工学

2017年08月04日

荷物車の中

 荷物車は窓がほとんどないので、中に色々な工夫を詰め込める。
 
 5輌のうち2輌は、大きめのショック・アブソーバをつけるつもりだ。ラジコン用の部品を、リンク機構で前後を一つで受け持つ。

 荷物車には貫通幌がないので、連結面が当たる寸前まで縮んでも大丈夫だ。トラベルは各 5mm程度にしないとみっともないので、2輌の4箇所に付ければ、総トラベルは20 mmになる。

 普段は所定の位置まで延びていて、急停車時には縮む。20 mmでも、力積はうんと小さくなるから、連結面の座屈は起こりにくい筈だ。連結器のピンも壊れないだろう。
 
 アメリカ人の組んだ客車には台車抜きで2 kgもあるものがある。中に補強のつもりで、3/8インチ(9.5 mm)の角材が2本も入れてある。床面は平角棒で固定してある。重いわけだ。ボールベアリングを付けたら、凄まじい転がりを示すが、急停車時の事故が怖い。これが脱線転覆すると、周りに甚大な被害が及ぶ。
 スケールスピードでの運転をするが、信号をよく見て、事故が起こらぬよう十分に注意をする。

 7月下旬から、アメリカに来ている。今回はLAXから入国して、アリゾナ、ニューメキシコ、テキサス方面に行く予定だ。本業の取材を兼ねて来ている。
 しばらく休載する。



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2017年07月03日

脳内3D

 先日、目を瞑って頭に浮かぶ3D画像をひっくり返した経験を紹介した。
 何人かの友人が、感想を聞かせてくれた。

「あれは面白いね、確かに頭の中でひっくり返して裏を見れば、簡単だし、好きなように回転させられるからね。」

「それができる人は、最近はほとんどいなくなった。会社の中でも我々の世代の少し後までだね。若い奴は図面を持ってきて説明するけど、『この裏はどうなっているんだ。』と聞くともう駄目。コンピュータで裏返してそれをプリントアウトするのに時間が掛かってしょうがない。頭の中でやる訓練をしてないんだ。」

「伊藤剛さんなんかは凄かったね、質問すると、『裏はこうなっていてね。』と、たちまち絵を描いてくれる。遠近法まで使った絵をさらさらと描いたよね。」
「頭の中ですべてやる訓練をしているからだけど、生まれつきの素質もあるね。」

「特定の音楽を聴くと、空中に浮かんだものが見えるんだ。海岸線を俯瞰しながら、自分も飛んでいるカモメになる。相手の下に回り込んだりできるんだぜ。」
「そりゃ少々異常かも知れんな。」

 この話をコンピュータ業界の男にしたら、
「それは違うな。そういう3Dの能力がある人が、別の業界に行くようになったというだけじゃないか?僕の周りにはいっぱい居る」と言う。さて、実際はどうなのだろうか。
 

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2017年05月04日

ブレーキの設定

 よく考えてみれば、鉄道車輛にとってブレーキは生命にかかわる部分だから、細心の注意を払って設計されているはずだ。
 前に付いているからトレーリングだと信じ込んでしまったことは、恥ずかしい。物理的な考察をせずに、見かけだけで判断してしまったのだ。

self actuating brake 図を描けば、ぶら下がったブレーキと同じであることに気が付く。Aはリーディングであることは明白だ。B2はAと同じでリーディングである。ブレーキの腕には押す力が掛かる。B1は腕が引っ張られているだけの違いでこれもリーディングに相当する。物理で、「押すと引くは同じだ。向こうから見るかこちらから見るかだ。」と習ったのに、忘れてしまっている。この図ではB1とB2はつながっているように見えるが、別のものを考えている。

 またまたモップの絵を描くと右の図である。上を押すのと、下を引くのは結局は同じことだ。

 昨日から、いろいろな人と意見の交換をしていた。出てくる意見はどれも面白い。動輪が減るとどうなるかということを気にする人が複数いた。確かに接線が中心に近づくと支点を通るようになりかねない。おそらくその手前でタイヤを取り替えると思う。ブレーキ・シュウを取り替えても関係ない。ブレーキ支点を移動できれば良いのだが、そうなっているようには見えない。

 self-actuating (自己倍力装置)である前提で設計しているので、必要とされるブレーキ力を下回ることは許されない。おそらく、機関士はそういうことには極めて敏感だから、効きが悪ければすぐに報告されるだろう。特に高速で走る旅客用機関車にとっては、旅客の生命が掛かっているから、その整備は大切だ。

 昔はそのような伝承があったのだろうが、現在の数少ない保存機の場合は、「これはブレーキが効かないのではないか」とは、気が付かないだろう。タイヤの摩耗限界が、そのような基準で決められていたことも知らない世代に入ってしまったのではないかと危惧する。事故が起こらなければ良いが。

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2017年05月02日

日本の蒸気機関車のブレーキはリーディングである。

 先回の記事が出た直後に、表題に示す連絡を受けた。連絡してきたのは、工学のエキスパートのT氏である。(leadingと言うよりも、むしろself-actuatingと言うべきかもしれない。)
 T氏は、鉄道車輌よりももう少し大きなものの姿勢を制御する専門家である。
 

 そんな筈はないとも思ったが、彼の言うことが間違っていたことは、過去に一度もない。食事の時も上の空で、皿と箸でシミュレートした。彼の意見は正しいことが分かった。わざわざ、ブレーキを効かないようにするはずはない。

leading 結論は出たが、どうやって説明するかである。極端に簡略化した絵を描くとこうなる。それを平面上のモップにすると、下の絵になる。
 モップを塀の上に載せて、下から横に引っ張ると、モップは質量と重力加速度によって生じる摩擦力以上の摩擦力を生じる。喰い込む方向に力が掛かるのだ。エスカレータのベルトを拭くときにこういう装置を付けると、喰い込んで止まってしまうかもしれない。 

JNR C62 leading brake 実物の機関車の写真をじっくり見た。これはC62である 。確かに支点は接線より中心に近いところにあることが分かる。
 これで井上氏がよく効くとおっしゃった意味が、ようやく分かった。

 この件に関するコメントを沢山戴いているが、トレーリングであるという前提のご意見ばかりなので、掲載は控えている。ヨーロッパの機関車には、支点を接線上に持って行って前後進でブレーキ力の変動が起きないような設計にしたものがある。

 それにしても、T氏の眼力には恐れ入った。実はT氏からは、例の”天秤棒イコライザ”に関する解析も戴いているので、いずれそれも紹介したい。イコライザではないということである。

 追記: 添付のC62のブレーキの写真は、提供者のmon氏のご厚意で、圧縮前の、より鮮明な写真と差替えました。  

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2016年12月27日

コメントへの反応

 先回の記事に対し初心者氏から戴いたコメントには反応が多く、直接の投稿、メイルを沢山戴いている。
一言で言えば、この方は文字通りの初心者で、ものを作った経験が乏しく、観察も未熟と推察する。

 戴いたコメントの中で、工学のエキスパートであるT氏からの文章がすべてを言い表しているように思うので、紹介しよう。コメントとしては量が多いので、許可を得て本文に掲載する。下線は筆者が追加した。

初心者氏のおっしゃる「たわまないべニア路盤」が実物よりずっと強固であることはその通りだと思います。
また、車両も脱線や衝突をすれば簡単に壊れる実車に比べて模型は非常に丈夫です。
そういった意味では、模型は実物以上に「しっかり」「堅く」できていますので、実物が採用している
構造部品を壊さないための」イコライザーは小型模型には必要ないでしょう。
一方で、今回話題の模型独特の等角逆捻り機構は、むしろ模型の路盤や車両の「丈夫さ」「堅さ」を和らげて、模型に実物に近い振る舞いを模型に与える機構だと理解しています。
実物は「フニャフニャ」で重いので多少の線路誤差にも車体自体の変形で追従しますし、線路も台車が通過のたびに目で見えるほど沈みます。 

模型の場合は、実物より「ガチガチ」に堅い上に軽いので、線路の段差やねじれが線路の誤差のまま、モロに車体が躍ってしまいます。
つまりピョンピョン、カタカタと動いてしまい、いかにも「模型チック」に見えてしまいます。
しかも、線路の誤差はコン氏がおっしゃるように、実物換算で数センチ近くに相当するため、模型はより一層ピョンピョン、カタカタ跳ねます。(しかも、車体が堅いので、段差に載っていない側の(反対側の)車輪を引っ張り上げてしまい、車輪が浮くこともしばしばです)
ここで、等角逆捻り機構を搭載しますと、線路誤差に対して車体は機構によって、前後の台車で「無理やり」半分づつ分けて追従させるように振舞います。
これによる車両の振舞いは、実物の様な「フニャフニャ」までには達しないものの、段差通過時は、一つ目の台車が通過するときに、まず
車体が段差の半分傾き、次の台車が通過するとまた半分傾くため擬似的に車体がフニャフニャな「様に」見せることができるのだと思います。 
ちょうど、アニメーションの駒数を増やすイメージではないでしょうか?
また、この追従構造はコンさんのおっしゃる通り集電面で有利です。普通の三点支持と比べて等角逆捻りは変位と支持質量が半分づつなので一層追従性も良いはずです。
 
大きな段差を一輪車で越えるより、半分ずつの2段を自転車で越える方がサドルの動きは小さいですよね。 
集電が良くなれば模型はスムースに走るので一層実物らしい走りに近づきます。 
従って、これらの機構は模型に「実物に似せた」振舞いを「見かけ上」与えるものではないでしょうか?


