歯車
2024年02月09日
gear ratio
ギヤ比を通常のもの(1:15 程度)より下げて(1:8 程度 )いるが、特に苦情は無い。しかし、このギヤの現物を持っていない人が「1:15程度はないと・・・・」と 言っているという噂は聞いた。その思考は、無負荷回転数をもとに計算しているから、ということも伝えてくれた。
マグネットモータは分巻特性を持つ。軽い一定負荷の場合、電圧に比例して回転数が決まる。無負荷回転数ではトルクは出て来ないわけだが、その数字をもとに速度を考えている人が居るのには驚く。
模型列車の最高速度は、事実上最大出力時である。必要なトルクは大きい。これは当然のことなのだが、それを理解せずに最高速度が云々というのは無意味だ。
どの程度の負荷になるかを想定し、動力伝達装置の効率を考えて生み出させる出力を策定する。あとは電流、回転数を調べてグラフ上で読み取るだけである。これは中学1年程度の数学であって難しいことではない。昔とれいん123号にそのグラフを載せたが、そのグラフを正しくなぞって結果を出したという報告があったのは、お一人だけであった。要するに実験をせず、ごく適当に模型を作っている人が大半であるということだ。
模型とは言えども小さな機械であるから、伝達効率を考慮するのは当然である。模型蒸気機関車の機械的伝達効率は、通常型で最高 15 % 程度、高効率型でも 60 % 程度が限度である。ロッド駆動による損失は極めて大きい。良い潤滑剤が必要である。
むらかみ様
コメント本文に連絡先を書いてください。
マグネットモータは分巻特性を持つ。軽い一定負荷の場合、電圧に比例して回転数が決まる。無負荷回転数ではトルクは出て来ないわけだが、その数字をもとに速度を考えている人が居るのには驚く。
模型列車の最高速度は、事実上最大出力時である。必要なトルクは大きい。これは当然のことなのだが、それを理解せずに最高速度が云々というのは無意味だ。
どの程度の負荷になるかを想定し、動力伝達装置の効率を考えて生み出させる出力を策定する。あとは電流、回転数を調べてグラフ上で読み取るだけである。これは中学1年程度の数学であって難しいことではない。昔とれいん123号にそのグラフを載せたが、そのグラフを正しくなぞって結果を出したという報告があったのは、お一人だけであった。要するに実験をせず、ごく適当に模型を作っている人が大半であるということだ。
模型とは言えども小さな機械であるから、伝達効率を考慮するのは当然である。模型蒸気機関車の機械的伝達効率は、通常型で最高 15 % 程度、高効率型でも 60 % 程度が限度である。ロッド駆動による損失は極めて大きい。良い潤滑剤が必要である。
むらかみ様
コメント本文に連絡先を書いてください。
2024年02月01日
helical gear
筆者はHOの人たちがどの様なギヤを使っているのかについては、ほとんど知識がない。たまに持ち込まれるおかしなギヤについての感想を求められる程度だ。
明らかにこれは駄目というものはさておき、最近になってhelical gear 斜歯歯車を使うことについてのコメントを求められた。
結論を先に言うと、「歯車の厚さ(歯幅)が足らないので、考えても仕方がない。」である。
斜歯歯車は、歯先の衝突を避ける(緩和する)ために、当たっている部分が回転とともに横に移動していく。すなわち最低限、歯の両端で歯の一枚分(pitch)以上のズレが必要である。要するに、ある程度の厚みが必要である。過去に見たものはそれが半分以下であった。すなわち無意味である。
また、thrust が発生するのでその対処も必要である。スラスト(軸方向の推力)はうまく組み合わせて互いにキャンセルさせる工夫をすべきだが、そういう模型は見たことがない。
明らかにこれは駄目というものはさておき、最近になってhelical gear 斜歯歯車を使うことについてのコメントを求められた。
結論を先に言うと、「歯車の厚さ(歯幅)が足らないので、考えても仕方がない。」である。
斜歯歯車は、歯先の衝突を避ける(緩和する)ために、当たっている部分が回転とともに横に移動していく。すなわち最低限、歯の両端で歯の一枚分(pitch)以上のズレが必要である。要するに、ある程度の厚みが必要である。過去に見たものはそれが半分以下であった。すなわち無意味である。
また、thrust が発生するのでその対処も必要である。スラスト(軸方向の推力)はうまく組み合わせて互いにキャンセルさせる工夫をすべきだが、そういう模型は見たことがない。
2024年01月30日
smooth running engines
滑らかに走らせるには歯車の噛合いに注意する必要がある。以前、どうしてウォームギヤが無音で廻るかという話題があった。歯と歯との衝突がないからだという話を紹介した。これは、滑らかに廻るということと同根である。ウォームギヤだからこそ、低速で滑らかに廻るのである。
昔よく見たギヤボックスで、モータから来た推進軸がスパーギヤで平行に落とされ、ウォーム軸に伝動されている物があった。これはやかましい。すなわち動作が滑らかでなく、避けるべきものである。過去に見たものは歯数が足りない。すなわち噛合わせ調整をしても無駄なものばかりであった。
高効率ギヤはギヤ比がそれほど高くない。それを理由に採用に踏み切れない人も居ると聞く。高ギヤ比にするためには途中でもう一段ギヤを噛ませねばならず、滑らかさが損なわれる可能性がある。
現実に高効率ギヤを採用した人たちの中で、ギヤ比について問題を提起している人は無い。そういう意見が必ず来ると思っていたから、少々拍子抜けしている。
筆者は、技術者であった父親から「ギヤ比を低くすると効率が上がる事が多い」という実例をいくつか聞かされていたので、このギヤ比にすることにはためらいはなかった。摩擦損失は回転速度の関数であることは間違いない。
昔よく見たギヤボックスで、モータから来た推進軸がスパーギヤで平行に落とされ、ウォーム軸に伝動されている物があった。これはやかましい。すなわち動作が滑らかでなく、避けるべきものである。過去に見たものは歯数が足りない。すなわち噛合わせ調整をしても無駄なものばかりであった。
高効率ギヤはギヤ比がそれほど高くない。それを理由に採用に踏み切れない人も居ると聞く。高ギヤ比にするためには途中でもう一段ギヤを噛ませねばならず、滑らかさが損なわれる可能性がある。
現実に高効率ギヤを採用した人たちの中で、ギヤ比について問題を提起している人は無い。そういう意見が必ず来ると思っていたから、少々拍子抜けしている。
筆者は、技術者であった父親から「ギヤ比を低くすると効率が上がる事が多い」という実例をいくつか聞かされていたので、このギヤ比にすることにはためらいはなかった。摩擦損失は回転速度の関数であることは間違いない。
2024年01月28日
Quietness
友人からメイルを受け取った。かなり興奮した様子で、「この動画を見てくれ」とのことだった。
ある機関車が短い線路を往復する。初めは音を消して見ていたのでよく分からなかったが、音を出すととんでもない状態だった。芝刈機か電動の髭剃りかという感じだ。ギャーという音で、かなり悲惨である。昔はこういうのはよく見たが、この20年では初めてだ。これではお話にならない。以前観測能力という言葉を出したが、これはそういう話題では解決しない。根本的なところがおかしい。走らせると 100 mくらいでギヤが摩滅するだろう。
蒸気機関車からは大きな音が出てはまずいのだ。できれば無音で走って欲しい。知らせてくれた友人は、筆者の高効率ギヤを搭載するようになって、「もう後戻りはできない。」と言った。従前の駆動装置とのあまりの格差に驚いたのだ。いくつか購入し、主力機はすべて取り替えたようだ。「今までのは一体何だったのだ。」と言う。運転会に持って行って他の人に見せびらかしているという。そうすると欲しがる人が出て来て、普及が進み始めた。
今までは反トルクの処理がしてなかったので、変なゴムジョイントを使うはめになり、調子が悪い状態から脱出できなかった。六角ジョイントと高効率ギヤボックスのトルクアームで、すべて解決できたのだそうだ。
筆者のところにこのギヤに関する問い合わせが多くあったが、筆者はHOを触ったことがなく勘所がつかめないので、貫名英一氏にすべてをお渡ししてある。貫名氏は工学を修めたクラフツマンであるから、適切なアドヴァイスを戴けるはずである。
貫名氏のメイルアドレスは、下記の通り(掲載許可済)。
enukina60s@nifty.com
ある機関車が短い線路を往復する。初めは音を消して見ていたのでよく分からなかったが、音を出すととんでもない状態だった。芝刈機か電動の髭剃りかという感じだ。ギャーという音で、かなり悲惨である。昔はこういうのはよく見たが、この20年では初めてだ。これではお話にならない。以前観測能力という言葉を出したが、これはそういう話題では解決しない。根本的なところがおかしい。走らせると 100 mくらいでギヤが摩滅するだろう。
蒸気機関車からは大きな音が出てはまずいのだ。できれば無音で走って欲しい。知らせてくれた友人は、筆者の高効率ギヤを搭載するようになって、「もう後戻りはできない。」と言った。従前の駆動装置とのあまりの格差に驚いたのだ。いくつか購入し、主力機はすべて取り替えたようだ。「今までのは一体何だったのだ。」と言う。運転会に持って行って他の人に見せびらかしているという。そうすると欲しがる人が出て来て、普及が進み始めた。
今までは反トルクの処理がしてなかったので、変なゴムジョイントを使うはめになり、調子が悪い状態から脱出できなかった。六角ジョイントと高効率ギヤボックスのトルクアームで、すべて解決できたのだそうだ。
筆者のところにこのギヤに関する問い合わせが多くあったが、筆者はHOを触ったことがなく勘所がつかめないので、貫名英一氏にすべてをお渡ししてある。貫名氏は工学を修めたクラフツマンであるから、適切なアドヴァイスを戴けるはずである。
貫名氏のメイルアドレスは、下記の通り(掲載許可済)。
enukina60s@nifty.com
2023年10月04日
Climax の台車を作る
クライマックスの伝導方式を示す写真である。ギヤボックスは無いが、2つの軸が正しい位置に来るように、位置関係を保つ部品がある。
傘歯車には、thrust(軸方向の推力)が発生するので、それを承けねばならない。ギヤボックスがあれば、ラジアル・ベアリング(法線方向の力を支える軸受)で、かなりのスラストを受けられるが、ここにはそれがない。外に独立したスラスト・ベアリングを置かねばならないわけだ。F氏は歯車の噛み合い部以外の摩擦を最小限にするために、あらゆる方策を講じることにしたようだ。
動輪軸は Φ3 でかなり細い。駆動軸はそれを跨いでいる。歯車はどうしても調子が悪いようで、新規に発注すると言う。
そのような製作所はどこにあるのかと心配したが、思わぬ方法であった。たくさんのギヤの中からまともなものを探し出し、それを彫金の工房に持ち込むのだそうだ.3次元測定器でデータを取り、それで樹脂型を作る。後に金属で置換をする。どれくらいの価格なのか、ヒヤヒヤしていたが、それほど高いものでもないらしい。
傘歯車には、thrust(軸方向の推力)が発生するので、それを承けねばならない。ギヤボックスがあれば、ラジアル・ベアリング(法線方向の力を支える軸受)で、かなりのスラストを受けられるが、ここにはそれがない。外に独立したスラスト・ベアリングを置かねばならないわけだ。F氏は歯車の噛み合い部以外の摩擦を最小限にするために、あらゆる方策を講じることにしたようだ。
動輪軸は Φ3 でかなり細い。駆動軸はそれを跨いでいる。歯車はどうしても調子が悪いようで、新規に発注すると言う。
そのような製作所はどこにあるのかと心配したが、思わぬ方法であった。たくさんのギヤの中からまともなものを探し出し、それを彫金の工房に持ち込むのだそうだ.3次元測定器でデータを取り、それで樹脂型を作る。後に金属で置換をする。どれくらいの価格なのか、ヒヤヒヤしていたが、それほど高いものでもないらしい。
2023年09月16日
center sill
鉄道玩具の床板を分解し、余分なものをすべて外した。先回作ったcenter sill(背骨)は10 mm角であって、 重過ぎた。
高さがあれば良いので、5 mm角に、9.5 mm(3/8インチ)x0.8 mm(1/32インチ)の平角棒を左右に貼った。
さすがにこのハンダ付けは、炭素棒では難しい。出来ないことは無いが、連続使用すると電源が焼ける虞れがある。30秒以内の使用に限らねばならない。
複数のクランプで締め、ガス火で炙る。薄板は温度が上がり易く、膨れ上がるから、クランプを順に緩めながらハンダを流す。全体が温まれば、膨れ上がりは収まる。63%ハンダを使えば、全面ハンダ付けは簡単だ。この状態で質量は 93 g とかなり軽くなった。剛性は十分にある。(写真左は細い背骨だけを示す。右3つは細い背骨を置いてみただけである。まだメタルタッチになっていない。薄い床板にはプレスで膨らみが作られ、照明部品などを差し込むようになっていた。それらを全て切り取らないと背骨が密着しない。)
背骨の裏をベルトサンダで研磨して平面を出し、鉄板の薄い床板にネジで締め付ける。連結器座の高さまで到達しないので、別部品を作ってハンダ付けし、持ち上げる。それをフライスで正確に削って、連結器座とメタルタッチさせるわけだ。
ここで気が付いたのは、荷物車の床板高さは他車の床板高さより 3 mmも低いことだ。すなわち、押出しの型が違うということである。そうするメリットがあるとは思えない。車輌外形は全く同一である。妻板は同じなので、妻板の取り付けには妙なスペイサを挟まねばならない。理解不能だ。
その床板が低かったので、ムクの背骨は、まだ細くて済んだわけだ。そうでなければ、13 mm角を使わざるを得ず、諦めて別の方法を採ったであろう。
高さがあれば良いので、5 mm角に、9.5 mm(3/8インチ)x0.8 mm(1/32インチ)の平角棒を左右に貼った。
さすがにこのハンダ付けは、炭素棒では難しい。出来ないことは無いが、連続使用すると電源が焼ける虞れがある。30秒以内の使用に限らねばならない。
複数のクランプで締め、ガス火で炙る。薄板は温度が上がり易く、膨れ上がるから、クランプを順に緩めながらハンダを流す。全体が温まれば、膨れ上がりは収まる。63%ハンダを使えば、全面ハンダ付けは簡単だ。この状態で質量は 93 g とかなり軽くなった。剛性は十分にある。(写真左は細い背骨だけを示す。右3つは細い背骨を置いてみただけである。まだメタルタッチになっていない。薄い床板にはプレスで膨らみが作られ、照明部品などを差し込むようになっていた。それらを全て切り取らないと背骨が密着しない。)
背骨の裏をベルトサンダで研磨して平面を出し、鉄板の薄い床板にネジで締め付ける。連結器座の高さまで到達しないので、別部品を作ってハンダ付けし、持ち上げる。それをフライスで正確に削って、連結器座とメタルタッチさせるわけだ。
ここで気が付いたのは、荷物車の床板高さは他車の床板高さより 3 mmも低いことだ。すなわち、押出しの型が違うということである。そうするメリットがあるとは思えない。車輌外形は全く同一である。妻板は同じなので、妻板の取り付けには妙なスペイサを挟まねばならない。理解不能だ。
その床板が低かったので、ムクの背骨は、まだ細くて済んだわけだ。そうでなければ、13 mm角を使わざるを得ず、諦めて別の方法を採ったであろう。
2023年09月04日
新しい歯車の入荷
歯車屋から新しいギヤが納品された。今回の発注は、このHO用新型歯車(薄型)と、新設計のOゲージ蒸気機関車用の歯車である。
Oゲージ用の歯車の写真を示す。左側が新規の蒸機用で、右側は今までのディーゼル電機用である。右は手元にあったものを、きっちり詰めるようにしただけで、他意はない。
非常に美しい仕上がりで、金貨のようである。価格も金貨とは行かないが、銀貨よりは高い。歯の仕上がり面の美しさはなんとも言えない。普通の模型用の歯車より、2桁ほど精度が高い。
このような出荷用のケースがあり、そこに詰めて渡してくれる。袋にドサッと入れるようでは傷だらけになる。歯型に影響が出てはいけないのだ。精密機械の部品であることをご承知願いたい。
40インチ動輪のディーゼル電気機関車用はギヤ比が 3:23 である。蒸気機関車は動輪の径が2倍ほど大きいから、蒸機用は 3:32 とした。速度の点では前者でも特に問題はなかったが、牽引力の点では不満があった。テストで重列車を牽かせるとモータが焼けそうであった。軸重を減らせば問題ないのであるが、それでは重列車が牽けなくなる。
今までは2段減速であったが、ギヤボックスが見えにくい1段にした。そのギヤボックスを制作中である。
新しいOゲージ蒸機用は、新設計のトルクチューブ付きにする。台枠への取付けは非常に簡単であって、反トルクは完全に抑え込め、なおかつ走行は滑らかになる。
Oゲージ用の歯車の写真を示す。左側が新規の蒸機用で、右側は今までのディーゼル電機用である。右は手元にあったものを、きっちり詰めるようにしただけで、他意はない。
非常に美しい仕上がりで、金貨のようである。価格も金貨とは行かないが、銀貨よりは高い。歯の仕上がり面の美しさはなんとも言えない。普通の模型用の歯車より、2桁ほど精度が高い。
このような出荷用のケースがあり、そこに詰めて渡してくれる。袋にドサッと入れるようでは傷だらけになる。歯型に影響が出てはいけないのだ。精密機械の部品であることをご承知願いたい。
40インチ動輪のディーゼル電気機関車用はギヤ比が 3:23 である。蒸気機関車は動輪の径が2倍ほど大きいから、蒸機用は 3:32 とした。速度の点では前者でも特に問題はなかったが、牽引力の点では不満があった。テストで重列車を牽かせるとモータが焼けそうであった。軸重を減らせば問題ないのであるが、それでは重列車が牽けなくなる。
今までは2段減速であったが、ギヤボックスが見えにくい1段にした。そのギヤボックスを制作中である。
新しいOゲージ蒸機用は、新設計のトルクチューブ付きにする。台枠への取付けは非常に簡単であって、反トルクは完全に抑え込め、なおかつ走行は滑らかになる。
2023年07月14日
エンジニアリング・プラスティック
通称エンプラだそうだ。はっきりと決まった定義はないが、通常のプラスティックより高温に耐え、力学的強度が大きく、長期間の使用においても特性の変化が少ないものを指す。
POM(ジュラコン、デルリンなど)、ナイロンなどが有名で、製造各社によって仕様が決まっている。これらは結晶性プラスティックであり、常温近辺の温度での使用によって流れてしまうということがない。模型では、歯車、ギヤボックス、台車、自在継手に適する。これら以外のプラスティックは、製造してからしばらくは良さそうに見えるが、時間とともに少しずつ分子間の相対距離が変化し、変形、流動する。
ただしエンプラとは言え、POMのギヤをシャフトと嵌合させると数年以内に割れる。これは業界ではかなり周知されているのは喜ばしい。
最近テフロンの話題を出したところ、テフロンで歯車を作れないかという相談があった。結論は言うまでもなく、論外である。軟らかく、擦り減りやすい。摩擦が少ないという長所はあるが、力が掛かれば消滅する。流量計などには使われているが、動力伝達には全く向かないものである。
POM(ジュラコン、デルリンなど)、ナイロンなどが有名で、製造各社によって仕様が決まっている。これらは結晶性プラスティックであり、常温近辺の温度での使用によって流れてしまうということがない。模型では、歯車、ギヤボックス、台車、自在継手に適する。これら以外のプラスティックは、製造してからしばらくは良さそうに見えるが、時間とともに少しずつ分子間の相対距離が変化し、変形、流動する。
ただしエンプラとは言え、POMのギヤをシャフトと嵌合させると数年以内に割れる。これは業界ではかなり周知されているのは喜ばしい。
最近テフロンの話題を出したところ、テフロンで歯車を作れないかという相談があった。結論は言うまでもなく、論外である。軟らかく、擦り減りやすい。摩擦が少ないという長所はあるが、力が掛かれば消滅する。流量計などには使われているが、動力伝達には全く向かないものである。
2023年06月30日
押して動く機関車
先日の記事で、「手で押して動くというのは、さほど意味はない」と書いたところ、複数の方から突き上げを喰らった。大いに意味があるとおっしゃる。
「単にギヤを替えただけでは、押さえ付けなければ動かない程度に思われてしまいますから、軽く転がるまで整備しています。」
「押せば発電して電気が灯り、他の機関車も動きます。今まで見たことがない光景が繰り広げられます。これは楽しいです。」
などである。
