金属加工

2018年08月03日

続 職人たち

 HOの蒸気機関車の窓枠を抜くのは面倒だ。細い十字の窓枠を残さねばならない。

 祖父江氏に聞いた話だ。竹野三郎氏という職人がいた。彼は0.2 mmのブラス板を12枚重ねてハンダ付けして糸鋸で抜いた。もちろんヤスリを掛けてから、ばらばらにする。大したもんだということになったが、祖父江氏が
「そんなもの、タガネでも抜けるぜ。」
と言って、6枚ずつ重ねて万力に銜え、先を斜めに研いだタガネで打ち抜いた。万力には研いだ口金を付けているのは言うまでもない。
 板厚の半分の 0.1mm ほどずらしてやれば抜けるという。剪断による歪が出るから、そのひずみを窓枠に関係ない方向にもっていくのだそうだ。抜いたカスは、菱(ヒシ)の実か、蕎麦殻のような形になる。こうして6枚ずつを2回で12枚抜く時間は、竹野氏より短かったそうだ。

 こういった特殊技能の自慢会ができるくらい、素晴らしい職人が揃っていたのだ。竹野氏は、PFMのリストにいくつかの作品が載っている。

 日本には錺(かざり)職人の系譜がある。とんでもなく細かな作業をキサゲとヤスリでやってしまう。そういう人たちは、腕を磨いて、自慢し合っていたのだ。ライアンが来た頃には、その種の職人がたくさん居た。

<追記> 
   mackey氏の情報により、竹野氏のフルネームが判明した。感謝に堪えない。 

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2018年08月01日

職人たち

 PFM-NakayamaのUP7000は有名である。手際よくまとめられている。ボイラの上端の高さの線が、実物通りだ。それほど細かくはないが、繊細な仕上がしてある。

 実は中山氏には1987年に、3回ほど会っている。中野区大和町に在住であった。その頃はもう引退して、お孫さんと遊んでいた。また、目が悪くなってもう仕事はできないと言っていた。作業場をみせてほしかったのだが、仕事をやめたのでつぶしてしまったと言う。その場所は駄菓子屋になっていた。眼光鋭い職人を想像していたが、穏やかな長身の好々爺であった。つぼみ堂系列の職人だったようだ。
 「あのUP7000は素晴らしい。」と告げると、「写真と図面を渡されたから、その通り作っただけですよ。大したことは無いです。動輪は何かの流用ですよ。」と言った。確かにこのボックス動輪は、あまり感心しない。Mohawk L4b の動輪に孔をあけ足したような感じだ。聞けばOゲージもいくつか作っていて、その中にMcKeenもあった。

Ken Kidder McKeen 残骸が転がっていたので、お願いして簡単に修復してもらい、相当額で購入した。後部台車はないとのことで、それは自作した。
  
McKeen この McKeen の屋根は叩き出して作ってあり、そのすべての面にリヴェットが打ち出してある。なかなか難しい細工である。また、窓は糸鋸で切り抜いてあり、曲げた真鍮線の縁取りが付いている。
 現在はDCC化してあり、内部には3つのデコーダが載っている。走行、はずみ車、音声用である。マーカーライトには小型電球を入れたが、現在のLEDを使えば、もう少しうまくまとめられる。更新が必要だ。


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2018年07月16日

続 技術者T氏の来訪

 T氏のあとを付いて歩き、質問があれば答える形にした。
 アメリカ製キット組立のディーゼル電気機関車には興味が湧いたようだった。手に取るとずしりと重いのが気持ちが良かったようだ。
「これくらいないとね。薄いよりは厚いほうが良いね。でもハンダ付けは大変だな。」 
 ガスバーナで焙って焼きゴテで付ける話をした。今なら炭素棒だ。

 巨大なフライホィールを増速してあるタイプを、押してご覧になった。
「すごい慣性だね。」とご満悦であった。衝突時に壊れないよう、スラストベアリングが入っているのに気が付かれた。

 等角逆捻りのサンプルを、いくつか手に取ってご覧になり、リンク機構をじっくり観察された。例の魔法使いの弟子風のもご覧になったが、取り立てて磨り減るとはおっしゃらなかった。
「動きが面白い。カウンタ・バランスが効いているから、横に寝させてはだめだな。」とおっしゃった。

「私も昔は3線式のOゲージから始めた。当時のものは軽かったね。機関車は厚い板で作りたかった。」 
 中学生のころの筆者も同じことを考えていた。薄い板で作ってウェイトを積むより、厚い板で作ってウェイト無しが理想であった。持った時壊れにくいからだ。それができるようになるまで、40年ほど掛かった。ハンダ付けが完璧なのは良い、はみだしていなければならない。という点でも意見の一致をみた。

 フライス盤のZ軸DROの支持点を上に延ばしたアイデアは面白いとおっしゃった。 

 本物の技術者と話をすると面白い。伊藤 剛氏をお招きしようと思っている矢先に亡くなってしまって、ずいぶん残念な思いをしたが、先日のT氏の訪問で、いろいろな意味で救われたように思う。

2018年07月04日

快削ブラス

 快削ブラスを紹介したのは10年以上前だ。それについては、誰からもコメントが無い時期が続いたが、数年前に仙台の今野氏が反応して下さった

 糸鋸でブラスの板を切るのは、ちょっとした骨(コツ)があって、習熟するまでに、多少の時間が掛かる。良い糸鋸刃を買えば少しは楽であるが、それでも初心者には大変である。高校生の時から数えて、糸鋸刃を一体何本折ったのだろう。数えてはいないが膨大な数であろう。ブラスには、刃が喰い込みやすいのだ。

 昔、アメリカでブラスの色が違うのに気が付いた。アメリカのブラスでは、ヤスリ掛け、糸鋸、ドリルでの穴あけが非常に楽である。自分ではやらなかったが、プレスでの窓抜きも簡単である。抜いた後ヤスリを掛けなくてもよい。それを使うと、糸鋸を折ることが少ない。1ストロークで切れる量が、普通の2倍以上である。

 今野氏は筆者と同様、糸鋸、ヤスリを良く使われる方だ。そういう人には、快削の有難みがよく分かって戴ける。
 筆者はブラス板を買うときは番号で買うが、その板はそれほど良く売れているわけでもなさそうだ。聞き直されることがある。ということは、ほとんどの顧客は快削材を使っていないということだ。快削材は別名”クロック板”という。クロックは時計である。掛時計の歯車を作った時の名残である。普通のは”コーペル板”というのだ。copper(銅)という名前から来ているのだろう。

 アメリカのブラスを今野氏に送って評価して戴いている。日本のクロック板より、さらに快削である。糸鋸の1ストロークで切れる長さが3倍近いように感じる。腰が強く、バネ性がある。色は緑がかっているように感じる。削って新しい面を出したとき、白味を感じるが、徐々に酸化されて緑っぽくなる。

 先日の記事でブラス工作をする人が減ったことを書いたが、その一つの原因は快削材を使わないからである、と筆者は思う。サクサクと切れて仕上がりが綺麗だから、工作は楽で、なおかつ美しいものができる。
 糸鋸を、殆ど折らずに工作できるのは有難い。TMSに「快削材を使うと良い」と、どこかに書いてあっただろうか。もし御記憶の方はお知らせ願いたい。この不作為が、現在のブラス工作をする人が減った大きな原因の一つである、と思うのは筆者だけだろうか。


2018年06月24日

ブラス離れ

 3年ぶりの O Scale West 参加で、気になったことがある。ブラス離れである。昔はブラスの機関車が大量に並び、1000ドル から 4000ドル くらいの値札が付いていた。今回は過去の10分の1もないという感じだ。しかも安い。
 多少の破損品がとても安い。3日掛けて修理すれば直るものが、適正価格の1/3で出ている。筆者はすでにコレクションを終わっているのでもう要らないが、若い人は欲しいだろう。旋盤を持っていて炭素棒ハンダ付けができれば、すぐ直る。

 もうブラスの機関車を加工できる人が少ないのだ。これは由々しき事態である。
 ブラス偏重を攻撃する人は多い。進歩的と言われる人はそれに同調する。しかしながら、金属以外の材料で作られたものは、50年というタイム・スパンで考えると持たない、というのは客観的な意見である。ダイキャストも怪しい。
「趣味は作った時が楽しいのだからそれで良い。」という意見もあるが、この趣味を盛り立てて行こうと思うと、それでは心もとない。

Lobaugh Cabeese 今回も、昔は価値のあった Lobaugh のカブース・キットが25ドルで投げ売りされている。一つくらい買おうかと思ったら、その男は下からもう一つ出して、
「これも買ってくれたら40ドルで良い。」と言う。思わず2種買ってしまった。
 いずれ発表するが、重厚な仕上がりの期待できる素晴らしいブラス・キットである。
Lobaugh の砲金鋳物の台車も各種調達した。今となっては貴重なアメリカ製のブラス製品である。祖父江氏はLobaughの機関車を見て参考にしたのだ。
 アメリカ製のブラスは、すべて快削材である。糸鋸でサクサクと切れる。色も違う。日本製は黄色いが、アメリカ製は緑っぽい。

IMP stock car  1950年代のIMP (International Model Products) の家畜車も安く押し付けられた。厚さ10mil (0.25 mm) の材料で、ハンダ付けが最小限だから、とても弱い。握ると凹むし、パラパラと部品が取れて来る。よくもこんなにハンダをケチって作れるものだと、妙に感心した。
 帰宅後直ちに全部の部品を引っ張り、取れそうなものはすべて外したのち、ハンダを贅沢に使って修理した。センタービームにはブラスの厚板をハンダ付けして連結器周りの強度を確保した。僅かのロストワックス・パーツを付け、手摺り等を補う。連結器、台車を取替えると当鉄道仕様となる。


 久し振りに会った友達が来て、箱を開けて中を見せる。
「どうだい、これ欲しくないか。200ドルでいいよ。」とCentral Locomotive Works の機関車キットを示す。
「君ならすぐ組めるだろ、組んだのを持って来てくれれば400ドルで買い戻すよ。」と抜かす。冗談じゃない。

 要するにもう彼らの大半がブラスと縁がないのである。日本も同様な時代に入ったと思う。それだからこそ、博物館が開いたら、ブラス工作教室を開きたい。


2018年06月18日

O Scale West での講演 5

bridge painted 橋の説明をした。Oスケールの橋はAtlasのプラスティック製のトラス橋か、韓国のAjin製のブラスの橋しかない。二種しかなく、複線橋は無理である。しかも幅が狭いので、直線にしか使えない。

