす。それを爪を開いて一番奥に入れる。直角をよく確かめながらチャックを締め上げる。そうしておいて回転砥石を中に差し込んで削り、3つの爪に砥石が当たることを確認する。これで削れた中の面は心が出ている。爪を外しディスクに当たっていたところを別の砥石で磨り落としてワークに当たらないようにする。これで完成だ。 
 こうすることにより、車輪を掴んで軸穴を加工するのは簡単になった。

 最近、この話をクラブ内で公開すると、その方法はAmazonで売っている部品の使い方説明に載っていると知らせてくださった方があった。誰でも思いつくやり方なのだが、当時はこの方法を編み出したことが嬉しくて、何人かの友人に見せて得意になっていた。若かったのだろう。


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2023年11月27日

countersunk screw

 子供の頃、皿ネジがミシンの針板に使ってあるのを見た。ネジの頭が出ないので都合が良いものだと思っていた。父にその話を切り出すと、「そういうものではない。」と言うので驚いたことを覚えている。
「確かに頭が出ないことも利用しているが、目的は他にある。」と言った。

 皿ネジの嵌るところは90度に仕上げてある。ドリルの先は118度である。すなわち、ドリルの先で凹ませたものを皿ネジで締めると隙間が空くから、90度のカッタで切り込まねばならない。こうして締めると、その部品は2次元の締め付けができる。要するに位置が決まって動かない。皿ネジ穴を作るには専用工具を使うべきなのだ。

 今回の固定には皿ネジを使って2本で固着している。これは便利である。ネジの耐剪断力が十分であれば、組立分解が容易だ。たくさんのネジを使う必要がない。コメントを戴き解説を書く必要があると感じた。

 構造をよく考えて設計すると部品が減り、工程も大幅に減らすことができる。これは父にうるさくいわれたことである。

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2023年11月05日

続 糸鋸弓の故障

 修復するには、このネジの規格を調べる必要がある。はじめはインチネジだと思い込み、手持ちの全てのネジゲージに合わせてみたが、合うものはなかった。それではメートルネジで、と調べてみた。径から考えるとM5のようだが、合わない。

 手持ちの全てのタップを動員して調べたところ、M5-P0.9という旧JISネジのタップがスルスルと通った。同じネジのダイスにももう一つの雄ネジが通ったので、これで間違いはない。
 最近はネットショップがあるので助かるが、これはそう簡単には見つからない。頭が六角穴のキャップボルトを買いたいが、極めて難しそうだ。今までは蝶ネジの頭が邪魔であったが、それが小さくなると取り扱いやすくなるはずだ。
 製品が見つからなければ、雌ネジも捨てて、全て新しく作ることになるだろう。

fastening screw on coping saw 今回のネジの故障の原因は、四角ナットの片方で刃を押さえたことによる。すなわち、四角ナットがいつも傾いて締められたのだ。これを避けるには、反対側に糸鋸刃と同程度の厚みの板を付けるべきだ。0.3 mm程度の板を貼るだけで解決するだろう。あるいは工具鋼のかけらから、そのような四角ナットを削り出せば良い。暇をみて、やってみたい。今回の四角ナットは、刃を押さえる側がプレスによってギザギザの模様が付けられている。すなわち加工硬化しているので、雄ネジがより駄目になりやすかったのだろう。
 国産の弓には、厚目のバネ板で挟んでからネジで糸鋸刃を締めるものがあるが、それはネジに対するストレスが小さいはずだ。 

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2023年10月30日

続 installing the flywheel

 前後の蓋を作る。フライホィールの孔に押し込めるように、+0.03 mmに削る。僅かのテーパを付け、先の部分は手で嵌められる程度にする。残りの部分は万力で締めて入れるわけだ。ブラスであるから締めれば入る。ロックタイトを塗って押し込む。フランジ部分から少しはみ出すので、十分に回っていることが確認できる。それを拭き取って、溶剤で湿らせた紙タオルできれいにする。

hollow flywheel シャフトは Φ5である。リーマを通してあるからギリギリで入る。このとき向こう側の孔に命中しないと大変である。こういう時は、相手側の内側を円錐形に凹ませておく。押し込めば一発で通る(この写真を見て角に傷がついていると思ったが、切り粉が載っていただけであった)。


temporary placing 軸にロックタイトを塗ってゴロゴロと廻しながら待つと、固まる。

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2023年09月24日

絶縁車輪を組む

 輪心に、絶縁紙を巻き付けて貼らねばならない。簡単そうに見えても、これにはかなりの骨(コツ)がある。完全な接着がされていないと、タイヤを押し込んだ時にばらばらになる。また、タイヤの内側には微妙なテーパが付けてある。押し込み始めには全周が嵌まっていなければならないのだ。

 瞬間接着剤で貼る手もあるが、全てを均等に密着させて貼るのは、かなり難しいのではないだろうか。筆者は下記の方法で貼る。

pinching insulator 絶縁紙を細く切るが、厳密に幅を合わせる必要はない。長さは、[所定の寸法+5 mm]に切り、末端を折る。
 そこをつまんだ時に、全体に張力が与えられるような位置を折るのだ。エポキシ接着剤を塗り、巻き付けてつまむ。このまま10分置くとほぼ固まる。そこで、外してつまんだところを切り取る。重ならないように長さを正確に決めて切る。その部分を押さえるようにクランプで締める。この時は、接着剤はまだ完全には固まってはいないので、押し込まれて滑らかにつながる。長さが足らなくなって、わずかの隙間が空いても構わない。
 写真左は輪心表側である。クイル駆動のレリーフを貼るために、凹凸をサンダで削り取ってある。右は裏側である。裏のボスは、祖父江氏の手法であり、張り出している。当然、この車軸はその分短い。この写真でも分かるように、絶縁紙は少し裏側にはみ出している。後で切り落とすから、気にする必要はない。 

 接着剤の硬化後、よく切れるナイフで、はみ出した絶縁紙や接着剤を落とす。全体に軽くヤスリをかけて、押し込み側の角を落としておく
 平らな金床(かなとこ)の上に置き、タイヤをゴムハンマで丹念に叩き、少しずつ沈める。裏が面一(ツライチ)になったら出来上がりである。絶縁紙が少しめくれた所があれば、エポキシ接着剤を爪楊枝で押し込み、固まったら削り取る。この作業の時、踏面、フランジにはヤスリ等を当ててはいけない。

 この作業は両手指がエポキシまみれになるので、あまり好きな作業ではない。横に溶剤スプレイを置いて、紙タオルの小さく切ったものを湿らせて拭き取る。とても手間のかかる作業である。

 プロの手法はその点は大したものだ。おそらく、速度が2桁以上違う。

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2023年06月22日

饋電線

 クラブの大先輩のH氏から電話があって、工事の手伝いに行った。以前からの懸案であった側線へのポイントマシンの取り付け、配線の依頼であった。H氏は片手の自由がきかないので、この種の下に潜り込んでの作業はできない。その種の仕事のお手伝いは、喜んでさせて戴いている。H氏の様々な工夫を見せて戴くのが楽しみだからだ。

Mr.H's layout (1) 今回は裏側をよく見せて戴いた。裏には裸銅線が張り巡らせてある。レイル1本毎にフィーダ線がハンダ付けしてあり、それは路盤下でこのようにハンダ付けされている。

 低電圧であるから、被覆の必要はない。複線線路の順に設置してあるから、間違うこともない。その部分を磨いて銅線を巻き付け、フラックスを塗ってハンダ付けをする。あっという間の仕事である。
 ポイントは筆者が作成したもので、トングレイルの方向によってフログの極性が変化する。ポイントマシンの接点にフログをつないで完成である。

Mr.H's layout (2) 試運転の結果は上々で、今後が楽しみだ。このレイアウトは電車主体の運転を楽しむもので、曲線の半径は小さい。直線部が長いので、気分が良い。近鉄電車の6連が軽快に走る。 