確かに、初めて見ると興奮するだろう。それは副次的な効果であるが、筆者も39年前にそれをやっていたことを思い出した。すでに時は流れ、それが当然であるので、忘れていた感覚であった。確かに、合葉氏は大変興奮していた。
効率が良いと、このような効果を生む。多条ウォームを使っても、設計が良くないとこのような結果は得られない。とにかく音がするようでは根本的にアウトである。
設計するということは、注文することとは違う。そこのところを理解していない人はいる。歯型が大切なことを理解していないのだ。
工学系の友人はもう1つ付け足した。
「ウォームを押しネジで留めているのは、全て駄目です。」
その通りだ。首を振っている可能性が高い。今ならロックタイトがある。昔は軸にローレットを切って圧入した。また、ハンダ付けする人も居た。
「単にギヤを替えただけでは、押さえ付けなければ動かない程度に思われてしまいますから、軽く転がるまで整備しています。」
「押せば発電して電気が灯り、他の機関車も動きます。今まで見たことがない光景が繰り広げられます。これは楽しいです。」
などである。
確かに、初めて見ると興奮するだろう。それは副次的な効果であるが、筆者も39年前にそれをやっていたことを思い出した。すでに時は流れ、それが当然であるので、忘れていた感覚であった。確かに、合葉氏は大変興奮していた。
効率が良いと、このような効果を生む。多条ウォームを使っても、設計が良くないとこのような結果は得られない。とにかく音がするようでは根本的にアウトである。
設計するということは、注文することとは違う。そこのところを理解していない人はいる。歯型が大切なことを理解していないのだ。
工学系の友人はもう1つ付け足した。
「ウォームを押しネジで留めているのは、全て駄目です。」
その通りだ。首を振っている可能性が高い。今ならロックタイトがある。昔は軸にローレットを切って圧入した。また、ハンダ付けする人も居た。
2023年06月28日
ギヤの音
静かで滑らかな走行を目指したい。これは筆者が高校生以来、目標にしていることだ。
様々な模型を見る。ほとんどが妙な音を発している。モータ音、ギヤ音、車輪とレイルとの間の音。
どれも解決できないものではない。しかし、誰もそれらについて議論を始めようとしない。外観には異常にこだわるのに、音の件については見て見ぬふりをしているように見える。
ギヤの音は最も解決しやすい。駄目なものを捨てて、正しいものにすれば良いだけである。自力でギヤを設計して発注するのは、敷居が高いかも知れない。しかし、すでにあるのなら、改装は簡単である。
最近見た O scale の電車はいわゆる吊掛け駆動であった。ピニオンは8枚歯だ。これは見るからに駄目な歯型である。ギヤ比を稼ぐためにはそうせざるを得ないらしい。そのピニオンはタミヤが出しているジュラコン(POM)製である。
「プラスティックであるから静かです。」とは言うが、筆者にはその音が聞こえる。根本的に駄目な組み合わせである。確かに動くが、決して静かではない。静かな駆動の実例を知らないのだ。
様々な動画を見ると、とんでもない音を出している機関車に遭遇する。ウォームギヤなのにガリゴリ音を出して、「滑らかに走る!」と自慢げなものもあった。良いものを見たことがないのがその原因なのだろう。高効率ギヤをお持ちの方はなるべく露出を多くして戴きたい。
博物館の転車台駆動装置には17:100のスパーギヤの減速装置がある。これは静かである。初めは12:100にしたが、ギヤ音が無視できなかった。歯数が少ないと駄目であるのは当然で、その音を聞こえないことにしてしまうのは無理な相談だ。もちろん互いに素でないのも許せない。
そういう点でもこの種の吊掛け式には無理がある。モジュールを小さくするという手もあるが、14枚歯以上のピニオンというのは難しいだろう。しかも開放されているのでは、埃を巻き込む。
見せてもらったものは、
「プラスティックだから油が要りません」と言うのだが、それもあまり感心しない理屈だ。潤滑は必要だ。
要するに動きます、というだけのものである。走ります、とは違う。完全密閉されたギヤボックスを持ち、無音で長寿命のものではない。軽い電車を走行会場で2,3周させておしまいなら良いのかも知れないが、一日中走らせれば摩滅するだろう。それで良いのだろうか。
様々な模型を見る。ほとんどが妙な音を発している。モータ音、ギヤ音、車輪とレイルとの間の音。
どれも解決できないものではない。しかし、誰もそれらについて議論を始めようとしない。外観には異常にこだわるのに、音の件については見て見ぬふりをしているように見える。
ギヤの音は最も解決しやすい。駄目なものを捨てて、正しいものにすれば良いだけである。自力でギヤを設計して発注するのは、敷居が高いかも知れない。しかし、すでにあるのなら、改装は簡単である。
最近見た O scale の電車はいわゆる吊掛け駆動であった。ピニオンは8枚歯だ。これは見るからに駄目な歯型である。ギヤ比を稼ぐためにはそうせざるを得ないらしい。そのピニオンはタミヤが出しているジュラコン(POM)製である。
「プラスティックであるから静かです。」とは言うが、筆者にはその音が聞こえる。根本的に駄目な組み合わせである。確かに動くが、決して静かではない。静かな駆動の実例を知らないのだ。
様々な動画を見ると、とんでもない音を出している機関車に遭遇する。ウォームギヤなのにガリゴリ音を出して、「滑らかに走る!」と自慢げなものもあった。良いものを見たことがないのがその原因なのだろう。高効率ギヤをお持ちの方はなるべく露出を多くして戴きたい。
博物館の転車台駆動装置には17:100のスパーギヤの減速装置がある。これは静かである。初めは12:100にしたが、ギヤ音が無視できなかった。歯数が少ないと駄目であるのは当然で、その音を聞こえないことにしてしまうのは無理な相談だ。もちろん互いに素でないのも許せない。
そういう点でもこの種の吊掛け式には無理がある。モジュールを小さくするという手もあるが、14枚歯以上のピニオンというのは難しいだろう。しかも開放されているのでは、埃を巻き込む。
見せてもらったものは、
「プラスティックだから油が要りません」と言うのだが、それもあまり感心しない理屈だ。潤滑は必要だ。
要するに動きます、というだけのものである。走ります、とは違う。完全密閉されたギヤボックスを持ち、無音で長寿命のものではない。軽い電車を走行会場で2,3周させておしまいなら良いのかも知れないが、一日中走らせれば摩滅するだろう。それで良いのだろうか。
2023年04月03日
続 高効率ギヤ
過去にも何度か書いたが、この歯車の設計にはかなりの時間を掛けている。普通のウォームではない。進み角が大きくなると、ウォーム・ホイールも多少変化する。そのあたりのことは細かく計算した。
仕様を決めただけで業者に発注して、「設計した」と言い張る人もいるが、それではうまくいかないのは自明だ。
今回のHOにも使えるギヤセットは、Oゲージのディーゼル、電車用でもある。徹底的な工夫により、極めて高効率で、音もしない。
先日の来客は、音がしないのには感服したとおっしゃる。音はするはずはないのだが、普通のHOのウォーム・ギヤセットはやかましいと言う。何か根本的なところが間違っているのだ。1条のウォームで進み角が小さいので、ほとんど何も考えることはないが、音がするそうだ。
「かなりのノウハウが詰まっているのですよね。」とその来客は感想を述べられた。確かにそれはあるが、それは本を読んで計算を繰り返しただけで、筆者自身の発見ではない。これは、良いものを作ろうと思えば当然するべき努力である。コンピュータに数式を入れてグラフを描かせ、効率の計算をしたと信じる人も居るから困ったものだ。
仕様を決めただけで業者に発注して、「設計した」と言い張る人もいるが、それではうまくいかないのは自明だ。
今回のHOにも使えるギヤセットは、Oゲージのディーゼル、電車用でもある。徹底的な工夫により、極めて高効率で、音もしない。
先日の来客は、音がしないのには感服したとおっしゃる。音はするはずはないのだが、普通のHOのウォーム・ギヤセットはやかましいと言う。何か根本的なところが間違っているのだ。1条のウォームで進み角が小さいので、ほとんど何も考えることはないが、音がするそうだ。
「かなりのノウハウが詰まっているのですよね。」とその来客は感想を述べられた。確かにそれはあるが、それは本を読んで計算を繰り返しただけで、筆者自身の発見ではない。これは、良いものを作ろうと思えば当然するべき努力である。コンピュータに数式を入れてグラフを描かせ、効率の計算をしたと信じる人も居るから困ったものだ。
2023年04月01日
高効率ギヤ
高効率ギヤで機関車群を改装された方が来訪した。もう20輌程改装したそうだ。
「人生を無駄にしました。」とおっしゃるので何事かと聞くと、
「数年前まで、このギヤの存在を知らなかったのです。80年代にとれいん誌に載ったのを見ていなかったので、動力改造に無駄な時間を使ってしまった。」
確かにTMSに載せなかったのは、失敗だったかもしれない。読者の数も層も違った。それには一つ理由があった。
この種のアイデアを人に見せると、それをすぐに特許申請する輩が居るのである。それを察知したので、直ちに雑誌に載せれば、公知の事実となり、誰も特許申請ができなくなる。筆者は、この特許で金儲けができるとは思わなかった。模型界の売上高は見当が付いていたからだ。このアイデアは広く使われるべきもので、特許で縛るのは良くないと思った。誰でも出来るように要点をすべて書いた。
すぐに載せてくれるのはとれいんしか無く、思った通り一月で載った。それで解決と思っていたが、某模型店が特許申請をしたという情報を得た。出向いて社長に会うと、驚いたことに、
「あれはうちで作ったもので、特許の権利はうちにある。」と言う。そこで、そのとれいん誌を開いてみせると絶句した。
「あなたが特許を申請する一月以上前に、この雑誌が発行されていますね。」
その後のことは思い出すのも面倒だが、一つだけ呆れたことを言ったのは覚えている。
「日本の模型界では各社が持っている特許を互いに無償利用できることになっている。」という出まかせだ。
「ほう、よその会社に行って今のことを伝えましょう。お宅の特許はただで使えるとね。」
社長は青息吐息で、這いつくばった。
「これで御勘弁を…。」
筆者は無言で会社を出た。その後、その社長は筆者と出会うと、いつも逃げて行った。
「人生を無駄にしました。」とおっしゃるので何事かと聞くと、
「数年前まで、このギヤの存在を知らなかったのです。80年代にとれいん誌に載ったのを見ていなかったので、動力改造に無駄な時間を使ってしまった。」
確かにTMSに載せなかったのは、失敗だったかもしれない。読者の数も層も違った。それには一つ理由があった。
この種のアイデアを人に見せると、それをすぐに特許申請する輩が居るのである。それを察知したので、直ちに雑誌に載せれば、公知の事実となり、誰も特許申請ができなくなる。筆者は、この特許で金儲けができるとは思わなかった。模型界の売上高は見当が付いていたからだ。このアイデアは広く使われるべきもので、特許で縛るのは良くないと思った。誰でも出来るように要点をすべて書いた。
すぐに載せてくれるのはとれいんしか無く、思った通り一月で載った。それで解決と思っていたが、某模型店が特許申請をしたという情報を得た。出向いて社長に会うと、驚いたことに、
「あれはうちで作ったもので、特許の権利はうちにある。」と言う。そこで、そのとれいん誌を開いてみせると絶句した。
「あなたが特許を申請する一月以上前に、この雑誌が発行されていますね。」
その後のことは思い出すのも面倒だが、一つだけ呆れたことを言ったのは覚えている。
「日本の模型界では各社が持っている特許を互いに無償利用できることになっている。」という出まかせだ。
「ほう、よその会社に行って今のことを伝えましょう。お宅の特許はただで使えるとね。」
社長は青息吐息で、這いつくばった。
「これで御勘弁を…。」
筆者は無言で会社を出た。その後、その社長は筆者と出会うと、いつも逃げて行った。
2023年03月22日
続 Climax
どちらも押して動くようにするために、駆動装置を徹底的に改良している。そうなると歯車の噛み合わせは重要だ。
平岡氏の歯車設計の式を眺め、難しそうだがやってみるかとも思った。しかし、動けば良いだけなら、3Dプリントという手もある。
円筒にインボリュート歯を付け、それを絞って円錐にして傘歯車を作る。その断面を解析して円錐に貼り付ければ、それと噛み合うような食い違い傘歯車を作れるかもしれない、と3Dの専門家と協議していた。そこに、Lobaughのギヤでも動くようになったとの報せがあり、ひとまずオリジナルのギヤでの走行となった。
F氏はこれらを Free to Roll にして、同一線路上で片方を押せば他方が動くようにするつもりだ。歯車が多くて効率が稼げないから、かなり難しそうではある。
このキットを完成させて走らせることが出来た、という話は過去数十年間、聞いたことがないので、現在の販売元は大喜びらしい。走行動画を公開すれば売れるかもしれないからだ。
平岡氏の歯車設計の式を眺め、難しそうだがやってみるかとも思った。しかし、動けば良いだけなら、3Dプリントという手もある。
円筒にインボリュート歯を付け、それを絞って円錐にして傘歯車を作る。その断面を解析して円錐に貼り付ければ、それと噛み合うような食い違い傘歯車を作れるかもしれない、と3Dの専門家と協議していた。そこに、Lobaughのギヤでも動くようになったとの報せがあり、ひとまずオリジナルのギヤでの走行となった。
F氏はこれらを Free to Roll にして、同一線路上で片方を押せば他方が動くようにするつもりだ。歯車が多くて効率が稼げないから、かなり難しそうではある。
このキットを完成させて走らせることが出来た、という話は過去数十年間、聞いたことがないので、現在の販売元は大喜びらしい。走行動画を公開すれば売れるかもしれないからだ。
2023年03月20日
Climax
当博物館には、Climax式の機関車のキットがあった。1960年頃、Lobaughが売り出したもので、ギヤは食い違い傘歯車であった。本物を縮小しただけのようで、かなり歯が細かく、わずかの心ブレでも不調になるものであった。雑誌の記事にその完成品の写真があったが、走ったとは書いてなかった。調子が悪いことは有名で、筆者の友人も「駄目だ。」と言っていた。200輌ほど製造され、売れたのが150輌程で残りはLobaughに死蔵されていたようだ。筆者の親しい友人 Bob がそれを買い取り、少し改良部品を付けて売りに出したのだが、ほとんど売れなかった。それを土屋氏の希望で1輌手に入れたが、そのまま、博物館に寄贈されたのだ。
F氏が組んでみたいと希望されたので、お渡しした。部品が間違っていたりして大変だったようだ。そうこうしているうちに、F氏はその販売元から、ご自分の分も買った。2輌まとめて組立ての途中である。
F氏が組んでみたいと希望されたので、お渡しした。部品が間違っていたりして大変だったようだ。そうこうしているうちに、F氏はその販売元から、ご自分の分も買った。2輌まとめて組立ての途中である。
2023年03月18日
平岡氏の記事
内野氏のところから来た膨大な資料の中に、日本機械学会誌の切り抜きがあった。それは平岡氏がClimaxの1/16模型を作られた時のことを書かれた記事であった。
誰も実現していないことを初めて達成した時のことが書いてある。興奮して夜中にも拘わらず、小さかったお子さんも叩き起こして見せたとのくだりは、筆者も似たようなことがあったことを思い出させた。
この記事は学会でもかなり評判が良かったそうだ。この記事をスキャンして発表しようと思った。しかしネット上でも発表されているとお知らせ戴いたので、紹介する。
クライマックスは歯車が命である。昔どこかで見た本で、適当に鋳物を作って、その歯面にヤスリを掛けて仕上げている場面があった。かなりいい加減だ。回転速度は大したことがないので、ゴロゴロガラガラと走っていたのだろう。そのうち擦り減って落ち着くというわけだ。
誰も実現していないことを初めて達成した時のことが書いてある。興奮して夜中にも拘わらず、小さかったお子さんも叩き起こして見せたとのくだりは、筆者も似たようなことがあったことを思い出させた。
この記事は学会でもかなり評判が良かったそうだ。この記事をスキャンして発表しようと思った。しかしネット上でも発表されているとお知らせ戴いたので、紹介する。
クライマックスは歯車が命である。昔どこかで見た本で、適当に鋳物を作って、その歯面にヤスリを掛けて仕上げている場面があった。かなりいい加減だ。回転速度は大したことがないので、ゴロゴロガラガラと走っていたのだろう。そのうち擦り減って落ち着くというわけだ。
2022年10月03日
他社のHOギヤボックス
別の友人が、前回の記事を見て意見を求めてきた。このギヤボックスはどうか、と聞くのだ。このギヤボックスも、1時間連続運転して止まると、動き出せないと言う。
確かにウォームが当たっているウォームホィールはPOMのようだ。ウォームは1条のようだから、進み角(°)は一桁である。すなわち効率は、あまり高くない。大きなモータを付け、重負荷を掛けて1時間も走れば、熱は溜まる。これも熱くなった状態で、急停止するとウォームの歯型が転写されてしまうのではないのだろうか。
ウォームホィールは熱の逃げやすい金属製に限る。快削のリン青銅を用いるのが普通である。快削のリン青銅と言っても何種類かあるから、よく調べて指定しなければならない。
長時間の運転をすることはアマチュアでは少ないだろうから、この種の問題は顕在化して来なかった。最近、いくつかの鉄道会社が博物館を持つようになって、この種の問題に気がつくようになったようだ。アメリカではかなり前から、この対策が必要であった。 筆者のギヤも微力ながら貢献した。
確かにウォームが当たっているウォームホィールはPOMのようだ。ウォームは1条のようだから、進み角(°)は一桁である。すなわち効率は、あまり高くない。大きなモータを付け、重負荷を掛けて1時間も走れば、熱は溜まる。これも熱くなった状態で、急停止するとウォームの歯型が転写されてしまうのではないのだろうか。
ウォームホィールは熱の逃げやすい金属製に限る。快削のリン青銅を用いるのが普通である。快削のリン青銅と言っても何種類かあるから、よく調べて指定しなければならない。
長時間の運転をすることはアマチュアでは少ないだろうから、この種の問題は顕在化して来なかった。最近、いくつかの鉄道会社が博物館を持つようになって、この種の問題に気がつくようになったようだ。アメリカではかなり前から、この対策が必要であった。 筆者のギヤも微力ながら貢献した。
2022年09月16日
続 HOのギヤボックスの見分
いくつかコメントを戴いているので、それに答えねばならない。
現物を見たわけではないので、一般論を紹介する。50年以上前、KTMはいろいろな場所で展示運転をしたらしい。1週間、走り詰めだったそうだ。ギヤはもったが、ギヤの前後に挟んだPOM(デルリンという商品名が有名)のワッシャが擦り切れて、中に綿くずのようになって詰まっていたそうだ。連続使用すると、熱で少しずつクリープ(塑性変形していく)して薄くなり、最終的には糸くずになったわけだ。
先回のギヤを連続運転すると、熱の逃げ場所がない。摩擦熱は相手のウォームホィールに蓄積され、クリープが起きやすくなる。長時間走って急停止すると、ウォームホィールにはウォームの形が転写されるかもしれない。そうなるともう起動できない。
材質は吟味する必要がある。ウォームが快削鋼、相手はリン青銅であれば、このようなことは起きない。もちろん正しい潤滑剤が必要だ。
モヂュールが小さいというのも、この種の事故が起こりやすい条件の一つである。大きなモヂュールであれば、変形は起こりにくいし、起こったとしてもその影響が小さい。モヂュールが小さなプラスティックギヤは、事故を誘発する。もちろん、進み角が小さくて効率が良くないから、発熱するというのもあるだろう。
もう一つ気になったのは、2軸を結ぶドライヴシャフトが中心にないことだ。台車のひねりでどのような影響があるのかは知らないが、左右対称にしておけばいろいろな点で自然である。
個人の住宅の中で数分間走らせておしまいなら、かなりの期間、よく走るであろう。
現物を見たわけではないので、一般論を紹介する。50年以上前、KTMはいろいろな場所で展示運転をしたらしい。1週間、走り詰めだったそうだ。ギヤはもったが、ギヤの前後に挟んだPOM(デルリンという商品名が有名)のワッシャが擦り切れて、中に綿くずのようになって詰まっていたそうだ。連続使用すると、熱で少しずつクリープ(塑性変形していく)して薄くなり、最終的には糸くずになったわけだ。
先回のギヤを連続運転すると、熱の逃げ場所がない。摩擦熱は相手のウォームホィールに蓄積され、クリープが起きやすくなる。長時間走って急停止すると、ウォームホィールにはウォームの形が転写されるかもしれない。そうなるともう起動できない。