 今回作成の橋をレーザ加工で切り抜き、ハンダ付けして組み立てた話は、非常にエキサイティングな話だったらしい。  
「一枚ずつはふにゃふにゃした板でも、直角にハンダ付けしてトラスを組むと、とても剛性の強いものになるのは印象的であった。」
と述べたところ、
「そうだ、本物もそうだからな。」
と言った人が居た。

top lateralsrivet forming (5) ほとんどの人の興味はガセットの作り方だ。例の大きな円にメスのダイを上から合わせるアイデアを紹介すると、大きな声で、
「これはすごいアイデアだ。」と叫ぶ人が居たほどだ。
 皆困っていたのだ。これも一つの breakthru (誰もやってなかったことを成し遂げること)であったらしい。真似をする人が増えれば嬉しい。


girder bridge completed ガーダ橋の内側のトラスも非常に興味をかき立てられたようだ。安くできるのだったら作ったほうが良い、と思ったのだ。曲線上であるから、カントの処理も興味の対象だ。傾斜の付いた枕木を特注で製作して、レーザ加工のジグの中で組んだという話はとても興味深そうであった。皆レーザ加工をしてみたいのだ。
「厚いブラス板をレーザ加工するといろいろな点で問題がある。鉄板、ステンレスは楽で良い」と言うと、俄然その気になった。
「電話帳で工場を探して、ソフトウェアを送ればすぐできるよ。」と言うと皆やる気になった。 
 CNCでの3次元加工とか、3Dプリンタによる工作に頼るのには、まだ拒否感を示す人は多いが、正確な切り抜きを期待できるレーザ加工は、ホビィ・クラフツマンに期待されていると確信した。
「やる気になれば、各種の客車を受注生産できるよ。」と言うとやりたそうな顔をした人が何人か居た。

 breakthrough という綴りではないかという問い合わせを複数戴いている。本来はそうであったが、現代のアメリカでは、誰もそのような綴りを使わないようになった。言葉が、簡略化されていく良い例である。June 28, 2018 追記

2018年05月14日

手順

 速く作るには、作り始める前に手順を確認することが時間節約の第一歩だ。設計には時間を掛ける。

 作業台を広くする。ワークを回転させるものならば、邪魔にならないように周りを整理する。作り始める前に、すべての材料を並べる。ハンダも何を使うか決める。コテか炭素棒かも決めておく。

 工具を使用手順の順序に並べる。刃物の切れ味を確かめる。工具が揃っていない時は着手しない。作業中ものを探すことが無いようにする。

 部品をいくつ作るか計算して、プラス2個作る。多くても少なくても2個余分に作ると助かることが多い。今回は54個の補剛材 stiffenerが必要だから56個作っておく。はめ込む先のアングルの角は甘いので、補剛材の先端には大きめの面取りを施すことを忘れてはならない。多少隙間が空いてもハンダが浸み込んで解決する。

 電動丸鋸で所定の寸法に切って、フライスで補剛材をアングルの厚み分を削る。本物では、さらに平板をその上に固着している。そこまでやっても誰も気が付かないから省略する。
 内部の哨屮譽ぅ垢眈蔑する。捩じれに対する剛性を減らすのが主眼だ。

section 下面の哨屮譽ぅ垢世韻惑い板で作って付けておかないと、回転時にたわんで、ずれが出る可能性がある。
 これで完成だ。台車部分は取付け時に欠き取って高さを合わせる。今作っても仕方がない。

 昔、祖父江氏のところで作業を見ていたが、作業時間を口に出して、必ずその時間で終わるのが興味深かった。失敗がないので、まず間違いがない。こちらは素人なので、失敗の復旧時間が多かった。
 祖父江氏は、
「失敗だと思ったら、捨てちめぇ。迷うことなんか、ねえんだよ。」
と言った。直すより作ったほうが早いのだ。最近それはつくづく感じる。ゴミ箱には、失敗作が無造作につっ込んである。それは金属回収業者のところに行く。叩き潰してから持って行くのだ。


2018年05月08日

ニブラ

 転車台の回転橋を作り始めた。まず 0.4 mm厚の薄板を 35 mm幅、900mm長に切らねばならない。この橋は薄板を使って作り、捩じり剛性を低くすることに重きを置く。

 定尺の小板(365 x 1200 mm)を切るに当たって、シァで短く切ってつなぐことを考えていたが、圧延の方向による「目」を考えると得策ではないのと、つないだ部分の剛性が高くなるのを避けたかった。

81556_R-3 ニブラという道具がある。電動式で、1.6 mm径の刃物が上下して薄板(0.8 mm厚の鉄板、1.5 mm厚のブラス板)を自在に切り抜く道具である。
 ガイドも付けられるので、同じ幅で切り出すことが可能である。これを使えば簡単に同一幅のストリップができる。もちろん切り口は剪断面が出ているので、多少のダレはある。ゴムハンマで打って伸ばして、ヤスリを掛ければ問題ない。

 たまたま、northerns484氏がいらしたので、板を押さえて戴いて、一気に切った。あまりにも速くて、驚かれたようだ。細かい三日月状の切粉がたくさん出た。新聞紙を敷き詰めて行ったので、回収は簡単である。
 今回は板が薄すぎて、多少のダレがあったが、1 mm厚程度の板なら、後処理はほとんど要らない。写真を撮るのを忘れたのは残念であった。いやむしろ動画を撮るべきであった。900 mm を10秒程度で切れる。

 切った薄板はくたくたで、こんなもので橋ができるのかと思うほどしなやかだ。

2018年05月06日

駆動台車

plain truck, drive truck 駆動台車を間違えて作ったことが分かった。鏡像の形になっていたので、捨てて作り直した。軸間距離が異なり、イコライザ中心からの距離も異なるので、再計算して正確に孔をあけ直した。

 モータの載る台はピットの円筒面を避ける形になっていて、駆動輪と直角にモータが付く。適当な歯車でそれらしい形に減速装置を作り、載せておく。簡単な小屋掛けをして、雨に当らないようにする。ギヤはむき出しである。

oprator's cab キャブの色は悩むところだ。様々な実物の写真を見ている。あまり突出した色は避け、ありそうな色を選ばねばならない。
 濃い緑あたりに落ち着きそうである。屋根は黒、手摺りも黒にするが、手摺りの先端は白くする。あるいはトラ縞にする。

 中心のシャフトは Φ40 であり、それに嵌まる回転橋の中心部分を旋盤で挽き出している。厚いブロックをトレパニングという技法でくり抜いて取り付ける。位相をきちんと決めたら、留めネジで締める。ミスの無いように慎重な作業をしている。


2018年04月30日

またまたガセット作り

gussetsremoving gusset 仕舞ってあった工具を引っ張り出して、毎朝少しずつ打った。一部の大きなガセットに、貼り間違いが見つかったのだ。写真はまだ歪みが取ってない状態である。
 タガネを研いで当て、コンコンと叩いて剥がした。とても良く付いている。ヤスリを掛けて接着剤を完全に取り、再度接着した。

fixing gussets 小さいものは、見えないだろうと思って省略した天井部分のトラスに貼る。最近の高精細のカメラは、どんなものも映し出してしまうから困ったものだ。

 色は銀色とすることにした。古びた渋い銀色だ。フロクイルに"old silver" 色があるが、それにgrimy black (汚い黒)を足す。
 塗装の準備で忙しくなってきた。毎日少しずつ錆びを落としている。鉄板製であるから、仕方がない。一度サンドブラストでほとんど落としたのだが、また1年ほど経って錆びて来た。
 ひっくり返すと、接着剤がはみ出していたりするので、それを削る。

 塗装の手順を考えている。ひっくり返して裏側から塗り始める。側面の細かいトラスを忘れずに塗るのはなかなか難しい。  


2018年04月20日

続 operator's cab

 キャブをブラスの板から作った。長年の使用に耐えるように金属製としたのだ。t0.6 の板にけがいて、糸鋸で切り出した。うっかり快削でないものも半分混じっていたので、切るのに苦労した。最近は快削の材料しか使っていないので、そのつもりで切って糸鋸を折ってしまった。快削なら、1ストロークで 2.5 mm 切れる。
 
 昔は眼が良く見えたので、罫書き線の半分まで切るということもできた。ヤスリ仕上無しという工作をしたこともある。
 最近はすっかり諦めて、罫書き線の内側 0.5 mm あたりでやめている。それをヤスリで削り落とすのだが、万力は使わない。万力で締めると傷が付くから避けたい。

step helps filing 仙台の今野氏ご創案段付きアンビルを使う。例のフロイス盤の上に置いて、ワークを立てる。段に引っ掛けて、ヤスリを掛ける。
 本来の使い方ではないのだろうが、いつもこの方式で仕上げる。快削材は堅いので、曲がることは無い。ヤスリは勝手の分かっている専用のを使う。1ストロークで 0.15 mm ずつ削れるので、3回半でできあがりだ。こういうところは、慣れた道具を使うと見なくてもできる。と言うより、見るのが面倒なのだ。
step helps filing2 TMSに発表された今野氏の記事では、帯材の端面を仕上げる様子が示され、側面でヤスリ掛けしている写真があった。筆者はその使い方より、今回の使い方の方がはるかに多い。

 出来たら、油目ヤスリでバリを取って、ちょいちょいとハンダ付けしてできあがりだ。簡単な直角ジグで支えて付ける。ブラス工作は楽しい。なんといっても速くできるのが良い。接着剤を使う工作は、好きではない。

 今回の工作は気楽である。鑑賞距離が 1.5 m以上 と決まっているので、それらしく見えれば良いのである。細かく作っても意味がない。

2018年03月05日

タッピング

 最近は細いメネジを立てることから遠ざかっているが、タップを入れてある箱から、こういうものが出てきた。

tap holders 左が商品のオリジナルの状態である。右は直角に出た部分を打ち抜いたものである。細いタップを把持して回転するのであるが、左の状態のものはタップをよく折る。数本連続して折って、気が付いた。



 この横棒は無いほうが良い。人間の手は点対称にできていない。親指が2本ある人は良いが、普通の人はそうではない。この横棒にほかの指が引っ掛かる。筆者の経験では中指が犯人である。引っ掛けると、貴重な細いタップがぽきりと折れる。

 細いタップは高いので参ってしまう。先の方が折れただけなら、旋盤のチャックに銜えて、手で廻しながら砥石で磨って再生する。もちろん砥粒は受ける。
 折れた先は喰い込んでいるから、ステンレス塩水漬けで2日掛かって溶かす。多大な損失だ。

 横棒を抜くと、殆ど折らなくなる。細いタップ立てには力は要らない。下穴を多少大きめにすると楽に切れる。油を付けるとさらに楽になる。この2つを守れば、タップを折ることはない。筆者は小型電動ドリルの先に小さなチャックを付けて切ることもある。1.4 mmなら一瞬である。電動ドリルはしっかり保持して、即座に逆転する。意外に簡単である。ガラも使うが、電動も良いものだ。小型の自動逆転のタッピングマシンを作れないか検討している。細い電池式のもので十分だから、過電流を検知して逆転すれば良い。H5氏は、自動ではないが、細いタッピング専用機を作られた。非常にうまく作動するのを拝見した。

 もちろん、数が少なく、板が薄ければ、回転ヘッド付きのピンバイスも楽で良い。


XX2 ところで、これは何だろうか。丸い部分は直径 35 mmほどである。長さは 140 mm ほどである。スティールで作りたかったが、良い材料がなかったので、とりあえずブラスで作った。ネジは、M10-P1.5 である。久しぶりに太いネジを切った。

2018年02月27日

職人との会話

 どうしてそんなに職人と親しくなれるのか、という質問があった。

 一つにはそういう時代に生きていた、という運の良さがあった。住んでいるところが町工場がたくさんある地域であったこともある。友人の家がそのような仕事をしているところもあった。
 中学で技術家庭という時間があったが、授業はつまらなかった。教師が分かっていないことが、はっきり分かったからだ。旋盤のある工場で窓の外から見ていると、中に入れてくれて触らせてくれたし、職人芸を見せてもらった。

 そういう時に、「この仕事をやりたい」と思っていたから、それを口に出すと一生懸命教えてくれた。フライス番は切粉が飛び散るので、飛ばない方向からしか見られなかったが、すごいものだと思った。仕事が速いのだ。父に聞くと、「セーパー(型削り盤)は刃物が一つしかないが、フライスはたくさん付いているからな。」と言う。それはそうだが、あの速度で焼けた切粉が煙を上げて飛んでいくのは凄い眺めだった。超硬の刃というのも初めて見た。