 全くその通りである。走る模型は実物を縮小したものではないのである。実物のみの体験、観察からはよく走る模型は生まれない。だからこそ、Low-D車輪をはじめとする、いくつかの工夫があるのだ。



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2016年11月15日

メカニズム

 しばらく留守をしていた。東京で所属クラブの会合があったのだ。今回は久しぶりに全員が顔を合わせたので、一人ずつ自己紹介をした。
 筆者は、
「模型の外観は適当にできていれば十分であるが、メカニズムには最高を求めることにしている。いかにして低電流でたくさん牽くか、貨車や客車はいかにして摩擦を減らして遠くまで転がるかしか興味がない。」 
と言うと、みなさんはどっと沸いた。

 家に帰ってみると、少々手に余るコメントが来ていて、無視しようかとも思ったが、載せておいた。反論も来ているが、それもそのまま載せた。

 最近、妙なコメントが時々送られてくる。お前のブログに、俺の自己主張を載せろ、と言わんばかりのものがある。 
 お断りしておくが、コメントはあくまでもコメントであって、この場を借りて自分の主義主張を発表する場所ではない。それはご自分でブログ等を立ち上げて発表されればよい。メイルアドレスが書いてある場合は、それをお伝えして消去している。

 今回のコメント主は、拙ブログをほとんど読んでいらっしゃらないことがわかる。筆者は考えられるメカニズムをすべて作っている。それを祖父江氏がさらに改良したものも持っている。傘歯車駆動の機関車は3輌ある。人にお勧めできるものではない。
 価格の面でも問題があるが、一番大きな問題は音である。祖父江氏の腕をもってしても、歯車の音は無くならない。蒸気機関車がヒューと歯車音を出して走るのは問題だ。当時は若かったので、耳が敏感であったこともあるが、気になった。
 芦屋の御大の機関車はすべてこの音がする。彼はそれがお好きなようだったが、筆者は容認できない。
 また、摩擦係数と摩擦とは異なる次元の話であり、コメントの趣旨はよくわからない。

 最近皆さんもお気付きのようだが、低回転高トルクモータを用いて、低歯車比にすると静かで高効率の機関車ができる。筆者の「3条ウォーム+1段減速」は8:1程度であるが、新モータを用いて、その半分程度にすることを目標にしている。

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2016年11月03日

緩衝とは

 緩衝装置にバネを用いてはいけないのか?という質問を戴いている。

 バネを用いると衝撃は受け止めるが、そのあとが問題である。蓄積されたエネルギィの行き場所がないから、すぐに放り出すことになる。即ち、貨車は同じ速度で跳ね返ってくる。これでは意味がない。
 ぶつかった時のエネルギィのかなりの部分を熱に変える必要がある。この発泡ポリ塩化ビニルは、その点とても優秀だ。もともとは、工場で高価なジグとか測定器を置く棚の中敷き用のものらしい。緑の部分は中身が詰まっているが、黒っぽい部分は多孔質である。

 曲げると弾力は多少感じるが、徐々に変形していく。変形した後はそのままの形を保つが、力を取り去るとじわじわと元に戻っていく。 典型的なエラストマの特性を持つ。

 63 ft貨車の20輌編成(約10 kg)を時速30 km相当でぶつけると、速度はその1/5くらいで戻ってくる。脱線もしない。この件については円筒状にする材料の幅をいくつか試作して決めた。初めは、中にエアキャップ(いわゆるプチプチ)を入れてみたりしたが、弾力が強くなりすぎるのでやめた。

 ラジコン自動車用のショックアブソーバも試したが、長さを短くできないのでやめた。紹介した方法が、コストの点でも性能の点でもベストである。 材料は大量に余っているので、送料だけご負担戴ければ、必要な方には差し上げる。
 この材料を隠しヤードの地下部分に全面的に貼って、消音するつもりだったが、ゴム板が見つかったのでそれを使った。 

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2016年03月02日

すっぱい葡萄

 コメントを戴いた中に、非常に興味深い一文があった。
「酸っぱい葡萄だと思うことで自分を慰めてしまう」とある。これは言い得て妙だ。

 イソップ童話にある文章を心理学者が引用した文章を取ったものだ。
 高い枝にたわわに実った葡萄を見つけた狐が、飛び上がってみても全く届かない。何度やっても出来ないので、「フン、あんな葡萄はどうせ酸っぱいのさ。僕はいらないよ。」と捨て台詞を残して狐は去るというお話だ。
 
 実はこれとよく似た経験がある。ある会場で3条ウォームの機関車が40輌ほどの貨物列車を軽々と牽いた。「すごいね。」と車輪を褒めてくれる人があり、その車輪をたくさん購入された。
 そうしたら、「あんなものは要らない。無駄だ。あそこまでやる必要はない。」 と言っているのが、どこかから聞こえてきた。

 その人は電車屋さんで、貨物列車には無縁の人だ。Low-D車輪は要らないのかもしれない。でも取り換えれば静かになるのだから、それはそれで価値がある筈なのだが、その意味を見出さないのだろう。ジャーという音を出して電車は走っていた。 

 趣味の世界では、人それぞれが持っている目標がある。筆者は、「走行性能を極限まで上げたい。本物のように走る模型が欲しい。」それだけである。何をすべきかを高校生の時から考えている。何十年か掛けて、一応やるべきことはすべてやってみた。できるはずだけどやらない、というのは嫌いだ。全部やってみた。
 その経験の中で、これはやっても無駄、金と暇を掛ける価値がない。しかしこの方法は何が何でもやるべきだ、という取捨選択ができて現在につながっている。 

 関節式蒸気機関車にはモータを2台取付けるというのは、不可欠なことだ。1台では、運転の面白みに欠ける。しかし、「そんなもったいないことをするとは・・・」というご意見もある。 

 車輪のフィレットを大きくするというのも不可欠なことである。これをやらないとたくさん牽けない。これは実験で確かめられている。しかし専門家の人は、ありとあらゆるチャンスをとらえて、理論的に間違っていると決め付けている。
 その人は本当に専門家なのだろうか。120輌の本物の貨物列車を急曲線で走らせている専門家なのだろうか。もしそうであるならご意見を傾聴したいが、とてもそうとは思えない。これも葡萄の話を思い出してしまう。 


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2016年02月05日

続 条件設定

 起こりうることを想定して設計するのは当然だが、起こりえないことを考えて、これではだめだというのは、いわゆる杞憂である。

 以前、等角逆捻り機構で角棒の外を角パイプで滑らせる機構を試作し、非常にうまくいったと考えている。ところが、「スライダー(滑り子)はダメだ。あれでは磨り減る。」とあるウェブサイトに書いてあるのを見て、噴き出してしまった。

 確かに、重負荷で一日中動く機械とか、埃の多い環境で作動させれば磨り減るだろうし、その更新には費用が掛かるだろう。この等角逆捻り機構は一月に数回動かして説明するだけだ。しかも荷重はほとんど掛かっていない。今回建設中のレイアウトの片隅に、例のぐにゃぐにゃ線路を1 m ほど敷いてみようと思っている。その程度の話だ。そんなに磨り減るわけがない。おそらく孫の代まで確実に作動するだろう。

 教科書に書いてあることを額面通り受け取る人がいる。しかし物事には軽重がある。考える必要もないほど小さなこともあるし、必ず考えて対処せねばならない重大なこともある。その区別を付けられることが、設計の巧拙を生み出す。

 それよりも摺動面と言えば、客車の台車のセンタベアラ、サイドベアラのほうが磨り減るだろう。プルマンは重いので切実な問題だ。そのことに言及した例を見たことがない。筆者はモリブデングリスを塗ってある。一部の極端に重いテンダにはスラストベアリングが入れてある。また、件の等角逆捻り機構にはグラファイト粉を潤滑材として擦り付けてある。
  
 当鉄道では起こりうる軽衝突、脱線に対して様々な手法で備えがしてある。 そう簡単には破損しないはずだ。当然それらは想定の範囲内であるからだ。

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2016年01月10日

Henry Bultmann のこと

 Lou の訃報はここに載っていると友人が教えてくれた。 4ページである。それほど詳しくは書いてないが、ご興味のある方は読まれると良いだろう。
 その次のページには驚いた。ヘンリィ・ボルトマンの死去を伝える記事である。発音はバルトマンではなくボルトマンに近い。筆者自身も綴りがBoltmannだと思っていたくらいだ。

 彼は機械工学に強いことになっていた。誰もが同じことを言う。彼の設計したギヤボックスは最高だという。確かに悪くないが、良いとは言えない。筆者が一番気になったのは軸の太さである。高速回転する部分が太いと損失が大きい。グリスも硬い。もう少し粘性の少ない油を使うべきだ。
 いろいろと論議したが、彼は教条主義者で教科書に書いてあることを守ろうとする。実物はそれでよいが、模型ではまずいと思えることを、とうとうとまくし立てる。見かけ上、弁が立つから、信ずる人もいるのだろう。

 ワシントンDCで会った時に、こちらのSP5000を見せて、動輪上重量、牽引力、電流その他を友人のレイアウトを借りて測定した。彼の機関車は重いから牽引力はあるが、効率はこちらのほうが断然よかった。「押して動く」ということへの無関心は彼だけではないが、全く考慮しようとしない。そういう機関車は「効率が良い結果として逆駆動できるということを認識すべきだ。」と言ったら、「模型には効率なんて関係ない。」と言い張る。
「じゃ、電流が多いと君は幸せか?」と聞くと、「5 Ampくらいどうってことない。」と言うのだ。
「それではその状態で1時間走らせたらどうなる?」
「そんなに走らせる奴はいない。」
 何か矛盾していることは本人もわかっていたと思う。

 そこで、例の84輌牽く動画を見せると息を呑む。なんと言うかと思ったら、
「そんなにたくさん牽かせる人は居ない。貨車の車輪まで全部替えるというのは行き過ぎだ。」と言う。

 あれから何年経つのだろう。その後の様子が知りたいと思っている矢先にこの訃報だ。博物館のレイアウトを100輌以上の貨車を牽いて、静々と走る機関車を見せてやりたかった。

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2015年11月03日

air damper の設計

 ダンパは、往きはよいよい、還りはこわい、でなければならない。直径20mm程度のエア・ダンパを試しに作ってみよう。押した時には、すっと押し込まれて、引張ってもなかなか還ってこないようにする。

air damper ピストンに弁を付けるのは面倒なので、シリンダ・ヘッドにリード・ヴァルヴを付ける。リードはリン青銅の薄板だ。長くすると撓みやすく、押せば空気は簡単に漏れていく。穴をたくさん開けるか、あるいは大きな穴にすると、空気が抜けやすい。
 戻るときはぴたりと吸い付けられて、シリンダとピストンの漏れくらいしか空気は入って行かない。少量の油を塗ると、漏れは極めて少なくなり、戻るのにかなりの時間が掛かるだろう。最も押し込まれたときに残る空気が少ないと、還りに最初からダンピングが効く。空気がたくさん残っていると最初は、その空気が薄められるまである程度のストロークでは効き目が少ない。そのあたりはバネの強さとの兼ね合いがあり、調整が難しそうだ。