材質は吟味する必要がある。ウォームが快削鋼、相手はリン青銅であれば、このようなことは起きない。もちろん正しい潤滑剤が必要だ。
モヂュールが小さいというのも、この種の事故が起こりやすい条件の一つである。大きなモヂュールであれば、変形は起こりにくいし、起こったとしてもその影響が小さい。モヂュールが小さなプラスティックギヤは、事故を誘発する。もちろん、進み角が小さくて効率が良くないから、発熱するというのもあるだろう。
もう一つ気になったのは、2軸を結ぶドライヴシャフトが中心にないことだ。台車のひねりでどのような影響があるのかは知らないが、左右対称にしておけばいろいろな点で自然である。
個人の住宅の中で数分間走らせておしまいなら、かなりの期間、よく走るであろう。
2022年08月07日
音のこと
蒸気機関車から歯車音がするのは絶対に許せない。
なぜウォームギヤを使うのかを考えてみたい。まず、直角伝導だから、大きなモータが使える。ギヤ比が大きく取れるから模型用としてはコストの点では大きなメリットだ。
忘れてはいけないことに、ウォームギヤでは音がしないということがある。ウォームギヤ以外では、必ず音がする。ウォームギヤは無音である。
筆者の動力増大装置は、3条ウォームギヤを使って、ウォームホィール側から廻して、動力ピックアップをしている。ここで普通のギヤを使うと、音を消すことは極めて難しい。ウォームギヤは逆駆動しても音は出ない。
今回希望者に頒布した3条ウォームは、とても静かである。無音であると言っても差し支えない。歯車の仕上げ精度が素晴らしく良いのだ。
HOでは車輪はブラスの挽物にニッケルめっきが主流だろうから、転動音はするだろう。しかし動力装置の音は聞こえないはずだ。
音のするウォームギヤセットには問題がある、と断言する。その問題とは、歯型のことである。
進み角の大きなウォームギヤには、特殊な歯型が必要であるが、そんなことにはお構いなしで作ったものもあるようだ。自分で計算せずに人任せで作ったもののようだが、お話にならない出来であった。
平歯車では、ピニオン(小さな平歯車)の歯型は相変わらずひどい。13枚歯以下のものは考えねばならない。
なぜウォームギヤを使うのかを考えてみたい。まず、直角伝導だから、大きなモータが使える。ギヤ比が大きく取れるから模型用としてはコストの点では大きなメリットだ。
忘れてはいけないことに、ウォームギヤでは音がしないということがある。ウォームギヤ以外では、必ず音がする。ウォームギヤは無音である。
筆者の動力増大装置は、3条ウォームギヤを使って、ウォームホィール側から廻して、動力ピックアップをしている。ここで普通のギヤを使うと、音を消すことは極めて難しい。ウォームギヤは逆駆動しても音は出ない。
今回希望者に頒布した3条ウォームは、とても静かである。無音であると言っても差し支えない。歯車の仕上げ精度が素晴らしく良いのだ。
HOでは車輪はブラスの挽物にニッケルめっきが主流だろうから、転動音はするだろう。しかし動力装置の音は聞こえないはずだ。
音のするウォームギヤセットには問題がある、と断言する。その問題とは、歯型のことである。
進み角の大きなウォームギヤには、特殊な歯型が必要であるが、そんなことにはお構いなしで作ったものもあるようだ。自分で計算せずに人任せで作ったもののようだが、お話にならない出来であった。
平歯車では、ピニオン(小さな平歯車)の歯型は相変わらずひどい。13枚歯以下のものは考えねばならない。
2022年04月17日
新設計のギヤセット
今回発注のギヤセットは新設計である。切削する刃物も新調して、考えられる最高効率を目指した。40年の研究結果の集大成であって、猿真似では、実現できないレヴェルにある。高価ではあったが、望んだ通りの結果が出た。
当然のことながら、Oゲージ用も同時にデヴュウしている。これには固定客がある。たまに模型クラブに持っていくと、価格を聞かれる。安いと感じるらしい。こちらは儲けるつもりがないので、一般のギヤセット程度の値段である。
売ってくれ、と言うので、細かい説明をする。潤滑剤の話、ボールベアリングの銘柄と形式、嵌め方、そしてシャフトは提供したもの以外使わないこと、さらにネジの締め方、リーマの通し方などである。
すると、その人は、「たかが模型なんだから、そんなことまで言わなくても…。」と言う。
こういう人には売らないことにしている。後で悪評を撒き散らされるのが、目に見えているからだ。価値を理解できない人は、間違った使い方をして、失敗する。更にそれを開発者である筆者のせいにされた事例は、多々ある。
筆者は精密機械の部品を用意しているのだ。おもちゃの部品を売っているわけではない。
当然のことながら、Oゲージ用も同時にデヴュウしている。これには固定客がある。たまに模型クラブに持っていくと、価格を聞かれる。安いと感じるらしい。こちらは儲けるつもりがないので、一般のギヤセット程度の値段である。
売ってくれ、と言うので、細かい説明をする。潤滑剤の話、ボールベアリングの銘柄と形式、嵌め方、そしてシャフトは提供したもの以外使わないこと、さらにネジの締め方、リーマの通し方などである。
すると、その人は、「たかが模型なんだから、そんなことまで言わなくても…。」と言う。
こういう人には売らないことにしている。後で悪評を撒き散らされるのが、目に見えているからだ。価値を理解できない人は、間違った使い方をして、失敗する。更にそれを開発者である筆者のせいにされた事例は、多々ある。
筆者は精密機械の部品を用意しているのだ。おもちゃの部品を売っているわけではない。
2022年01月11日
Youtubeへの投稿
しばらく前に投稿した動画のできが良くなく、「あの程度のスリップでは面白くない」という意見を戴いていた。カメラが古く、雑音が入る。画面が時々1コマ飛ぶというのが、かなりあった。スリップが目立たないというのは、走らせた線路が普段何も走らないヤードの線路で、摩擦が大きかったためだと思う。
よく磨かれている本線上なら、あまりにもスリップが大きくて驚くほどだ。
しばらく前に地元のクラブで公開した時の動画の評判が良いので公開する。仮設線路ではあったが、よく研磨してあり、滑らかである。クラブ員に運転を依頼して撮影した。尋常でないスリップが見られる。一輌だけの運転であることも分かる。決して後ろに紐がついているわけではない。
逆回転でのブレーキの撮影をしたつもりだが、写っていない。再度撮り直す必要がある。
先のKKCの集会では逆回転での制動を披露することが出来たが、肝心の撮影を忘れたのは残念であった。
よく磨かれている本線上なら、あまりにもスリップが大きくて驚くほどだ。
しばらく前に地元のクラブで公開した時の動画の評判が良いので公開する。仮設線路ではあったが、よく研磨してあり、滑らかである。クラブ員に運転を依頼して撮影した。尋常でないスリップが見られる。一輌だけの運転であることも分かる。決して後ろに紐がついているわけではない。
逆回転でのブレーキの撮影をしたつもりだが、写っていない。再度撮り直す必要がある。
先のKKCの集会では逆回転での制動を披露することが出来たが、肝心の撮影を忘れたのは残念であった。
2022年01月01日
またまたトルクアーム
トルクアームの話をしたい。ある友人が、この種の話を年に一回くらい、書くべきだと言う。何回も同じ話をしないと、読者は忘れてしまうのだそうだ。模型雑誌が扱わないので、代わりにやれということなのだ。 作用・反作用は、ニュートン力学の3つの柱の一つである。しかし、これを無視した模型機関車は極めて多い。輸出されたHOのブラス製機関車のうち、作用・反作用を考慮した構造のものは、1%に満たないだろう。
いつも、古い機関車を改造して、性能をUPする作業をしている。
この機関車では、キャブの中に無理やりモータを押し込むために、出力軸を通常の逆方向に出している。ギヤボックスはブラス板で作られていて、それにはトルクアームが付いている。
写真をよくご覧戴きたい。トルクアームの向きが随分傾いているように見えるが、これは正しい設計である。法線に対して直角である。すなわち接線と平行なのだ。バネ支持ではなく、ネオプレンゴム(変化しにくく、永持ちする硬いゴム板)を挟んだ構造で、軸の位置はほとんど変化しない。ただ、静かに走るようになる。これはMax Grayのアイデアである。
いつも、古い機関車を改造して、性能をUPする作業をしている。
この機関車では、キャブの中に無理やりモータを押し込むために、出力軸を通常の逆方向に出している。ギヤボックスはブラス板で作られていて、それにはトルクアームが付いている。
写真をよくご覧戴きたい。トルクアームの向きが随分傾いているように見えるが、これは正しい設計である。法線に対して直角である。すなわち接線と平行なのだ。バネ支持ではなく、ネオプレンゴム(変化しにくく、永持ちする硬いゴム板)を挟んだ構造で、軸の位置はほとんど変化しない。ただ、静かに走るようになる。これはMax Grayのアイデアである。
2021年11月04日
カルダン・ドライヴ
GG1の記事に対するコメントで、本物通りでない駆動方式と書いたところ、何人かの知人から連絡を戴いた。クイル駆動の模型化は出来ないのは明白だからだ。
大方の予想通り、平行カルダンを考えていた。12台のコアレスモータに14枚歯のピニオンを付け、29枚歯のスパーギヤに伝動する。
その先は反対側にある駆動軸ピニオンまで、短いユニヴァーサルジョイントで結び、45枚歯のスパーギヤに伝えるものであった。総ギヤ比は、14/29 ✕ 14/45 ≒ 1:6.7になり、出力 20 W強というとんでもなく強力な機関車になるはずであった。軸重は 8 N(800 gf)で、牽引力は11 N以上もあり、全体の質量は6 kgになる。もちろん、可動のギヤボックスには反トルク承けを付ける。
ところが新たに作った3条ウォームの性能が予想以上に良く、直角カルダン駆動が簡単に出来てしまうので、設計を破棄した。軽い機関車に変更だ。この図は昔TMSに載った井上豊氏の記事からである。ユニヴァーサルジョイントの位相、バネを用いた簡易トルクアームなど手抜かりがない。
過去に人を乗せて牽く機関車はいくつか見たが、どれも吊掛け駆動で、面白くなかった。原氏のGG1も12モータであったが、平行駆動であった。平行カルダンの機関車を作った人は、まずいないのではないかと思う。ED54を3人での競作記事がTMSにあったが、簡易ブフリィと称して、オルダム継手を付けたものもあった。
モータはたまたま20個を手に入れたので、これで人を牽いて走る予定であったが、それらのモータは電車などの駆動用に転用された。
重い機関車の動輪が自由に動くさまを見るのは、楽しいはずだ。
大方の予想通り、平行カルダンを考えていた。12台のコアレスモータに14枚歯のピニオンを付け、29枚歯のスパーギヤに伝動する。
その先は反対側にある駆動軸ピニオンまで、短いユニヴァーサルジョイントで結び、45枚歯のスパーギヤに伝えるものであった。総ギヤ比は、14/29 ✕ 14/45 ≒ 1:6.7になり、出力 20 W強というとんでもなく強力な機関車になるはずであった。軸重は 8 N(800 gf)で、牽引力は11 N以上もあり、全体の質量は6 kgになる。もちろん、可動のギヤボックスには反トルク承けを付ける。
ところが新たに作った3条ウォームの性能が予想以上に良く、直角カルダン駆動が簡単に出来てしまうので、設計を破棄した。軽い機関車に変更だ。この図は昔TMSに載った井上豊氏の記事からである。ユニヴァーサルジョイントの位相、バネを用いた簡易トルクアームなど手抜かりがない。
過去に人を乗せて牽く機関車はいくつか見たが、どれも吊掛け駆動で、面白くなかった。原氏のGG1も12モータであったが、平行駆動であった。平行カルダンの機関車を作った人は、まずいないのではないかと思う。ED54を3人での競作記事がTMSにあったが、簡易ブフリィと称して、オルダム継手を付けたものもあった。
モータはたまたま20個を手に入れたので、これで人を牽いて走る予定であったが、それらのモータは電車などの駆動用に転用された。
重い機関車の動輪が自由に動くさまを見るのは、楽しいはずだ。
2021年07月19日
続 クラウンギヤ
クラウンギヤは、径が十分大きければラックと同等とみなせるが、20枚歯程度では歯型がでたらめである。点接触をしているから、摩耗がひどく、徐々に崩れていく。ピニオンが硬い材料なら、クラウンギヤが適度に減ってそれなりの形で、ある程度の時間使える。しかし、音がするし、効率も良くない。要するに、減ることを前提にしている。
ところが以前見たものは、大きな40枚歯を硬質クロムめっきしてあった。これはまずい。そもそも、歯車をめっきすると歯型が狂うから、常識的にはしてはいけないことである。光っているから滑らかだと思うのは、勘違いである。顕微鏡で見ると、表面は粗雑だ。(自動車のエンジンのシリンダ内壁はクロムめっきしてから研磨してある。そうすると、その粗雑面の突起が削り落とされ、無数のクロムの金属結晶の隙間に潤滑油が満たされて摩擦を減らしている。)
ところがそれを使っている人は、嬉しそうに「クロムめっきしてあるから減らない」との”効果”を謳うのだ。大ギヤが硬いと、ピニオンがどうなるか、である。そこで見たピニオンは8枚歯のブラスであった。小さいものを軟らかい材料で作れば、たちまち寿命が尽きる。潤滑油が飛び散る開放されたギヤであったから、あっという間であろう。ギヤボックスを付けない人は大半である。密閉式にして油溜まりがあれば、かなり違うはずだ。
ギヤ比は、8:40=1:5 であった。割り切れるし、ピニオンが小さ過ぎて、歯型がおかしい。走らせるとギャーという音がするが、本人たちは至って無関心で、静かだと言う。重負荷を掛けると音がひどくなるが、そういう走らせ方はしていない。勾配がない線路しか走っていないのだ。また、各動輪が個別に駆動されるから、牽引力が大きいとは思えない。
こういうことに注意を払わない人は多い。いわゆる腕の良い模型人にも、この種の人はいる。合葉氏の言う「正しい鉄道模型」の実現は遠いと感じる。
ところが以前見たものは、大きな40枚歯を硬質クロムめっきしてあった。これはまずい。そもそも、歯車をめっきすると歯型が狂うから、常識的にはしてはいけないことである。光っているから滑らかだと思うのは、勘違いである。顕微鏡で見ると、表面は粗雑だ。(自動車のエンジンのシリンダ内壁はクロムめっきしてから研磨してある。そうすると、その粗雑面の突起が削り落とされ、無数のクロムの金属結晶の隙間に潤滑油が満たされて摩擦を減らしている。)
ところがそれを使っている人は、嬉しそうに「クロムめっきしてあるから減らない」との”効果”を謳うのだ。大ギヤが硬いと、ピニオンがどうなるか、である。そこで見たピニオンは8枚歯のブラスであった。小さいものを軟らかい材料で作れば、たちまち寿命が尽きる。潤滑油が飛び散る開放されたギヤであったから、あっという間であろう。ギヤボックスを付けない人は大半である。密閉式にして油溜まりがあれば、かなり違うはずだ。
ギヤ比は、8:40=1:5 であった。割り切れるし、ピニオンが小さ過ぎて、歯型がおかしい。走らせるとギャーという音がするが、本人たちは至って無関心で、静かだと言う。重負荷を掛けると音がひどくなるが、そういう走らせ方はしていない。勾配がない線路しか走っていないのだ。また、各動輪が個別に駆動されるから、牽引力が大きいとは思えない。
こういうことに注意を払わない人は多い。いわゆる腕の良い模型人にも、この種の人はいる。合葉氏の言う「正しい鉄道模型」の実現は遠いと感じる。
2021年07月17日
クラウンギヤ
前回紹介した記事ではクラウンギヤが用いてある。これは意外だ。合葉氏に見せてもらったものはすべてウォームギヤであった。作られた時期によって違いがあるのかもしれない。
合葉氏宅で話をした時、
「貴方はどうしてウォームを使うのか?」
と問われた。答は単純であった。
「静粛であることは、この上ないのです。効率も、工夫すればかなり上げられます。潤滑剤の進歩があり、他のギヤに勝るとも劣らないものができるはずです。」
と言うと、
「それでは、クラウンギヤについてはどう思う?」
と聞かれた。筆者は思い切って挑発的な表現をした。
「クラウンギヤは嘘で固めたギヤです。どこにも正しい部分がない。」
合葉氏は腹を抱えて笑った。
「その通りなのだけど、そこまで言うかって感じだね。」
こういうやりとりがあって、合葉氏は筆者のウォームギヤに傾倒していった。合葉氏と会う頃までには、筆者自身もウォーム・ドライヴの歴史については勉強して、実車にも使ってあったことを知っていた。
「初期のPCCカーにも使ってあったのです。」
と言うと、驚かれた。
「よくそんなことを知っているね。伊藤 剛氏は、名古屋市電800型で、それを近代化したのだね。名工大の先生にお願いして、より効率の上がる歯型を計算してもらったのだよ。PCCはその後、グリーソンのハイポイドギヤに切り替わったのだけど、そのギヤが精度高く出来るようになってからだ。」
「軍用6輪トラックにも多条ウォームが使ってありました。」
と言うと、
「うーん、参った。我々はウォームギヤを再評価せねばならないわけだ。山崎氏は『ウォームは逆駆動出来ない』と、昔のミキストで断言していたので、それは間違いだと指摘したが、わからなかったね。モリコーのギヤも逆駆動できる細い2条ウォームだったのだけど、彼は全く理解しなかった。」
という会話があった。この時点で合葉氏は、
「貴方のウォーム・ドライヴこそOゲージの未来を切り開く。」
と述べた。
合葉氏宅で話をした時、
「貴方はどうしてウォームを使うのか?」
と問われた。答は単純であった。
「静粛であることは、この上ないのです。効率も、工夫すればかなり上げられます。潤滑剤の進歩があり、他のギヤに勝るとも劣らないものができるはずです。」
と言うと、
「それでは、クラウンギヤについてはどう思う?」
と聞かれた。筆者は思い切って挑発的な表現をした。
「クラウンギヤは嘘で固めたギヤです。どこにも正しい部分がない。」
合葉氏は腹を抱えて笑った。
「その通りなのだけど、そこまで言うかって感じだね。」
こういうやりとりがあって、合葉氏は筆者のウォームギヤに傾倒していった。合葉氏と会う頃までには、筆者自身もウォーム・ドライヴの歴史については勉強して、実車にも使ってあったことを知っていた。
「初期のPCCカーにも使ってあったのです。」
と言うと、驚かれた。
「よくそんなことを知っているね。伊藤 剛氏は、名古屋市電800型で、それを近代化したのだね。名工大の先生にお願いして、より効率の上がる歯型を計算してもらったのだよ。PCCはその後、グリーソンのハイポイドギヤに切り替わったのだけど、そのギヤが精度高く出来るようになってからだ。」
「軍用6輪トラックにも多条ウォームが使ってありました。」
と言うと、
「うーん、参った。我々はウォームギヤを再評価せねばならないわけだ。山崎氏は『ウォームは逆駆動出来ない』と、昔のミキストで断言していたので、それは間違いだと指摘したが、わからなかったね。モリコーのギヤも逆駆動できる細い2条ウォームだったのだけど、彼は全く理解しなかった。」
という会話があった。この時点で合葉氏は、
「貴方のウォーム・ドライヴこそOゲージの未来を切り開く。」
と述べた。
2021年06月13日
OゲージのC53
”ウーンド”を調べている途中で、益田氏のC53の記事を見つけた。TMSの99号である。98号には辻阪信一郎氏の作品が載っている。
HOの棒型モータを2台つなげて、スパーギヤで平行に落とし、それからウォームギヤで減速している。スパーギヤはヘリカルギヤを使っているそうだが、騒音がひどいらしい。よほど優秀なギヤを使って密閉式ギヤボックスに入れない限り、この方法では騒音を撒き散らし、とても蒸気機関車とは思えない走りになる。記事にも、うるさくてだめだったと書いてあるが、その後に売り出された模型で、この種のドライヴを持つものは多い。すべてギャーギャーとやかましい。
益田氏のドライヴで良いところは、隣の軸に跨がせて反トルクを受け持たせたところだ。残念なことにひねりが利くようには作られていない。2軸が3点支持にはなっていないからだ。この種の、反トルクを受け持たせる機構(トルクアーム、トルクチューブ)を付けた模型は、その後60年以上に亘って、ほとんど出現していないのは、理解に苦しむ。少数は発表されているが、強調がなされていない。前後進で調子の異なる機関車が大半だ。これは走らせている人が少ないということだろう。
写真を見るとボイラが少し太くて立派過ぎる。C59の感じである。説明には2 mm太くしたとあり、失敗だったと書いている。キャブも低くしたようだ。
この模型は今どこにあるのだろう。拝見したいものだ。