 旋盤とフライスで家が建つほどの金額だと聞いたので、自分で趣味で持つことはできそうもないと思ったが、のちにアマチュア用のものがアメリカ、イギリスを中心に出ていることが分かった。

 様々な分野の職人と話をするのは楽しかった。図面を描いて注文すると、面倒そうな顔はするけど、受け取りに行くと得意満面で、腕自慢する。その自慢を良く聞いて、さらに面倒な注文をする。だんだんとエスカレートするのが面白かった。職人は学校には行っていないが、知識がある人が多かった。父は、
「分からないことは、工場に行って職人の頭に聞くんだ。賢い人が居るからな。」
とよく言っていた。
 現場でなければ分からないこともあるのだ。本を読んだだけではできない仕事だ。まさにプラグマティズムの世界である。 

 祖父江氏と知り合ったのはその頃で、模型職人なのに機械工学の基礎を完璧に知っているのには、驚いた。そういう人は見たことが無かった。
「14枚以下の歯車は、歯車じゃねえよ。」
 この言葉が模型職人の口から出るとは思わなかった。すっかり参ってしまって、通うようになった。

2018年01月28日

続 砥粒

 早速メイルを戴いたので紹介したい。

 砥粒の話、そのように教えられたり聞いてはいても、気にしないモデラーが多いでしょうね。実際に擦り減って支障を起こすほど使わない(使用時間が長くない)からでしょう。問題が発生しない、もしくは擦り減るという経験をしていないので、理解できないのだと思いますね。 

 模型車両の軸受の構造も、よくこれで持つよなあと思うものが大半です。海外メーカーの米国型HO蒸機がギクシャクして肩を振るようになったので分解してみたら、単に長方形に切り欠いただけの軸受に真鍮の車軸が嵌まっていて、擦り減っていたということを経験しています。ちゃんと注油し、綿埃などは取り除いていたにもかかわらずです。油が砂埃?を巻き込んだのが却っていけなかったのかもしれません。
 こういう場合はグリーセムのような固体潤滑の方が良いかもしれませんね。ギヤの露出も問題です。埃だらけの居間の壁際に敷いた線路で、ずっと走らせていればそういうことにもなるのだろうと思います。長時間連続して走らせることなどは、想定外なのでしょうね。博物館や商店の展示レイアウトの車輌の消耗やメンテナンスはどうなっているんでしょうね。

 
おっしゃる通りで、アマチュアの旋盤で、磨り減るほど使ったものにはお目にかからないから、良いのかもしれない。
 筆者も現役のころは旋盤、フライス盤に向かうのは週に1時間ほどであった。最近は毎日2時間くらいであろうか。これくらい使えば減るかもしれない。ベルトは擦り切れて2回取り替えた。刃物の消耗はかなりあるが、最近はダイヤモンド砥石があるので、修正は簡単だ。
 
 建設中の博物館の車輛は、すべて密閉式ギヤボックスを持ち、軸受はボールベアリングである。それらは十分持つだろうと思う。問題はロッドである。ひと月に一度溶剤スプレィで洗い落とし、再注油する。洗うと黒いものがたくさん落ちる。これはロッドの金属粉なのだろう。
 数年に一回、ロッドの孔のスリーブを入れ替える必要があるかもしれない。これは比較的簡単な作業である。

 模型においては消耗ということを考えることは少ないが、博物館が開業するとそれは深刻な問題になりうる。そういう点ではLow-D車輪は減らないから良い。

 JRなどが開いている博物館のHOレイアウトでの車輛の消耗は相当なものである。どんどん下廻りを取り替えているらしい。
 しばらく前、3条ウォーム、コアレスモータ、Low-D車輪の組み合わせをHOでやりたいという人が現れ、図面を提供した。博物館のメンテナンス・コストを小さくするという触れ込みで、応札したらしいが、見事に負けたらしい。勝ったのは既存の模型店で、イニシアル・コストが低いからであったそうな。当然メンテナンスには多大な金がかかり、模型店は左うちわだそうだ。資源の浪費は著しい。困ったものだ。



2018年01月18日

X-1 micromill belt drive conversion kit の取付⑸

 ようやく体調が戻ってきたので、フライス盤の現物をばらして調整をした。結論としては、小プーリィを0.8 mm上げれば、すべて解決である。もちろん大プーリィは最大限下げておく。ガードとスピンドル・ロックを兼ねた角材に大プーリィの縁が当たるので、そこには 0.3 mm程度の隙間を空けておく。 

 製造元に聞いてみると、小プーリィの取付けもキィでできるのだが、キィを削ってするすると入るようにするという知識を持っている人が少なく、叩き込んで失敗する例を避けたいのだそうだ。大した力が掛かるわけでもないので、このような簡易キィでも十分だろう。組立て方は皆さんにお任せする。

small pulley 小プーリィの細く飛び出した軸穴部分は、ごく適当に削っても、バランスその他で問題が起きることは無い。筆者は旋盤で削るのが面倒だったので、手で回転させながら卓上型ベルトサンダで落とした。紙やすりの上で手で磨っても、すぐ完了である。

mortor ballbearing 面取りを施し、削り屑をブラシを通して掃除した。溶剤スプレィで洗って、ミシン油を塗って嵌め込んだ。キィは使わずに、ブラスのピンとネジで留めた。驚いたことに、差し込むとボール・ベアリングのインナレースの黒い油が均一に付いた。十分に平行に削れたということになる。削る部分の断面積が小さいので、アッという間に削れる。
 このベルトサンダは便利な道具で、ちょっとした調整はこれに限る。削れる速度が大きいので、保持するのも楽である。木材、スティール、ブラス、アルミ合金など、なんでも来い、である。

pulleys in correct height 試運転中の写真である。多少手間取ったが、ベルトは水平になり、最高速で廻してもモータ音しかしない。意外と、このモータはうるさい。ブラシがあるからだ。小さな三相モータを付けて、インヴァータで制御すると静かになりそうだ。あるいはブラシレス・モ−タだ。そうすると変速装置は不要となるかもしれない。そうなれば回転数は0〜5000 rpmまで無段変速である。出力も増大する。
 暇になったらやってみよう。しかし改良が無限に行われると、最終的には3軸マシニング・センタになってしまう。しかし、4軸ないと面白くないのだ。そうなると外注するほうが出来が良くなる。あまり考えない方が良さそうだ。

2018年01月10日

X-1 micromill belt drive conversion kit の取付⑴

 この造形は、以前取り寄せたアメリカ製のものとはかなり異なる。ベルトの嵌め替えの面倒な曲面ガードを廃し、厚板でガードした。また、ネジ一本でベルトの張替えができるようにした。しかも指で廻せるようにしてある。3段変速だから、この設計は役に立つはずだ。
 筆者は最近右手拇指が故障しているので、これでも少々廻しにくい可能性がありうる。夜中に関節が外れることも、たまにあるのだ。
 そういう時は、例のセレーションの付いたレヴァに取り換えざるを得ない。歳を取ると、様々なところが劣化してきて、模型工作すらできなくなるような気がしてきた。
 要は使い過ぎたのだ。こういう作業を何もしない人は、殆ど変化がないように見える。安楽マニアは問題が起こらないのだろう。

 先日庭のデッキを修理する時に、帰省中の長男と3時間ほど働いたのだが、金槌をフル・ストロークで打ち下ろせないことに気が付いた。親指が弱く、握力がないからだ。以前は83mm(3.25インチ)の釘を1ポンド(455 g)のハンマで3回で打ち込めた(これがアメリカの大工の必須事項)のが自慢だったが、もうダメである。インパクト・レンチも両手で保持する。

 クイルから歯車を抜くのに困る人はお知り合いの自動車修理屋あるいは機械修理屋、水道屋などに頼んでギヤ・プーラを貸してもらうと良い。壊しても良いものなので、ドリルでいくつか孔をあけ、鋸で切れ目を入れて、割ってしまっても良いだろう。鋼製の中空軸は意外と固く嵌まっている。クイルには焼きが入っているわけではないので、曲げないようにしなければならない。どこにも借りる伝手がない場合はお貸しするが、たくさんの要望がある場合には、こちらからの指定順で、巡回させることになる。その場合の送料は、順次ご負担願う。

2017年12月27日

転車台インデックス装置の完成

turntable index completed かれこれ2箇月も掛かってしまった。先日ようやくすべての部品を組付け、試運転を行った。結果は上々で、慣性モーメントの大きなものがグワーンと動き、ギューンと正位置に停止する。この写真は10日ほど前に撮ったものである。現在はもう少し進歩している。近日中に動画を撮って、お見せしたい。

round notch 目的の位相に近づいた時、インデックス装置を作動させると、プランジャが伸びて円盤に当たる。プランジャ先端のローラ・ベアリングが刻み目を拾うと、回転している円盤の慣性によってインデックスは横にずれる。その時、ダンピングが起こる。
 以前の写真では平行な切れ目が付いているが、現在はローラ・ベアリングの丸味に合わせて、僅かな丸い凹みが付けてある。

 電線は、通称「尺取虫」で支えてある。これがないと局所的に疲労し断線するだろう。メインテナンス・フリィを眼目としているので、各部分の疲労が無いような設計である。この尺取虫の本名を調べたのだが、分からない。御存じの方はお知らせ願う。

 センタリング装置を作動させると、ゆっくり正位置に向かって動き、アラインメントが出る。センタリングはタンジェントが1/3である。ボール・ベアリングで転がすので、抵抗はほとんど無い。引張る部分はボール・ベアリングで3方向から支えてあるので、抵抗は感じられない。非常に効率が良い。ラックをギヤード・モータが引張ると、するっとセンタリングするが、円盤の大きな慣性モーメントがあるので、ゆっくり動き、時には行き過ぎる。再度センタリングをすると所定の位置に止まる。この動きが実物のようで、満足している。全自動のコンピュータ制御のものとは全く異なる実感のある動きである。
 この装置全体で、ボール・ベアリングは28個使っている。

 円盤は940 mm径だが、フレは0.2 mm以下である。非常に正確にできた。回転橋のフレもその程度であろう。180度廻したときのずれが大きいと具合が悪いので、そこには最大限の注意を払う。

 すべてのモータにはある装置が付けられ、逆駆動も可能であるし、負荷が掛かっていてもモータは停まることもない。さて何であろうか。正解発表は新年にしたい。ヒントは写真の中にある。

 尺取り虫の正確な名前は、椿本チエインのケーブルベヤであることが分かりました。ご教示ありがとうございます。

2017年12月05日

modifying tailstock

tailstock2 テイルストック(心押台)は、既製品のままでは具合が悪い。繰り出し量が少ないから、何とかしようと思っていた。畏友U氏が同じことを考え、改造されたことを知った。左ネジを切った長い押し棒を作られたのだ。筆者も自分で作ることにし、材料のS45Cの丸棒を調達した。長いから、削るときに中間を移動振れ止めで押さえねばならない。その準備もして、左ネジを切る算段をしていたのだが、久し振りのことでネジ切りの歯車セットをどこにやったのか、思い出せない。
 もたもたしているうちに、U氏が作って送って下さったので、ありがたく頂戴し、嵌め替えた。ネジが長くなったので、MT-1のテーパ・シャンクが長過ぎる。U氏に教えてもらった通りにテーパ部を22mmとした。何で切ろうか迷ったが、結局のところ、Brass_solder氏のアイデアで糸鋸で切った。1本12分かかって、糸鋸刃は1本折れる。計算通りだ。

