DCC
2022年01月29日
続々 actuating gimmicks
これも本人が言っていたことだが、
「時代はDCCだ。これは前世紀の遺物だ。」
その年は2001年で、21世紀の最初の年であった。
発煙装置もケロシン(灯油)を加熱するものであった。装置はテンダに移植され、煙はパイプを介して送られている。吹き出す様子はブロワが効くとなかなか良いが、素晴らしいとは言い難いものであった。超音波振動子による霧化の話をすると、
「素晴らしい。でももう、私はできないよ。」と残念そうであった。
奇しくも隣のブースでは、Wangrow氏がDCCの実演をしていた。このDCCは、現在ではNCEになっている。
Wangrow氏が開発したものだが、NCEがOEM(相手先の銘柄で製造)していた。両者の契約切れと同時に、NCEが自社で販売を始めたので、Wangrow氏は商売をやっていけなくなった。Wangrow氏はNCEに対して訴訟を起こしたが、勝てるはずもなく、彼は2003年ごろ失意のうちに亡くなった。
多数のポイントを同時に切り替える工夫とか、その他の同時制御の工夫はWangrow氏のアイデアによるものが多い。筆者は1996年にこの人と出会って、DCCに足を踏み入れた。当時珍しかった大電流 (4 Amps、のちに 8 Ampsも出来た) の流せる子機はGゲージ、Oゲージの人たちにとっては貴重なものだったので、筆者の友人はWangrow, NCEを採用している人が多かった。
彼は、筆者が買うデコーダが小さな1.3 Amps のものばかりなので、不思議がっていた。高効率の機関車の存在は、彼の理解の範囲には無かったのだ。
2021年02月11日
漏電
列車全体を退避させ、ディジタル抵抗計を接続してみると、両レイル間にはわずか 1.5 Ω 〜 2 Ω程度の抵抗しかない。12 Vを掛ければ数アンペア以上流れることになる。1.3 Aで制限しているので、当然ショートと認識される。
突然のことで原因がわからず、二日ほど考えた。敏感なディジタル抵抗計で全線にわたって抵抗を調べた。もちろんセクションごとのフィーダをすべて外してからである。そうすると、10 mほどのセクションの抵抗が少なく、他は十分な抵抗がある。3年ほど前にネズミが侵入して小便をした辺りである。ということはその尿の成分の塩が残っている可能性がある。
高性能な抵抗計は、 3 Vを掛けて、被検知部分に発生する電圧を調べる。その抵抗の読みは、接続した瞬間は小さいが急速に大きくなって一定値になった。金属を接続したときとは明らかに違う。抵抗値が時間が経つと大きくなるのだ。オシロスコープにつなぐとおもしろそうだったが、筆者の真空管式のオシロスコープはかなり前に捨ててしまったのだ。
1.5 V電源のテスタをつなぐと、抵抗はゆっくり大きくなり、抵抗値は前者より大きい。電圧によって伝導率が違うのである。これが何を意味するかは、興味深い。電気化学の教材に適する。
これは金属導体内の電子の移動による通電ではないということだ。イオンが動いていると結論せざるを得ない。電気分解が始まれば電流は一定になる。電気分解電圧に達していなければ、そこで通電は見かけ上、停まるはずだ。ところがDCCは12 Vの交流である。イオンはあっちに行ったり、こっちに戻ったりしているはずだから、電流は通じる。しかし、ガスが発生したり、金属が腐食したりすることはないだろう。
ともかく、漏電は塩(”えん”と発音)によるものだということが分かった。何の塩かはよくわからないが、ニッケルや銅の塩化物は潮解性である。これは乾くことが無いことを意味する。空気中の水分を集めて湿っているのだ。
線路に掃除機を掛け、ごみやほこりを完全に清掃し、ネズミの小便によると思しき汚れの発見に努めた。事件の後、掃除をしたので殆ど痕跡は消えていたが、3か所それらしきところが見つかった。水を掛けてブラシでこすり、紙タオルで吸い取った。これを数回繰り返すと、残存する塩を十分に少なくできる。
ネズミ侵入事件が起こった時、穴があることを知り、それはモルタルで埋め、建物の内外にネズミを捕獲する装置を多数置いたところ駆除に成功し、それ以降は問題ないものと思っていたが、年を経てこのような事件が起こったのは意外であった。
2021年02月03日
完全直流デコーダ
筆者のOスケールの機関車は、どれも3 kg以上あり、すべての回転部分にはボールベアリングが入れてある。ギヤボックスを外せば、どれも0.5%以下の坂を下り降りる。モータと連結しても1.5%弱で下り降りる。単3電池一つでゆっくり起動し、毎秒数ミリの速度で動く。このような機関車であるから、電池をたくさん用意して1.5,3.0,4.5 Vと電圧を上げるだけでも、滑らかな運転ができるほどである。伝達効率は50%を下回らない。
一方大半のHO以下の模型では、モータの出力の大半は動力伝達装置内や、車軸の摩擦で消費され、最終伝達効率は10%もいかない。 NMRAのレポートによると、あるHOのシェイの実測値は0.25%であった。こうなると負荷の大小は問題ではなく、どうすれば一定速度で走らせれるか、が最大の目標になる。昔はギヤ比を大きくする以外の方法はなく、モータは高速で回り続けて凄まじい音を出していた。
Back emfのフィードバックができるようになると、かなりギヤ比を小さくしても、見劣りしない走りをさせることができるようになった。これが現実の世界であろう。
もし、HOでも”全くひっかかりのない滑らかな運転ができるようなボールベアリング装着の高性能機関車”ができれば完全直流デコーダが使えるだろうが、牽かれる車輛すべてが、低抵抗車輪と摩擦の少ない軸受で統一されている必要がある。その実現は、かなりハードルが高い。しかも、小さなものは大きなもののようには動かないのは、何度もここで採り上げた通りである。
ゆうえん氏は、考え方には優劣が付けられないというのが持論のようだが、それは同じスケールでの比較の場合である。大きさが異なるものは同じ考えでやってはいけない場合もある。アメリカで、韓国製の機構のあやしい模型にBack emfを効かせて無理やり一定速で走らせてモータを焼いたという実例をよく聞く。優劣は明白だ。
HOに向いたやり方があるだろうが、それがほかのサイズの模型にも通用するわけではない。BEMFは動きが今一つの模型を、見かけ上調子よく動かす機能であるが、かなり無理をしている部分がある。
ちなみにこの永末氏のデコーダは、氏が筆者の地下室のレイアウトでの走行を見て、実現したいと感じられたのがきっかけで作られた。残念ながら、筆者と土屋氏以外には売れなくて、大半を筆者が購入した。音声用デコーダと別にしてあるので、全く相互干渉がなく、きわめて静粛な運転ができる。蒸気機関車には最適である。この製品の概要に、
DC駆動については、BEMF駆動とは対極の位置にあり、高品位のコアレスモーターと駆動伝達装置により効果を発揮いたします
とある。これはメリット・デメリットの話ではなく、用途目的が異なると言っているから、比較はできない。
要するに無理やり一定速で走らせるのが目的ではなく、負荷が掛かれば遅くなり、スロットルを開けば出力が増大する。開き過ぎればスリップする。スロットルを戻せば電圧は出力はゼロとなって電気的に切り離されるから、勝手に惰行する。本物のような運転を楽しみたい人はこの方式を採用するが、その性能を持たない動力車には使えない。
2021年02月01日
空転させる設定
スロットルのspeed tableは、NCEの場合126ステップある。それぞれのステップに固有の出力電圧を割り当てることができる。殆どの場合は、最高速を抑えるとか、動きの悪い機関車の出発時の電圧を上げるくらいしか用途が無いだろう。筆者の場合、(0,0)を通る完全な直線で使っている。伝達効率の高い動力装置と、全軸ボールベアリング装荷のおかげで、何もしない方が自然な動きをするからだ。
例えば、第10番目のステップだけで、最高速の40%ぐらいの電圧を与えるとする。起動して直ぐには列車の抵抗があって動き出していない。短時間高電圧が掛かればスリップするだろう。ステップ10以降はごく普通の出力曲線で加速するだろう。
減速時にご心配のスリップが予期せぬ時に起これば、気分が悪くなる。しかし、NCEにはスロットルの上の方にMomentumというボタンがある。これを押すと、見かけ上の慣性を与える動き(徐々に加速する、あるいは減速する)の程度が10段階で指定できる。その設定変更は、運転中でも可能なのだ。
起動時のスリップを希望するときはこのモメンタムを、0 にセットする。そうすればステップ10だけで高電圧が供給され、派手にスリップするだろう。列車は重く、その慣性は大きいから、実感的なスリップの再現が可能だ。そして順調に加速していくだろう。このモメンタムの値を適宜増減すると、スリップ発生具合も変化するはずだ。
巡航時にモメンタムを最大値 9 にセットする。そうすると、ステップ10を通過しても、ほとんど変化を感じないだろう。
もし、派手に逆回転をさせてみたければ、逆転をかけ、モメンタム0でステップ10を選べばよい。あるいはステップ2あたりにもそのような電圧が与えられていると良いかもしれない。
筆者採用のデコーダは永末氏の完全直流デコーダで、スロットルOFF時には、モータの逆起電力は完全に遮断されるので、列車は自らの慣性でかなり進んでしまう。そこで、逆転してそこそこの電圧が掛かれば、逆転空回りを披露することができるはずだ。
2021年01月22日
続 自動信号機の設置工事
4区間なので、一つの線に2列車入れることも可能である。いつも黄信号であるから徐行せねばならないが、そういう運転も面白いだろう。また、赤信号ぎりぎりまで詰めていくと、緑の区間が一つできる。