HOの棒型モータを2台つなげて、スパーギヤで平行に落とし、それからウォームギヤで減速している。スパーギヤはヘリカルギヤを使っているそうだが、騒音がひどいらしい。よほど優秀なギヤを使って密閉式ギヤボックスに入れない限り、この方法では騒音を撒き散らし、とても蒸気機関車とは思えない走りになる。記事にも、うるさくてだめだったと書いてあるが、その後に売り出された模型で、この種のドライヴを持つものは多い。すべてギャーギャーとやかましい。
益田氏のドライヴで良いところは、隣の軸に跨がせて反トルクを受け持たせたところだ。残念なことにひねりが利くようには作られていない。2軸が3点支持にはなっていないからだ。この種の、反トルクを受け持たせる機構(トルクアーム、トルクチューブ)を付けた模型は、その後60年以上に亘って、ほとんど出現していないのは、理解に苦しむ。少数は発表されているが、強調がなされていない。前後進で調子の異なる機関車が大半だ。これは走らせている人が少ないということだろう。
写真を見るとボイラが少し太くて立派過ぎる。C59の感じである。説明には2 mm太くしたとあり、失敗だったと書いている。キャブも低くしたようだ。
この模型は今どこにあるのだろう。拝見したいものだ。
2021年04月08日
歯車を削る
歯車を薄く削る必要があった。10枚ほどの作業のために、ヤトイを作らねばならなかった。
歯車は直径が14 mmで、厚さを 2 mmほど削る。中心にはボールベアリングのインナ・レースが当たるようにボスを突き出させる必要がある。これを掴むためには直径17 mmの丸棒をERコレットで掴み、外径を削って掴む部分を作ってから突っ切る。
コレットに掴む部分は、Φ12.7 にして1/2インチのコレットで掴む。内径14mmの凹みを作り、歯車を掴めるようにする。ERコレットの心は十分出ているし、歯車は薄くするだけで、完全に同心で削らねばならないということもない。だからごく適当で良かったのだが、印をつけてRの文字の位置に合わせている。
出来たヤトイに歯車がぴったりはまるのを確認して、コレットから外す。凹みを付けた方から糸鋸で十文字に切り込みを入れる。そうしてできたヤトイをERコレットに戻し、歯車を掴んで旋削開始である。歯車は、心を押して密着させる。竹ブラシ法を使うまでもなく、密着する。
この竹ブラシ法は「蒸機を作ろう」にも記載されている方法で、旋盤工が使って来たうまい方法である。筆者は竹ブラシではなく、グリスを塗った丸棒を使うことが多い。
歯車の材料のリン青銅は、快削材である。いや、"快削のリン青銅"と言う方が良いらしい(快削でないものもあるそうだ)。シュルシュルと削れて、歯形がきれいだ。ワイヤブラシで軽くメクレを落とせば出来上がりである。楽しい作業であっという間に終わってしまった。へその部分は 0.1 mmも出れば十分なのだが、0.3 mmとした。
ヤトイを英語で pot chuck と言う。
ヤトイを作るための丸駒(適当な長さに切った丸棒)をいくつか用意してあるので、ヤトイ製作は即座にできる。
歯車は直径が14 mmで、厚さを 2 mmほど削る。中心にはボールベアリングのインナ・レースが当たるようにボスを突き出させる必要がある。これを掴むためには直径17 mmの丸棒をERコレットで掴み、外径を削って掴む部分を作ってから突っ切る。
コレットに掴む部分は、Φ12.7 にして1/2インチのコレットで掴む。内径14mmの凹みを作り、歯車を掴めるようにする。ERコレットの心は十分出ているし、歯車は薄くするだけで、完全に同心で削らねばならないということもない。だからごく適当で良かったのだが、印をつけてRの文字の位置に合わせている。
出来たヤトイに歯車がぴったりはまるのを確認して、コレットから外す。凹みを付けた方から糸鋸で十文字に切り込みを入れる。そうしてできたヤトイをERコレットに戻し、歯車を掴んで旋削開始である。歯車は、心を押して密着させる。竹ブラシ法を使うまでもなく、密着する。
この竹ブラシ法は「蒸機を作ろう」にも記載されている方法で、旋盤工が使って来たうまい方法である。筆者は竹ブラシではなく、グリスを塗った丸棒を使うことが多い。
歯車の材料のリン青銅は、快削材である。いや、"快削のリン青銅"と言う方が良いらしい(快削でないものもあるそうだ)。シュルシュルと削れて、歯形がきれいだ。ワイヤブラシで軽くメクレを落とせば出来上がりである。楽しい作業であっという間に終わってしまった。へその部分は 0.1 mmも出れば十分なのだが、0.3 mmとした。
ヤトイを英語で pot chuck と言う。
ヤトイを作るための丸駒(適当な長さに切った丸棒)をいくつか用意してあるので、ヤトイ製作は即座にできる。
2020年03月08日
続々 US Hobbies のギヤボックス
どうしてこのようなギヤボックスを作る必要が出て来たか、というのは少し説明が要る。Ajin製のヘリカルギヤだけのギヤボックスが複数見つかり、それにはEMD E7の車輪(36インチ)がついていた。 1:1のギヤボックスだから、事前に減速ギヤで減速しないと走らせることができないわけだ。
これがうまく行くかどうかは、使ってみないことにはわからないところがある。というのは、減速されて大きなトルクが台車に伝わる。すると、反作用で車体が反対方向に傾く可能性がある。輪重も一定にはならないかもしれないから、それは脱線を誘発するだろう。しかし既製品は曲がりなりにも走ったようなので、うまく行く可能性もある。
理想論を言えば、前後の台車のひねられる方向を逆にするために、ウォームのネジを鏡像にすれば良い。当然モータは2個を逆方向に回転させることになる。しかし、コストが増大するから、そんな模型は見たことがない。むしろ台車ごとにモータを付けて、独立した状態にするのが確実である。
過去に筆者が作ったものは、すべて台車内で3 : 23にしている。即ち、ドライヴシャフトで伝達するトルクは小さいから、車体が傾く心配はまずない。
今回のギヤボックスはCLWのE7に取り付ける予定で、それは砲金で鋳造された前頭部を持ち、すこぶる重い。ということは大きなトルクで推進軸を廻しても、その反作用に耐えてくれる可能性が高い。
これがうまく行くかどうかは、使ってみないことにはわからないところがある。というのは、減速されて大きなトルクが台車に伝わる。すると、反作用で車体が反対方向に傾く可能性がある。輪重も一定にはならないかもしれないから、それは脱線を誘発するだろう。しかし既製品は曲がりなりにも走ったようなので、うまく行く可能性もある。
理想論を言えば、前後の台車のひねられる方向を逆にするために、ウォームのネジを鏡像にすれば良い。当然モータは2個を逆方向に回転させることになる。しかし、コストが増大するから、そんな模型は見たことがない。むしろ台車ごとにモータを付けて、独立した状態にするのが確実である。
過去に筆者が作ったものは、すべて台車内で3 : 23にしている。即ち、ドライヴシャフトで伝達するトルクは小さいから、車体が傾く心配はまずない。
今回のギヤボックスはCLWのE7に取り付ける予定で、それは砲金で鋳造された前頭部を持ち、すこぶる重い。ということは大きなトルクで推進軸を廻しても、その反作用に耐えてくれる可能性が高い。
2020年03月06日
続 US Hobbies のギヤボックス
歯数が決まっているので、ギヤ比は変えにくい。ちょうどよい歯車があれば良いが、この M0.8 の手持ちは少なく、なかなか難しい。M0.5 であれば、異なる歯数の歯車をふんだんに持っている。軸距離を計算して可能な組み合わせを選び出す。今回、歯数が14枚に満たないものはすべて廃棄した。そんな歯車を使っている以上、ガリガリ・ジャラジャラ音からは絶対に抜け出せないからだ。(”M”とは歯車の歯の大きさを表す”モヂュール”である。)
ギヤボックスの内側のえぐりをフライスで拡げて、大きな歯車を入れると、自由度が増した。大きな50枚を最終段に置き、中間を大小二段の歯車にした。与えられた条件内で、14枚以上を用いた組合せを、限られた空間内に押し込んだ。設計にはかなり苦労した。
まさに「フライスと旋盤の実技修了試験」のような工作であった。すべての孔をフライスとリーマで仕上げて、ボールベアリングはすべり嵌めである。全くガタの無い軸というのは気持ちが良いが、もう一つ作るのは勘弁してほしい。フランジ付きは、ミネベア製の高級品である。
歯車のボス部分は細く削ってボールベアリングのインナ・レースのみに触れるようにした。また、正確に削って、予圧を与えることに成功した。
ワッシャ無しで嵌めるように、ぴたりの寸法に削ったのである。ここでガスケットの圧縮による分を、計算に入れてある。最終的なギヤ比は 約 1 : 7 である。非常に軽く動き、音もほとんどしない。
ガスケットの厚さは、ネジを緩く仮締めした時と、強く締めたときの差を、マイクロメータで調べた。その中間でネジを固定するわけだ。難しくはない。この方法は10年ほど前に思い付いたが、実践するチャンスが今まで無かった。ネジはロックタイトで固着させたので、中を開いて見せるわけにはいかないのが残念だ。
上のモータに行く軸は撓み継手である。この頃はこういう部品が安く手に入る。以前は苦労して作っていた。事実上、一直線上に設定されたモータ軸ではあるが、微妙な曲がりがあっても全く問題がなくなる。こういうところには、ユニヴァーサル・ジョイントは使いたくない。効率が下がるからである。
ギヤボックスの内側のえぐりをフライスで拡げて、大きな歯車を入れると、自由度が増した。大きな50枚を最終段に置き、中間を大小二段の歯車にした。与えられた条件内で、14枚以上を用いた組合せを、限られた空間内に押し込んだ。設計にはかなり苦労した。
まさに「フライスと旋盤の実技修了試験」のような工作であった。すべての孔をフライスとリーマで仕上げて、ボールベアリングはすべり嵌めである。全くガタの無い軸というのは気持ちが良いが、もう一つ作るのは勘弁してほしい。フランジ付きは、ミネベア製の高級品である。
歯車のボス部分は細く削ってボールベアリングのインナ・レースのみに触れるようにした。また、正確に削って、予圧を与えることに成功した。
ワッシャ無しで嵌めるように、ぴたりの寸法に削ったのである。ここでガスケットの圧縮による分を、計算に入れてある。最終的なギヤ比は 約 1 : 7 である。非常に軽く動き、音もほとんどしない。
ガスケットの厚さは、ネジを緩く仮締めした時と、強く締めたときの差を、マイクロメータで調べた。その中間でネジを固定するわけだ。難しくはない。この方法は10年ほど前に思い付いたが、実践するチャンスが今まで無かった。ネジはロックタイトで固着させたので、中を開いて見せるわけにはいかないのが残念だ。
上のモータに行く軸は撓み継手である。この頃はこういう部品が安く手に入る。以前は苦労して作っていた。事実上、一直線上に設定されたモータ軸ではあるが、微妙な曲がりがあっても全く問題がなくなる。こういうところには、ユニヴァーサル・ジョイントは使いたくない。効率が下がるからである。
2020年03月04日
US Hobbies のギヤボックス
次はUS Hobbiesの推進軸を下げるギヤボックスである。先回のMax Grayの時代から進化して、ダイキャストで作っている。この設計者も祖父江氏である。
ネジは裏表互い違いになっていて、型を一つしか起こす必要が無い。ガスケットをはさんで14枚、16枚、28枚の歯車を収納している。軸は4mm軸で、スティール製である。フランジ付きオイルレスメタルによって保持されている。新しく組んだら、油を注して放置し、油が馴染んでから慣らし運転をする。歯数がすべて2で割れるのは面白くない。
どうして偶数にしたのかと、祖父江氏に聞いたことがある。その理由は偶数の歯車は注文すればすぐ製作してくれる。奇数とか素数の歯車は時間が掛かる。「互いに素」は知っていたが、そうでなくても密閉型の場合は、さしたる問題は起きたことが無いそうだ。
実情はそうかもしれない。しかし、3条ウォームの時は、「互いに素」を強く主張した。出来て来たものを組んでみた時、初めは多少しっくりこないところがあったが、1分も廻すと実に滑らかになったのには、祖父江氏は感銘を受けたようだ。2条で偶数歯のものは、特定の場所でひっかかりがあるといつまでも抜け出せない。3条で互いに素にしたら、全くひっかかりが無いものができたのだ。
「これは参ったねー。本当にあんたの言う通りだよ。大したもんだ。」
と称賛した。のちにこれと同じことをディーゼル用ギヤボックスを作ってくれた友人も言った。
このギヤボックスのオイルレスメタルは、内径 4 mm、外径 6 mmである。フランジは内側に付ける。軸を Φ3 にすると安価なボールベアリングが使える。たまたまフランジ付きボールベアリングがある程度の数あったので、それを使ってみることにした。そうすると今回の場合は、設計が極めて楽になる。筆者は過去にフランジ付きを使ったことはまず無い。その理由は前に述べた。今回は構成が全く異なる。フランジ付きを使わざるを得ない。
ネジは裏表互い違いになっていて、型を一つしか起こす必要が無い。ガスケットをはさんで14枚、16枚、28枚の歯車を収納している。軸は4mm軸で、スティール製である。フランジ付きオイルレスメタルによって保持されている。新しく組んだら、油を注して放置し、油が馴染んでから慣らし運転をする。歯数がすべて2で割れるのは面白くない。
どうして偶数にしたのかと、祖父江氏に聞いたことがある。その理由は偶数の歯車は注文すればすぐ製作してくれる。奇数とか素数の歯車は時間が掛かる。「互いに素」は知っていたが、そうでなくても密閉型の場合は、さしたる問題は起きたことが無いそうだ。
実情はそうかもしれない。しかし、3条ウォームの時は、「互いに素」を強く主張した。出来て来たものを組んでみた時、初めは多少しっくりこないところがあったが、1分も廻すと実に滑らかになったのには、祖父江氏は感銘を受けたようだ。2条で偶数歯のものは、特定の場所でひっかかりがあるといつまでも抜け出せない。3条で互いに素にしたら、全くひっかかりが無いものができたのだ。
「これは参ったねー。本当にあんたの言う通りだよ。大したもんだ。」
と称賛した。のちにこれと同じことをディーゼル用ギヤボックスを作ってくれた友人も言った。
このギヤボックスのオイルレスメタルは、内径 4 mm、外径 6 mmである。フランジは内側に付ける。軸を Φ3 にすると安価なボールベアリングが使える。たまたまフランジ付きボールベアリングがある程度の数あったので、それを使ってみることにした。そうすると今回の場合は、設計が極めて楽になる。筆者は過去にフランジ付きを使ったことはまず無い。その理由は前に述べた。今回は構成が全く異なる。フランジ付きを使わざるを得ない。
2020年03月02日
Max Gray のギヤボックス
ジャンク箱の中のギヤボックス中、一番古そうなのは、このFM Erie-builtの推進軸を下げるギヤボックスだ。ブラスの砂型鋳物を、大きなヤスリで削って平面を出し、孔をあけてギヤを入れてある。鋳物をフライスで削るのではなく、すべての面を手で削ってあるのには驚いた。大した腕である。普通の人が平面を削り出すことは、まず無理だ。よく見ると合印があって、番号も振ってある。その字は祖父江氏の筆跡ではないか!「8」の字に特徴がある。
このハンダ付けも見事である。100 g以上もある塊りを一発で付けてある。しかもハンダが光っている。そう簡単にできる技ではない。
40年ほど前、祖父江氏は筆者にヤスリ掛けの指導をしてくれた。四角のブロックを削って、真ん中を凹ませよと命じたのだ。そんなことが出来るわけがない、と思ったが、彼はちゃんとやって見せた。30 mmのスパンで、真ん中が 0.2 mmほど低くなった。定規を当てると光が通るのである。そうやっておいて周辺を削ると、平面になると言う。
真ん中を凹ませるのはヤスリを少し反らせて、その反りに従って動かすのだ。もともとヤスリは腹が膨らんでいるものである。それをさらに反らせてやるのである。そんな馬鹿なと思う人が多いだろうが、彼はいとも簡単にやった。これは仕上工の必須技能だそうだ。腕に自信のある方はやって見られるとよい。これをやるには姿勢が大切なのだ。万力に向かって立つ位置が決め手だ。もちろん高さも重要である。
のちに筆者もできるようにはなったが、もうそんな必要もない。フライスで一発である。
ギヤ比は14 : 16 : 28であった。シャフトはスティールであるから滑りが良い。歯数が偶数であるのはまずいが、14枚という数字が祖父江氏らしい。12枚とは明らかに音が違う。他社製のギヤボックスがうるさいのは、歯数が足らないのである。少ない歯数で行こうと思えば、ホブを替えなければならない。そんな単純なことも出来ていないのが、この国の模型である。韓国でさえホブを替えたのに、どうしてできなかったのだろう。この国の模型雑誌で歯数に言及した例があっただろうか。
グリースが、固まって石鹸のようになっていたので動かなかったが、灯油で洗ってスピンドル・オイルを注したら、軽く動いて、音も静かであった。肉が厚いので油が保たれるから、摩擦が少ない。
一つ110 g 近辺だ。捨てるには忍びない。そのまま使うことはないので、この半分を加工して新たなギヤボックスを作ろうと思う。フライスで彫れば、いかようにもできる。
要するに単なるブロックであると考えて作るわけだ。あいている孔には、ブラスの棒を突っ込んでハンダ付けして塞ぐ。両側を鋳物にする必要はないので、片方をブラスの板にする。そうすると数が2倍になる。もちろんボールベアリングを入れる。使える機種を探している。この合わせ目に見えるハンダは、二つを合わせて軸穴、ネジ穴をあけ、ヤスリがけするために仮付けした時のものだ。うまく付いているものだと、改めてじっくり見た。
このハンダ付けも見事である。100 g以上もある塊りを一発で付けてある。しかもハンダが光っている。そう簡単にできる技ではない。
40年ほど前、祖父江氏は筆者にヤスリ掛けの指導をしてくれた。四角のブロックを削って、真ん中を凹ませよと命じたのだ。そんなことが出来るわけがない、と思ったが、彼はちゃんとやって見せた。30 mmのスパンで、真ん中が 0.2 mmほど低くなった。定規を当てると光が通るのである。そうやっておいて周辺を削ると、平面になると言う。
真ん中を凹ませるのはヤスリを少し反らせて、その反りに従って動かすのだ。もともとヤスリは腹が膨らんでいるものである。それをさらに反らせてやるのである。そんな馬鹿なと思う人が多いだろうが、彼はいとも簡単にやった。これは仕上工の必須技能だそうだ。腕に自信のある方はやって見られるとよい。これをやるには姿勢が大切なのだ。万力に向かって立つ位置が決め手だ。もちろん高さも重要である。
のちに筆者もできるようにはなったが、もうそんな必要もない。フライスで一発である。
ギヤ比は14 : 16 : 28であった。シャフトはスティールであるから滑りが良い。歯数が偶数であるのはまずいが、14枚という数字が祖父江氏らしい。12枚とは明らかに音が違う。他社製のギヤボックスがうるさいのは、歯数が足らないのである。少ない歯数で行こうと思えば、ホブを替えなければならない。そんな単純なことも出来ていないのが、この国の模型である。韓国でさえホブを替えたのに、どうしてできなかったのだろう。この国の模型雑誌で歯数に言及した例があっただろうか。
グリースが、固まって石鹸のようになっていたので動かなかったが、灯油で洗ってスピンドル・オイルを注したら、軽く動いて、音も静かであった。肉が厚いので油が保たれるから、摩擦が少ない。
一つ110 g 近辺だ。捨てるには忍びない。そのまま使うことはないので、この半分を加工して新たなギヤボックスを作ろうと思う。フライスで彫れば、いかようにもできる。
要するに単なるブロックであると考えて作るわけだ。あいている孔には、ブラスの棒を突っ込んでハンダ付けして塞ぐ。両側を鋳物にする必要はないので、片方をブラスの板にする。そうすると数が2倍になる。もちろんボールベアリングを入れる。使える機種を探している。この合わせ目に見えるハンダは、二つを合わせて軸穴、ネジ穴をあけ、ヤスリがけするために仮付けした時のものだ。うまく付いているものだと、改めてじっくり見た。
2020年02月29日
Samhongsa のギヤボックス
先日、Ajinのギヤボックスを改良して安価に、かつ、そこそこの性能を持つものを作り出せた。捨てるものから役に立つものができるのならと、ジャンク箱を漁っていた。
韓国製のギヤボックスがバケツ一杯ほど出て来た。選り分けると、比較的近年のものは何とか逆駆動出来そうである。その中にこのサムホンサのギヤボックスがあった。
これは土屋氏のC&O J3 4-8-4を改装した時に出たものである。変な色のグリスがぎっしり詰まっていて、動きにくい。
