3条ウォームギヤ

2020年07月16日

ギヤボックスを作る

 3条ウォームが少し残っていたが、ギヤボックスがない。図面を描いて自分で作る算段をしたが、凄まじい時間が掛かるし、精度のあるものが沢山できるかは疑問があった。一つだけ作るのなら喜んでやるが、ディーゼル電気やタービン電気機関車の動力は数十個を必要とする。CNC加工の外注という手も考えたが、外注先はそう簡単には見つからない。
 3Dプリントで樹脂型を作って、それを金属置換するのもアイデアとしてはあるが、鋳縮み測定の実験を数回せねばならないであろう。また決して安くはない。

 悩んでいたところ、S氏が焼結ナイロンでやってみようと言う。寸法安定性は十分にある。ただ、X,Y,Z軸の各方向の寸法再現性は、全くのデータ無しの状態であった。
 無調整で一発で組みたい。噛合い調整は絶対に避けたいのだ。時間の無駄であり、また効率が一定しないから、惰行の仕方にばらつきが出る。工業製品としてのギヤボックスを目指すべきであるのだ。
 
Nylon gearbox 3軸のどの面が一番正確に再現されるかを調べるために、3通りの方向に試作品を並べて、積層の向きを指定して印刷した。常識的には、XY平面のお絵描きが一番正確であろうことは分かる。Z軸が問題なのだ。
 実験の結果は予想通りであった。Z軸の数字を調整して再度試作した。素組みしただけで、最高の性能が出るものを発注して、染色した。

 ボールベアリングを収めるスリーブが入る部分はリーマを通したが、ざらつきを取る程度の抵抗しかなかった。ネジ孔も印刷形成で良い筈であるが、M2のためにΦ1.6をあけておいて、ガラでタッピングした。切粉が大匙一杯ほど出た。この種の作業は楽しい。モリブデン・グリースをマイクロブラシで薄く塗り、ぱちぱちと組んで、あっという間に出来上がった。ギヤの噛み合いも均一で素晴らしい物であった。

 ナイロンは数十年以上問題なく使える筈であるし、重負荷で温かくなったとしてもその程度ではクリープは起こらない。たとえ壊れたとしても、データはあるので再現は簡単である。写真は二次試作品である。

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2020年05月03日

続 ATSF Heavy Pacific

 この機関車は場違いなところにあったのだ。東部の機関車は西部で、西部の機関車は東部で買うと良い、と言われていた。人気がない機種は、安く買えるということだ。サンタフェの機関車がニュー・イングランドにあっても、欲しい人などいない訳である。当時の相場としては900ドル位であった。その価格で出ていたが、誰も見向きもしない。売り主と話をすると、
「800ドルにするから買ってくれないか。」と言う。
「いや、こちらはアメリカ一周の旅行中だから、買いたくない。」と答えると、「最終日まで待って誰も買う人が居なかったら、600でも良い。」と言う。
「いやそれでも買いたくないな。」
「じゃ500でいいから。」と言う。その価格でなら魅力があった。

 そして最終日の夕方行って見ると、筆者の名前を書いた箱があり、小切手を渡してそれを受け取って来た。良い買い物であった。南部の友人を訪ねてから、自宅に帰って箱を開けた。驚いたことに、ACモータが入っていて、逆転スウィッチはキャブの中にあった。Max Gray時代の極めて初期のものだったのだ。それが安い理由であった。ニ線式であったのは助かった。帰国する時には錘とモーターは捨てた。それでも十分に重かった。
 祖父江氏に見せると、「参ったねー。こいつは古いよ。30輌位作ったかな。モータが入らないから、バックプレートを切り開いて、無理に押し込んだんだよ。テンダは重いよ。厚い板で作ったんだ。高くついたね。あとでUS Hobbies向けにも作ったけど、あれは薄い板で作ったから軽いよ。」と言った。
「煙突の裾はハンダの丸味だよ。プレス型を作るほどの数が無かったからね。あとで作った時はプレスになったな。」

pneumatic smoke deflector (2) バネを入れ、動力を改造して押して動くようにした。外装もかなり手を入れた。塗ってしまえば良かったのだが、ガラス棚に長期間鎮座していた。今回テンダを改造する予定だが、先に塗ってしまうつもりだ。本物の煙突は2フィート(61 cm)ほど折れて畳めるようになっている。それをやりたいのに、資料が見つからなかったのが、塗装が遅れた理由だ。DCCで畳めるようにしようと思っていたのだ。この図面がかなり近いと思う。

 実は、この機関車はもう一輌ある。テンダを手に入れたので、スクラッチからある程度作ってあった。並べると壮観だろうと思った。それは贅沢にもフル・イコライジングである。作りかけのまま、30年以上放置されている。スポーク動輪を他に使ってしまったのだ。今度作るときはボールドウィン・ディスク輪心にしたい。最近は3Dプリントでもできるから、試しにやってみたくなった。しかしタイヤを挽くのは大変である。快削鋼のΦ45を買ってきて削り出すのだ。ほとんど切粉になってしまう。昔は鋳鉄からも作ったことがある。鋳鉄製タイヤでは、牽引力は確かに増大するが、見た目が良くない。ステンレスのタイヤは許せない。色が悪いし、滑りやすい。快削鋼の色は素晴らしい。錆びると言う人がいるが、よく走らせていれば心配ない。
 精度の点ではタイヤだけは外注したいのだが、20枚程度では引き受け手がない。タイヤを研削する時に使うヤトイを作ってあったのだが、見当たらない。頑張って作ってみよう。 

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2020年05月01日

ATSF Heavy Pacific

ATSF Pacific Santa Fe鉄道のヘヴィ・パシフィックである。背が高い。動輪径は79インチ、2006 mmだ。古いパシフィックを大改造して作られた。大きな動輪に替え、ボイラを作り替えて圧力を上げて給水装置をElescoにした。筆者の好みの形だ。この機関車は、筆者としては珍しく完成品を入手している。1960年より前の祖父江氏の作である。

 1989年、アメリカ東部のOスケールのショウを見てみたいと思った。西部から車で何日も掛けて走り、あちこちで友人を訪ねながらメイン州まで行った。帰りにコネチカット州のスタンフォードに寄った。駅前のホテルでその模型ショウがあったので、Bill Wolferに頼んで、入場券を押さえて貰った。ホテルはマリオットで高級だが、参加者は安く泊まれた。すぐ裏に、St. John's Episcopal Church があり、そこの地下には巨大なOスケールのレイアウトがある。その大きさ、精緻さは全米で屈指のものである。

 物品販売しているテーブルはたくさんあり、手紙のやり取りで知っている人も多かったので、一つずつ訪ねて歓談した。中には金を払ったけど送って来なかった奴がいて、乗り込んで行って名乗った。非常に驚いて、「もうすぐ送るつもりだった。」と言い訳をした。「黙れ!さっさと商品を渡さないと主催者に言うぞ。」と怒鳴ると、慌てて渡した。もう廃業しているから名前を出すが、Sal Marino’sというイタリア系の店であった。何回か電話したが、ごまかすつもりで、でたらめなことを言っていた。まさか西部から乗り込んで来るとは思わなかったのだろう。啖呵を切る練習をして行ったので、うまく行った。そのせりふの手ほどきをしてくれたのは、Bill Wolferである。後ろで見ていてくれた。


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2020年04月29日

慣性増大装置付き機関車の増備

 今アメリカの複数のフォーラム(非公開サイト)で筆者のUP850が採り上げられている。Youtube を見て討論しているのだ。傍観しているが、いろいろな意見があって面白い。
 増速装置にウォームギヤを使っているとは思わないので、様々な想像をして、多段スパーギヤ + 食い違い傘歯車だろうと書いている。そんな歯車装置では、高価だろうし、多分すさまじい音がする。たとえウォームギヤが使ってあっても正しい歯型のものでないと無意味なのだが、そのあたりはあまり理解されていない。動けば良いというものではないのだ。高効率で静粛性を求めるには何をすべきか、ということは自分で計算をしてみないと分からないだろう。7軸の内、6軸から動力採取をしていることの意味は読み取った人がいた。これは嬉しい。
 そのうちに、誰かが3条ウォームを使っている筈だ、と言い出した。ここでも"3条"に意味があると思っている人が多いことがわかった。3という数字には意味はない。「互いに素」の組み合わせが相手が偶数でも作りやすいという利点しかない。かなり頭を絞って考えているようだが、進み角 lead angle にたどり着いた人は、まだいない。

 多条ウォームは、世の中に沢山ある。オルゴールとか、蓄音機に使われて来た。しかしそれらはゼンマイ動力であって、駆動側の慣性モーメントが無いに等しい。
 歯形がでたらめでも、被駆動側の大きな慣性モーメントで、均等化されていたのだ。今回は、大きな慣性モーメントを持つものを駆動し、また逆に、それによって駆動されるのだから、話は違ってくる。角速度の均一性は極めて重要なファクタである。そこに気が付くかどうかを見ている。
 MRに投稿する原稿をまとめる上でとても参考になるので、しばらく議論を眺めていたい。


 原氏の博物館からは、当分帰って来ないことが確定した。その間落下事故がないことを祈る。
ATSF Tender フライホィールの効果を見たい友人がいる。もう一台くらい作って見せてくれ、と言う。作るのが簡単で効果が大きいものは、テンダの体積の大きな、大動輪のパシフィックであろう。このSanta Feのパシフィックは塗る直前の状態で10年以上置いてあった。

 車輪は既にLow-Dに交換してあり、この重いテンダは0.2%の坂を下り降りる。塗装前にテンダの床に孔をあけて準備しておけば、フライホィールの増設は難しくない。このテンダは箱型で、高さがあるから、改造には適する。台車のシルエットも、動力ピックアップ装置をかなり隠せる大きさだ。 車輪径が小さいので、増速率を減らすことができる。これは音の問題を小さくするだろう。


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2020年04月11日

続 コンテストの結果

 肺炎騒ぎで、原氏の博物館は閉鎖されている。本来なら、4月4日〜4月末まで展示され、その後は返却されるはずであった。それを取りに行って、その足で友人たちに見せ、家に持って帰るはずであったが、延期になってしまった。表彰式は9月にするそうだ。

 本来は5月に渡米し、コンテストにエントリィの予定であったが、それは不可能になった。もっとも、向こうも大変な騒ぎで、そのコンテストも取りやめになっているはずだから、実害はなくなった。しかし、機関車は早く手元に戻したい。少し手を加えて、より静かにしたいからだ。
 以前にも書いたように、テンダの4軸側の動力ピックアップによって発生するトルクが、チェインの許容張力の限界に近いので、急加減速時に少し音がするからだ。2丁掛けにすればかなり静かになる。定速走行時には殆ど気にならない程度の音である。

 筆者の友人たちは、機関車が帰って来るのを待っている。目の前でスリップさせて見たいのである。動画では満足していない。運転させてくれという人も多い。
 慣性が大きいので、運転はかなり難しい。慣れるまで時間が掛かるだろう。

 もう一輌作ってみたい。テンダが大きく、四角い Santa Feの6輪台車のテンダが良さそうだ。パシフィックなので、スリップは 容易だ。ただ、ギヤボックスが横から見えにくいとは言えないので、少々問題である。そういう点では、このセンティピード・テンダはとても好都合であった。

 審査風景の写真が差し替えられている。テンダをわしづかみの写真が消えてしまった。どうして消すのだろう。壊れなかったようで、問題は生じなかったのだ。やったことは仕方がない。消したことで、余計問題が大きくなるのではないか。

 しばらく前、古い画面を再生したもの(HOゲージは和製英語の件)を見せて戴いたことがあった。もし再生可能ならお願いしたい。

 驚くほど大量のコメントを戴いた。放送禁止用語の入っているものは掲載できない。すべてが選考の基準等に関するものであった。落としたのを見たというのも複数ある。そういうところであれば、無事に返してくれるよう祈るしかない。

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2020年04月09日

コンテストの結果

 4月4日に結果が発表された。筆者はそれについてコメントできる立場にはないが、様々な方からメイルを戴いた。

 このコンテストは商業的な博物館のコンテストである。筆者は結果をある程度予測していたが、このコンテストに応募するように勧めてくれた友人は、かなり落胆していた。しかし、これによって3条ウォームの露出が増えて、興味を持つ人がたくさん出て来ると言っている。

