ボールベアリング

2023年11月01日

続々 installing the flywheel

 フライホイールを取り付ける台は、以前紹介したギヤボックスの鋳物を再利用した。内側を削って軽くし、軸受部にはブロックを貼り付けた。全て銀ハンダで作ったので極めて頑丈である。

support block 台枠のアングルにネジで締める。側面は皿ネジを使って沈めた。こうしないと上廻りがかぶせられない。衝突時のショックを受け止められるように、構造を十分に検討した。



clearance 回転部の沈め具合はこのような具合で、隙間は 0.4 mm程度だ。床下器具のハンダは銀ハンダで付け直した。重い構造物を付けたまま、台車を外して机に置くと、妙な力が掛かって外れる可能性があるからだ。 

finished flywheel ラジアルベアリングをよく吟味した。20個ほど出して順に取り付け、廻してみて最も静かなものを選んだ。重いものを廻すので、かなり過酷な条件である。
 選ばれたのはやはり日本製であった。残り少ない虎の子の日本製である。これでこのサイズの日本製は払底した。これを買ったのは35年ほど前である。ベアリング屋の番頭が親切にしてくれたことを思い出す。
 スラストベアリングは近くのベアリング専門店で買った。奥さんが、念入りに調べてNMBのを出して来てくれたが、価格は意外に安かった。この店は親切で珍しいサイズもよく揃うのでよく行く。

 慣性増大装置第2弾はこれで完成だ。12時間ほど掛かった。次回はこの半分で作りたい。 

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2022年04月25日

続 装着マニュアルを書く

 潤滑剤はモリブデングリースを用いる。極圧剤が入っていないグリースでは意味がない。ほんの少しを薄く塗り付ける。”互いに素”の組み合わせだから、一箇所塗れば全体に広がるはずだが、それにはかなりの時間が掛かる。

  シャフトにボールベアリングを嵌めるときは、ミシン油を少し付ける。そうすると、シャフトにぬるぬると入っていく。ベアリングは油膜で浮いていなければならない。もちろんホコリを噛まないように、十分拭ってからの仕事である。ボールベアリングを注油なしで嵌めるとどうなるかは、やってみると分かる。数年たつと黒い微粉が付くようになる。微妙にすり減って、ガタツキが出始めるのだ。油膜は不可欠である。
 
 ギヤボックス本体にネジを立てるが、このネジ立てのあとでリーマを通すのが良い。中の膨らみを取り去ることができるからだ。
 左右を組立て、車軸を嵌めて裏蓋を取り付ける。車軸を廻せば、ウォーム軸がするすると抵抗なく廻るはずである。ウォームギヤは無音で廻るものである。この利点を最大限活かしたい。


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2022年04月23日

装着マニュアルを書く

 3条ウォームを機関車に装着するには、ギヤボックスを組まねばならない。そのマニュアルを書き始めた。

 ギヤボックスは、3D成形時の厚み指定があるから、薄くは作れない。薄くしたいときは外側を 0.5 mm程度は削れる。また、長さ方向はかなり削ることができる。トルクアーム装着用の角(つの)が出ているが、これも切っても構わない。片方がネジ留めできるなら、スーパーXで接着すれば、全く問題ない。

 左右を組むネジは、首下寸法が十分ないと、場合によっては引き抜かれてしまう。材質が金属でないので、長いネジが必要である。特にリーマを通すときは圧力が掛かるので、万力に挟んで軽く締め付けないと安全ではない。ウォーム軸はボールベアリングのアウタレースを直接挟む。そのときに穴の内側がざらついていると、動きがおかしくなる可能性が高い。リーマ仕上げで、つるつるにしておかねばならない。

 ギヤはシャフトにロックタイトで留める。その他の方法は事故のもとである。シャフトにニッパなどで傷を付けて押し込むという荒っぽいことをする人もいるが、それは偏心の元である。またシャフトも曲がる。金槌で叩いて押し込むのは、絶対にやってはいけない。シャフトはマイナス17ミクロンのを特注した。滑り嵌めである。絶妙な固さで嵌まる。位置は何らかのジグで決めておく。固まるまで1分半くらいだ。
 以前、これをハンダ付けした人が居て、「動かない!」と大騒ぎだった。見せてもらうと、ハンダが多過ぎて、歯面にまで付いていた。それをヤスリで削っているのだから始末が悪い。彼は、ギヤボックスというものの意味を知らない。ギヤボックス無しで空中戦状態の噛み合わせだ。これでは動くわけがない。自分の無知を棚の上に上げて、「インチキなギヤ」だと触れて廻った。
 正しい使い方を知っている人にはたしなめられたようだが、それでも懲りずに悪口を言って歩いたようだ。付ける薬がないとはこのことだ。  

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2021年10月19日

怪しいボールベアリング

UP express 貨物列車を走行させている時に、ある貨車からキーコーと金属音がすることに気が付いた。すわ、ホット・ボックス(軸箱の油切れで、軸受が焼け切れること)を疑い、列車から外した。ばらして、じっくり見た。

 驚いたことに、それにはボールベアリングが装着されている。Lobaughの台車枠に、座グリをして、ボールベアリングを入れたのだ。車輪は当然Low-Dだ。そんな音などするはずがないのである。

 裏返して車輪を廻すと4軸とも、キリキリと音がする。信じられない話だ。ばらしてから、ボールベアリングそのものに軸を通して廻してみると、ガタガタと振れる。また、ガリガリとひっかかる。このベアリングは友人から、
「すごく安いけど、十分な性能だから」
と言われて買ったものであることを思い出した。
 当時、新しく改造した機関車のテンダに入れたのだ。驚いたことにそのテンダから異音が発生した。ジャラジャラという音だ。すぐにばらしてベアリングを外して廃棄した。残りの数十個も捨てたが、10個ほどは行くえ不明であった。それがこうして見つかったわけだ。

 見かけは普通の両シールド・ボールベアリングの形をしているが、時々回らないものもある。切り粉が入っているのだ。溶剤中で振り洗いすると、なにかが出てくる。最低だ。
 洗った後、グリスを薄めて漬けておき、溶剤を飛ばすと少しは使えるらしい。しかし、使い続けることは無理だろう。一体どのような用途向けに作られたものなのだろうか。役に立たないことは明白だ。製作は資源と時間の無駄である。
 詳しくは知らないが、中国製だと聞いた。 