蓋を開けてみて驚いた。これにもモジュールの大きなヘリカルギヤが使ってある。ヘリカルはスラストが発生するから、その処理をしないと損失が大きいのだが、このギヤボックスにはスラスト・ボールベアリングが使ってあるではないか。そこだけは出来過ぎである。ただ、グリスが粘くて動きにくい。また灯油に漬け込んでから、溶剤スプレイで洗い落とした。
スパーギヤの3段減速なのだが、モジュールは 0.5 で歯数は14:28である。この14枚は、何かを感じる。Ajinで筆者が教えた奴が、競合するサムホンサに就職した件と関係ありそうだ。その次のヘリカルは 8:13である。互いに素にしたのも、ピンと来る。こんな偶然はめったにない。
間違いなくこの設計者は筆者に会っている。スラストベアリングの話もした。しかし14:28は間抜けだ。どうせやるなら29枚を使えば良かった。最終段の14枚がブラス製なのはどうしてだろう。ここは力が掛かるところなのに、何か抜けている。眼鏡を掛けた坊主頭の若い男だった。本質を理解していないから、記憶に頼って失敗している。
よく洗って研磨し、再組立てしたが、手で廻すと何か触るような感触がある。ほんのちょっとなのだが、気になる。分解してみて仰天した。歯先がギヤボックス内面に当たっているではないか。よく見ると、その部分は縦フライスで削ってある。設計ミスで追加工しているのだが、削り方が足らなかったのだ。今まで当たっていた数枚の歯は、歯先が光っている。最低だ。
仕方がないから、縦フライスでさらに削った。歯先はダイヤモンド砥石で再調整した。スピンドルオイルを注し、組み立てると素晴らしく滑らかに廻るようになった。
ギヤ比は14/28 ✖ 14/28 ✖ 14/28 ✖ 8/13 = 1/13 である。減速比が大き過ぎる。1段減らす工夫をしてみよう。それほど難しくはない工作だ。すべての軸にボ−ルベアリングを入れることも可能である。このギヤボックスを何に使うべきか、思案中である。1/6.5程度のギヤ比ならば、パシフィックに付けて見たい。
韓国製のギヤボックスがバケツ一杯ほど出て来た。選り分けると、比較的近年のものは何とか逆駆動出来そうである。その中にこのサムホンサのギヤボックスがあった。
これは土屋氏のC&O J3 4-8-4を改装した時に出たものである。変な色のグリスがぎっしり詰まっていて、動きにくい。
蓋を開けてみて驚いた。これにもモジュールの大きなヘリカルギヤが使ってある。ヘリカルはスラストが発生するから、その処理をしないと損失が大きいのだが、このギヤボックスにはスラスト・ボールベアリングが使ってあるではないか。そこだけは出来過ぎである。ただ、グリスが粘くて動きにくい。また灯油に漬け込んでから、溶剤スプレイで洗い落とした。
スパーギヤの3段減速なのだが、モジュールは 0.5 で歯数は14:28である。この14枚は、何かを感じる。Ajinで筆者が教えた奴が、競合するサムホンサに就職した件と関係ありそうだ。その次のヘリカルは 8:13である。互いに素にしたのも、ピンと来る。こんな偶然はめったにない。
間違いなくこの設計者は筆者に会っている。スラストベアリングの話もした。しかし14:28は間抜けだ。どうせやるなら29枚を使えば良かった。最終段の14枚がブラス製なのはどうしてだろう。ここは力が掛かるところなのに、何か抜けている。眼鏡を掛けた坊主頭の若い男だった。本質を理解していないから、記憶に頼って失敗している。
よく洗って研磨し、再組立てしたが、手で廻すと何か触るような感触がある。ほんのちょっとなのだが、気になる。分解してみて仰天した。歯先がギヤボックス内面に当たっているではないか。よく見ると、その部分は縦フライスで削ってある。設計ミスで追加工しているのだが、削り方が足らなかったのだ。今まで当たっていた数枚の歯は、歯先が光っている。最低だ。
仕方がないから、縦フライスでさらに削った。歯先はダイヤモンド砥石で再調整した。スピンドルオイルを注し、組み立てると素晴らしく滑らかに廻るようになった。
ギヤ比は14/28 ✖ 14/28 ✖ 14/28 ✖ 8/13 = 1/13 である。減速比が大き過ぎる。1段減らす工夫をしてみよう。それほど難しくはない工作だ。すべての軸にボ−ルベアリングを入れることも可能である。このギヤボックスを何に使うべきか、思案中である。1/6.5程度のギヤ比ならば、パシフィックに付けて見たい。
2020年02月27日
Kemtron の Alco RS2
先日の韓国製ギヤボックスの高性能化が、意外なレヴェルで可能であったのに驚き、もう一つやってみた。初段のギヤを外してギヤ比を下げた。これで効率がさらに上がるだろうし、押して動かすことも楽になる。ほとんどの場合、ギヤ比は高過ぎる。ギヤ比が低いものほど高効率が達成できる。これは筆者の経験によるが、自動車でも同じである。原動機の回転数が高いと損失は大きくなる。ポルシェのギヤ比は低い。
高トルクのモータを使ってギヤ比を低く、というのはあまり見ることが無い。これを採用すれば、ピニオンの歯数を増やして音が小さい模型を作れるが、だれもやらない。ほとんどの人は外見が綺麗に出来れば満足してしまうのだろう。
勾配線で重列車を牽けば実力はすぐわかる。コンテストでそういうことをしない現状では、スケールスピードで走って、重負荷でもつまずかない機関車を誰も評価しない。
高トルクモータは仕様書を読めばすぐ見つかる。また300台も注文すれば作ってくれる。30年前、祖父江氏との共同作業の中で特注したものは、その後その会社の定番商品になっている。
今でもかなりの数を持っている。ディーゼル電気機関車の3条ウォーム化改造に適する回転数とトルクを持つ。
Alco のroad switcher RS2 である。先のスウィッチャは、S2 であった。要するに、本線用にも入替用にも使えるというのがウリであった。この会社の名前の付け方は単純である。その点EMDはややこしい名付け方法を採っている。NW とは900馬力(nine hundred HP)で熔接台枠(welded frame)を使っているのだそうだ。こんな話であれば、付き合い切れない。
Kemtronのキットは重い。ボディの丸味のある部分はすべてロストワックス製で、それに30ミル(0.76 mm)の厚さのブラス製ボディがかぶさる。床板は同じ厚さで、そこに1/8インチ(3.2 mm)厚、1/2インチ(12.7 mm)幅の帯材を両側に貼り付けるという堅牢な構造である。下廻りの床板関連だけで、600 gほどもある。
ハンダ付けは炭素棒でも良いが、筆者はピンで位置決めしてクランプで挟み、ガスバーナで焙り付けである。隙間なくできると気持ちが良い。床は堅く、パイロット部は一体鋳造で安心である。相手が貨車なら、正面衝突しても決して負けないだろう。
動力はAll-nationのものを推奨していたが、開放型のギヤボックスは当社の方針に合わないので、すべて売却した。その動力装置はアメリカでは希少価値があり、ずいぶん高く売れた。その後3条ウォーム化したものが1輌、ダミィが1輌あった。今回のAjin製をそれにつけることにした。改造費はジャーナル部のボールベアリング8個とコアレスモータだけである。在庫は十分で、すぐできる工作であった。レイアウトの作業が終わってから2時間くらいずつ、それに充てた。
Kemtronの製品は、荒っぽく扱っても決して壊れない丈夫さがあり、筆者の好みである。ただ、ハンダ付けは素人にはできないだろう。ということは、これを手に入れておくと、ハンダ付け教室の良い教材になるということに気付いた。しかしもう入手することは困難だ。
Alcoの機関車は美しい。当時から、EMDに比べると頭一つ出ているデザインであった。
高トルクのモータを使ってギヤ比を低く、というのはあまり見ることが無い。これを採用すれば、ピニオンの歯数を増やして音が小さい模型を作れるが、だれもやらない。ほとんどの人は外見が綺麗に出来れば満足してしまうのだろう。
勾配線で重列車を牽けば実力はすぐわかる。コンテストでそういうことをしない現状では、スケールスピードで走って、重負荷でもつまずかない機関車を誰も評価しない。
高トルクモータは仕様書を読めばすぐ見つかる。また300台も注文すれば作ってくれる。30年前、祖父江氏との共同作業の中で特注したものは、その後その会社の定番商品になっている。
今でもかなりの数を持っている。ディーゼル電気機関車の3条ウォーム化改造に適する回転数とトルクを持つ。
Alco のroad switcher RS2 である。先のスウィッチャは、S2 であった。要するに、本線用にも入替用にも使えるというのがウリであった。この会社の名前の付け方は単純である。その点EMDはややこしい名付け方法を採っている。NW とは900馬力(nine hundred HP)で熔接台枠(welded frame)を使っているのだそうだ。こんな話であれば、付き合い切れない。
Kemtronのキットは重い。ボディの丸味のある部分はすべてロストワックス製で、それに30ミル(0.76 mm)の厚さのブラス製ボディがかぶさる。床板は同じ厚さで、そこに1/8インチ(3.2 mm)厚、1/2インチ(12.7 mm)幅の帯材を両側に貼り付けるという堅牢な構造である。下廻りの床板関連だけで、600 gほどもある。
ハンダ付けは炭素棒でも良いが、筆者はピンで位置決めしてクランプで挟み、ガスバーナで焙り付けである。隙間なくできると気持ちが良い。床は堅く、パイロット部は一体鋳造で安心である。相手が貨車なら、正面衝突しても決して負けないだろう。
動力はAll-nationのものを推奨していたが、開放型のギヤボックスは当社の方針に合わないので、すべて売却した。その動力装置はアメリカでは希少価値があり、ずいぶん高く売れた。その後3条ウォーム化したものが1輌、ダミィが1輌あった。今回のAjin製をそれにつけることにした。改造費はジャーナル部のボールベアリング8個とコアレスモータだけである。在庫は十分で、すぐできる工作であった。レイアウトの作業が終わってから2時間くらいずつ、それに充てた。
Kemtronの製品は、荒っぽく扱っても決して壊れない丈夫さがあり、筆者の好みである。ただ、ハンダ付けは素人にはできないだろう。ということは、これを手に入れておくと、ハンダ付け教室の良い教材になるということに気付いた。しかしもう入手することは困難だ。
Alcoの機関車は美しい。当時から、EMDに比べると頭一つ出ているデザインであった。
2020年02月07日
Ajinのギヤボックス
この機関車S2の製造元がどこかは分からない。GTEL タービン電気機関車も Alco製である。しかし、大きさが全然違う。
台車の造形は素晴らしい。よくぞここまでというほど、よくできている。しかし、台車にバネは無く、単純な2点支持である。肝心の動力部分の構成は最低で、直ちにゴミ箱行きであった。入れ替えるべきギヤボックスの伝達様式を考えた。3条ウォーム以外も探っていたのだ。
先日、処分するものをより分けていたら、比較的新しいアジン製のギヤボックスを見付けた。なんと、逆駆動できそうな気配である。少々ぎこちないが、整備すれば行けそうな感触だったので、早速バラして灯油に浸けておいた。グリースが溶けてきたところで、溶剤スプレイを吹き付けて洗い、ダイヤモンド砥石で歯車のバリを完全に取った。すべての回転部分を研磨して、入念に再調整した。
スパイラルギヤには二硫化モリブデングリスを少々塗り、他のギヤにはスピンドルオイルを垂らした。オイルレス・メタルによく浸み込ませてから再組立てした。
このAjinのギヤボックスは、アメリカで開かれるショウで安く並べておくと、喜んで買っていく人が居る。今までそうやって処分してきた。今回のは今までのとは形が違った。
アジンには80年代によく行って、ある程度の技術移転をしていた。その後に作られたものだと思う。
アジンに持って行ったギヤ・ホブ(少ない歯数の歯車には、専用の歯切り用ホブを使うように助言した)を使ったようで、そこそこの性能を得ているようだ。だから、10枚歯でも音が小さい。(わが国で売られている小歯車の歯型はひどいものが多い。14枚以下は全滅に近い。)
このギヤボックスでは、小さな歯車は硬い材料で、大きな歯車は軟らかい材料で、という原則は守ってあるようだ。ところが最終段の90度ひねりが全く駄目である。どうしてこんな歯数の少ないギヤを使うのか、理解できない。8枚歯では歯車とは言い難い。見るからに歯型が良くない。モジュールを小さくして歯数を増やせば、効率はずっと上がる。(逆駆動しにくいから、無理やり廻して歯を折った人が居るのかもしれない。だからスティール製の大きな歯にしていると考えると、合点がいく。)
ジャーナル 即ち車軸端にはボールベアリングを嵌め、台車を組立てた。押してみると見事に逆駆動できる。ギヤ比が大きいので、3条ウォームほどは軽くないが、台車の自重の摩擦力で、逆駆動できた。潤滑油であるグリースの粘性によって、廻りにくかったのだ。ここまでの整備時間は、4時間くらいである。
車輪は替えなかったので、やはりめっき音がする。アジンはどういうわけか、車軸が Φ4.5 なのだ。車輪を替えると、各種のスリーブを嵌め替える手間がかかるが、いずれ替えることになるだろう。しかし少々先の話だ。
この台車は2点支持のイコライズ方式だ。バネがないから、レイルの継ぎ目音がカツンカツンと頭に響く。軽い機関車だからまだ良いが、衝撃は大きい。
次回の整備時には、ボルスタの心皿にゴム板をはさむことにする。機関車にバネを入れずにイコライザ支持だけで、ジョイント音が良いと悦に入っている人が多いが、Oスケール以上ではそれは非常にまずい。車輛、線路双方に影響がある。衝撃でハンダが疲労して外れることがある。分岐のフログ付近がよく傷む。
HO以下では問題になることは少ない。この機関車は、当鉄道では初登場の、バネ無しでイコライザのみの機関車である。実のところ、こんなに響くとは思わなかった。枕木下にエラストマが敷いてあっても、かなり響く。これがなければ、もっと凄まじい音だろうと思う。車輪踏面が真円でないこともファクタの一つかもしれない。バネ懸架、あるいはゴムによる緩衝が必要だ。
モータをコアレスモータに取り換えて、試運転した。
もう一輌の方(3条ウォーム)は1.5 V, 0.07 Aで起動するが、これは1.3 V, 0.06 Aほどで起動する。12 Vでの無負荷走行電流も、他方は 0.09 A に対して、0.07 Aしか喰わない。12 V掛けてスリップさせるときの電流は0.36 Aと0.31 Aである。起動し易さは同等であるが、最大負荷時の効率に関してはウォームに微妙に勝る結果が出ている。おそらくこれは、前者のギヤ比が大きいことと、後者ではチェインがわずかに伸びて効率を低下させるファクタが大きいと思う。
いずれも、車輛の質量は1.17 kgと1.21 kgであってほぼ同じである。引張力はどちらも2.9 Nである。多段スパーギヤは非常に良い結果を出している。このギヤボックスは、チェイン無しの駆動ができるところが大きな利点である。ギヤボックスにボールベアリングを入れることができれば、さらに良くなるだろう。しかし、押した時の動き易さということに関しては、3条ウォーム + チェインの方が、はるかに良い。
改装費用は1/10、時間は1/4であったから、その点でも助かった。もう一輌分見つけ出したので、やってみよう。
台車の造形は素晴らしい。よくぞここまでというほど、よくできている。しかし、台車にバネは無く、単純な2点支持である。肝心の動力部分の構成は最低で、直ちにゴミ箱行きであった。入れ替えるべきギヤボックスの伝達様式を考えた。3条ウォーム以外も探っていたのだ。
先日、処分するものをより分けていたら、比較的新しいアジン製のギヤボックスを見付けた。なんと、逆駆動できそうな気配である。少々ぎこちないが、整備すれば行けそうな感触だったので、早速バラして灯油に浸けておいた。グリースが溶けてきたところで、溶剤スプレイを吹き付けて洗い、ダイヤモンド砥石で歯車のバリを完全に取った。すべての回転部分を研磨して、入念に再調整した。
スパイラルギヤには二硫化モリブデングリスを少々塗り、他のギヤにはスピンドルオイルを垂らした。オイルレス・メタルによく浸み込ませてから再組立てした。
このAjinのギヤボックスは、アメリカで開かれるショウで安く並べておくと、喜んで買っていく人が居る。今までそうやって処分してきた。今回のは今までのとは形が違った。
アジンには80年代によく行って、ある程度の技術移転をしていた。その後に作られたものだと思う。
アジンに持って行ったギヤ・ホブ(少ない歯数の歯車には、専用の歯切り用ホブを使うように助言した)を使ったようで、そこそこの性能を得ているようだ。だから、10枚歯でも音が小さい。(わが国で売られている小歯車の歯型はひどいものが多い。14枚以下は全滅に近い。)
このギヤボックスでは、小さな歯車は硬い材料で、大きな歯車は軟らかい材料で、という原則は守ってあるようだ。ところが最終段の90度ひねりが全く駄目である。どうしてこんな歯数の少ないギヤを使うのか、理解できない。8枚歯では歯車とは言い難い。見るからに歯型が良くない。モジュールを小さくして歯数を増やせば、効率はずっと上がる。(逆駆動しにくいから、無理やり廻して歯を折った人が居るのかもしれない。だからスティール製の大きな歯にしていると考えると、合点がいく。)
ジャーナル 即ち車軸端にはボールベアリングを嵌め、台車を組立てた。押してみると見事に逆駆動できる。ギヤ比が大きいので、3条ウォームほどは軽くないが、台車の自重の摩擦力で、逆駆動できた。潤滑油であるグリースの粘性によって、廻りにくかったのだ。ここまでの整備時間は、4時間くらいである。
車輪は替えなかったので、やはりめっき音がする。アジンはどういうわけか、車軸が Φ4.5 なのだ。車輪を替えると、各種のスリーブを嵌め替える手間がかかるが、いずれ替えることになるだろう。しかし少々先の話だ。
この台車は2点支持のイコライズ方式だ。バネがないから、レイルの継ぎ目音がカツンカツンと頭に響く。軽い機関車だからまだ良いが、衝撃は大きい。
次回の整備時には、ボルスタの心皿にゴム板をはさむことにする。機関車にバネを入れずにイコライザ支持だけで、ジョイント音が良いと悦に入っている人が多いが、Oスケール以上ではそれは非常にまずい。車輛、線路双方に影響がある。衝撃でハンダが疲労して外れることがある。分岐のフログ付近がよく傷む。
HO以下では問題になることは少ない。この機関車は、当鉄道では初登場の、バネ無しでイコライザのみの機関車である。実のところ、こんなに響くとは思わなかった。枕木下にエラストマが敷いてあっても、かなり響く。これがなければ、もっと凄まじい音だろうと思う。車輪踏面が真円でないこともファクタの一つかもしれない。バネ懸架、あるいはゴムによる緩衝が必要だ。
モータをコアレスモータに取り換えて、試運転した。
もう一輌の方(3条ウォーム)は1.5 V, 0.07 Aで起動するが、これは1.3 V, 0.06 Aほどで起動する。12 Vでの無負荷走行電流も、他方は 0.09 A に対して、0.07 Aしか喰わない。12 V掛けてスリップさせるときの電流は0.36 Aと0.31 Aである。起動し易さは同等であるが、最大負荷時の効率に関してはウォームに微妙に勝る結果が出ている。おそらくこれは、前者のギヤ比が大きいことと、後者ではチェインがわずかに伸びて効率を低下させるファクタが大きいと思う。
いずれも、車輛の質量は1.17 kgと1.21 kgであってほぼ同じである。引張力はどちらも2.9 Nである。多段スパーギヤは非常に良い結果を出している。このギヤボックスは、チェイン無しの駆動ができるところが大きな利点である。ギヤボックスにボールベアリングを入れることができれば、さらに良くなるだろう。しかし、押した時の動き易さということに関しては、3条ウォーム + チェインの方が、はるかに良い。
改装費用は1/10、時間は1/4であったから、その点でも助かった。もう一輌分見つけ出したので、やってみよう。
2019年10月15日
Cockerham Drive
Doug Cockerham氏には何度か会ったことがある。ダグは背の高い黒髪の男で、自分の伝達装置にはかなりの自信を持っていた。
筆者は現物を2組持っていたが、間違って廃棄してしまったような気がする。あるべき場所で、ここ数年見ていない。ブラス屑の処分の時に捨てたのかもしれない。もったいないことをした。
蒸気機関車用のギヤボックスの構成は、薄肉のロストワックス鋳物で作ったギヤケース内にベークライト製のウォームホィールを入れ、鋼製の細い2条ウォームをボールベアリングで支えていた。ギヤボックスは歯車、ベアリングの外径 + 3 mm 程度の形で、なかなか優美であった。残念ながら、その写真をGoogleで探しても、”Cockerham Driveという街路(drive)” の名前しか、見つからない。