 右下の部分は跳ね上げ式の橋で、出入りが楽である。持ち上げると橋のかなり手前から給電が遮断されるので、安全は確保される。 

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2023年05月27日

walk-around layout

 32年前に取り壊したレイアウトの解説を希望されているが、写真が見当たらない。引越し時にどこかに紛れてしまったようだ。

walk around sectional layout 記憶をたどるとこういうことになる。右端の戸棚は自作で、350 mm高、1800 mm幅の扉が手前に倒れて、平面になる。それには、さらに左へ展開できる路盤があって広げていたが、キッチンカウンタの高さが少し上がったので、一部を切り落とさねばならなかった。というのは蝶番で線路が畳まれて、重ねて戸棚の中に収納されていたからだ。蝶番の高さが上がれば、跳ね上げられた部分は天井に当たるのは当然だった。
 その延長は3つのセクションに分かれ、軽く作ったが、ポリ塩化ビニルの路床で音が軽減された。あちこちに下駄を履かせ、高さを整えた。下駄には番号を振り、組立の時間を節約した。

 転車台は簡便な作りで手動である。径は570 mmで、大きな機関車は載らないが十分楽しめた。この動きを楽しむには、高さが大きなファクタであることがよく分かった。 

 赤の矢印は、SWAC のジャック位置である。引抜いて次のところに挿せば、問題なく制御できる。これは魚田氏が大変気に入った。
 後に、右下の方へと仮設の線路を延長して、緩和曲線のデータを取ったが、それは短期間だ。 

LDK2LDK 図だけでは分かりにくいので写真を添えるが、低い戸棚は全く別のものが置いてある。これは貸す直前の状態で、エアコン、ガスヒータ、ガス台、食洗機、壁紙などは当時のものである。 

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2023年05月25日

spline joint

 床材を張る部屋が一つしか無い時は良いが、廊下の左右両方に部屋があって、連続的に床を張らねばならない時はどうするかが問題になる。 
spline joint こういう時は廊下の一方の壁に沿って最初の1本を打ち付ける。それは完全な直線上になければならないので、糸を張って確認する。廊下全体を張ったら、各部屋の入り口を連続して張る。部屋の中まで同じ調子でできるだろう。しかし反対側の部屋をどうするかだ。床材のその方向には、tongue(飛び出している部分)が無い。

making a spline 床板の切れ端から、溝にやや固めに入る細い材料 spline を切り出し、紙ヤスリで研いで押し込める程度の厚さにする。 強力な接着剤を塗って押し込む。このスプラインは、長さは30 cmくらいにすると失敗がない。一本ものである必要はないので、何本かに分けて嵌め込むと良い。筆者はこのスプラインを作るのが得意で、Ben が褒めてくれた。 普通の人にはできないのだそうだ。
 こうするとどちらにも凸部がある部材ができるので、そこから反対方向に張り始める。この部材には、最初に両方向から釘を打っておく。そうしないと反対側に打った時にずれるおそれがある。

 この種のテクニックは友人の大工から学んだのと、本を読んだことから得た。400ページくらいの本で、それを読むと体力と機械があれば家を建てられる。日本の大工の腕とは異なる次元のテクニックなのだ。最近は日本の大工も機械を使うようになったので、それにやや近付いていると感じている。 

spline splineは自分で作るものと思っていたが、調べると市販されている。1.2 mの長さで3.5ドルだそうだ。自信のない人には、ありがたいだろう。 問い合わせたところ、30 m分で160ドルというのもあった。この材料は堅木でなければならない。

 数学を勉強された方はスプライン曲線という概念をご存知だろう。有限個の点を通るなめらかな曲線を作る工夫だ。この図では三次スプライン曲線になるが、曲がり方が大きいので、多少ずれる。 
 spli〜で始まる言葉は、ほとんどが木を細く裂いたものに関係がある。splint は骨折の治療に用いる副木(そえぎ)である。ギプスが実用化されるまではこれしかなかった。  

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2023年04月07日

六角ジョイントのナット

 六角ジョイントのM1.4ナットに孔をあけるやり方が話題になっていた。はっきり言ってしまえばそれほど気にしなくても良い。というのは、多少のフレがあっても、それは吸収されてしまうからだ。とは言え、フレはないほうが気分が良い。

 紹介されていた方法は、六角ナットを保持するドーナツ状のヤトイを作って万力に銜え、万力の位置をXYテーブルで微調整して孔をあけるというものだ。この用途には十分ではあるが、心出し器なしで、これで心を出すのはかなりの熟練が必要だ。真似をして失敗する人もあるだろう。

 最近会った友人がどうやったら良いだろうと聞くので、こう答えた。
「六角ナットにM1.4のブラスのネジを入れてハンダ付けする。それを旋盤のチャックに銜えて、センタドリルでΦ1穴をあける。次いで希望の径のドリルを使って穴をあけてやると六角部分はドリルに突き刺さって回収されるはずだよ。2つ3つなら一度にできる。」
 これなら自然に心は出る。リーマを通したほうが良いだろうが、その時軸が傾かないようにする。

 ネジは無駄になるが、高いものではない。ブラスネジは軟らかくてよく削れるはずだ。これは無くなるヤトイである。この手法は歯車の軸孔径を大きくする時などにも使う。その時はちょうど嵌まるシャフトを作る。覚えておいて損はないテクニックである。三爪チャックではつかみにくい。小径のコレットがあると良い。コレットの平行部分が長ければ、たくさんのナットをネジで軽く締めてハンダ付けし、その一連のナットをコレットに入れて締めると心は出る。一気にドリルで貫通させることも出来るだろう。もちろん後でハンダを外す。

[追記] いろいろな質問が来るが、結論として、「多少の振れなどはすべて吸収されますから、とんでもない振れでなければ、問題ありません。」とお答えしている。 

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2023年03月06日

伊藤 剛氏の Gandy Dancers

 伊藤 剛氏の線路工夫を修理中のA氏から、動画が送られてきた。これは皆さんにも見て戴こうとYoutubeに upしてもらった。

 これである。工夫の動きが少々速いが、このような具合である。細い鎖が体の中を通っていて、それを引くとツルハシが持ち上がる。上体も同時に動き、きわめて実感的である。

 さて、列車が来ると退避するが、そのときにはノートの綴じ具をレールとしてスライドさせている。本体の基盤は、耐久性のある材料で作り直す。 

 機能が復元されれば良いので、思い切った修理になるはずだ。 

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2023年03月02日

続 Benderの破損

Bender プレスで押すというのはこのような状態である。上のネジ部分を外し、押す刃の部分が自由になるようにした。
 プレスのラム(上下する棒)で押し付けるだけのことである。とても使いやすい。以前のネジを廻す方法は、決して楽な方法ではない。この写真でも分かるが、ネジの当たる部分には派手に傷がついている。筆者も拇指の問題があり、手術はしたがあまり無理はしたくないので、ネジを廻すことは避けたい。

 外してみて分かったが、この上の刃の部分の出来は非常に良くない。砥石で擦ってなめらかにした。製品では縦フライスでさっと削っただけで丸い切削痕が付いていた。材質はおそらくS45Cあたりだろう。一度熱処理して、再度研ぎ直すつもりだ。 

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2023年02月28日

Benderの破損

 この Bender を長年使ってきた。これは30年以上前にアメリカで買った。NorthWest Short Lineという会社が作っていたが、今は中国製になったようだ。
 数年前にネジを取り替えた。以前のネジは、廻す部分が小さく、しかも長期間使っているうちに、つまみが欠けてきたのだ。要するに厚いものや、幅の広いものを曲げるのは、過大な負荷だったということなのだろう。日本製のインチねじの頭にプラスティックの大きな握りを付け、調子良く使っていた。 

bendeer 今回はホッパの排出口のゲートを作るために t 0.5の板を曲げた。間口は 36 mmである。この程度の厚みなら行けると思ったが、これも過大な負荷であったようだ。
 この種の工具はブレーキと呼ばれている。工場では油圧で動く型で曲げている。

Bender 2本の押しネジがねじ曲がった。ネジが熱処理されていなかったからだろう。以前のネジは表面が黒かったのだ。
 ネジを糸鋸で切り落とし、外した。さてどうするか、である。また同様のネジを使っても同じことになる。また、インチサイズのネジは日本では買いにくい。