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2021年02月03日

完全直流デコーダ

 ゆうえん氏は先回の記事で納得戴けたのだろうか。次いで、完全直流デコーダによる駆動についての質問があるが、これは高効率低摩擦の機関車、列車を動かしたことのない人には、なかなかお分かり戴けないと思う。

 筆者のOスケールの機関車は、どれも3 kg以上あり、すべての回転部分にはボールベアリングが入れてある。ギヤボックスを外せば、どれも0.5%以下の坂を下り降りる。モータと連結しても1.5%弱で下り降りる。単3電池一つでゆっくり起動し、毎秒数ミリの速度で動く。このような機関車であるから、電池をたくさん用意して1.5,3.0,4.5 Vと電圧を上げるだけでも、滑らかな運転ができるほどである。伝達効率は50%を下回らない。

 一方大半のHO以下の模型では、モータの出力の大半は動力伝達装置内や、車軸の摩擦で消費され、最終伝達効率は10%もいかない。 NMRAのレポートによると、あるHOのシェイの実測値は0.25%であった。こうなると負荷の大小は問題ではなく、どうすれば一定速度で走らせれるか、が最大の目標になる。昔はギヤ比を大きくする以外の方法はなく、モータは高速で回り続けて凄まじい音を出していた。
 Back emfフィードバックができるようになると、かなりギヤ比を小さくしても、見劣りしない走りをさせることができるようになった。これが現実の世界であろう。
 
 もし、HOでも”全くひっかかりのない滑らかな運転ができるようなボールベアリング装着の高性能機関車”ができれば完全直流デコーダが使えるだろうが、牽かれる車輛すべてが、低抵抗車輪と摩擦の少ない軸受で統一されている必要がある。その実現は、かなりハードルが高い。しかも、小さなものは大きなもののようには動かないのは、何度もここで採り上げた通りである。


 ゆうえん氏は、考え方には優劣が付けられないというのが持論のようだが、それは同じスケールでの比較の場合である。大きさが異なるものは同じ考えでやってはいけない場合もある。アメリカで、韓国製の機構のあやしい模型にBack emfを効かせて無理やり一定速で走らせてモータを焼いたという実例をよく聞く。優劣は明白だ。
 HOに向いたやり方があるだろうが、それがほかのサイズの模型にも通用するわけではない。BEMFは動きが今一つの模型を、見かけ上調子よく動かす機能であるが、かなり無理をしている部分がある。

 ちなみにこの永末氏のデコーダは、氏が筆者の地下室のレイアウトでの走行を見て、実現したいと感じられたのがきっかけで作られた。残念ながら、筆者と土屋氏以外には売れなくて、大半を筆者が購入した。音声用デコーダと別にしてあるので、全く相互干渉がなく、きわめて静粛な運転ができる。蒸気機関車には最適である。この製品の概要に、
 DC駆動については、BEMF駆動とは対極の位置にあり、高品位のコアレスモーターと駆動伝達装置により効果を発揮いたします
とある。これはメリット・デメリットの話ではなく、用途目的が異なると言っているから、比較はできない。

 要するに無理やり一定速で走らせるのが目的ではなく、負荷が掛かれば遅くなり、スロットルを開けば出力が増大する。開き過ぎればスリップする。スロットルを戻せば電圧は出力はゼロとなって電気的に切り離されるから、勝手に惰行する。本物のような運転を楽しみたい人はこの方式を採用するが、その性能を持たない動力車には使えない。

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2020年08月25日

日本製のミニチュアベアリング

 しばらく前、日本製のミニチュアベアリングの話題を出した。過去の懐かしい思い出を書いたところ、「日本製のものはない」という珍説を唱える方が、とんでもないコメントを送って来たが掲載しなかった。各方面に御迷惑をかける可能性が生じたので、そのブログ記事そのものも削除した。
 一般論として、「〜はない。」と断定した話で、正しいものは少ない。自分の視野が非常に狭いことを自白しているようなものだ。その種の 否定を断定口調で書くブログはこの趣味界にも多々あるが、それらは内容が怪しいと自己宣伝しているのと同じだ。否定の証明は困難だ。


Made in Japan  2Made in Japan よく調べてみると、手元に日本製のものは多数ある。ラベルに書き込みがあって、プライヴァシィの点で公表ができないものもあるが、筆者がベアリング屋で直接購入したもののヴァイアル(ベアリングを多数入れた長い容器)も見つかった。その店の納品伝票まであるから、筆者が購入したものであることは間違いない。


 
供給元の安定と確保が必須の産業では、国産品を作るのは当然のことである。また、西側諸国の軍用はもちろん、ほとんどの民間航空機のジャイロは、アメリカ製だそうだ。Honeywell ともう1社あるが、アメリカ製のボールベアリングを使っているとの証言を得ている。

<追記>
 客観的事実のみの記述とした。
 また、削除された部分を再現し引用することを禁ずる。



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2020年07月06日

Low-D 再生産

 しばらく枯渇状態が続いていたので、希望された方にはご迷惑をお掛けしていた。本来は順調に供給できるはずであったが、製造所の都合で受注できなくなっていた。
 製造所は航空機産業の拡大で多忙になり、仕事を受け付けてもらえなかったが、最近のCOVID19で航空機不況に陥り、干上がりそうな気配になっていた。この製造所の技術力は、航空機製造に参入する試験に通っているので、間違いはない。いくつかの製造所で作ったのを比べたが、最も高品質で、是非ともここで作りたかった。いつも不況に陥ると筆者が注文するので、彼らにとってはありがたい客ではある。そのうち好況になると、またはじき出される可能性はないわけでもない。

 今回はアメリカの富豪たちからの注文も溜まっていたので、一気に片づける。持って行ってやることはできないが、貨物で送ってやれば良いことである。

 同時にOJゲージ用の注文が来ていた。25年ほど前、吉岡精一氏の設計の試作を行っている。500軸しか作らなかったが、仲間内で捌けたようだ。それを再生産したいのだ。バックゲージは21.5 mmである。OJ用の車輪は厚みが少し薄い。#137 (3.5 mm)である。フランジの規格はLow-D と同じで 1 mmx1 mmである。フランジ厚みの基準点は、吉岡方式でP点を採っている。こういうところに実物知識を持ち出して批判する人がいるが、勘違いも甚だしい。模型は実物とは違うということを、理解できない人は多い。Low-Dは、模型として最高の性能を出すことしか考えていない。 
 