split line(分割面の線)上にはネジのタブが付いていて、それを3本締めるようになっていた。軟らかいグリースを使っていたのは、先回紹介したのと同じだ。
逆駆動が出来た。ギア比は35:2の互いに素であり、進み角は9度程度である。当時はモータが直捲、あるいは有鉄心マグネットモータの時代であるから、押しても動かなかったが、効率はかなり良いと感じた。ベークライトのギヤを使った理由は分からない。悪くはないが、良いとも言えない。リン青銅との組み合わせを使うのがベストだ。
1995年頃、彼に3条ウォーム + コアレスモータの実例を見せた時の、驚愕した顔は忘れられない。当時はそのようなものに需要がなかったし、経験のない走行性能であったから、事故が起こるという心配の方が大きかったのだろう。
「これでは勾配の途中で停車できないからダメだ。」と言った。
コカハム氏の方が、ホワイト氏より工学の素養があったようだ。
追記 コカハムドライヴのウォームホィールが出て来た。写真をお見せする。ベークライトのギヤがスリップしないように、軸を圧入したボスにピンで留めている。 (Jan.16, 2020)
筆者は現物を2組持っていたが、間違って廃棄してしまったような気がする。あるべき場所で、ここ数年見ていない。ブラス屑の処分の時に捨てたのかもしれない。もったいないことをした。
蒸気機関車用のギヤボックスの構成は、薄肉のロストワックス鋳物で作ったギヤケース内にベークライト製のウォームホィールを入れ、鋼製の細い2条ウォームをボールベアリングで支えていた。ギヤボックスは歯車、ベアリングの外径 + 3 mm 程度の形で、なかなか優美であった。残念ながら、その写真をGoogleで探しても、”Cockerham Driveという街路(drive)” の名前しか、見つからない。
split line(分割面の線)上にはネジのタブが付いていて、それを3本締めるようになっていた。軟らかいグリースを使っていたのは、先回紹介したのと同じだ。
逆駆動が出来た。ギア比は35:2の互いに素であり、進み角は9度程度である。当時はモータが直捲、あるいは有鉄心マグネットモータの時代であるから、押しても動かなかったが、効率はかなり良いと感じた。ベークライトのギヤを使った理由は分からない。悪くはないが、良いとも言えない。リン青銅との組み合わせを使うのがベストだ。
1995年頃、彼に3条ウォーム + コアレスモータの実例を見せた時の、驚愕した顔は忘れられない。当時はそのようなものに需要がなかったし、経験のない走行性能であったから、事故が起こるという心配の方が大きかったのだろう。
「これでは勾配の途中で停車できないからダメだ。」と言った。
コカハム氏の方が、ホワイト氏より工学の素養があったようだ。
追記 コカハムドライヴのウォームホィールが出て来た。写真をお見せする。ベークライトのギヤがスリップしないように、軸を圧入したボスにピンで留めている。 (Jan.16, 2020)
2019年10月13日
Jerry White Drive
Jerry White氏は、Lobaughの職人であった。数多くのカスタム・ビルディングをこなした。腕の方は素晴らしい。絵で言えば、水彩画のような機関車を作った。特徴をよくとらえた造形で、板厚は薄目である。直接には会ったことは無いが、1990年代に手紙のやり取りはある。10年ほど前に亡くなった。
ギヤボックスは独特の2条ウォームで滑らかである。逆駆動はできないわけではないという程度だ。どういうわけか30:2である。割り切れるから、感心しない。薄い板金工作で出来ている。厚みは15ミル(0.38 mm)である。ウォームの先端はボールベアリングで受けている。軸径は、3/16インチ(4.76 mm)、外径は3/8インチ(9.52 mm)である。実に滑らかな動きをするベアリングである。このべアリングが付いているから、逆駆動できる。ギヤは快削鋼だが、シャフトにはブラスを使っているのは不思議だ。ギヤボックスを支えるトルクアームはない。ドライヴシャフトが反作用を受け持つから、そういう点ではスティール軸の方が良かった。
ウォームホィールはブラスである。外径はボールベアリングと近い径である。もう少し細くすれば、進み角が大きくなって、効率が上昇したはずである。残念だ。
グリースは軟らかい。ギヤボックスは、普通にはない分かれ方をする。下半分は動軸から外れない。ウォーム部分だけが外れる。そのウォーム部は長いストラップ状のもので、下半分に連結されて固定される。前後を逆にすると嵌まらない。即ち互換性は無い。
どういうわけか、このドライヴが付いていると値が高い。今回の機関車は全体がかなり破損していたので、超格安であった。このドライヴだけでも欲しい人が居るので、外してアメリカで処分することにする。動輪を抜くと購入者が困るので、付けたままの方が売却しやすい。予備の動輪は持っているから、それに3条ウォームを付け替える。
ギヤボックスは独特の2条ウォームで滑らかである。逆駆動はできないわけではないという程度だ。どういうわけか30:2である。割り切れるから、感心しない。薄い板金工作で出来ている。厚みは15ミル(0.38 mm)である。ウォームの先端はボールベアリングで受けている。軸径は、3/16インチ(4.76 mm)、外径は3/8インチ(9.52 mm)である。実に滑らかな動きをするベアリングである。このべアリングが付いているから、逆駆動できる。ギヤは快削鋼だが、シャフトにはブラスを使っているのは不思議だ。ギヤボックスを支えるトルクアームはない。ドライヴシャフトが反作用を受け持つから、そういう点ではスティール軸の方が良かった。
ウォームホィールはブラスである。外径はボールベアリングと近い径である。もう少し細くすれば、進み角が大きくなって、効率が上昇したはずである。残念だ。
グリースは軟らかい。ギヤボックスは、普通にはない分かれ方をする。下半分は動軸から外れない。ウォーム部分だけが外れる。そのウォーム部は長いストラップ状のもので、下半分に連結されて固定される。前後を逆にすると嵌まらない。即ち互換性は無い。
どういうわけか、このドライヴが付いていると値が高い。今回の機関車は全体がかなり破損していたので、超格安であった。このドライヴだけでも欲しい人が居るので、外してアメリカで処分することにする。動輪を抜くと購入者が困るので、付けたままの方が売却しやすい。予備の動輪は持っているから、それに3条ウォームを付け替える。
2019年10月11日
続 歯車の要件
他の友人たちとの会話の中で、歯数の少ない正しい平歯車が欲しいという話が出た。どれもこれもやかましいのは、角速度が一定にならないからだ。市販のものは怪しい歯型で、しかも偶数歯の物ばかりだ。奇数歯のものがあれば、かなり助かる。”互いに素”を作りやすいからだ。しかし一般的に言えば、14枚以下のものは感心しない。
他のゲージも含めて走行音を聞いて歩いた。歯車の音がするが、正直なところ、誰も気にしていない。本物ではありえない音を立てていると、気分が悪い。車輪の音も誰も気にしないのであろうか。明らかに「めっき音」がする。
「めっき音」というのは、筆者が勝手につけた名前だが、精密な旋削だけで出来たものと、ブラス素材をめっきした物と比較すると如実にその差が分かる。めっきしたものはゴロゴロ音がするのだ。表面が粗雑なのだが、光っているので研磨されていると信じてしまうのだろう。
以前にも述べたが、細かい紙やすり(#1200程度)で磨くとかなり改善される。
話が飛んだが、模型用の正しい歯型の、奇数歯の歯車が欲しい。こういうものこそ皆で共同して出資し、作るべきである。模型クラブ組織があるのだから、出来ないことではない。インヴォリュート歯車の設計能力のある人も居る筈だ。歯車は意外と高くないものなのだから。
他のゲージも含めて走行音を聞いて歩いた。歯車の音がするが、正直なところ、誰も気にしていない。本物ではありえない音を立てていると、気分が悪い。車輪の音も誰も気にしないのであろうか。明らかに「めっき音」がする。
「めっき音」というのは、筆者が勝手につけた名前だが、精密な旋削だけで出来たものと、ブラス素材をめっきした物と比較すると如実にその差が分かる。めっきしたものはゴロゴロ音がするのだ。表面が粗雑なのだが、光っているので研磨されていると信じてしまうのだろう。
以前にも述べたが、細かい紙やすり(#1200程度)で磨くとかなり改善される。
話が飛んだが、模型用の正しい歯型の、奇数歯の歯車が欲しい。こういうものこそ皆で共同して出資し、作るべきである。模型クラブ組織があるのだから、出来ないことではない。インヴォリュート歯車の設計能力のある人も居る筈だ。歯車は意外と高くないものなのだから。
2019年10月09日
歯車の要件
スパイクモデルの2条ウォームをたくさん持っている、という友人Bob氏が来た。
「残念だよね。dda40xさんの記事を読めばすべてのノウハウが書いてあるのに、それを読み取れないんだね。どうせ盗まれてしまう特許より、名を残すという手に出ているんだから、教えてくれと言われたら教えたんだろ?」
「そりゃそうさ、世界で一番素晴らしいものが作れるように指導したさ。」
現実に出来たものは感心しない出来で、このブログで検討されている。それでも動くそうだ。割り切れるギヤ比で、もったいない話である。ダイキャストの型代を掛けて、変なものを作っている。もし正しい設計の物であれば、素晴らしい走りを提供し、模型界を席捲したに違いない。模型人は人の指導を仰ぎたくない人が多いらしい。”オリジナルを凌ぐコピィなし”ということが、わからないのだろう。
インヴォリュート歯車は角速度を等しくするために作られたのだが、それを忘れた実例もある。歯型が正しくないものはダメなのである。「動きます」とは言うけれど、正しい角速度で動いている証拠を見たいものだ。重負荷をかけて高速で駆動する時、角速度が等しくなければ音がする。
ウォームギヤの特質は、バックラッシを理論上、ゼロに出来ることである。こういう歯車は他にない。即ち無音に出来る(現実には潤滑油が廻るように、ごく僅かの隙間を空けるが、普通の歯車より、ずっと近づけることができる)。工作機械で使う割出盤にウォームギヤが使われているのは、そういう理由である。
オルゴールに付いている2条ウォームもどきが、どういう動きをしているかはよく分からない。スプリングモータで軽い羽根を動かしているので、この場合、問題は見えて来ない。
平坦線でぐるぐる廻しを楽しむ分には、それでも良かろう。最近問い合わせを戴く方々は、筆者と同じように勾配線を重負荷で登りたい、そしてエンジンブレーキを掛けて下りたいという人達だ。正しいギヤを使わないと泣きを見る。
先日博物館のレイアウトを見学にいらした方は、本当に無音で機関車が動くので、とても驚いた。彼は、
「想像したのと違っていた!」
と叫んだ。ある程度はガラゴロ音がするのだと思っていたらしい。
道床のエラストマも騒音減少に貢献しているが、動力車の無音化は、それとはまた違う話だ。
歯車の最小歯数については既に述べた。そういう歯車しか使っていない人がこれを見れば、驚くのは当然だろう。
「残念だよね。dda40xさんの記事を読めばすべてのノウハウが書いてあるのに、それを読み取れないんだね。どうせ盗まれてしまう特許より、名を残すという手に出ているんだから、教えてくれと言われたら教えたんだろ?」
「そりゃそうさ、世界で一番素晴らしいものが作れるように指導したさ。」
現実に出来たものは感心しない出来で、このブログで検討されている。それでも動くそうだ。割り切れるギヤ比で、もったいない話である。ダイキャストの型代を掛けて、変なものを作っている。もし正しい設計の物であれば、素晴らしい走りを提供し、模型界を席捲したに違いない。模型人は人の指導を仰ぎたくない人が多いらしい。”オリジナルを凌ぐコピィなし”ということが、わからないのだろう。
インヴォリュート歯車は角速度を等しくするために作られたのだが、それを忘れた実例もある。歯型が正しくないものはダメなのである。「動きます」とは言うけれど、正しい角速度で動いている証拠を見たいものだ。重負荷をかけて高速で駆動する時、角速度が等しくなければ音がする。
ウォームギヤの特質は、バックラッシを理論上、ゼロに出来ることである。こういう歯車は他にない。即ち無音に出来る(現実には潤滑油が廻るように、ごく僅かの隙間を空けるが、普通の歯車より、ずっと近づけることができる)。工作機械で使う割出盤にウォームギヤが使われているのは、そういう理由である。
オルゴールに付いている2条ウォームもどきが、どういう動きをしているかはよく分からない。スプリングモータで軽い羽根を動かしているので、この場合、問題は見えて来ない。
平坦線でぐるぐる廻しを楽しむ分には、それでも良かろう。最近問い合わせを戴く方々は、筆者と同じように勾配線を重負荷で登りたい、そしてエンジンブレーキを掛けて下りたいという人達だ。正しいギヤを使わないと泣きを見る。
先日博物館のレイアウトを見学にいらした方は、本当に無音で機関車が動くので、とても驚いた。彼は、
「想像したのと違っていた!」
と叫んだ。ある程度はガラゴロ音がするのだと思っていたらしい。
道床のエラストマも騒音減少に貢献しているが、動力車の無音化は、それとはまた違う話だ。
歯車の最小歯数については既に述べた。そういう歯車しか使っていない人がこれを見れば、驚くのは当然だろう。
2019年10月07日
関西合運参加
年に一回だから、行かねばならない。自宅から山を越えて街道を行く。早朝で交通量も少なく、平均速度は 50 km/hだから、かなり速い。高速道路は山崩れとか、いろいろな障害があって、渋滞気味で避けた。燃費の良い車で、35 km/L も走る。軽快なドライヴであった。
今年は新作の貨車3輌と切断機(テーブルと折れたハンドル、その代替品)を展示した。高精度3条ウォームの実物を見たい、というリクエストもあったので、持って行った。
3D プリンティングの見本を置いておくと、興味のある方はじっくり見ている。質問にはお答えした。今まで紹介されている材料とは違うことに興味がある人が多い。
切断機の諸問題については、興味のある人が多く、テーブルと新ハンドルの注文 を受けた。テーブルは、あと6台ある。もう再生産はしない予定なので、売り切りである。ハンドルは、1/2インチネジのを持っている人は不安で、注文が多かった。皆さんフライスはお持ちのようで、こちらも気楽である。キィ材と共に送る予定だ。ご希望の方はコメントを通じて連絡されたい。
すでにテーブルを買われた方が、感想を知らせてくれた。横についている定規が便利で、役に立つということである。テーブルが薄くて、小さなクランプで材料を留められるのも有難いとのことだ。設計者としては、この種のお褒めは嬉しい。
遠藤機械の切断機については、専門家のコメントとして、「ハンドルが折れないのが奇跡だ」という話には、皆驚いていた。
3条ウォームの新しいギヤボックスには興味津々で、廻してみて愕然とする人が多かった。ただ廻りますというのとは、異なる世界であることがお分かり戴けたのだ。押して動かす動作をすると、感動するらしい。
紹介した本の英語版、日本語版を置いておいた。意外なことに、日本語版は持っている人が多いことがわかった。英語版の著者名にLinn Westcott氏の名前を確認すると、皆さんは安心するようだ。
今年は新作の貨車3輌と切断機(テーブルと折れたハンドル、その代替品)を展示した。高精度3条ウォームの実物を見たい、というリクエストもあったので、持って行った。
3D プリンティングの見本を置いておくと、興味のある方はじっくり見ている。質問にはお答えした。今まで紹介されている材料とは違うことに興味がある人が多い。
切断機の諸問題については、興味のある人が多く、テーブルと新ハンドルの注文 を受けた。テーブルは、あと6台ある。もう再生産はしない予定なので、売り切りである。ハンドルは、1/2インチネジのを持っている人は不安で、注文が多かった。皆さんフライスはお持ちのようで、こちらも気楽である。キィ材と共に送る予定だ。ご希望の方はコメントを通じて連絡されたい。
すでにテーブルを買われた方が、感想を知らせてくれた。横についている定規が便利で、役に立つということである。テーブルが薄くて、小さなクランプで材料を留められるのも有難いとのことだ。設計者としては、この種のお褒めは嬉しい。
遠藤機械の切断機については、専門家のコメントとして、「ハンドルが折れないのが奇跡だ」という話には、皆驚いていた。
3条ウォームの新しいギヤボックスには興味津々で、廻してみて愕然とする人が多かった。ただ廻りますというのとは、異なる世界であることがお分かり戴けたのだ。押して動かす動作をすると、感動するらしい。
紹介した本の英語版、日本語版を置いておいた。意外なことに、日本語版は持っている人が多いことがわかった。英語版の著者名にLinn Westcott氏の名前を確認すると、皆さんは安心するようだ。
2019年09月03日
続々 またまた3条ウォーム
久し振りに「互いに素」のことを書いた。割り切れない組合せにしておくだけで、滑らかな伝達が保証される。
歯車は工業製品である。優秀な歯切装置で作られたものであれば、ばらつきは少ないが、ゼロであることは無いだろう。僅かなばらつきや、微小な傷、異物の噛み込みなどの影響で、噛み合わせに異常を来すことが無いとは言えない。
そういう時はこの「互いに素」が効果を発揮する。様々なファクタによる不具合を薄めて、自然に支障の無い状態になる。
このウォーム・ギヤボックスを作ってくれたY氏は、組んでみて廻したとき、微妙なひっかかりに気が付いた。ところが廻しているうちに問題がなくなったので、改めてその効果に驚いたそうだ。
進み角は tooling cost(新規に必要となる刃物の価格)の掛からない18度以下にするべきだ。また、伝達効率もその辺りで良い。特殊なホブを用意せずに切った進み角の大きなウォームでは、歯形がおかしくなる(最近は別の歯形創生法で、18度以上でも作れて、効率低下が少ない方法があるらしい)。
ウォームホィールの歯当たり部分を凹ませた物は、高級に見えるらしい。残念ながら、伝達効率はそのほうが低下するという報告も出ている。ともかく、この歯車セットは、工業的に最も具合の良い条件を組み合わせたものである。単なる思い付きを形にしたものではないのだ。これを実現するために、複数の歯車の専門家に話を聞き、コストも考えて設計した。
クラブの集会に持って行くと、皆で寄ってたかって触る。逆駆動できるウォームとは言っても、かろうじて廻る程度の物だろうと思っていた人が多かったようだ。車軸を廻すと、ウォーム軸がビューンと廻るのには皆さん驚く。ウォーム軸は小さな物なのだが、高速で回転するので、慣性で廻り続けようとするのを見て、皆さんは驚く。(動画の前半部分のみ)
HO車輌に嵌め替えた人も何人か居る。動輪の大きな蒸気機関車には嵌まるそうだ。押して動く動画を送ってくれる人も居て、嬉しい。
ギヤボックスを作っても開放ではいけない。ゴミを巻き込んでダメになる。動輪軸にガタがあると、それだけで損失が増大する。HOの蒸気機関車のギヤボックスには、そういうガタがあるものが多いように思う。
歯車は工業製品である。優秀な歯切装置で作られたものであれば、ばらつきは少ないが、ゼロであることは無いだろう。僅かなばらつきや、微小な傷、異物の噛み込みなどの影響で、噛み合わせに異常を来すことが無いとは言えない。
そういう時はこの「互いに素」が効果を発揮する。様々なファクタによる不具合を薄めて、自然に支障の無い状態になる。
このウォーム・ギヤボックスを作ってくれたY氏は、組んでみて廻したとき、微妙なひっかかりに気が付いた。ところが廻しているうちに問題がなくなったので、改めてその効果に驚いたそうだ。
進み角は tooling cost(新規に必要となる刃物の価格)の掛からない18度以下にするべきだ。また、伝達効率もその辺りで良い。特殊なホブを用意せずに切った進み角の大きなウォームでは、歯形がおかしくなる(最近は別の歯形創生法で、18度以上でも作れて、効率低下が少ない方法があるらしい)。
ウォームホィールの歯当たり部分を凹ませた物は、高級に見えるらしい。残念ながら、伝達効率はそのほうが低下するという報告も出ている。ともかく、この歯車セットは、工業的に最も具合の良い条件を組み合わせたものである。単なる思い付きを形にしたものではないのだ。これを実現するために、複数の歯車の専門家に話を聞き、コストも考えて設計した。
クラブの集会に持って行くと、皆で寄ってたかって触る。逆駆動できるウォームとは言っても、かろうじて廻る程度の物だろうと思っていた人が多かったようだ。車軸を廻すと、ウォーム軸がビューンと廻るのには皆さん驚く。ウォーム軸は小さな物なのだが、高速で回転するので、慣性で廻り続けようとするのを見て、皆さんは驚く。(動画の前半部分のみ)
