接着

2022年08月15日

続 Loctite を使う

2-piece gear boxes for diesels このギヤボックスはアルミ合金製である。15年ほど前、友人のY氏に作ってもらったものだ。Y氏は腕の良いフライス工で、大きな機械を使って素晴らしい精度の加工をする。飛行機の部品も作っていた。
 3条ウォームを使って精度の高いギヤボックスを作りたかったので、お願いした。飛行機に使う材料で作ってくれ、極めて剛性の大きなものができた。

 製品は黒染めしてあったせいか、誰もアルミ合金製であるとは思わなかった。プラスティックの成形品だと思ったようだ。それほどツルツルピカピカであった。素晴らしい性能を示し、このギヤボックスは例のテンダの動力ピックアップに使った。極めて滑らかな作動で、無音である。わずかにチェインの音がするだけである。

 このギヤボックスの唯一の欠点は、2ピースであったことだ。動軸の中心を通る面で分割し、3ピースにするべきだった。このままでは側面からのネジが締めにくい。

3-piece gear box for diesels 左右から締めてから底蓋を締めると、無理なく締められるし、蒸気機関車のように車輪がはずれない場合の駆動にも使える。
 これを薄く作ったのが、今回のHO用ギヤボックスである。

 時代の進歩で、3Dの成形品の精度が高くなると同時に、経年変化がほとんど無い樹脂を使うことができるようになった。 価格は格段に下がり、全ての機関車を改装して滑らかな動力化が可能になる。
 今回、100軸のギヤを組み立てた。たくさんあったボールベアリングが払底した。  

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2022年06月10日

ロックタイトの劣化の原因

 先日の記事に対するコメントで、劣化の話が出ていた。この件に関しては、いくつか連絡を戴いたが、どれも「◯✕番は固まりやすい」というものであった。その情報を重ねてみても、そこに意味があるとは思えない。実際に起きたことなのだろうが、条件がすべて異なるので、参考にはならない。客観的な情報が必要である。自分が見たものが、世の中の全てではない。

 メーカが公表しているのは、金属との接触を避けるということである。塗布の助けとなるものを使うときに、金属ではなく、プラスティックか木材を用いるべきである。
 筆者は、厚手のポリエチレンフィルムの上に一滴出し、それをつまようじで取って、目的物に塗る。出したものを使い切るようにし、余ったものは捨てる。こうすれば、金属粉の混入は無い。

 光に当てないようにするのも必要なことである。遮光瓶には入っているが、瓶の口の部分は光が通る。

 冷蔵することは良いことだろうが、筆者の場合、室温(エアコンが効いている状態)で20年以上全く問題ない。


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2022年05月29日

ロックタイトを外す

 友人から、SOSが入った。ロックタイトで付けたときに、部品を入れ忘れたらしい。どうやっても取れそうもない。困り果てて電話してきた。

「物理的に外すのは無理だよ。」と伝えると、泣きそうであった。大事な部品を壊さざるを得ないと、考えたようだ。

「ハンダゴテで熱くしてみて。」と伝えると、半信半疑だった。車軸の他の端にはPOMで出来た絶縁が入っている。それが融けるのではないか、と心配した。Low-Dの1軸を捨てることになるけど、大事な台車を壊すよりはマシだ、と温めたそうだ。

 すぐに電話が入って、「取れました!」と叫んだ。絶縁も生き残ったそうである。しかし、動力車に使うのは避けて、トレーラに使うと言う。
 その返事を聞いて、筆者も試してみた。POMの嵌っている絶縁の方を、水に浸けて固定した。そして、大きなコテを歯車に当てると、2分くらいで緩んだ。
 水に浸かっている限り、100 ℃を超えることは無い。すなわち安心である。Low-Dの車軸は、ステンレス製であって、熱伝導率が小さいということも、プラスに作用した。


LOCTITE ロックタイトは、250 ℃に保つと取れる、と説明書にはあったように覚えている。買ったのは20年ほど前で、説明書は紛失した。600番台の強力型を買ってしまった。模型用なら200番台で十分だ。大きな瓶だが、中身はちょっぴりだ。使った量は数 mLだろう。何年経っても何ら問題なく使えるというのは、素晴らしい。 

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2021年09月23日

caboose を作る 6

PRR ND 8-wheel このカブースもAmbroid製品である。ペンシルヴェイニア鉄道(PRR)の4輪仕様または8輪仕様とあった。NDタイプと呼ばれた。就役当初は長いリーフ・スプリングの4輪であったが、後に一部は8輪に改装された。

 木造車であるので、キュポラにはブレイスが付けられている。これは屋根に固定して、キュポラは上に抜けるようにした。もちろん位置決めピンを入れてある。

 これを作り始めた40年前は、走行性能の劣る2軸車は避けたかったので、ボルスタを付けて貨車用台車を付けた。しかし、それは実物の形とは全く異なるのでやる気が失せた。しまい込んで35年目に3D print で正しい形の台車が手に入り、日の目を見た。
 
 PRRのカブースは、デッキ部分にある種の共通性があり、それらしく見えるように作った。最近のエポキシ接着剤は扱いやすい。鋳物製の梯子のような直立する部品も、割合簡単に付けられる。端面に塗って部品を直立させ、テープなどで仮留めするとそのまま固まる。余分は、溶剤を付けた綿棒で拭き取れば良い。もちろん端面は平らに削って、接触面積を大きくすることが肝要である。接着剤の厚みを最小限にすることだ。点接触では、いくら接着剤がその周りにあっても、剥がれる。

 この色も茶色味を帯びた赤である。昔のディカールが所定の性能を保持しているかは、すでに怪しい。

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2019年09月13日

エポキシ樹脂のリヴェット?