Low-D OJ用長軸型 (4)Low-D OJ用長軸型 (3)Low-D OJ用長軸型 (2)Low-D OJ用長軸型 (1) 長軸のサンプルが残っていたので寸法を示す。軸端部は Φ2.0であったが、Φ1.5にする予定だ。そうすると小さな軸箱にも入る。

 スポーク車輪は作らない。今専門家が検討しているが、3Dプリントという方法もありうる。これなら、スポークも波状の輪心も思うままだ。


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2020年01月30日

ボールベアリング

 重いフライホィールを確実に支え、摩擦を少なくするにはボールベアリングを取り付けねばならない。この大きさからすると 5 mm軸はやや細いが、なるべく小径にしたい。静止しているものではなく、走る車輛だから事故を起こす時もあるだろう。その時に壊れてはならない。丈夫な軸受にスラストベアリングと共に取り付け、ラジアル方向だけの力だけを受け持つようにした。

stopper 基礎になる1.5 mm厚の板に、厚さ6 mmのブラスの板をハンダ付けしたものを、前の軸受にした。本体の床板と合わせて、底面の厚みは2.5 mmとなるから、十分な剛性である。支えも付けて、耐衝撃性を持たせた。この支えの材料は廃金属商で買ったブラスの円盤で、直径は75 mmあった。あいていた穴には、 6 mmの棒を通してハンダ付けして埋めた。
 メタル・ソウで円盤を平行に切って生じるかけらを、支えにしたのだ。ハンダ付けは銀ハンダで確実に付けている。こういう仕事はガスバーナーで念入りに行う。ハンダは完全に浸み込み、合金層は薄いからとても強い。ロウ付けと同等の強度だろう。母材が焼きなまされないから、結果としてはこちらの方が強いであろう。後ろの支えは、支えを付けたものをネジ留めした。スラストベアリングを挿んで取り付ける。

installing ball bearing ボールベアリングは、専用工具で埋め込み、予圧を掛けてスペーサを固定する。これは日本製のベアリングであって、極めて静粛である。某国製のベアリングには、シャーと音がするものがある。こういう高回転で重負荷の物には、とても使えない。

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2019年11月16日

続 先台車を作る

new smoke box 先台車はガタが無いように作るのが基本だ。よくできた機関車なのに復元がないというのはよく見る。また復元が効いているのに、車軸が台車の中で左右に動くものがある。これでは何の意味もない。この写真は現在製作中の4-8-4である。steam chest 部分が切り取られているのはなぜだろう。


pilot truck 当鉄道では内側先台車は、すべて共通部品を使っている。細かい部品は、外から見えるところしか付けない。機能を最優先しているからだ。
 ボールベアリングは、台枠にロックタイトで固着する。車軸もロックタイトで留める。片方の軸(ここではたまたま前方)は左右つないだものの中心に溝を切って、台車枠の蓋部分の支点に嵌める。こうして3点支持が完成する。前軸は少し捻ることができるが、左右には全くガタがない。

centering device 中子にはボールベアリングの小さいものを用いて、V字斜面を転がらせる。ほんの少しの偏倚でも強い復元力が現れる。この写真のバネは仮のものである。もっと硬いバネを用いる。

 この台車のボールベアリングは外径 8 mm、内径 5 mmのタイプだ。軸が太いので、グリースの撹拌抵抗が大きいことが危惧された。 
 案の上、完成したものを手で押しても、軽くは走って行かない。押せば動くが、慣性でするするとは行かない。重いものを載せて軸重200 gもあれば、0.5%の坂でも下り降りる。無負荷なら1.6%くらいでかろうじて滑り降りる。このグラフの通りである。

 径の大きなボールベアリングは抵抗が大きい。普段はΦ19の車輪に内径 2 mm 外径 5 mmのボールベアリングを付けていた。2 / 19 であって、テコ比で軽く動くが、今回は 5 / 21 だから重いのは当然だ。
 HOではΦ1.5を使っても 1.5 / 9.5 だから、軽くは動かないだろう。軽負荷ならピヴォットに限るというのは、こういうことだ,
 優秀な旋盤屋で良い材料を使って作ったピヴォットは、極めて優秀な値を叩き出す。

 この先台車も、細い軸にすることはできないことではないが、機関車には思わぬ力が掛かることがある。例えば脱線時に、前につんのめったりする。その瞬間の衝撃力で、軸が曲がることは十分に考えられる。軸はステンレス材なので、塑性変形し易いのだ。細い軸の場合は堅い炭素鋼を使うべきだが、錆びやすいから考え物だ。


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2019年11月04日

クランクピンにボールベアリングを入れる

 4-8-4の出力は大きい。牽引力も速度も大きいからだ。主動輪のクランクピンには大きな力が掛かる。1985年頃、大きな仮設レイアウトで60輌ほどの列車を、長時間全速力で牽いていた時に、big endが熱くなった。本物と同じだ。出力が10 W程度もあり、それがロッドを介して伝わるのだから、その摩擦は無視できない。熱を持つのは当然であり、その損失は大きい。ビッグエンドとはメインロッドの太い方を指す。国鉄時代から、現場で使われていた言葉である。
 
 クランクピンは、Φ4 で、それに嵌まるボールベアリングは外径 8 mmもある。ロッドのビッグエンドの外径とそう変わらないから、無理だ。ここに収めるにはクランクピンを Φ3 にして、外径 6 mmを用いるしかない。ベアリングは複列にして転ばないようにする必要がある。即ちパイプ状のハウジングが必要だ。その外径は Φ7 である。それに各種のロッドが、三層にはまることになる。