この方法は、危険な運行である。本物と同じで、全体を見ていないと追突が起こる。ATSは付いていないのだから。博物館レイアウトは全体を見渡すことができる場所があるので、見ている限り追突は起こらないだろう。
1列車の場合、たとえ長い列車が2つの閉塞区間を跨いでいても、問題なく作動する。この博物館のレイアウトでは、1つの信号の閉塞区間は22 m強である。120輌編成の列車は34 mほどある。(これも補足すると、信号は前から、赤、赤、黄、緑・・・・となる。)
論理モヂュールは非常に信頼性が高い。最高電圧さえ気を付けていれば、壊れることはないそうだ。5 Vが必要なので、USBの電源を用いた。いくつかの電源を順次、負荷をかけてテストし、安定して5.0 Vが出るものを選んだ。何かの間違いで7 V以上になると壊れてしまうので、それだけは気を付けねばならない。
自動信号機は、かねてから採用予定者が見学を要望している。今回の工事で実際の設置状況を見ることができるようになったので、来訪が増えるだろう。
順次色が変わるのを見るのは楽しい。立体交差の下のセンサで検出されると、その信号が赤になると同時に、すぐ上の線路の信号(2つ前の閉塞区間)が緑になる。当然ではあるが、感動的である。
このレイアウトでは配線が長く、末端では電圧降下がある。と言っても一番遠いところで4.92 Vである。下り線も配線されると電流が2倍になるから、もっと下がる可能性がある。
4.76 Vでも間違いなく作動することは確かめてあるが、饋電線があると、より信頼性が増すだろう。太い線を引き廻すより、LANケーブルの残余線2本を使うと良さそうだ。(これも補足すると、現在では4つをループと短絡線で結び、電源回路の抵抗を減らしている。)
2020年11月17日
GTEL用サウンド・デコーダ
一つのデコーダの中にいくつかの音源があり、第一世代から第三世代まですべてに対応し、なおかつスピーカは2つ(A,Bユニット)というのもある。価格もそれほど高くない。
まだ買っていないから何とも言えないが、補助ディーゼル・エンジンの音も出すために、スピーカが2つに分かれていれば効果はあるだろう。タービン排気管にスピーカ・ボックスを付けると面白そうだ。
効能書きを見ると、fire-ballが出る時の音も再現するとある。怪しい話だが愉快だ。
昔は、1輌の機関車に2台のデコーダを積むのが当鉄道の方針であった。モータ制御電流の許容値が小さかったことと、BEMFが掛かるのでモータから嫌な音がするので避けたのだ。BEMFを最小限にしてもゼロにはならず、それは許しがたかった。Nagasue さんのところから完全直流型を出してもらったので、モータ電流はそれを使い、音の方は独立のデコーダを使っていた。時代が進んだので、今回はサウンドDCCのモータ出力で動かしてみよう。モータ・ドライヴァが焼けたら、音だけ使って、主電流はNagasue さんのを使ってみるつもりだ。大きなコアレスモータを使うと、完全直流型でないとかなり大きな音が出ることがある。
最近は、デコーダの許容モータ電流は1.5 A 程度になった。機関車はフルスリップでもせいぜい 0.5 A強だから、焼けることはないだろう。
考えてみればこの10年ほど新しいデコーダを買っていなかった。買い溜めしたものを少しずつ使っていたので、新しいものを調査するのを怠っていたのだ。先日、アメリカで放出品があったので買い占めた。
2016年10月10日
所属クラブの公開日
段ボールの箱を沢山組立て、合板を載せてテープで継ぎ目を押さえる。上に人が乗っても大丈夫だ。
O,OJの島、HO,Nの島、DCCの島と三つに分かれて設営した。見ていてはっきりわかるのはDCCのグループの設営完了までの時間が極端に短いことだ。スナップ・トラックを使っていて、パチパチと組めばすぐ運転できる。
山本真一氏によるZ21に依る運転で、スマホを使ったワイヤレス操作である。ポイント切り替えはiPad上の画面をタッチして行う。すべてワイヤレスで接続の面倒がない。固定レイアウトではないので、そのメリットは素晴らしく大きい。
山本氏はスマホの中古を多数手に入れられて、それで車輛をコントロ−ルし、さらにipadによる分岐切り替え指令および表示を実現されている。素晴らしく調子が良く、初めて見る子供でも直ちに操作法を習得する。
博物館の新レイアウトにも採用予定である。
模型誌上でのDCCの記事が少ない。下らないと言っては失礼だが、姿形だけの模型記事ばかりだ。走らせていない人が多いということだ。
山本氏の機関車は、どれも素晴らしく良く走る。動輪の心がよく出ているのだ。当たり前のことではあるが、実際にはそのような機関車は少ない。精度の高い旋盤加工の腕をお持ちなのである。
O, OJグループは入り口に近いところで走らせている。
「どこで売っているのだ」
という質問が多い。
「すべて自作ですよ」
と言うと、皆驚く。
筆者は塗り立ての貨車を3輌持っていった。このFriscoのヘラルドは興味深いらしい。
バットマンと関係があるかという質問が多かったが、そのはるか昔から使われている。
アライグマの皮を張った様子を表しているのだ。日本では理解する人はまず居ないが、アメリカでは子供でも分かる形のようだ。
2016年10月02日
携行用DCC
NCEはフル・ファンクションのスロットルを売っているが、これは単なるスロットルではなく、 ブースタ(出力の電源)まで内臓である。しかも電流計が付いていて、その瞬間の電流が直読できる。
配線はこの図の通りで、簡単明瞭である。薄く右側に描いてある小さいスロットルは、場合によって付けることができる。そうすると大きなスロットル内蔵の出力電源がブースターとなる。好みによって、小さいほうだけを使うことができる。デコーダのプログラムには、大きい方を使える。
このPower Proは、普通のブースターにつないで使うこともできる。博物館のレイアウトのDCCではこの方式を使っている。そうすると既存のスロットルと組み合わせて、重連で前牽き後押しが楽しめる。
価格は非常に低く抑えてあり、今でも実売価格135ドル程度だ。お勧めする。
これを持って行ったら、NCEは初めて見たと皆さんが仰る。
「ボタンがたくさんあるから大変そうだけど、かえって初めての人には分かり易いかもね。」ということであった。
2016年09月26日
関西合運
日本も銅は戦前は輸出をしていたし、 戦争がはじまると、薬莢製造に多量に必要なので、諸国が輸出を制限したことが大きい。当時はアメリカ西部の銅山はまだまだ未開発の部分があった。
さて、週末には関西合運に行った。長雨で塗装ができず、生地完成まで持って行った貨車20輌が完成しなかった。せっかく、塗装の工程表を作り、ディカールの数も確認したのに、である。かれこれ10年ほども掛けたプロジェクトだったので、少々残念であった。
仕方がないので、DCCのディーゼル電気機関車と、持ち運びが楽なプラスティック製貨車4輌だけを持って行った。ご覧になった方は、DCCの重厚感ある走りに、感銘を受けられたようだ。機関車がとても重そうに見える動きをする。Momentum(動いていると止まらない) のある動きだ。牽引力は十分あり、連結器を押さえて止めようとするが、かなりの力があるので、皆さん驚かれた。超低速も可能だ。
「『3条ウォームは力がない』ということを言う人がいるが、ありゃ嘘だね。」
ホイッスルを鳴らしてエンジン音が高まり、警告ライトを点滅させながら走ると、観客は陶酔状態だ。
貨車には間に合わせのウェイトを入れていった。例の使えない曲がったゴム板を切って入れていったのだ。固定しなくても具合よく納まる。また、運搬中に中で踊っても、被害はない。 ゴム板を持ってみての感想は、
「意外に重いものだね。」
ということである。
2016年06月15日
視力とDCC
白内障、緑内障の心配は全くなく、網膜も無事なのだが、ピントが合わない。老眼でレンズが薄くなっている。かなりの遠視になったのだ。以前は両眼とも、視力2.0を誇っていたのだが、今はどちらも0.8程度だ。しかし+1.0ディオプタのレンズを装着すると、2.0になったので安心した。夜間、車を運転するときには眼鏡を掛ける必要がある。2,3年前、本業の本を仕上げるのに、数か月コンピュータと睨めっこをしたので、急速に悪くなったような気もする。
過去に何回も手術を受けて角膜を引張ったせいか、左眼に微妙にあった乱視が完全に直っていた。このことは伊藤 剛氏も仰っていた。
「私は乱視でしてね、夜空の星が点に見えなかったんですよ。ところが白内障の手術をしたら、角膜を縫い付けて引っ張ったので、ピンと張って、おかげでとても良く見えるようになりました。角膜にシワがあったんでしょうね。」
遠視になると不便この上ない。日中は虹彩が細く絞られるので、かなりピントが合うが、夜間や室内では裸眼ではピントが合わない。線路をつなぐような作業は、眼鏡を掛けないと全くできない。
もう一つ困ったことがある。DCCの機関車の番号を打ち込む作業ができない。そこに止まっている機関車を、少し移動したいので呼び出そうとするのだが、番号が読めないので非常に難しい。普段あまり動かしていない機関車の番号は忘れてしまうからだ。
2016年02月13日
SL-1
土屋氏の機関車は大半がPFM方式で、DCCは数輌しかない。直流電源で走らせるときはサウンドのスウィッチを切っていたのだが、こんなにたくさんあるのだから、DCCに改良する前に音を聞いてみようということになった。そのSL-1は筆者の手を離れて仙台に嫁していたのだが、帰宅を許可願って戻ってきた。
接続して驚いたことは、音がとても大きい。スピーカが大きいのも理由の一つだが、テンダを密閉式にしていることが良い結果を出している。裏側の逆位相の音を漏らさないようにしているわけだ。