 この旋盤のテイルストックには他にも問題があった。繰り出しのリミッタを兼ねるネジが、こちらから向こうに、水平に押している。これではセンタの心が出ない。
 やはりU氏も同じことを考えられ、スリ割りを入れてネジで締める形にされている。早速、1 mm のスリ割りを入れた。鋳鉄だからと甘く見たのはとんでもない間違いで、切削油を大量に使っても、切るのは苦労した。後で油の処理が大変であった。

 肉が薄いのでやや心配したが、M5のネジを立てて、セレーションのついたネジで締めた。この方法では全体を絞るので、センタが出る。当然、締める座はフライスで削って平らにした。
 廻り止めを兼ねた繰り出しリミッタは、20 mmずらして先端に近いところにM4タップを立てた。短いネジを締めたら、それだけで一発で解決した。

modifying lathe 刃物台も、セレーションの付いたクランプネジで締めた。道具を使わなくても操作できるので楽である。よく使うところはこれに限る。目立つ色にしたのは正解だ。
 刃物台が鈍く光っている。軽く面取りを施し、ゴム砥石で研いだのだ。来たばかりの時はフライス目が出てザラザラであった。ザラザラだと錆びやすいのだ。 

2017年11月05日

turntable indexing

turntable indexing 転車台のメカニズムの製作は少しずつ進行している。スケッチだけで作っているのだ。長年に亘って故障しない構造にした。電気接点を一切なくし、摺動部を完全に排除して転がり摩擦のみにした。
 また、部品が疲労して折れることもないようにした。また、何かの異常があっても、すべての部品が安全サイドに傾くようにしてある。メンテナンスはほとんど要らないが、後日誰でも修理できるようにした。歯車には埃除けを付ける予定だ。
 歯車比は100:17とした。互いに素であり、ピニオンの歯数は14より大きい。こういう歯数を選ばないと音が大きくなる。やかましい車輛の大半は、ピニオンの歯数が少ない
 
 図面を描こうとも思ったが、1台しか作らないし、測定値を書き込みながら作図しなければならないので、個別のスケッチで用は足りることが分かった。
 今まではそのスケッチを元に自宅のフライスで削って、翌日合わせてみるという作業をしていたが、進捗があまりにも遅い。間違えて作ってしまって、作り直したことも多い。

 先月、小さいながらも稼働するフライスが来たので、仕事はかなりスピードアップされた。現場での修正が効くのは良い。移動の途中で部品を紛失することもなくなった。大きな物は自宅で作業する。

 インデックスのV字溝も切れた。これは 3/8インチ(9.5 mm)のボールベアリングが嵌まって動作する。それが直線状に動く溝を作っている。摺動部が全く無いように設計した。そうしないと長い間には磨り減って壊れてしまう。意外と力が掛かる部分なのだ。分厚い材料をふんだんに使う。

 廃品回収の店で手に入れたブラスのブロックを有効活用する。たいていは帯鋸で切った切れ端なので、メタル・ソウで大まかに切り、フライス盤で六面を仕上げて使う。切り粉が大量に出る。こういうものは快削材であるから気楽だ。あっという間にできる。材料が潤沢にあるので、設計は楽だ。いつもは、手持ちの材料で作るという制約があって、工夫が必要であったが、今回は好きなように設計できる。

 ブラスのはずなのに、とても切りにくい t4.0 の板がある。凄まじく粘く、歯が喰い込む。難削材用の刃物に取り換え、切削油を塗りながら作業する。ドリルで孔をあけると硬い螺旋状の切り粉が出る。折り曲げても折れない。ネジを切るのは大変な作業だ。これで機関車の台枠を作れると思っていたが、やめることにした。行き先がなくなったので、こういう大きな構造材に、惜しみなく使っている。  
cutting with coping saw この材料は黄色みが少なく、少し緑っぽい。大体の見当はつく。多分高価な材料(対海水の抵抗力がある合金)だろうが、タダ同然で手に入れた。1200×160(mm)もあって、切るのが大変だ。試しに糸鋸に油を付けて切ってみたが、30分かかった。もちろん糸鋸は3本消費した。確かに12分で折れるというのは正しい。切り口はフライスで落として真っ直ぐにする。

 いつも行く廃品回収の店に、切り粉や切りクズを持って行き、多少の追い銭を払って、ブロックや大きめの板と取り替える。スクラップがバケツ二杯(40 kg弱)溜まったので、そろそろ行く時期である。強力な磁石で鉄のクズを全て取ってから行く。そうしないと買い取り価格が下がってしまうのだ。
 鉄クズはまた100 kgほど溜まったので処分する。隠しヤード建設や、あちこちの補強に使った鋼材のクズである。こちらの買取価格は 、タダの次の価格であって、ガソリン代も出ないほどだ。と言っても、元は廃鋼材を拾ってきたものばかりだから、文句は言えない。

2017年10月06日

ミニ旋盤

Lathe この旋盤も無期限貸与ということになった。この写真は置いてみて、位置関係を調べたときのもので、ゴミだらけである。



 高級機ではないが、整備すれば十分使えるので、有難く受け取った。付属部品にコレットがあったので、コレット専用機として使うことにした。小物をある程度の量、細工するには便利なはずだ。
 三爪は使わないことにする。この国で作られたチャックは材質が軟らかく、締めたときにカツンと締まらないのが嫌だ。

 心が出ていないが、それは価格相応で、文句を言ってはいけない。この価格で心の出ている三爪チャックがあるわけがない。チャックだけに数万円ほど出して、日本製を手に入れれば話は別だ。通販サイトで、この機種に対する不満コメントにそれがたくさん見つかるが、常識がない人たちである。ヤトイを作るか、コレットか生爪を使うべきだ。あるいは、スピンドルのフランジをやや小さくして、チャック全体が少し動くようにし、ずらして締めるという高級テクニックもある。
 筆者が最初に買った旋盤は、ネジ込みのチャックだったので、その方法が採れなかった。1mm弱偏心していた三爪は、爪を砥石で擦って調整し、ある程度心を出した。

 旋盤というものは、使う人が工夫して使うべきもので、買ったらすぐ所定の性能が得られると思うのは間違いだ。しかし、精度を出す準備作業について書いてある手引書は、まず見ない。

collet chuck 筆者はこのような小型機は使ったことが無いので、練習が必要だ。いずれDROを付ける。
 この機種は、感心なことに、ベルトドライヴになっている。


 中国製の機械はどれも手触りが良くない。何を触ってもざらざらしていて、角が手に痛い。油目のヤスリで、すべての角を一舐めしてから、ゴム砥石で磨く。レイル磨き用のもので十分だ。

 丁寧に擦ると、つるつるしてくる。手になじむ感じがしてきたら、よく掃除する。砥石の粉があるといけないので、掃除機で丹念に掃除し、溶剤スプレイで洗い落とす。
 摺動部に注油して動かしてみた。ベアリングのガタを調べるために、快削材をコレットに銜えて表面を一舐めしてみる。十分な性能である。

 後ろのガードの背が足らないような気がする。Swarf (キリコ)がどのように飛ぶのか研究してから、追加を付けることになるだろう。

2017年10月02日

micro mill X-1 

 小型縦フライス盤にいわゆるX-1という機種がある。SIEG という上海の会社が作って、日米欧に輸出していた。最近は新型に代わったようだが、筆者の友人は、かなりの方が、この機種を持っている。モータ出力をスピンドルに伝えるギヤトレインの設計があまりにも拙い。ガラガラゴロゴロとやかましい。たまに歯が折れることもあるらしい。

gear train そもそもこんな所に歯車を使うのは間違いだ。旋盤でもフライスでも、こういうところには、ベルトを使うのが常識の筈だ。刃物がワークに喰い込んでしまった時に急停止する。その時、ベルトが滑るか、切れるかすれば安全である。歯車では止まらないから危険であるし、多分この材質では歯が折れてしまう。それを狙っているのかもしれないが、賢明な方法ではない。
 
 最近、知人から使わないX-1を無期限貸与された。博物館で使え、ということなのだ。やかましいので蓋を開けて驚いた。中学生の設計かと思ったほど、稚拙な設計である。
 筆者のフライスはもう一段大形のもので、それもギヤを捨ててベルト式に改造してある。友人の U氏の希望で、X-1用のベルトドライヴ改造キットをアメリカから取り寄せたことがあるので、それを再度取り寄せようとしたのだが、数年前に廃盤になっていた。再生産はないそうだ。アメリカではすでにX-1が市販されていないからだ。交換用歯車だけは売っている。しかも金属製の歯車も高価で売っている。これは買ってはいけない。歯が折れないから、かえって危険だ。

 昔ベルトドライヴの図面を描いて、打診したことがある。再生産にはある程度の数が必要である。仲間内で既に半分以上は捌けたが、それを見て欲しがる人もいるので、見切り発車した。デザインは少しシンプルになるが、3段変速で、最高回転数が今の2倍弱になる。細いエンドミルを折ることが減るだろう。上記リンクの写真よりも機能的な設計である。(この件の頒布は終了しました。)

2017年09月20日

Midway

 Midway 1Midway 2サン・ディエゴに行ったら見たいものが、もう一つあった。長年横目で眺めながら行けなかったところだ。
 Aircraft Carrier Midwayである。係留されて、博物館になっている。

Midway 7Midway 10Midway 3 この空母は横須賀に居た。内部の造作は、かなり日本の影響を受けている。第二次世界大戦末期の空母で、航空甲板をアングルド・デッキに作り替えて、かなり長い間就役していたが、90年代に退役した。サイゴン陥落時に、家族を乗せて逃げて来た軽飛行機を着陸させたのは記憶にある。その飛行機は展示してある。

Midway 9 4000人も乗っているので、一つの街のようなものである。食堂は24時間営業、病院も歯科医院もある。補綴(ほてつ 歯にかぶせたり、入れ歯を作ること)もしてくれる。隣の部屋には入れ歯を作る遠心鋳造装置もある。憲兵に取り押さえられたならず者を入れる牢屋もいくつかある。

Midway 6Midway 5Midway 8 水兵たちの寝るところはこのような蚕棚である。機械工作をする必要があるので、このような旋盤とかフライス盤が設置されているし、隣の部屋では板金工作をする。熔接機も各種あった。飛行機の修理をするのだから、相応の工作機械が必要なのだ。部品棚を見た。凄まじい数の部品が在庫してあって、それらが瞬時に検索できるようになっている。コンピュータの無い時代からそういうシステムがあったのだそうだ。

Midway 4 見学者の半分は中国人で、大きな声でわめきながら歩き回る。日本人は少なかった。格納庫は体育館のような高さで、とても広い。最近の原子力空母はさらに大きいそうだから、想像しにくい。
 ニューヨークのマンハッタン島にはもう一つの空母が係留されている。やや小さい。そちらは宇宙開発の歴史も展示しているようだ。

2017年05月22日

Alco RS3's

ALCO RS3's このRS3は、ケムトロンのキットから組んでいる。この板は30ミル (t0.75)で、比較的薄い。床フレームは、角棒を貼り足すので、大変重い。組むときはガスバーナが要る。
 キャブ妻板、フッドの妻、パイロットはロストワックス鋳物で、重厚である。このキットは、GP7の時代とは異なり、かなり洗練されている。手際よくまとめてあり、大量に売るつもりであったのだろう。しかし、これを完全に組める人の数は少なく、大抵の人は半分まで行ってギヴアップする。それを安く買ったのが、この2輌である。