 こうなったら別の方式を考えるべきだろう。幸いにも、プレス機がある。上の刃をプレスのラム(垂直に動く押棒)で押せばよいのだ。 

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2023年02月22日

FEF4 のデモ運転

FEF4 先日の神戸の行事に慣性増大装置付きのFEF4を持っていった。6 mの線路と電源も携行した。テンダが重いので、機関車全体では 7 kg弱である。

 線路を敷いてすぐ、運転を開始した。単機でも出発時に動輪がスリップするのを見るのはクラブ員も初めてで、集まって見て戴いた。

 運転は難しいので、最初は許可しなかった。思うところで止められないので、大事故が起こる可能性があるからだ。実際のところ、筆者の運転でも2回停め損なった。しかしそれは超低速運転だったので、大したことにはならなかった。動いているのが見えなかったのだ。
 停止から極めてゆっくり起動することができ、その速度を保てる。それを見て驚く人も多い。怪しい低速コンテストとは全く異なる動きだ。

 先輩からはこのような言葉を戴いた。
「実物で見られる動輪の空転や、停止直前の滑走は、質量の大きさから来るものです。Oゲージ程度の大きさでは、到底実現不可能と思っていたものなので、大変興味深く見せて戴きました。何十年もの間研究された結果とお聞きし、趣味の神髄を味わわせて戴きました。」

 こういう感想を戴くのは嬉しい。


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2023年02月16日

続々々 Gandy Dancers

gandy dancers (3) 親方は、作業する場所の近くに居て線路を監視し、列車が近づくと笛を吹く。すると、4人一組の工夫は退去する。



gandy dancers (4) 文字で書くと簡単なのだが、この一連の動作はなかなかややこしい。親方はいつも首を左右に廻して見張っている。笛を吹くときは手が上がって、笛が口に咥えられる。ピーッという音は実際の笛ではなく電子音だった。首を廻す動きはこのメカニズムによる。親方の帽子が下のほうに見える。

 工夫は横にスライドするが、そのレールが面白い。文房具の綴じ具の断面が hat section 帽子型の断面になっているのを利用している。滑りはすこぶる良い。   

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2023年02月14日

続々 Gandy Dancers

gandy dancers (2) 通称エンヤコーラである。剛氏の遺品群を預かった時、この作動を再現したいという気持ちが強かったのだが、開けてみるとバラバラになっていて、かなり難しい状態であった。この写真は、箱の上に描いてあった剛氏による判じ物である。

 クラブ員の力でなんとか再現したいが、難しい点があった。それはmechanical sequential control 機械式シークェンス制御である。アナログ回路でタイマを作動させ、順次リレィが切り替わって、カムにより人形が動くと同時に、接点が切り離されたりつながったりする。
 すぐに調子が変わってしまう。剛氏が調整すると、15分ほどはなんとか動くが、その後は難しかった。

 コンピュータを使ったシークェンス制御でないと、とても無理ということは分かるのだが、専門家が居なかった。筆者が最初から勉強し直すのでは5年は掛かるだろう。オーストラリアの吉岡氏が、
「俺がやってみる。」
と手を挙げてくれたのだが、残念なことにその直後に急死されたので、そのままになっていた。 
 吉岡氏は剛氏と密に連絡を取り、方針を固めたところであった。急死の報を受け、剛氏は落胆して電話で、
「もう(再生は)だめかな。」
と漏らされたのは、亡くなる少し前だった。 

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2023年01月31日

続 モータ軸からピニオンを外す

removing projection welding A氏が持ち帰って、すぐ連絡があった。
「モータを回転させながら、回転砥石で擦ったら、すぐ取れたよ。」


 さすがである。歯車の軸方向の先端にはわずかに突出した部分があり、その部分を抵抗熔接(projection welding)してあるのだ。接着より確実で早い方法であろう。溶接された部分さえ無くなれば、何の抵抗もなく抜けるわけだ。
done! 今までの苦労は何だったのだろうと思えるほど、エレガントな解法であった。

 軸先端は微妙に細くなる可能性はあるが、問題ない。筆者はこの種のギヤ付きモータを多数持っているのだが、外すのが面倒であまり使っていなかった。そのモータの大きさも出力も適当であるので、大いに利用したい。  

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2023年01月29日

モータ軸からピニオンを外す

 A氏が来訪したときに、いくつかコアレスモータを進呈した。それらはテキサスのジャンク屋で買ったもので、軍用の取り外し品である。10年以上前に買ったものだ。おそらく、ミサイル等の操舵部品として装着されていたものが、定時交換されてジャンクとなり、放出されたと思われる。ほとんど新品同様なのだが、たまには動かないものもある。 
 ウクライナで多量のミサイルが発射されたので、しばらくは供給がなくなるだろう。 

projection welding さて、いくつかの軸にはピニオンがついている。これを外すのはなかなか大変であった。今までは万力に銜えて糸鋸で軸と平行に切り、それをニ回やると外れた。切る方向は直角にすると切る量が減るが、やはり大変な仕事で面倒である。

 A氏は、
「これはプロジェクション熔接の可能性が高い。」
と言う。もの作りの現場に居た方だから、広汎な知識をお持ちだ。

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2023年01月27日

続 track in track

 HOの線路のフィーダ(饋電線)は、1 mごとに確実に付けるつもりだ。横には巻尺を貼り付ける。サンプリング速度が大きければ、レーザ測距計でも良い。

 ここまで書けば、何をしようとしているかはわかる人は多いだろう。

 測定というものは定常状態で行うものである。さて、何の測定をするのであろうか。
 その測定に必要なものは、
巻尺
時計 (あるいは動画を撮って、毎秒のコマ数 fps を調べる)
の2つである。
 別にOゲージでなくても構わないが、より大きなものの方が、相対的に摩擦は小さく、誤差は小さくなるから、二重に敷いたわけだ。
 何が定常状態になるのだろう。 

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2023年01月25日

続 新年会

DE50 (3)DE50 (1) DE50を見たことがある人は少ないはずだ。筆者は中央線、関西線での試運転を見るチャンスがあった。エンジンの音がDD51とは全く異なったのを覚えている。ほとんど使われないまま、お蔵入りになったのは残念だ。

DE50 (2) この模型では、エンジンルームのドアが全て開く。ドアハンドルは内側に錘が付いていて、閉じた状態で安定化する。いつぞやのHOモデルとはさすがに違う。


DD54 (2)DE50(4)DE50(5) 3軸台車は実物のように3軸は独立していて操舵する。リンクは全て実物どおり作動し、バネの横剛性で復元する。急曲線を通るときの挙動が本物と同じで、見ているだけで楽しい。中に巨大なフライホィールが見える。慣性増大装置付きなのである。 

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2023年01月23日

新年会

NMRC 所属クラブの新年会があり、新入会員のA氏のデモ運転があった。おそらく誰も見たことのない種類の運転を披露して戴いた。


 45mmゲージでスクラッチ・ビルドされた国鉄のディーゼル機関車2輌が、自律して複線をランダムに往復している。たまたま線路が空いた状態であると、ポイントが切り替わり、渡り線を通る。素晴らしい音響効果があると同時に霧化装置からの煙も出る。動きも重々しい。機械にも電気にも強い方なので、今後が楽しみだ。

DD54 (1) DD54である。実物は整備に関する問題が解決せず、短命に終わったが、造形はとても良かったと思う。この模型は素晴らしい牽引力を持ち、本物のように惰行する。メカニズムは極めてよく出来ている。 

 今までにこの会では、素晴らしい仕上がりの作品をいくつか拝見してきたが、外見だけではなく、中身に注力した模型はあまり見ることがなかった。そういう点でも、会員の気持ちがそちらに向くことになれば、このように中身がある模型が発表されるきっかけとなろう。 

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2023年01月21日

track in track

track in track Oゲージの線路の中にHOゲージの線路を置いてみた。意外なことにぴったり嵌まる。浮かないように小釘で打っておくことにする。直線部で分岐に掛からないところだけだから、 長さは 7 mに限られたが、十分に仕事ができるだろう。