 手が不自由な間、ずいぶん大量の本を読んだ。雑誌もたくさん目を通した。日本を離れていた時期の雑誌は、始めて見るものも多かった。

Train2 ゲージ問題関連の記事があるものだけ、付箋を付けている。その記事を読む時に、ついでに周りの記事も目に入ってしまう。また、気になるところを見つけてしまった。例の連載記事である。
 エポキシ接着剤を多めにつけて部品を貼り付ける時に、中心に孔が開いていると接着剤が裏にはみ出し、ちょうどリヴェットのようになると書いてある。そうすると丈夫に付くのだそうだ。

Train1 冗談でなく、本気で書いているらしい。接着剤は、接着面以外の強度は無いも同然である。その証拠に、接着剤チューブについている固まった部分は、簡単にちぎることができる。


 圧力を掛け、接着剤自身の厚さを薄くすると、最も接着力が強い。塗装も同じである。厚いと良くない。なるべく薄く塗る方が、はがれにくい。本物の電車は、必ず元の塗料を剥がしてから塗る。塗り重ねると弱くなって、剥がれやすくなるのだ。

 この記事では、繰り返し間違ったことが書いてある。普通は叩かれたら、少しぐらいは勉強するものだ。技師と名乗るなら、専門書を開いて熟読すべきだ。眺めているだけではだめである。分からないなら書かないことだ。迷惑する人がいる。

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2019年08月22日

続 NMRAの古い会報

3-chime 例の切り抜いた合板はこれになった。汽笛である。記事には mellow sound とある。mellowは訳しにくい語で、「豊かな」とか、「まろやかな」という意味である。
 確かに、吹いてみると、優しい音である。エア・コンプレッサにつないでみると、かなり荒々しい音になった。圧力をかけると流量が変化し、音色も音の高さも変わる。開放部を掌で軽く抑えただけでも、音色が変化する。

 汽車の汽笛というものは、単音のもの以外は、不協和音を出すことになっているらしい。あまり良い音だと、聞き惚れて事故になるからだそうだ。この3音はド、ソ、シのようだ。シの音を強く出すと汽笛風になる。
 次はふいごを作る必要がある。それを紐で引っ張るか、足で踏むと圧力が上がるので、より鋭い音になるだろう。

 工作時間は3時間ほどである。右手が不自由だが、丸鋸盤2台を駆使して、最少の手間で作った。接着剤はエポキシである。最初の2枚の側板を直角に立てて、ジグで押さえて錘を載せると10分で固まる。内側を立てて、再度接着する。
 一番難しいのは、スリットの隙間を均一にすることだ。側板より0.4 mm狭いものを挽き出しておき、それに0.4 mmのブラス板を載せてスペーサとする。そして天板を接着する。硬化後引き抜くわけだ。説明を見ると、この空気室も plenum chamber と書いてあることに気が付いた。

whistle 音を出す部分の三角断面の板はヒノキ棒から削り出したものを貼り、隙間が無いように取り付ける。
 木工に30分、組立て、接着を5回で、実質的には2時間でできるが、途中で設計変更があって3時間となった。この種の工作にはエポキシが一番使いやすい。材料を薄くすると、直角に自立させにくいので、手間がかかる。筆者は、経験上 、5.5 mmの板が一番使いやすいと感じる。
 ふいごに取り付け、訪問者は吹鳴させることができるようにする。

 箱の長さと周波数の関係を探っている。妙な関数になる。もう少し研究して解明し、5音階の汽笛を作りたい。

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2018年12月09日

反応速度

 寒くなってきた。暖房を入れるのだが、経費節減で、一人で作業している時はエアコンを作動させない。木工作業など、体を動かす時は、多少寒いくらいの方が効率が良いこともある。

 接着剤の硬化速度が明らかに小さくなる。エポキシはもちろんのこと、木工用の接着剤も固まるのが遅くなる。木工用は夏なら、3時間で接着完了であるが、5時間は見なければならない。スーパーXも固まりにくい。

 二液エポキシ接着剤は多用しているが、5分間型でも10分ほどは固まらない。working time (ずらしたりすることができる時間)が長いので、一度に作業する量を二倍程度にすることができる。 ある意味では都合が良い。
 ワーキング・タイムが長いものは木材には適する。繊維の間に浸み込んで硬化するので、非常に強く付く。

 反応速度は常温付近では、10度違うと2倍程度になるというのが化学の常識である。今日は 13 ℃であった。いつもは 24 ℃ほどであるから、ちょうど2倍程度の時間が掛るということだ。

 エポキシ接着剤を塗り、ワークを置いてテープで仮留めをする。ゆがんでいないことを確認して、重しを載せたり、クランプ締める。戸締りと電源Offを確認して帰宅する。翌朝になれば固まっている。


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2016年12月31日

続々々々 鉄橋を組む

側面トラス 鉄橋の側面の太いトラスは、厚い鉄板である。8 mm厚の板を切り抜いたものを貼る。接着剤は例によって「ス−パーX」である。この接着剤をヘラで塗って、クランプで圧着する。切り込みがあるので、所定の位置に自然に納まる。クランプをたくさん出して来て、要所を押さえる。浮くとみっともないことになるので、あちこちから覗いて隙間がないことを確かめる。
 念のために、一昼夜放置して、接着剤が固まるのを待つ。はみ出したものはナイフで削り取る。
側面トラス2 もう片方を同じように付ける。また1日待つ。その間、他の仕事をしている。これらが付くと、橋は素晴らしく丈夫になる。乗っても大丈夫なはずだ。
 


天井トラス 次は天井部分だ。バリがあるといけないので、丁寧に調べ、部品が隙間なく付くことを確かめる。スーパーXを塗ってクランプで締める。上部のXブレイスが実に実感的で、しかもその部品が機能しているのがわかる。とても堅くなるのだ。

門構門構2 今度は門構部分である。非常に大切な部分だ。ここの組み立てが悪いと、橋が歪んでしまう。手持ちのクランプを総動員だ。


 接着は恐ろしく効率が悪い。1工程が1日、即ちこれらの写真だけで4日掛かっている。 

2016年05月18日

続 ゴムを貼る

 ゴムを貼るときに裏を削るのは、投錨効果を期待しているのではない。表面を削り落とさないと付かないのだ。ゴムには表面に離型剤が付いている。長い時間が経ってもくっつかないように、ワックスを塗ってあるからだ。 