RS3 cab cutout 台車はケムトロン・オリジナルのロストワックス一体のものと、韓国製のsprungと比較している。このキットで最も気になるところは、フッドを前後で一体にしていることである。アラインメントを考えるとそれは良いが、キャブの中にフッドがあるのは許せない。
 カッティング・ディスクで、無理矢理に拡げる。こうすれば床板が張れるし、運転台も置ける。

 フッドがあまりにも流麗で、その表面には何もない。本物にはヒンジ等があるから、ロストの部品を付けてみよう。つるりとした機関車ほど、多少の凹凸があると、実感味が増すものだ。


2017年05月18日

EMD GP7’s

GP7's  Kemtronのキットを組んだものがかなりある。GP7だけで5輌ある。うち1輌は祖父江製作所製の製品のジャンクから組んだものだ。ごみ箱に捨ててあったものを拾ってきて、作った。ロングフッドが曲げてなかったので、切り離して角に骨を入れてハンダ付けしたのち、やすって丸みを付けた。こういう工作は得意だ。
 ケムトロンのキットはエッチングだけなので、板金打抜きのパーツを足して、より凹凸を大きくしている。細かい部品はロストワックスだ。この頃はロストワックス部品が大暴落だ。買う人が居ないのである。バケツ一杯50ドルで買った。一昔前なら、2000ドルでは買えないものだった。
 おかげで、ホーン、ベル、ライトなど好きなものをテンコ盛りにできる。贅沢な限りだ。
(この写真はしばらく前に撮ったもので、車体の上下を締めてないので隙間が見える。)

 台車はカツミが輸出した祖父江製作所製を、アメリカの市場で手に入れたものだ。軸箱がブラス製のものは加工してそのまま使えるが、1970年頃輸出したものは、軸箱がダイキャストである。部品が微妙に膨らんで、中の篏合させてある焼結軸受合金が外れて来る。やはりダイキャストはダメである。それ以前のように割れることはないが、微妙に膨張するようだ。

 仕方がないから、軸箱をすべて捨て、フライス盤でムクのブラスから作った軸箱体に、ロストワックスで作った軸箱蓋をハンダ付けしたものと取替える。こうすれば1000年でも持つ。軸受にはボール・ベアリングを入れる。機関車は重いので、ボール・ベアリングの効果は大きい。
 ケムトロンの機関車は板が厚いので、素組みでも質量が1300gもある。ぶつかっても壊れない。走行音は重厚である。こうでなければならない。

2017年04月22日

通称「ガラ」

tapping しばらく前にこれを入手した。長年探していたものだ。行きつけのバッタ屋にたまたまあって、安く買うことができた。もうこんなものを見ても用途が分からない人が多いのだろう。

 洗い油できれいに洗って、乾かし、注油した。何十年か工場で使われたものなのだろう。良く使い込まれているが、ガタがある訳でもない。調子が良いのでアタリであった。

 ガラでタップを立てると、折り込むことがまずない。
 細いネジ穴を切るのはいつもヒヤヒヤであった。折るのではないか。折れたらまた何日かステンレス容器内で塩水漬けにしなければならない。そういうことを考えると、タップを立てるのに勇気が要る。ところがこれを使い始めると、ネジ立てはいくつでもできる。まず折れることは考えられない。

 今までは折れないようにするには、ボール盤のチャックに銜えて下ろし、そろそろと廻していた。専用のタップ立てジグも持っているが、細いものはやはり心配だ。手に持って廻すなど論外である。手の指が対称的でないので(要するに片方の手に親指が点対称で2本付いているのならば、問題ない)、廻すときに軸がずれてしまう。だから折れるのだ。回転力だけしかかからなければ、折れないものなのだ。
 以前E氏の工夫されたタッピングドリルを見せて戴いた。それは、自作の細い手持ち電動ドリルであった。ゆっくり廻ってトルクだけしか伝わらないから、折れない。

 この道具は軸が水平で、タップの捻じれ具合が分かる。負荷が掛かると捻じれるので、その具合を見て、戻したりする。相手がブラスとはいえども、厚い板に立てる時には、戻して切粉を出さねばならない。その時、切削用グリスを付けると、とても具合が良い。
 先日は1.25 mmの板にM1.4を30個ぐらい立てたが、あっという間である。ガラの下には切粉が積もって、山になり始めた。


2017年04月18日

Jig

the jig このジグは何だろう。クラフツマンならすぐわかるはずだ。そうでない人はそれなりに?
 しばらく使っていなかったが、最近必要になったので引出しの奥から出した。一度踏んづけて壊したので、片方は作り直している。寸法を測らずに作ったので、ネジ孔の位置が少し違う。
  短いほうの板の裏には硬いリン青銅の板が張ってある。弾力で何かを挟むのだ。

 かなり前に、祖父江氏のところで見たものを自分なりに改良したものだ。祖父江氏は、相当頑丈なものを使って、ワークに嵌め込んでいた。これは上から載せるだけである。
 

115_5415 この台車の枕梁が行くえ不明なので、 t0.3 のリン青銅板を細く切って作った。台車枠が捻れるようにしたのだが、まだ硬い。t0.25でもよかっただろう。t0.2では薄過ぎた。
 この台車はカブース用である。リーフ・スプリングがほとんど飛び出していない台車のバネを切り捨て、長いロストワックス鋳物をハンダ付けした。内側は見えないので、半分に切って節約した。これくらい飛び出していると気持ちが良い。 
 カブースは韓国製で必要以上に重かった。K氏のところから戴いたものなのだが、元の所有者が余計な改造をしようと思ったものの、点対称に間違えていたりして、収拾が付かない物であった。購入者のK氏もギヴアップしたものらしい。
 思い切っておかしなところはすべて切り外して捨て、作り直した。とにかく重い車輌である。740gもあるので、ボールベアリングを入れざるを得ない。重いから、グリースの抵抗など問題にならない。よく走る。 

2017年04月16日

motor bracket

 先日の写真で質問があった。モータ・ブラケットが意外と薄いのではないかというものである。確かに薄い。チェーンの張力などは知れているが、軽衝突の衝撃で曲がりそうに見えるかもしれないが、実は工夫がある。材料は t1.25 のブラス板である。本当は t3 を使いたいところだが、曲げるのに苦労する。専用の曲げる道具を持っているのだが、1つ2つを作るのに、引っ張り出してセッティングをするのが面倒だった。 

motor bracketmotor bracket2 t1.25 にV溝を掘って曲げてから、金鋸で切り目を入れて小さなブラス片を押し込み、ガスバーナであぶってハンダ付けする。それだけである。もちろんはみ出したところは削り取る。この方法が簡便にして丈夫である。
 見かけを気にする必要がないところだから、ジャンク箱から取り出した、汚い板である。工場で作るのなら、工程数が少ない厚板曲げが正解であろうが、アマチュアならこれでよい。あっという間にできる。

solderingchassis この種のちょっとした補強は効果的である。補強の種類がやや異なるが、祖父江氏の60年代の製品の床板にはこういう加工がしてある。
 長いものを一気にプレスで抜くのが大変なので、三つの部品に分けている。それを継ぐのに、重ね継ぎをしている。折り曲げているので加工硬化しているから強い。長いものを加工するのが面倒な場合に、使える技法である。それにしてもこのハンダ付けのテクニックは見事である。t1.5の板を組むのに、大きな焼きゴテでさっと流してある。 

2017年04月06日

International Harvester Co.

International Harvester このホッパも自作である。と言っても側面の板だけは安達製作所製のプレス部品である。このpanel side というホッパは、1929年あたりから製造され始めている。非常に賢い発想で、プレスで加工硬化させて強度を出し、同時に容量を増やしている。

 先回紹介したoff-set hopperよりも作るときの工程数がはるかに少なく、ほぼ同様の容量を持つ。安達製作所製のプレス板は焼き鈍し板を使っているので、曲がっているところは硬いが、真ん中あたりは軟らかい。本物のようだ。

 この板が何十枚かあった。プレスの不良品は捨て、15輌以上完成させた。切り継いで3-bayにしたものもいくつかある。ホッパの自作は、側面さえあれば簡単なのだ。
 それ以外の部品はほとんどが長方形で、あとはプレスの骨だけである。骨の数は厳密に数えて、管理してきた。足らなくなると組めないからである。しかし現実にはかなり足らなくなって、骨を自作して足した。骨は帯板に角線を貼って作る。それほど面倒でもない。床下のホッパは展開図を作ったので、板を切り抜いて曲げればできる。床に接する部分を僅かに長めに作り、ベルトサンダで落とすと楽である。アングルはかなり予備があり、その点は楽であった。角の丸みを作る金具は貴重品で、これだけは無いと作れない。 

 インターナショナル・ハーヴェスタという会社は元々は農業機械の会社だが、自動車分野に進出してトラックなどに大きなシェアを持っていた。トレーラ・トラクタ、四輪駆動車、消防車などでよく見た。現在は他の会社と合併して、名前は聞かなくなった。労働争議が原因でつぶれたと聞いた。 

2017年03月29日

パンタグラフとポール

OBJX パンタグラフは台の上に載っている。このような背の低い機関車では、乗務員が手を伸ばしたときにパンタグラフに触って、感電することがある。それを防ぐためになるべく高くするのがふつうである。

 パンタ台はアングルを組んで作るが、そのアングルを作らねばならなかった。ジャンク箱で見つけたアングルは 、なんとエッチングで溝を掘って曲げたものだった。くたくたでパンタ台の用をなさない。よくもこんな役に立たない商品を作るものだ。ジャンク箱から全部出して点検すると、そういうものが何種類か出て来た。一部は捨て、残りは角の内側に角線をハンダ付けして保管した。
 アングルは曲げたものでないと硬さがない。加工硬化が必要なのだ。例のベンダを持ってきて、t0.4板を曲げた。曲げたものをシャアで切り落として、50 mm程度のものを10本ほど作った。多少反るから、修正して使う。

 パンタ台ごと外せるように、台の下にネジを出し、屋根を貫通させた。当然パンタグラフ本体を固定するネジは余分を切り落とした。この径の超硬のドリルは持っていなかったので、普通のハイスのドリルを、ステンレス用の切削油を用いて使用した。切粉が硬く、手に刺さると痛い。すぐに始末した。このステンレスは磁石に付かない組成のものだが、切粉は付く。熱で構造が変化するのだ。強力な磁石でほとんど拾い集めることができる。

 ジャンク箱からHO用のポールが見つかった。壊れたところを修理すると使えそうだ。Sacramento Northern の一部の機関車は構内で始動時にポールを使用している。大型のパンタグラフは重く、バネ上昇ではない。空気圧で上げなければならないのだが、その圧縮空気を作るのに補助コンプレッサを始動する。その電源を取るためのものだ。一度パンタグラフが上がれば必要がなくなり、走行時には降ろしている。この写真では、ポールのネジがまだ締めてないので、傾いている。  

2017年03月17日

Kimpei Sofue’s life  (9)