 さて何をしているのだろうか。HOゲージの線路は、Oゲージ車輌の走行の邪魔にはならないことが判明したので、しばらくはこのまま仮固定しておくつもりだ。 

 準備はできたが、肝心のHO機関車がない。唯一の機関車は、デモンストレータとして貸し出しているので、しばらく戻って来ないだろう。

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2023年01月07日

続 突切りバイトを作る

 刃先は、200 ℃を超えると焼きが戻り始める。ということは、ハンダが剥がれない温度範囲で使えば、全く問題ないわけだ。このような理屈を理解していれば、安心して使える。

 筆者を攻撃した人たちは、刃先が剥がれるから危ないと言っていたが、剥がれることはないし、たとえ落ちてもそれは下に落ちる。その瞬間はロクロ屋で見たことがある。油が切れたからだ。すなわちその批判は、客観性のない無意味な攻撃である。実際にやったことがない人なのだ。

 キィ材を使うのは昔ロクロ屋で教わった。安くて実用的である。S45Cという鋼材は、剛性が大きいので都合が良い(快削黄銅の2倍のヤング率がある)。太さは 8 mm角程度が良い。すくい角は 0 度から始めて、各種作ってみるべきだ。どの程度が良いかは、すぐ分かる。快削黄銅なら、切り粉が細かく切れて出て来るのが理想的である。これは人によって好みがあり、筆者が見た親方の中には、すくい角を付けた上で、刃先から1 mm以内のところにコブ状の膨らみを残して切り粉の連続性を断ち切る(要するに折るわけだ)人も居た。これは、後には ”chip breaker”と呼ばれるようになった。

 上記のリンクの中にカンナの刃を二重にする話がある。これは日本の二枚刃のカンナも同じである。アニメイションが実にわかりやすくて良い。
 金属であっても似た現象はあるだろう。切り粉は粉々になったほうが、仕上がり面に傷がつかず、綺麗になるように思う。そういう点ではすくい角は少ない方が良いだろう。実際にやってみて好みの角度を探すべきだ。

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2022年12月12日

ある読者の意見

 しばらく前の貨車を塗った記事を読まれてコメントを送ってきた方があった。それを本文で使うことを許可されたので、紹介する。

 素晴らしいです。これらは以前の記事の「真鍮製模型を目方で買う」のジャンクを組んだものですね。既製品より細密で頑丈であるわけで、理想的な模型です。
 車輪の内側が錆びていて、外側が油で濡れているのは感動的です。最近のTMSは「フォトジェニックなものを載せている」と、今野氏の文章にありましたが、こういうところに注意を払ったものをまず見ません。裏側のメッキが光っているものが多いのは残念です。

 今野氏の文章を引用している。鉄道は重いものが動くというところが魅力なのである。グワーンと動き出して、ゆっくり動き、なおかつなかなか止まらない。それを見たいのだ。筆者の仲間内では、物理的な慣性を追求しているが、正しく動けば電気的な模擬法でも構わない。そういうことを真面目に考えないと、「おもちゃだ。」と言われてしまう。現実にある場所で小学5年生の坊やがそれを言ったので驚き、少し話をした。彼らはCGによるリアルな動画を見ているので、そう感じたという。これは無視できない意見だった。
 最近複数の場所で走っている鉄道模型を見るチャンスが有ったが、どれもこれもチョコマカと走っていた。見る気が失せる。

 車輪の裏の件はそのように感じる方が多いなら、素晴らしいことだ。床の裏まで正確に作ったという模型の車輪がぴかぴかでは情けない。少々付け加えると、最近のローラーベアリングを使った台車の車輪は外側が油で汚れていない。日本なら塗料が塗ってある。アメリカの場合は、錆色である。クラックの発見の邪魔になる塗装をしないことになっているのだ。
 
 今野氏が今後何をなさるつもりかは存じていないが、期待したい。 


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2022年11月18日

続 慣性増大装置

 この動きについて、いろいろな人から感想を戴いた。実物の鉄道の慣性の大きさ(すなわち、摩擦の少なさ)には改めて感じ入るものがある、というものが多かった。

HO gauge momentum emphasizer これはHOゲージ用である。T氏が作ったものだ。最初はこの径の材料を挽く旋盤がなかったので、5円玉を重ねて作った。次に筆者に連絡があったので、ちょうど良い材料を挽いて差し上げた。軽く動くが、如何せん、小さいので素晴らしい効果と言えるほどではない。しかし、1 mほどは惰行する。
小形の4-4-0あたりに牽かせると、逆回転ブレーキを実現できるはずだ。
 設計をさらに工夫すると、もっと軽く動くようになると思う。

 今回は大型のマウンテン(4-8-2)しかないので、とてもその慣性を実感するほどのことは出来なかった。そのマウンテンはHO用の高効率ギヤを搭載し、極めて滑らかに走る。低速も高速も自在で、しかも静粛なことこの上ない。

 ある人が見ていて、走行音がしないのには驚いたようだ。高効率ギヤの組見本を触って、その滑らかさ、静粛性に感嘆した。押したときの感触にも驚いたようだ。
まがい物とは全く違いますね。モータが付いていないような感触です。」
と言う。実際には押すと発電してライトが点く。

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2022年11月16日

慣性増大装置

 13日のKKCの総会で、3種の慣性増大装置を披露した。

 OゲージはいつものFEF4ではあるが、例の「逆起電力キャンセラ」を追加搭載している。逆回転ブレーキが、熟練しなくても出来る様になった。等価慣性質量は170 kgで変化はない。

G gauge momentum emphasizer 今回はA氏にお借りしたGゲージの補助テンダを披露した。質量は約 5 kgだが、等価慣性質量は 700 kgである。要するに軽自動車ほどの質量を、摩擦の非常に小さな台車に載せているのと同等である。押しても動かない。しばらく力を入れていると、少しずつ動き、止まらない。長さ5.4 mの線路をゆっくりと端から端まで転がった。ギヤはOゲージ用の高効率3条ウォームである。全く無音で動力採取、放出が出来る。チェインは2本掛けで、計4本ある。2本ではとても持たない。各2本を、位相を半分ずらして取り付けている。本物のような鋼製のチェインであれば、このようなことをすると直ちに壊れるが、この模型のチェインはPOM製で少し伸びるのだ。だからこの形が音の点で最良となる。 

 A氏は自宅庭に敷いた線路で運転しているが、この車輌は実物換算350 mの惰走をしたそうだ。曲線上の記録であるから、直線なら実際はもっと走るはずだ。

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2022年11月12日

銀ハンダ

 銀ハンダのことをここに書いても、実用化する人はほとんどいなかったようだ。最近このブログで拝見し、心強く思った次第である。
 筆者は銀ハンダを多用する。それは温度差を利用して、細かい部品が落ちないようにするためである。もちろん、硬さを利用して、間違った孔の埋戻しに使う。小さなブラス片を押し込み、塩化亜鉛を塗ってガスバーナで炙れば良い。ロストワックスの鬆(す)を埋めるときも使う。
battery lid 銀ハンダというものは、あまりうまく流れてくれない。ガスバーナで焙ってもこの程度である。すなわちこれを使う限り、ハンダで埋まってしまうということはまずないのだ。



 この部品は、ディーゼル電気機関車の脇のデッキ上にあるバッテリィ・ボックスの蓋である。ラッチを立てて引き上げるようになっている。ここが単なる歩み板では面白くない。思い付いて孔をあけ、裏からロストワックスの部品をはめた。この部品は売るほどあるのだ。孔を正確にあけなくても、バーナで炙って裏から銀ハンダを押し付けると、適当に流れて孔の隙間が埋まる。その時、細部が埋まってしまうことはない。このときの裏の盛り上がり具合をご覧になると、流れにくさが実感できるはずだ。63%を用いると、一瞬で裏に廻ってハンダが全体に均一に付いてしまう。上の部品は部品がまっすぐ付いていないことに気が付いてやり直した。