 原氏はウォームギヤが嫌いであった。スパーギヤ、ベベルギヤによる伝動しか認めないという姿勢を崩さなかったのだ。筆者が3条ウォームを実用化し、逆駆動が可能になってからも、原氏は一切その話題には乗って来なかった。地震で亡くなった魚田真一郎氏は、「あの人も困ったもんだ。どうして認めないのだろう。」と嘆いていた。魚田氏も3条ウォーム派であって、殆どの機関車を改造したのだ。

 原鉄道模型博物館には「ウォームギヤは逆駆動できない」と掲示されている。これはおかしい。否定の証明は難しいのだ。まさにその反例を突き付けている。
 筆者が応募したのは、この掲示を外してもらう良いきっかけになると思ったからである。FEF4の慣性のある動きはテンダのウォームギヤの逆駆動による動力ピックアップによる。もう誰も否定はできない。
 鉄道模型は科学的な思考を育て、それによって再生産されるはずだ。その科学的思考に誤りがあると、その産物は正しい物とは言えないだろう。

 また、先日1980年代後半のミキストを拾い読みした。その中に逆駆動されるウォームギヤに関することが2行程度だが書いてあるのを見付けた。山崎氏はどうして接触して来なかったのだろう。

 今回発表されている写真を見ると、ボイラー脇のラニングボードが派手に曲がっている。持ち方を指定する図まで添えたのだが、ここをわしづかみにされたかもしれない。完全に真っ直ぐではなかったが、曲がりが極端に増している。ラニングボードが薄かったのだが、厚いラニングボードはオモチャ的で、筆者は好きではない。本物もへなへなと曲がっているので、より「実感的」ではあるが、出品者としてはあまり嬉しくはない。
 審査風景の中にもテンダをわしづかみにしている場面がある。これも持ち方の図を無視している。一応補強を入れておいたので生き残っているが、それが無ければ、確実に壊れていただろう。模型に対する愛情、情熱が不足した人が審査しているのだ。補強を入れた判断は正しかった。 

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2020年03月22日

Texasからのメイル

 Dennis の調子が良くない。手術後今リハビリ中で大変だ、と奥さんが知らせてくれた。早速元気付けに行こうと思ったのだが、肺炎騒ぎで行けそうもなくなった。毎年この時期には、花粉症対策と称してアメリカに逃避していたのだ。今年は、行ったは良いが、帰って来られなくなる可能性もある。
 彼のところには、たくさんの友人が行っている。人望のある男だから、助けに行っているのだ。遠くカリフォルニアからも助っ人が何人も行って、レイアウトの工事をみんなでやっているのだ。かなり進歩したらしい。

 先日のFEF4の動画を送ったら、みんなで見たと連絡があった。単機で動輪がスリップする様子を見て、興奮したと書いてきた。MRに早く載せろと言うので、その準備を始めた。

 ついでに送ったEM-1が長編成を牽く動画は、評判が良くない。EM-1はこんなに牽けないというのだ。119輌を牽くには3重連が必要だという結論になったそうだ。時々片方のエンジンがスリップして音が変わるのは、とても楽しくて良いそうだ。様々な動画を送ってあるので、みんなで見てワイワイと批評して楽しんでいるようだ。ともかく、一人でつまらぬリハビリをしているより、はるかに良い。

 FEF4がスリップする場面は評判が良い。テンダの中身の写真を見て、皆仰天したらしい。車軸の回転をどうやって取り出しているのかわからなかったのだ。こちらはいつもやっているから当たり前だと思っているが、普段ウォームの逆駆動などしたこともない人は、実感が湧かないらしい。デニスが、虎の子の3条ウォームを取り出して廻して見せたら、のけぞったそうだ。軽く動くし、全く無音と言っても良いほどなので、ウォーム駆動とは思えないそうだ。
 ともかく、テンダ車輪の 6/7 から動力採取して増速してフライホィールを廻すメカニズムは理解した。それが機能して、テンダが機関車に当たり、それを押して行く場面は何十回も再生したという。慣性がここまで大きいのが面白いのだそうだ。

 予定ではDennisのところに寄って、後二人のMikeのところに寄ることにしていたが、それもダメになった。 


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2020年02月25日

EMD NW2

 改装で細かい傷がついたのでタッチアップした。先日の神戸の催しに持って行って、披露した。筆者がスイッチャを持って行ったのは初めてだそうで、「珍しいね。」と言われた。確かに今までは本線用の大型機しか持って行かなかった。
 下の写真の、UPカブースの付いているタンク車一編成を持って行った。Texaco は新作である。このディカルを Dr.Yに 新しく作ってもらったので、一気に増えた。本当は Texaco だけで60輌編成が組みたかったが、当時はディカルが高くて、とても無理であった。  

 S2 と NW2 とを同じ線路の上に置き、片方を押すと、もう一つも走り出す。これを見せたら、驚愕した人が居た。彼には初めてだったらしい。話には聞いたことがあるけど、本当に動くとは思わなかったそうだ。どういう風に話が伝わるとそうなるのだろう。あいつはウソツキだと言う人も居るらしいから、油断はできない。この動画を撮って、早くUPしておく必要がある。 名古屋の会合で撮って貰った動画があるので、それを近日中に youtube にUPする。 

displayed in Kobe 神戸の催しでは、モハメイドペーパー氏による解説が日に4回あるので、そこでの紹介に入れて貰った。押して動かすと、どよめきがあるかと思ったが、そうでもない。皆よく分からないのだろう。しかし、数人が接触してきて話をした。「面白いですね。」と言ってくれる人も居る。

UP NW2DCC NW2 はまもなくDCC化する。DCC化すると、2台並べて片方を押す演示は出来なくなるのは残念だ。その前に1枚写真を撮った。なかなか良い雰囲気である。

 この種の機関車はこのスロットルがあると面白そうだ。動画を見て欲しくなった。アメリカ人の作るものだから、厚みはかなりある。今後進歩するだろう。

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2020年02月19日

続々 FEF4 UP850

centipede tender (2) テンダは最前部のデッキを切り落とせば済むわけではなかった。キャブが延長されているので、それと連結するにはデッキ下の台枠を13 mmほど延長してやらねばならない。機関車の連結部を伸ばすと、オウヴァハングが大きくなる。これは避けるべきである。テンダのdraw barのピン位置は10 mm移動した。この部分は力が掛かるところであるから、十二分に補強してある。床板にはチェインが通る穴があいている。強度を持たせるために、ボディ・シェル側に太い骨を入れて、それとネジで連結するようにした。銀ハンダで付けてあるから、オリジナルより丈夫かもしれない。

 テンダのボディ・シェルの骨は、重いのをわしづかみにされても凹まないように設計した。また、シェルと床板をネジで締める部分は、力がシェル全体に掛かるような設計にした。こうしておけば、メネジ取り付け部が剥がれたりしない。ここまで考えておかないと、塗装完成後に壊れて泣きを見る。ここまで重いテンダはまずないから、気を付けねばならない。

centipede tender オリジナルの模型の製造は1966年頃で、祖父江氏による。まだKadeeはなく、怪しいダイキャスト製のダミィ・カプラが付いていた。その取付部の高さは、どのように工夫してもKadeeには適合しない。フライスですべて削り取り、ブロックを作成して埋め込んだ。テンダは重いので、バネの沈み込み量が大きい。実験・測定を繰り返して、高さを決めた。

FEF4 painted (1) 今までの車輛とは大幅に異なる質量を持ち、なおかつ客車ほど長くない。即ち平均密度が大きい。初めて触れる人はきっと驚く。落とすまいとしっかり握るから、何も対策しないとつぶされる可能性があった。だいたい、わしづかみにする人はHOの人で、Oスケールの標準軌車輛を持ったことが無い人だろう。

 博物館に来た人で、車輛に触りたい人が居るが、それは遠慮願っている。HO以下の模型とは全く異なるので、壊す可能性が高い。握って客車の窓をぶち抜いたり、荷物室扉を押し潰したりする例は多い。機関車を持つときは、どこが一番堅いかを調べてからしか、持ってはいけない。テンダについては今まで特に注意を与えなかったが、これに限っては重いので最高の注意が必要である。

 今回は審査員が触るという前提があったので、最大限の補強を入れているし、壊れそうなものは付けなかった。一般論で言えば、他人の車輛には手を触れてはいけない。


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2020年02月05日

続 UP switcher

NW2 (1)NW2 (6) ハンダ付けがへたくそで、肝心の部品が取れて来る。上廻りを床に留める金具がパラリと落ちる。ハンダが廻っていない。左が取れる前、右が取れて落ちた物。塗装してあるので、ハンダ付けはできない。良く磨いてエポキシ接着剤を塗り、クランプで締めた(圧締)。こうすれば極めて強力に付く。

NW2 (3) 運転室(キャブ)があるので、推進軸支えの位置をキャブ側は中心に近く、手前に置き、機関室側を遠くに置いた。モータ位置も少し移動した。そうしないとユニヴァーサル・ジョイントのスペイスが無いからだ。オリジナルでは、モータも床上にあったのは同じだが、中央のギヤボックスで推進軸を下に降ろし、極端に短いユニヴァーサル・ジョイントで無理につないでいた。しかも位相は間違っていた。そのせいで、カーヴでゴリゴリという音がした。改造したら、とても静かになった。ユニヴァーサル・ジョイントは、ある程度の長さが必要で、曲がる角度を小さくすべきなのだ。
 改造により、燃料タンクの中が空になったので、活字をぎっしり詰めた。すると、ハンダ付けが不完全なせいで、重さにより分解して試運転中に落下した。仕方がないので、丈夫に作り直すことになった。こういうことは、韓国製の模型の宿命である。

NW2 (4) ジョイントはこんな形である。Ajinのジョイントを拾っておいたのを、有効利用している。あまり精度は高くない。中間軸が微妙に震えるが、軽いものだから我慢する。ブラスで作ったスリーヴと接合するのだが、抜け留めが要る。超硬の 0.5 mmのドリルで軸を貫通して孔をあけ、針金を通して曲げる。ドレメルで3万回転であけるのだ。これには熟練を要する。

 モータ・マウントは1.6 mmの板で、4 mm角の棒に銀ハンダで付けてある。簡単なジグ上で、焙り付けである。角棒にフライスで溝を入れ、軽く押し込んで付けた。その時、板にはニッパで軽く傷を付けて、押し込んで噛合わせた。こうするとハンダが廻りやすい。工作が簡単な割には、剛性が大きく、具合の良いものであり、お薦めできる技法である。普通のハンダでは強度が足らない。

UP NW2UP S2 30年の懸案課題が解決した。同時に中身の怪しいスウィッチャ Alco S2 も整備した。 これは後述するが、軽整備である。モータを取り替え、車軸にボールベアリングを入れただけだ。
 DCC化するが、近々ある神戸の行事に持って行ってからの予定だ。

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2020年01月28日

5軸台車にギヤボックスを付ける

centipede tender こんなに狭いところに5軸あるので、ギヤボックスを無理なく収めるのには少々苦労する。例えば3軸台車なら、2軸を一つにまとめてドライヴ・シャフトで結び、もう1軸はルースなジョイントでつなぐことを考えるだろう。そのギヤボックスに反動受けのリンクを付ければ、完成だ。
 しかし5軸あると、そのような方法が採れない。2軸ずつにして中間の1軸は捨てて、そこに伸縮するユニヴァーサル・ジョイントを置くしかない。しかし、そのスペイスすらないのだ。こうなると、六角軸のジョイントでつなぐしか方法が無い。

 この六角軸ジョイントは、六角レンチの頭が丸くなっているタイプを思い起こして戴くと、理解できるだろう。少しくらいの角度なら、問題なく廻る。厳密に考えると等速とは言えないのだろうが、角度が浅ければ全く問題ない。線路の上に載っているのだから、それほどの段差はなく問題は起こらない。よくできた部品だと思う。これは、カツミ模型店にいた高橋 淑氏のアイデアだ。写真では、ずれが大きいところを見せている。軸受を外して作動状況を見せているのだ。走行時には殆ど直線状である。

 チェイン・ドライヴは前後2つに分けた。1つにすると負荷が大きすぎると判断した。これは前述した許される最大加速度の計算時に、チェインの張力が算出されたからだ。また、先台車の偏倚によって、ドライヴ・シャフトが曲がって大きくずれ、効率が低下するのを避けたかったからである。
 車輪が滑るほどの加速度を与えると、チェインの音が大きくなる。プラスティックのチェインであるから、張力で多少伸びるからだ。もっと張力を掛けると切れる。
 
 このフライホィールの慣性モーメントはかなり大きく、加速するには大きなトルクが必要である。スペイスが許せばチェインを二重にしたかった。2つのスプロケットの位相を1歯の半分ずらすと、音が静かになる。次に改造する時には考慮したい。