619_1387 かなり面倒な工作であったが。なんとか押し込めた。この種の工作は3回目であるが、あまり慣れない。


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2018年03月23日

thrust bearing

 転車台の中心部にスラスト・ベアリングを入れることにした。今まではそれがなかったのだ。直径 900 mmの 15 mm厚ランバーコア合板製ディスクの外周には6個のラジアル・ボールベアリングがあり、それですべての荷重を支えていたわけだ。堅いディスクなのだが、微妙に撓む。撓むと、外周部の軌道が少しずれる。そうすると、普段走らないところを走ることになるのだろうか。少し音が変わる。 撓み量は実測で 0.2 mm 程度だが、機関車が載ると、無視できない量であろう。

thrust bearing ベアリング屋に行って注文した。NTNの円錐コロのスラスト・ベアリングである。高いものかと思っていたら、安くて驚いた。昼の定食弁当代以下であった。


 取り寄せに3日掛かったが、問題ない。Φ17のシャフトなので、内径 17 mm と 18 mmのスラスト・ワッシャを組にして、注文した。要するに軸が触る部分と触ってはいけない部分があるのだ。スラスト・ワッシャの平面度、剛性は恐るべきものである。油をよく拭き取って、重ねて押し付けると、そう簡単には外れない。日本製だそうだ。最近手に入るベアリングは外国製のものが多い。中国製には、回らないものまである。揮発油で洗うと切粉が出てくるのだ。許せない話である。駄目なものを安く卸しているのかもしれないが、迷惑千万だ。

 軸に入れてから、ディスクの上に立つ Φ40 の軸を支えるべき distance piece の寸法を再度測定した。かなり面倒な計算をして、寸法を決めた。作るのは自宅の旋盤で10分の作業である。

distance piece Φ30 の材料の外周、端面を削り、5/8インチ (約15.8 mm) のドリルで穴をあけてから、中グリの刃物で仕上げる。突切りで切り離して、できあがりである。硬い砲金の切れ端を有効利用した。照明の加減で、黄色く見える。
 現場に持って行って嵌め込み、ディスクを落とし込んだ。採寸は正確であったらしい。ディスクの外周部で 0.1 mm 程度の浮きがあるが、いずれ撓みが戻って落ち着くだろう。中心を支えるので、抵抗が格段に減少した。廻すのに要する動力は極端に少なくなる。一押しで2周する。ディスクを速く廻すと、集電装置が飛び跳ねてひっかかる可能性がある。そうするとまた作り直さねばならないから、ゆっくり廻した。
 スラスト・ベアリングは開放型なので、埃除けを付けたい。薄板を巻き付ければ良かろう。潤滑油も封入する。


2017年07月27日

転車台

 回転する円板を支える戸車風の支えを、いくつか買って試したが、すべて不合格であった。とにかく摩擦が大きい。慣性で廻り続けるほど、摩擦が少なくなければならないのだ。

image 仕方がないので、自分で作った。平角棒とチャネルを組合せて貼り付け、フライスで削って製作した。ハンダは後ろの押えを使って焙り付けだ。高さを低くしたかったので、ベースを切り込んでヤスリで仕上げた。
 多少のばらつきがあったが、ローラ面高さが16.00 ± 0.04 mmでできた。と言っても、合板の円盤に付けるので、その平面度がかなり怪しい。そのうち、自分の重さで落ち着くだろう。チャネルは快削材であったが、平角は粘い材料で参った。大事なエンドミルを折るのではないかと、ヒヤヒヤであった。
 ボ−ルベアリングは、直接ネジに通してあるのではない。厚肉パイプを通してある。チャネルにもネジが切ってある。こうしておかないとネジを締めたときにチャネルがゆがむ。所定の性能を長年に亘って発揮させるためには、余分のストレスが掛からないようにしておかねばならない。

 円盤に取り付けて、手で廻してみると、くるくると廻った。レールの鉄板に埃があるせいか、少々やかましい。油を付けて磨くと、かなり静かになるはずだ。動画があるのだが、サイズが大きいからか、UPしてお見せできない。
 次はインデックスである。ある程度工作は進んでいるが、まだお見せできる状態ではない。ノッチに喰い込むクサビの形状について、いくつか試作をしている。
 思い付く形はすべて作ってみたが、満足がいかない。先週思い付いたものになりそうだが、工作が進んでいない。
 フライスのDRO(ディジタル・リードアウト)を壊してしまい、取り換え作業中である。最近はこれがないと工作できないのがつらい。回転速度も回転計を見て行っている。以前のような勘に頼ることが無い。周速度を一定にすると良く削れる。

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2017年02月11日

続 express

 高速台車を付けたboxcarは各種ある。中にはとんでもないデザインの台車もあるのだ。Mainline Modeler誌の1989年5月号にこんな写真がある。

Rock Island espress boxcar  これは内側台車だ。どういうわけでこのような台車を採用したのかがわからない。作るのは簡単だが、もう少し細かいところがわからないと間が抜けてしまう。ブレーキ装置があるはずだが、リンク機構が不明だ。

 Amtrakの客車に似たようなものがある。地下鉄の車輛にも同様のものがあるが、これははたしてどうなっているのであろうか。
 内側台車は軸の太いところを支持するので、模型の場合は抵抗が大きい。ボールベアリングを使ったとしても損失が大きく、惰行が少ないだろう。
 細い軸を使った構造にしなければならず、苦労しても得られるものは少なそうだ。

 Allied Fullcushion Truckの採用例の写真が載っている。
Rock Island espress boxcars おそらく、落成時の写真であろう。汚れていない。台車の色が明るい。どんな色だったのだろう。1945年のことである。
 この台車は数年もすると、様々な問題が起き、脱線の原因を作ったと言われている。急速に廃れてしまった。個人的には好きな台車であるが、模型を見ることも少ない。

2016年01月16日

続 installing ball bearings

 コメントやメイルを数多く戴いたので、予定を変更して、この話を続けたい。ほとんどのことはコメントで言い尽くされているが、少しばかり追加をさせて戴く。

 軸箱の内側にフランジ付きボールベアリングを入れると、荷重中心と、ベアリングの球の中心がずれているので、インナレースにねじ曲げる力が働く。
 たとえば、壁にボールベアリングが嵌まる穴が開いて居て、そのべアリングに軸を通し、その軸にぶら下がることを考える。ぶら下がりながら軸を廻すとどうなるだろう。壁の穴が精密にできていれば良いが、少し大きめであると、アウタレースが変形する。そのうち球が飛び出しておしまいである。また、廻すとゴロゴロする。球はいくつかしか入っていないので、その球が廻ってきたときは少し持ち上がるのを感じるだろう。