 以前たくさん作ったのは、ハイドラ・クッションの貨車の緩衝器を実際に作動させるためだ。その時は辷り込みの角パイプを使った。ピストンの代わりに細い角パイプを差込んだのだ。30年以上無事故である。現在は塗装更新中で、お見せするには無残な状態だ。
 押したときはリード・ヴァルヴで空気が抜けるのも、その時確かめた。今回考えているのは断面積が6倍くらいだから、効果が大きいはずだ。
 角パイプを使ったのは、ピストンを使うと漏れが多そうだったからだ。角パイプは重なる部分の長さが大きく、空気が漏れにくいのだ。大きな径のピストンを使うと容積が大きいから、漏れを補って余りある。言い換えると小さい物には角パイプが適するということだ。

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2015年07月24日

frog numbers

frog numbers フログの番手について考えよう。
 以前にも述べたが、フログの番手についての正しい解説は模型雑誌中、非常に少ない
 正しいことを書いた号もあったようだが、ほとんどは怪しい方法(いわゆる簡易式)を紹介している。
 
 リンクされた2つの記事を全てお読みになれば、言わんとすることはお分かり戴けるはずだが、記事が長くて難解だというご意見も頂戴している 。気の短い方は【追記8】の部分だけ読まれると良い。それをさらに要約するとと、次の三つである。

a) 簡易式が紹介されることが多かったが、これは誤り。
b) 正しくは正規式で計算すべき。
c) ただし、シザーズ・クロッシングやY分岐を正しく構成するためには、#8〜#14までは正規式で計算するが、それより小さな/大きな番手は、正規式の値を倍/半分にする。


 稲葉清高氏がすべての番手を正規式で計算するわけではないと指摘されたことは、分岐を単独でなく、組合せ使用する時の矛盾を解決する方便である。正規式でできた分岐のみを組合わせると、できた線形が平行にはならないのだ。つまり、実物の本線用の分岐には#4〜#7の片分岐などないという前提だ。こうなると、番手で指定するよりも、角度で指定するほうが面倒がなくなる。欧州ではそうしているという話もある。

 稲葉氏の指摘は、極めてぼんやりとは認知していたような気がしないでもない。しかしその模型を作ったことがなかったので、詳細は詰めてなかった。シザーズ・クロッシングや今回初めて作るY分岐を設計すれば気が付いたのだろう。本物の鉄道会社あるいは製鋼所に勤務して、分岐の設計が仕事であれば、当然気が付く。
 50年前のTMSの新製品紹介で、シノハラの♯4Y分岐の紹介があり、その簡単な解説を読んだときは非常にすんなりと理解した。それはその筈で、当時は筆者の頭の中は簡易式しかなかったし、その記事の解説も簡易式に基づいた(としか考えらえない)説明になっていたからだ。
「左右それぞれ8番並の曲がり方をする。直線コースのない8番ポイントともいえるわけ」と書いている。 

frog number この♯4の角度は♯8の角度の2倍にせざるを得ない。角度を分度器で測るわけではないので、三角形の寸法を計算して角度を出す。微妙な角度差だが、作図するとはっきり差が出る。

Hi-cube レイアウトの建設現場で、また少し考えている。うまくいけば10線にできそうである。そうすれば、有効長が多少短くても余裕が生まれそうだ。友人の意見は、「建築限界は、まだ高すぎる。」である。
「大物車が来なければよい。」と言うのだ。そうすれば、かなり低くできる。「Hi-Cubeの貨車が入れば文句なし」、ということであれば、かなり助かる。写真はハイキューブをくぐらせたところである。

 本線とは異なり、木製の足で支えた路盤であって、ネジ式のアジャスタをつけているので、勾配の変更はかなり容易だ。 

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2015年06月29日

続々 easement

 たくさんのメイルやコメントを戴いている。私信が多いので掲載はできないが、緩和曲線の意味を改めて考えたという趣旨のご意見が多い。 

 短い貨車たとえばore carばかりの編成だと、緩和曲線がなくてもそれほど不自然な曲がり方はしていないように見える。ある程度長い客車列車を緩和なしの線路に通すと、クキクキと曲がって変である。
 そこに大半径の円曲線を挟んでやると、かなり緩和されて、気持ちよく走る。その半径の大きさは車体長(厳密には少し違うのだが)に関係があることがわかる。
 吉岡氏の研究によると、基準半径の1.5倍の半径を持つ線路を挟むだけで、ほとんどの場合有効だそうだ。
 このレイアウトに敷く線路は、曲線が円周の15度分に相当する。すなわち24本組だ。緩和部分は7.5度分である。ちょうど客車の長さに近い。
 15度÷7.5度=2である。緩和を2本挟んで、基準円の一本分を外せば、小判型の線路の半分ができる。
 市販の線路にこのような方法のものがあると良いのだが、見たことはない。

 建設中のレイアウトの本線には緩和もカントもついているが、側線にはつけていない。速度が遅いからだ。縦曲線は直線部分につけた。

leveling by laser 橋以外の路盤が完成した。高さのチェックをしてシムを挟んだ。Dr.Yに手伝いに来て戴いたので、手早く済んだ。レーザの光を物差しに当てて見ているところの写真である。


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2015年06月25日

easement

drawing an easement Model Railroaderの2010年6月号にも栞が挟まっていた。例の緩和曲線を簡便な方法で描く方法が示されている。当時、これも早速やってみた。
 同時に数理工学という恐ろしく難しそうな分野の先生をしている友人にも、コピィを送って評価してもらった。彼はもともと建築科の出身で、数学を使って様々な自然現象を解明するのが仕事である。

 会って解説してもらったが、がっくりきた。
一言で言えばファンタジー(おとぎ話)だね。本人は正確だと思っているし、理屈が通っているはずだと確信しているけど、正確とは言い難い。向きが反対とかそういうことは置いといてもおかしい。 」

 書いてくれた数式は見かけ上、三次式だ。
「しかし、この式の中の定数が曲者だ。本当は定数ではないのだよ。しかも、それが定数だとしても、変位が大きいと外れてくる。十分に正しいと言えるのは、変位が目に見えない程度の範囲だ。この図では明らかに曲がっているだろう。こうなると無茶苦茶だ。」

 与えてくれた式は、有名な式なのだそうだ。もともと梁のような構築物の撓みを近似する式で、このようなバネ状のものを想定しているのではない、と言う。

「ところで、君はこれで何をしたいわけ?」と聞かれた。
「模型の鉄道の直線から曲線への移行部分に使いたい。」と言ったら、
「なーんだ、そんなもの、コンピュータで簡単に描けるだろう。外注すれば、レーザで三次式でも正弦曲線でも、たとえクロソイド曲線でも、すぐ定規を切り出してもらえるさ。くだらないことを考えるなよ。時間の無駄だよ。」と蹴飛ばされてしまった。

 実は、この件には伏線がある。 

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2015年03月03日

天秤棒の件

 米国にいる間に、メイルをいくつか戴いた。中身は全て同じで、最近号のTMSの記事で、小林義和氏が執筆された記事について、意見を求めるものであった。
 どれも記事の完全なコピィを送ってくれたわけではなく、不鮮明な画像しか送ってくれなかったが、単なるバネ装置の範囲から出ないことはすぐわかった。
 帰国後、時差ボケがひどく、昼間は頭痛がしていたが、書店に行った。最近、TMSは近くの書店にはなく、街の本屋まで出かけて確認した。

Athearn truck mouting 思った通り、単なるバネ装置でイコライズはしていない。これは形は異なるが、1940年ごろからアメリカで売っているAthearnのOゲージ貨車の台車マウントと同じである。
 二つの台車が、床板の上に貼りつけられた板金製の台枠にはめ込まれた雌ネジに取り付けられる時、径のやや大きなコイルばねを介してネジで留められる。雌ネジの台車に当たるところは狭く、台車はかなり自由に傾く。

 バネは台車の傾きに抵抗する。レイル上の突起に乗り上げると、片方の台車枠は持ち上げられ、車体に対して捻りを伝える。しかし、もうひとつの台車は平面レイルの上にあるから、それは車体を元の位置に保とうとする。その二つの力のつり合いによって、平均値である捻り角の半分ほどのところで車体が落ち着くはずだ。ただし、車体はバネで支えられているので、ふらつく。

 Oゲージの場合、このふらつきがなかなか良く、ポイントを渡るときは実感的である。もちろんバネの固さ、ネジの締め付け具合は経験上、一番良いところを選んでいる。ただキットを組んだだけでは、そのような動きはしない。バネ座部分の多少の摩擦がダンピングに効果を発揮している。3点支持ではないので、どちらの方向に走っても具合が悪いことはないと云うところが良い。これはバネで制御された2点支持である。

 車輪が突起に乗り上げると、その反対側の車輪の輪重は低下する。ちょうど自動車の一輪が突起を踏んだ時と同じである。対角線上の一輪に対する荷重が増え、その他の荷重は低下する。自動車の場合はスタビライザ・バァが付けられているので、反対側に多少は荷重を増やすように働く。しかし等荷重にはならない。自動車にはショック・アブソーバと云うダンパが付いているので、揺れも収まり、乗り心地の改善に貢献する。

 鉄道模型にダンパが付いているのを見たことがない。積層した板バネはダンパだが、それを正しく働かせている例を見ない。たいていは上の1,2枚だけを利用している。筆者はハイドラクッションの模型を作った時に自作のエアダンパを付けた。実にうまく作動して効果的であった。オイルダンパは20年経つと油が漏れてきてダメになった。