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2019年12月07日

HOゲージャの訪問

 HOの友人が夫人を伴って来訪した。
 かねてから、夫人はこの博物館のレイアウトのことを聞かされていたので、「どうしても見たい」といらしたようだ。120輌が音もなく発車し、ドラフト音を響かせながら坂を登って降りて来るのをご覧になって、大変驚かれたようだ。
 御亭主に、「どうしてうちのは短いのに、ここは長くても牽けるの。」と質問された。彼の自宅のレイアウトには、電車を中心に車輛が走っている。

「すべてが違うんだよ。車輪旋削の精度、材質、軸受の精度、歯車の設計、モータの種類、すべてが全く異なるのだ。」と彼が答えると、「HOでもできないの」と聞く。
「残念ながらそういう車輪を作る人が居ない。誰か作らないかなと待っているんだけど誰も作らないから無理だ。」と彼が言うと、残念そうな顔をされた。

「『誰かが作らないかな』と思っていても、駄目さ。自分で作らなきゃ。そういう工場はいくつか伝手があるから、紹介しようか。」と切り出したけど、話はそれ以上進まなかった。

 どうして誰もやらないのだろう。研究結果は発表されているので、HO用のヴァージョンを作るだけのことだ。半分の大きさにすると、いくつか予想外のことが出てくるかもしれないが、少なくとも、めっきされた車輪よりはずっと静かになる。

 動力車用の40インチの車輪のネジの嵌め外しを、して貰った。さすがに技術者だけあって、その違いに気が付いた。
「このネジは高精度だ。こんなのは他に例がない。」
 全くガタがないネジで、締まるとき、コツンと当たるともう動かない。軽く締めただけで、そう簡単には緩まない。細目のM4ネジである。車輪の製造所が胸を張って「世界最高峰のネジです。」と自慢したネジである。左右の車輪径が1/100mmの桁まで合っているし、バックゲージ(back to back)のばらつきがない。
 それを言うと、彼は、
「ここまで来ると模型じゃないな。精密機械だね。この静かさには参るね。HOはオモチャかな。オモチャから脱却したいもんだ。」と言った。

 彼は、筆者が上廻りの出来具合にはあまり興味がないことを、良く知っている。模型屋には殆ど行かないと聞いて、夫人はどこに行くのかと聞いた。
「クズ屋です。廃金属回収の店に行くと、楽しいものがたくさん見つかりますから、洗いざらい買ってきます。工作した残りのクズは持って行って売ります。50 kg買って40 kg以上売りますよ。」
と言うと、ずいぶん驚いた。ブラス専用の屑箱をお見せすると、納得されたようだ。


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2019年09月03日

続々 またまた3条ウォーム 

久し振りに「互いに素」のことを書いた。割り切れない組合せにしておくだけで、滑らかな伝達が保証される。
 歯車は工業製品である。優秀な歯切装置で作られたものであれば、ばらつきは少ないが、ゼロであることは無いだろう。僅かなばらつきや、微小な傷、異物の噛み込みなどの影響で、噛み合わせに異常を来すことが無いとは言えない。

 そういう時はこの「互いに素」が効果を発揮する。様々なファクタによる不具合を薄めて、自然に支障の無い状態になる。
 このウォーム・ギヤボックスを作ってくれたY氏は、組んでみて廻したとき、微妙なひっかかりに気が付いた。ところが廻しているうちに問題がなくなったので、改めてその効果に驚いたそうだ。
 進み角は tooling cost(新規に必要となる刃物の価格)の掛からない18度以下にするべきだ。また、伝達効率もその辺りが良い。特殊な刃物を用意せずに作った進み角の大きなウォームでは、高効率は望むべくもない。
 ウォームホィールの歯当たり部分を凹ませた物は、高級に見えるらしい。残念ながら、伝達効率はそのほうが低下するという報告も出ている。ともかく、この歯車セットは、工業的に最も具合の良い条件を組み合わせたものである。単なる思い付きを形にしたものではないのだ。これを実現するために、複数の歯車の専門家に話を聞き、コストも考えて設計した。

 クラブの集会に持って行くと、皆で寄ってたかって触る。逆駆動できるウォームとは言っても、かろうじて廻る程度の物だろうと思っていた人が多かったようだ。車軸を廻すと、ウォーム軸がビューンと廻るのには皆さん驚く。ウォーム軸は小さな物なのだが、高速で回転するので、慣性で廻り続けようとするのを見て、皆さんは驚く。(動画の前半部分のみ)

 HO車輌に嵌め替えた人も何人か居る。動輪の大きな蒸気機関車には嵌まるそうだ。押して動く動画を送ってくれる人も居て、嬉しい。

 ギヤボックスを作っても開放ではいけない。ゴミを巻き込んでダメになる。動輪軸にガタがあると、それだけで損失が増大する。HOの蒸気機関車のギヤボックスには、そういうガタがあるものが多いように思う。

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2019年09月01日

続 またまた3条ウォーム

 むすこたかなし氏の目は、かなり細かいところまで届いている。インナ・レースは軸と共に廻るが、それがどこかに触ると、とんでもない損失を生み出す。ギヤボックスの内側は微妙に削り、何が起こってもインナレースが触らないように出来ていることを、見抜かれた。素晴らしい注意力である。これは、今まであまり誰も指摘しなかったことなのだ。

 今まで、いろんな方が作ったギヤボックスを見て来た。せっかくボールベアリングを使っているのに、ここが触っている例が多かったのだ。ウォームギヤは大きなスラストが発生するので、触ればそこで発生する摩擦損失は大きい。

 このギヤボックスは、ディーゼル電気機関車用に開発された。以前のΦ2.5軸系列のウォームギヤは、ロストワックス鋳物のギヤボックスを用いていた。鋳物は精度が出にくいので追加工をしたが、そのばらつきは無視できず、調整に時間が掛かった。それに要する時間がもったいなかった。噛み合わせ調整に時間を掛けるというのは無駄以外の何物でもない。
 だからギヤボックスを精密機械加工で作ろうとしたのだ。歯車の残数も少なかったので、思い切って完全な新規生産にした。

 潤滑はモリブデン・グリースをほんのわずか塗ってあるだけである。沢山入れると安心する人は多いが、決して褒められない。撹拌損失を増大させているだけである。歯の当たる部分にだけ塗ってある。互いに素であると、最初は渋くても、1分も運転すると極めてよくなじんでくる。もしこれが 30:2 だったりすると、ゴロゴロ感から逃れられないことがある。

 新製品の開発は成功で、時間の節約ができた。動力化する機関車の数がかなり多いので、多少の出費で省力化ができれば有難かった。しかも動力性能が完全に同一になるので、重連の時に全く問題がない。当時は博物館の構想すらなかった時代であったが、思い切って作ったのは大成功であった。

 歯車はたくさん作ったので、今後のギヤボックスは3Dプリンタで作ってみたい。ナイロン12で作るものなら、油に漬けても変化がないことが分かった。これについてはミシン油浸けで3か月間日光に当てた試験をしてある。

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2019年08月30日

またまた3条ウォーム

時々コメントを戴く、むすこたかなし氏が連載されている記事が興味深い。筆者が自分で書くより、客観的な記事を書いて下さるだろうと思い、サンプルをお送りした。

 このギヤボックスは10年ほど前に、硬いアルミ合金からCNCフライスで削り出したもので、かなり高価なものである。飛行機の部品を作っていたY氏が作ってくれたものだが、再生産は難しい。ネジはM1.4を使用している。ネジ孔はタップを立ててあるが、切削タップではない。転造タップである。これは素人が手で廻すものではなく、高性能のCNCマシニング・センタでなければできない。切削後、黒染めを施してあるので、プラスティック製と間違える人が居る。

 スラスト・ボールベアリングを用いていない。小型化を狙ったので、ラジアルベアリングだけで作った。
 むすこたかなし氏の解説にもあるように精度高く作ったベアリング・ハウジングに油を付けて滑り込ませてある。アウタ・レース(外輪)はハウジングに油膜によって支えられている。油がないと玉が押し出されて、壊れやすいはずだ。

 ミクロン単位で作られているので、無調整で最高の性能を発揮する。噛み合わせの調整は全く要らないというところがミソである。組み立てただけで所定の性能を発揮する。手製のギヤボックスでは到底考えられないところまで行っている。


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2018年06月12日

O Scale West での講演 2

 3条ウォームの特質で一番大切なのは、高効率を求めると、同時に逆駆動ができるようになるということである。決して逆駆動だけが目的ではなかったと言いたかったのだ。音のことも強調した。
「スパー・ギヤ、べヴェル・ギヤ・ドライヴでは蒸気機関車がヒューと音を立てて走るから嫌いだ。」と述べると、皆納得した。ウォームの静粛性には敵わない。

 一部の人達は「祖父江ドライヴは歯車比が小さいから、牽引力がない」と勘違いしているが、それはモータが小さいだけである。高価だが12 Wクラスのモータを入れれば、UPの4-8-4が重いプルマンを12輌牽いて1.6 %の勾配を駆け上がることができる。その様子を動画で見せると、皆愕然とした。全効率は60 %くらいであると言った。低ギヤ比の方が効率が良いことと、祖父江ドライヴには 15 W の伝達能力があるということを強調した。

「そういうモータはいくらぐらいのものだろう?」と聞く。
「場合によるが定価は300〜500ドルくらいだろう。」と言うと驚いた。
「高級なスポーツカーでは、その製造原価のうち、エンジンは40%くらい、トランスミッションが20%くらいを占めるのだから、当然ではないか?」と言うと妙に納得した。

B&O EM-1 + 125cars + caboose 次いで、126輌編成がドッグボーンを周回して機関車とカブースが逆向きになって平行になった状態を見せた。その状態でカブースを後ろに引く。約 0.7 mほど引くと連結器の隙間(slack)が伸び切って、機関車が後ろに引張られて動く。今度はカブースを前方に押して行くと、スラックが閉じて機関車が前に押される。
 この場面は非常に感動的で、会場内は騒然となった。
 機関車が軽く動くから驚いたのではない。そんなことは承知の上だ。126輌の貨車の連結部のスラックが波のように伝播し、押し寄せてくるところが感動的なのだ。皆大拍手である。動画を再演した。
「ありえないシーンだ。」と叫んだ者もいた。
 これを実現するために貨車の台車を全て取り替え、Low-D車輪に取り換えたからである。それを説明すると、場内は静粛に包まれた。その手間とコストを考えたのだ。

drag そこでこの図を示した。
「誰しもボールベアリングを使うと摩擦が減ると信じている。ところがボールベアリングにはグリースが詰まっているから、負荷が小さいときはピヴォット軸に負けている。軸重が4 oz. (約 100 g)を超えると初めてボールベアリングの効果が表れる。」
と言うと、これまた大ショックだったようだ。
「ここにある貨車はすべて16 oz(455 g)以下だから、ボールベアリングは全く使っていない。」

 そこでLow-Dを付けた貨車を短い 2 mほどの線路上で転がした。極めて静かに慣性を見せつけて走った。これにはみなとても驚いた。
「実物の貨車は、摩擦式軸受の場合 5 ‰以下の坂で動き始めることになっている。しかしこれは3 ‰ でも動く」
と言うと、さらに驚いた。
 ただし、実物は慣性が48倍あるから、その動きとは違うは説明した。これは少々難しかったかもしれない。   

2018年01月04日

続々々 困った3条ウォームギヤ

 歯車は奥が深い。筆者は父から聞いた話と、数冊の本を読んだ程度の知識しかなく、高度な計算を伴う設計はしたことが無い。ウォームギヤについて知っていることは、
・バックラッシを小さくできること、
・摩擦を低減することができれば効率は上がること、
・進み角を大きくすると単純な滑りではなく、転がりに近くなって効率が格段に上がること、しかし、進み角が18度を超えると、歯形を変更しなければならないこと、
である。
 先日来、この項目で、某模型店製の進み角の小さな3条ウォームを紹介しているが、ある方から次のようなお便りを戴いて、新年早々大笑いした。

 3条ウォームの件は本当にお気の毒様です。私に言わせれば、小さな進み角の制限のもとで3条もの溝を成立させる方がよほど難しいです。故にこれは、貴殿の方式を貶めるため、相当頭の切れる策士が緻密に練った謀略に違いありません。