 こうして出来た部品を炭素棒で所定の位置に取り付ける。強く加熱しても、細かい部品が落ちることはないから気楽だ。 


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2022年11月10日

続々 ある装置

 先に写真で示した装置の一群は、トランジスタを組み合わせたもので、作動することは作動するが、起動電圧が低くはない。3 V程掛けないと動かないので面白くない。1 Vで起動するようにしたかった。  
 しかもトランジスタは抵抗器でもあるので、多少の発熱もあるから良くない。その後開発されたものはSCR(Silicon Controlled Rectifier) を使っている。通称サイリスタ(Thyristor)である。
 はじめはそれと等価なものをトランジスタの組合わせで作ったのだが、損失が無視できなかった。定数を変化させて効率の良い部分を探したが、SCR にはとても敵わなかった。

 SCR は発熱が少ないから放熱板は要らない。ゲートが on になれば、そのまま導通を保つ。回路は、ある程度詳しい人なら、たちまち分かるであろう。原氏の電車群にはこれが大量に採用されているはずだ。

 筆者は機関車を改良していたので、この装置は使っていない。フライホイールをモータ軸に付けたものをこれで廻すと、確かに惰力でよく廻り、止まりにくいが。それは鉄道車輌の本来の動きではない。動力車は慣性モーメントが小さくなければならないのだ。
 付随車に十分な慣性を与えるべきである。


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2022年11月08日

続 ある装置

 昨年のKKCの総会で、筆者の慣性増大装置付きの機関車を披露した。短い線路の上でまずまずの走りであったが、電源装置に問題があった。中点OFFなのだが、惰行させるには線路が短か過ぎて、操作が難しい。ところが、この逆起電力キャンセラを搭載すれば、何も考えなくても、惰行の途中で逆転ブレーキを掛けられる。テンダに内蔵されたフライホィールからのエネルギィ放出を、動輪の逆回転で行うことができるのだ。これは今までは、かなり広い場所でないとできなかったのだ。
 秋のKKC総会でそれを披露することになった。

 機関車自体はほとんど見かけ上の変化はない。あと、HOの機関車に3条ウォームを搭載したデモンストレータを持っていく。現物を触って、その効果を確かめられると良い。内野氏の作品も高効率ギヤに取り替えてあるものを持っていく。

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2022年11月06日

ある装置

BEMF canceler この装置は1984年に作ったものだ。試運転だけしてそのまま放置され、埃にまみれていたのを洗ってみた。
 
 当時、筆者と祖父江氏は、走りの改善に血道を上げていた。たがいに、思いつくすべてのことを実験した。どんな些細な思いつきでも報告しあい、可能性がないか探っていた。その中で祖父江氏が、芦屋の原邸で電車を走らせているのを見て、問題点を報告してきた。コアレスモータ + スパーギヤでよく走るのだが、惰行が良くない事がある。
「スロットルを下げると減速してしまうんだぁ。中点オフの逆転スイッチで回路を遮断するとうまくいくんだけどね。なんかうまい工夫がないもんかい?」
と聞いてきたのだ。電源装置の中でモータの発生した電力が喰われてしまっているというわけだ。

 要するにモータの逆起電力を遮断することができればよい。印加電圧より発生電圧の方が高いときは回路が切れればよいわけだ。様々なことを考えたが、友人の電気マニアが考えた回路が一番簡単であった。早速作って試してみた。これはその初号機である。
 数台作って祖父江氏に渡したが、筆者はその後出国してしまい、しばらく会えなかった。その間に色々なことがあったようだ。原氏の電車を作っていたT島氏の弟が電気技術者で、同様のものを作り、その方が性能が良かった。それを採用したようで、問題は解決した。しかし筆者は電車をほとんど作らないから、筆者の興味の外にあった。

 その後永末氏が作ってくれた筆者専用のDCC完全直流デコーダでは、惰性で走るときは完全にOFFになるので、具合が良い。これは1985年に得た教訓を生かしたわけだ。

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2022年10月29日

車輪踏面の粗さ

 筆者はNゲージには触ったことがないが、それに詳しい人が言う。
「Nゲージの車輪の転動音はかなりひどい。」

 シャーという音が響いて、会話もできないそうである。走らせることをシャーシャーするという人もいるそうで、それには呆れる。
 彼は筆者の博物館に来て、その静粛性に驚いた。
「模型の音がしない。」と言う。

 Nゲージのその音はどこから、来るのだろう。レイルを撫でてみると、かなり滑らかである。そうなると車輪しかない。
 もし伝手があれば、車輪の表面を電子顕微鏡で見ると面白いだろう。ニッケルめっきが施してあろうが、それの表面は月の表面のようにあばただらけになっているはずだ。
 それを改善するにはめっき面を研磨するしかない。#1500程度のサンドペーパを湿らせて当てれば良い。もちろん旋盤上である。ほんのちょっと磨くだけで格段の差が生じる。旋盤のベッドは保護しておくことは不可欠である。
 HOの車輪を研磨する人は、このブログで初めて見た。

 問題は、この種のことが全く話題にならないことである。どうして雑誌にこのことが記事として採り上げられないのだろうか。これはメーカ・サイドの問題である。製造時に一手間かければ出来ることで、それによって得られた静粛性は、他社に差をつける大きな切り札になるはずだ。めっきは、旋削に比べて表面が粗いことを知らないはずはないのだが。

注: めっきは日本語であり、外来語でないから、ひらがなで書くべきである。JISもひらがなである。 

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2022年10月21日

絶縁軸

 brass_solder氏のブログに、Katoの機関車の動輪を分解した写真が載っている。これは話には聞いていたが、見るのは初めてだ。フランジの形はかなり良い。

 カツミに居た高橋 淑氏の話を聞いた。60年代に高橋氏はアメリカに行くたびにIrvin R. Athearn氏に会った。アサン氏は鷹揚な人物で、
「今度は何を盗んで行くんだい?」
と聞いたそうだ。それほど日本の模型はアサンからの影響を受けているということなのだ。

 1980 1970年代に、カツミはHOゲージのEF65を作った。それはベストセラーになり、カツミは大きな収益を得た。その設計には、この絶縁軸が初めて採用された。これはアサンの機関車には1960年代から採用されたアイデアである。今でもカツミ製のギヤボックスにはこのアイデアが使われているという。

 同様にNゲージの動力車には当然のように採用されている。

 ”Athearn”の発音は不明なところが多い。筆者が聞く範囲では、ェアサンという人ばかりだ。エイサンが正しいと言う人もいるが、筆者の知人に、「友人はAthearnという名字だが、本人は”ェアサン”と言っている。」と言われたこともある。この話題の人物本人が、なんと言っていたか、知りたいものだ。

 読者諸氏からのご指摘を受け、発売年を訂正しました。ご指摘感謝します。 

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2022年10月17日

内野氏の動輪の構成

driver center これはDM&IRの2-8-8-4の動輪を作るプロセスを示している。旋盤で挽いた輪心に、概略の形を鉛筆で描いてある。そうして色々なやり方で、形にするべく試行していたのだ。


 クランクやカウンタ・バランス・ウェイトを貼り付けて、旋盤で挽き落とす方法も試したようだ。結局は、結果には不満であった。クランクを厚板から切り抜いて、孔に落とし込んでハンダ付けしている。

crank この板は 6 mmの厚さだ。実に見事に切り抜かれている。左は完成した鋳物の原型である。これは変色していないから、シリコーンゴム(RTV)でゴム型を作ったのであろう。生ゴムで型を取ると、加硫時に発生する硫黄化合物の蒸気で、ブラスは黒く変色する。 
 
 カウンタ・バランスも同様に切り抜いて嵌め込まれている。嵌め込んでから、裏を削って肉を盗んである。そうしないと、ヒケが出て、表面が凹んでしまうからだ。一方、クランク部は旋盤で表面を削るから 多少のヒケは問題ではなくなる。バランス・ウェイトは鋳肌のままである。 