 祖父江氏のハンダ付けのテクニックは白眉である。常に完璧なハンダ付けをするから、彼の模型でハンダ付けが外れるということはない。 
 棚にハンダは何種類もストックがあった。また、ブラスの材料も何種類かあり、より楽にかつ、正確に工作できるものを用意していた。
 最終期の特製品には、彼独特の仕上げ加工が随所にみられる。ブラスの針金を切ると、すぐにヤスリでその断面は面取りされる。シャァで剪断加工された板は、全ての切断面をヤスリで加工して直角にする。彼は大量のヤスリを持っていた。すべてのヤスリは使用前にsafety edgeを油砥石で擦って、準備する。そうしないと、削れて欲しくないところが削れてしまうからだ。
 足踏みのシャァは完璧に研がれ、薄いティッシュの一枚を置くと、真っ二つになる。彼の工房はすべて整頓され、美しかった。

 25年前、私は再度アメリカに居て、祖父江氏の望むものを送って差し上げていた。日本に戻って、彼に会いに行った。祖父江氏はドイツの機関車のスポーク動輪の原型を作っていた。私と話をしていても、手を休めない。眼はこちらに向いているのだが、糸鋸でブラスの円盤を切り続けていた。指に目が付いているのか!と思ったほどだ。
 お茶と菓子を戴きながら話をするのだが、彼の手はテーブルの下で動いている。突然彼は、言った。
「ほら、できた!」
 彼は小さなキサゲを用い、手の感触だけでスポークの断面の丸味を付けていたのだ。

 アメリカの模型人で、祖父江氏の工房を訪ねたのは二人で、ペンシルヴァニアのBill Pierson氏と、Original Whistle Stop のFred Hill氏だけである。 

 祖父江氏はKTMで長く働いたが、要求される以上のことをしていた。それは彼のプライドである。彼は世界最高の機関車が作りたかった。そして、彼はそれを成し遂げたのである。

2017年03月01日

Kimpei Sofue’s life  (1)

日本語版を発表してくれという要望が多いので、しばらく連載することにした。

     祖父江欣平氏の生涯

           マックス・グレイに機関車を作った男
 
 70年代の中ごろ、アメリカで見るHO、Oの機関車は、ほとんどすべてが日本製であった。日本で誰が作っているのか、全く見当もつかなかった。 
 日本に帰ってから、友人がHOのいろいろな製造所で機関車の図面を描いていたという老人を紹介した。(訳者註  椙山氏が酒井喜房氏を紹介してくれたのだ。) 彼曰く、「祖父江さんに会うべきです。その人がKTMのOゲージの機関車を作っている、まさにその人ですよ。」
 私は、たった一人の人がKTMのほとんどのOゲージ機関車を作っていると聞き、とても驚いた。Oゲージのみならず、その設計がHOの機関車にも使われていたという。私は東京の郊外の田舎にある祖父江氏の工場を訪問してみようと思った。

 彼の工場は小さく、6 m X11 m ほどの作業場であった。3台の旋盤のうち1台は中型、残りは小型である。足踏みプレスが2台、型削り盤が1台、縦フライス、横フライス各1台、足踏みシャア1台、コンタマシン(いわゆる縦型帯鋸)、ボール盤数台とタッピングマシン2台があった。一角には簡単な鍛冶屋をする場所があった。ほとんどの特別な刃物はここで自作して焼きを入れていた。一番大きな機械は湿式研削盤である。これは自製のプレス型を研削して平面にする装置だ。

 3,4人の女性が主としてハンダ付けをしていた。祖父江氏は彼女らに組み立てさせる”キット”を作っていたのである。もちろん奥さんも手伝っていた。私が彼女らのハンダ付けを見ていたら、祖父江氏は聞いた。
「あんたはハンダ付けはできるかい?」
「もちろんできます。」と答えたので、私がハンダ付けする準備をしてくれた。

「駄目だ。」と彼は長いブラスの棒(断面は 3 mm X 25 mm)で、私の手首をぴしゃりと叩いた。「そんなんじゃ駄目だね。」と、彼は肘を机の端に付ける方法をやって見せてくれた。(次ページの私が鋼製トラス橋をハンダ付けしている写真を参照されたい。)これが、強い圧力を掛けながら鏝先を正確に制御するコツなのだ。
 彼が言うには、ハンダ付けは温度だけではなく、圧力で出来るのだ。熱い鏝はたくさんの熱量を持ち、先端には平らな面がある。押し付けると、熱エネルギィは短時間にワークになだれ込むのだ。私は練習生で、彼は厳しい教官であった。私は彼のところによく通って、模型の作り方を習った。 

2017年02月27日

祖父江欣平氏の生涯

 OSRの最新号が出たKimpei Sofue。かねてより依頼のあった祖父江氏の生涯について書いた。いつか発表するつもりで祖父江氏の生涯について書いておいたものを、投稿した。1999年にワープロで打って、ご本人に修正して戴いたものだ。直筆での添削が入っているから、今となっては貴重なものである。博物館で保存する。

 英語訳は何回も書き直した。「もしこうだったならば、このようになっていただろう。」という仮定法過去完了の表現が必要であったので、堅苦しいがお許し願いたい。ほとんど書いたとおりに出てしまった。編集者による添削を期待していたのだが、そのままでよいということになった。

 "a stag at bay" という表現があるが、「いよいよ追い詰められた」という意味である。これは、過去の人生で2回しか使ったことが無い表現だ。この表現は編集者に褒められた。

 写真を探して、表情の良いものを選んだ。工場の様子はあまり生々しいものは避け、半製品が積まれている様子を載せた。
 14,000輌もの機関車を数人で作っていたのだ。ハンダ付け、小さな旋盤仕事などはアルバイトの女工さんがしていた。祖父江氏は彼女らに組ませるキットを作っていたのだ。この14,000という数字は、聞いた人が誰しも驚く数字だ。 


 編集者は、
「とてもすばらしい。読んで、ためになる。多くの人たちがこの話を喜んで読むだろう。もしこの歴史を貴方が書いてくれなかったなら、誰も知らずに終わってしまっただろう。」
と書いてきた。

 思った以上の反応でうれしい。

2017年02月07日

続々 Lobaughの台車

Lobaugh bolster2Lobaugh bolster ロボゥのボルスタはこんな格好をしている。1 mmほどの薄い板である。ブラスの板をプレスで押し曲げて、加工硬化させている。日本の鉄道模型はどうしてこれを真似しなかったのだろう。薄い板でも剛性があり、へたらない。台車枠には2-56のネジ(2.1mm)が切ってあり、段付きワッシャをかませて締める。筆者としてはこの段付きワッシャにネジを通して締めるのは気に食わない。1本のネジで2つのものを締めることになるからだ。ネジは1本で一つを締めるというのが常識である。ばらす時、パラリと部品が落ちる。韓国製の模型はもっとひどく、一つのネジで4つを締めているものがあった。
 やはり、段付きネジを使うのが筋だ。

 現代のボルスタ高さから、かなりずれているので、高さを調整した上でセンタピン孔をあけている。 場合によってはボルスタを上下逆にして、厚板を貼って使うこともある。この貨車はその方法を採用した。

 さて、前々回のクイズはいかがであろうか。かなり近い答を寄せられた方もあるが、まだ正解者はいない。その種の高速貨車は、蒸気暖房の配管を持っている場合が大半だが、これはそうではない。その理由も含めて次回発表とする。

糸鋸台 糸鋸台は仲間内では大変評判がよく、欲しがる人が多いので、材料を切ってキットの形にした。いつも手伝いに来て下さる方へのお土産だ。すぐ組み立てて持っていらっしゃるので、ベルトサンダで角を落とすと完成だ。
 博物館のオリジナル商品にすれば良いという意見も戴いている。

2017年01月20日

サンドブラスト

 鉄橋が多少錆びて来た。ハンダ付けの塩化亜鉛のせいだ。放置するとますますひどくなるので、錆を取っておく必要がある。

sand blast2 足立健一氏のところには大きなサンド・ブラスト装置がある。筆者のものと比べると、桁違いに大きい。自動車の部品を処理することもできるほどの大きさだ。お願いして使わせてもらった。錆は面白いように取れる。ハンダの部分は軟らかいのでなくなってしまう。非常にきれいになった。 

sand blast 砂は細かなもので、よく流動する。全部で 4 L ほど使った。もちろん下から回収して何度も使う。

 錆はきれいに飛んでいき、全体がサテン地になった。鈍い鉄の色は美しい。

 サンド・ブラストに用いるエア・コンプレッサは2馬力以上のものが必要だ。流量が大きいので、小さなものではエアタンクが一杯になるまで待っても数秒でなくなってしまう。
 

2017年01月18日

続 作業台の高さ

 それを聞いて、「やはり、そうか」と思った。
 裏庭の物置を整理した時に、実家から引き揚げてきた風呂の椅子が出てきた。ほぞが緩んで壊れていた。 捨てようと投げたが、その瞬間ひらめいた。

 V-board ルータで切り込んで、V-boardを沈め、面一(つらいち)にする。裏も少し削って、握りの前の締め金具が当たらぬように逃げる。V-boardは、硬い樫の木を用いた。


V board 2 接着剤を十分塗って締め上げ、一日待つ。多少の不陸はベルトサンダで落とすと、平らな作業台ができる。ワークをクランプで締めることも可能だ。
 脚の裏にはゴム板を貼り、多少摩擦を大きくする。足の手前にはストッパを貼りつけ、作業台の縁に引っ掛ける。

V board 3 極めて単純な工作で、1時間で完成だ。筆者の体格で、普通の椅子に座り、ほど良い高さである。この種の椅子は最近はあまり見かけないが、わざわざ探すほどのことはない。スクラッチから作ったとしても、大した手間ではない。

 友人が来た時に試してもらったが、なかなか良いという評価だった。 お試しあれ。


2017年01月16日

作業台の高さ

 三本ローラの写真をご覧になって、
「これは博物館の奥の、高くなっている線路路盤に付けてありますね。」
と、いうメイルを戴いた。
「高いと、見易くて良いですよね。」とある。
その通りなのである。

 万力がその場所にある。各種の切断はそこで行う。切粉が落ちるのはその下の隠しヤードへの路盤である。紙を敷いて受ける。

 糸鋸作業が高いところで行われると仕事が捗る、というのが筆者の認識である。視線が水平に近くなるので、直線が見易いのだ。以前は高さ750 mmの作業机に薬研台(英語ではV-boardという)を取り付けていた。結局のところはしゃがんでやることが多かった。

 自宅のレイアウト工作の時、1200 mmの路盤に万力をとりつけ、作業した。やや高い椅子に座って作業したのだが、なかなか具合が良い。
 普通の机(720〜750mm高)では何かを用いて高くすると良さそうだと思っていたところ、今野氏が興味深いことを教えてくれた。
「他の趣味界の人と話すと面白いですよ。金工をされる方で、全くの素人さんの様でしたが、糸鋸を使うとき、机の上に作業用の台として、箱を載せると言うのですよ・・・・・」

2017年01月14日

板を丸める

 友人の依頼で、金属板を丸めた。いつもは薄い板を大きな半径で丸めていたが、今回は1 mm 板を半径15 mm で丸めてくれという依頼であった。

 厚い板は何度もローラを通すと少しずつ薄くなる。今回も0.02mmくらい薄くなったような気がする。その分延びるので、計算値よりすこし短くして開始した。
 まず、アルミニウム板で練習する。これは軟らかく、あっという間にできた。

115_5223115_5226115_5235 ブラス板はそれに比べると硬いので、何回かに分けて通す。事前に端の部分は丸みを付けておかねばならない。それには例の丸いダイを使う。
 端の部分を当てて、ゴムハンマーで丹念に叩く。それをローラに通す。少しずつネジを締めて隙間を減らす。20回くらい通すと具合よく丸まる。ローラを外して、逆回しでも通しておくと、形が整う。