アナログの擬音であるから、大したことはないのだが、とても良い。カットオフを調整しながら、良い気分に浸った。高圧の機関車で、排気膨張室が無いわけだから、歯切れの良い音を出すべきだ。あちこち触っているうちにたちまち時間が過ぎた。
昔のPFM方式よりはるかに進歩していたが、これを10年以上も知らずにいたことは、もったいなかった。今あるPFM方式の機関車を整備して、せっかく敷くDC用線路だから活用するつもりだ。
2016年02月11日
dead rail wireless decoder
室内飛行機用の軽量ラジコンを使うと良いと教えてくれた友人がいる。他に、携帯電話から駆動するWifi方式の試作をしていた別の友人から完成したとの知らせがあった。そのことをアメリカの友人に知らせたら、
「これを知らないのか?」と聞かれた。
それはwireless のDCCを使って、機関車に指令を出す装置であった。安くて驚いた。これは売れているだろう。小さな素子にアンテナも付いている。ライトの点滅だけでなく、様々な点灯の仕方を選べる。普通のDCCと同じで、これは便利だ。
サウンドが付いていないが、それは別の工夫で可能だ。とりあえず一つ手に入れて、機関車に入れてみよう。プラスティック ボディのGP9があるから、それを入替用にしようと思っている。
このデコーダの名前は、”dead rail”という言葉を付けている。文字通り死んだ線路で、導通が悪かったりして、DCCのコントロールが効かないところで役に立つ。許容電流は1.3 A だが、大型機でも効率が良いのでフルスリップでもその程度以下だ。大丈夫だろう。
これを教えてくれた友人は、
「線路がなくても走るから、落っことすなよ。」と言った。有難い忠告だ。レイルを検知する、何かの安全装置を付ける必要があるかもしれない。しかし、良く考えてみればそのレイルとの導通が悪くても作動するのだから、あまり賢い方法ではない。
この種の方式には他にいくつかの会社が出している。微妙に差があるが、電池式であることは一緒だ。
2015年10月14日
DC と DCC
自宅のレイアウトは、事実上DCC専用である。最近は乗り入れもないので、DCのパワーパックは外したままだ。
新レイアウトでは、機関区から本線へ行く線および本線1本のみが、DCにもなる線である。不用意に切り替わらぬよう、安全装置を付けてスイッチで一気に切り替える。貨車ヤードには動力車が入らないことにすれば全く問題ないが、そうもいかないので、接触限界標あたりで電気的に切り離す。
客車ヤードはDCC専用となる。客車には電灯がついているからだ。また、隠しヤードもDCC専用となる。そうしないと、本線走行中の入れ替えが難しくなる。
おそらく、Visitorが持ってくる機関車の大半はDC仕様だ。それを無碍に排除することはできない。土屋氏から来た機関車のいくつかにはDCC化が終わっていないものもある。DC運転可能にしておけば、いろいろな点で助かることもある、と見ている。
ターンテイブルは、切替えでどちらも使えるようにする。ターンテイブルの枝線 (spur)の半分もDC用になるので、間違えないよう、何らかの方策が必要だ。DCCの枝線に止まっている機関車は電灯を点け、音を出しているが、DCの方は沈黙していることになる。
ポイント切替、ターンテイブルの動作はDCCで行う。これはDr.Yに、助けて戴くことになっている。
場合によっては、無線操縦の機関車でDCの機関車を牽いて移動することもあると見ている。当鉄道ではすべての機関車が3条ウォームか、べべルギヤであるので、機関車を牽くのは簡単である。
2014年09月01日
Dennis のレイアウト
入口にはデッキを作り、夕方ここで飲むビールは格別である。
全ての車輪がLow-Dに取り換えられ、曲線での抵抗がかなり減少した。デニスは最近GG1に凝っている。あらゆるボディを買い集め、寸法を測定している。人間の目は1 cm 程度の長さの誤差には気が付かない。筆者用にもひとつ用意されていたので、受け取ってきた。彼はパンタグラフ部品までロストワックス鋳造する。
奥の壁には色々な鉄道用品や部品がぶら下がっている。細長い黒いものは、筆者が持参した某軽便電鉄のパンタグラフの擦り板である。妙に気に入ったらしく、壁に掛けてあった。
地震の無い地方はうらやましい。壁に付けた棚に、無造作に飾ってある。これで落ちないのだ。
2枚目の反対側、すなわち入口に近い部分の壁が写っている。2層になっていて、下が隠しヤードである。ある機関車が天井を擦るらしく、全体を1/4インチ(約 6 mm)下げたとのことである。
このスイッチはエアコンの機能切替スウィッチである。手が届かないので、外して線を延長した。温度調節は、銀色の棒を使う。ユニヴァーサルジョイントが付いていて、つまみを遠くから廻すことができる。この種の工夫はDennisの最も得意とするところである。
遠くのポイントはワイヤで動かしている。
2014年05月05日
DCC化
レイアウトを持ち、日頃運転をしている人はDCC化している場合が多い。車輌工作至上主義の人は、DCC化には全く無関心である。DCC化するとウォーク・アラウンドをやってみたくなるのは必然である。レイアウト規模がある程度大きくなると、ワイヤレスでやってみたくなる。ワイヤレス方式はたくさん出て来て選べるようになったので、色々なところで採用例をみるようになった。
2008年にこのブログでウォーク・アラウンドをあまり見ないと書いたら、コメントでKMCの方からそんなことはないという「ご忠告」を戴いた。それも昔の話になった。
現在計画中の新レイアウトは60坪あり、複線である。複線の片方はDCC専用にする。もう一方は本線のみ、DC, DCCを切り換えられるようにし、その側線はDC専用とする。どちらもウォーク・アラウンドにする。DCのウォーク・アラウンドは30年前に完成させてある。ただしテザード(スロットルのケーブルを順次差し替えて行く方式;要するに「ひも付き」のことである)である。
魚田真一郎氏に長らく貸してあったが、震災の直前に返してもらって難を逃れた。当時もう一台作ってくれと頼まれて居たが、もうそういう時代ではなくなった。魚田氏はウォーク・アラウンドの価値を認めた最初の日本人であったような気がする。彼が生きていたら、様々な試みがなされていただろうと思う。
ヤード部分は全てDCC化する。そうでないと配線が面倒だからだ。今回の記事に書いた6回路用のをいくつか使って見よう。何も考えずにヤードと渡り線ができるというのは、ありがたい。
2014年05月03日
続々 Frog Juicer
この図はDouble Crossover 、シザース・クロッシングである。4つの区間にFrog Juicerから供給している。確かにこの方法なら、配線に頭を使うことが無くなる。ただ繋げば完成である。
今まではポイントがあるとそこで頭を使って、動作パターンを絞り、無電区間が無くなる最適な方法を見つけ出した。タンデム三枝ポイントなどは意外と難しい。
この方法ならあっと言う間だ。
クロッシングの場合も、何も考えなくて済む。以前発表した方法など、どうでも良くなってしまった。
操車場などのポイントが連続した部分(ladderと言う)のフログも、6出力のジューサを買えばあっという間だ。
技術の進歩はとどまるところを知らない。より簡単になっていく。
最近、DCCの記事が少ない、と色々な人に言われている。実は、アメリカではあまりにも普遍化してしまい、既製品には最初から付いているので、何も書くことがない。 日本はまだまだ遅れている。
2014年05月01日
続 Frog Juicer
講演などではコンピュータを持って行って、プロジェクタで映写するのがふつうである。その時、当然のように「ジュースは用意してあるから…」 ( juice provided ) という案内が来る。行ってみると、氷水は用意してあるが、オレンジジュースはない。そこで「話が違う!」などと怒ってはいけない。
壁に付いているいわゆるコンセントのことを、"juice"と言うのが普通になった。70年代は半分くらいの人が使う言葉であったが、最近はまず100%の人が使う言葉になった。
Juiceは果実の絞り汁、ビーフステーキなどの肉汁のことだが、エネルギーの源という意味があり、それが流れ出してくるものという意味で、電源を指す言葉に転化したのだ。しばらく前は、ガソリンもジュースと言っていたが、最近はあまり聞かない。
Juicerは文字通り、電源を供給するものである。瞬時の短絡によるDCC電圧降下を検知し 、左右のレイルからのどちらを給電するかを判断する。最大 2 A まで通過させることができるから、HOクラスでは全く問題ない。一部のOゲージ車輌は数アンペアも喰うものがあるらしいので、それには対処できない。つまりHO以下専用であろう。
ポイントマシンには補助接点があり、それを使えば極性切替えは簡単である。電流容量も大きい。筆者は自作のギヤード・モータによる転換を採用しているので、補助接点はマイクロスウィッチを使っている。
このようなDCCディヴァイスが登場したのは、おそらく、HO以下ではポイントマシンを内蔵しているポイントが増えてきたからであろうと思う。マシンは付いているが接点がない、あるいは足らないのではないかと思う。筆者にはその方面の知識がないから確証は持てないが、それ以外には思い付けない。
ややこしい渡り線や、搾線(ガントレット)などでは役に立つかもしれない。
2014年04月29日
Frog Juicer
ポイントのフログでは左右の線路が交差するので、極性の切替えが必要となる。昔の市販線路の一部には、絶縁フログがあり、そこは無電区間であった。すなわち、集電車輪数が少ない車輌は立ち往生することがあった。