 この小林氏の作例もダンパが付いていると、かなり走りが改善されるであろう。ダンパは空圧、油圧のみならず、摩擦方式もあるので、簡単な方法で大きな効果が得られるであろうと思う。

 今野氏のブログで議論が白熱し、非常に良い結果が出た。このようなインターネットを手段とした議論は、おそらく日本の模型史上最初のことではないかとも思う。小林氏は潔く非を認められ、訂正をTMSに対して申し出られたのである。これは大人の対応であって、とても素晴らしいことである。
 

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2015年01月11日

熔接のプロフェッショナル

 友人のU君は、いわゆる熔接屋であって、その道40年以上のプロフェッショナルである。腕は一流で、圧力容器でも船でも何でもできる。
 筆者はごく適当な熔接作業はするが、精度の要る仕事は彼に頼む。直角の部品とか、互換性が必要なものは素人が手を出せる範囲にはない。
 
 今回のレイアウト建設では、角パイプ製の支柱などは、全て彼に作ってもらった。仕事が忙しいのに、無理を言って急いで作らせたりして、申し訳ないことであった。

supportsupport 2 複々線の勾配の支持は、角柱とこの支持台で持たせる。水平で、ある角度振った形態である。レーザで水平を見て角度を決め、フライスで切り出したものを熔接してもらった。
 組み立ての時、人間一人が乗ってもよいようにする必要があるので、鉄筋で支えを入れた。また、ネジを締めるための孔もあけた。これを丈夫な棚に取り付ける。
 段差があって作りにくいが、スペーサを作ってお願いしておいた。出来上がりは御覧の通りで、まさにばっちりとはめ込まれた。これを自分で作ったら、いったい何回作り直しをすることになるのだろうと思う。

 1.5%の勾配を作っているが、ループ線(helix)であるから、平面を組み合わせても正しい均一な勾配はできない。シムを作って骨と合板の間に押し込まねばならない。また数学の専門家に計算してもらう必要が出てきた。
 合板が薄いと、骨の平面が出てしまうので、24 mmの合板を使って剛性を高め、シムで疑似点接触にする必要がある。点と点の間は合板の撓みで近似する。
 シム(shim)とは高さ調整などをする薄い板のことである。厚いとdistance pieceと云う。大昔は楔(くさび)の意味もあったはずだが、現在では二面が平行なものを指す。


 勾配の起点、終点では、縦曲線が3次曲線に近くなるように、これまた計算中である。厳密な計算ではなく、近似値を用いる。厚い合板を少し撓ませてシムで固定すると、かなりいい数字が出る。

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2014年02月16日

衝突

 もう30年以上前のことである。確か戦艦だったと思うが、模型を公園の池で走らせていた。Uターンさせて戻ってきたのだが、うっかり間違えてコンクリートの壁に正面衝突させてしまった。ゴンという鈍い音がしたが、船ははね返ってさしたる損傷はなかった。
 それを見ていた老人二人が、声を立てて笑った。
「やっぱりオモチャだな、はね返りおった。」 
それを聞いて、筆者は何が面白いのか分からなかった。

「はね返ってはいけないのですか。」
「そりゃだめだ。お前は船がぶつかるところを見たことがあるか。」
「いえ、ありませんが。」
「俺たちは海軍に居た。何回も船がぶつかるところを見たぞ。」
「えっ、それはすごいですね。どうなるんですか?」
「駆逐艦が岸壁にぶつかった。」
「岸壁が壊れましたか?」
「バカなことを言っちゃいかん。」
「船が壊れる。こうやってな、船がぶつかると……」
と身振り手振りで説明してくれた。

岸壁に当たったところがめり込むのだ。甲板はかなり原型をとどめたまま、ずぶずぶとめり込んでいくのだそうだ。なかなか止まらないものなのだと言う。
「船は柔らかいぞ。お前もなー、そういう柔らかい船を作って走らせてみよ。それでもって、岸壁にぶつかってぐちゃぐちゃに潰れたら、本物と同じだ!」
老人二人は、また大きな声で笑った。

 東横線元住吉で、電車の衝突事故があった。前頭部はぐちゃぐちゃだ。また、その他の車輌も床は盛り上がり、天井は落ち、長さが縮んでいる。
 やはり本物は柔らかい。その写真を見て、老人たちの会話を、ふと思い出した。


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2014年01月18日

ピヴォット軸受

 筆者の車輌での測定値を下に示す。

 17.5mm(33 inch)車輪を付けたデルリン台車装備の4軸貨車(質量358 g)の、勾配での起動角θのtangentは0.0030である。
 また、動いている貨車が止まらない最小角は0.0023である。1 m行って2.3 mm だから、これはほとんど目に見えない角度である。すなわち、水準器代わりになるほどである。
 筆者の貨車は、迂闊には机の上には置けない。あっという間に滑り落ちてしまう。この値はピヴォット軸の場合である。HOなら、単純に考えると輪軸のテコ比で2倍となるから、0.006ほどを期待できることになる。

 先回のコメントで戴いたデータは、かなり大きな値である。どのような潤滑方法を取っておられるかは分からないが、ピヴォット軸受のような接触圧が大きい物には、極圧型の潤滑剤が不可欠である。液体だけの潤滑油では、油膜が切れるので、意味がない。最近はモリブデン粒子入りのグリスがとても安くなったので、それをホンのちょっと入れるだけで、摩擦が激減するはずだ。この「ホンのちょっと」というのは、尖端に0.5 mm径ぐらい付いていればよいのであって、多すぎると攪拌抵抗が増える。

 19 mm(36 inch)の車輪が付いた6軸プルマン客車は、tangentが0.0041である。何が違うかというと、集電ブラシが付いているからである。集電ブラシは、軸の細いところに接触していて、注油してある。
 軸受はデルリンでなくダイキャストのままである。それも大きなファクタかもしれない。動摩擦では0.0033である。

 牽引力7 N(約700 g重)の機関車(動輪上重量が約3 kg)で、平坦な直線上なら、200 kg以上の貨車を牽ける計算だ。すなわち500輌以上の貨物列車だ。
 3%勾配であるなら、20 kg すなわち50輌ほど引っ張り上げることが出来る。ただし、これは直線上の話であって、曲線上ではフランジがこすれたり、左右の車輪の行路差があるので、この半分ほどになることが多い。

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2013年09月27日

続々々々々々々 Jim を訪ねて

 ジムのレイアウトは美しい。しかし、車輌は良く走るわけではない。驚いたことに、貨車を手で押しても 30 cm も走らない。油が差してあるかどうかも分からない。

 摩擦について聞いて見ると、「良く走らない方が良い。」という。留置線に置いてある貨車が動いてはいけないからだと言う。要するに、貨車は全てブレーキが掛かっている状態である、と言っても間違いではないということだ。連結するとき、相手が止まっていないと連結できないから、「お前の車輪のような滑らかに動くものでは具合が悪い。」と言われたことは過去に何度もある。特にカブースは動きが良くない方が良いらしい。そう言えば、KadeeのNゲージのカブースは軸受にコイルバネが入っていて、軽くブレーキを掛けている。そうしないとDUがうまくできない、という話は知っている。DUとはDelayed Uncoupling である。

 実物では、側線は本線よりも低く作ってあるから、流れ出すことは無い。このレイアウトもそうすればよいのだが、それは無かった。

 ジムはビジネスマンである。何を企画すれば売れるかということには非常に敏感だ。proto48は、客の様々の不満を集めて、それを新しい方向に導くビジネスである。それはなかなかたいしたもので、そこそこに客も付いている。
 しかし、アメリカの鉄道ファンは、大型機により長大編成を牽くことが好きな人が多い。proto48で小型機ばかりの鉄道を楽しむには良いだろう。前にも書いたが、工学的な素養がある人が何人か参入して、ベイシックな部分を検討すれば、発展の余地はいくらでもある。しかし、今のままでは心もとない。

 



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2013年09月07日

機構学

 機構学というのは工学の一分野で、英語ではMechanismという。
 鉄道模型とは何か、という問いに対する答で、筆者が一番高く評価しているのは、「鉄道模型から、色々なものを外して最後に残る本質はメカニズムである。」というものだ。若いときはそれほどでもなかったが、歳をとると、その意味が良く分かるようになった。
 実物を理解し、模型のサイズまで小さくすると何が起こるかも理解できなければならない。実物の動きをまねできる模型の構造に到達するのはかなりの修練が必要である。それが出来るとその走りは素晴らしい。

 先日のJAMでのクリニック(講演)の参加者から、いくつかメイルを戴いている。その中で、筆者の気持ちを代弁してくださったご意見を紹介する。

 

 今回の「等角逆捻り機構」にとどまらず、機構学的要素を模型造りに展開されているdda40xさんの取り組みには、大いに共感を覚えます。

 

 動くことを重要な要素としている、鉄道模型においては動かすための構造(機構)は重要です。ただしそれは、サイズの違いで実物と同じ構造がとれないが故に、模型独自のものでありましょう。車体全体を使った「等角逆捻り機構」も「三条ウォームによる可逆伝動」も然りだと思います。これらの機構を考案・実現することが模型造りを「科学」に昇華させる手段であると思います。かつてそう認められていたように。

 

 先輩諸氏が鉄道模型に取り組まれた時代は、動力や伝動装置を一から造り上げねばならなかったと思います。そんな中でも凝った大作が数多く生み出されてきました。翻って現状を見てみますと、模型雑誌の記事には、市販量産品に対してチョッと手を加えて見栄えを良くした程度のモノが取り上げられ、それとて「科学」の対極にある「アート」の域には程遠い、なんだか中途半端なモノが溢れております。


 伊藤 剛氏をはじめとする先輩諸氏のアイデアが現代の模型の根本にある。それらはまさにメカニズムの工夫なのである。最近模型雑誌を読まなくなったのは、その種のアイデアを紹介する記事がほとんどないからである。姿型のみに興味がある人が増えている。走らせてみると素晴らしいとは言い難い。
 最近は youtube などで動画が見られるが、素晴らしい走りを見せるものには、なかなかお目に掛からない。