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2022年10月13日

内野氏の糸鋸作業

coping saw 内野氏の”抜きカス”を拾って来てある。これが何の部品になったのかは、しかと覚えがない。このようなものを大量に正確に抜くのは難しいと思うが、内野氏は鼻歌交じりでスイスイと抜いていた。鋸刃は 4/0 だった。
 ある友人は、「その鼻歌に秘密がある」と言う。糸鋸はリズムが必要だ。いつも同じように引かないと、引っかかる。そのリズムの元が鼻歌だと主張する。そうかもしれない。
 最近はそれを思い出して、実行している。なかなか良い。

wheel center blank 右はインデックスで穴あけをしたあと、糸鋸で抜いてスポークを作る直前の状態である。左は何をするつもりであったのだろうか。

 祖父江氏の工房を訪問したときも、このような状態のものがあった。糸鋸を通して、筆者と喋りながら抜くのだ。ほとんどワークを見ていないような感じがした。そのスポークの仕上げはキサゲであった。

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2022年10月02日

金網 

chicken coop mesh (2) これはディーゼル電気機関車のラジエータ部分の覆いである。


 通称chicken wire であるが、ある友人から chicken coop mesh と言うのが正しい、と言われたことがある。調べてみると、前者は六角の網目のものを指すらしい。後者は、スポット熔接してある少し太めの格子のようだ。この場合は後者が正しいだろう。上を人が歩いても壊れない程度の太さだ。1/4インチ径(6.35 mm)くらいだろう。1/48では0.13 mmということになる。

 この金網はエッチングで出来たものだ。非常に腰の強い板を使っている。日本製のエッチング部品は、例外なく、腰がないクタクタの板である。焼き鈍しをしたからだ。よく考えて欲しい。抜き落としをしても、応力の開放によって反ったりすることはない。ということは、焼き鈍し板を使う必要は全く無いにもかかわらず、一律に焼き鈍し板を使っているというのが日本の模型屋の現実である。そんなことはやめるべきだ。

chicken coop mesh (1) 寸法を測って見た。厚さは0.4mm弱(15ミル)、網の部分の太さは、0.21〜0.26mm程度である。こんなに細くても平面性が保たれている。

 飛び出している部分は、ジグを使って所定の位置で曲げる。

 板はアメリカのブラスで、日本の快削材よりさらに硬い。日本なら、リン青銅板にエッチングして抜き落とすべきだろう。

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2022年09月28日

ケガキ用ノギス

 ケガキにはノギスを多用する。本当はやってはいけないのだろうが、この方法を採用する人は多いはずだ。この方法は昔からTMSにも書いてあった。

Mr.Go Ito's 伊藤 剛氏のノギスである。両方の爪を削ってある。すなわち、右でケガき、左でもケガくことができる。剛氏の遺品にはこの種の工夫が多い。外寸法測定側(下)だけが削ってある。



Mr.Uchino's これは内野日出男氏のケガキ用ノギスである。片方を短くし、尖らせてある。照明の具合が悪く、影になってしまったことをお詫びする。上側の爪と同じような形である。
 これは理にかなっている。長い方を深く保てるので、距離が斜めにならない。すなわち正確にケガける。
 不思議なのは、内寸法測定側も同じように削ってあることだ。内寸法側でケガくことは少ないと思う。孔の縁に沿って一定の距離で線を引く事があるのだろうか。それほど機会はないものと思われる。  

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2022年09月22日

SP の inertial separator の排気管周辺

 SP Southern Pacificには山岳路線が多い。トンネルの中でも確実に働く機関車を長年に亘り、作り続けて来た。より低い温度の空気を吸い込むために、ラジエータの吸気は最下部から吸う。

inertial separator on SP engine (1) モータ冷却用の吸気は高いところにあって、しかも慣性による塵埃分離機で濃縮されてゴミをたくさん含む排気は、すぐその上から放り出される。トンネル天井面にあたって跳ね返るのもあるだろうが、大きな問題は低速時に気流が周回することだ。要するに排出したものが、すぐに吸い込まれてしまう。

inertilal filter hatch on SP engines これを防ぐには、その「周回気流が発生する位置」を上げるべきである。そのためにSPは1980年頃から、奇妙な板を水平に取り付けている。足は4本で、排気口を延長している。この図を見るとその効果がわかるだろう。なかなか賢い解決法である。

inertial separator on SP engine (2) 工作は簡単で、SPの機関車らしい賑やかな外観が再現できる。 

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2022年09月18日

続々 DDA40X を作る

building  a DDA40X  (3) DDA40X はエンジンフッドの中央部が盛り上がっている。それをどう作るかが一番の問題点である。
 前回は左右の盛り上がりを別々に作って中央で接ぎ合わせた。その接ぎ合わせのときに幅を決めねばならず、面倒であったし、計算値と現実は合わないこともあった。

building  a DDA40X  (1) 今回は左右を余裕を持たせて切り、隙間を空けた。その隙間には、後で帯材を嵌めてハンダで埋めることにした。別の大きな板で上を覆うので、わずかの距離の分しか見えないから、さほど大きな問題ではない。上の板は完全に密着させねばならない裏から63%ハンダで全面ハンダ付けである。下になる板には孔をたくさんあけておいて、流れ具合を確認する。この操作は非常に簡単である。この写真でアメリカのブラスの色がよく分かる。黄色である。快削で硬い。

 5本の6x6角材をフライスで高さを整えて削り、嵩上げ分を確保した。車体に載せて、上の張り出し分をハンダで仮留めしてから外し、確実にハンダ付けした。すなわち、車体との隙間は全く無くなる。

DDA40X Body section 車体側には、その角棒が当たるところに孔をあけ、嵩上げ部分を押し付けて炭素棒で加熱してハンダを完全に沁み込ませた。非常に強い車体になった。中央部が、通路として欠き取られて細くなっているが、強度は十分である。 問題はファンの取り付けである。こういう部分を動かすのは、筆者の趣味ではない。見えないところに手を掛けて、色が剥げたり、部品が欠落するのは耐えられない。


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2022年09月08日

続 DDA40Xを作る

DDA40X 3 (1)DDA40X 3 (2) ラジエータ・グリルの延長部分を作らねばならない。前回作った2輌をどのように作ったのだったか、40年以上も昔で、しかと覚えがない。
 ロストワックスではないように思う。木型を作って、近くの鋳物屋でふいてもらったような気がする。砂型鋳物特有の表面の色を持っているからだ。もうその鋳物屋は廃業して久しい。あるいはロストワックス鋳物をもらったのかもしれない。

DDA40X 3 (3)) 斜面が3つあり、曲面でつながっているところもある。実物は薄い板金製であるが、模型はブロックをヤスリで削り出さねばならない。フライス盤で、目見当で粗取りし、近い大きさまで削る。それを太い角棒にハンダ付けし、万力に銜えてヤスリで削るのだ。

 仕上工であった祖父江氏のテクニックを思い出している。こういうものは2つを左右対称に置く。削って、目的の形にする。
「なーに、人間の目は意外に確かなんだよ。左右対称に置いときゃね、違いがよく分かるんだぁ。」
 こういうときのヤスリ作業は、大きな単目ヤスリを用いる。ザクザクと削って行くのだ。新しいヤスリはよく切れる。  

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2022年08月27日

SD40 の改装

brothers of SD40'sbrothers of SD40-2's (2) SD40は1970年代に活躍したEMD(GMの電気機械部門)の6軸機関車である。これが改良されるとSD40-2となり、ますます売れてアメリカ中の鉄道がこの機種を購入した。それは”ダッシュ2”と呼ばれた。ダッシュが付いた機関車は電気系統に大幅な改良(制御回路をユニット化、HTC台車採用)を施して、メンテナンスが楽になった。外見上は長い下廻りに短い SD40 のボディを載せたので、前後にporch が付いたようになった。T-2は車体が長いので後ろの隙間がなくなり、この機関車はスヌートなので前も隙間がなくなった。SD40だけはKTM製。最近ヤフー・オークションにも出ていた。
 写真は上から、SD40T-2、SD40-2、SD40。 

reinforcing engine hood さて、これはKTM製のボディシェルに補強を付けている様子である。2つのタブにはネジが切ってあって、それが床下からネジで締められる。そのネジ穴付近以外を持つとどうなるか、はお分かりだろう。凹んでしまって隙間が空く。ブラス板が焼き鈍してあるからだ。微妙な歪みが出ても、焼き鈍すべきではなかった。HOでは問題にならなくても、Oの大きさではもたない。
 仕方がないので、4 mm角の棒を貼り付ける。タブに当たりそうなところは、フライスで削り落としておく。クランプで挟んでガスバーナで炙ると、63%ハンダは瞬時に融け、隙間に沁み込む。一瞬で完成である。このハンダの持つ特性を最大限に生かした例である。上は取り付けた状態、下は原状。