二軸車ではこの問題は大きく、より接地性を高めるためにバネ可動やイコライジングの必要性があった。それでも集電不良は多く発生した。
のちに英語で、all-rail switchという言葉が出てきた。これはフログを絶縁材料で作らずに、ポイント全てを金属のレイルで作るものであった。フログに給電する極性を何らかの方法で転換した。すなわちフログ部は他のレイルとは切り離されて、独立した電気区間となっている。
DCの時は尖端レイルが接触するストック・レイルから電流を供給すれば、分岐した枝線にもその極性が伝わり、都合が良かった。すなわち、分岐の切り替えによって、その先の枝線の通電を制御できて、好都合だったということもある。
しかしそれでは接触していない(車輪が通過しない)尖端レイルには、その近傍のストックレイルと逆極性の電気が来ていて、ショートの危険が増す。NMRAの規格は30年ほど前更新されている。以前は、この逆極性の時も尖端レイルとストック・レイルとの近接を認めていたが、突然改訂され、離す量を大きくするように要求してきた。理屈はそれでよいのだが、実物より離れる量が大きいのであまり恰好が良いとは言えなかったのだ。
フログだけを独立区間として電気極性を転換すると、左右の尖端レイルはストック・レイルと同極性であるから近接しても良く、NMRA規格でもそれを認めている。これはDCCの導入によってより加速された。
DCCでは、分岐後の枝線にも常にDCC電圧が掛かっている。通電していてもデコーダが遮断するので問題がないのである。フログの極性は尖端レイルの動き(throwing)だけに依存すればよい。その給電方法は、マイクロスウィッチによる転換が主流であった。このようにDCC化を前提に作られた商品を DCC friendly であると称する。
Fast Tracks社はFrog Juicerという装置を発売した。
2011年06月21日
続々々 Layout Tour in Chicago
DCC本体はLenzの製品であるがそれを無線にしたのである。10年ほど前、このアイデアをどこかで見たのであるが、それを実用化しているのを見るのはこれが初めてである。
込み入った操作はできない。ただ加減速、汽笛吹鳴、ベルのみの指示を出す。電話は日本製の室内用コードレス電話である。「安かったからね。」ということである。
今ではこのアイデアは完全に陳腐化したが、当時としては画期的であった。当時は赤外線方式が出始めていたが、到達距離と遮蔽物を越えての送信ができない点で、電波による無線式にはかなわなかった。もちろん光方式でも受信機をたくさんつければ、それなりの効果はあるが、設備がかなり面倒である。
現在は高機能携帯電話でそれを行うようになってきた。NCEなどは微弱電波を使うモデルを出している。NCEはしばらく前にアップグレードして、応答性が極めて良くなリ、また信頼性が格段に進歩した。旧タイプでもアップグレード料金は15ドルくらいである。ただし事前に申し込んで受付番号を取らねばならない状態がしばらく続いた。現在ではそのような混みあった状況は無いであろう。
この建物は最新作だそうだ。部屋の中がある程度見えるようになっていて、電気が点いたりすると実感的である。
2010年05月04日
続々CHI TOWN UNION STATION
これが、CHI TOWN UNION STATIONの線路配置図である。とにかく広い。400坪はあるだろう。別棟もあるので500坪程度だろうか。この図には、通路の左側(図の上に当たる)は描いてない。
たくさんのテレビカメラで見ている。また、コンピュータ画面ではブロックごとに列車検知をしている。
DCCはNCEを採用している。大きなレイアウトでたくさんのキャブを持ち、コマンドステーションの数が多いと、NCE以外では制御できない時代が長かった。大きなクラブレイアウトはNCEを採用しているのは間違いない。そういう意味ではNCEの戦略は当たっている。
クラブで使っているシステムを個人も使うわけであるから、固定客があり、乗り換えられる心配がない。
このレイアウトは既存の手法を使って最大限に広げるとどうなるか、を示した実践例としての意味がある。
線路配置図は栗生弘太郎氏にリタッチして戴いた。
2010年04月22日
続々 Dickのレイアウト
詳しくは解析していないが、駅の数に合わせてあるのだろう。配送が終わると、その駅の前のポケットに突っ込んでいく。パターンは少ないが、多人数でやるとかなりの組み合わせができるので十分面白いであろう。
このレイアウトをDCC化してみないか、と聞いてみると、「俺は74歳だ。全ての配線をやり直して車輌の改造をするのは勘弁して欲しい。死ぬまでこのままでやりたい。」とのことであった。
これを聞いていた一人が大きな声で言った。「ディック、それは間違いだよ。レイアウトの配線は2本になる。今の配線の量の20分の1になるよ。」
それは事実である。筆者のレイアウトも構想時の配線は凄まじい量で、そのための電線を用意してあったのだが、DCCで配線したら電線は9割がた余った。
DCCの時代である。この運転会の参加者の半数がDCC化している。資金が凄まじくたくさん要るわけではない。ほんの少しのやる気があればできる。このレイアウトには動力車が10台ほどしかないので簡単なことであると思う。
この運転会の参加者に、「ディックの意思とは無関係に、DCC化することを考えてみてはどうかね。私の考えたところではポイントの数だけデコーダを用意して、13人でやれば1日で終わるよ。そして動力車は一人1台ずつ持って帰ってDCC化すれば、1週間でDCC化できる。」
と提案した。一人200ドルほどでできそうである。
「実はそんなことも考えている。」とのことである。「ディックを旅行に行かせねばならない。どうだ、お前のところでしばらく預かってくれないか。」
「そのつもりだ。」と答えたが、ディックの腰は重い。
2010年04月20日
続 Dickのレイアウト
Point to Point型レイアウトだからである。終着駅で向きを変える必要があるからだ。
その構造はいかにもOゲージ的で興味深い。ターンテイブルの直径は85cm位である。もし、中心から小さな径の軸でトルクを伝えると、その軸が捩じりバネになるので、動きがカクカクとなる。太いシャフトと大きなディスクでトルクを伝える。
このディスクには何本も溝が切ってあり、そこに細いブラスの帯がたたき込まれている。それをリン銅板のバネで押さえて集電している。枝線から給電しているのだ。回転橋には方向があり、それを間違えるとショートする。これはDC時代の発想で、DCCなら何も考えなくてよい。
動力は、ゴムタイヤを付けたギヤ付モータで、長いバネで軽く押しつけている。実に良い動きである。ディスクの慣性質量が大きいせいか、グワーンと加速していく。自動割り出しではなく、目で見て位置を合わせる。
このレイアウトには1台だけ、祖父江氏の機関車がある。ミルウォーキィの展示品のうち1台を持って帰るのが面倒で、買ってもらったのである。それはNYCのMohawk 4-8-2 L-2aである。 1枚目の写真の枝線のうち、ディックに一番近いところに写っている。
彼はこれを持っているのが自慢で、訪問者には必ずその由来と効能について述べるのだそうだ。25年経っても極めてよく走って安心した。
2009年08月21日
続 ASTRAC
初めは5チャネルであったが、GEの内部では16チャネルまで増やす予定であったという話を聞いた。さすがにアメリカとは言え、当時の顧客はそこまで成熟していなかったとみえる。あと10年後なら、確実に市場を形成したであろうと思われる。
このASTRACの制御卓の配置は当時としては非常に先進的である。筆者は1970年代にHeathkitに夢中になっていた。いろいろな物を作ったが、そのパネルデザインによく似ている。
最近はHEATHKITと言うらしい。随分様変わりした。昔はテレビのキットとか、ありとあらゆる電化製品のキットが売り出されていて、ステップ・バイ・ステップの説明書を見ながら、本当に100%自分で作るようになっていた。最近はプリント基板に部品が付いたものを差し込むだけのようだ。
今でも持っているのは超音波洗浄機である。これは意外と大出力で役に立つ。塗装はがしでブレーキ液に付けた後、この中で残りを取り除く。
このASTRACは事実上の世界最初の同時多重制御による模型列車の運転装置であった。この記事にも書いてあるが、1940年代にライオネルが2チャネルの同時制御装置を売り出したとある。あまり調子が良くなかったそうだ。真空管を使った周波数の違いによる方式では、いろいろな問題が生じうる。電波障害もすさまじいものであったろうと推測する。
2009年08月15日
続 多重制御
同等品はある。どこの国で作っているかは知らないが、この価格は驚異的に安い。
すでに世の中はLED照明に移り変わりつつあるようで、これを探しているとその種の情報はいくらでもある。
HornbyのZero1の記事はCQ出版のトランジスタ技術という雑誌に載った。10数ページにわたるかなり詳しい説明で驚いた。NHKブックスだったかで、このZero1について書かれていたのは長氏であった。今その本が行方不明で詳しいことがわからないのは残念である。
CQ出版というその道の権威ある出版社が、その主力雑誌でZero1の詳細な記事を発表したのには驚いた。TMSに投書して、より懇切丁寧な記事を書いてもらい、掲載すべきだと伝えたが返答はなかった。
今のところDCCの解説書は2冊である。3冊目はCQ出版が出すべきであろうと思う。
2009年08月13日
多重制御
