2022年12月30日

続々 塩化亜鉛を作る

 容器を冷やしながら塩酸を少しずつ入れる。かなりの発熱があり、塩化水素ガスが飛び出すので、外でやるべきである。冬は熱が逃げやすく都合が良い。飛び出した塩化水素は空気中の水蒸気を凝縮させて霧にするので、白い湯気が出るように見える。

 量の比率であるが、亜鉛 30 gに対する濃塩酸の計算上の体積は 76 ml 程だが、揮発して逃げる分を見越すと 80 ml が良いだろう。筆者の場合は、塩酸の残量から反応させる亜鉛の量を計算した。

 反応容器を一晩放置し、完全に溶けたのを確認する。銅線を引き上げると、還元的雰囲気にあったので綺麗なピンク色をしている。この銅線を入れないと、1週間放置しても、全くと言ってよいほど、溶けない。トタン板の場合は亜鉛がなくなって鉄板になる。空気が入るので、酸化が進み、鉄は錆びるだろう。ここで亜鉛の量は意外と少ないので、ほとんど塩酸のフラックスができる。それは効果がとても良いので驚くはずである。祖父江氏は最後まで塩化亜鉛を使わず、希塩酸しか使わなかった。

 これで手持ちの塩酸は無くなってしまった。今後どうやって入手するかだが、かなり難しそうだ。 

コメント一覧

3. Posted by 愛読者   2023年01月01日 12:37
今回の御解説は非常に興味深く、高校の授業が怪しいということもよくわかりました。電池に亜鉛を使う理由がようやくわかりました。現在のような高純度亜鉛が手に入らない昔は、電池の寿命が短かったと思います。
希塩酸ですが手持ちのものを使って亜鉛を溶かしてみました。触媒にプラチナの指輪を使いました。非常によく反応するのがわかります。たしかに溶けるはずはないですね。大変勉強になりました。ありがとうございます。

4. Posted by dda40x   2023年01月01日 14:06
 コメントありがとうございました。
 乾電池の寿命は近年大変な進歩がありました。高純度亜鉛が安価に手に入るようになったからです。昔は亜鉛の鉱石をコークスで還元しただけでしたから、炭素、鉄などがどうしても入っていました。日露戦争の時、初めて電池を戦争に用いたのですが、船で戦地に送る間に電池が放電してしまったそうです。その放電を防ぐために亜鉛に水銀を含ませる工夫ができ、寿命は伸びたのですが、水銀公害が発生しました。
 現在では鉄缶の内側に厚く亜鉛を電解めっきすることで、耐衝撃性と長寿命を得ています。電気亜鉛が高純度であるからです。

 水素を発生させる極はプラチナが最も高性能です。こちらは還元側ですから、鉄でさえも塩酸に溶けることはありません。このあたりのことは誤解が多く、誤った説明をよく見ます。まずは実験してみて、水素がどこから出ているかを見るべきです。

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