 この器械はシカゴから来たものだ。イギリス製である。万力に取り付けて使う。以前から持っているものは半径が20 mm程度のものまでしか曲げられなかったので、今回初めてこれを使った。

2016年12月29日

続 コメントへの反応

 今回投稿されたコメントで、思わず吹き出してしまったところがある。
”工作マニアが「模型に価値観を与えたいからだ」なら理解できます”の部分だ。

 確かに、我々は工作マニアの中に入るだろう。しかし、価値観(多分、「価値」の方が適切か?)を与えるつもりはない。それによって人にどう思われるかはわからない。現実にこの投稿者は、その価値を完全に否定しているように見える。
 ロンビックから始まる等角逆捻りの概念を実現するためには、様々なアプロ−チの仕方がある。剛氏は4つほど試作された。筆者はそれを含めて7種作ってみた。どれが一番作り易いか、どれが見かけに影響を与えないか、どれが一番ガタが少ないか、どれが最も理論的に誤差の無い方法かなど、様々な見地からの分析を行い、生き残った物が筆者の3種である。

 だからこそ、これを付けると良いですよ、と広く公表しているわけだ。筆者の場合、機能以外全く考えていないから、裏側のハンダ付けの後処理も全くしていない。キサゲも掛けてないから、ひどい状態で、ただよく着いているだけである。そういう意味での価値の向上は期待できない。
 
 我が国の鉄道模型は、相も変わらず外観重視だ。投稿者はそのような土壌の中にいるのだから、今回の投稿がなされたのも無理はない。実物のみを観察し、その精密縮尺模型を作ってもうまく走らないのである。これは作ってみて、初めて実感できることである。実物業界人が、したり顔で論評することがあるが、的外れなことが多いのは、これが原因である。

 今回、解説コメントを投稿して下さった方は、鉄道よりも、もう少し大きな実物を扱っている方で、物が動くことを解析することに長けている方だ。
 「模型は堅いからね。」「二乗三乗則が効いているからね。」「ステップ応答がピーキーだからね。」と説明してくれたのだが、専門語を一切使わずさらにわかりやすく、擬音、擬態語を使って書き直して下さったのだ。
 今回の解説コメントは、非常に評判が良いので、筆者も嬉しい。
 「専門家であっても、素人に説明できない人は、自分自身も分かっていない。」とはよく聞く。自戒したい。

2016年12月09日

鉄橋を組む

laser cutting115_5045 レーザ加工の工場に頼んであったものが、ようやく出来たので取りに行った。あまりにも細かい部品があって、大変だったようだ。
 仮に現場に置いてみると、なかなか立派である。

 
115_5042115_5039 細部の設計と発注図面の作成は northerns484氏にお願いした。この Baltimore Truss橋は圧縮材を極力太く、引張りのほうは最小限にしている。しかも圧縮材が座屈するのを防ぐため副材を入れている。 それを表現するために、側面のトラスは三枚合わせとし、中心部分は厚さ8mmの鋼板とした。出来上がると大人一人くらいの負荷には十分耐えられるはずだ。

 引張り材は薄く細くし、間に細かなトラスを入れる。これがよく出来ていて見ごたえがある。組みながら「おおっ」と声が出てしまうほど、 素晴らしい設計になっている。northerns484氏には感謝する。 

 薄い板は 0.8mmの鉄板で、熱が逃げにくいので、100 W のハンダ鏝で十分に付けられる。すべての部品がタブとスロットで組み上がる。薄板を組んで形が出来たところで、厚板を接着するという手順になっている。 

2016年12月01日

Walthers の客車キット

Old Walthers Walthersの客車キットについては以前書いたが、新たに発掘されたキットについて書かねばならない。このキットは1940年代のものだ。
 木製屋根と床板をホワイトメタルの妻板で結合し、ブリキ製のサイドを貼るのは同じなのだが、これは少々面倒な構造になっている。どうやったら組めるのか考えていた。
 先に屋根をネジで留めてから床板を斜めに嵌め込んで連結器座で留めるのか、それとも床を先に留めてから屋根を床板に穴を開けて細いねじ回しで留めるのか、それを考えているうちにやる気がなくなってお蔵入りになったような気がする。
fastening roof この写真はあとの方法である。細い穴からネジを落とさないように4本締めるのは難しい。屋根を留めて側面を張ると、ネジを外して床板を外すことができるが、再度締め付けるのは難しい。即ち、室内を作る方法がなくなる。今回は現代風の工法を採ることにした。
 説明書がないし、図面もない。多分コーチ(座席車)である。よくあるタイプだから、さほど気にしていない。屋根をハリマン型丸屋根にすれば、UPあるいはSPのコーチになる。


 これは同時に発掘されたSolarium Dinerである。要するに一等食堂車だ。日当たりのよい食堂車で、少人数で豪華な食事をする。おそらく、貸切りが基本であろう。この発音はカタカナのソラリウムの綴りからは推測し難く、ソゥイリャム である。太字を強く発音する。
 椙山 満氏はこの種の車についてお詳しく、様々な話をして戴いた。アメリカ人は日なたが好きなのだ。日本で電車に乗って日が差すと、たとえ冬であってもシェードを下ろすが、アメリカ人は日に当たりたがる。日に当たると生命力が増すと考えているのだろう。という話だった。確かに映画を見ていてもそれを感じる。マリリン・モンローの「お熱いのが好き」などにはそんな場面が出てくる。

Solarium Diner2Solarium Diner この模型のサイドは熔接してある。キッチン部分のドアは、少し引っ込んでいる。その部分をプレスした部品を付けて表現するのだが、ハンダ付けが面倒なのか、スポット溶接だ。もちろん、製造時に熔接したのだ。模型部品で熔接してあるものは珍しい。これは1950年代の製品だ。

2016年10月20日

the bender

the bender この工具をご存知の方も多いだろう。NWSLという会社が、かれこれ40年ほど販売している。ネジを締めると、上から刃が降りてきて、下のVブロック状の雌型に食い込む。ワークを挟んでおくと、任意の位置で曲げられる。角度も好きなように曲げられる。

 この工具を博物館の作業用に自宅から持って行って置いてある。作業にいらした方が触って、どなたも「使いやすい。便利だ。」と仰る。先日複数の方から、取寄せを依頼された。取るのは簡単だが、送料がかさむ。数が少ないと、送料がばかにならない。もう少し沢山注文したい。

 もし読者の皆さんの中で、欲しいと思われる方はコメントを通じて連絡されたい。締め切りは今月24日とさせて戴く。現地価格は60ドル程度だ。

 写真の手前に置いてあるのは、その曲げ見本である。赤いネジを緩めると、突き当てのフェンスが動かせる。自由な位置で留められて、同じものをたくさん作れる。
 見本の二か所曲がったのは、カヴァード・ホッパの歩み板を取り付ける支えだ。たくさん同じ形のものを作らねばならないから、これがないととても苦労する。足の長さが違うと、歩み板が真っ直ぐ取り付けられない。

 0.6 mm程度の板なら、簡単に曲げられる。0.8mm以上はこの道具の限界を超えるだろう。もっと大きな道具を使うべきだ。
 筆者はもう少し大きな道具(業界ではブレーキと呼ぶ)も持っていて、この小さいのはこのような小物専用である。


2016年09月18日

girder bridges

girder bridge construction レーザで切った鉄板を仮組みして、様子を見ている。0.8 mmの板のタブを0.8 mmのスロットに入れるのはやや難しい。タブの先端を斜めに削いで、ぐっと押し込む。ブラスの棒を当てて、金槌で軽く叩くとスロットに入って抜けなくなる。
 この状態でフラックスを塗り、ハンダ付けをする。隙間を、完全にハンダで埋めるようにする。鉄板だから熱が逃げず、100Wのコテでも簡単にできる。

 Xブレイスの両側に板をつけるのは少々難しい。反対側にも楽にはまるように、スロットをダイヤモンド・ヤスリで削っておくことが必要だ。するすると入らないと組むことができない。

 上下の稲妻は逆位相にすることにした。ピッツバーグの街の中でN&Wの橋を見上げて、同位相のものを確認したが、たった1例しかない。あとはすべて逆位相であった。

tie jig 転車台上の枕木整列ジグである。先回の失敗を踏まえて、肉盗みしてある。簡単に嵌められ、外しやすい。この上でレイルをスパイクする。線路の中心がずれると、回転した時、線路が合わないから、精度が必要だ。
       

2016年06月25日

Walker氏のこと その2

flat car 会社のための模型作りだから、勤務中に会社で作る。
「私の人生の中で、あれが唯一の経験でしたね。仕事で模型を作ったのは。」と、剛氏は仰った。剛氏が図面を描き、一部はカツミ模型店で作ったものもある。

reefer 模型とはいうものの、実物通りに扉は開き、ロックも掛かるようにした。実物の図面があるのだから、やればできてしまう。材料は会社が購入し、塗料は塗料会社に注文した。白眉はレイルで、製鋼会社が、わざわざその断面を作って挽き出した。ポイントも熟練工が実物同様に削り出したものを用いた。クロッシングは一体鋳造である

NYC J-1e and streamliner 蒸気機関車はライヴ・スティームだから、ボイラを作らねばならない。井上 豊氏は銅板を丸く曲げてリヴェット留めし、銀鑞付けするつもりであった。ところが、日本碍子の旋盤工が、「ワンピースで作ってやる」と言い出し、薄いボイラを肉厚銅菅から挽き出してしまった。その話を何度も井上 豊氏から聞いてはいるが、いまだに信じられない。銅のような粘っこい材料を旋盤に掛けると、喰い込んでお釈迦になるはずだ。

「彼はね、今で言えば技能オリンピックで金メダルを取れるような人なんだ。出来ないことなんか無いんだよ。」と井上氏は強調した。
 ピカピカの薄いボイラで、素晴らしい出来だったそうだ。 

 1967年、井上氏は C&Oの2-6-6-6 アレゲニィのHOモデルをTMS誌(233号)に発表した。当時はそのような機関車の存在すら、ほとんどの日本人は知らなかったが、彼は本物の図面を持っていたので、わけなく作ってしまったのだ。
 また、井上氏はAlleghenyの発音を正確に覚えていらした。日本の模型人はこの地名をよく知っているのだが、筆者が出会った人の中で、正しい発音をされたのは井上氏と剛氏だけだ。
 参考までに書くと、最初のA強く言うラゲィニ と言えば通じるが、それ以外の発音では不思議そうな顔をされるだろう。しかし、TMSの表記はやや異なってアレゲーニーとなっている。この表記だと第三母音にアクセントが来ると思ってしまうだろう。筆者もそう思った。

2016年06月08日

plate girder bridge

 シカゴから届いたダイキャスト製の橋を架けるにあたって、その内側をどうすべきか、しばらく考えていた。 間隔を保てばよいので、木の角棒を作って接着するのが一番簡単だ。
 下から見ることなどないと思っていたが、最近は車載カメラという面倒なものがあって、全て見えてしまう。手を抜くと後々まで後悔することになるので、ある程度のところまでは作ることにした。レーザ・カットなら設計さえ気を付ければ、組むのも簡単である。 精度も高い。

girder bridge bracing 実物の図面を何日か眺めて、 作図を開始した。この手の物は非常に単純で30分で設計が終了した。Xブレイスにタブを付けて側面のスロットに入れる。簡単な直角ジグで支えながらハンダ付けすれば、たちまち形が出来る。
 それに上下の稲妻を付ければ良い。問題はこの稲妻の位相だ。同位相なのか、半周期ずらしたほうが良いのかがわからない。近所のものを調査中である。アメリカでの調査では逆位相であった。理論的にはどちらが有利なのだろう。