 この程度太いと、持ったときの剛性が全く異なり、「ゴン」という感じがする。  


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2022年08月19日

stress release

 日本製のディーゼル電気機関車は繊細な仕上がりで、素晴らしい出来である。しかし、全体がエッチングされた板で出来ているので妙に柔らかい。剛性がないので、ボディを持つと少し撓む感じがする。機関室が狭くなると隙間が見えたりして気分が悪い。仕方がないから、内側にstiffner(補剛材)を入れて剛性を大きくする。

stress release by etching アメリカ製のキット(CLW)の板は堅い。そう簡単には曲がらない。それを切り開いた残骸が残っていたので、裏を見てみる。
 表面をエッチングすると、その部分の応力が開放され、板が微妙に曲がる。中間にはその模様が少し見える。これが気になる人がいるので、日本ではエッチングする板は焼き鈍した板を用いる。だからクタクタなのである。衝突すると、かなり悲惨な状況になる。

 アメリカ製の場合、板は快削材である。すなわち堅い。そう簡単には曲がらない。組む前に板が微妙に反っていれば、修正を施してから組むだろうが、その歪みは微々たるものだ。組んだものは反っていない。
 この写真の筋は微妙な曲がりを補正したものである。左の方には、うっすらと歪みが見える。

 もう日本のメーカが模型を作って輸出するとは思えないが、堅い材料で作って欲しいものだ。焼き鈍したものを使うのは、やめるべきだ。軽衝突でさえ、歪んでしまうのだ。しかも重い機関車は、持つところが悪いと凹んでしまう。 

 以前にアングルがエッチングで溝を掘って曲げやすくなっているのを紹介した。くたくたで全く役に立たない。そういう部品こそ、快削材の板で、焼き鈍しせずに作って堅くすべきだ。多少歪みが出ても曲げるのだから問題ないはずだ。(本来はエッチングの溝無しで曲げて欲しいが、その腕がなければエッチングで少し溝を掘っても良い、という意味である。) 
 要するに、エッチングするものを全て焼き鈍し材から作るのはいい加減にやめるべきだということだ。 

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2022年08月13日

Loctiteを使う

gear centering jig (1) ディーゼル電気機関車の40インチ動輪軸に、歯車を組み付けねばならない。正確に動軸の中心に来るように、ジグを作る。ロックタイトを使うので、それがジグに付着すると取れなくなる。また、はみ出したロックタイトがジグに付かないように、逃げておく必要がある。

 ジグは丸棒から旋盤で挽き出した。許容誤差は 0.03 mm以下なので、何度も計測して作り、磨いた。

gear centering jig (2) 絶縁側は、車軸を圧入してあるので外せないから、そちら側(右側)のボールベアリングは先に入れて置く。ギヤを入れてロックタイトを手前に塗る。この写真では写真映りを考えて、塗る量を多くしている。本当は、少しで良い。ジグを嵌めて車輪をネジ込む。


gear centering jig (3) ギヤを廻しながら左にずらして、ロックタイトをなじませる。20秒ほど待てば固着しているから、あとは車輪を外して、ジグを外すだけだ。
 ロックタイトは購入後20年ほど経過している。心がけが良いせいか、よく固まる。はみ出した分は、綿棒に溶剤を滲み込ませて、拭き取る。拭き取りが不完全であると、もう一つのボールベアリングを滑り込ませたときに、固着してしまう。 
 また、ジグの内径は車軸よりも 0.5 mm程度太くしておかないと、何かの間違いで固着してしまう可能性がある。

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2022年08月03日

定常状態

 機関車の効率測定には、まともな勾配線を導入することを薦めたい。列車全長の2倍程度の均一な勾配を用意して、定常状態のドローバー・プル(牽引力)を測定し、速度を測定すれば、機関車の出力はすぐ出る。
 この「定常状態」の意味をよく噛み締めたい。勢いを付けて「ほら登った」というのは小学生の発想である

 長くて均一な勾配を用意する、というのは意外に難しいことかもしれない。過去に見た勾配線は、どれも勾配が不均一であった。
 当博物館の複々線は、精密に出来た勾配線である。その内側の見えないところに、HOの勾配線を作り、定常状態の運転をして出力測定し、効率を求める、ということは考えられないことではない。安定な電源と光電式のタイマがあれば、測定は容易である。希望者が多ければ、その線路を敷くことには、やぶさかではない。その勾配は精密にできていて、誤差が殆ど無いから出力測定には適する。
  
 定常状態と言うべきところを、平衡状態であると勘違いして使われている事が多い。平衡というのは見かけ上の釣り合いではない。エネルギィの出入りのない状態を考える必要がある
 例えば電車が均一な坂を登るとき、あるノッチでその電車が一定速になると平衡速度と言う人もいるが、正しくはない。エネルギィは投入され、その大部分は位置エネルギィとして蓄積されている。均衡速度と言うべきだ。

 ハンダ鏝に通電すれば加熱され、一定温度になる。平衡温度と言う人もいるが、正しくはない。エネルギィは投入され、周りの空気を温めて逃している。
 これらは定常状態 steady stateである。平衡はequilibriumであって、密閉系の中でしか考えられない。一定温度の瓶詰めの内部の蒸気圧は平衡圧である。そこでは物質、エネルギィは外界とやり取りされていない。

 面倒なことを省いて書けば、定常状態での測定は、こういうことだ。
 列車を牽いて斜面を登る機関車の、機関車と炭水車を結ぶ連結棒にバネ秤を付けた状態で、炭水車と列車とを牽き上げる。その時、電流値に増減があってはならない。速度も電流値も一定である時、引張力と速度を測定し、その積を求めれば出力は求められる。それを電源の出力で除せば効率が出せるが、日本でこれをやったという人を他には知らない。正確で十分な長さの勾配があればできる。


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2022年07月24日

EMDの機関車群 5

GP7's (2) これらのGP7はいずれもジャンクから作ったものである。1960年以前のものをアメリカの中古市場で買い集めた。左は Kemtron の初期のキットである。厚さ50ミル(1.3 mm弱)の板から出来ていて、エッチングの深さは0.3 mmもある。とても重い。All-nationの下廻りを使うことが指定されていた。起動電流は2 Ampsほどもあった。3条ウォームに作り変えたところ、50 mAで起動するようになった。

GP7's (1) 左から2番目も、Kemtronの後期のキットである。板は多少薄くなって40ミル(約1 mm)である。これも部品が欠落していたので作った。排気管はまさに煙突で、飛び出している。根本に支えが付いていて、それをどう作るか、かなり考えた。結局、伊藤 剛氏の方法で、切れ目を入れて長い板を差し込み、座板にハンダ付けしてから耳を切り取った。簡単で良い方法だ。

GP7's (3) 3番目は1955年にMax Grayがカツミに注文して作らせたGP7で、その残材が祖父江氏のスクラップ置き場にあったのを拾ってきたものだ。 フッドはコの字に曲げてなかったので、切り離して角材にハンダ付けし、角を丸く落とした。曲げるよりは、簡単で安全な工法である。
 キャブはSD7用のを見つけたので僅かな改造を施して付けた。不足部はスクラッチから作ったが、ロストワックス鋳物を安く買えたので、細かい部品を付けた。排気管が平面で、面白い形である。