HO車輌に嵌め替えた人も何人か居る。動輪の大きな蒸気機関車には嵌まるそうだ。押して動く動画を送ってくれる人も居て、嬉しい。
ギヤボックスを作っても開放ではいけない。ゴミを巻き込んでダメになる。動輪軸にガタがあると、それだけで損失が増大する。HOの蒸気機関車のギヤボックスには、そういうガタがあるものが多いように思う。
2018年11月27日
続 3D printing
正直なところ、廉価な3D printingにはあまり期待していなかった。
2年ほど前、3Dの勉強をした。近くの公民館で生徒を募集していた3D教室に入って3箇月ほど練習したのだ。ある程度はできるようになったが、実際に印刷して見ると粗い。しかも材質がよくないので経年変化が大きい。ミシン油に漬けておいたら少し膨潤した。進歩を待たねば、役には立たないと思った。
今回のナイロン(ナイロン12だと言っている)は丈夫で踏んでも潰れないだろう。熱にも強い。今ミシン油に漬け込んであるので、そのうち結果を報告する。耐油性が証明されたら、ギヤボックスを作ってみる。
実はあと何台かの機関車のギヤボックスが必要なのだ。縦フライスで作るための図面と刃物を用意した。少々厄介な形であるが、やればできることは分かっている。しかし、おそらく1日ではできない。5個作ると、多分フルに3日程掛かるだろう。そこまで割く時間がない。
こういう時は助かる。金属製に拘ることがないものであれば、ナイロン製でよいのだ。ネジを立てることも可能だろうし、タッピングビスでも良い。
ロストワックスの原型を作る手間も省ける。鋳縮みを見越した大きさにするのは簡単だ。ただし、まだHO以下の小型模型には向かないだろう。解像度がそこまでよくないのだ。先回のHOの木製キットと同じで、同じ材質で相似形の小さなものを作ると、粗さが目立つようになるだろう。今のところはOスケールくらいが最小限度である。高精細なものが安くできるようになるのは、いつごろだろう。
今のところ、小さなものは一度金属に置き換えたものを研磨するしかないだろう。
2年ほど前、3Dの勉強をした。近くの公民館で生徒を募集していた3D教室に入って3箇月ほど練習したのだ。ある程度はできるようになったが、実際に印刷して見ると粗い。しかも材質がよくないので経年変化が大きい。ミシン油に漬けておいたら少し膨潤した。進歩を待たねば、役には立たないと思った。
今回のナイロン(ナイロン12だと言っている)は丈夫で踏んでも潰れないだろう。熱にも強い。今ミシン油に漬け込んであるので、そのうち結果を報告する。耐油性が証明されたら、ギヤボックスを作ってみる。
実はあと何台かの機関車のギヤボックスが必要なのだ。縦フライスで作るための図面と刃物を用意した。少々厄介な形であるが、やればできることは分かっている。しかし、おそらく1日ではできない。5個作ると、多分フルに3日程掛かるだろう。そこまで割く時間がない。
こういう時は助かる。金属製に拘ることがないものであれば、ナイロン製でよいのだ。ネジを立てることも可能だろうし、タッピングビスでも良い。
ロストワックスの原型を作る手間も省ける。鋳縮みを見越した大きさにするのは簡単だ。ただし、まだHO以下の小型模型には向かないだろう。解像度がそこまでよくないのだ。先回のHOの木製キットと同じで、同じ材質で相似形の小さなものを作ると、粗さが目立つようになるだろう。今のところはOスケールくらいが最小限度である。高精細なものが安くできるようになるのは、いつごろだろう。
今のところ、小さなものは一度金属に置き換えたものを研磨するしかないだろう。
2018年08月15日
続々 阿里山
奮起湖駅には機関区があり、そこには2輌のシェイが置いてあったが静態である。片方はドライヴシャフトも外してあった。
ここには整備工場もあったが、もぬけの殻で、壁に近いところに、古い旋盤とボール盤があった。旋盤の展示は向きが逆で、スピンドルが右にあった。おそらくもともとそういう向きにあったのだろう。観客の観覧スペイスを作るために、平行を保って奥にずらしたので、意味不明の展示となってしまった。こういうところは考えるべきである。
シェイは頂上の駅付近にもまだ置いてあるのだろうが、詳しくは分からない。阿里山のシェイはどれがオリジナルなのかが、特定できないらしい。フレームを新製したり、廃車と振り替えたりしたという。ボイラも自家製と取り替えているものがあるという話も聞いた。
小さな機関車である。762 mmゲージだから、北勢線と同じである。今までに見たものは、 standard gauge と 3-ft gauge であるから、格段に小さい。
彼らもこの機関車が観光資源になると気付いたので、最近は大事にしている。40年前は、買おうと思えば、目方で買えるという話さえ聞いた。北朝鮮の蒸気機関車も、おそらく目方で買えるだろう。代わりの機関車を持って行けば、喜んで交換するかも知れない。狙っている人も居る筈だ。しかし、石油のない国だから難しいのかも知れない。
ここには整備工場もあったが、もぬけの殻で、壁に近いところに、古い旋盤とボール盤があった。旋盤の展示は向きが逆で、スピンドルが右にあった。おそらくもともとそういう向きにあったのだろう。観客の観覧スペイスを作るために、平行を保って奥にずらしたので、意味不明の展示となってしまった。こういうところは考えるべきである。
シェイは頂上の駅付近にもまだ置いてあるのだろうが、詳しくは分からない。阿里山のシェイはどれがオリジナルなのかが、特定できないらしい。フレームを新製したり、廃車と振り替えたりしたという。ボイラも自家製と取り替えているものがあるという話も聞いた。
小さな機関車である。762 mmゲージだから、北勢線と同じである。今までに見たものは、 standard gauge と 3-ft gauge であるから、格段に小さい。
彼らもこの機関車が観光資源になると気付いたので、最近は大事にしている。40年前は、買おうと思えば、目方で買えるという話さえ聞いた。北朝鮮の蒸気機関車も、おそらく目方で買えるだろう。代わりの機関車を持って行けば、喜んで交換するかも知れない。狙っている人も居る筈だ。しかし、石油のない国だから難しいのかも知れない。
2018年01月06日
インヴォリュート歯車
その方にどうして100%ということがありうるのかと聞くと、99.99%以上だという。少し後退した。何か怪しい。その電車に乗ってみて音を聞いた。モータ音以外に歯車音もある。これでは99%近辺だ。歯車箱を触ってみればすぐわかる。かなり温かいはずだ。
普通の平歯車は98%である。効率を上げるには径を大きくしたり、モヂュールを小さくする以外に、斜歯(はすば)にする方法がある。そうすると重なり噛合い率が上がる。
噛合い率とはいくつの歯が噛んでいるかということである。斜歯なら、3枚程度を噛ませることができる。
転位させて歯先と歯元を薄くすることができれば、殆どがピッチ円付近の接触になり、転がり摩擦に近づく。この辺のことは50年前に亡父から聞いた。
船のスクリュウのように連続負荷なら良いが、鉄道では衝撃負荷が多いので、斜歯は感心しないのだそうだ。斜歯は弱いのだ。それから、設計時は歯車の効率を95%と見積もって、発生する熱をどうやって捨てるかを考えておかないと実戦で役に立たないのだそうだ。今はもう少し良いだろう。潤滑油の進歩もある。第二次世界大戦の兵器はそんなものだったのだ。斜歯の場合は負荷によって性能に差が出る。力が掛かると歯が曲がるのだそうだ。要するに彼は、軽負荷での性能を拡大解釈しているのだろう。
もう一つ父は付け加えた。斜歯にするときは歯先、歯元ともに薄くしてはならない。すべてが当たるようにすると、効率が上がるというのだ。その理由は聞きそびれたが、多分、噛合い率が上がり、歯が曲がりにくくなるのだろう。
話題になった電車は、出力が小さいので斜歯であるが、機関車などで一台1MW(1300馬力)もあるモータでは使えない。即ち効率は98%程度だ。
歯車の効率はコンピュータが進歩し始めたときに、数学の先生に計算してもらった。そう簡単には騙されない。一応は勉強しているのだ。
普通の平歯車は98%である。効率を上げるには径を大きくしたり、モヂュールを小さくする以外に、斜歯(はすば)にする方法がある。そうすると重なり噛合い率が上がる。
噛合い率とはいくつの歯が噛んでいるかということである。斜歯なら、3枚程度を噛ませることができる。
転位させて歯先と歯元を薄くすることができれば、殆どがピッチ円付近の接触になり、転がり摩擦に近づく。この辺のことは50年前に亡父から聞いた。
船のスクリュウのように連続負荷なら良いが、鉄道では衝撃負荷が多いので、斜歯は感心しないのだそうだ。斜歯は弱いのだ。それから、設計時は歯車の効率を95%と見積もって、発生する熱をどうやって捨てるかを考えておかないと実戦で役に立たないのだそうだ。今はもう少し良いだろう。潤滑油の進歩もある。第二次世界大戦の兵器はそんなものだったのだ。斜歯の場合は負荷によって性能に差が出る。力が掛かると歯が曲がるのだそうだ。要するに彼は、軽負荷での性能を拡大解釈しているのだろう。
もう一つ父は付け加えた。斜歯にするときは歯先、歯元ともに薄くしてはならない。すべてが当たるようにすると、効率が上がるというのだ。その理由は聞きそびれたが、多分、噛合い率が上がり、歯が曲がりにくくなるのだろう。
話題になった電車は、出力が小さいので斜歯であるが、機関車などで一台1MW(1300馬力)もあるモータでは使えない。即ち効率は98%程度だ。
歯車の効率はコンピュータが進歩し始めたときに、数学の先生に計算してもらった。そう簡単には騙されない。一応は勉強しているのだ。
2017年11月29日
rack & pinion
春先に自宅のWashlet(TOTO製)が壊れた。比較的高級な機種(TCF815)で、購入して4年ほどであった。故障ではなく、自壊したのである。最低だ。
使用中に、バリバリメリメリと音がして、ノズルが引っ掛かって止まった。押しても引いても動かない。突き出したままだから、トイレは使えない。仕方なく安物を買ってきて、仮に取り付けた。外したものを営業所に送って修理してもらおうと思ったが、現場での修理しか受け付けないと言う。こちらの都合など全くお構いなしで、取り付けた状態しか駄目だと言うのだ。取り付けられている状況を見ないといけないと言う。
何が知りたいのかと聞くと水圧、水質、電源、日照の有無、気温、湿度だと言う。すべての正確なデータを測定して送ったが、屁理屈を付けて、「現場で」と言い張る。
再度取り付けたら、トイレは使えない。滅茶苦茶な方針を押し付けようとする会社だ。出張費が欲しいのだろう。見掛け上の修理費を安くする方便に違いない。押し問答の末、正確な訪問時間を決め、元に戻した。
当日、修理を見ていたら、内部のノズル繰り出し装置がフレクシブルなラックであって、それが折れていた。疲労したのだ。それはプラスティック(多分ナイロン)のラックの中に編みワイヤを封入したもので、いかにも細い。座屈して折れるのは、当たり前だ。
「なんだ、設計が間違っているじゃないか。」と言うと、修理員は申し訳なさそうな顔をして、「この機種の修理はすべて無料でさせて戴いています」と言う。最初からそう言えば良いのに。リコールの対象であるはずだ。購入者に不便を強いている。
代替部品はかなり太く、これなら折れないだろうという形であった。座屈発生というのは、設計者にとって最低の失敗だ。
こんな設計はダメである。今回の転車台のメカニズムの設計は、それを見たときの印象が、大きく影響している。
使用中に、バリバリメリメリと音がして、ノズルが引っ掛かって止まった。押しても引いても動かない。突き出したままだから、トイレは使えない。仕方なく安物を買ってきて、仮に取り付けた。外したものを営業所に送って修理してもらおうと思ったが、現場での修理しか受け付けないと言う。こちらの都合など全くお構いなしで、取り付けた状態しか駄目だと言うのだ。取り付けられている状況を見ないといけないと言う。
何が知りたいのかと聞くと水圧、水質、電源、日照の有無、気温、湿度だと言う。すべての正確なデータを測定して送ったが、屁理屈を付けて、「現場で」と言い張る。
再度取り付けたら、トイレは使えない。滅茶苦茶な方針を押し付けようとする会社だ。出張費が欲しいのだろう。見掛け上の修理費を安くする方便に違いない。押し問答の末、正確な訪問時間を決め、元に戻した。
当日、修理を見ていたら、内部のノズル繰り出し装置がフレクシブルなラックであって、それが折れていた。疲労したのだ。それはプラスティック(多分ナイロン)のラックの中に編みワイヤを封入したもので、いかにも細い。座屈して折れるのは、当たり前だ。
「なんだ、設計が間違っているじゃないか。」と言うと、修理員は申し訳なさそうな顔をして、「この機種の修理はすべて無料でさせて戴いています」と言う。最初からそう言えば良いのに。リコールの対象であるはずだ。購入者に不便を強いている。
代替部品はかなり太く、これなら折れないだろうという形であった。座屈発生というのは、設計者にとって最低の失敗だ。
こんな設計はダメである。今回の転車台のメカニズムの設計は、それを見たときの印象が、大きく影響している。
2017年11月27日
続 turntable indexing
リング状の歯車を作った。もちろん既存の歯車の内側を削ったのだ。ボス付きの歯車のボスを銜えて廻し、所定の半径に中グリをする。
DROの無い旋盤で、中グリをするのは怖い。うっかり削り過ぎると失敗だ。もう余分の材料は無い。何回も寸法をチェックし、2/100mmずつ削って、滑り込みにする。ボスから切り離した瞬間に、このような状態になる。 これをパイプに嵌めてハンダ付けする。モータでパイプを廻すと、ラックが出入りするのだ。
ラックによる伸縮はネジ式に比べると利点が多い。ネジは逆駆動ができないのだ。もちろん三条ウォームのように進み角を大きくすればよいのだが、そんなネジを作っている暇はない。ラックとピニオンなら単純なメカニズムだ。ラックは十分に丈夫な太さにして、転がり摩擦で受けている。ガタはなくした。
今回作っている装置は、すべて逆方向に力が掛かると滑らかに戻る。インデックス(割り出し)の動作で所定の位相で停止するが、制御者の意思が働いていない時は自由に回転できる。制御にはリミット・スウィッチは使わない。スイッチがあると、いかにも機械仕掛けで動いています、という感じを与えるからだ。つまり、玩具っぽい動きになる。本物はとても重いので、カチンカチンと動くことは無いのだ。あたかも人間がそこに居て、動かしているような感じを与えるような設計だ。
要するに人間が意思を持って押しているような動きである。力を入れて所定の位置に持って行く。そこで力を緩めると、別の力が掛かっている時は、逆に動き始めるのだ。言葉では説明しにくいが、試運転を見た人は非常に驚き、「機械の動きのようには見えない。」という言葉が出た。
すべての機構は、2度作り直した。
DROの無い旋盤で、中グリをするのは怖い。うっかり削り過ぎると失敗だ。もう余分の材料は無い。何回も寸法をチェックし、2/100mmずつ削って、滑り込みにする。ボスから切り離した瞬間に、このような状態になる。 これをパイプに嵌めてハンダ付けする。モータでパイプを廻すと、ラックが出入りするのだ。
ラックによる伸縮はネジ式に比べると利点が多い。ネジは逆駆動ができないのだ。もちろん三条ウォームのように進み角を大きくすればよいのだが、そんなネジを作っている暇はない。ラックとピニオンなら単純なメカニズムだ。ラックは十分に丈夫な太さにして、転がり摩擦で受けている。ガタはなくした。
今回作っている装置は、すべて逆方向に力が掛かると滑らかに戻る。インデックス(割り出し)の動作で所定の位相で停止するが、制御者の意思が働いていない時は自由に回転できる。制御にはリミット・スウィッチは使わない。スイッチがあると、いかにも機械仕掛けで動いています、という感じを与えるからだ。つまり、玩具っぽい動きになる。本物はとても重いので、カチンカチンと動くことは無いのだ。あたかも人間がそこに居て、動かしているような感じを与えるような設計だ。
要するに人間が意思を持って押しているような動きである。力を入れて所定の位置に持って行く。そこで力を緩めると、別の力が掛かっている時は、逆に動き始めるのだ。言葉では説明しにくいが、試運転を見た人は非常に驚き、「機械の動きのようには見えない。」という言葉が出た。
すべての機構は、2度作り直した。
2017年01月12日
3条ウォーム・ギヤ
コメントを戴いているので、予定を変更して、続編である。
筆者の3条ウォームは、85年夏のミルウォーキのNMRAコンヴェンションで発表した。祖父江氏と一緒に行って、ブースを借りた。
2輌を同一の線路に置いて、片方押すと他方が走る様子は、大きな反響を呼び、地元のテレビ局が取材に来た。「マジック」というタイトルで放映されたようだ。そのビデオが見たかったが、 チャンスがなかった。MRに載ったのはその年だ。当時は、本社がすぐ近くの北7番街1027番地の古いビルだった。
その発表のさなかに、一人の男がやってきて、
「このアイデアは戦前にライオネルが採用している。」
と言ってきた。こちらは そんなものを見たことが無いので、
「そうですか」
としか言えなかった。後に見せてもらった時、確かに押して動くが、それほど軽く動くわけでもなく、比較できないと思った。中を開けて見せてもらったわけではないので、今回の分解が初体験である。ギヤボックスが密閉式であるのは優秀である。
ずっと後でわかったのは、その男がクラインシュミット氏であった。彼とはいろいろなところで会って、手厳しい評価を受けている。因縁深いものを感じる。しかし、最近は非常に仲の良い友達になった。
大切なのは潤滑だ。良い潤滑剤を採用し、密閉されたギヤボックスを採用しないとうまくいかない。油が切れたり、埃を噛んだりするようでは意味がない。
また、組立時にはよく洗っておくことも必要である。
3条ウォームが実現して、31年経った。一部のOゲージ・メーカが似たものを作っているだけで、他には同じものがまったくない。
似ているだけでは、あまり効率が良くないのだ。材質も大切なファクタである。ブラスのウォーム・ギヤは感心しない。
以前にも書いたが、この直角伝導がコンパクトにできるというところが、模型用として非常に大きな利点である。傘歯車と平歯車ではあまりにもコストが掛かるし、ギヤ比や音の点で不利である。 効率も、それらに比べてさほど低くはなく、十分に太刀打ちできる。むしろ設計手法や工作精度によっては、勝てる範囲にある。またクラッチ等を用いて、押して動くようにすると下り勾配で制御不能になるので、低抵抗車輪を用いた長大編成の運行ができなくなる。これは、まだその実験機が保存してあるので、いずれ博物館で実際に運転してみる。多分悲惨な結果になる。
筆者の3条ウォームは、85年夏のミルウォーキのNMRAコンヴェンションで発表した。祖父江氏と一緒に行って、ブースを借りた。
2輌を同一の線路に置いて、片方押すと他方が走る様子は、大きな反響を呼び、地元のテレビ局が取材に来た。「マジック」というタイトルで放映されたようだ。そのビデオが見たかったが、 チャンスがなかった。MRに載ったのはその年だ。当時は、本社がすぐ近くの北7番街1027番地の古いビルだった。
その発表のさなかに、一人の男がやってきて、
「このアイデアは戦前にライオネルが採用している。」
と言ってきた。こちらは そんなものを見たことが無いので、
「そうですか」
としか言えなかった。後に見せてもらった時、確かに押して動くが、それほど軽く動くわけでもなく、比較できないと思った。中を開けて見せてもらったわけではないので、今回の分解が初体験である。ギヤボックスが密閉式であるのは優秀である。
ずっと後でわかったのは、その男がクラインシュミット氏であった。彼とはいろいろなところで会って、手厳しい評価を受けている。因縁深いものを感じる。しかし、最近は非常に仲の良い友達になった。
大切なのは潤滑だ。良い潤滑剤を採用し、密閉されたギヤボックスを採用しないとうまくいかない。油が切れたり、埃を噛んだりするようでは意味がない。
また、組立時にはよく洗っておくことも必要である。
3条ウォームが実現して、31年経った。一部のOゲージ・メーカが似たものを作っているだけで、他には同じものがまったくない。
似ているだけでは、あまり効率が良くないのだ。材質も大切なファクタである。ブラスのウォーム・ギヤは感心しない。
以前にも書いたが、この直角伝導がコンパクトにできるというところが、模型用として非常に大きな利点である。傘歯車と平歯車ではあまりにもコストが掛かるし、ギヤ比や音の点で不利である。 効率も、それらに比べてさほど低くはなく、十分に太刀打ちできる。むしろ設計手法や工作精度によっては、勝てる範囲にある。またクラッチ等を用いて、押して動くようにすると下り勾配で制御不能になるので、低抵抗車輪を用いた長大編成の運行ができなくなる。これは、まだその実験機が保存してあるので、いずれ博物館で実際に運転してみる。多分悲惨な結果になる。