 今野氏はフランジ付きを入れられたことがあるのだろうと推測する。HOのロコで軸が非可動なら、なんの問題もない。軸が台枠に対して垂直を保っているからだ。可動軸箱ではまずい。二つずつ入れるべきだ。フランジ付きがいけないとは言っていない。ボールベアリングの位置がおかしいのに、「それでよい」と開き直ることは感心しないと言っているのだ。

 筆者の機関車や祖父江氏による改造を受けた機関車は、動軸が左右つながった軸箱を持つ。軸箱には二つ入れるのが原則だ。しかし、輪重が1N程度のテンダ台車は、一つずつしか入れていない。しかし、それらは、荷重中心に置いてある。これこそが、「模型的には」正しい方法だ。軸重の大きい従台車や、ディーゼル機関車には二つずつ入れてある。

 実は先回の文中、「模型的には」の部分を、正確に書いておいた。その言葉を聞いた瞬間にこれは面白いと感じたからだ。コメントを読むと、読解力の良い方がいらしてそれを感じ取られたことが分かった。
 筆者は重負荷で長時間の運転をすることを念頭に置いている。趣味であっても、である。たまにある運転会で、エンドレスを一巡りしておしまい、の人にはご理解戴けない部分なのであろう。
 せっかく精魂込めて作るのであるから、大した手間でもないので、少し工夫をされてはどうかと思うのである。以前見たものは、軸がベアリングの中をするすると左右に動き、軸端が軸箱に擦るようだった。これはまずい。
 軸は段付きにして、左右に動かないようにしたい。特に先輪は復元が効くように、ガタを最小限にしたい。

2015年11月21日

スーパー20

 先日の記事スーパ−20のことを書いたら、「そのスーパー20とは何ですか?」という質問を戴いた。

114_4052114_4053 スーパ−20は1950年代にカツミから発売された直捲電動機で、9溝、ボールベアリング入りの高級モータであった。筆者が三線式Oゲージに夢中になっていたころの高嶺の花であった。電機子はskewed(捩じってあって、電機子の位相によるトルク変動を緩和するようになっている。)で、意欲的な製品ではあった。20は、コアの厚みで20mmを指す。”スーパー15”というものもあった。


 後でわかった話だが、外観の設計は祖父江氏で、Lobaughのモータをコピィしたものであった。ロボゥのモータと並べると、ブラシのあたりの処理が酷似している。今だったら、模倣で訴えられるような製品だ。

114_4056114_4055 ボールベアリングが付いているというのが売りであったが、廻すと何かおかしかった。どれを試してもおかしいと思ったので、買わなかった。というと聞こえが良いが、乏しい小遣いではなかなか難しい価格であったし、それほどのお金を出すなら、もっと素晴らしいものでなければならなかった。

 これも後でわかった話であるが、戦災で焼けたボールベアリングを大量に安く買って、それを嵌めたものであったそうだ。道理で、廻すと変な音がした。

 長老のH氏の談話である。戦後、米軍放出品の器械をばらすとボールベアリングが取り出せた。それをローラ・スケートにつけて楽しんだそうだ。実に滑らかであった。
 ところが模型屋でスーパー20を見せてもらうと、やはりどれも軸受から音がする。「この音は何ですか。と聞くと、『ボールベアリングの音だ。』と言うんだ。『ボ−ルベアリングは、みなこういう音がするんだ。』とごまかそうとするから、冗談じゃないと思ってそんなモータは買わなかったよ。」

 ずいぶんひどい話である。ボールは外から見えるタイプで、シールドがないから、埃は入り放題である。それのせいかとも思ったが、油紙で包んであった新品も同じだったそうだ。消費者の無知に付け込んだ極めて怪しい話である。

 モータの軸は太く、先端の歯車等を付ける部分だけ細いのはどうしてかと思っていたが、その焼け残りのサイズが、たまたまその程度の太さだったからだ。

 ヤフーオークションで出ているのは全くの勘違いで、パーマグモータである。あのモータの価値はすでに極端に低くなった。筆者は10台以上持っていたので、アメリカの模型ショウで売ってしまったが、相場は1台5〜10ドルである。

追記: 当時のカツミを知る関係者の証言によると、様々な人がボールベアリングの売込みに来たそうだ。焼けたのはもちろん、半端物のベアリングを持ち込むので、ロットによって軸の太さは違うそうだ。 

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2015年11月09日

設計変更

114_3959114_3960 先回登場したK氏が、博物館まで見に来られた。その時、ボールベアリングを2つ、お土産に戴いた。先日会った時に説明したのだが、「これを使うと良い」と現物を持ってこられたのだ。早速それをもとに絵を描いてみた。
 中学校以来、製図をしたことがないので、間違いはご容赦願いたい。単なる概念図と承知されたい。

turntable mechanism このボールベアリングはNTN製で、直径63.5 mm(2-1/2インチ)のフランジが付いていて、17 mmの軸が通っている。これを二つ、厚い合板の上下に置いてネジを締めると、自然にその板に対して垂直な軸が立つ。これはまだ細いので、太い軸を旋盤で挽いてかぶせる。
 その太い軸にはフランジが付いていて、合板の円盤を挟んで留める。円盤は6個の戸車で受ける。フランジはハンダで留めてから、旋盤で挽いて直角を出す。これには大した力は掛からないので砲金製でも問題ない。
 実は太い軸を鋼材で作るには、旋盤の能力がやや足らないと思われたが、砲金製なら訳なくできる。この太さのちょうどよい長さの砲金の棒は、廃品回収の店で手に入れてある。可動橋を動かす程度のトルクであるので、鋼製でなくても十分耐えられる。細い鋼製軸と大径の砲金棒の組合せは、工作を簡便化する。

 この方式は、地下部分の深さがやや大きくなるが、工作も楽である。可動橋は簡単に捻られるようにすると、4点支持が可能になる。側面の板はできる限り薄く作り、垂直方向と回転に対する剛性は大きいが、ひねりに対しての剛性を減らすようにする。