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2022年07月18日

続 EMDの機関車群 3

 GP38-2は、2000馬力の中型機で、ターボ・チャージャがついていない。ルーツ・ブロワによる掃気である。音が違うので、遠くからでもわかる。
 以前採り上げたとんでもない作りのジャンクだ。丁寧に焙ってバラし、全て削り直して作った。CLWのキットはこのような作り直しに耐える。板が厚いということは何よりも大きな利点である。ハンダ付けはクランプで挟んでガスバーナで炙れば良い。完全に密着させる事ができる。

 エンジンフッドはやや薄く、0.8 mmである。頼りないので、上下の組合わせ部分を工夫し、噛み込むようにしたから、強く掴んでも安全である。薄いと、エンジンフッドを持って持ち上げると凹んで壊れる可能性が高い。

両軸化する 下廻りを仕上げている。両軸モータで直接に駆動すると、伝達効率が高くなる。両軸モータは高価なので、ロータリィ・エンコーダの付いているものを探し、そのエンコーダ部分を壊す。軸の太さは異なるが、旋盤でスリーヴを挽いて取り付ければ良い。

 安価で手に入れたものが、高性能な機関車に生まれ変わる。こういう瞬間は、何度経験しても嬉しい。筆者自身のコレクションの機関車で、新品完成品を買ったものは一輌もない。

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2022年07月14日

続 EMDの機関車群 2

 安価なジャンク品では部品が足らないことが多い。使えそうな部品を取って、売るのであろう。この場合も排気管の鋳物がなかった。 

EMD GP15 (4) t 1.5の板を4枚貼り重ね、フライスで正確な座標で細穴をあけて、後で中の長穴を切る。パイプを潰して扁平にする。この時、パイプは焼き鈍して、中に芯金を入れて挟むとこのような形のものができる。芯金は硬くないといけないから、ヤスリの柄を使った。芯金がないと雪だるまのような形になってしまう。芯金に当たってからも力を掛けると、形態が落ち着く。要するに、全体に応力を掛けて塑性変形させるのだ。
 また、芯金は二段階程度を用意しておくことがコツである。一回では思うような形にならない。もちろん、万力の口金は研いだものを用いるのは言うまでもない。掴み代がないと作業しにくいので、それは後で切り落とす。

EMD GP15 (5) 細穴に線材を押し込んで所定の位置に置き、例の押さえで全体をセットしたのち、塩化亜鉛水溶液を塗って63%ハンダの小片を横に置く。ガスバーナで軽く炙ると、ハンダはすべての接合面に一瞬で沁み込んで、完了する。こんな簡単なハンダ付けはまずない。しかし、これをやっている人は少ないように思う。銀ロウ付けも全く同じ感じである。

 はみ出したハンダはそのままでも良いが、塩化亜鉛を塗った平編み線を当てて、炭素棒で触ると、余分はすべて平編み線に吸い込まれる。ハンダの色が見えていないハンダ付けは、付いているかどうかわからない。

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2022年05月29日

ロックタイトを外す

 友人から、SOSが入った。ロックタイトで付けたときに、部品を入れ忘れたらしい。どうやっても取れそうもない。困り果てて電話してきた。

「物理的に外すのは無理だよ。」と伝えると、泣きそうであった。大事な部品を壊さざるを得ないと、考えたようだ。

「ハンダゴテで熱くしてみて。」と伝えると、半信半疑だった。車軸の他の端にはPOMで出来た絶縁が入っている。それが融けるのではないか、と心配した。Low-Dの1軸を捨てることになるけど、大事な台車を壊すよりはマシだ、と温めたそうだ。

 すぐに電話が入って、「取れました!」と叫んだ。絶縁も生き残ったそうである。しかし、動力車に使うのは避けて、トレーラに使うと言う。
 その返事を聞いて、筆者も試してみた。POMの嵌っている絶縁の方を、水に浸けて固定した。そして、大きなコテを歯車に当てると、2分くらいで緩んだ。
 水に浸かっている限り、100 ℃を超えることは無い。すなわち安心である。Low-Dの車軸は、ステンレス製であって、熱伝導率が小さいということも、プラスに作用した。


LOCTITE ロックタイトは、250 ℃に保つと取れる、と説明書にはあったように覚えている。買ったのは20年ほど前で、説明書は紛失した。600番台の強力型を買ってしまった。模型用なら200番台で十分だ。大きな瓶だが、中身はちょっぴりだ。使った量は数 mLだろう。何年経っても何ら問題なく使えるというのは、素晴らしい。 

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2022年05月19日

続 貫名氏の換装手順

 貫名氏はたくさんの改装予定機関車をお持ちである。だから、改装を手際よく行えるよう、下準備に時間を掛けている。

 ギヤを車軸の中心に留めるのは、簡単そうに見えて、意外と難しい。ロックタイトの接着力は非常に強く、一度固着したら、まず外せない。エポキシより強い。剥がすのは難しい。250 ℃ほどに加熱すると緩むが、常温ではまず外せない。ボールベアリングの中に流れ込んだり、モータ軸に入ると、修復不能である。
 そういう点でも、位置決めジグは作っておく価値がある。筆者もいくつか持っている。また、ウォームを軸にネジ留めするものだと思っている人もいるが、それは、偏心して騒音の元であるし、効率はガタ落ちである。 

 余分の拭き取りは、極めて大切である。綿棒を斜めに削いだものを作っておき、それにわずかの溶剤を含ませて取ると良い。綿棒にはかなりの種類があり、削ぐと分解してばらばらになるものがあるから、注意が必要である。

 抜き工具は軟らかい材質でなければならない。硬い鋼製のポンチでは相手が参ってしまう。傷がつくと同時に膨らんでしまったり、斜めに凹んだりして、組んでもまっ直ぐに入らない。このあたりのことは機械屋さんならば常識なのだが、模型人にはほとんど浸透していない。以前コンコン改軌という話題を出したが、あまりピンと来ない人もいるようだ。

 ボールベアリングの下には油膜があるべきだということも、ほとんど誰も知らない。こういうことは模型雑誌で周知すべきことなのだが、記事で読んだ覚えがない。
 今回希望者に配布したΦ2の精密シャフトにミシン油を塗って、ボールベアリングを滑り込ませた感想を戴いている。
「本当にぬるぬると入りました。初めての感触で、病みつきになります!」
とあった。このようなシャフトを量産できる技術力のある国に生まれたことを、感謝したい。製造元から買うので、価格は信じられない位、お値打ちだ。ただ、最低ロットが大きい。

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2022年05月15日

不可欠なこと

 要点は次の3点である。

反トルク承けを付けていない機関車は、まともには機能しない。モータ出力の一部あるいは大半が、モータ軸受部のスラストの摩擦で消費される。また、ゴムジョイントの内部の損失に費やされる。 

・反トルク承けが付けば、ギヤボックスは完全に浮動させることができる。モータ軸との動力伝達は、何らかの自在継手によらねばならない。スペイスがあれば、伸縮できるユニヴァーサル・ジョイントで良いが、狭いところに入れるには、六角ジョイントが良い。

・普通のギヤボックスのウォームの前後に発生するスラストを確実に処理する事が必要である。これさえできれば効率はかなり上がるのだが、実際にはそのスペイスがない。今回頒布のギヤボックスはコンパクトにまとまり、組立ては容易である。
「押して動く」を喧伝するのは結構だが、その前にこのギヤセットの伝達効率の高さに気付くべきである。無音の動力伝達が可能である。ギヤ音のする蒸気機関車が存在するわけがない。 

 効率の良いギヤセットだから、押して動くのである。押して動かすのが主目的ではない。正しい歯型、適正な研磨、正しい潤滑、正確なギヤボックス内での組み合わせ、がないと、このような性能は得られない。  


 たくさんの問い合わせを戴いているが、動輪の嵌め外し、位相合わせの道具、またはテクニックをお持ちでない方には、直ちには薦められない。友人に可能な方がいれば、依頼すべきであるし、ご自分でやろうとすると、それなりの投資が必要である。プレスを使わないと失敗する
 換装マニュアルを配布している。ご希望の方はコメントの本文に連絡先を書いて投稿されたい。

 一番良いのは、腕に自信のある方が適価で換装を請け負うことである。決して難しいことではない。次回はその簡易な方法を紹介する。 

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