 今回の路盤には5 mm厚の黒ゴムを使っているが、表面に灰色のエラストマを接着しようと思っても、うまく接着できない。こちら側も削らなければならない。エラストマは洗ってあるが、念のためナイフでしごいて新しい面を出すと良い。スーパーXを点付けして固定する。ここで完全密着させると、消音効果が薄い。

 例によって、エラストマの中で枕木が少し動くようにすると、極端に静かになる。あちこちに摩擦が生じるような環境が必要なのだ。

隠しヤードへ 曲がったゴムを完璧に貼るためには、このような方法で加圧する。厚い合板を締め付けるが、板の先端に圧力が不足していたので、あらん限りの重いものを載せた。金床、変圧器、スライダック、万力、ガロン瓶の接着剤、塗料缶などだ。
  

turntable bearing 転車台のローラを付け替えることにした。 なんとも節操のない様相を見せている。古いのは外せば良いのだが、面倒でそのままである。いずれ外して、他の用途に使おう。

 高さが少し変化したので、中心軸の長さを調節せねばならない。フランジを厚くすればよいが、他の方法でも可能だ。
 

2016年05月12日

隠しヤードへの進入路

 隠しヤードへの下り勾配は1.9%もある。しかも急曲線だ。この部分にカントを付けるとろくなことはない。内側に引き倒される可能性がある。本来ならば逆カントを付けるような条件だが、カントなしでやってみることにした。
 電流は大きいだろうから、饋電線を太くする。

rubber roadbed underlay 音がするといやなので、エラストマ道床の下に5 mmのゴム板を敷く。
水道工事用の黒ゴムが10 mもあったので、それを切って敷く。長い間吉岡氏宅の天井裏にあったので、捲き癖が付いていて戻らない。この種のゴムは、出荷時はまだ加硫が不完全で、屋根裏のような高温になる部分に置いてあると、加硫が進み、形が固定されてしまう。細く切っても丸くなっているが、スーパーXで貼ると、真っ直ぐに固定される。
 この写真の白っぽいものはエラストマである。曲がり癖が付いていると貼りにくいので、数日間真っ直ぐな状態で放置し、ストレスを解放してから使用する。

隠しヤード 丸くなっている裏をチーズ削りで細かく傷を付けて新しい面を出す。そこにスーパーXを薄く塗って、厚い合板を置きクランプで圧締する。(写真左の方)
 接着剤は完全に押しつぶされて密着し、素晴らしい接着力を示す。はみ出したゴムに切り目を入れはがそうとすると、ゴムがちぎれる。

rotary cutter 1rotary cutter ゴム板を切るのはこの道具を使った。回転式のカッタだ。床のタイル・カーペットを切るのに買ったのだが、段ボールなどを切るのも楽である。固定刃は超硬、回転刃はハイスだ。絶妙な角度で組み合わさっていて、ハイスの刃がいつも最高の切れ味を示す。自動研磨と書いてある。リチウムイオン電池で、軽くて使いやすい。

2015年05月18日

投錨効果

 いくつかご意見を戴いている。

 やはり、金属同士の接着にも投錨(とうびょう)効果はあると信じている方もあるようだ。しかしある方から、それについて興味深い実験の結果を知らせて戴いた。

 エッチングされたキットを組んで、塗装したものについての実験である。
 エッチングした部分は、表面が粗粒面になる。要するに梨地である。その部分と地金の部分にまたがって塗装がしてあるのを、物理的に無理やり剥がすのだが、剥がれる様子に差はないとのことだ。すなわち、でこぼこにしても、つるつるでも差がない。つまり、投錨効果はないことになる。

 彼の考察によると、投錨効果を発現させようと、サンド・ペーパなどで一生懸命に磨くと、結果として脱脂が行われたりして、塗膜が剥がれにくくなるのではないかというものだ。比較実験は、同条件で行われなければならないのは当然だ。

 でこぼこにすると、凹んだところでは接着剤の層が厚くなり、そこが切れてしまう。接着面より、接着剤の内部の方がはるかに弱いのである。たとえば、Super Xはよく付いて剥がれないが、キャップについている接着剤のみが固まったのは、手で容易に引きちぎれる。はみ出している部分は手でもちぎれてくるが、被着面に着いた部分は取れない。

 工業的には接着は広い面にスプレイするかローラで塗布し、被着物を置いて締め付ける。この締め付けるという操作が大切で、接着力が最大二桁も違ってくるのだそうだ。木工屋には無数のクランプがあるのはこれを知っているからだ。。
 締め付けは圧締という。たくさんのクランプで、母材同士を締め付ける。締め付けると、接着剤がはみ出して、母材が近接する。

 そういう意味でも、クランプを多数保持していることは、大切なことである。伊藤剛氏の遺品をすべてお預かりしているが、その中に多量のクランプがある。大小合わせて、全部で60個以上あった。理屈がわかっている人はたくさん持っているのだ。  

2015年05月14日

続 博物館の工事進行状況

more magazines 最近、頑丈なスティールの棚を中古で手に入れた。向かいの奥さんが倉庫の中を整理したときの不用品を寄贈してくれたのだ。高さを低くするので、一番さびている棚板を1枚捨て、組み直した。最近はこのような鋼製柱を切るのも、丸鋸で切れる時代になった。刃先が丈夫にできていて、厚さ4 mmの鉄板まで切れる。これは行きつけのホームセンタで1000円の目玉商品で、売っていた。
 この棚3本を増設しても、土屋氏のところから戴いて来た雑誌を、すべて置けるか、きわどくなってきた。紙が上質紙であることも相まって、これだけで800 kgある。

earthquake-proof chain ガラス棚が地震で倒れる心配があり、転倒防止鎖を付けた。ふつうは、壁に向かって穴をあけて固定するのが常識であろうが、天井からの鎖を接着して留めた。