 機関車が進入すると、わずかに撓んで、中心を含めて5点支持(3点支持 × 2)になると理想的だ。


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2014年01月14日

再開

 しばらく休載させて戴いたのは、休養をとる必要があったからだ。
 昨夏より、7年越しの仕事を完成させる必要があり、数か月の間、毎日12時間以上コンピュータとにらめっこをしていた。年末に決着が付いたのだが、極端な視力低下で車の運転も危ない状態になった。一言で言えば、蓄積疲労であって、休む以外ないということであった。1月近く、休ませて戴いたので視力が十分に回復し、やる気も出てきた。夜間の車の運転も不都合が無くなった。

 休んでいる間、何を書くべきか、いくつか案を練った。実物の構造の話とか、機関士Tom Harveyの手記の翻訳、車輪コンタの話、工作機械などについて随分考える時間があった。リクエストがあれば順に書いて行きたい。

 最近、色々な方がボール・ベアリングに興味を持たれるようになり、筆者が安く仕入れたものを提供して差し上げることが多くなった。貨車、客車にそれを入れれば転がり抵抗の低減に寄与するものと思われるのだろうが、渡すときに申し上げても、それに対する期待が大き過ぎたことに実際に完成するまでは気が付かない方が多いようだ。
 廻りくどい表現になったが、早い話が、HO以下ではOゲージのように慣性が感じられないので、ご不満の方があるのだ。

 先に結論を言うと、客貨車では軸重100 g 以下ではボール・ベアリングの効果は目に見えない。ボール・ベアリングの中に封入してあるグリスの攪拌抵抗がかなりあって、するするとは回転しないのである。Oゲージのブラス製客車のように1台 2 kg もあると、ボールベアリングの効果は絶大である。一押しで1周30 m強 のエンドレスを廻って来る。それを見せると、HOでも可能なように思うのであろうが、それは無理である

 まず、車輪半径が半分なので、テコ比の問題がある。同じ回転抵抗でも、車軸を回転させにくい。また質量が、単純計算で 1/8 なので慣性が小さい。速度が半分なので運動エネルギーが 1/4 である。事前に説明しているのだが、一押し 30 m の夢から逃れられないようである。
 それでは、車体を極端に重くすればどうだろう。これはアメリカで一度見せてもらったことがあるが、かなりの効果があった。しかし、脱線すると大変なことになるし、ポイントのフログがすぐに駄目になるであろう。

 貨車や客車について言えば、ピヴォット軸受には敵わない。筆者の実験では軸重100 g 以下はピヴォット軸受が良い。軸受はブラスの板にセンタ・ポンチで凹みを付けたもので十分で、僅かのモリブデン・グリスを入れると良い。凄まじくよく転がり、水準器代わりになるほどである。この動画はピヴォット軸での転がりを示す。

 17.5 mm と 19 mm のピヴォット軸(英語ではCone Endという)を新たに作ったので、ご希望の方にはお頒けしている。 

2012年06月30日

続々々 Kleinschmidt Drive

COM_4353-2 これはGG1の主台車・先台車である。先台車の復元装置は付いていない。筆者のアイデアを紹介すると興味深そうだった。
 Cogged Belt(歯付きベルト)で伝導している。十分に静かだ。

 スパーギヤで連動してドライブ軸を上げてあるものもある。ウォームで減速する前の段階で、スパーギヤを使うのは考え物だと言うと、歯車の精度次第だとのことであった。確かに組まれたものは静かだ。彼の説明によると、スパーギヤ軸のガタが騒音に大きく影響するそうだ。ほんの少しのことだがボールベアリングのガタが大きく響くらしい。だからギヤボックスのボールベアリングは、予圧を掛けてガタを全くなくしている。予圧はバネで与えている。
 筆者はほとんどの場合、チェインドライヴを採用している。彼は「高速軸では、チェインは静かだとは限らない。歯車の方を好む。」とのことである。

COM_4360-2COM_4361-2 GG1の台車枠をハンダ付けするときのジグである。これはテキサスのDennisと同タイプである。各ブロックを嵌めて締める。そしてDennisはアセチレンガスで加熱してハンダ付けする。
 なぜアセチレンかということは説明していなかった。酸素アセチレン炎はとても小さい。すなわち、よそに熱が行かないのである。付けたい部分だけを加熱するので安心であるからだ。

 Stuは炭素棒ハンダ付けを使う。「一瞬で終わるよ。」とのことだ。

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2012年06月22日

続々々々々 Stu を訪ねて  

COM_4366-2COM_4367-2 フライスで削り出したフレイムである。多分ペンシィのロッド式電気機関車であろう。中の二軸ずつが動軸で、外の一軸がジャック・シャフトである。
 短く作って継ぎ手でつないである。長いものの工作は好きではないらしい。

COM_4368-2 ギヤボックスがたくさん作ってある。事前に必要数以上にたくさん作っておき、それを順次使う。歯数は互いに素である。
 全てのギヤボックスにはボール・ベアリングが入っている。予圧を掛けてあるのでガタはない。彼はそこが大事だと言っている。本物と同じようにスプリングで予圧しているのでいつまでもガタが無いと言う。

 Stuは、「私もキットを作っているようなものだ。」と言った。それは祖父江氏の工房での作業を講演で紹介した時に筆者が使った表現である。女工さん数人を使ってキットを組み立てさせるわけである。祖父江氏はその部品を作るわけだ。そうして1ロット200輌の製作が進んだ。Stuは自分でキットを組んでいる。

COM_4348-2 これはギヤボックスを作るジグというべきかヤトイというべきか迷うものである。ブラスの塊りから削り出したものをこのアルミのブロックにネジ止めし、中を Tスロット・カッタで削り取る。Tスロット・カッタは、軸に比べ先が数倍太い円周を持つエンドミルである。ギヤの収納部のエグリをするのである。
彼はロストワックスを一切使用せず、全てを削り出す。