 これはジョークにしても、どうやって考えるとあんな結果になるのかは、本当に不思議だ。



 話は替わって、スパーギヤ(平歯車)の効率は100%ではない。この動画は歯車が摩擦しながら動いている様子をよく表している。この線の角度が圧力角である。中心から遠い部分と近い部分での周速度は異なる。その速度差分が損失を生じる。ピッチ円上だけが、完全な転がり摩擦だ。
 スパーギヤの効率を上げるには、ピッチ円付近でしか接触しないようにすることが必要である。径を大きくすると、ピッチ円付近しか接触しなくなる。即ち、相対的に大きくするにはモジュールを小さくすることが同じ働きをするだろう。その他、高度な工夫もあるが、結局は摩擦から逃れることはできない。即ち効率は100%にはなりえない。

 しばらく前、ある実物業界の方が、インボリュート歯車は完全な転がり摩擦だとおっしゃるので、質問してみた。どうやら歯車メーカの効能書きの受け売りをしているようで、実際に運転時に触ってみたことは無さそうだ。100%なら発熱は無く、潤滑も要らないだろう。
 人の言うことやカタログを信用する人は進歩できない。しかし、その方は筆者に「もっと勉強せよ。」としか言わなかった。ご自分がどんな勉強をしたのかを、聞いてみたかった。



2017年12月31日

続々 困った3条ウォームギヤ

 このウォームを発注した時の仕様書らしいもののコピィがある。判読が難しいところもあるので、読めるところだけ書くと、モヂュールは0.6らしい。

 歯先円直径は 7.8 mmとある。これはどうしたことだろう。この現物はもう少し
太い。ピッチ円を指定していないところが不可解だ。また、軸穴を3.0 mm径と指定している。これはまずい。2.5 mmにすべきだった。そうすればかなり細くなり、進み角は大きくなる。このあたりは経験不足から来ている。どうして先駆者に聞かなかったのだろう。小学校の算数と理科の範囲である。 
 材質はS45Cである。どうして快削鋼にしなかったのかは疑問だ。快削鋼であれば、表面の粗さが、より良いものができる。逆駆動には、このあたりの微妙なところも大切なのである。イモネジはM1.4らしい。

 ウォーム・ホィールは28枚歯で、歯先円直径は18.7 mmとある。これは正しい。歯数が互いに素であることは良い。これもイモネジ(M1.6)で締めるようになっている。このような留め方は避けたい。僅かの偏心が逆駆動の妨げになりうる。材質はリン青銅で、これは良い。

 組み込んで動かなかったものだから、その模型店には客から文句が来たようで、その返答のコピィを見せてもらった。それは私信に属するから、写しは取らなかったが、概要はこういうことであった。
 逆駆動するには動軸にボール・ベアリングを入れないとダメである。逆駆動はこの程度が限界であると認識されたい。なじんで来れば多少は良くなるかもしれない。”

 何を言っているのか、全く理解できない。滅茶苦茶である。かなりの金額を支払ったそうだが、全て灰燼に帰している。もったいないことであった。
 ウォーム軸にスラスト・ベアリングを入れれば、動軸側には無くても逆駆動できる。進み角の小ささと歯面の仕上げの悪さが、こういう事態を引き起こしている。快削鋼で作っていれば、きっと動いたであろう。進み角が小さいので、効率は良くないが、一応は動いたはずだ。モリブデン・グリースを使うことも必須だ。

 筆者の機関車は、同一の線路に2輌載せて、片方を押すと発電してもう一輌が走り出す。正しい設計とそうでないものとは、ここまで違うのだ。
 筆者の発表した記事には、全ての必要項目が書いてある。そのまま作れば、必ず動いたのだ。そして、そのグループでも標準仕様として採用されて、動力機構の改善が進んだはずだ。下手な知恵を出すからこういうことになる。残念な限りだ。もう既に時効だろうが、正しいものを作り直させることが必要だ。
「オリジナルを凌ぐコピィなし」ということが分からない人が多い。発明者は様々な条件を満たすものとしてそれを作ったのだ。それを思い付けなかった人が、工夫をしてもっと良いものを作り出せるわけがない。まずは完全なコピーを作るべきであった。

 返すがえすも残念なのは、そのグループには吉岡精一氏も居たのに、吉岡氏に相談しなかったことだ。吉岡氏は筆者の設計の歯車を多角的に解析し、実験結果を含めた「ウォームギヤ調書」という数十ページのレポートをグループ内で配布している。それは筆者がアメリカに居る頃で、日本では盛り上がっているのだろうなと想像していたが、結果はこれであった。誰もその内容を読んでいないのだ。非常に分かり易く書いてあるのにだ。吉岡氏曰く、”中学生にも分かるように書いた”とのことであったが。吉岡氏は筆者のギヤを活用されていた。 

 筆者の正しい3条ウォームは手持ちに余裕があるので、希望の方にはお譲りしている。

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2017年12月29日

続 困った3条ウォームギヤ

 問題の3条ウォームをお借りした。組み立てて試験をしてみよう。

triple-thread worm gear setcorrect triple-thread worm 径が大きく8mmほどある。この進み角は9度ほどだ。大昔の2条ウォームがこれ(右)である。直径は、6 mmほどである。この進み角は11度強である。
 3条なのに、2条より緩い角度なのである。困ったものだ。

 この2条ウォームギヤは逆駆動できる。両端にスラスト・ベアリングを付けたらかなり楽に動いたが、効率はそれほど高くないことが分かったので、採用しなかった。 

 左のウォームにはネジ穴がある。非常に理解しにくい設計だ。こういうものを押しネジで締めると偏心するから、ろくでもないことになる。ロレットを切って圧入するか、ロックタイトを使うべきである。

 このウォーム・ギヤのセットはさる高名な模型人が諸元を決めて、発注されたようだ。その書簡の一部も発見された。作って売った模型屋の言い訳の手紙のコピィもある。どうしてこういうことになるのだろう。

 3条ウォームにするということだけしか考えていない。3条にすると2条の時と何が違うのかを考えていないのだ。モヂュールが同じで、同じピッチ円なら、進み角が大きくなる。こんなに径が大きければ意味がないことは明白だが、おかしいとは気づいていない。設計者に「動かないじゃないか。」と文句を言う人がいたらしいが、設計がおかしいじゃないかと言った人はいないのだそうだ。

 そのグループ内にこのギヤが頒布されたようで、皆「動かない!」で不満が溜まった。結局、「3条ウォームはインチキである。」ということになったそうだ。
 よく動くものがあり、その写真もあるのだから、比べて検証すれば良いのだが、それもしない。相手を非難するだけでは、何の進歩もない。しかし一部の人達はカツミ製の輸出用ギヤボックス(祖父江氏設計)を手に入れ、よく動くと重用している。そのギヤは筆者設計で、進み角は17度である。

 このあたりのことを見聞きすると、この国の模型人の、物理に関する理解度が知れてしまう。機関車が走るのも、止まっているのもすべて物理の法則による。工作の上手、下手とは異なる次元の、極めて大切なものが抜け落ちている。それは物理という言葉で表す必要もないほど、単純明快なことなのだ。小学校の理科の範囲である。今までの方式でうまく行かなかった原因がどこにあるのか、を考える姿勢が問題なのだ。
 


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2017年12月21日

正しい3条ウォーム 

triple thread worm 先日友人に見せてもらった3条ウォームは、正しい設計であった。実はその存在を20年以上も知らなかった。

 日本製のフランス型機関車である。有名なPacific231という機関車だ。これをばらしたものを見せてもらった。ギヤボックスはダイキャスト製で、中にはブラスの細いウォーム、POM(いわゆるアセタール樹脂、商品名ではデルリン)のウォームホィールが入っていた。歯数は40であった。互いに素である。

gear box ギヤボックスを見て驚いた。そのマークはどこかで見たものである。Asterではないか。アスターはもともとキャッシュ・レジスタなどの精密機械を作っていたので、技術者をたくさん抱えていた。そういう人たちが作ったのだから、正しいものを作れるのは当然、と言えば当然である。その辺の模型屋には無理なのも、仕方ない。

 アスターがこのギヤを採用したのは、おそらく電動の1番蒸気機関車の駆動に必要だったからだろう。押して動くことに、価値を見出したのである。押しても動かない1番ゲージの蒸気機関車を想像すると良い。そんなものは意味がない。
  大きな重い機関車だからこそ、押して動くということに意味がある。HOサイズの人たちがあまり興味を示さないのは、そこに原因がある。
 
 このギヤボックスにはスラスト・ベアリングが入っていない。精度高く作れば、要らないのである。普通のラジアル・ボールベアリングでも、かなりのスラスト(軸方向の推力)を受けられる。押されたときに拡がらないように、外側を支える部分を正確に作ってあれば良いのだ。筆者が最初作った物は挽物のハウジングで、ガタを見越している。そういう設計の時は、スラストを確実によそで受けておかないとまずいのである。後にCNCで精密に作った時はスラスト・ベアリングを排除した設計にした。非常にうまく動く。

 ともかく、1番用をOスケール用に転用したのだ。逆駆動は簡単にできる良い設計である。ただ、モータは高級なコアレスを使わないとダメである。これがいつまで経ってもわからない人が、一定割合存在するのは残念だ。

2017年12月19日

困った3条ウォームギヤ

 最近3条ウォームギヤに出会うことが多い。模型人の友人が見せてくれるのだ。しかし、少々頭が痛い。

「動かない!」と言って、筆者に文句を言う人が居る。そう言われても、その設計には関与していないのだから、文句を言う相手が間違っている。
 Oスケールの3条ウォームは筆者設計のもの3種、某模型店製の1種の2系統しか国内にはないと思っていたが、もう一つあった。それは後述するが、出来が良くて、ちゃんと逆駆動できる。

 HO 用のものは2条で以前話題に上ったが、2:30という割り切れる歯数で感心しない。
 某模型店製のものは悲惨である。動かないというのでそれを見ると、進み角が小さい。ウォームギヤの径が大きいからだ。3条であるのに進み角が普通の1条と大差ないのである。これではだめである。話にならない。

 筆者が発表した記事には全ての情報が詰まっている。
 進み角を大きくすること、材質を異にすること(快削鋼とリン青銅)、潤滑油は二硫化モリブデンを含むものを使うこと、ギヤ比は互いに素にすること、スラスト・ベアリングを使うことである。
 それらをすべて守れば、必ず正しく動く。しかしながら、そんなことは何一つ考えていない。真似をするならすべて真似をすれば良い。こちらは特許申請していないのだから、直接問い合わせて来てもよいはずだ。喜んで教えただろう。似て非なるものが世に出て、それが本家の評判を下げているとは思わなかった。いい迷惑だ。

2017年01月12日

3条ウォーム・ギヤ

 コメントを戴いているので、予定を変更して、続編である。

 筆者の3条ウォームは、85年夏のミルウォーキのNMRAコンヴェンションで発表した。祖父江氏と一緒に行って、ブースを借りた。
 2輌を同一の線路に置いて、片方押すと他方が走る様子は、大きな反響を呼び、地元のテレビ局が取材に来た。「マジック」というタイトルで放映されたようだ。そのビデオが見たかったが、 チャンスがなかった。MRに載ったのはその年だ。当時は、本社がすぐ近くの北7番街1027番地の古いビルだった。

 その発表のさなかに、一人の男がやってきて、
「このアイデアは戦前にライオネルが採用している。」
と言ってきた。こちらは そんなものを見たことが無いので、
「そうですか」
としか言えなかった。後に見せてもらった時、確かに押して動くが、それほど軽く動くわけでもなく、比較できないと思った。中を開けて見せてもらったわけではないので、今回の分解が初体験である。ギヤボックスが密閉式であるのは優秀である。
 ずっと後でわかったのは、その男がクラインシュミット氏であった。彼とはいろいろなところで会って、手厳しい評価を受けている。因縁深いものを感じる。しかし、最近は非常に仲の良い友達になった。

 大切なのは潤滑だ。良い潤滑剤を採用し、密閉されたギヤボックスを採用しないとうまくいかない。油が切れたり、埃を噛んだりするようでは意味がない。
 また、組立時にはよく洗っておくことも必要である。 

 3条ウォームが実現して、31年経った。一部のOゲージ・メーカが似たものを作っているだけで、他には同じものがまったくない。
 似ているだけでは、あまり効率が良くないのだ。材質も大切なファクタである。ブラスのウォーム・ギヤは感心しない。 