 天井の骨へは4本のネジで留め、人間がぶら下がっても取れないことを確認する。側面にはSuper Xを用いた。塗ってから一度くっつけ、それを引き剥がして3分待って付けた。クランプで締め上げ、2昼夜放置した。棚をわざと倒しても、倒れないことを確認した。鎖の熔接はプロのU君にやってもらったから、完璧だ。

clampimg  接着剤はこのような条件では極めて有効だ。双方の金属を磨き、つるつるにする。決してざらざらにしてはいけない。接着は接着剤と母材の間のみに働く。接着剤の層が厚いと、そこが切れてしまう。これはその世界では常識なのだが、表面を荒らすと食い込んで離れない(投錨効果)と信ずる人は多い。
 以前、投錨効果を否定することを書いた。様々なご意見を戴いたが、それらはすべて、「投錨効果はある。」であった。実験をしてみれば一目瞭然であるが、どなたもしていない。接着も塗装も母材がつるつるのほうが良いのである。ただし、分子間力を増す工夫(酸化被膜を作るなどの化学的処理)は効果が非常に大きい。

 今回の接着に関しては、小規模での基礎実験をした。この面積なら垂直方向に2トン重の力をかけても全く大丈夫であるという結果であった。しかし、接着は一端からめくり上げるような引き剥がしには弱い。今回はそういう力はかからない。剪断に近い形になる。この種の力には接着が一番良い。ガラス棚の揺れは、後ろの壁で制限されるから、それほど大きな力で前に押されるわけでもない。モーメントが小さいので十分であろう。鎖は200 kg重でかなり伸びたが、ステンレスだから破断はしない。いずれにせよ、かなりの安全率を見込んでの話である。
 棚は倒れなくても、中身は被害を受けるだろう。それをどうするかが課題だ。

2014年04月17日

続 Jorgensen Clamps

Jorgensen Clamps 2 この会社は他のタイプのクランプも作っている。
 これは長さが色々あって、用途に合わせて使いやすい。この写真は15 cm程度のものである。   
 筆者はまだ5本持っている。昔は10本以上あった。60 cm位のものを4本と90 cm位のを1本である。

 長さを瞬時に変化させることが出来るので、とても便利である。斜めに付いている金具が棹に食い込んで、ずれることがない。単なる摩擦だけではなく、棹には細かい引掛かりを付けてあって、絶対に滑ったりしない。金具はバネで食い込むようになっていて、実に調子が良い。
 さっとずらして、最後はネジで締める。外すときはネジを緩めて、金具を起こすと、自由にスライドする。棹が薄いので、通常のタイプのものに比べるとはるかに軽いというのも、大きな利点である。薄くしても、断面の縦方向の寸法が大きいので、強く締めても座屈することがない。

Jorgensen Clamps 3 額縁などの角用のクランプもある。日本では額縁用だが、アメリカではテーブルの角などにも用いられている。

 マイタ・ボックスも、そもそもは工芸品を簡単に作る方法である。部屋の隅の飾り板を45度に切ることができる。日本では「留継ぎ」と言って、指物師の腕の見せ所であった。子供のころ、その作業を見ていてあまりの見事さに驚いた。自分でもやってみたが、決して成功しなかった。
 アメリカに行ってみると、こういう道具が市販されていて、誰でもできるようになっていたのを見た。当時日本では見たことが無かった。

 アメリカの内装大工は大きなマイタボックスを持っていて、一辺が15cmくらいありそうなモールディング(廻り縁)を切っていた。最近は丸鋸が45度に動くものを使うので、大きなマイタボックスはほとんど見なくなった。素人用の小さいものはよく見る。



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2014年04月15日

Jorgensen Clamps

Jorgensen Clamps このクランプで、ポイントマシンの設置場所を増設している。
 レーザで切るときに、その位置を指定し忘れたのである。合板のコバで付けるわけにはいかないから、取り付け方に工夫が要る。
 裏には薄いブラス板を貼り、表からは長い枕木を貼る。接着は例によって「スーパーX」である。接着力を最大限にするには、圧締という過程が必要である。接着剤の層を極限まで薄くすると、接着力が最大になる。これは意外と皆さんご存知ないようである。締付けなければならない。接着剤の内部は弱いので、厚い接着剤層は切れやすいのだ。
 木工ボンドも圧締すると素晴らしい接着力を示す。磨いた鉄板をエポキシ接着剤で接着するとき、クランプで締付けると信じられないほどの接着力を示す。しかし、ほとんどの場合は締付けが足らない状態で接着しているように思う。


 このような用途に最も適する形状のクランプがこのJorgensen Clampsである。二つの堅木でできたアゴが、逆ネジで締め付けられる。先端だけに力を入れたり、開いた形で締めることもできる。大変便利なもので、筆者はたくさん持っていた。

Jorgensen clamps (2) 友人たちが欲しがるので、渡してしまったが、もはや手に入りにくくなった。ホームセンタで見つけても、それらは全て中国製なのである。木が粗悪で軟らかい。雌ネジ部にガタがあるし、握りの仕上げが良くない。
 田舎の金物屋で、アメリカ製を探す。最近はほとんどなくなってしまった。アメリカ製は木が重く、スーツケースにたくさん入れられない。20年ほど前、東急ハンズでも見かけたが、価格は現地価格の3倍ほどであった。

 ポイントマシンの取付け部であるが、裏うちのブラス板と表の枕木2本が付いているだけで、十分な剛性がある。これが裏のブラス板だけなら、へなへなで役に立たない。

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2010年11月04日

新しい接着剤 High Stick

High StickHigh Stick2 先日の関西合運で、稲葉清高氏に見せて戴いたものである。接着剤メーカのコニシが出している強力スティック糊は、なんと金属も接着する。価格は定価280円、実売価格は220円弱である。大抵のホームセンタで売っている。
 プラスティックや紙、金属を強力に接着する。スティック型なので薄く塗り易い。固まるまでの時間は、紙の場合、数分で実用強度に達する。プラスティックや金属は空気を通さないので内部まで固まるのに時間が掛かる。
 固まると白くなり、溶剤には溶けない。少なくともリモネンには全く溶けない。