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2013年04月04日

続 Chicago O scale Meet 2013

Ed もう一人、どうしても見せておかねばならない人がいた。 この男Ed は、身長2mの大男である。電力会社の技師長で、このような技術面ではかなりうるさい人である。二年前の原発事故を一緒にテレビを見ていた。彼は次はこうなる、その次は…と予測して全てそれが当たったので驚いた。水素爆発を正確に予言した。理屈を言うので、それを筆者が補足して他の友人に伝えたところ、完璧に予測が当たった。
 彼自身は原子力にはタッチしていないのだが、詳しく知っているのには驚いた。アメリカの技術力の確かさを感じた。日本ではいわゆる専門家が居るが、彼らはその周辺領域には疎い場合が多い。アメリカの技術集団のトップに立つ人はジェネラリストである。その実例を見て、大したものだと改めて感心した。

 さて、彼の関心は一般の人とは別のところにあった。
「これは素晴らしい発想だ。このような試みをどうして思いついたのか。どのような必要性があったのか。」

「それには二つある。一つは昔住んでいたソルトレーク市の倉庫街を縫うように走る industrial line の保線の悪い線路を、ぐわんぐわんと車体を揺らしながら走る様を再現したいこと、それを実現するには集電を良くすることだ。コンプライアンス(線路の不整に追随すること)を良くすると、集電が飛躍的に良くなるのだ。」
「それは興味深い動機だ。集電を良くして走行性能の向上を狙って開発したのだね。面白い。君の車輪の形状の話も、走行性能の向上を考えている。三条ウォーム歯車も性能向上を考えて開発し、それが押して動くという副産物を与えたのだよね。実に面白い。君は常に走行性能の向上を考えている。そういう模型人は少ない。」

 その通りなのだが、彼のような技術者がそういう分析をするのがとても面白く感じた。彼は路面電車模型に関しては、とても詳しい人である。台車の構造については極めてうるさい。
 路面電車の線路は、一般の専用線に比べて、かなりの不整がある。それを乗り越えて脱線せずに走るための工夫は色々あるようだ。台車自身の剛性を減らして撓むようにすることと、荷重を掛ける位置を工夫して追随性を向上させる工夫を、とうとうと聞かせる。
「でも模型は堅いからね。本物のようには行かないよ。君の工夫は評価に値する。面白いものを見せてくれてありがとう。」と言った。

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2010年11月20日

Jordan Spreader の構造

 Oswald Jordanという人はカナダで鉄道を保守する仕事をしていたらしい。おもに砂利を均したりする目的でこの車種の原型を作ったとのことである。だからSpreader(押し広げるもの)という名前が付いた。
 それから100年、もっぱら除雪用に進化している。各部の羽根は油圧で動く。これらを空気圧で直接駆動していたら、雪の山にぶつかった瞬間に羽根が閉じてしまうだろう。大きなタンクに高圧空気を貯め、それで油圧装置を作動させていたものと思われる。羽根を動かす時以外は油圧回路を遮断しておけば、大きな負荷に耐えられる。この点、油圧は安心である。

 話は変わるが、以前近くの工場で空気タンクの圧力試験中に、そのタンクが爆発し大騒動になったことがある。そんな馬鹿なことをしていたとは知らなかった。圧力試験は水を入れて行うものだと教えられていたので、にわかには信じられなかった。高圧の空気は、膨張する時に大きな仕事をするので、ハゼた時に危険である。同じ高圧でも水は圧力でほとんど縮まないので、破裂しても、事故になることはない。容器にひびが入る程度のことである。こういうことは学校で習わないのだろうか。

 ジョーダン・スプレッダの前頭部のスキの部分は15センチくらい上下する。先回紹介した動画の中で、踏切で持ち上げている様子が分かる。普通の線路では最大限下げて、レイルの間の雪まで取り除いているが、踏切ではそうはいかない。踏切上に残った雪は結構あるので、押している機関車の雪かきがそれを跳ね飛ばす様子も写っている。

 豪快な雪かきの動画があるのでご紹介する。日本のラッセル車は左右にかき分けるのを旨としているようだが、アメリカのラッセル車は、雪を上に持ち上げて撒き散らすように出来ているようだ。
 吹き溜まりに突っ込んで抜き差しならなくなってしまったり、挙句の果てに脱線させてしまったりした動画がいくつかある。この種のラッセル車は蒸気機関車のテンダに水を満載した物を使うことが多い。

 ヤードの雪かきにはジェットエンジンを搭載した車で吹き飛ばすものがある。以前この車輌の写真を撮ったのだがそれが行方不明で、誰にも信用してもらえなかったが、これをご覧になれば信じて戴けるだろう。アメリカならではの発想である。 

追記 
 栗生氏から教えて戴いたジョーダンの特許を詳しく見ましたところ、初期のタイプは空圧式であって、雪の圧力で動かぬよう、ラッチが掛かるように出来ていました。すなわち、雪の圧力が掛かっているときは、羽根をさらに拡げることはできません。しかし狭くする方向は可能です。
 羽根を動かす時は、ペダルを踏むとラッチを外す別の空圧シリンダが作動し、それから羽根を動かしていたことが判明しました。 後に油圧式に切り替わりました。

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2006年12月17日

チェーンによる駆動

chain drive arrangement 12月6日のチェーン駆動についてお話しておかねばならないことがある。

 先日藤井直氏にお会いした。「見てますよ。」と声を掛けられたのだ。「互いに素の話は当然のことだけど、ほとんどの模型は間違っているね」と仰る。

 たまたまフライホイールつきの下回りを持っていったので、それをお見せしたところ、痛いところを突かれた。筆者も気になっていた所であった。

 「チェーンで駆動する場合、駆動軸が上にあるときは良いが(左図) 、駆動軸が下にあるとまずい(右図)。」その通りである。工学のエキスパートの薀蓄をお聞かせ戴いた。重力が働くので多少のたるみが生じるとき、間違って隣の歯にひっかることもありうるのだ。

 自動車のエンジンは、大抵、下から上を駆動するようになっている。DOHCヴァルヴのカムシャフトの駆動チェーンがそうだ。だから、その場合の不都合を無くするために、テンショナーが工夫されている。

 自動車のエンジンは一定方向だから良いが、モータは正逆回転する。テンショナなど付けられない。

 仕方がないのでモータ台とフライホイールの台にシムをかませた。いずれチェーンが伸びれば取り替えることになろう。多少緩めのほうが抵抗が少ない。

 藤川昭三氏にも声を掛けていただいた。「ユニヴァーサル・ジョイントの件はほんとに駄目だな、雑誌社の連中が知らんのだな。あれは大きな声で言っとかないとイカンよ。常識なんだけどな。」と仰った。


2006年11月21日

誤解

UP9000 3-cylinder  押して動くギヤを装備した機関車を持ってあちこちに出向くうちに、「そのギヤを売ってくれ」と頼まれることが多くなった。

 ギヤセットとボールベアリングを渡すと喜んで受け取る。しばらく経つと不思議なうわさが流れてくる。「あいつのギヤはインチキだ。全く動かない。」

 親しい友人が様子を知らせてくれた。なんと、コアレスモータを使わないで、ごく普通の有鉄心モータをつけていたのだ。モータそのものの軸をまわしても廻りにくいものを、その数倍の速度で廻せる訳がない。スラストベアリングが入っていなければ、力任せに廻して、たちまちラジアルベアリングがパンクしたであろう。

 大抵の場合は、御本人に連絡すると「なあんだ、そういうことか。」と納得して戴けたが、最後まで御理解を得ることができなかった方たちも複数あった。

 このあたりのいきさつを父に話したところ、「新しい技術を導入すると、そういうことが起こりうる。」と言った。要するに100%そのまま使わない人がいるからだ。
 
 父は昭和10年頃に某電機メーカーの技師になった。その頃は欧米からの新技術の導入が猛烈な勢いでなされていた。100%のコピイを作ればそれは問題なく作動した。ところが日本の技術者が「こうするといい」と、一部の改変をする。すると不都合が生じるのだそうだ。改変する人は自信があり、改良だと思うのだろうが、実はそこに落とし穴が潜んでいることが多かったという。総合的な力が不足している場合は、全てを受け容れるべきであった。

 旧国鉄のC53の開発にもそのような部分があったようだ。3気筒機関車が欧米でかなりの成功を収めていたのに、日本のそれは極端な短命で終わった。最も大切なヴァルヴ・タイミングの遅れを小さくする工夫(剛性のあるテコ)を無くしてしまった(軽め穴を開けたこと)のがその原因という説がある。

 かえって、低開発国においては輸入品に手を加えずに使うので、技術導入が成功することが多いと、友人から聞いた。

2006年10月31日

急カーブを曲がるには

15' gauge truck w/swing bolster どんなに工夫をしても、軌間の10倍程度の半径では、内外のレイルの円周差が10%にも達し、フィレットではまかないきれない。

 軸重が小さい時はさほど大きな問題にはならない。摩擦力は軸重に正比例するからである。しかし重い車両のときはカーブでの抵抗は無視しえない。市電が交差点を曲がるとき、キュンキュンという音を立てている。あれはこの車輪のスリップ音である。標準軌の半径250Mでさえも、スリップ音が聞こえる。この音をフランジがすれる音だと勘違いする人は多い。超望遠レンズで前方から覗いてみても、フランジ側面が当たってはいない。

 しばらく前、近所のボランティア団体で15インチ軌道の豆列車を作ろうということになった。半径4Mを廻る必要がある。いきさつ上、筆者がその走り装置を作る羽目になった。計算してみると、人間が5人も乗っているとその摩擦力はかなり大きく、連結器端での出力500ワット程度の動力車でも、秒速0.5Mくらいが限度であった。要するに摩擦力はすこぶる大きい。並みの動力車では牽けないことが判明したのである。しかも、2台の客車を牽きたいという。

 こうなれば、左右の車輪を別回転にする以外ない。近くのNTNの技術者の長と知り合いになれたので、思い切ってお願いしてみた。ボランティア団体ですのでお金がありませんと。

 するとその方のお計らいで「研究用」としてサンプル供与をして戴いた。自動車の前輪用複列ボールベアリングその他一切を戴いた。簡単な作図の後、旋盤作業に取り掛かった。熔接機も出力7KWのを別の方から戴いた。

