ヤスリ

2013年07月05日

Bob Longnecker氏のこと

 内野日出男氏はBob Longnecker氏とは1968年くらいからの知り合いだった。お互いに趣味のことであるから十分意思疎通は可能であったので、筆者が間に入る必要もなかった。
 Bobは内野氏の腕をとても高く評価し、内野氏はBobの頭脳に惚れ込んでいた。

 ボブは東京の下町の工場を内野氏と歩いて、ヤスリ工場を訪ねている。名前は失念したが、あるヤスリ職人の腕をとても高く評価していた。身振り手振りを交えて、機械が上下し、手で送りながら歯を付けて行く様子を再現された。また、焼き入れをするとき、味噌を塗るとか泥を塗るとかという工夫について色々考察をされていた。

 日本刀を焼き入れするときには特別な泥を塗るということは知っていた。欧米では硝石とか食塩を混ぜたものを塗るらしい。馬糞を塗るという話も出てきた。
 直接水に接するより、泥や塩を介して接する方がよく冷えるというのは面白い現象である。水蒸気の膜が出来にくいのだそうだ。

 ボブは筆者の3条ウォームの記事については良くご存知で、「理屈は分かっていても誰も作らなかったのだ。コアレスモータを使うという発想がなかったんだね。そこが最大の発明だよ。」と仰った。
 同じ線路に2輌の機関車を置き、1輌を押すともう1輌も動くという話をすると、「想像するのは簡単だが、実際に動くと興奮するだろう。」と言った。その通りであると思った。

 ボブとは、2003年にSeattleで再会している。その時は内野氏夫妻を案内しての旅で、御自宅にお邪魔した。Sam Furukawa氏には大変にお世話になった。

2011年07月21日

続 糸鋸の達人

how to cut long with short-frame coping saw 伊藤氏は、ノギスを使ってブラス板に0.40mm間隔で線を引いた。その隙間を0.23mmの厚さの糸鋸が進む。いかに達人とは言え、多少の蛇行はあるだろうと思っていたが、糸鋸はどちらの線にも触れずに真っ直ぐ進むのである。この時、照明は裸電球一つである。光の反射を使って鋸の進む道を確認している。

 奥まで切り込みたいときは、糸鋸の刃をペンチで挟んでねじる。上端と下端は焼きが入っていないので、簡単にねじられる。これで準備は完了だ。図のように弓を板の外に出して切り進む。図は蛇行を誇張している。
 これの実演を見せられた時は愕然とした。昔雑誌で見たのは、弓を曲げる方法だ。それでは弓の剛性が大幅に減少してしまう。弓は堅くなければならない。最近はアルミ合金あるいはチタン合金製のはしご状の弓がある。軽くて剛性が極めて高いらしいが、値段も素晴らしい。この弓は、刃の方向を45度ねじって留めることができるようになっているから、上記の方法が簡単にできる。
 
 話は元に戻るが、筆者が懸念したのは、弓の張力でねじりが戻るのではないかということだ。それは全く問題なかった。1m近く切った後でもねじり角は保たれていた。
 この方法は、筆者もときどき使わせて戴いている。懐がせまい弓なので、ちょっと奥まったところはこれに限る。色々な作業をしようと思うと、弓は何本か必要だ。

 さて、このように切り離した大きな板を大きな油目ヤスリで2回なでると、ちょうどケガキ線まで削ることができる。伊藤氏は、このように仕上げた板を定盤に立てた。完全に密着して、向こうからの光は漏れなかった。恐るべき技量である。かなり練習したが、その域には到達できそうもない。
 もっと長い板が必要な時はこれをつなぐ。ネジを立てて小ネジを数本用いて当て金を留め、ハンダ付けする。ネジ頭はヤスって落とす。このような方法で伊藤氏はたくさんの船を作られたのだ。

2006年09月02日

ヤスリをカスタマイズする

53c1f6af.jpg 鉄砲鍛冶という仕事は、簡単に言えば鋼を削ることである。機械加工した後、ヤスリで削る。そのあと砥粒を油で練って磨き上げる。
 Billの工房にはありとあらゆるヤスリが、おそらく数百本は揃えてあった。買い置きの1ダースの封を開け、一本ずつ検査する。そりがないか、ねじれていないかを調べて、駄目なのはその場で折って捨てる。柄の方はキサゲ用として取っておくが、目の立てられた方は使い道がないという。2本は捨てられた。使える10本にグラインダを当てて、目が立てられてない面を削り落とす。この面を"safe edge"という。
 
これで終わりかと思ったら、「そこのアーカンソーを取ってくれ」という。何のことかわからず戸惑った。それはアーカンソー・ストーン(目の細かい砥石)のことであった。油をつけて丁寧に研ぐ。10本研ぐのに30分近くも掛けた。研ぎあがったヤスリは虹のように光った。

 両面のヤスリ目を片方だけにしたり、隣り合う2面を削り落としたりしていろいろなパターンを作った。Bill曰く、「買ったばかりのヤスリはcrude file(粗なるヤスリ)だ。石油だってcrude oil(原油)から、ガソリンその他を作り出す。原油はそのままでは使えないだろ?」

 工房にはBillが手を掛けた特製ヤスリばかりが並んでいた。先の曲がったヤスリも何本かあった。これらはRiffler Fileというそうで、鉄砲鍛冶の現場で握りを波状にへこませるときに使われ始めたものらしい。
 2本だけ記念に貰ってきた。現在手持ちのヤスリはBillの教えに従って加工してある。写真の下にある2本はグラインダーで削り落としただけのもの。上の2本は研ぎ上げたものである。Billのヤスリのように虹色には光っていないが、#1000の砥石で研いだものである。

 傷をつけたくない面にsafe edgeを当て、そこにほんの少しの油をつけてヤスリを動かす。実に滑らかに滑って、目的の面だけが削れていくのを見るのは快感である。 

Recent Comments
Archives
Recent TrackBacks
Categories
  • ライブドアブログ