 以前にも書いたが、この直角伝導がコンパクトにできるというところが、模型用として非常に大きな利点である。傘歯車と平歯車ではあまりにもコストが掛かるし、ギヤ比や音の点で不利である。 効率も、それらに比べてさほど低くはなく、十分に太刀打ちできる。むしろ設計手法や工作精度によっては、勝てる範囲にある。またクラッチ等を用いて、押して動くようにすると下り勾配で制御不能になるので、低抵抗車輪を用いた長大編成の運行ができなくなる。これは、まだその実験機が保存してあるので、いずれ博物館で実際に運転してみる。多分悲惨な結果になる。

2017年01月10日

続々々 Lionel

BlogPaint ネジを2本外すとモータは分解できる。カーボンブラシはそこに立ったまま、抜けている。組むときはブラシなしで組んで、ブラシを落とし込み、バネをセットする。実に簡単である。モータ軸の先端は、先の尖ったネジで押さえられている(青矢印)。スラスト(軸方向の推力)を小さな摩擦で受けつつ、ガタを調節するためだ。この種の工夫は初めて見た。
 動力台車のセンターピンはない。前後はスライド溝で制限し、左右はモータの枠が当たって制限される。ゴムタイヤが付いていて、2軸駆動だが十分な牽引力がある。

 ライオネルの機関車は発電できない。これは界磁が励磁されていないので仕方がない。これがマグネット・モータならば、界磁に吸い付けられて、ますます動きにくい。しかし、3条ウォームを戦前から採用していたとは驚いた。どうしてそれが日本に入って来なかったのだろう。これは理解しがたい。ライオネルを分解した人は居なかったのだろうか。

 この方式が広く認知されていれば、鉄道模型界はかなり変わっていたと思われる。山崎喜陽氏は、「ウォームギヤは逆駆動できない宿命を持つ」とまで書いていた。単なる無知では済まされない。
 特許が取られていたとしても、昭和40年代にもなれば切れていたはずだ。もっとも、マグネット・モータが採用されていたので、逆駆動はやや難しかったろう。
 コアレス・モータが出るまでは、大きな変化はなかったかもしれないが、何かの変化はあったはずだ。 

2017年01月08日

続々 Lionel

 ライオネルは、どの機関車も押して動く。正月に子供たちの遊び方を観察した時に分かったが、「押して動かす」という動作は、本能に基づくもののようだ。
 Williamsの機関車はマグネット・モータを搭載し、整流ダイオードが付いている。近代的ではあるが、押して動かない。本家ライオネルの電圧を上げて逆転器を動かすという手法を踏襲してはいるが、車輛を押しても動かないものは、子供が認めない。すぐに横に放り出されてしまった。

Lionel motor2Lionel motor3 ライオネルのディーゼル電気機関車は、モータ軸が垂直で、ウォーム・ギヤ駆動だ。これも押したら動く。ギヤは何と3条ウォームだ。非常に細く、普通のインボリュートでは当たってしまうようだ。歯型が特殊だ。かなり「逃げ」を大きくしている。

 筆者が3条ウォームを開発した時は、ライオネルがそれを採用していたことを知らなかった。後で聞いたところによれば、戦前からあったそうだ。しかし、押して動かす時の軽さは全く異なる。ライオネルは直捲モータであるが、平型コミュテータの径が大きく、摩擦が無視できない。ディスクブレーキのようなものだ。また、ウォーム・ギヤの前後にスラスト・ボールベアリングがないので、摩擦が大きいと思った。しかし、ブラシを外すと、実に軽く押せる。これには秘密がある。

 ブラシ付きでは、レイルに押し付けて押すと、モータが何とか廻るという程度だ。子供はそれを楽しむ。筆者の3条ウォームは、指先ひとつで押せる。また発電もできる。


2016年11月17日

コメント

 また長文のコメントが送られてきた。
 前回は名乗られているので載せたが、今回は匿名で、しかも連絡先にメイルを送っても返答がないので掲載を見送る。
 よほどウォームギヤがお嫌いな方のようだ。かなり過激な文章である。模型とおもちゃの違いが、お分かりでないように思った。
 
 既存のウォームギヤと、筆者の実用化したものとは、根本的に性能が異なる。先日も友人にギヤボックスだけを見せたところ、しばらく触っていたが、
「これはいったいどういう風になっているのだ。ウォームだと言っているが、本当は違うのだろう?」
と聞く。
 ばらして中を見せると、言葉を失う。
「信じられない。教科書に載っているウォームとは違うね。」と言う。
 もちろん同じものなのだが、あまりにも動きが滑らかで、全くひっからずに逆駆動ができる。彼はギヤ比を数えていたが、 
「ウーン、参った。」
と言った。

 彼は工学のエキスパートだ。しかしこれは盲点だったようだ。米軍が使用していた6輪トラックにはウォーム・ドライヴがある。伊藤剛氏が設計した名古屋市電にはウォームギヤが使われていた。どちらもかなりの高効率だ。何よりも静粛であるのが良い。
 蒸気機関車の駆動には最適だ。2台の機関車を同一線路に置き、一方を押すと、もう片方が動く動画を撮ってYoutube にupしたい。筆者の機関車はすでにほとんどがDCC化されているのでそれはやや困難な状態だが、やる価値がありそうだ。
 それを見れば、この種のコメントは来なくなるだろう。

2016年02月25日

Free to Roll Mechanism

 この名前は、筆者が3条ウォームギヤを開発した時に名付けた。それにKTMなどが名前を勝手につけている。コースティング・ギヤなどと言っているが、正しい名前ではない。それはもっと古い時代に別のメカニズムに対して付けられた名前である。

 ギヤ比が小さいから低速性能が云々、と書いているウェブサイトがあるが、とんでもない間違いである。自分で工作もせず、持ってもいないものを、いかにも知り尽くしているかのような書き方をするのは、失礼千万で迷惑そのものだ。
 筆者の機関車は、どれも低速性能がずば抜けて良い。効率が良いから、極めて低速でも、決して躓くことが無いのだ。何も考えずに、モータを買うわけではない。優秀なモータを選んである。特性曲線を調べ、要求されるトルクを持つモータを採用している。この辺りのことは、吉岡精一氏の研究で、完璧に押えてある。

 117輌を牽くビデオでもゆっくり走っているが、動輪はスリップしている。音を聞いていると、前後の排気音が徐々にずれてくるのがわかる。モータは2台入っている。トルクが余っているからこそ滑るのだ。 発進時にも、ゆっくり滑る。ここが大事なのである。高電圧を掛けて、ビューと滑らせるのではない。ほんの僅か、トルクが過剰だから前後のうち、どちらかが滑る。この場面をアメリカの友人に見せたら、「素晴らしい。本物と同じだ。」と言った。
「ゆっくり滑るのが正しい。機関士だって分かっているから、無茶な空転は少ないよ。」 

 10輌のプルマンをチャレンジャに牽かせた。このような編成もあった。坂を登らせると、やはり、排気音がずれていく。いつも少しずつ滑っているのだ。
 チャレンジャのテンダ、従台車の車輪をLow-Dに取換えた。明らかに音が静かになった。 土屋氏から来た機関車のほとんどの車輪を取替え終わった。不要な車輪がかなり溜まった。使えそうな気がするが、多少振れているのもあり、捨てざるを得ない。

2015年05月16日

歯車、車輪についての問い合わせ

 最近、昔の記事を読まれて車輪や歯車を希望される方が増えてきた。とても嬉しいことではあるが、すべての部品をストックしているわけではない。設計変更で新しい規格へと変化したものもあるし、用途に応じて、頒布させて戴いている。

 最近作のLow-Dは素晴らしい造形である。裏面も実物風に削り、精度が一段と良くなっている。おそらく機械が更新されたのであろう。走行音が一段と良くなった。
 軸の長さを微妙に長くした。各社の規格のうち、一番長いものを基準にしたのだ。その代わり、台車の軸受けを少し彫り込む必要が出てくる。その作業をする tuner を作って頒布している。これは別項で紹介する予定だ。以前のタイプは高価であるし、アメリカから取り寄せるのも面倒だ。

 tuner は穴を深くすることができる。市販の物も同様だ。できないという記述をどこかで見たことがあるが、否定の証明は難しい。やってみればわかるが、深くできる。今回作成の物はその彫り込む能力を大きくした。アメリカに何本か出て行ったが、大変評判が良い。

 歯車は、難しい問題に直面している。昔頼んだ工場が廃業してしまったのだ。蒸気機関車用には小さいが、ディーゼル用は売るほどある。これはHOにも使える大きさである。

 先日3条ウォームを欲しい方がいらしたので、スラストベアリングを含めてお売りした。すぐに「動かない」と文句を言ってきた。案の上、有鉄心モータを付けていた。
「それは無理ですよ。」
「あっ、そうか。すまん。」で済んだが、このコッギング(米口語ではteething)の件は、あちこちで同様のことが起きている。コアレスでないと意味がないのだが、なかなか難しいようだ。

 さてこのteething と云う言葉であるが、辞書に載っていないという指摘を受けている。辞書に載っていないから怪しいというのは短絡的な発想で、メディア・リテラシィ(新聞、放送などの情報を受けて、正しく理解する力)に問題があるかもしれない 。
 この言葉は正しい。

 10年ほど前カリフォルニアで、この件について講演をした。その時、coggingと云う言葉を使ったら、ほとんどの人が不思議そうな顔をする。近くの人が小声で、「teethingだよ」と言うので、言い直したら皆が納得した顔つきになった。
 コッギングは書き言葉らしい。これが気になっていたので、次のシカゴではわざと、「書物には使ってあるが、あまり通用しないらしいコッギング」と言ったら、全員が爆笑した。
「その通り!」との声があった。
 ニューヨークの会合でも確かめたが、teethingが何の問題もなく通用した。

 言葉は生きている。辞書に載るまでにかなりの時間がかかりそうだ。使われて通用している言葉であるから、辞書に載っていなくても正しいのだ。
  現地で集めた情報を書くと、それをいろいろな方法で検索して関連情報を集める人がいる。どういうわけか、「この情報はおかしい。調べたけどどんな本にも載っていない。ウェブ上でも調べたが載っていない。」と言って来るのだが、ことごとく外れている。足で稼いだ情報には多少なりとも敬意を払ってほしい。こちらも英語は不自由しないので、それ程ひどい間違いはないはずだ。

2014年01月28日

低摩擦、高効率の鉄道模型を追求する

 このブログの副題である。趣味の方向性を宣言しているのであるが、はたしてどの程度の方が、その意義を汲み取っていらっしゃるのだろうか。つまみ食いは感心しない。全てを改善しないとよい走りは実現できない。
「適当に走ればよし」という時代は高校生の時に卒業して、そのあとはひたすら高効率の実現に邁進した。手に入るものは何でも使ってみたが、最終的に3条ウォーム + コアレスモータに落ち着いた。 
 スパーギヤはより高効率だが、使いにくいし、密閉ギヤボックスを作るのが大変だった。3条で逆駆動は完璧にできる。横浜の博物館には、「ウォームギヤは逆駆動出来ない」と書いてあるそうだ。ウソはいけない。

 1987年からは吉岡精一氏の指導のもと、RP25の研究を始めた。当初はそれでうまくいくものと思っていたのだが、走らせると不具合が見つかった。NC旋盤屋を見つけて、なだめすかして仕事をさせた。当時は景気が良かったので、なかなか仕事を引き受けなかった。 

 ボールベアリングの導入もそのころである。いったい何個買ったのだろう。トータルで数万個買ったのではないかと思う。国内外に原価であっせんした。しかし、貨車はピヴォットに限るということがわかった。

 Low-Dは一発で成功したので、その後3万軸以上作った。とにかく数を作って、原価でばらまき、国内の市場を席巻してデファクト・スタンダードにすることに専心した。利益はないが、皆さんの車輌の性能向上に役立った。
 持っていたRP25は、「あまりたくさん走らせない」とおっしゃる方に差し上げた。アメリカの友人で、性能向上に興味がない人に渡したのだ。10輌しか牽かない人達には、それで十分だからだ。
 そういうわけでRP25はもう手元にないので、さらなる比較実験が出来なくなった。

 やはり、「80輌編成をやりたい。」という人はたまに居て、大量に買ってくれる。評判は上々だ。最近は円安なので多少安くなって、買いやすいようだ。送料、関税を節約するために、アメリカまで持っていって、送ってやる。

 Low-Dの3D PDFをご覧戴けるようになった。直線を走っている時と、押し付けられてフィレットの最下端に来た時を比較することが出来る。 そこまで来ると、脱線抗力の最大値に達したわけだから、そのまま辷り上がって脱線するはずである。全軸sprung, equalizedであるから、そういうことはまずない。
 スケールスピードで時速100マイルでも、全く脱線しないし、80輌の推進運転でも、幾つものポイントをくねくねと渡れる。