実は筆者は中学生のころから多重制御に興味があった。経済的には無理であったので理屈を考えるだけであったが、交流と直流を交互に送って、車内の切り替え装置を動かすことをひたすら考えていた時期があった。いろいろな案をみせると技術者であった父は、「くだらないことを考えるより、無線で操縦する方がよほど簡単だよ。」と取り合わなかった。
それから何年も経って、MRに連載されていたCTC16とか、ホーンビィのZERO-1などには興味があった。このころは自身の仕事が多忙を極めた時期で、実際に作ったり購入したわけでは無い。
そのころアメリカの家庭用品で、たくさんの電灯を手元の小さいコントローラで自在に制御する製品を見つけた。電灯線を通して指令を送り、最大16個の電灯のOn、Off、2台の扇風機の調節、逆転ができた。今でも売っているかもしれない。問題は隣の家がそれを使っていたらどうなるかであった。16通りのコードがあって、それを選ぶから問題ないとは言うものの、同じ柱上トランスの範囲内であれば、よその家からでも作動させられるように思った。
家庭で使う品であるから、価格も安く、簡単に使える。まずカタログを集め、帰国したときに伊藤剛氏に見せた。
剛氏は「これだね。」「これが一番可能性が高い。」と仰った。いずれそれを購入して分解し、使える所を取り出して入れてみようと思っていたが、DCCの台頭がその必要性を失わせた。
鉄道模型は線路があるので、その2本の線から、かなりの電流を継続的にとることができる所が、他にない利点である。また、その2本が平行しているので、高周波であっても他に影響を与えにくいし、受けにくいところも利点である。
DCCがこの世に現れて十余年、欧米ではかなりの普及率を持つのに、日本ではまだまだである。結局は走らせる人が少ないということに尽きるのだろうか。
2009年08月11日
続々 DCCの可能性
方式は3つあって、一番確実なのはスロゥモーションのポイントマシンを付けることである。Oゲージでは体積が大きいので、テンダ内に全く問題なく付けられる。強いバネも押し開くので、電源をOffにすると自然に戻る。極小型のモータを入手できれば、連結器の下にでもつけられる。
2番目は、小さいソレノイドコイルを使ってナックルを開く方法である。これも特に難しいことではない。しかし、うっかり長時間通電すると、焼ける可能性がある。
3番目の方法は、形状記憶合金である。ヒータで温めると元の形に戻るのでバネと組み合わせると、往復運動ができる。最近はこの手の材料は通販で簡単に手に入るようだ。筆者は苦労して手に入れたが、最近は安い。問題は、ヒータを添わせると熱容量が大きくなり、応答が悪くなることだ。細い材料を使えば、そのものに電流を通じて加熱することもできるだろう。
このユニットを量産すれば、話は簡単になる。いろいろなパターンを考えているが、長さの変化を期待する方式が一番素直である。これもOゲージは有利である。長さ200 mm程度のワイヤであれば5 mm程動く。テンダの床下につければ良い。長いと抵抗値が大きく焼けにくい。すなわち動作がゆっくりになるから都合がよい。
形状記憶合金と言えば思い出すのは、伊藤剛氏の線路工夫の保線カラクリである。親方の合図で、8人の工夫が保線作業に従事する。
完成直後にそれを見せて戴いた時、それだけでも十分に面白いのに、もっと面白くする方法はないかと問われたのでこう答えた。
「線路がまっすぐでは面白くないですよ。レイルを形状記憶合金で作り、列車が走ってぐにゃぐにゃになったら、線路工夫たちがエンヤコーラして、その間にレイルに通電してジュール熱でピンとさせて見たらどうでしょう。」
その時の剛氏の顔は今でも忘れられない。
2009年08月09日
続 DCCの可能性
DCのときにはヘッドライトとテールライトが一つづつ付いていただけである。DCCでは最低限がその二つで、あとはいろいろな燈火が付け放題である。
マーカーランプ、運転室の室内燈、点検燈、場合によっては警告燈(縦軸を中心に左右に振るタイプ、丸く振るタイプ)をそれらしく再現する光り方を選ぶことができる。
光度も点滅速度も自由に選べる。蒸気機関車の火室下には火がちろちろと見えるのも再現できる。このような燈火は最大8回路あるので好きなように選べる。
煙を出したければ、そのうちの1つを使ってリレィを作動させ、大電流のON,OFFをすることができるので、かなりの迫力ある煙を出すことが可能だ。
レイアウトの電源を入れると、サウンドが起動すると同時に、これらの燈火が一斉に点く。機関車の番号を指定すれば、その機関車のライトが明るくなり、呼ばれたということがわかる。設定次第で音を大きくすることもできる。
火室下の赤い火を明るくすると、出発間近いということになる。ドレインを切りながらゆっくり出発して、列車に連結する。
出発まで待機しているときはブロワ音を大きくする。前照燈を明るくするとターボ発電機のヒューンという音が大きくなる。汽笛一声、出発である。スロットルを細かく調節し、スリップぎりぎりで加速するのは楽しい。たまに大きくスリップすると、激しいドラフト音が鳴り響き、再粘着と同時に元に戻る。
このような運転を寝る前に楽しむ。DCCは楽しい。15分のつもりが2時間になる。
費用対効果を考えると、DCCはもっとも価値あるおもちゃであると思う。
2009年08月07日
DCCの可能性
コンシストは多重連ディーゼル機関車の制御に用いるように作られている。その証拠に先頭車しかライトが点かないし、汽笛も先頭車だけから鳴る。電車に使うのも全く問題ない。
手動の協調運転をするときには機関士の数だけスロットルが要るのは当然であるという趣旨である。
最近、番線切り替えによるルートコントロールの補助装置が安く市販されるようになった。
ルートコントロールのみならず、車輌検知、信号まで対応する。
これがあると、ヤードごとに線路配置を描き、ポイントの開いている方向を現示させることもできる。大きな表示装置では勘違いも生じるので、個別に付けられればとてもよい。
実は筆者の所属しているクラブのOゲージの組み立てレイアウトのコントロールボードがあまりにも巨大である。配線も太く重い。これだけでもDCC化できれば楽である。
車輌はしばらくはDCで行くしかないと思う。線路だけでもDCC化すると、そのうち車輌をDCC化する人も出てくると思う。
ここしばらく、筆者は動力車を持っていかない。自分の車輌はDCC化してしまったので、そこでは走らせることができないのである。
2009年08月05日
続々々 「DCCで楽しむ鉄道模型」
いくつかの例が示してある。たとえば碓氷峠の横川駅で待機したEF63などが、やってきた列車に補機としてつなげられる場面とか瀬野・八本松間の解説である。
確かに同時に一つのキャブから全体を制御できればお手軽ではある。しかしそれでは筆者は満足できない。
DCCでは、運転者が縮小されてキャブに入っているという錯覚が生じるほど、個別運転が可能である。
重連では、総括制御ではない限り、キャブを複数作動させて走らせたい。
特に蒸気機関車は総括制御など不可能であるから補機は別のキャブで運転したい。そうすれば後部補機の押し過ぎで列車が脱線しない様にコントロールする面白さが出てくる。
筆者はキャブを3台持っている。いつもは2台で遊んでいる。両手に持って重連を楽しむ。汽笛の応酬を楽しみ、場合によっては片方がさぼった状態で運転する。
押して動くギヤが付いているので1輌でも引っ張れるが、やや苦しい。特に勾配区間では困難だ。勾配に差し掛かった時だけ両方が頑張るとぐいっと引き上げることができるのを見るのは楽しい。
ディーゼルの多重連は総括制御なのでコンシストに限る。
2009年08月03日
続々 「DCCで楽しむ鉄道模型」
DCCが導入されれば、走らせたくなるのは当然である。走らせるためにはそのような機構が必要である。日本の鉄道模型のもっともおろそかにされていた部分が変化せざるを得なくなったのである。
この本はその部分を大いに改善してくれるであろうと思う。
筆者は固定のレイアウトを持たない人こそDCCを始めるべきだと思っていた。その実例がこの本に載っている。スナップ・トラック(要するにお座敷運転のパチパチつなぐ線路)を使ってもすぐできる。ポイントの動作は走行電流から取れる。ほとんどのポイント用デコーダは走行電流を少しずつとって充電し、指令に従って放電させて動かす。走っている車輌がつんのめることもない。
ポイントマシンとコントロールボードを結ぶ、あのうっとうしい電線がすべてなくなる。これは大変大きな進歩である。大規模な組み立てレイアウトでは電線だけで20 kgもあることもあるのだ。
サウンド付き車輌の運転の楽しさにも触れている。実は筆者がDCC化したのは10年ほど前だが、サウンドが目的であった。
当時は高価であったが、現在はそうでもない。動力車を購入する価格で何台ものサウンド化が実現する。これは楽しい。
日本の模型屋さんの中でDCCについての知識のあるところは少ない。やってみれば簡単で誰もが欲しがるものなのに。この状態を放置してきた日本の雑誌の不作為の罪は大きいと思う。
この本の続編(応用編)の出版を期待したい。
2009年08月01日
続 「DCCで楽しむ鉄道模型」
DCCはすべての動力車とポイント切り替えができるはずである。ポイントの切り替えもするのだが、ヤードなどの各枝線には個別のスウィッチを付ける、またはポイントの切り替えによっての遮断をする。という話が二つも載っている。
要するに、常時通電の「DCCに依る動力遮断」をせず、別の装置(スウィッチであったりポイントの切替えであったり)の遮断をするというわけである。DCからDCCに乗り替えた人にこういう方式をとる人が多い。過去の行動様式が深く刻まれていると、それから抜け出して新しい方式には馴染みにくいものだ。ポイントを切り替えたとき、その線路が遮断されると安心ではある。ところが通電がないので、機関車のランプは消え、サウンドも止まってしまう。