 紙で電車などを作っていらっしゃる方には朗報であろう。とにかく強度は必要以上である。あとでラッカ・サーフェサを厚く塗ってもシンナで剥がれたりしないだろう。作り方を工夫すれば、金属製模型のように、シンナ・ドブ浸けで塗料を剥がすこともできるかもしれない。どなたか実験されると良いだろう。

 これを見て、筆者の頭の中に閃いたのは、先回の線路清掃車輌のローラである。紙タオルを巻いて、溶剤に溶けない輪ゴムで巻くのであるが、いま一つしっくり来なかった。
 紙タオルををきっちり巻ければ良いのだ。試しに、ブラスの挽き物のローラに塗って巻き付けた。取れてこない。一重に巻くだけで済む。リモネンに浸けておいたが全く剥がれて来ない。

truck cleaning car's tapered roller 次に先回の樽型ローラへの応用である。ローラは挽いて作ったが紙タオルをどうやって巻こうか、迷っていた。
 扇形に切って貼り付け、真ん中を細い短冊に切って、ひと巻きした。これでOKである。何度か走らせてみたが問題はない。剥がす時は、むしってサンドペ-パで糊を落とす。大した手間でもない。

 

2010年06月05日

続 "Super X" cement

Flexible Pop-Off ValveFlexible Pop-Off Valve2 この接着剤の優れたところは、その弾力性にある。硬くならないので、ショックでパラリといくことがない。
 先回にお見せしたフレームは捩じることが出来る。ハンダ付けではそうはいかないし、また瞬間接着剤では分解してしまうだろう。
 この捩じり剛性の少ないフレームは、簡単に捩じれる。すなわち、線路への追随性の増大に貢献する。すなわち等角逆捻り機構が要らないことになる。
  
 連結器の取り付けには、極めて適する。大きな衝撃が掛かるので、エポキシではいつか剥がれてしまう。以前エポキシで付けたところが剥がれたので、これで貼り付けた。

 それともう一つの利用法として、飛び出している部品を付けることである。たとえばタンク車のドームには、安全弁がL字型に飛び出している。これを硬い接着剤で付けたり、ハンダ付けすると、何かにひっかかったときに折れやすい。あるいは接着が剥がれる。穴をやや大きめに作り、スーパーXを多めに付けて固着させる。もちろん固まるまで何らかの保持装置で押さえる必要はある。

Flexible cement, Super X 固まった後でも実によく曲がって、しかも復元性が良い。完全に元に戻る。これで付ければ、持った時あちこちがふにゃふにゃして奇妙な感じがするが、壊れたり塗料が剥げたりしない。この床下機器も飛び出しているので貼り付けただけでは剥がれやすいが、これを使えばこの通り曲がって剥がれない。丸い団子状のものはキットに付いていた台座で、接着層は薄い。

 合成ゴム系のものは30年くらいで少しずつ劣化するが、これはシリコーン系なのでもっと長持ちするはずだ。40年前のシリコーン・シーラントは、雨ざらしでも全く変わらぬ弾力性を示している。 

2010年06月03日

"Super X" cement

building Thomas' kit w/Super X このタンク車は以前紹介したThomas のキットである。

 このキットの組立てでもっとも面倒なところは、ランボードを取り付けることである。普通は細い釘を通して締め付け、ハンダを流してから余分を切り取り、ヤスリを掛ける。きちんと仕上げるのは難しい。また、ダイキャスト製の細い支えの先端にランボードをどうやって付けるかは、パズルみたいなものである。
 アメリカ人は、「釘をハンダ付けしておいて、ダイキャスト部品を巻き込むように曲げる」というが、持つと撓んで塗料が剥がれる。

 これをエポキシやACC(瞬間接着剤)で付けると、持つ時の撓みでそのうちに外れてしまう。質量のあるものを細い部分で持つので歪みが発生するからだ。他のところを持てばよいが、ランボードが一番持ちやすいので、そこを持って接着が外れるというわけだ。撓みに強い接着剤は外れにくい。


 タンクの受けの部分に四角の部品が四つある。これもこの接着剤で付けてある。タンクを締め付けた時に多少動くので、硬い接着剤では外れてしまう部分だ。今までは細いブラスワイヤを通して自由に動くようにしていた。
 少量付けてクランプで圧締する。この圧締という操作が最も大事なところであり、接着剤の膜を薄くすることである。接着剤の膜が厚いと破断しやすい。

Super X joint これはその部分を裏から見たところである。余分が少々はみ出しているがこのくらいが量としては適切である。

 ハンダを流しても、とれることがない。出来上がりが軟らかくて、ランボードのしなりを逃がしてくれる。このような部分の接着剤としては最高である。

2010年06月01日

続 GN の Automobile Car

Super X 筆者はかねてより接着に興味があり、新しい接着剤が出ると買い求めてテストをしてきた。この5年くらいはセメダインのスーパーXというシリコーンゴム系にはまっている。

 耐候性が良いと謳っているので、車の部品を取り付けるのに使っていた。特に、前面ガラスについているルームミラーが剥がれた時に具合が良い。瞬間接着剤は硬くなるので、ショックで剥がれやすいが、スーパーXは弾力性があって、剥がれない。

 両面に薄く塗ってはがし、数分放置して粘りが強くなったところで押しつける。すぐ付くが、圧締すると完全である。数時間置くと完全に付く。色は黒、白、透明がある。

 この貨車を組む時は、ほとんど全ての場面でこれを使った。金属の側板を木箱に貼り付けるのはもちろんのこと、細かい部品を取り付けるのにも使った。
 ブレーキシリンダの台座に塗って取り付けたが、固まっても軟らかく、ショックでパラリといく心配はない。ランボードのような接触面積の少ないところにはうってつけである。軟らかで、動いても剥がれない。塗料が載るのもありがたい。プラスティックと金属という組合わせでもよく付く。

 次回お見せするが、タンク車の組立てにも具合が良い。点接触に近い接続でも圧締して付けてあれば、剥がれない。また、熱に強いので隣をハンダ付けしてもかまわない。

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2009年03月20日

Evergreen のポリスチレン板

 Evergreen Scale Models は30年ほど前、この業界に参入してきた。それまではPlastructしかなかった。後者の材質はやや硬い。

 最近わかったことであるが、American Standard Car Co.のキットに入っているコルゲート板はエヴァグリーン社の製品である。すなわち、窓枠さえ手に入ればデイライトは増産可能である。