2013年07月05日

Bob Longnecker氏のこと

 内野日出男氏はBob Longnecker氏とは1968年くらいからの知り合いだった。お互いに趣味のことであるから十分意思疎通は可能であったので、筆者が間に入る必要もなかった。
 Bobは内野氏の腕をとても高く評価し、内野氏はBobの頭脳に惚れ込んでいた。

 ボブは東京の下町の工場を内野氏と歩いて、ヤスリ工場を訪ねている。名前は失念したが、あるヤスリ職人の腕をとても高く評価していた。身振り手振りを交えて、機械が上下し、手で送りながら歯を付けて行く様子を再現された。また、焼き入れをするとき、味噌を塗るとか泥を塗るとかという工夫について色々考察をされていた。

 日本刀を焼き入れするときには特別な泥を塗るということは知っていた。欧米では硝石とか食塩を混ぜたものを塗るらしい。馬糞を塗るという話も出てきた。
 直接水に接するより、泥や塩を介して接する方がよく冷えるというのは面白い現象である。水蒸気の膜が出来にくいのだそうだ。

 ボブは筆者の3条ウォームの記事については良くご存知で、「理屈は分かっていても誰も作らなかったのだ。コアレスモータを使うという発想がなかったんだね。そこが最大の発明だよ。」と仰った。
 同じ線路に2輌の機関車を置き、1輌を押すともう1輌も動くという話をすると、「想像するのは簡単だが、実際に動くと興奮するだろう。」と言った。その通りであると思った。

 ボブとは、2003年にSeattleで再会している。その時は内野氏夫妻を案内しての旅で、御自宅にお邪魔した。Sam Furukawa氏には大変にお世話になった。

2012年09月21日

2012 O Scale National Convention

 正直なところ、すでに筆者自身のコレクションは終了しているし、欲しいものがあるわけでもない。しかし、コンヴェンションには顔を出したい。そこで出会う人々との交友を楽しみたいからだ。今回も思わぬ出会いがあり、驚いた。

712_5529-2 このRichは、筆者のブースに来て、じっと顔と名札を見ていた。通り過ぎてまたやって来て、じっと眺めている。変な人だと思っていたら、
「Model Railroaderに載っていただろう?。そうだ、きっとあなただ。こんな名前だった。」
と言い始めた。MRに名前が載ったことは複数回あるので、何のことだろうと思ったが、それは例の押して動くウォームギヤのことであった。
「あの記事は素晴らしかった。世界中の鉄道模型のスタンダードがあの記事でひっくり返った。MRの75年間で最高の記事だ。その著者が日本人であることが分かったので、会うチャンスが無いと思っていた。ここで会えるとは!!」と握手を求めてきた。
「あなたの記事を読んで、如何に自分たちが機械工学に無知であるか分かった。頭を金槌で殴られたような衝撃だった。あなたは素晴らしい能力を持っている。」と、ほめちぎられた。
 大きな声であったので、周りに聞こえてしまい、色々な人が「そうか、あの記事はあなたの記事か!」と握手を求めに来た。その後、何人かの友人を引き連れて来訪し、紹介してもらった。このようなことは現場に行かないと起こりえないことで、時間を割いて来た価値があった。
 祖父江氏が亡くなったので、もう3条ウォーム改造をする人が居なくなったと言うと、「あなたがやるべきだ。」とけし掛けられた。それが使命なのかもしれない。 

712_5512-2 この人は見た瞬間に誰か分かった。しかし、亡くなってしばらく経つ。人違いだと思ったら、向こうから、
Jan の息子です」と自己紹介があった。思わず ”No wonder!" と言ってしまった。お父さんにそっくりである。あまりにも似ていて、色々な人に勘違いされることに慣れているのだろう。

 彼の父親のJan Lorenzen氏とは一度しか会っていないが、強烈な個性の持ち主であった。Locomotive Workshopという名で、かなりの数のキットを世に送り出していた。Janの製品は10輌以上持っている。全て当鉄道のスペックに合うように作り替えられていて、オリジナルのものはない。鉛合金のパーツはすべて、ブラスあるいはブロンズ、べリリウム銅に置き換えられている。

712_5514-2712_5513-2 今回は父親の遺したものを、山のように積み上げて売っていた。面白いものもあったが、東部の機関車は範囲外なので残念であった。このカヴァードホッパだけ購入した。キットを持っているのでその組み立ての参考にしたかったのだ。
 例によって鉛合金のエンドビームを持っている。これは衝突時にめり込むので全長を貫くビームを入れなければならない。

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2010年10月13日

”まねる”ということ

"まねる"ということは、学ぶということでもある。まねられるということは、それが優れていることの証明でもあるのだから、決して悪いことばかりではない。
 さて、筆者は長年「鉄道模型を科学する」という姿勢で楽しんできた。いくつかの工夫は製品化されて、鉄道模型のレベルアップに貢献したという自負もある。

 しかしその"まね"の質には問題があり、過去にいくつか指摘してきた。
 まねるのであるならば、完全な形でまねをして欲しいと考える。押して動くウォーム・ギヤも13mmゲージで製品が出ている。しかしその歯数は割り切れる組み合わせになっている。歯数が「互いに素」でないと良い結果が出にくいと、発表した雑誌の記事にも書いておいたが無視されている。スラスト・ボール・ベアリングも使ってあるが、ラジアル・ベアリングのインナレースにも当たっているから無用の摩擦が生じる。
 この写真を見ればスラストベアリングの方が大きいので、その段差でスラストを受け持たせ、ラジアル軸受は接触していないことぐらいわかるはずだ。
 模型といえども小さな機械であるから、設計者の意図を汲むべきである。それが読みとれないのならば真似などしない方がよい。似ていれば同じような性能だろうというのは、根本的に間違っている。設計者は、限られた条件の中で最大の効率を発揮するように設計している。
 その押して動くウォーム・ギヤは怪しげなグリースを詰めて売られているようだ。これも記事の中にきちんと書いておいたモリブデン・グリースを使わねば所定の効率が出ない。最近はモリブデン・グリースなど安いものであり、簡単に手に入る。しかしそれを使わないのは一体何だろうか。そんなことはどうでも良いことである、と思っているのであろう。潤滑は奥が深い。調査の結果、それを使わなければならないと書いてあるのだから、ひとまずそれを使って、それから次の段階に行くときは、別の工夫をしても良いはずだ。その時は当然比較試験をしてどちらが優れているかを調べた上の話だ。

国鉄の図面による3気筒弁装置 話は変わるが、先日関西合運で1番ゲージのC62を3気筒にした機関車を見せて戴いた。C53のグレスリー・リンクをそのまま載せていらっしゃる。あまりにも細く、驚いた。図面通りですとおっしゃるのだが、その図面を描いた人の素養を疑う。アメリカから輸入されたALCO製C52のリンクは太い。魚腹のように丸く作り、曲げに対して耐えられるようになっている。それと比べてあまりにも細い上に、軽め穴まで開けてある。これでは剛性が無いのは当然だ。このような薄い部分の軽め穴など、ほとんど効果はない。

Mr.Sofue's SP5000 これは祖父江欣平氏製作によるAlco製のSP5000である。試作時の写真が出てきたので、掲載する。実物のSP5000 と C52 の製作時期はほとんど同時であり、動輪径も同様である。この太さにご注意戴きたい。十二分に強度を持たせている。
 
 C53がどうして短命に終わったかはいくつか原因がある。その中の大きな部分はこの剛性の足らないリンクにあると思う。このような構造では高速時に大きな撓みが出て、ヴァルヴ・イヴェント(弁を動かすタイミング)に遅れが出る。軸受が少しでも減れば、それはとんでもない動きを始めるであろう。
 C53の設計者がこの部分を設計するとき、オリジナルの部品の通りに作っておけば、異なる結果になったであろうと思う。この手のとんでもない設計は近代日本の形成過程に多く存在するが、その間違いのプロセスを検証するということはほとんどなされていない。写真は土橋和雄氏撮影。

2009年09月06日

続 愚行権

 筆者の世代はTMSしかない時代を生きてきた。小学生高学年からTMSを読んで育ったのだ。買ってくると、興味のある部分を父に見せ、話をした。

 技術者であった父はおおむね肯定的であったが、伝動機構、サスペンション、軸受けについては、全く取り合わなかった。「こんなものを読んでいると馬鹿になる。」

 ウォームギヤが逆駆動できる件と、ピヴォット軸受けには注油が必要という件については、以前書いた。
 しかし大多数の人は、ウォームギヤは逆駆動できない、ピヴォットには油を差してはいけないと信じてしまっただろう。

 こんなことは、工学を勉強した人には当然のことである。それが指摘されるまでに何十年もかかった。指導者の勉強不足、慢心がその原因であったことは論を待たない。読者にも知識を持っていた人は居たであろうが、筆者の父と同じように軽蔑していたのであろう。したがって、雑誌の誌面にそれが表れることもなかった。

 指導者の資質は大切である。ある程度の力を持っていなければならないのは当然であるが、謙虚に識者の意見を伺うということはもっと大切である。支配欲のある人はこの仕事に適さない。年をとると、その部分が急速に大きくなる人がいる。そうなると自分を客観視できない。

 遊びの世界ではあるが、正しいこととそうでないことのの区別を付けられない人は、退場して戴くほかないだろう。

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2007年06月02日

続 Bill Wolfer

GG1 by Dick Bregler Bill Wolferは東洋から来た一青年を大切に扱ってくれた。遊びに行けばあちこちを案内してくれたり、自分の持っているノウハウを公開してくれた。

 押して動くウォームギヤの開発に際しては、彼の二条ウォーム・ギヤの動きも参考になった。完成したギヤを装備した機関車を見せると、ずいぶん感心して、「素晴らしい。次はディーゼルだな。」と言った。

 蒸気機関車の動輪は大きく、逆駆動が容易だ。ディーゼル、電気機関車では動輪が小さいので難しい。しかし、動輪の数が多いのでその分容易である。

 彼の自宅近くのディズニー・ランド・ホテルのロビーで、そのあたりの議論をした。彼が引っ越したばかりで、家を訪ね当てるのが難しかろうと、そのホテルを指定したのである。観光客が沢山居るホテルのロビーで、機関車を並べて議論している様子は、今思い出しても奇妙な光景だ。

 その後、押して動くディーゼル電気機関車用ギヤボックスは完成し、それを持って出かけたコンヴェンションでは、自分のブースに私を引き込んで、自分のことのように皆に紹介してくれた。確か1989年のことである。

 「東洋のマジック」と称して、押して動くこと、押すと発電してもう一輌が動くこと、単三電池一本でも起動することを紹介してくれた。

 それもあって、そのギヤはアメリカの顧客にある程度売れていった。

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2007年05月15日

続 Kemtron製品の改装

RS-3 Mechanism このRS-3の床板には驚いた。床の縁取りは1/8 ×3/8インチ(厚さ3.2 mm、幅9.5 mm)の角材を貼り付けるのだ。

 エンジン・ルームの前後はロストワックスの一体部品をつける。台車はいろいろなものを見比べて、結局は韓国製の台車を大改造して付ける事にした。この機種は、UPに限ってはローラー・ベアリングを採用していない。部品箱をひっくり返して、フリクション・タイプのジャーナル・ボックスの蓋を探し出した。新しい軸箱をフライスで削り出し、貼り付けた。

 もちろん模型はボールベアリングによる支持を採用している。軸重がある程度大きいとボールベアリングの効果は著しい。

 この径のスプロケットを使う限り、チェイン・ドライヴは出力3Wくらいまでは大変良い伝達方式である。それ以上になると効率が極端に悪くなる。おそらく、負荷を掛けたとき、チェインが伸びて、ピッチが合わなくなるためであろう。

 そういう時は複列にして、チェイン・ホイールの歯を半ピッチずらせば、かなりの効果がある。こうすると音も極端に静かになる。

 チェイン・ホイールの軸ももちろんボールベアリングで受ける。かなりのラジアル荷重が掛かるので大切なことである。
  
 この写真ではまだ付いていないが、全軸集電は必要なことである。ボールベアリングを付けると、集電が極端に悪くなるので、タイヤから集電する。 

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2007年05月14日

Kemtron製品の改装

GP-7 Mechanism ケムトロンのキットは大変厚い板でできている。1.27 mm ( 1/20インチ)である。床板はもっと厚い。ガスバーナか炭素棒を使わないとハンダ付けは困難だ。
 