2016年11月15日
メカニズム
しばらく留守をしていた。東京で所属クラブの会合があったのだ。今回は久しぶりに全員が顔を合わせたので、一人ずつ自己紹介をした。
筆者は、
「模型の外観は適当にできていれば十分であるが、メカニズムには最高を求めることにしている。いかにして低電流でたくさん牽くか、貨車や客車はいかにして摩擦を減らして遠くまで転がるかしか興味がない。」
と言うと、みなさんはどっと沸いた。
家に帰ってみると、少々手に余るコメントが来ていて、無視しようかとも思ったが、載せておいた。反論も来ているが、それもそのまま載せた。
最近、妙なコメントが時々送られてくる。お前のブログに、俺の自己主張を載せろ、と言わんばかりのものがある。
お断りしておくが、コメントはあくまでもコメントであって、この場を借りて自分の主義主張を発表する場所ではない。それはご自分でブログ等を立ち上げて発表されればよい。メイルアドレスが書いてある場合は、それをお伝えして消去している。
今回のコメント主は、拙ブログをほとんど読んでいらっしゃらないことがわかる。筆者は考えられるメカニズムをすべて作っている。それを祖父江氏がさらに改良したものも持っている。傘歯車駆動の機関車は3輌ある。人にお勧めできるものではない。
価格の面でも問題があるが、一番大きな問題は音である。祖父江氏の腕をもってしても、歯車の音は無くならない。蒸気機関車がヒューと歯車音を出して走るのは問題だ。当時は若かったので、耳が敏感であったこともあるが、気になった。
芦屋の御大の機関車はすべてこの音がする。彼はそれがお好きなようだったが、筆者は容認できない。
また、摩擦係数と摩擦とは異なる次元の話であり、コメントの趣旨はよくわからない。
最近皆さんもお気付きのようだが、低回転高トルクモータを用いて、低歯車比にすると静かで高効率の機関車ができる。筆者の「3条ウォーム+1段減速」は8:1程度であるが、新モータを用いて、その半分程度にすることを目標にしている。
筆者は、
「模型の外観は適当にできていれば十分であるが、メカニズムには最高を求めることにしている。いかにして低電流でたくさん牽くか、貨車や客車はいかにして摩擦を減らして遠くまで転がるかしか興味がない。」
と言うと、みなさんはどっと沸いた。
家に帰ってみると、少々手に余るコメントが来ていて、無視しようかとも思ったが、載せておいた。反論も来ているが、それもそのまま載せた。
最近、妙なコメントが時々送られてくる。お前のブログに、俺の自己主張を載せろ、と言わんばかりのものがある。
お断りしておくが、コメントはあくまでもコメントであって、この場を借りて自分の主義主張を発表する場所ではない。それはご自分でブログ等を立ち上げて発表されればよい。メイルアドレスが書いてある場合は、それをお伝えして消去している。
今回のコメント主は、拙ブログをほとんど読んでいらっしゃらないことがわかる。筆者は考えられるメカニズムをすべて作っている。それを祖父江氏がさらに改良したものも持っている。傘歯車駆動の機関車は3輌ある。人にお勧めできるものではない。
価格の面でも問題があるが、一番大きな問題は音である。祖父江氏の腕をもってしても、歯車の音は無くならない。蒸気機関車がヒューと歯車音を出して走るのは問題だ。当時は若かったので、耳が敏感であったこともあるが、気になった。
芦屋の御大の機関車はすべてこの音がする。彼はそれがお好きなようだったが、筆者は容認できない。
また、摩擦係数と摩擦とは異なる次元の話であり、コメントの趣旨はよくわからない。
最近皆さんもお気付きのようだが、低回転高トルクモータを用いて、低歯車比にすると静かで高効率の機関車ができる。筆者の「3条ウォーム+1段減速」は8:1程度であるが、新モータを用いて、その半分程度にすることを目標にしている。
2016年07月17日
続 TMS195号
筆者が高効率模型開発の実践をしていることを、山崎喜陽氏は井上豊氏から聞いていたらしく、
「TMSで発表させてあげるから・・・」
と話し掛けてきた。物の言い方が気になったが、数分間話をした。彼は筆者の話に非常に興味を持ち、実際に80坪の部屋の床で大規模な線路を敷いて実験をしている写真を見て、愕然としていた。
「日本で模型の効率を測定している人はあなただけだ。」
と言った。実際にはもう一人いて、それは吉岡精一氏であった。しかし、当時はまだ、吉岡氏とは連絡が付いていなかった。それを妨害した張本人は山崎氏その人であったのだが。
極めて初期のTMSに、歯車の効率の話がある。山崎氏は、鉄道模型はよく走らねばならないという信念は持っていたようだ。
話の内容を横で聞いていた荒井友光氏は上機嫌で、
「山崎クン、名古屋にはこういう人もいるんだよ、大したもんだろ。『尾張名古屋はO(オウ)で持つ』って昔から言ってたじゃないか。」
と嬉しそうだった。その前の年のNMRAの新年会で、アメリカのNMRAのコンヴェンションのスライドを100枚以上見せた。カツミの栗山氏がそれを見ていて、筆者は請われて東京で二回再演した。そのことも聞いていたらしく、見せてくれと頼まれた。当時アメリカでも、
"O gauge is back" というキャッチ・フレイズでOゲージの復権が始まっていると言うと、非常に興味深そうだった。彼はアメリカの話には心を動かされるようだった。
その席で、筆者は山崎氏が「Model Railroader に投稿するならウチを通さなければ載らない・・・・」と、また言ったものだから、呆れてしまった。筆者は若いとは言え、アメリカに居たことのある人間だから、そんなことを言えばバレることぐらいわかりそうなものだ。
筆者は井上氏に連れられて、山崎氏とは過去に複数回会っている。いつもそれを言う人であった。本人はそう信じていたのだろう。お気の毒ではある。
例の3条ウォームの記事はぜひともTMSで扱いたかったものだったと、発表直後に荒井氏から聞いた。
一方ミキストで、実名を挙げて攻撃された副会長の加藤 清氏の怒りは収まらず、553号まで投稿しなかった。漁夫の利を得たのが「とれいん」誌で、かなりの原稿がそちらで発表された。
「TMSで発表させてあげるから・・・」
と話し掛けてきた。物の言い方が気になったが、数分間話をした。彼は筆者の話に非常に興味を持ち、実際に80坪の部屋の床で大規模な線路を敷いて実験をしている写真を見て、愕然としていた。
「日本で模型の効率を測定している人はあなただけだ。」
と言った。実際にはもう一人いて、それは吉岡精一氏であった。しかし、当時はまだ、吉岡氏とは連絡が付いていなかった。それを妨害した張本人は山崎氏その人であったのだが。
極めて初期のTMSに、歯車の効率の話がある。山崎氏は、鉄道模型はよく走らねばならないという信念は持っていたようだ。
話の内容を横で聞いていた荒井友光氏は上機嫌で、
「山崎クン、名古屋にはこういう人もいるんだよ、大したもんだろ。『尾張名古屋はO(オウ)で持つ』って昔から言ってたじゃないか。」
と嬉しそうだった。その前の年のNMRAの新年会で、アメリカのNMRAのコンヴェンションのスライドを100枚以上見せた。カツミの栗山氏がそれを見ていて、筆者は請われて東京で二回再演した。そのことも聞いていたらしく、見せてくれと頼まれた。当時アメリカでも、
"O gauge is back" というキャッチ・フレイズでOゲージの復権が始まっていると言うと、非常に興味深そうだった。彼はアメリカの話には心を動かされるようだった。
その席で、筆者は山崎氏が「Model Railroader に投稿するならウチを通さなければ載らない・・・・」と、また言ったものだから、呆れてしまった。筆者は若いとは言え、アメリカに居たことのある人間だから、そんなことを言えばバレることぐらいわかりそうなものだ。
筆者は井上氏に連れられて、山崎氏とは過去に複数回会っている。いつもそれを言う人であった。本人はそう信じていたのだろう。お気の毒ではある。
例の3条ウォームの記事はぜひともTMSで扱いたかったものだったと、発表直後に荒井氏から聞いた。
一方ミキストで、実名を挙げて攻撃された副会長の加藤 清氏の怒りは収まらず、553号まで投稿しなかった。漁夫の利を得たのが「とれいん」誌で、かなりの原稿がそちらで発表された。
2015年07月26日
続 frog numbers
Fast Tracksという会社がある。web siteが立派で、なかなか大したものだと思っていたが、中身は少々怪しい。最近の工業レベルを反映して、レーザカット、CNCフライスでジグを作って、材料とともに売っている。様々なテクニックを駆使して、ポイント等を簡単に作れるように準備している。動画もたくさんあるので、買わなくても楽しめる。
Fast Tracks の♯4のYポイントのフログ角は14.04度で、#8は7.13度である。すなわちどちらも簡易式での値だ。NMRAのRP準拠と言っているので、NMRAも怪しい。このままでは操車場の線が平行にならない。
以前にフランジの件で書いたように、NMRAにはまともな人材がいないようだ。いずれアメリカの雑誌に書いて、反応を見てみよう。
多少角度が違っても、線路を敷くときに少し曲げれば難なく敷けるのであろう。実物であれば、乗り心地が大幅に悪くなるので大問題になるが、模型であれば構わないということなのかもしれない。
しかし、きちんとしたものを売れば、その会社の評価も上がるはずだ。この会社には直接言ってみよう。改善されれば大したものだ。
先回のTMSの旧号はすぐ探せた。それを読んだ場所、時期がわかっていたので、その前後を探したら、ちょうど中心の6月号にあった。南海の凸電が表紙だ。鉄道模型に熱中していた少年期が思い出される。
他の記事も拾い読みしたが、ディテールをどうするかという記事ばかりだ。動力機構とか線路関係の記事などほとんどありはしない。この状態が50年も続いた結果が、現在につながっている。
細密な完成品がこれだけ豊富にあるのに、動力機構が素晴らしいと感じるものはまずない。どれもこれも、効率が悪く、音が出やすい設計のように、筆者には思える。ほとんどがギヤボックスがなく、むき出しの歯車をつけている。
ある先輩はこう言う。「日本の鉄道模型はフルパワーで30分走るとおかしくなる。たいていギヤが減ってしまう。」
そうだろうと思う。両方ブラスの歯車を使っているからだ。小さいほうを快削鋼にするだけでも20倍くらい持つ。もちろん潤滑は大事だ。油を差しても、走り出したら無潤滑の状態に近い。そろそろ気が付いてもよさそうなのだが、走らせている人は少ないのだ。
追記
fast track には優先車線という意味がある。アメリカの高速道路では最中央の1ないし2車線は優先車線であり、2人以上乗車の際には使える。一人で乗っていると捕まれば数百ドルの罰金である。
それを走るためのリアルな人形を売っているようだ。おそらく摘発されると大変なことになるはずだ。
高速道路上の実際の表記は少し変えて、Fast Trakになっている。
Fast Tracks の♯4のYポイントのフログ角は14.04度で、#8は7.13度である。すなわちどちらも簡易式での値だ。NMRAのRP準拠と言っているので、NMRAも怪しい。このままでは操車場の線が平行にならない。
以前にフランジの件で書いたように、NMRAにはまともな人材がいないようだ。いずれアメリカの雑誌に書いて、反応を見てみよう。
多少角度が違っても、線路を敷くときに少し曲げれば難なく敷けるのであろう。実物であれば、乗り心地が大幅に悪くなるので大問題になるが、模型であれば構わないということなのかもしれない。
しかし、きちんとしたものを売れば、その会社の評価も上がるはずだ。この会社には直接言ってみよう。改善されれば大したものだ。
先回のTMSの旧号はすぐ探せた。それを読んだ場所、時期がわかっていたので、その前後を探したら、ちょうど中心の6月号にあった。南海の凸電が表紙だ。鉄道模型に熱中していた少年期が思い出される。
他の記事も拾い読みしたが、ディテールをどうするかという記事ばかりだ。動力機構とか線路関係の記事などほとんどありはしない。この状態が50年も続いた結果が、現在につながっている。
細密な完成品がこれだけ豊富にあるのに、動力機構が素晴らしいと感じるものはまずない。どれもこれも、効率が悪く、音が出やすい設計のように、筆者には思える。ほとんどがギヤボックスがなく、むき出しの歯車をつけている。
ある先輩はこう言う。「日本の鉄道模型はフルパワーで30分走るとおかしくなる。たいていギヤが減ってしまう。」
そうだろうと思う。両方ブラスの歯車を使っているからだ。小さいほうを快削鋼にするだけでも20倍くらい持つ。もちろん潤滑は大事だ。油を差しても、走り出したら無潤滑の状態に近い。そろそろ気が付いてもよさそうなのだが、走らせている人は少ないのだ。
追記
fast track には優先車線という意味がある。アメリカの高速道路では最中央の1ないし2車線は優先車線であり、2人以上乗車の際には使える。一人で乗っていると捕まれば数百ドルの罰金である。
それを走るためのリアルな人形を売っているようだ。おそらく摘発されると大変なことになるはずだ。
高速道路上の実際の表記は少し変えて、Fast Trakになっている。
2015年05月26日
スパーギヤ
Oゲージの運転会に行って、レイアウトを観察する。東西いずれのレイアウトもかなり大規模で、よく工夫されている。さすがに大きくて、組立て、分解、運送には10人ほどが、各30分程度働く必要がある。これだけの規模の物だから、それは仕方ないが、全部で300 kgくらいはあるだろう。
さて、その中で分岐の様子を観察した。筆者の作っているレイアウトに、参考になるところは吸収したいからだ。関東のは歴史が古く、何もかも手作りで立派なものである。そのフログ部分を見て、少々驚いた。
ガードレイルに等間隔に傷が付いている。ある方の解説によると、スパーギヤが当たったのだそうだ。しかもスパークしてブラスが融けている。
と云うことは、絶縁側にスパーギヤがあることになる。これはまずい。根本的にスパーギヤをむき出しで使うことには、筆者は反対である。しかも、その径が車輪径と等しいのは言語道断である。さらに絶縁側に付けるとは………。
「 困ったもんだね。」と話をしていたところ、他の部分に油が点々と「印刷」されていることに気が付いた。ショートは免れているが、レイル面に接触しているのは間違いなさそうだ。フログでの落込みで接触している。事実上、歯車で走っている。
このフログは古い規格であって、落込みをフランジで支えるようになっている。最近はそのフランジが低くなったので、かなり落ち込んでいる。本当はフログを更新すべきであろう。
筆者の建設しているレイアウトに車輌を持って来られても、すぐには運転させない。車検がある、と書いたところ、何人かの友人から、「すこし厳しすぎるのではないか。」と言われた。
しかし、現実はこのようなものである。これでは線路の損傷が起きるし、油を撒き散らされて迷惑そのものである。
車検は行うし、短期間の車検証も発行する。本当はレイアウトから持ち出すと、再車検を受けるのが筋である。アメリカのレイアウトではそのようなシステムを採るのがふつうである。決して厳しすぎるルールではない。
博物館に車輌を持ってきて走らせよう、とお考えの方にお願いしたい。油が飛散するのを防止する装置、あるいは、ギヤボックスが付いていない車輌は、運転ができない。
さて、その中で分岐の様子を観察した。筆者の作っているレイアウトに、参考になるところは吸収したいからだ。関東のは歴史が古く、何もかも手作りで立派なものである。そのフログ部分を見て、少々驚いた。
ガードレイルに等間隔に傷が付いている。ある方の解説によると、スパーギヤが当たったのだそうだ。しかもスパークしてブラスが融けている。
と云うことは、絶縁側にスパーギヤがあることになる。これはまずい。根本的にスパーギヤをむき出しで使うことには、筆者は反対である。しかも、その径が車輪径と等しいのは言語道断である。さらに絶縁側に付けるとは………。
「 困ったもんだね。」と話をしていたところ、他の部分に油が点々と「印刷」されていることに気が付いた。ショートは免れているが、レイル面に接触しているのは間違いなさそうだ。フログでの落込みで接触している。事実上、歯車で走っている。
このフログは古い規格であって、落込みをフランジで支えるようになっている。最近はそのフランジが低くなったので、かなり落ち込んでいる。本当はフログを更新すべきであろう。
筆者の建設しているレイアウトに車輌を持って来られても、すぐには運転させない。車検がある、と書いたところ、何人かの友人から、「すこし厳しすぎるのではないか。」と言われた。
しかし、現実はこのようなものである。これでは線路の損傷が起きるし、油を撒き散らされて迷惑そのものである。
車検は行うし、短期間の車検証も発行する。本当はレイアウトから持ち出すと、再車検を受けるのが筋である。アメリカのレイアウトではそのようなシステムを採るのがふつうである。決して厳しすぎるルールではない。
博物館に車輌を持ってきて走らせよう、とお考えの方にお願いしたい。油が飛散するのを防止する装置、あるいは、ギヤボックスが付いていない車輌は、運転ができない。
2011年07月05日
続 査読者
この件で何人かの方からメールを戴いている。私信なので一部を公開するにとどめるが、大体同じことを仰っている。
A氏より
査読がある、というのは驚きです。載せる記事に責任を持つというメディアの姿勢と理解しました。
B氏より
dda40xさんが指摘されているように、日本の雑誌のレベルに問題があるのは、投稿された原稿をそのまま載せるという体制に最大の原因があると思います。というか書き手の割に雑誌数が多すぎるのと、コストが低くできて多く売れればよいという雑誌社の姿勢が問題なのでしょうか?
C氏より
学会誌と同じですね。査読に通れば、それはお墨付きが得られたと同然ですから、大きな進展があるものと思います。…中略… 出せば載るというレベルの低い日本の雑誌とは違うということがよくわかりました。どんな人に査読をお願いしているのでしょうね。
筆者は、Model Railroaderが世界最大にして最高の模型雑誌たらんとして、努力している雑誌社であると認識している。その世界中に与える影響の大きさを鑑み、慎重であることが素晴らしいと思う。
以前の押して動くギヤも、25年経つと、世界中の色々なメーカが採用していることに気がつく。
先日のHill氏も、「祖父江氏に頼んで改造してもらった押して動くギヤは素晴らしい。あれも日本人が考えたそうだね。ずいぶん色々な会社で作られているね。」と言うので、「そうですよ。この雑誌です。」と棚の蔵書のMRの旧号を取りだして見せた。「おや、すぐわかるのかね ?」と聞くので、「どこかで御覧になった名前ではありませんか?」と著者名を見せた。
彼はとても驚き、「どうしてそれを早く言わないのだ。もっと早くに招待していたのに。」と言った。
MRに載るということは、とても重要なことだと彼は念を押した。
A氏より
査読がある、というのは驚きです。載せる記事に責任を持つというメディアの姿勢と理解しました。
B氏より
dda40xさんが指摘されているように、日本の雑誌のレベルに問題があるのは、投稿された原稿をそのまま載せるという体制に最大の原因があると思います。というか書き手の割に雑誌数が多すぎるのと、コストが低くできて多く売れればよいという雑誌社の姿勢が問題なのでしょうか?
C氏より
学会誌と同じですね。査読に通れば、それはお墨付きが得られたと同然ですから、大きな進展があるものと思います。…中略… 出せば載るというレベルの低い日本の雑誌とは違うということがよくわかりました。どんな人に査読をお願いしているのでしょうね。
筆者は、Model Railroaderが世界最大にして最高の模型雑誌たらんとして、努力している雑誌社であると認識している。その世界中に与える影響の大きさを鑑み、慎重であることが素晴らしいと思う。
以前の押して動くギヤも、25年経つと、世界中の色々なメーカが採用していることに気がつく。
先日のHill氏も、「祖父江氏に頼んで改造してもらった押して動くギヤは素晴らしい。あれも日本人が考えたそうだね。ずいぶん色々な会社で作られているね。」と言うので、「そうですよ。この雑誌です。」と棚の蔵書のMRの旧号を取りだして見せた。「おや、すぐわかるのかね ?」と聞くので、「どこかで御覧になった名前ではありませんか?」と著者名を見せた。
彼はとても驚き、「どうしてそれを早く言わないのだ。もっと早くに招待していたのに。」と言った。
MRに載るということは、とても重要なことだと彼は念を押した。