 リモネンによる接着は予想以上の仕上がりをもたらした。確かに蒸発速度が小さい分、固まりかたが遅い。初期粘着力が小さいような気もするが、それは使い方で克服できると思う。
 隙間に流し込んで30秒ほど経ってから圧迫すると粘りつく。適当なクランプで挟んでおくか、錘を載せておけば30分ではがれなくなる。後は風通しのよいところに放置すれば固着する。

 Obsevation(展望車)の後尾(Fan Tailという)の丸みにあわせて接着するのは難しい。あらかじめコルゲート板をジグの中に押し込んで曲げ癖をつけておく。
 この材料は可塑剤がやや多めであると思う。リヴェット押し出しも可能である。だから、所定のカーヴより小さく曲げて1週間ほど保持すると、クリープが起きて曲がってしまうのだ。

 それをテープ状のクランプで押さえ込んでおいて、隙間にリモネンを流す。この道具は、近くのホーム・センタで980円で売っていた。

 薄い板をリモネンで貼り合わせて厚い板を作ることは容易である。今までの溶剤では後で反ったりするが、そのような心配はまったく無用になった。

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2007年11月09日

可塑剤

 可塑剤はPlasticizerの訳語である。ドイツでポリ塩化ビニルが実用化されたときに、混和されて、柔らかな膜を作ったのが最初らしい。

 硬いプラスティックは、「結晶性が良い」という。規則性が良かったり、直線に近い形の分子で、分子間力が強い。可塑剤はその分子間に入り込み、分子間力を減少させる。可塑剤が抜けると、硬くなって割れやすくなる。すなわち可塑剤は蒸発しにくいものを用いなければならない。溶剤をつけると可塑剤が洗い出されて割れ易くなるのは、よく体験するところだ。加水分解も起きて、脆くなる。

 ポリ塩化ビニルに多量の可塑剤を混和したものがプラスチック消しゴムである。鉛筆の芯の黒鉛と、可塑剤のフタル酸のベンゼン環は形が似ているので、よくぬれ合う。化学的に吸着され、剥がし取られるのであって、物理的にこすり落とされるのではない。

 もちろん適度な硬さであって、表面が剥がれ落ちて新しい面が露出することにより、次々と吸着が起きる。

 問題はその可塑剤が他のプラスティックに拡散することだ。事務机の保護マットや床タイルに、消しゴムかすが落ちたままにしておくと、必ず溶けたようになる。しかし隙間に紙一枚があるだけでそれは阻止できる。消しゴムには必ず紙が巻いてあるのはそれが目的だ。

 塗装した床に落ちても塗装が傷む。全て剥がして塗り直さねばならない。ポリスチレンに接触していると、それを溶かしてしまう様に見える。

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2007年11月07日

ポリスチレンの接着

 以前はポリスチレン用の接着剤は市販の溶剤系のものを使っていた。主たる成分はMEKメチルエチルケトンとかトルエンなどにポリスチレンを溶かしたものである。場合によっては多少の可塑剤も入っている気配であった。

 これらは溶解速度が大きい。ポリスチレン本体を溶かし、多少含まれる可塑剤も溶かす。リベットなどを押し出して表現できるのは可塑剤が入っているからである。可塑剤が入っていないと、型から取り出すときに割れたりするはずだから、大抵は入っている。問題はこの可塑剤が溶け出す速度が大きいことである。部分的に洗い出される形になると、将来その境目で問題が起こるだろう。

 リモネンによる接着の様子を観察していると、今までの接着とは違うことに気が付く。溶解速度が一桁遅い。全体が溶けている。可塑剤が均一に混じるような気がする。断面積が小さい物を接着して、切断して虫眼鏡で覗くと、熱で熔着したようになっている。

 現在、板を貼り合せてそのあとどうなるか、を観察中である。これがうまくいくなら、組み立ててみたいキットがある。100%プラ板製のDaylight客車一編成である。購入して10年以上放置している。これを組むのに、リモネンがかなりの量必要であろう。

 ポリスチレンという樹脂は透明度が高い。側鎖が大きく、並び方に規則性がないので結晶化しにくい。ボールペンなどの透明な軸、卵のケースなど、引っかくと独特のカリカリパリパリした音で識別できる。最近は白濁したものも作れるようになった。これは結晶性ポリスチレンで、割れにくい。

2007年11月05日

リモネンの挙動

 リモネンを使って手を洗うことが多くなった。筆者は車の修理を手がけるので、油汚れ落としはリモネン系洗剤Goo Goneを使えば、たちまち完了である。もちろんそのあとでセッケンで手を洗う。最初からセッケンを使うことを思えば所用時間は1/10である。

 面白いのは灯油が手に付いたとき、石鹸で洗っても臭いは取れないが、Goo Goneを使うと一瞬で溶け出してしまい、臭いがなくなるなくなることである。

 これは灯油の分子量がせいぜい150くらいであるのに、セッケン分子の分子量が約300もあって、セッケン分子が灯油(炭化水素)の分子を囲んで、水に溶けやすくすることができないからである。要するに、大きなものでは小さいものを囲めないということだ。

 リモネンは分子量が小さく、また灯油と溶け合うので、皮膚の隙間にいる灯油の分子を引っ張り出すことができるのである。一方、油脂は分子量が900弱でかなり大きい。これをセッケン分子でくるむのは容易である。

 このGoo Goneはレイル拭きとして、この趣味界ではかなり有名になってきた。アメリカの模型人の大半がこれをレイル・クリーニングに用いている。日本にも売っているようだが、模型店でしか売らないので、価格が高すぎる。

 アメリカに行くたびに買っていたが、例のテロ事件以降、液体を持ち帰ることが困難になったので、手持ちのものを節約しながら使っている。あと2年分くらいしかない。

 これをポリスチレンの接着に使えないかと調べたが、感心しない。リモネンの含有量がそれ程多くないらしく、溶解性がよくない。可塑剤は多少溶け出すようで、それが別の問題を引き起こす。
 