初心者が読む入門書の最初の部分にこういう話が載っているのは感心しない。DCCならではの楽しみ方を載せるべきだ。過渡期にはこのようなことはあるにせよ、わざわざ書くこともあるまい。付け足し程度の扱いで十分だ。
この話は、アメリカのDCCの本などによく出てくる。しかしこの手の話とは少し違う。
DCCを古くから楽しんでいる人は初期の怪しい遮断性能しかないデコーダの記憶があるのだろう。筆者の持っていた古いデコーダにもとんでもないものがあり、OFFにしてあるのに勝手に少しずつ動くものがあったのだ。現在のデコーダにはそんな恐ろしい製品はない。
アメリカの本の話は、安全装置としての遮断だ。ターンテイブルの枝線にはスウィッチを付けるという話がある。
レイアウトルームに行き、メイン・スウィッチを入れると、いくつかの機関車のランプが点き、またサウンドが聞こえるのは気分が良い。
機関車の番号を指定すると、その機関車のランプが明るくなり、ボイラの圧力が高まる音がする。汽笛一声、発進!という楽しみが失せてしまうのは残念だ。
最近のDCCデコーダは性能が格段に上がって、信頼性が高い。
2009年07月30日
「DCCで楽しむ鉄道模型」
さすがはオーム社である。本の作り方が上手である。他社から出た本とは根本的に異なる。以前の本を読むと、出版社編集部の知識がないのがわかってしまう。
特定の会社の製品をこれしかないという感じで扱っている。著者がその会社の代理店になろうとしているかのように読めてしまうのだ。そんな本を知らずに買えば、洗脳されてしまうだろう。
世界は広く、よいものは他にもある。
出版社には責任がある。メディアとして社会に貢献するつもりなら、広く意見を求めなければならない。
日本でDCCについての「技術書」を出そうと思えば、NGDCCを無視することはできない。永末氏以外に確実な知識のある人などどこにもいないのだ。
今回、オーム社は永末氏に取材を申し込んでいる。当然と言えば当然なのだが、それを意図的に排除した本は参考書としての価値は低くなるだろう。
三矢英輔氏の素晴らしいレイアウトの紹介記事も興味深い。
今回この書を入手できたのはごく一般的な書店である。鉄道図書のところに平積みになっていた。売れるであろうと思う。
ようやく、DCCの普及の兆しが見えてきた。
2008年08月18日
Charlieのレイアウト
T&Pの支線が通っていたらしいが、30年位前に廃止されたらしい。チャーリィの奥さんの出身地にヒューストンから引っ越してきて、家を建てたのだそうだ。この土地としては珍しい地下室のある家である。退職後は田舎暮らしをしたかったのだそうだ。
もともとは石油掘削機器を作る会社に居た。特許を7つ持っていて、壁にその特許証を額に入れて飾ってある。非常に緻密な思考をする聡明な技術者である。
地下のレイアウトは 8 m × 12 mくらいで、アメリカのレイアウトとしては小さい。当然DCCであるが、半数の機関車がDCなので部分的に切り替えられるようになっている。レイアウトの制御はDCCである。
ポイントが40台ほどあるが、「配線が少なくなって楽だった」としみじみと言う。もしこれがDCCでなかったら配線の量は10倍であっただろうと言う。
レイアウトの高さは48インチと36インチであり、その間を勾配線がつないでいる。ヤードは有効長が5 mほどで、あまり長い編成は組めない。15輌くらいの貨物列車をコンソリデーションやミカドが牽く。勾配がきつく、長い列車を牽くのは無理であった。「重連をやりましょう。」と提案すると、「そうだ、それはまだやったことがないね。」と乗り気になった。35輌の貨物列車を筆者が組み立ててつないだ。
Consistという重連の仕方ではなく、二人で二台の機関車を運転し、掛け声をかけながら発車した。ディーゼル電気機関車の重連はコンシストが自然であるが、蒸機の場合はキャブ2台の方が、ずっと楽しい。登り坂では両方が頑張らねばならない。 峠を通過するときは「閉める!」と叫ぶ。lead engineの機関士に決定権がある。重連時の汽笛の鳴らし方はマニュアルを探さなければ分からないと言うので、声による意思疎通であった。久しぶりに楽しい運転であった。
2008年07月21日
NCEの新製品
しばらく前、このPower Proを発売した。実売価格は驚くべきことに150ドル弱である。軽いので郵送料も知れているから、日本からでも買いやすい。電流値は最大2Aくらいてあるが、筆者の車輌の走行およびポイント切り替えには十分である。
独立した電源トランスが不要で、100Vから240Vまで使える小さなDC電源が付属している。この本体の機能は通常型のPro Cabと同等で、なおかつ小さな電源も内蔵している。6芯のケーブルでジャックにつながれる。普通は4芯であるから、残りの2本で2A弱の走行電流を受け持っているのだろう。
さらに60ドルくらい出せば、3A型にグレイド・アップ出来る。3A出力のブースタというものを買い足すわけである。ほとんどの人はそれで十分であろう。もっと出力が必要であれば、それをさらに買い足せばよい。いくらでもつなぐことが出来る。
このPower Proの発売でDCC人口がかなり増えたようだ。この価格なら、欲しくなる人が増えて当然だ。HOの完成品を買うと、DCC仕様になっているので、それを運転するのに必要だということが大きい。
また、レイアウトの本線用にはすでに持っていても、試運転に使用したり、筆者のように、可般式モジュールの付属品としての購入が多いようだ。普及したと云えども、DCCがない場所でのデモ運転には必要だからだ。
2008年07月19日
Nagasue's Stationary Decoders
前述のように、分岐モヂュールの有効深さが25mm程度しかないので、スロゥモーション・ポイントマシンは採用不可能である。背の低いものは、ツイン・コイル型しかない。引き出しの中を捜すと、いくつか発見できたし、追加分をe-bayで落札することもできたから、必要数は満たせた。さて、それらを駆動するためには大電流を流せる電源が必要であり、なおかつ、それを瞬時に放電させるにはスウィッチの容量も問題である。多分すぐ焼けてしまうであろうと思われた。
筆者は大容量キャパシタに溜めた電荷を放電させるタイプが好きである。半導体のスウィッチを使えば焼けることはないが、その回路構成を考えると頭が痛かった。そこで永末氏のデコーダを薦められたのだ。このデコーダの優れているところは、線路を流れているDCC電流を少しづつ拾ってキャパシタに充電するところである。アイデアはすぐ思いつくが、実行は難しい。さらにそれを倍電圧検波して端子電圧を最大限上げている。Q=CVだから、電圧上昇の効果は目覚しい。強力にポイントマシンを動かしてくれる。また、ルート・コントロールの時は、1台あたり最大4つまで順次パチン、パチン、パチンと動かしてくれる。このあたりの作動状況は、見ていて楽しい。
充電電流は僅かに100mA程度である。小さな電源を使っていたとしても、走行中の列車の速度が落ちることもない。大変よく出来た製品である。
2008年05月03日
続々 レイアウトは進化する
以前は、ソケットをあちこちに用意して差し替えながら歩くという方法があった。筆者は70年代からその方式を採用していた。もちろん、ソケットから抜いた状態では、列車はその速度を維持する。
これは Model Rairoad Craftsman誌に連載されたSWACという方式を採用したときのことである。当然DC方式で、それにはボタンが二つしかなかった。ひとつを押すと、押している間加速を続け、離すとその速度を維持する。もうひとつのボタンを押し続けると、減速し、そのうち停止して逆行を始める。
あたかも物理のF=maの実験をしているような感じがした。これを神戸の故魚田真一郎氏が大変気に入って、しばらく貸していたことがあった。
SWACは、DC方式では最も進化した方式であった。もう使うことはないが、大切に保存してある。
さて、電線がつながっていると、いろんな点で不便である。引っ掛かったりするし、もう少し遠くまで伸ばそうと思っても無理であったりする。これを英語ではtetheredという。テザァとは犬の首輪の綱や、馬のつなぎ紐という意味であって、人間が自由に動けないことを意味する。
ウォーク・アラウンドは無線でないと面白くない。無線は光方式と電波方式がある。どちらも一長一短である。いずれBlue-Toothなどの方式を採るであろう。
視点に近い線路高、ウォーク・アラウンドの組み合わせはレイアウトを数倍面白くする。
2008年05月01日
続 レイアウトは進化する
ほとんどの方は、長方形のレイアウトを作り、その片隅から全体を俯瞰して操作するおつもりのようだ。それは四、五十年前のコンセプトである。それから抜け出すのは、非常に難しいことらしいと感じる。
それはDCCを採用していないからだと思われる。DCCを使えば、スウィッチ・ボードはほとんど不要となる。ワイヤレスのコマンダを使えば、どこに居ても列車に指令を出せる。ポイントの切り替えも、個別の指示を出す必要はない。運転して見るとよく分かるが、ポイントの切り替えは、ほとんどいくつかのモードでしか行われないから、そのモード番号を入れるだけである。
1番線通過モード、2番線での退避モード、機関区からの出発モード、操車場への出入りモードとかの数パターンしかない。
細かい操作は、スウィッチ・マシンの番号を入れて行うが、それもモード別に整理できるものが多い。セクショナル・スウィッチ・ボードを作ってもよい。
