2024年03月14日

amalgamation

 再度アマルガメイションについて説明せねばならない。元々は金属学用語なのだが、現在では社会科学的な話題や金融機関でよく用いられるようになった。もちろん英語圏での話である。
 日本語では混汞法(こんこうほう)と言っていたが、もはや誰もそんな言葉を知らない時代になった。水銀は常温でほとんどの金属との合金を作る。例えば銅線に水銀を付けると水銀は流動しにくくなる。生じる合金中の銅が多いからである。それにもう一滴水銀を足すと流動するようになる。

 融けたハンダが清浄な銅板またはブラス板に接触すると、驚くべき速さで合金化が進む。酸素の無い環境(真空が良いのだが、装置を作るのがが面倒なので、アルゴンを満たしたテントの中)で物理的に磨いて、ハンダ付けをするとよく付く。まさに石鹸水をこぼしたような感じで隙間に沁み込む。
 その昔、伊藤剛氏が名古屋のクラブの会報のマンガで紹介していた。宇宙服を着て、月面でハンダ付けしている誰かさんに、後ろから「こんな所まで来てやることはないのに。」と言う場面だ。

 フラックスは塩化亜鉛に限らず、ある程度の高温で蒸発せず、金属酸化物を溶かすものが効果を持つ。そういう点では松ヤニの効果を見つけた人は偉いと思う。日本では梅酢を用いていた。果実から得られた酸は蒸発せず、ある程度の酸性を示すので効果があったのだ。筆者は文献に書いてあるすべての物質で、効果があることを確かめている。

 日本では工業的には昔から塩酸を用いてきた。塩化亜鉛はそれほど昔から使われているわけではない。おそらく昭和の時代からであろう。昭和40年代までの自動車工場ではボディのリア・クォータの継ぎ目を塞ぐのに塩酸をフラックスとして鉛ハンダを流していた。その後は当然ヤスリで削り取るのである。

 酸で金属面を洗うと新しい金属面が露出し、ハンダのスズがそれと合金を作る。この速さは驚くほど早い。それを見て、表面張力が小さくなったと勘違いするわけだ。繰り返すが、表面張力は関係ない。単に、母材がハンダと馴染みが良く、急速に合金化するからである。これはまさに磨いた銅板に水銀を一滴落としたときと同じである。

 ハンダ付けの後でハンダが見えないようにするために、キサゲで削って銀色部分をなくすのは賢明とは言い難い。母材との合金が出来ているわけだから、ブラス色が見えるようになるとすでに母材はかなり削られている。すなわち平面性は失われる。 このことはかなり前からここで述べているが、理解している人は少ないと感じる。
 日本でも、そろそろハンダが滲んだ模型を美しいと感じる時代になるべきだ。 

コメント一覧

1. Posted by TM   2024年03月14日 20:58
>その昔、伊藤剛氏が名古屋のクラブの会報のマンガで紹介していた。宇宙服を着て、月面でハンダ付けしている誰かさんに、後ろから「こんな所まで来てやることはないのに。」と言う場面だ。

懐かしいですね。当方、アダチ製作所発行、伊藤剛さん著の「やさしいハンダづけ」という冊子を持っており、まさにこのイラストと文が記載されております。クラブ会報をアダチ製作所が出版されたのでしょうか。

この冊子は昭和52年4月10日発行の非売品となっておりますが、関西の模型店で300円で販売されておりました。
2. Posted by dda40x   2024年03月15日 19:49
TM様
 よくぞその冊子をお持ちでしたね。私も持っているはずなのですが、見つかりません。剛氏のウィットの効いた文章、漫画は現代でも十分に価値のあるものです。
3. Posted by YUNO   2024年03月22日 02:04
梅酢が使えるのなら、柑橘類の汁でもいいのでしょうか?
糖分を含まないレモン果汁ならどこのコンビニでも売ってますし、安価で人体にも安全なので、塩化亜鉛やロジンより扱いやすそうに思えるのですが。
4. Posted by dda40x   2024年03月22日 07:31
>>3
 最近はどこでも売っているクエン酸が有効成分です。簡単なことですから、まずは試してみてください。

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