 ハンダめっき(これをtinningと言う。)しておいて、クランプではさみ、塩化亜鉛水溶液を滲み込ませて焙る。あっという間に出来る。組み上がると大変な質量で、補重の必要などない。

 キャブ(運転室)の窓の寸法がおかしく、修正し始めたがまとまりきらず、投げ捨てた。0.6 mmの板で作り直し、バッテリィ・ボックスも作りかえた。

 動力はAll Nationのものが添付されていたが、電流を食い過ぎるので使わなかった。なんと、起動電流が5 Aであった。昔の製品は皆そんなものであり、パワーパックの電流値は12 Aとか20 Aというものがあった。脱線してショートすると、レイルが熱くなった。

 その動力装置は友人が欲しいと言ったので差し上げた。高効率の3条ウォームギヤと、チェイン・ドライヴに改装した。起動電流は20 mAである。フル・スリップ時でも1 Aに満たない。

 出力2.5 Wのモータであるが、50輌位を牽いても加速は十分だ。4重連するので十分過ぎる能力である。

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2006年11月29日

ウォームギヤ と スパーギヤ

90-degree drive 筆者がなぜここまでウォームギヤにこだわるのか。他のギヤで「押して動く」のでは満足できないのか。

 Model Railroaderへの投稿原稿にも書いたが、最大の利点は、食い違い直角伝導であるということだ。ギヤボックスの設計、製作が容易で、小さくできる。

parallel drive スパーギヤでは歯車は大きく、モータは吊掛け方式にならざるを得ない。佐藤昌武氏の名作C53はスパーギヤが動輪の内側に密着して取り付けられている。ギヤボックスはとても作りにくい。油の飛散を防ぐのは困難だ。また、たとえイコライズしても、軸重の均等化は無理である。モータもあまり大きいのは使えない。一段ではギヤ比が足らないので2段以上にせねばならない。

 電気機関車のような各軸モータであっても、イコライズの問題以外、それは同じことだ。筆者は、油が飛散するような車輌が自分のレイアウトに進入するのを極端に嫌う。レイルが汚れて集電が悪くなるからだ。

 ベベルギヤはギヤボックスの設計が難しい。製作はもっと難しい。目的に合う歯車を製作してくれる工場を探すのも難しい。また、機関車への収まりも、ウォームギヤほどうまくいかない。実は祖父江欣平氏が試作してくれたベベルギヤ・ドライブの機関車もあるが、横から透かして見たときのシルエットが良いとは言えない。

 おそらく、スパーギヤ、ベベルギヤの効率は90%近いだろう。二段なら80%だ。ウォームギヤが70%として損失はかなり違うが、その分大きなモータが楽に入るメリットがある。

最後に音の問題がある。ウォームほど静かなギヤはない。理論的にはバックラッシュをゼロにすることもできる。蒸気機関車がわずかでもジコジコとギヤの音をさせて走るのは、興醒めだ。筆者はサウンド装置を搭載しているので、余計に音には敏感である。その点、ディーゼルは多少の音があっても許される。

 ところで気になっていることがある。皆さんの模型のギヤボックスには、動輪の駆動に伴うトルクの反作用を受けるトルクアームまたはトルクチューブがついているだろうか。昔からTMSなどに発表される作品でこれがついているのをめったに見ることがない。怪しげなシリコン・ゴム・チューブで繋いでお仕舞いというのが多い様に思う。これでは前進・後退で調子が違うのも当たり前である。

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2006年11月28日

アメリカでの再評価

clinic in San Jose 2006 昨年カリフォルニアで開かれたコンヴェンションに参加する通知を出したら、「3条ウォームギアによるFree Rolling Drive」について講演会をやらないかというお誘いを受けた。発表から20年で、そろそろノウハウを全部公開してもいいのではないか、という意味だろうと解釈した。二つ返事で承諾して、45分間の講演をすることになった。
 
 人数は多くはないだろうと思ったらしく、70人くらいの部屋があてがわれた。実際は立ち見が多くて、100人以上の参加者があった。主催者側はずいぶん驚いて、来年は大きな部屋を割り当てると言っていた。

 質問も多く活発な議論が交わされた。とても愉快な雰囲気で、冗談も通じ、何か懐かしい雰囲気であった。アメリカ人は相手が何人であろうと、何かのBreak-thru(技術上の突破口を開くこと)を成し遂げた人には最大限の敬意を以って接する。

 2台の機関車が、同一のレイルの上で片方を押して発電し、もう片方が走る場面(動画)では、拍手もあった。「信じられない」という声も上がった。 

 韓国でアイデアを盗まれたというくだりでは、聴衆のなかから「韓国人は泥棒だ。」という声が上がったのにはちょっとびっくりした。「だから特許をとらなかった。」と言うと、「そうだ、とってもやられる。恥知らずだからな!」という叫び声さえ上がった。シリコンヴァリイという場所柄もあって、切実な話題であったのだろうと思われた。この『恥知らず』、英語では"shameless"という言葉は、かなりひどい侮蔑的表現である。


 講演終了後はいろんな人から声をかけられた。ギヤを売ってくれという人たちも何人かいた。「コアレスモータを使わなければ何の意味もない」と強調すると、「それならそのモータも一緒に売れ。」と言う。ボールベアリングを通して集電すると、ベアリングが壊れるという話をすると、すぐ納得したのは意外であった。集電ブラシが必要であることには、念を押した。

 残念ながら大半の人は昔ながらのジコジコ走る機関車が、レイルとの間でバチバチと火花を散らしながら走るのが普通で、ミリアンペア単位の電流しか流れない機関車は特殊な機関車だと思っている。大きなレイアウトで走らせると、その違いが顕著であるのに、カリフォルニアといえども、レイアウトはあまり大きなものはない。せいぜい20輌程度の貨物列車を牽くのが普通だ。貨車の車輪はプラスティックが多く、摩擦が大きい。これではあまり効果はなさそうだ。

 来年はRP25の話をすることが決まっている。

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2006年11月25日

機関車の効率

Motive Power Peerformance Review 模型機関車の効率はいったいどれくらいなのだろうか。どうすれば測れるのだろうか。高校生の頃は、それで頭が一杯であった。せっかく物理の時間に習った知識を使ってみなければと、実験装置を作ったが、ストップウォッチもなく、電流計がいいかげんなテスターであったので、あまりよい結果が出なかった。言える事は10%以下であったことだけだ。

 NMRAの会報中、一番興味があった記事は、Robert E.Higgins氏の連載記事で、"Motive Power Performance Review" 動力車実力測定報告とでも訳すのだろうか。ありとあらゆる機関車の性能分析が10年くらい続いた。

 起動電圧、最高速、牽引力、効率、騒音、スケール・スピードが測定され、簡単な感想とともに纏められていた。毎月その記事を真っ先に読んだ。

Efficiencyこれを見ると、模型機関車の効率は信じられないほど低い。せいぜい6%、たまに良いもので13%くらいのものである。ひどいものでは2%というのもあった。父に聞くところによると、本物のモータは適正な負荷時では効率は95%以上あるという。あとは怪しいギヤ・トレインのせいだろうか。

 
 良いモータ、優れたギヤさえあれば50%以上が出るはずである。何年待っても、そのような機関車は出現しなかった。そうなると作るしかないということだ。祖父江欣平氏との共同作業を経て、世界最高効率というお墨付きがアメリカの雑誌に載るほどの機関車が出現した。

 冒頭の図はHiggins氏の記事に使われていたイラストである。この装置は簡単に自作できる。ある一定距離を走る時間と電流・電圧、勾配だけで計算できる。

 押して動く機関車では、最初の出だしで機関車が勾配を滑り落ちてしまうので、保持の仕方にコツがある。
 
このFEF-2の効率は61%ほどだ。

 50%を超えると、もう別世界である。単三電池一本で起動してそろそろと走る。起動電流は40 mA以下。80輌牽いてスケール・スピードで70マイル/時で走る時でも電流は800 mA以下だ。

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2006年11月21日

誤解

UP9000 3-cylinder  押して動くギヤを装備した機関車を持ってあちこちに出向くうちに、「そのギヤを売ってくれ」と頼まれることが多くなった。

 ギヤセットとボールベアリングを渡すと喜んで受け取る。しばらく経つと不思議なうわさが流れてくる。「あいつのギヤはインチキだ。全く動かない。」

 親しい友人が様子を知らせてくれた。なんと、コアレスモータを使わないで、ごく普通の有鉄心モータをつけていたのだ。モータそのものの軸をまわしても廻りにくいものを、その数倍の速度で廻せる訳がない。スラストベアリングが入っていなければ、力任せに廻して、たちまちラジアルベアリングがパンクしたであろう。

 大抵の場合は、御本人に連絡すると「なあんだ、そういうことか。」と納得して戴けたが、最後まで御理解を得ることができなかった方たちも複数あった。

 このあたりのいきさつを父に話したところ、「新しい技術を導入すると、そういうことが起こりうる。」と言った。要するに100%そのまま使わない人がいるからだ。
 
 父は昭和10年頃に某電機会社の技師になった。その頃は欧米からの新技術の導入が猛烈な勢いでなされていた。100%のコピィを作ればそれは問題なく作動した。ところが日本の技術者が「こうするといい」と、一部の改変をする。すると不都合が生じるのだそうだ。改変する人は自信があり、改良だと思うのだろうが、実はそこに落とし穴が潜んでいることが多かったという。総合的な力が不足している場合は、全てを受け容れるべきであった。

 旧国鉄のC53の開発にもそのような部分があったようだ。3気筒機関車が欧米でかなりの成功を収めていたのに、日本のそれは極端な短命で終わった。最も大切なヴァルヴ・タイミングの遅れを小さくする工夫(剛性のあるテコ)を無くしてしまった(軽め穴を開けたこと)のがその原因という説がある。

 かえって、低開発国においては輸入品に手を加えずに使うので、技術導入が成功することが多いと、友人から聞いた。

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2006年11月20日

押して動くディーゼル機関車

chain drive 祖父江欣平氏の工房には走行装置取替えの依頼が殺到するようになった。その点ではこのビジネスは成功であった。

 ミルウォーキの会場で出会ったアメリカ人が、デモ機のFEFをいくらで売るかと聞いてきた。「私の宝物だから売らない。」と言ったら、「それなら注文をするからたくさん作れ。」ということになった。
 祖父江氏はカツミ模型店の下請けをしていたので、「カツミ模型店を通しての下請けならやってもよい」ということになった。仕事は始まったが、彼らの資金が続かず、結局のところアメリカには数台の輸出で終わったようだ。残りは国内で捌けたという。
 
 しかし、うわさがうわさを呼んで、祖父江氏のところにはアメリカから直接、改造注文がやってくるようになった。

 蒸気機関車の改造がある程度済むと、次はディーゼル機関車の改造を望む声が大きくなった。
Bill Wolfer氏が「ディーゼルは車輪径が小さいから難しいね。」と言ったので余計やる気になった。

 確かに車輪が小さければ、その分車輪を回転させるトルクが小さくなる。しかし、車輪数は多いから、押した時掛かる力が分散して、有利になる。駆動軸を床下に通すとモータの収容場所がなくなり、結局チェインで上から下ろすことになった。このチェインはプラスチック製で、精度高くできている。台車間が長い大型機の場合はモータから直接に駆動できる。

 この方式で部品を標準化し、いろいろな形式の改造に応える方法をとった。これはアメリカの模型屋を経てかなりの数が出て行った。一部はシカゴの科学工業博物館のレイアウトで、運転用に採用されたと聞いた。毎日数時間走らせるのであるから、耐久性に目をつけたのである。

 この一群の製品には、祖父江氏の発案で、車輪と車軸の固定に細目のネジを用いた。細目とはISOネジのうち、細かいピッチのネジである。同じトルクでも締付け力が大きく外れない。ちょっとしたことなのだが大きな進歩であった。

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2006年11月19日

互いに素

FEF2, FEF3 歯数が『互いに素』であるというのはどんな意味をもたらすであろう。ここが、このギヤの最大のノウハウである。アメリカで売り出された韓国製のものには40:4というものもあったそうだそうだ。これでは駄目だ。

 よく見るスパーギヤの歯数比に40:20などがある。これは最も避けるべき組合わせである。必ず同じ歯が、小歯車の回転2回に1回当たることになる。何かのきずがついたり、異物を噛み込んだりしていると、いつまでもその影響から逃れることはできない。