ウォーク・アラウンドのコンセプトも、お分かり戴くのが非常に難しいようだ。Andy Sperandeo氏とは、押して動くギヤの件でお世話になり、その後ご無沙汰していたが、第一回のJAM会場で再会した。そのときいろいろな話をしたが、「日本にもウォークアラウンドを根付かせたい」という熱意が溢れていた。彼の講演で出てきたのが、先回の「低空飛行のヘリコプタからの展望」の効果である。すばらしいお話であったが、果たしてどのくらいの方が、理解されたのかは分からない。
少なくとも、日本の雑誌ではウォーク・アラウンドを採用しているという記事には、ほとんどぶつからない。
2007年06月25日
続々 Track Cleaning
この写真の清掃車は戦前のものらしい。Louのところで見せて貰った物で、今となっては珍しい外側三線式用である。ブラシが金属製でないところが興味深い。
これは裏から見たところである。
今なら、電池を積み、ラジオ・コントロールで好きな場所を清掃できる。掃除機も小型で強力なものがある。押していく機関車もラジオ・コントロールにすれば集電不良の心配もない。
実は今それを製作中である。筆者のレイアウト中、特定の箇所の集電不良に悩まされている。その場所は手が届きにくく、困っている。長い棒に細かい紙やすりを付け、軽くこすってから、流動パラフィンを塗って重量列車を走らせると大抵直るが、それを一度で解決したいのだ。古いラジコン自動車から外した駆動装置を流用している。ブラシはブラスのカップ状ワイヤー・ブラシを使う。ブラシ用モータはジャンク屋で手に入れたギヤード・モータである。
2007年06月24日
続 Track Cleaning
買うときには、工業薬品店を電話帳で探して「流動パラフィン」と言えばすぐに売ってくれる。多分印鑑も要らないだろう。500gの瓶入りしかないので、小瓶に分けて、レイアウトに置いておく。必要に応じて細い刷毛で塗ればよい。蒸気機関車の場合は、動輪に直接垂らして、走らせれば良い。
発煙装置に入れる油も流動パラフィンの一種である。臭いがないが、広い意味では灯油の一種であると言える。Paraffinはイギリス英語では灯油の意味で使うこともある。
特別に純度の高いものはNujolと言う。ヌジョールは、赤外分光装置で分散媒として使う。
ともかく、鉄道模型で使う分には、臭いを気にしないならば普通の灯油でも良いということになる。灯油にはある程度の天然の硫黄化合物が入っている。日本では気がつかないが、産地によって臭いが異なる。たとえばアメリカでは、ペンシルバニアの灯油とテキサスの灯油では違う臭いがするのだ。
引火の心配をする人もいるが、灯油は約40℃以上でなければ引火しないような成分になっている。すなわち、灯油は人間の生活環境では引火しないように作ってあるのだ。流動パラフィンの引火点はもっと高い。
2007年06月23日
Track Cleaning
レイルを磨くという方法もあるが、磨くとレイルは確実に減る。少しでも長持ちさせたい。それにはレイル表面を洗うしかない。
色々な接点復活剤が市販されている。それらを大きく分けると、溶剤系のものと潤滑油を含んだものとに分かれる。
前者はこれまたたくさんの種類に分かれ、炭化水素、アルコール、エステル、ケトン、その他、あるいはそれらの混合物がある。最近は、リモネンというオレンジの皮からとる物質を含んだものが流行である。しかしこれはかなり強い果物の香りがする。
蒸発しやすいので何も残らないが、濡れている間にプラスチック、塗料を溶かしたりする。また、その間にこすらないときれいに落ちない。ということはある程度、蒸発速度が小さいものが良いので、順に調べていったところ、リグロインという灯油よりもやや蒸発しにくい炭化水素が大変な好成績を収めた。
レイルに筆で塗っておいて、列車を走らせると、先頭から10輌くらいの車輪に広がり、走ればこすられるので汚れが落ちる。それは車輪の踏面から横に押し出され、乾いて落下する。レイアウトの周回線路上に何箇所か塗ると、その一日は、ほとんど問題なく楽しめる。
さらに分子量の大きい「流動パラフィン」という、石油のある溜分を用いても同様であるが、蒸発までの時間が長く、こちらの方を好む人も多いだろう。
どちらも、人間に感じられる臭いは無く、引火の心配もない。これをタンク車に入れて、DCCで目的の場所に塗布できればとても愉快だ。
2007年06月22日
Speaker
それはスピーカの取り付けに大きな問題がある。スピーカの片方には完全な密閉空間が必要である。要するに、スピーカの振動するコーンと呼ばれる膜の向こう側とこちら側では、位相が180度異なる音波が生じる。これらが混じると、打ち消しあって音が小さくなるというだけのことである。
筆者は3mm程度のベークライト板を切り出して、スピーカ・ボックスを作る。それにスピーカをはめ、隙間をシリコーンのシーラントでふさいでいる。ほんの小さな穴があっても効果が落ちる。また、箱の大きさは大きいほど効果があるようだ。また、内部に吸音材を入れると駄目である。音が良く反射された方が良い。
このアイデアはPFM方式が紹介され始めた頃、TMSに載っていたと記憶する。索引をおつくりの方もいらっしゃるので、何号かをお調べ願いたい。確か25年位前だ。
当たり前のことであり、納得できたのだが、某雑誌社の社長は、「あれは大嘘だ。やってみたけど音は大きくならない。」と触れ回っていた。何を勘違いしたのかは知らないが、物理の本を開いてみるべきだったろう。いや中学校の理科を理解していないのだろう。
スピーカを床板に下向きにつけるときは、スピーカと床板の間に少しスペーサを挟んでおくと音が大きくなるし、音質も向上する。もちろん、これも、気密性が良くないといけない。
Tonyの店にもいくつかの商品がある。正しい知識のある人がアドヴァイスしているように見受けられる。
2007年06月21日
Snubber
これはダイナミック・ブレーキ の抵抗で、モータが発電した電力を消耗させるようになっている。始めは凝ったものを作って三段階にしたが、一段で十分であった。
抵抗器がほのかに温かくなる程度である。表面積の大きな抵抗を使ったからだ。
このような用途や、発煙装置の大電流を流すためにリレーは便利である。連結器の開放にリレーの動作を使うのも良い方法である。
リレーはリアクトルであるから、電圧を掛けてもなかなか電流が増えない。逆に、流れている電流はそう簡単に止まらず、逆電圧を発生する。この電圧は、電流を時間で微分しているので、急速に遮断すると数百ボルト以上にもなる。ゆっくり止めれば良いのだが、そういう訳にもいかない。
そこで、この図にあるようなダイオードを一つ入れておく。すると、ダイオードがその逆電圧を逃がすので、コイルの磁界は急速に消滅し、リレーの復帰も早くなる。つけないと、デコーダが瞬時に壊れる。
このようなダイオードをQuencherと言っていた(と思っていた)。最近はSnubberと言うらしい。
Quenchというのは「急に冷ます」という意味で、焼入れなどの時に使う言葉だ。鋼製車体のひずみ取りに、お灸をすえるという方法があるが、あれもQuenchingと言う。
のどの渇きを急に癒すような飲み物もQuencherと言ったりする。リレーの内部の磁界を消滅させると言う意味ではとても正しい。
Snubという言葉は、船のもやい綱が繰り出されていくのを止めるときぐらいにしか使わない言葉で、このような電気工学的な場面で使うとは思わなかった。Snubberはスナッバと発音する。今後よくお目にかかる言葉であろう。
2007年06月20日
続々 Back EMF
Back EMFを効かせると人工的な動きをするというのが結論である。本物は質量があリ、慣性が大きい。本物の機関車の動きを間近で見た世代の人間は、指示された所定の速度で必ず走るような機関車など見たくないのである。
直線ではスロットルを戻し、カーヴに入るとスロットルを開く。停車時は連結器を詰めて止まる。発車時には連結器遊間を利用しなければ起動できないような重い列車を、工夫しながら牽いていた機関士たちの話を聞いていれば、その運転の苦労がわかるような運転をしてみたいのである。
昨日も書いたが、出力の小さい機関車で重い列車を牽き出す時、連結器が伸びていくと速度が明らかに下がる。そこでスロットルを少し開くと、空転が始まる。空転を制御しながら、牽き出すのは楽しい。実物を運転する時のこのテクニックは、井上豊氏からよく伺ったものだ。
昨日は、無音型デコーダでバックEMFを採用するのは困難だ、と少し遠慮して書いておいたが、物理的に不可能であるのは自明である。工学的な話ではなく物理的に不可能なのである。このあたりのことを理解せず、周波数を上げれば可能だなどと言う人がいる。
2007年06月19日
続 Back EMF
その程度の高周波では、リアクトル(高周波成分を通しにくくするコイルと鉄心)の効果が大変大きくなる。小さなリアクトルとそれに合う平滑コンデンサを入れておけば、直流給電になる。これが完全直流デコーダであり、コアレスモータは無音で廻る。
動力装置が高性能であれば、この種のデコーダは非常に実感的な動きを再現する。それには、低速での「つんのめり」がないことが必要である。もともと低電圧で超低速が可能な機関車であれば、まさに実物どおりの動きを示す。機関車に3条ウォームギヤとボール・ベアリングが装備されていれば、このような動きが可能になるのだ。
Back EMFは人工的な効果を与えているので、発車時の「連結器が伸びて負荷が大きくなると機関車が止まりかける」といった情景を再現できない。筆者のレイアウトで86輌を牽き出す時の様子をビデオに撮り、アメリカの友人たちに見せたところ、「オウ、本物と同じ動きだ。それ頑張れ!」と応援していた。