2007年11月03日

続々 リモネン ピネン シネオール

シネオール シネオールは月桂樹の葉の香気成分である。この匂いを嗅げば、カレーライスや、ロールキャベツを思い出す。これもポリスチレンを非常によく溶かす。

 これらの植物からの抽出成分は、自然界にふんだんにあるものばかりであり、取り出す方法さえ間違わなければ、誰でも抽出可能である。

 石炭を基にした化学から、戦後は石油を基にした化学が進歩したが、天然物有機化学はこれからもっと進歩するであろう。

 植物中では、炭素原子5個からなる基本構造をつなぐ方法により、無数の化合物が可能である。人工的に作るのはまだまだ難しい。

 太平洋戦争末期、ガソリンが不足したとき、松の根を掘り起こして水蒸気蒸留し、代用ガソリンを作ったそうだが、根本原理だけは正しい。それはピネンなどを取り出したわけである。

 ピネンはリモネンより溶解力が強い。ヴァイオリンの弦に塗る松脂も多少のピネンを含んでいるので、ポリスチレンに接触すると多少の変化を与える。そのため、松脂は紙とか布のケースに入れられていることが多い。

 リモネンはプラスティック・モデル用の接着剤としての地位が確立されてきた。それは非常に良い選択であると思う。急速に溶かす石油系溶剤では、接着面に歪みが生じるが、リモネンではゆっくり溶けるのでひずみは分散され、より強く接着される。

 発泡ポリスチレンの包装容器等をリモネンで溶かして縮容する様子をTVで見たが、なかなか賢い方法である。しかしプラスティックを包装材に使わないようにするのが、もっとも賢明であることは間違いない。

2007年11月01日

続 リモネン ピネン シネオール

ピネン と リモネン リモネンは、ポリスチレンという高分子の単量体であるスチレンにかなり似ている。だから、ポリスチレン(スチロール樹脂)をよく溶かす。スチロールはドイツ語であって、スチレンが英語であり、国際名である。発音は"スタイリン"に近い。前にアクセントがある。

 リモネン以外で、分子構造がスチレンに似ているものに、ピネンがある。これは松材から、抽出できる。Pineneという名はPineから来ているのはすぐ分かる。これもよくポリスチレンを溶かす。匂いは、まさに製材所である。価格はかなり高い。松ヤニを処理しても得られるが、松のおがくずが原料としては良いだろう。これを風呂の湯に一滴落とすと、ヒノキ風呂を思わせる匂いになる。

 これらは、シンナ系の溶剤とは違って、溶解速度が小さい。また沸点が170℃あたりで、蒸発速度も小さい。利点としては薄板を張り合わせるとき、母材が歪んだりすることがほとんどない。隙間にしみこませて軽く押さえておくと、全体が溶けてきて溶着し、そのまま放置すれば一晩で完全固着する。接着したものを日光に当てておいたが、3月たっても黄変する事もない。

 臭いはあまり気にならない。発癌性があるという情報もあるが心配には及ばない。この種の発癌試験は、癌が出来るまでやるので、事実上、全て発癌性ありと出ることになっている。

 25年位前、「過酸化水素に発癌性あり」という報道で、それまで何の疑いもなく漂白されていたうどんを捨てるという事件があったが、これも無茶苦茶な条件での実験であった。癌になるまでマウスに過酸化水素水を飲ませたのだ。その量たるや、人間に換算すると、一日3リットルもの3%過酸化水素水である。水でもそれだけ飲めといわれたら、ショック死する人も出そうだ。

 過酸化水素は代謝の過程で必ず発生し、我々の体の中には、それに対処するための分解酵素カタラーゼが準備されている。すなわち、常識的には無害であるはずだ。

 ところで、この常軌を逸した実験でも癌にならなかったマウスが居たそうだから、たいしたものである。むしろこちらを研究して、癌になりにくい体質を調べるべきであった。

 これらは、いわゆる御用学者の実験である。また、過酸化水素の件は広島大学で行われた。

2007年10月30日

リモネン ピネン シネオール

リモネン ワークスK氏のBBSでリモネンの話が出ている。書き込もうと思った途端に矢継ぎ早に投稿されてしまい、出る幕がなさそうな雰囲気である。最近はインターネットの検索機能を有効利用すれば、いくらでも記事が見つかる。しかし、正しい記事はあまりない。

 リモネンは柑橘類の皮から取り出されるモノテルペン類の一つである。取り出し方は簡単で、ジュースを絞ったあとの皮を、水蒸気蒸留という簡単な方法で処理して得られる。高校生レベルの実験であり、本来は安いものである。

 30年ほど前、ニューヨークの地下鉄の落書きを落とすのに使われ始めたのが、溶剤として最初の用途であった。それ以来、筆者は少々興味を持って眺めていた。

 70年代のアメリカでは、食品スーパの一角に、フレッシュのオレンジ・ジュース・マシンがよく置いてあった。内部が透けて見える機械で、投入されたオレンジが2つ割りにされ、ぎゅっと押しつぶされた。ジュースはタンクに溜まり、適当な容器に入れて買うようになっていた。溜まっているのは買いたくないので、タンクが空の時しか買わなかった。家に帰ると容器の上の方に何か浮かんでいた。発泡ポリスチレンのコップに入れて飲んだあと、コップの内側を覗くと、液面の部分が僅かに溶けて凹んでいた。ポリスチレンを多少溶かす能力があるのだろうくらいしか考えなかった。だから、ガラスのコップで飲むようにしていた。 

 さて、日本のスーパマーケットの食品売り場で、刺身、揚げ物などに添え物のレモン切り身を入れて、トレィにラップして売っている。そのレモンの皮に当たっているトレィが少し凹んでいるのが分かる。明らかに溶けている。