 それでは40:19であったらどうであろうか。互いに素であるから、全ての歯が異なる組み合わせで当たるであろう。

 実用機械では歯車の組み合わせはこのような比になっている。自動車の変速機のギヤ比を調べてみれば直ちに分かることだ。決して割り切れない比率になっている。ぜんまい式掛時計の、長針短針の関係を作る歯車(日の裏歯車という)を除くすべての歯車はこの組み合わせを採用している。そうでないと、時計は引っかかって止まってしまう。

 これは英語で"harmonic wear"すなわち『調和のとれたへり方』を期待できる組み合わせである。また、材質としては歯数の少ない方を硬い材料で、多い方を軟かい材料で作らねばならない。

 このようなことは機械工学の常識である。実はそのことは、技術者であった父から教えられたことだ。模型においてはその点が極めて怪しい。ゴロゴロという音がするものは、ギヤトレインの設計が間違っている可能性が高い。

 面白いことに、アメリカには日本製の模型の動力装置を取り替えることを生業としている人たちがいる。さすがにその人たちの製品を点検してみると、歯数の比は『互いに素』である。この点では合格である。

 彼らは日本の模型をかなり馬鹿にしている。露骨に「日本には機械工学の分かる奴はいないらしい」と言う。そういう連中に、この押して動くギヤを見せてやると、息を飲む。言うべき言葉が見つからないらしい。

 しかし、みな同じことを言う。「下り坂では暴走するだろう」と。「電気ブレーキが効く」と言うと、「下り坂で止まっていることができるか」と聞いてくる。

 「モータの焼けない程度の電流を流しておけば、問題なく止まっていられる」と答えると、「そんなバカな」と信じない。単三電池一本をつないでやって見せると、「そんな高級なモータを使うのはばかげている。」と捨て台詞を残して行ってしまった。

 現在では、コアレスモータはそんなに高いものではなくなったし、DCCなら、ブレーキを作動させることぐらいわけない。。

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2006年11月18日

海外での反響

FEF2 w/free-rolling drive 日本ではあまり反響がなかった。しかし、合葉博治氏が直接電話して来られ、歯車とモータの諸元を知らせよとおっしゃったので、Faxで送った。その後すぐ京王プラザホテルで会うことになった。氏は工学者としての観点からの感想を述べられ、「将来は、世界中の鉄道模型のスタンダードとなるであろう。」という予言を戴いた。発表した歯車について効率を計算したデータを持って来られた。「ギヤは効率の高い部分を選んである。しかもモータの特性がこの機関車の要求に合っている」とお褒めの言葉を戴いた。「あなたは工学部出身か?」と聞かれた。「いや、門前の小僧です。」と言うと、ずいぶん驚かれた。「この歯車とモータの組み合わせを、世界中に広めるお手伝いをさせて戴く。」と約束されたが、その直後に病魔に斃れられた。

 海外での評判は熱狂的であった。世界中から、称賛の手紙を戴いた。フランスからは、英仏ごちゃ混ぜの凄まじい手紙が来た。ドイツからはまともな英語の手紙が来た。もちろんアメリカ、イギリスからもたくさん来た。

 雑誌の発表と相前後して、祖父江氏を案内してミルウォーキのNMRAのコンヴェンションに参加した。2台の4-8-4を同一のレイル上に置いて、片方を押せばもう一方がその発電した電力で走り出す。このデモンストレイションで、人気を博し、地元のテレビも取材に来た。

 その様子をじっと見ていた人がいた。AJINの趙南達(チョーナンダル)氏であった。「すばらしいデモンストレイションだ。これは世界中に広めるべきアイデアである。」と話し掛けてきた。

 趙氏はその後、技術指導を仰ぎに来た。何回か韓国に出向き3条ウォームの製作指導をした。しかしその結果は思わしいものではなかった。

 不思議なことに、私が手取り足取りして教えた社員はその次に行くと姿が見えないのである。そんなことが3回ぐらいあって、ようやく気がついた。彼らは筆者から得たノウハウを持って、ライヴァルのサムホンサなどに就職したのだった。
 しばらくすると押して動く機関車がサムホンサから出てきた。

 アメリカ人の友達が電話を掛けてきて「お前のアイデアは高く売れたのか?」と聞く。「盗まれたんだよ」と言うと「やっぱりな。うまく動かないよ。」と言った。筆者はその時点で100%のノウハウは伝えてなかったのであった。

 AJINはヨーロッパ市場向けの製品に搭載したようだ。これは確実に作動したという。

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2006年11月17日

押して動く機関車の実現

Model Railroader 指先で押しただけで動く機関車を実現するには、次の3つの条件がある。どの一つが欠けても不可能である。

 .灰▲譽好癲璽拭´■馨鬟Εーム ボールベアリング
 ”當未離泪哀優奪肇癲璽燭任蓮鉄心が吸いつけられているので動き出せない。
 ▲ヤ比は比較的小さくした。そうしないと押して動きにくくなるからだ。それには低回転高トルクモータを使うことが前提となる。
 ボールベアリングは当然のことである。しかし潤滑剤もまた大切だ。普通の潤滑油では、停止時に逆駆動すると、歯面が強く押し付けられ、極圧剤がなければ動き出せない。

 何台かの機関車にこのギヤを装備して、レイアウト上を走らせた。極めて快調であった。何かの手違いで電源が切れても急停車することはない。すなわち、列車の脱線事故が、ほとんど皆無となった。

 震災で亡くなった神戸の魚田真一郎氏に、「電源を切っても3 mくらい惰行するよ。」と伝えると、「そんなん、ウソやわ。できるわけないやろ。もしホンマやったら、フランス料理のフルコースをおごりますわ。」と言った。その週末、車で来た彼を仮設レイアウトに連れて行き、60輌編成の貨車を牽いた走行を見せた。彼は仰天して、
 「エライことになりましたなあ。これで世界中がひっくり返りますわ。」と言った。当然、フランス料理を御馳走になった。

 祖父江欣平氏の工房で魚田氏の機関車を改造した。受け取った彼は喜んで、「ホンマに世界一の機関車ですねん!」と電話の向こうで叫んだ。

 これは特許を申請すべきか、ずいぶん考えた。当時、韓国をはじめとする新興国では不法行為が続発していた。たとえ特許を取得できても、海賊版が堂々と売られることになるだろうことは予想できた。特許防衛に手間をかけるのは現実的でない。

 多からぬ特許収入より、発表して名を残すべきである。という結論に達した。早速日・英文で原稿を書き、投稿した。

 「とれいん」誌には直接電話してページを空けて貰い、原稿と現物を送った。その記事は直ちに翌月号に載った。Model Railroader誌には3ヵ月後に載った。

その年の夏にミルウォーキィでNMRAのコンヴェンションがあった。それに出品しようということになった。それは、祖父江氏にとっては最初の海外旅行であった。

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2006年11月16日

試作

1-thread worm2-thread worm3-thread worm 



 

 左から順に、1条、2条、3条のウォーム  
 
 しばらくして祖父江氏の工房を訪ねたとき、「こんなものがある。」と言って小さなギヤボックスを見せてくれた。「モリコーといってね、昭和20年代の終わり頃、こんなギヤを出していたんだよ。」

 それは、まさに頭の中で考えていたものであった。ただ、スラストベアリングがなく、ちゃちな板金のギヤボックス内に、小さなベアリングの玉がむき出しで入っていて、カラカラと音を立てて廻る玩具っぽいギヤであった。ウォームは2条で細く作られ、進み角は15度くらいであった。

 これを厚板または鋳物で作ったギヤボックスに入れ、もっと進み角を大きくして、スラストベアリングを装備すれば完成する。

 祖父江氏もまた同じことを考えていたのだ。「ディーゼル機関車用の13:2というギヤに、よく油をさせば動くんじゃないか?」という。そこで3条ウォームの話を持ち出した。
「ギヤ比は互いに素にして、細いウォームを作り、潤滑剤は二硫化モリブデン、スラスト・ベアリング装備にすれば完璧ですよ。」

 祖父江氏は大満足であった。もやもやとした考えがはっきりとした形になったのだ。早速、歯車屋に注文した。「歯車屋は動くもんか。」と言った。動いたらタダにしてやる、とまで言った(実際タダになった)。

 その2ヵ月後、祖父江氏から電話があり、ギヤボックスの試作品ができたという。「動くけど動きが渋い。どうしたらよいだろう。」と言う。
 見ると、普通のグリースを使っていた。よく溶剤で洗ってから、持って行った軟らかい二硫化モリブデンを塗った。すばらしい動きであった。祖父江氏は感動していた。「何であんたこんな潤滑法を知ってんだ?」 

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2006年11月14日

逆駆動可能なウォームギヤ

3-thread worm gear set その頃、仮設レイアウトで40輌ほどの運転をしていた。2,3台しかない機関車を徹底的にいじくり回して楽しんでいたのだ。滑らかに起動から停車できるようにはなった。

 あるとき、父と模型の話をしていた。父も昔は模型が好きだった様だ。
「ウォームギヤは逆駆動できないから…」と切り出すと、「そんなことはない。ねじれが急角度なら逆に動くはずだ。」という。
 確かに、オルゴールのガヴァナのウォーム、車のステアリングのウォーム、いずれも逆駆動している。

 図書館で歯車の本を調べてみて驚いた。ウォームは逆駆動できると明記してある。むしろ、そのあとに続く文章にはもっと驚いた。「セルフロックを望む場合は(要するに、逆駆動ができないようにするには)進み角を4度以下にすることが必要」とあったのだ。

 つまり、鉄道模型のギヤは、わざわざ逆駆動できない角度のものを作っていたわけだ。

 後に、アメリカ製の模型のギヤを調べて驚いたことにはそのほとんどが逆駆動可能な設計であったことだ。そのほうがギヤの効率が高くなることにも気がついた。

 
 しかし、仮によいギヤの設計ができたとしても、逆駆動されるモータがあのマグネットモータでは無理である。どうしてもよいモータを探さねばならない。場合によってはそのようなモータを作る必要もあるだろう。直捲モータなら抵抗は少ない。

 探しているうちに髭剃り用の直捲モータを見つけたので捲き線をほどいて、捲き直してみた。ある程度は軽く廻るが、とても軽やかとは言えないものであった。これでは駄目だ。

2006年11月13日

スラスト・ボールベアリング

thrust ball bearing ウォームギヤのスラストはかなり大きい。ちょっとしたエンドレスを10輌程度の貨車を牽かせて10日ほど連続運転してみたことがある。ウォームの端を支えるワッシャが擦り切れてしまった。

 スラストベアリングは意外に安価な商品だ。これをウォームの前後にはさんでみるだけで電流がかなり減る。負荷が掛かっているときの損失がかなり減っている。次にラジアル・ベアリングを入れると多少電流が減った。ウォームギヤそのものの効率はそれほど悪くはなさそうだ。

 2輌の蒸気機関車のギヤボックスにベアリングを入れて悦に入っていた。そのころ、井上豊氏がTMSに「D51にボールベアリングを入れる」記事を発表された。そのベアリングは筆者が提供した。

 ついでどなたかが、ギヤボックスにベアリングを入れて発表された。そのギヤボックスには、不思議なことにウォーム軸の前進時のスラストを受けるようにラジアルベアリングが2個直列に入れてあった。起動時のスラストより、急停車時のスラストの方が遥かに大きいので、これは無意味だ。こんな記事を載せるのはおかしい。編集部は何も分かっていない。

 考えてみれば、モータが止まれば動輪が止まり、動輪からモータが回らないのは不思議だ。どうして、誰もそれを不満に思わないのだろう。ウォームギヤは逆駆動はできないのだろうか。電源の一時的な遮断でさえも、列車全体がつんのめるような衝撃が起こり、そのたびに列車の一部は脱線する。とてもいやな気分だ。これでは実物のような80輌編成の運転などはできるわけはない。

 どうしても慣性のある列車の運動を妨げない駆動装置が欲しい。その願望は高まるばかりであった。

 ウォームギヤは、鉄道模型には適した歯車装置である。1段で大きな減速比が得られる。直角駆動であるから、車体に大きなモータが入れられる。もしこれが簡単に逆駆動することができたとしたら、モータは猛烈な速度で廻されることになる。モータ軸を回転させてみて、その抵抗を調べた。このトルクに減速比を掛けたトルクで動輪を廻さねばならないのだ。

 「これは無理だな」と直感的に感じた。たとえギヤの問題が解決しても、コッギングのないモータが手に入らない限り実現は不可能だ。


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