COM_4330-2 ある程度完成したものはこのように並べてある。これらは韓国のAjinの製品である。台車枠が自重で撓んで開いてしまう具合のよくない製品である。

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2011年09月10日

テキサスでの予定

 テキサスではいくつかの予定があったが全てキャンセルされてしまった。いつもデニスの家に行ってロストワックス三昧なのだが、今回は、「それではつまらない。あちこちの友達のレイアウトを泊まりがけで見に行こう。」ということになっていた。Austinという町にはSanta Feを題材とした素晴らしいレイアウトがあるとのことで、それらの訪問を楽しみにしていたのだ。ところが、先方から、「妻が入院することになった。」「体調がすぐれないので明日から検査入院する。」などと次々と連絡が入った。
 Dennis曰く、「我々はこの趣味の世界ではむしろ若い層なのだ。素晴らしいレイアウトは、我々より上の世代が持っている。いずれ見ることができなくなる。」と言うのだ。世代の高齢化というのは日本だけではない。
 しかし、そのレイアウト付き住宅はいずれ誰かが買い取ると見ている。日本でもそうなると良いのだが。

 仕方なく、ギヤボックスの調整などをした。スラスト・ベアリングにはワッシャ状のものが二枚ずつ入っている。それらは同寸法ではない。片方の孔が1/100 mmほど大きい。軸が摩擦なく回転しなければならないからだ。
 デニスはそれに気付かず、できたギアボックスの動きが渋くて困っていたのだ。マイクロメータで測定すると微妙な差があり、納得した。二枚を識別する何かの印でもあればよいのにと思う。
 デニスは進呈した6個のギヤボックスをディーゼル機関車に取り付けた。押して動くのは素晴らしいと大喜びだ。

2177 テキサスを発ち、Denverに向かった。人と会って仕事をした後、久し振りにCaboose Hobbiesという模型屋に行った。26年ぶりである。以前とは場所が変わっているような気もした。店はずいぶん広くなっている。

 筆者は模型屋という場所にはあまり行かない。行っても仕方がないからである。欲しいものはそこにはほとんどない。今回も何も期待はしていなかったが、有名な模型屋であり、たまには行こうという気になった。デンヴァの旧市街の中心近くにある。メインストリートであるBroadwayの500番地である。 

2010年11月16日

先台車の構成

Lead truckLead truck2 先台車を手作りするのは面倒なので、いくつかの型に絞って大量に作ることにした。手持ちの機関車の図面を当たって軸距離を調べると、それほど種類は多くないことが分かった。

 底板部分は共通寸法にすると、部品数が減り、管理が楽になる。今まではこのH型部分を、糸鋸を折りながら切っていた。このような仕事はレーザ加工に限る。

 少しだけ出ているバリを削ると、パチンとはまるようになる。丸穴は8mm径でリーマを通せば出来上がりである。角穴部分は軸箱を削り出してあるので、パイプで接続して出来上がりである。
 最初に少し考えるだけで、工作の時間が大いに節約できる。趣味であっても時間を節約することは大切なことである。

 今、これらの組み立て用のジグを作っている。はめ込んでガスバーナで炙れば良いようにアルミ製の押さえを用意している。バネも使って押さえこむ。
 
 ボールベアリングを安く買うことが出来るようになったので、仲間内で分けている。この先台車にもそのボールベアリングが装荷される。1つに付き6個必要である。

2009年12月05日

pre-loaded

pre-loaded ボールベアリングには等級があって、われわれはその最下級に近いものを使っているのだろうと思われる。
 高いものは航空宇宙産業に使われる。何が違うのかはよくわからぬが、とにかく選り出してあるのだそうだ。テストして設計値に近いものを選ぶとそうなるらしい。値段は2桁以上違うという。

 さて、ボールベアリングは、最初からある程度の遊びがある。遊びがなければ回らない。ということは、ラジアル荷重(円周方向の荷重)だけでは多少のガタの中で回っているわけである。ガタは15ミクロン位である。

 模型の蒸気機関車の動輪軸は、ガタがあっても、ロッドのガタも多少はあるので問題ない範囲にある。

 さて、本題のプリ・ロード(予圧)の話だが、スラスト(軸方向の力)を掛けると図のように溝の中で玉がずれて、ガタが無くなる。この状態で使えば、遊びのない状態が保てる。 ベアリング屋は、プリ・ロード(あらかじめ荷重を掛けた状態を作ること)された状態で使うことを推奨している。今回の先輪のガタをなくすワッシャは、まさにこの状態を作り出している。

 ミニチュアベアリングはアウタ・レースが薄いので、プリ・ロードが大きいと塑性変形する可能性があり、その限界は決められている。

 さらに言えば、シャフト、ハウジングには15から17ミクロンの隙間を空けることを要求している。無理に押し込むとたちまち変形する。隙間には油を満たすことが必要である。油膜で受けているわけである。

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2009年07月16日

ボールベアリングを取り付ける工具

face cutting bits 筆者の機関車にはすべてボールベアリングが装荷されている。既製品の機関車の軸は3 mmか5 mmで、それを加工してボールベアリングが入る穴を開けねばならない。
 既に空いている穴を広げるのは難しい。心がずれる恐れがある。祖父江欣平氏は、自作の座グリドリルでそれを行う。筆者も一本戴いたのがある。これがないとフライスで座標を決めて削らねばならずとても面倒だ。

 その座グリドリルを特注せよということになり、またもnortherns484氏に図面のお手伝いを戴いて、発注した。

 ブラス用なのでハイス製ではない。SK3という工具鋼製であり焼きが入っているからとても硬い。SK3はタガネなどを作る高炭素鋼である。鉄板でもよく切れるが、十分な油がないと、焼けてなまってしまう。

installing ball bearings with face cutter 先端のテーパが大切である。心を出しながら、ボールベアリングのインナ・レースに当たらない様に削る。もちろんシャフトも接触しない。この辺りの工夫がないと、ボールベアリングの意味が半減する。

 ボールベアリングが入っていると謳っている製品でも、この気配りがある物はほとんどない。

2006年11月13日

スラスト・ボールベアリング

thrust ball bearing ウォームギヤのスラストはかなり大きい。ちょっとしたエンドレスを10輌程度の貨車を牽かせて10日ほど連続運転してみたことがある。ウォームの端を支えるワッシャが擦り切れてしまった。

 スラストベアリングは意外に安価な商品だ。これをウォームの前後にはさんでみるだけで電流がかなり減る。負荷が掛かっているときの損失がかなり減っている。次にラジアル・ベアリングを入れると多少電流が減った。ウォームギヤそのものの効率はそれほど悪くはなさそうだ。