 鋼材屋からアングル、チャンネルを買い、チップソウ(鋼材を切る円鋸)で切断、ボール盤で穴を開け、組み立てた。近所の人は鉄工所を開業したと思ったらしい。1ヶ月ほどで2両分が完成した。

 内側揺れ枕付きで、この台車1つが39kgある。早速車体を取り付け試運転した。半径4Mでも走行抵抗は直線とほとんど変わらなかった。

2006年10月30日

スラックとカント

superelevation 鉄道模型を楽しむ人が、実物を縮小した世界を実現したいのは当然である。鉄道の知識が増えてくると、鉄道工学書を読むようになる。するとスラックとかカントという言葉に出会う。実物の線路脇にはスラック値、カント値が表示された標識があり、それを見て納得するようになる。

 模型でもそれをやってみたくなるが、前述したようにスラックはすでにレイル・ゲージとホイール・ゲージの差が大きいのでつける必要はすでにない。もし、さらにスラックをつけると、二軸台車の後ろの車輪はカーブでより内側に引き寄せられる。内外レイルの行路差により、その現象が起こる。すると台車はますます外側に向き、フランジが接触することになる。軸数の多い蒸気機関車の場合も、ほとんどはスラックをつける必要がない。むしろ、機関車の内部の設計で解決できる場合が多い。

 カント(米語ではsuperelevation)は全く意味がない。遠心力を計算してみると、スケールスピードでは重力加速度の数百分の一以下の値となる。要するに外側のレイルを軌間の数百分の一以下しか持ち上げる必要がない。これは誤差範囲以内であろう。

 すなわち模型でのカントは「気分の問題」である。外側が持ち上がっていると気分がよいのである。筆者のレイアウトにも、ごくわずかであるがカントはつけてある。Sカーブの前後で列車がうねる様子が見られて楽しい。ビジターが喜ぶ箇所である。

 あまり調子に乗ってカントを大きくすると、列車が内側に引き倒される可能性がある。上り勾配でスパイラル線であれば、むしろ逆カント(negative superelvation))が望ましい。観客から見えない部分であればぜひ逆カントにすべきである。  

 実物でも超低速運転の鉱山列車ではカントを逆につける例がある。アメリカ東部の炭鉱地帯の上り専用のスパイラル線では、そのような例が多く見られた。乗り心地を考えなければ、そのほうが安全であるのは自明である。

 ちなみに、かの有名なテハチャピ・ループではカントは少ない。

 写真はSカーブを通るピギ−バック列車

2006年10月28日

点接触の必要性

SUS303 RP25 RP25の車輪を実際にいろいろな曲線上で走らせてみて、どこが接触しているのかを望遠レンズで覗いてみた。明らかに、踏面とフランジの変曲点との二箇所で接触していることが分かった。

 上の写真は、使用済みRP25の拡大写真である。筆者のレイアウトで12年間殆ど毎日走らせたもので、硬いステンレスと云えども踏面が多少磨耗している。フランジにご注目あれ。

 明らかに、フィレットよりも先の部分が当たっている。すなわち2点接触である。2点での回転半径は異なるので、速度差が生じる。それは摩擦力として牽引力を減殺する。


SUS303 Low-D 下の写真は筆者の低抵抗(Low-D)車輪である。10年間の走行でも、フランジに全く磨耗の痕が見られない。フィレット部はかなりよく当たっているらしく、光っている。踏面の磨耗は同様である。この写真は車輪の接触が1点であることを裏付けている。これを見れば、フランジの高さはもう少し低くても良いことが分かる。

 一昨日の写真でもお判りのように、Low-D車輪のホイールゲージは、RP25よりわずかに広い。すなわち「ユルミ」を少なくしている。これでもS-4規格のフログを何の問題もなく通過する。

 フランジの厚みもわずかに少ないので、やる気になればフログのフランジウェイを狭くすることもできる。そのとき、ガードレイルのほうのフランジウェイを広くする必要が生じる。

 NMRAのフログの規格はあまりにも古い。古い車両を通す必要から古い規格を温存している。筆者の場合、すべての車輌の車輪を取り替えたので、より狭いフランジウェイのフログを採用できた。持込み者にはあらかじめお断りして、所定の車検を行ってからの入線をお願いしている。もっとも、筆者の友人は、殆どが新開発のLow-D車輪を採用しているので、問題が起こることは無い。
 車検をすると言ったら、「失礼だ」と怒った方が過去に一人いらした。その方は博物館ができるほどの日米欧の雑多なコレクションをお持ちの方だ。過去にご自慢の車輛を持って来たが、車輪が油でべとべとであった。また、ギヤボックスがないものも多かった。油を撒き散らす車輌は入線をお断りしている。牽引力を大きく損ない、レイルも車輌も汚れるからである。
 どちらが失礼なのだろうか。これはマナーの問題である。

2006年10月27日

低抵抗(Low-D)車輪の開発

RP25 目的ははっきりしている。
「実物よりも急な曲線を、摩擦を少なくして通過させる。」
 これを実現したい。




 曲線の抵抗の原因は大きく分けて2つある。
 .侫薀鵐犬外側レイルに接触する。
 内外レイルの半径差に基づく道のりの差のスリップ。

 いずれも、摩擦の少ない硬い車輪を使えば、摩擦というファクタは同じなのでいずれにも効果はある。プラスティックの車輪は安価なので多用されているが決してよい結果はもたらさない。金属車輪までがプラスティック車輪の影響を受けて汚れるという観察も報告されている。
 材質はともかく、軟らかい車輪は転がり抵抗が大きいのは自明である。

ゝ浙弊ではフランジが外側レイルに接触する。RP25ではフランジ角がないので接触しやすい。どうしてこのような形が良いことになったのか、首を傾げざるを得ない。フランジ側面が接触しても抵抗が大きく、牽引力を減殺する。フランジ角を設け、フランジ側面が接触することをなるべく排除するだけで、曲線での抵抗は大いに減少する。
 
 レイルヘッドがフランジに接触する直前には何が起こるだろうか。フィレットへの乗り上げにより、見かけ上の車輪半径の増大が起こり、フランジはレイルから遠ざかる。この半径をどのくらいにするかの見積もりは、かなり手間取った。種々の作図により、レイルヘッドの半径の2倍強が良いことが判明した。

△猟餽海亡悗靴討魯好薀奪で解決すると考えてしまう人は多い。スラックの効果は実物のような半径、運転速度のときその効果を発揮するわけで、実物換算半径数十メートルでは、路面電車のようなものであり、両輪の半径差で解決できない。最大限広げて、車輪が落ち込むまで広げても、要求される道のりの差を満たすことは出来ない。すなわちスリップせざるを得ない。そのスリップを少なくするのがフィレットである。

 フィレットに乗り上げれば、車輪半径は十分増大するからである。
 
 RP25ではもうすでに、スラックを輪軸に内包していると考えられる。というのは軌間に対しての輪軸のガタ(日本の鉄道業界ではユルミと言うらしい)がかなり大きいからである。



       写真右はRP25、左は筆者の低抵抗(Low-D)車輪

2006年10月25日

関西合運

関西合同運転会 タイトルの漢字だけ見ると一体何だろうと思う。関西合同鉄道模型運転会の略称である。今年の正式名称は、2006鉄道模型大集合IN OSAKAという。
21、22日両日交野市で開かれた。お招きを戴いているので出かけた。

 この運転会は過去10年以上も続いている和やかな会である。名前は存じ上げなくても、いつもよくお会いする方々が多い。

 その中で、ある方が「いつも拝見してます。とても面白いです。」とおっしゃったので、びっくりした。

 このブログを始めるに当たって連絡も差し上げていないので、正直なところ、腰を抜かしそうになるほど驚いた。

 「他のウェブサイトへの投稿を拝見していましたのですぐ分かりましたよ。いや文体ではなく、内容で分かります。あんな文章を書かれる方は、どう考えてもこの人しかいないと思いました。」とおっしゃった。素晴らしい眼力の持ち主である。

 
 このブログを始めるに当たって、なるべく客観的な記述をすることを心がけた。仕事上の必要性でそのような文章を書くことが多い。趣味の世界にそのような文章を持ち込むのは、少々かみ合わないようにも感じたが、なるべくこの調子を保ちたいと思う。

 関西合運ではHOJCの部屋を訪ねる時間が一番長い。この部屋では全員がDCCを採用し、機構的なことを話し合えるメンバーがそろっておられる。牽引力をストレイン・ゲージで測定したり、ディジタル速度計も用意されたりしている。機関車の機械効率を測定された方もいらっしゃる。

 このように、客観的なデータが目の前に出される雰囲気は、模型界では珍しい。

2006年10月21日

脱ロウ

脱ロウ炉 埋没材に埋め込まれたロウは、加熱して抜き取る。湯口部分を下にして、ロウの融点以上に数時間保つ。すると8割程度のロウが抜き取られる。また、埋没材の水分も蒸発する。この操作は専用の脱ロウ炉中で行う。写真はその内部を示す。

 大規模な鋳造業ではこのロウは全て回収され、次回のロウ型の原料となる。しかし、模型の製作程度では、回収したロウのなかのごみ除去の手間を考えると、使い捨てのほうが楽である。

 ロウは融けて埋没材に滲みこむ。これは燃やしてしまう以外、除去の方法はない。そのときかなりの臭気が発生する。O氏の発案の触媒装置でかなりの臭いは無くなった。しかし、住宅地の中でやるのは難しい。

 折りしも、オウム真理教事件で日本中が大騒ぎしていた時期で、警察に踏み込まれても文句が言えない雰囲気であった。それ以降、鋳造は家の中ではやっていない。

 近い将来、田舎に工房を移転して再開するつもりである。

 埋没材を加熱する時は、ゆっくりと温度を上げていく。これは非常に大切なことで、手動ではうまくいかない。300℃まで2時間掛けて昇温し、2時間保つ。ここでロウを気化させる。そのあと5時間掛けて800℃まで上昇させる。