無音型デコーダをバックEMF方式にすることは難しい。バックEMFを測定するためにはある程度の時間が必要なので、給電をやめる時間が短い高周波タイプのデコーダでは困難だ。
どうしてもやりたければ、モータに直結したタコ・ジェネレータあるいはフォト・インタラプタで回転数を常時測定して、別回路でフィードバックを掛けるしかない。大変高級な回路になり、もはや鉄道模型の領域を超えてしまうだろう。
2007年06月18日
Back EMF
すなわち、インバータ式電車と同く、場合によってはモータから異音が発生する。有鉄心モータ(普通のモータ)ではリアクタンス(電圧増大時にて電流が増えるのを妨げる働き)が大きいので、そのような音は聞こえないことが大きい。
給電を休んだ瞬間にDCCのデコーダはモータへの給電線に返ってくる電圧を測定する。すなわち、モータが発電機になって発電した電圧を調べる。もし、その電圧が想定していた電圧より小さければ、回転数が落ちている訳である。直ちに、次の給電パルスを長くする。そうすれば回転数は増加する。勢い余って、パルスが長すぎれば回転が早くなり過ぎ、発電電圧が大きくなるのでそれを検知して、給電パルスを短くする。
このようなことを毎秒100回位も繰り返す。大したものである。このお陰で多少動きのよくない機関車もまずまずの動きをする。すなわち、低速でも安定した動きを見せるわけである。
このパルス間の電圧測定の時間は、全く給電されていないわけである。すると、コアレス・モータのようにモータのリアクタンスが小さく、慣性モーメントが小さいロータは、パルスに忠実に回転しようとして、異音を発することになる。初期のデコーダからの音は、プーンとかピーンという音であった。そのうち、乱数を発生させて音の高さを一定にしないようにしたものが登場した。しかし、腹立たしい音であった。特に蒸気機関車には許せない種類の音である。
Back EMFを掛けないと静かになるかとも思ったが、そうではなかった。パルス幅で電力制御するのは、根本的にコアレスモータの駆動には向かないのである。しかもブラスの機関車ではたまに共鳴することがあり、珍妙な音がする。
2007年06月17日
続 サウンド装置
問題はそうでない機関車の音である。発売されている音を編集して、低音を強くするとか多少の変化を与えることが出来るが、根本的には変わらない。
ESUという会社は自由に音を編集するサウンド装置を売り出した。ビデオなどの音声を取り込んで自在に編集できるそうだ。筆者はまだ購入していないが、雑誌などの記事を見る限りかなりのことができそうである。写真は最新型ではなくやや古いものを示す。
おそらく、アマチュアの中に「特定の機関車の音の編集引き受けます」という者が出てくることだろう。サウンド装置のカスタムビルダである。これは商売として十分成り立つと思う。
蒸気機関車は停車中も結構音が出る。保火中の機関車も時々ストーカが動いたりする。ブローダウンにより塩分濃度の高い水を捨てたりする音がする。
前照灯を点ければ発電機の音がするし、時々インジェクタの作動音がする。結構細やかに音を出している。
機関車の火室下に赤い電球と黄色い電球をつけ、フリッカー(光のちらつき)をさせると本物のようで気分が良い。運転室の中に黄色の電球を入れ、時々強く光らせると、火室内部を覗くときの光の漏れを再現することが出来る。伊藤剛氏はその瞬間に火室扉を開くようにせよ、罐焚きが中を覗く動作もさせよとまでおっしゃる。
ディーゼル機関車はアイドル回転音の他にコンプレッサ音、エアタンクのドレイン抜きの「パシッ、パシッ」という音がする。ドレインは日本の機関車にはない音であるが、アメリカの機関区に行くとそこらじゅうでこの音がする。
サウンド装置は走行中もさることながら、停車中も楽しめる。レイアウトのスイッチを入れた瞬間に、機関区全体からいろいろな音がするのは素晴らしい臨場感である。
2007年06月16日
サウンド装置
筆者は機関車には動力用を、音声デコーダはテンダに入れている。機炭間の接続は8端子のカプラを採用している。これだけ回路があれば、電灯の配線も容易であるし、連結器の動作も可能である。
正直なところ、動力用のデコーダを良く焼いた。その原因はようやく分かってきた。ブラス製の機関車ではいたるところにショートする可能性がある。完全に防護してあるつもりでも、機炭間の接続あたりでは何かが起きる。前進時に良くても、逆行時にショートするのは、大抵ここだ。
電流制限を掛けていないと、ショートすればデコーダが燃える。ハンダが融け、何もかもめちゃくちゃになる。
最近サウンド・デコーダの価格が急速に下がり、買いやすい価格になった。しかし国内の価格はまだまだ高い。これでは普及を妨げているのと同じだ。海外から買って、航空運賃を入れても、まだずっと安い。
インターネットの普及で、海外の製品がオンラインで簡単に買えるようになった。送金もクレジットカードで簡単にできるが、それに対して、しり込みをする傾向も強い。筆者は過去一度もトラブルになったことがない。大変安心で信頼できる方法である事を強調しておきたい。初心者にはTony's の店をお勧めする。親切な店である。
2007年06月15日
電流計
試してみるとそれらしい値を示すが、それが正しいのかどうかは判らない。多く表示されるのか少なく表示されるのかも、不明である。RMSという概念がある。交流の実効値という意味である。正弦波のときは計算で補正できる。しかし矩形波で、なおかつ周波数が大きいので、ダイオードが電圧の立ち上がりに追随出来ず、妙な値を示す。
色々調べてみるとセレン整流器は立ち上がりに追随する能力が大きいことがわかった。しかし、メータはMoving Coil(可動線輪)型なので、高周波ではインピーダンスが変化して測定値が変化する。しかもONとOFFの時間も変化するから厄介だ。
昔、アマチュア無線を始めた頃勉強したことに、高周波電力計は、電力を熱に変えて熱電対で測定するという方法があったことを思い出した。それを作る以外ないと決心したが、ちょうどTonyの店がRMSを表示できる電流計を出してくれたので、二つ買った。全く同じ値を指示するので驚いた。
これがあると運転が楽しい。筆者のレイアウトでは機関車の効率が良く、付随車の摩擦が少ないので、本物のような動きをする。すなわち、加速時は電流値が多く、巡航時は電流が少ない。減速時には事実上、電流はゼロである。
2007年06月14日
Macro
例えば4本以上の側線がある操車場とか駅の構内のポイント切替では、「3番線開通」と指示すると、#1、#2、#3のポイントが動き、次に「2番線開通」と指示すれば#2だけが動くと良いわけである。このようなシーケンスをあらかじめプログラムして全自動で行うのがマクロ機能である。
200通りのパターンを記憶させ、各10台のスウィッチ・マシンを操作することができる。キャスケード、ルート・コントロールという呼び方をする会社もある。
この機能はNCE-Wangrowによって開発されNMRA規格に採用されたものであり、DigitraxのChiefが出現するまでは唯一の存在であった。
DCCではヤードの全ての線路に通電されているので、何かの間違いでそこに止まっているはずの機関車が動き出したりする可能性がある。ヤードの根元には、ポイントと連動するマイクロ・スウィッチでヤード全体をOFFにする必要があることもあるだろう。
これは扇形庫の枝線にも言えることである。機関庫に止まっている機関車がランプを点けていたり、音を立てたりするのも良いが、突然動き出して、ターンテイブル・ピットに落ちるのは避けたい。これは実物でもたまにある事故で、写真集に紹介されていたりするが、自分のレイアウトで起こることは望まない。安全装置として枝線ごとのスウィッチもあってもよいが、光も音もなくなる。
当初、ターンテイブルは、完全自動で目的の番線に合わせるタイプを導入するつもりだった。友人のレイアウトでDCCでコントロールするのを見ると、却って自動化していないほうが自然な動きをすることに気が付いた。要するに、自分で運転するほうが面白いということだ。
DCCで運転すると、機関士席のみならず、転車台のオペレータ席にまで、1/48になった自分が座って操作しているような気がする。すなわち、DCCを導入すると、人間が縮小されて運転台に座っているように感じるのである。
2007年06月13日
Cab
機関車を重連するときは、Consistという操作を行う。コンシストとは動力車の編成のことである。例えばディーゼル機関車の多重連を考えよう。それぞれの機関車の前後は決めておかねばならない。編成したとき一部の機関車が逆行することは避けねばならないので、1台ずつF,Rを指定してコンシストを組む。
すると、先頭の機関車の番号の指令が編成中の全ての機関車に同時に伝わる。すなわち、最前方の機関車の番号が編成の番号となるので、その番号を使って呼び出すことになる。汽笛は最前方の機関車しか鳴らない
ディーゼルの時はこれで、ほとんど不満はない。蒸気機関車の時は二台目以降にも機関士が乗っているので、本務機と補機が、多少違う動きをするほうがはるかに面白い。発車するときは本務機が汽笛を鳴らし、補機が応えて汽笛を鳴らしたり、加速時に片方がスリップするのを見るのは楽しい。
列車の最後部に補機を付けるときは、補機がサボると坂を登れないというのも実に面白い。両手にキャブを持ち、一人で遊んでも面白いが、2人でやるともっと面白い。
大きなレイアウトでは、「おい、この機関車を受け取れ。」と声が掛かる。あわてて番号を入れると、自分のキャブがその機関車をコントロールするようになる。
これがDCCのもっとも楽しいところである。