 このようにして作った箱状のトラスに、側面のダイキャストを接着すればできあがりだ。 稲妻は、透けて見えれば用は足りている。細かい造作は省略する。

 ガーダの上をどうするか、しばらく悩むことになる。直接線路を敷くのか、コンクリートの路盤を載せるかである。後者の場合はバラストが敷いてある。これも資料が手に入ったので、 あれこれと迷う羽目になった。




 

2016年05月08日

レーザ・カット

鉄橋枕木整列ジグ 鉄橋の枕木整列ジグの写真をお目に掛ける。最近、カメラが不調で代わりのカメラで撮ったので、やや不鮮明なのはお許し願いたい。
 鉄板は2.3 mm厚を用いたので、少々厚すぎた。枕木の薄い部分を外そうと思うと、指が掛からず、なかなか難しい。

転車台index これは転車台のインデックスである。同じく2.3 mm板を用いている。合板の円盤(ピットを切り抜いた時の残材)の外周にぴたりと嵌まるものを設計した。そのドーナツ状の板を円盤に取り付ける板(セクタ)をタッピング・スクリュウで留め、それを合板にタッピング・スクリュウで固定した。非常に正確なインデックスができた。例によって、作図はnortherns484氏に助けて戴いた。   

転車台index2 これは円板の裏である。滑らかに回るように玉の入った支えを付けたが、思ったほど回転の滑らかさがない。再々度、別の部品を用意して付け替える予定である。ボール・ベアリングの入った戸車状のものが良いだろう。 最初は金属製を用いたが、騒々しかった。プラスティック製は静かになるだろうと思ったが、滑りが良くない。古いものは外すのが面倒なので取り付けたままである。
 
転車台レール 車が走る部分は合板では摩擦が大きいので、鉄板の平面レイルを貼った。薄く塗装しないと、錆びてくるだろう。 長四角の穴は、集電ブラシの調整用の覗き穴である。


 これらの部品を自分で作ろうと思うと、その手間は想像を絶するものである。文明の利器を使えるということは、素晴らしいことである。 価格も特別に安くしてもらった。次は鉄橋である。恐るべき細かさで、とても手作業ではできない。

2016年03月19日

続々 加工硬化

 伊藤 剛氏の話は続く。

 剛氏は応召して中国戦線で戦った。日本製のトラックの車軸がよく折れたのだそうだ。ここぞというところで折れるので、これじゃだめだということになった。
 破損放置されている敵方のトラックからシャフトを外して付け替えると、折れることがないことが分かった。それはフォードのものだったが、ちゃんと合う。当時の日本製はアメリカ製のコピーだったので、合うわけだ。何が違うかはよくわからなかったが、
「『これでは勝てない。』と兵隊レベルでもわかりましたよ。」
 
 当時のバネはよく折れたそうだ。機関銃のバネが折れると暴発する。航空機のエンジンのヴァルヴ・スプリングもよく折れて困ったという。
 
 戦後ショット・ピーニングという方法が紹介されて、なるほどと思ったそうだ。表面に加工硬化を起こさせて、亀裂発生を防ぐ技術だ。元はハンマで丹念に叩いてそれを行っていたのであろう。この技術が導入されて、その種の事故はかなり減った。金工用ハンマに先の丸い部分があるものを、 point peen hammer という。
 しかし、1960年頃の自動車技術はまだまだ未熟で、父の乗っていたトヨタの2代目コロナの前輪トーション・バァが折損したことを覚えている。(このリンク先のサスペンションの説明は間違いで、コイル・スプリングではない。)その車を買ったとき、父は
「この車のバネはトーション・バァだ。賢い設計だよ。普通のコイル・バネも広い意味ではトーション・バァだけども、その一部を拡大している。」
 嬉しそうに解説してくれたけども、一月も立たないうちに右側が折れて、悲惨な姿で帰って来た。トヨタの友人に電話を掛けて、文句を言っていたことを思い出す。
 のちに連絡があって、「ショットの掛け方に問題があった。」とのことであった。

2016年03月17日

続 加工硬化

 伊藤剛氏は、折に触れて加工硬化の話をされた。
 ドイツの電気機関車の歩み板(running board)の薄さを語った。

「普通の材料を使っているんだけど硬いのです。加工硬化させてあるんですな。」
 写真を見ると槌痕が見える。そのうちに機械でプレスして硬くするようになった。

「真鍮の針金が軟らかい時には一端を万力に挟んで、ハンドドリルに銜えて廻すんです。ハンドルを廻すと堅くなってくるのが分かります。糸鋸で切ると中は軟らかいのですが外は硬い。外だけ引っ張られるからですよ。」
 
「使ったレイルは硬いけど、新品は軟らかいんです。 それと、レイルの外側は硬いけど、中は軟らかい。」

「ポイントのフログは最近は鋳造になりましたね。あれは出荷時にはあまり硬くないけど、列車が通ると硬くなるんですね。」 

 筆者のFEFを見せたときのことを思い出す。屋根の上のシンダ除けをご覧になって、
「これは切り抜いたものとは違いますね。叩いたんでしょう?薄くできている。どこでこんな知識を得たのですか?」 
 祖父江氏の話をすると、「恐れ入りました。あの人は天才です。」と真顔でおっしゃった。

 別の機会に祖父江氏に針金を捩じる話をすると、
「そんなことしなくっても、簡単に出来らあ。万力に銜えて、ペンチで挟んで引っ張るんだよ。長さが1%も伸びれば出来上がりさ。 」

2016年03月15日

加工硬化

 最近、加工硬化の話題を二つ出している。あまり反響はない。残念だ。

 先回の分岐のノーズレイルの延長の記事を書きながら、コメントが殺到するかと思っていた。ところが、何の反響もない。今回もほとんどない。

 仙台の今野氏と話した時に、「加工硬化の話題を出したら、みな飛びついてくると思ったけど、ダメですね。興味ないのか、全く知らないのか、どっちでしょうね。」と話を振ってみた。
 今野氏は、「僕たちはよく使いますよ。今度の記事を拝見して、うまくやったなと思いましたがね。」と答えられた。

smoke lifter on roof 祖父江氏のところで、いろいろなことを教えて戴いたが、この加工硬化については思い出がある。
「たいていの人は切り抜いてハンダ付けすりゃあできると思ってんだろうが、曲げるとか、叩くとかすると硬くなるんだよ。それを使わないってのは意味ねえよ。薄い材料でも曲がらねえんだ。飛び出した細かい部分は加工硬化させねえと、機関車をひっくり返すと曲がっちまうだろ。」
 筆者はちょうどUPのFEFを仕上げていた。屋根の上の smoke lifter (シンダ除け)を作ったのだ。展開図を書いて貼り付けたのが曲がって困っていた。再度硬い材料で作り直そうと思っていたのだが、
「そんなもの、真鍮で問題ねえよ。細い板を片方叩けば曲がるし、薄くなる。ヤスって付ければ簡単だよ。」

 早速やってみた。曲率を自由に選べ、しかも見える方向からは薄いので、恰好が良い。重い機関車をひっくり返して置いても、smoke lifter は曲がらない。しかも、展開図を書かなくてよいから楽である。

2016年03月11日

rivet forming tool

 吉岡精一氏からお預かりした製作途上の電車を完成させる必要があり、足立健一氏に助けを求めた。足立氏は電車製作の達人で、あっという間にブラス製電車を、ほとんど完成して戴けた。日本車輛製をプロトタイプにした自由形であったが、たちまち近鉄タイプに作り変えられた。
 連絡があって、「小さいリヴェットがうまく打てないから作業が止まっている。リヴェット打ち機を貸してよ。」ということであった。筆者はテキサスの友人が譲ってくれたものを改造して使っていた。それを持って行こうとしたら、ハンマが緩くて頭が落ちてしまった。

rivet forming tool 直したが、小さいリヴェットには衝撃が大きすぎて具合が悪い。ちょうど伊藤 剛氏のところから来た小ハンマがあり、それを加工して取り付けると絶妙な衝撃を与えられることに気が付いた。取り付け台を加工して完成だ。縦の角棒はハンマを振り上げる時のリミッタで、クランプで調節する。
 黒いT字型の台は板材のガイドで、10 cm程度の奥行を持たせることができる。奥の板にある孔は、T字ガイドをひっこめた時の逃げである。丸棒が後ろに突出する。写真よりも、以前示した図の方が分かり易いかもしれない。    

rivet forming tool 2 ハンマを振り上げたときの様子である。写真を写すために、つっかい棒をしている。ハンマの錘部分を軽く持って持ち上げると、リミッタで引っ掛かり、コトンと落ちる。実に小気味よく仕事がはかどる。送りはダイの縁に引っ掛けることに依って決まる。
 ワークをネジで送るようにすれば目的を達するが、様々な送り量を任意に設定するのはなかなか難しい技である。いくつか設計案があるが、なかなか手が出ない。DROを付けるアイデアもあったが、余計に間違えそうである。やはりワンウェイ・クラッチで送る方法が一番良さそうだ。ラックを細かくしてバックラッシをなくす工夫が必要である。

2016年01月14日

installing ball bearings

ball bearings on crankpins ロッドにボ−ルベアリングを取り付けるには、大きさが限られているので、クランクピンを細くせねばならない。それともう一つ気を付けねばならないところがある。
 近代機(UP4-8-4 や ナイアガラ等)はロッドに関節がなく、クランクピンのところで、二本が重なっている。ここにボールベアリングを入れるには複列にせねばならない。すなわち、ベアリングを中空軸でつないで、その中空軸の外で折れるようにするのである。

 この中空軸は、当初ブラスのパイプで作るつもりであった。祖父江氏にそれを伝えると、
「パイプは快削じゃねえから、リーマが通らないぜ。」と言われてしまった。
 確かにその通りで、仕方なく、快削鋼を削って作った。内側にshoulder(堰)をつけて、ベアリングが離れているようにした。後から考えてみれば、パイプの輪切りを入れれば済んだかもしれない。
 その中空軸は片方のロッドにはハンダ付けされ、他方はかぶせてあるだけである。動軸の動きで生じる多少の捻れを吸収できるようにしている。 末端は一つだけだが、力の掛かる中心を外さないようにしている。

 効果は抜群で、素晴らしい走りを示した。効率が重負荷でも下がらないのが良い。もっとも、そんな重負荷を楽しんでいる人など、世界中で一人なのかもしれないが。

 中空軸の外側の端には、フランジ付きを使うともっと簡単だったろう。フランジ付きはあまり買ったことがない。軸上に荷重が掛かる時にベアリング上に掛からねばならないので、奥のほうに入れる必要があるからだ。

ball bearing with flange 最近、某XXゲージの人たちから、「フランジ付きのベアリングを分けてくれないか。」という問い合わせがあった。持っていないので要請に応えることはできなかったが、何に使うのか聞いてみると、軸箱に使うのだそうだ。
「そんな使い方は間違っていますよ。」
と言うと、
「模型的にはこれでよい。」と言う。

 指導的な立場にある人がそんなことを言うので、とても驚いた。短時間なら壊れるまでは行かないが、長時間負荷をかけて走らせると確実に壊れる。走らせた距離が短くて、壊したことがないのだろう。
 本物の構造はどうだ、こうだと言っている人たちなのに、こういうことには無頓着なのだ。

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