 最近のテレビで放映された「ゴム風船にみかんの皮の汁を付けると割れる」というのも、このリモネンのせいだ。ゴムの成分のイソプレンはリモネンと近いと言うより、親みたいなものである。イソプレン2分子をうまくつなぐと、リモネンになる。
"Like disolves like."「似たものは似たものを溶かす。」というのは化学の基本法則の一つであり、当然の結果である。
 

2006年11月05日

スティール・ラジアル・タイヤ

steel radial tire  戦後長らくスティール・ラジアル・タイヤが普及しなかった原因は、おそらく鉄とゴムとの接着性の悪さに起因している。
 
 ゴムと鉄とはくっつかない。しかしゴムと銅とは、化学結合に基づく極めて強力な接着が可能である。それでは、鋼線に銅めっきを掛けたらどうであろうか。このアイデアはタイヤ業界では、最大の発明として、知られている。

 タイヤに入れられているスティール・ワイヤは銅めっきをした上で入れられている。戦前ミシュランがスティールベルト入りタイヤを発明したとき、銅めっきは無かったはずである。戦後特許が成立したはずだが、それには銅めっきのことが書いてなかったと記憶している。浅学にして、この銅めっきを誰が発明したかは知らない。

 ゴムは硫黄を数%入れて加熱し、流動しないようにしている。これを加硫という。この硫黄と銅は極めて強固なイオン結合を作る。これを利用するのだ。

 銅線にゴムをかぶせたキャブタイヤ・ケーブルのゴムが極めて外れにくいことは、古くから知られていた事象である。だから、銅線には紙などを撒きつけてからゴムに封入してある。また、エボナイト(硬質ゴム)と強く接触しているブラス(真鍮)のボルトが外れにくくなるのはよくあることだ。

 1970年代のスティール・ラジアル・タイヤのワイヤは、既に銅めっきであった。現在はブラスめっきになったはずだ。より強度があるからである。ブラスめっきは銅と亜鉛を陽極に並べてめっきするもので、理論的には怪しいところがあるのだが、現実には極めてうまくめっきできる。銅と亜鉛がよくぬれあうからだ。
捨てられているタイヤに切り込みを入れると鋼線に薄くめっきしてあるのがよく見えるのでお試しあれ。

 最近は鋼線とゴムとの接着を界面活性剤で解決する方法が見付かったそうだ。ナフテン酸コバルトというものを介在させる方法である。実はこれが環境にやさしくないものらしく、業界では対応に苦慮している。

 いずれにせよゴムと鋼線とのぬれを改善することが、タイヤ工業の最も大きな問題なのだ。

 ところで、ミシュランが作った鉄道用ゴムタイヤを装備した車輌があったのをご存知だろうか。もちろんガイド用の車輪はフランジ付き鉄車輪だが、駆動用、荷重受け車輪はゴムである。どんな音で走ったのであろうか。

 佐野衡太郎氏のBugattiの車輌には、ゴムを挟んだ車輪が装備されている。これは弾性車輪のさきがけとなったものであろう。

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2006年11月04日

接着と塗装

フロクイル塗料 母材によくぬれる物質が、母材間で硬化すればそれば接着である。母材表面は清浄であれば、接着力が働く。この力は分子間力と呼ばれる力で、静電気的な力である。 

 実際の接着はうまくいかない場合が多い。液体が固体になる変化時に、生じた固体の中に応力が発生する。簡単に言えば体積変化などで「ひきつれ」が発生するのだ。このため接着剤が弱くなり、本来の接着強度の1/100ぐらいしか発揮できない場合が大半だという説まである。

 硬い接着剤が具合が悪いのなら軟らかいものを調べてみると、ゴム系接着剤とか、シリコーン・シーラントがある。これらの接着力は意外に強力である。内部応力の問題があまり無いからだ。また、力の伝達経路を分散させることも大きなファクターであろう。強力両面テープにスポンジがはさまれているのはこのためである。

 塗料も乾燥硬化すると、内部応力が発生する。薄く塗るほうがはがれにくいのは、このためであろう。その点、フロクイルという塗料はたいしたものである。薄く塗っても被覆力があるので、内部応力の小さい丈夫な塗膜になり、はがれない。

 本物の電車のペンキでは、はがれたところに塗り重ねたものは、重なったところがすべてひび割れている。やはり、ストリップしてから薄く塗らないとだめである。
 これはまさに塗膜の中の応力が現れたものである。大手の電鉄会社の塗装ラインを見学したとき、ストリッピングに大変な手間を掛けていた。仕上がりは素晴らしく、「経験が豊富な会社は違う」と感心したものだ。

 接着剤も薄く塗るほうのが強くつくことになるのだろうか。答えるのが難しいが、総論から云えばYESということになる。ABS系プラ用セメントはかなり違う種類の接着だから、エポキシに限った話にする。

 正しい接着が行われていれば、引張ったとき母材が破断する。ここで接着層が厚いと、接着層が破断する。やはり、内部応力が働いている。「エポキシは硬化時に体積が減少しない」と、能天気に書いている本が多いがこれは誤りで体積が変化する。

 鉄板をよく磨いて洗い、少量のエポキシセメントを塗って万力で締め付けると驚くべき接着力を発揮する。しかし普通はそんな使い方をしないから、参考にはなりにくい。最近のエポキシは硬化後もやや弾力がある。昔のものはパリパリになったから、進化したのだろう。多少軟らかいと、上述の応力の問題をクリヤーしやすいと思われる。可塑剤が入っているようだ。
 
 筆者においては、むしろエポキシはフィラー(filler)としてパテ代わりに使うことが多くなった。このパテもどきを作るときは何かの微粉(チョークの粉など)を入れて練ると具合がよくなる。単なる増量剤ではない。応力が分断され、また力の伝達経路が分散されるからである。コンクリートがモルタルより強い理由と似ている。

 瞬間接着剤も昔のものに比べるとかなり軟らかくなった。経験上そうなったのであろう。この種類の接着剤も、密着する面を清浄にして薄い接着層にすると極めてよくつく。模型のばあい、針金で作った手すりをプラの本体に突っ込んで留めるのが目的だったりするから、薄い膜はあまり関係なさそうだ。

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