 2輌の蒸気機関車のギヤボックスにベアリングを入れて悦に入っていた。そのころ、井上豊氏がTMSに「D51にボールベアリングを入れる」記事を発表された。そのベアリングは筆者が提供した。

 ついでどなたかが、ギヤボックスにベアリングを入れて発表された。そのギヤボックスには、不思議なことにウォーム軸の前進時のスラストを受けるようにラジアルベアリングが2個直列に入れてあった。起動時のスラストより、急停車時のスラストの方が遥かに大きいので、これは無意味だ。こんな記事を載せるのはおかしい。編集部は何も分かっていない。

 考えてみれば、モータが止まれば動輪が止まり、動輪からモータが回らないのは不思議だ。どうして、誰もそれを不満に思わないのだろう。ウォームギヤは逆駆動はできないのだろうか。電源の一時的な遮断でさえも、列車全体がつんのめるような衝撃が起こり、そのたびに列車の一部は脱線する。とてもいやな気分だ。これでは実物のような80輌編成の運転などはできるわけはない。

 どうしても慣性のある列車の運動を妨げない駆動装置が欲しい。その願望は高まるばかりであった。

 ウォームギヤは、鉄道模型には適した歯車装置である。1段で大きな減速比が得られる。直角駆動であるから、車体に大きなモータが入れられる。もしこれが簡単に逆駆動することができたとしたら、モータは猛烈な速度で廻されることになる。モータ軸を回転させてみて、その抵抗を調べた。このトルクに減速比を掛けたトルクで動輪を廻さねばならないのだ。

 「これは無理だな」と直感的に感じた。たとえギヤの問題が解決しても、コッギングのないモータが手に入らない限り実現は不可能だ。


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2006年11月12日

ボールベアリング

フランジつき ベアリング屋に少量のボールベアリングを買いに行くと、番頭が応対してくれた。その番頭はずいぶんと世話を焼いてくれ、そのうちに価格も大口の顧客並みにしてくれる様になった。

 ミニチュアベアリングは普通のベアリングのように圧入してはいけないということを知った。「滑り嵌め」をしなければいけないと習った。軸に油を付けて、手で押し込むと、ぬるぬると油の粘性を感じながら入っていく。このときがマイナス17ミクロンと教えてくれた。確かにマイナス15ミクロンでは固いし、マイナス20ミクロンではするすると入ってしまう。なかなかうまい方法を教えてくれたものだ。
 
 シャフトを外注するときはベアリングを一つ渡して「これがぬるぬると入る様に」というとちゃんとその様にしてくれる。

 その後、番頭が退職してからは、その店とは自然と疎遠になってしまった。残念なことだ。

 さて、最初に買ったベアリングはフランジつき、両シールドというタイプだった。フランジが付いていると、軸受ハウジングに嵌めるだけでよいので気に入った。しかし、その番頭に嵌め込んだものを見せると、「これは間違った設計だね。軸箱に一つしかベアリングが入っていないというのは、ありえない設計だよ。」と軽くいなされてしまった。

 どんなときも、軸箱一つに二つのベアリングというのは鉄則だ。そうでないと、荷重が掛かるとベアリングがひねられる力が掛かる。

1941 locomotive cyclopedia より複写 本物の写真を見ると、蒸気機関車では左右の軸箱が円筒でつながれて、転ばないようになっている。伊藤剛氏の解説によるとそれはキャノンボックス(大砲状の箱)というのだそうだ。なるほどこうすればよいのかと、膝を叩いた。



蒸気機関車用canon box
問題はウォーム・ギヤボックスである。ここには大きなスラスト(軸方向の推力)が掛かる。これを受けるにはスラストベアリングが必要である。

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2006年11月11日

軸受

ball bearng 学生時代に、「軸受」という本を読んで愕然としたことがある。「軸受の厚さは、軸径の2.5倍必要である」と書いてあったからである。要するに油膜を形成するためにはそれだけの幅が必要だということだ。

 2mmの軸なら5mmの厚さ、3mmなら7.5mmの厚さが必要である。模型のどこにそんな軸受があるというのだ。

 当時私が見た限りにおいては、せいぜい1mm厚の板に穴をあけて軸を通し、油を注すという程度だ。これでは軸受ではない。

 ピボット軸受というものもあり、TMSには「油をさしてはいけない」とまで書いてあった。

 近くの時計屋の息子と仲が良かったので、時計職人のおじいさんに聞いてみた。答は、「軸受で油を注さなくてもいいものなど無い。」ということであった。宝石を付けた軸受でさえも、石油ベンジンで薄めた油を注す。ベンジンを揮発させると、薄い油の膜ができる。

 やはりピボットにも油を注すべきだと思い、時計に倣ってほんの少しの薄めた油をさしてみた。摩擦は1/3くらいになった。

 車軸が通る軸穴に厚い板を貼り重ね、穴をあけてリーマを通した。油を注してみると、摩擦など無いかの如くするすると走った。

 しかし、軸箱のためのスペースは確保しにくい。ボールベアリングを入れたいと思った。そうすれば薄い軸箱ができる。近くにベアリングの代理店があり、ショウウィンドウを覗くと小さなベアリングがあった。価格を聞いて耳を疑った。とても高価であった。

 それから10年ほど経ち、ミニチュアベアリングの価格がかなり下がったことを新聞で知った。1つ250円くらいになっていた。蒸気機関車に使うと良さそうだと思い、まずテンダ台車の換装から始めた。素晴らしい性能に驚いた。普通の線路の上では停止させておくことは難しい。水準器代わりになるほど、よく転がった。手歯止めが必要だった。

 ついで、先従台車にも取り付けた。動軸については治具が無かったので外注した。すると、起動電流が1/2になった。要するにモータさえ廻れば、走るようになったわけだ。ここまで来ると、モータの性能が大きくかかわってくる。ブラシ圧力を調整し、軸受の心が本当に出ているかを確認した。ギヤを溶剤で洗い、軽い油を入れて調節した。すると電流はさらに減少し1/4になった。

 低電流走行の可能性に気がついたのは、この瞬間である。

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