 この温度調節は手動ではうまくいかない。フィードバック付きコンピュータ制御で行う。この焼成炉もO氏の手作りである。

 いったん加熱が始まったら、冷やしてはならない。冷えると埋没材にひびが入る。すなわち、鋳造作業は開始から鋳造まで連続して作業せざるを得ない。焼成炉に入れてからの8時間に睡眠時間が来るように予定する。

2006年10月19日

ブラスの鋳造は難しい

電気炉 ベリ銅とブラスとは何が違うのだろうか。
 
 ブラスは黄銅と呼ばれ、銅に亜鉛を混ぜたものである。快削性を持たせるには鉛を添加する。亜鉛の代わりにスズを入れると青銅になる。

 青銅と較べるとブラスの実用化はかなり遅い。ブラスが大量に用いられるようになったのはせいぜい300年くらい前からである。イギリスは亜鉛の製錬法を東洋から導入し、大英帝国の発展とともにブラスは世界中に広まった。

 なぜ亜鉛は製錬が難しかったのか。それは沸点が907℃と低いからである。融点は420℃である。還元炉の中で亜鉛が生成するのと沸騰するのは殆ど同時に起こりうるからだ。せっかく還元して生成した亜鉛は、煙とともに消え、煙突の上部で青い火を上げていたのだろう。

 金属が沸騰する様子を見たことがある人は少ないはずだ。亜鉛の兄弟元素の水銀は357℃でポコポコと音を立てて沸騰し、蒸気を冷やすと忽ち液化する。減圧下ではかなり低い温度で沸騰する。

 燃えさかる火の中に亜鉛のたくさんついた釘を入れると亜鉛は気化し、青い炎を上げて燃える。昔、暖炉の中でよくやったものだ。

 融けたブラスの温度が900℃に近くなると明らかに亜鉛が気化し始める。温度を上げないと粘り気が大きいし、上げると亜鉛が気化する。ぎりぎりの温度で鋳造するのだが、泡が入る可能性は否めない。特に真空鋳造では深刻な問題である。また、高温では埋没材と反応して表面が変化する。

 ベリ銅は全く泡が出ないので、温度をかなり高くできる。また、埋没材と反応することもないので、素人でも美しい鋳物ができることになる。O氏がおっしゃるには、「ブラスで良い鋳物を作ろうと思うのは、はっきり言って、無いものねだりだね。」

 写真は電気炉。煤けて黒くなっているのは脱ロウ後も多少残っているロウが燃えた時のもの。

2006年10月18日

ベリリウム銅

GTEL Clamps ベリリウム銅(以下ベリ銅と略す)をロストワックス鋳造に使うとよいと最初に教えてくれた人はBillの友人のRalphである。Ralphは本業(交響楽のフルート奏者)のかたわら、鉄道模型が趣味から仕事になってしまった人である。

 HOのディーテイル・パーツを作っていたUtah Pacificの社長であったと言えば、分かる方もおありだろう。彼の家には非常に細かくできたレイアウトがあった。どんなものも動くレイアウトである。車両のみならずストラクチュアも全てモータライズされている。彼は主席フルート奏者であったが演奏は夜が多く、昼間は少し練習するだけなので、その時間をロストワックス製造に充てることができたと言っている。

 Utah Pacificの部品のなかで赤い銅の色をしているものがあれば、それはベリ銅である。曲げてみると、妙に硬いはずだ。鋳肌はきれいである。
 
 ベリリウム銅は熱処理によって工具鋼と同等の硬さが得られる。磁性がないので、磁気を嫌う環境で用いられた。例えば、録音テープの編集用ハサミ、ピンセットなどをはじめとして、磁気機雷の除去に当たる掃海艇のエンジン、歯車、ボールベアリングなど、全てベリ銅製である。
 
 しかしベリリウムの酸化物などを吸い込むと、いわゆるベリリウム肺になる惧れがある。昔、蛍光灯の蛍光物質がベリリウム化合物だったことがあり、蛍光灯工場で患者が続出したらしい。そのせいもあって日本ではベリリウム銅の加工まで厳しく管理されるようになった。これは過剰反応で小さな鋳物にする程度のことでは、まず問題はない。

 ベリ銅は湯流れが極めてよく、細部まで再現される。Mother(母)型から作った鋳物をDaughter(娘)という。その娘から再度作った鋳物をGrand Daughter(孫娘)という。

 たくさんの部品を作らなければならないときは、20個の娘をベリ銅で作り、それをツリーにして、再度、型を採る。そうすれば一回に20×20個くらい孫娘の鋳造ができる。この方法では複製時の劣化がほとんどない。


 写真はその方法で作ったGTELの屋根上のクランプ(孫たち)。一部湯が廻っていない。湯流れの悪いブラスで作ったからである。

2006年10月17日

続 鋳込み

centrifugal casting machine 熔湯に圧力を掛ける方法は大きく分けて次の四つである。
_,慧鬚鬚垢襦
何らかの方法で湯の表面に高圧の気体を接触させる。
C魴燭領側から真空ポンプで吸う。
け鷽肝呂撚,傾む。

〕侏散眤阿禄鼎い里如⊃爾気20cmもあれば水柱で1.5mくらいに相当する。表面の印象が気にならない構造用のものなら、これでも十分である。

∋科で行われた義歯の鋳造法のひとつである。融けた金属の液面を覆うように作られた蓋の内側に、アスベスト等を湿らせて入れておき、押し付ける。高温であるから急速に水蒸気が発生し、その圧力で熔湯が押し込まれる。この蓋を圧迫蓋(あっぱくがい)という。

これが筆者の採用している方法で、硬化したinvestment(埋没材)の中を多少の空気が通過するので、熔融金属を流し込んで型の下側を真空タンクに直結すると熔湯は吸い込まれる。
大物に適する方法である。真空タンクの容量が大きくないとうまくいかない。

せ慘悗覆鼻⊂物に適する方法である。investmentを詰め込んだステンレスパイプ(フラスコと言う)の前に置いたるつぼ中で、アセチレンバーナを用いて熔湯を作り、ばね等などに蓄えたエネルギで回転させ、遠心力を与える。
 
 あまり大きなものは回転させられない。カウンタ・バランスを調整しておかないと、振動して、事故の元になる。
 
 また、加速度が大きくないと意味がないので、その構造にはいくつかの工夫がある。これを「大きな金だらい風の容器」の中で作動させる。たらいの役割は融けた金属が飛び散るのを防ぐためである。写真はかなり大型の遠心鋳造機である。腕が折れるのは加速時に熔湯が飛び散らない工夫である。ぜんまいばねは極めて強力である。重力加速度の数倍の加速度がかけられる。


2006年10月16日

鋳込み

casting design
 ワックス型がたくさん出来たら、鋳造方案を考え、それに従って配置し、いわゆるツリィを作る。
 ツリィとは、ちょうどクリスマス・ツリィのように、幹から枝が生えて、そこにいろんな物がぶら下がった形を表す。


 写真は失敗作であり、お見せするのは心苦しいが、良い鋳造方案が出来た時のものである。何が失敗かと言うと湯(溶けた金属)の量が足らなかったので半分しか出来なかったのである。

 放射状についているのはタービン電気機関車のテンダ台車枠であったが、ちょうど半分で終わっている。悲しい限りである。

 このときの湯はベリリウム銅(以下ベリ銅と略す)である。ベリ銅は湯流れがよく、硬くて加工がた易い。しかし、ベリリウムの酸化物は吸い込むと健康を害する恐れがあり、加工時の被曝時間が制限されていたりして、日本では扱いが難しい。

 私はベリ銅の鋳造はテキサスの友人に頼んでいる。彼の家の裏庭から次の家まで、50マイルあるそうなので、排気を撒き散らしても全く問題ないそうだ。鋳造方案を絵に描いてワックス型を送ってやれば作ってくれる。地金は会った時にインゴットで渡してある。
 始めは、私の鋳造方案を見て、ぶつぶつ言っていたが、「確かにうまくできる。自分の鋳造の時も真似をしたらうまくできた」と評価してくれている。この頃、大物の鋳造時は、鋳造方案の相談を持ちかけてくれるようになった。

 鋳込む時は金属の表面張力で細かい所に流れないので、圧力を掛ける必要がある。この表面張力はかなり大きい。ハンダを融かした時、あるいは体温計の水銀が転がる時を思い出して戴きたい。型の細かい部分にはそう簡単には入らない。

 圧力を掛ける方法は4つある。

2006年10月15日

鋳造方案

wax injector 鋳造方案(casting design) という言葉を御存知の方は少ないだろう。

 湯口から流し込まれた熔解金属は鋳型の末端まで融けたまま流し込まれて固まる。そのとき冷え方が急で、金属結晶が析出しながら流れると粗雑な鋳物になる。温度が高すぎると固まるときに縮んで皺が入ったりひびが入ったりする。

 理想的なのは、末端に入ったときは融けているがやがて固まり始め、続々と融けた金属が注ぎ込まれて、固まるときに体積が減った分だけ補充されるようにすることである。

途中に体積の多い空間(湯溜り)を作り、融けた金属がそこに十分にあれば凝固に伴う収縮を補償するという考え方もできるし、先端に行くほど細くなるようにすればよいという考え方もできる。

 簡単に言えばそうなるがこれは非常に難しい。このようなことを考慮して、よい鋳物を作るように湯口を決め、押し湯(融けた金属が高く注ぎ込まれて、圧力が掛かるようにすること)、湯溜りを決めることを鋳造方案という。

 現在でもこの鋳造方案の完全な決定法はない。鋳造現場の技術者が指示する。鋳造方案を考えるだけで一生を費やすほどの難しい仕事である。スーパーコンピュータがあっても解決することではないようだ。これはある程度の指針を出すソフトである。

このなかにタービン鋳造時の湯流れをシミュレイションする動画がある。これは押し湯を大きく取る工夫をしている。

 実際の湯流れはこのように単純ではないらしい。



 写真はワックスをゴム型に注入するときに用いる注型機である。保温しながら圧力を掛け、ゴム型を押し付けると瞬時に注入される。ノズルに工夫がある。

2006年10月14日

印象を採る

a74fd4bc.jpg 一言で印象を採るといっても、極端な格差がある。機械部品の場合は表面が多少粗雑でも問題ない、歯科の技工の場合は噛み合わせの問題があり精度が要求される。
 さらに高精度な印象採取に挑まれた方がある。

 N社の最高顧問のO氏である。O氏は25年ほど前、クライスラ社からの依頼でレザーそのものの感触を持つ自動車のステアリング・ホイールを作られた方である。また布地そのものを印象採取して、金型に転写し射出成形することができるようにされたのもこの方の業績である。また。当時出始めていた、ターボ・チャージャのタービンの鋳造も、この方の指導のもとでなされた。セラミック・タービンはO氏によって開発された。

 運のよいことに、御子息の紹介で弟子入りがかなった。シリコンゴムによる印象採取の基本的な理屈はこの方から教わった。また、高性能な電気炉を自ら設計製作される方で、それもお世話願った。熔解炉もO氏自ら作って下さったものである。

 O氏の下で1年ほど教えていただいた。その間見せて戴いたヴィデオの中に、ロストワックスがいかにに高精度に出来るかというデモンストレイションがあった。フランスのVTRである。ピストルを鋳造し、そのまま湯口が付いている状態で組み立てて、発射するというのがあった。これには驚嘆した。

 これは何を物語るか。
  |鮟未澆蓮∩瓦謄灰鵐肇蹇璽襪任る
  ▲優厳蠹まで全て鋳造で可能であること
  8λ瓩靴覆ても鋳肌そのものを平滑にすることが可能であること 

 模型用では専ら外装部品しか必要でないが、この技術が適用可能であるなら蒸気機関車のフレイムを一体鋳造することは不可能ではない。全てのネジ穴もネジが切ってある状態で鋳造することができれば面白い。本物の鋳鋼台枠を再現するのである。
 それにはかなりのリサーチが必要であるが、将来やってみたいことの一つである。

 熔解する温度、鋳型の温度管理が大切であるのは言うまでもないが、もう一つの困難がある。

2006年10月13日

原型からゴム型を作る

ea687956.jpg 原型は何で作っても良い時代になった。以前はハンダ付けでは駄目で銀ロウ付けをしなければならなかったが、技術革新で楽な時代になった。

 まずブラスなどで作りたいものの3%ほど大きい原型を作る。この3%は「鋳縮み」という。このとき湯口(融けた金属が通る道筋)をどこにするか決めるのだが、それにはかなり面倒なことを考えねばならない。鋳縮み量は形によるので、一概には言えない。

 それを生ゴムとともに箱に押し込み、圧力を掛けて160℃くらいに加熱する。すると生ゴムの「加硫」という現象が起き、柔らかい生ゴムが弾性体になる。この装置は電気アイロンとクランプで自作できる。それをナイフで切り開き、原型をつくる。切り開く時は、後でずれないよう、ジグザグに切る。

 加硫の温度が200℃であると、ハンダが融ける場合があるので、銀ロウ付けをしなければならない。そののちに、より低温で加硫できるようになり、ハンダ付けでもよいことになった。

 現在はRTVといって、室温(Room Temperature)で加硫(Vulcanize)できるシリコンゴムが主流になっている。これを使えば、相手がプラスチックでも印象をとることができる。いくつかのブランドが日本製にもあるが、筆者はフランス製のものを使っている。寸法変化が少ないのと弾力が桁違いに良いからである。

 そのゴム型を開いて空気抜きのパウダーを塗る。ゴム型からワックス注入時、空気が抜けやすくする。ゴムの隙間から空気が抜けるが、ロウは抜けない。このパウダーの塗り方にもいろいろなノウハウがあるようだ。

 ワックスを融かして圧力を掛け、ゴム型に注入する。このときゴム型が変形しないよう、うまく押さえ込みながら入れるわけである。この操作をWax Injectionといい、専用の機械がある。ノズルが非常にうまく出来ていて、押すと瞬時に注入される。ゴム型が冷たければロウは数秒で固まる。ロウはいろいろなタイプがあるが、固まったとき硬くなるタイプを用いると、プラスティックで出来ているかの如くパリパリのものができる。また、固まっても柔らかいものもある。ロウは何種類もある。
 
 中空のものを作る時は工夫して、中子(なかご)を抜くように作る。写真は、その中子の丸棒付きのゴム型である。灰色の台ごと外して、ロウ型を抜き取る。

2006年10月12日

ロストワックス鋳造法

Billの工房 錆について書き始めたら、読者数が3割以上も増えたので驚いている。また、いろいろな方からコメント、メイルを戴き、感謝している。

 取り挙げる内容についてはいくつかリクエストもあり、その順に書いていく。
 
 最初の頃のロストワックス鋳造の話を読まれた方から、もっと詳しく書くよう要請があったので、しばらくはその話をしたい。

 ロストワックスは熱によってロウを流し出して作った空隙に、融けた金属を流し込む鋳造法である。厳密にはinvestment鋳造法という。investmentとは詰めたものという意味である。ここでは石膏などの材料をいう。

 まず、このウェブサイトをご覧戴きたい。これは宝飾用銀製品を作る方法を示している。ただ、テクニックを紹介しているだけで、技術的なことは何も明らかにされていない。写真を見て判ることは、ピンクのロウを加工して造形し、埋没材(investment)に埋め、乾燥、加熱してロウを流し出す。焼成して熱いうちに融けた銀合金を何らかの方法で強制的に流し込み、その後、その鋳型ごと水中に投下して破砕する。磨いて出来上がりというだけである。

 技能的にはこれでよいが、技術的にはかなりの工夫が必要である。わが国では「技能」という言葉と「技術」という言葉が混同されている場合が多い。殆どの場合「技能」と言うべきところを「技術」と表現しているように感じている。

 「技能」は経験のあることを間違いなく実行する能力であり、「技術」は経験のないことまで、持っている知識を活用して演繹する能力である。いわば、科学的思考力を用いて見えない山の向こうを透視する能力であるとも言える。

 
 鋳造ほど難しいものはないと思う。筆者は3人の優れた鋳造技術者に出会った。
 最初はBillである。彼は「一応大学には行ったのだ。でもあそこで教えることは知っていることばかりで、意味がなかったからやめたよ。」と言っていた。確かに金属加工、鋳造、鍛造については大変な知識の持ち主で、新しい情報も雑誌で得ていた。何を聞いても、非常に筋の通った答が返ってきて、いつも感心した。
 プラスティックを使った鋳造法はかなり古くからやっていたようだ。

2006年10月06日

ダイナミック・ブレーキ

6afb4bf1.jpg ダイナミックブレーキについては9月5日の記事で少し触れたが、さらに詳しく書けという御要望を戴いている。

 下り坂をブレーキ無しで下るのは不可能だ。軸受けがローラベアリングになると摩擦がほとんどなく、空気抵抗だけといってもよい位の状態になる。機関車の後ろには1万トンの列車がある。抑速ブレーキが必要である。機械式(摩擦)ブレーキではすぐに焼けてしまう。

 幸い電気式ディーゼル機関車は各軸にモータが付いているので、それを発電機にすれば、電気ブレーキが効くことになる。このときモータの界磁には励磁電流が必要である。補助発電機で起こした電気で励磁して発電する。作られた電力はエンジンの上部に取り付けた抵抗グリッド(抵抗器でできたバーベキュー網状のもの)に通す。発生した熱は、ファンで大気中に放出される。

 そのファンはモータで発電された電力で廻る。GP9では1番と3番のモータで作られた電力で廻ると書いてある。すなわち、力行状態では止まっている。
 ダイナミック・ブレーキを作動させたときだけ廻る。その回転音はブレーキのノッチ切り替えによって変化する。
 ベアリングの寿命を考えると、止まっているときに衝撃があると痛みやすいようにも思うが、風でいつも少しずつは廻っているので、問題はないのだろう。

 どんな機関車にも付いているわけではなく、本線上に長大な勾配がある路線のみに採用されている。発注時に取り付けるかどうかを決める。

 ギヤ比もいくつかの組み合わせが用意されていて、旅客用・貨物用、線区の勾配などを考慮して発注できるようになっている。

 運転マニュアルを見ると冷却液の調合も指定されている。-60℃までのグラフがあるのはさすが大陸横断鉄道を持つ国である。

 筆者が体験した最低気温は、自宅裏庭で-37℃、標高3300mのスキー場で-57℃である。そのグラフはハッタリではない。

 写真はKemtron社製のロストワックス鋳物である。さすがに45年前のものなので少々古臭い。右は自作のWinterization Hatchである。 

2006年10月03日

放熱ファンのルーバー

e6c58f3c.jpg 内野氏と話した思い出の中に、放熱ファン・ルーバの放射状の部材がどうして少しねじれているかということがある。

 写真はGP7の放熱ファンである。この鋳物は誰が作ったものかは知らない。多分PSCの鋳物であろう。良い形をしている。完全な放射状ではなく、わずかにずれている。中心部が少々時計廻りに回転している。どうしてだろうか。

 何人かでわいわい話していた時だ。内野氏と筆者の見解が一致した。最近、伊藤剛氏に確認したところ、それでよいということであったので公表したい。

 放熱ファンに限らず、使用時に温度差があるときは、材料の伸縮を逃がす方策をとらねばならない。この場合、温度が上昇すると放射状の部材は膨張して長くなる。すると中心部がわずかに右廻りに回転することになる。

 このような設計法は、工場のいたるところで見られる。蒸気パイプが大きくΩ(オメガ)状に曲げられているのもそれである。

 当然のことながら、蒸気機関車のポイラの支えも伸びを逃がすようになっている。鉄橋の自由端の伸び縮みはとても無視できない量だ。最近はその伸縮を逃がす支えが、摩擦の少ない特殊樹脂で出来ていてローラは使われていないそうだ。

 そんな話から始まって、ありとあらゆる工業製品とその加工の話を伺ったのがつい昨日のような気がする。

 
 
 浮津信一朗氏からも内野氏の早すぎる死を悼むコメントが寄せられた。

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